●戦を求めて 六足の獣が荒野を対を成して走っている。 その獣に二人ずつ跨る赤い肌の巨人がいた。 『聞いたか? イサークが挑んだ"外"の戦士たちを』 『聞いた。フュリエではない二の足で立つものだと』 獣は荒野の乾いた大地を蹴り、走る。目的などない。強いて言うなればどこかにいるであろう敵を求めていた。 敵。正確には違う。彼らが求めるのは闘争なのだ。 『強いのだろうな』 『強いのであろう』 四人のバイデンと二匹の獣。それは荒野を走る。 偶然か、運命か。それはアークの設立する橋頭堡の方に近づいていた。 ●アーク 「敵も……戦う気……満々……みたいだから……先手を……取られないように……しないと」 エリス・トワイニング(BNE002382)の危惧もあり、警戒を続けていたリベリスタの索敵範囲内にバイデンが確認される。 四人のバイデンと騎乗用の獣が二匹。組織立った偵察部隊ではなく、偶然こちらにやってきたのだろう。警戒する動きががなく、他の仲間と連絡を取っている様子はない。 偶然とはいえ、このまま進めばアークの施設を発見されかねない。現状で拠点が露見されることは不利な面が多い。 そうなる前に彼らを叩かなければならないだろう。 彼らの乗っている獣も、けして温厚には見えない。 けして楽な相手ではないだろう。 拠点の建設もあり、迎撃に行く人間は少人数となる。食料と水、そして砂を渡る装備と共に、リベリスタは荒野に足を踏み入れた。 バイデン。 このラ・ル・カーナに存在する知性ある存在の一つ。 彼らが求めるは、唯闘争。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月09日(月)23:24 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 荒涼とした大地に、全ての生物を拒否するような乾いた風が吹く。 しかし生命は耐えてはおらず、その環境の悪さゆえ、そこに住まう生命は獰猛かつ強靭である。 キーバと呼ばれる獣に乗った赤い巨人も、この荒野で生まれ育った生命である。巨獣と呼ばれる生命の骨を活用して住居を作り、武器を作り、生きている。 バイデン。彼らが求めるのは、唯闘争。 迫るバイデンを前にリベリスタ達も破界器を構える。相手の武器はただの骨。だからといって油断をするつもりは全くない。 ゲガルグには『紅玉の白鷲』蘭・羽音(BNE001477)と『戦闘狂』宵咲 美散(BNE002324)と『スウィートデス』鳳 黎子(BNE003921)が。 ギバドには『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)が。 レガナには『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)が。 シムドには『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)が。 そして後衛から『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)と『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)が遠距離攻撃と回復を。 リベリスタが動けば、バイデンたちもそれを受ける形で戦意を高める。 荒涼とした大地に、全ての生物を拒否するような乾いた風が吹く。 その風は彼らの闘気に当てられたのか、熱く吹き荒んだ。 ● ギバドが骨でできた笛のようなものを吹く。耳に残る低い音。それと同時に彼らの乗っていた6本足のサイが地面を蹴って戦闘に参加してきた。 それを塞ぐ為に、カイと岬が走る。 「仲間の元へは行かせないのダ!」 「こっちこっちー」 カイは持っていた杖を使い、ギーバに一撃を加える。獣はその一撃で興奮し、標的をカイに変更した。岬は目の前でギーバを翻弄しながら、しかし矛先はゲガルグに向いていた。 骨のハンマーを振るうゲガルグ。彼の周りには羽音と美散と黎子がいた。咆哮と共に叩き付けられる重量は、一瞬たりとも気を抜く余裕を与えてくれない。 「……っあ!」 ハンマーの一撃を受けて、黎子が荒野を転がった。血を吐きながら運命を燃やし、立ち上がる。双頭の鎌を杖にして、バイデンを見上げた。 お返しとばかりにゲガルグの足に向かってカマを振るう。可能な限り膝を曲げてしゃがみこみ、身体ごと回転するように鎌を振るう。そのカマの軌跡は時折バイデンの防御を突破し、時折砂の大地で威力をそがれる。虚を突く動きはナイトクリークの特製にして、彼女自身の美学主義ゆえ。 「防御は物理も神秘もあまり変わらないみたいですね」 相手の特製によって攻撃を切り替える。複数のカードを持つのが、黎子の強みだ。 「大きい……。でも、負けられない」 一撃の重さでは、羽音も引けを取らない。稲妻を纏った袈裟懸けの一閃はゲガルグの胸に大きな傷を与える。ゲガルグには自己再生能力を許さぬ一撃が常に刻まれている。回復を許さぬ戦略が、赤の巨人を少しずつ追い詰めていく。 「篤と味わえ。我が最大最強の一撃を――ッ!!」 美散が全身の筋肉を使って力を振り絞る。弓が弦を引き絞るように、体中の全ての部分を使って槍に力を込めていく。最初から全力。加減することは、敵への冒涜だ。槍はゲガルグの肩を貫き、その動きをよろめかせる。 「さぁ、次はお前達の番だ。その信念、ぶつけて来い!」 言葉が通じたわけではないが、ハンマーは美散に向かって振るわれる。幾多の巨獣を葬ってきただろうその武器は、轟音と共に美散に叩き込まれる。 「ぐあッ!」 回避叶わずその一撃で膝を折る美散。全身の力が抜けていくのを感じる。遠のく意識の中で運命を燃やし、体中に力を込める。まだ、全力を出し切っていない! 「吹っ飛べ……っ」 羽音がチェーンソーを振り下ろし、ゲガルグを吹き飛ばす。その間に倒れていた美散は体勢を整える。その隙を縫うように、カイが回復の歌を奏でた。 「初めての異世界なのダ。それなのニ、そこの住民といきなり拳で語り合うのは寂しいのダ」 ため息をつくカイだが、事の経緯を考えればそれも仕方ない。言語の壁もあるが、そもそも話し合いが通じるとは思えない。交渉のテーブルを作るには、相応の準備が必要なのだ。 カイのクチバシから響く音律。一定の旋律によって奏でられた声に魔力を乗せて、ラ・ル・カーナの空の下でカイは歌う。仲間の傷を癒すために。そして、次に会うときはもっと友好的な接触ができるように思いを込めて。 「ひゃはー、異文化交流ー! でもこの場で通じる言葉は『肉体言語』唯一つ!」 巨大な斧槍を振り回す岬。その軌跡のままに空気を切り裂いて迫るゲガルグに風の刃。刃はバイデンの胸を裂き、出血を促す。乾いた大地にバイデンの血が落ちた。 「珍しくボクが後衛ー! アンタレス、後ろだからっていつもみたいに寝ぼけてんなよー」 岬は愛用のハルバードに向かって喝を入れる。『アンタレス』と呼ばれるハルバードこそが、岬を神秘の世界に足を踏み入れるきっかけとなったのだ。なのにこのアーティファクトは基本その瞳を閉じている。 『――――ッ!』 度重なるダメージに、ゲガルグが吼える。だがその戦意は今だに尽きず、膝を屈する気配もない。 強い。羽音とてアーク内でも名うてのデュランダルだ。その一撃は他のリベリスタ達と比べてけして弱くはない。だがゲガルグの一撃は羽音のそれを凌駕していた。 一撃の破壊力に特化した美散と同じか、それ以上。振るった後に生まれる隙は大きいが、それを考慮してもこの一撃は油断ならない。だからこそ。 「ここで、止めてみせる……」 集中砲火でゲガルグを倒す。その作戦は間違っていない。リベリスタ達は破界器を構えて攻撃を再開する。 ギバドにリンシードが迫る。虚ろな瞳でバイデンの巨躯を見上げながら、体内のギアを上げる。キバドの振るう背骨の鞭を、加速して避けた。もっと速く。もっと鋭く。 回避されて驚くバイデンの表情の後に見たその表情は、喜び。強きものに出会えた歓喜。 「戦うのを……楽しんでる、みたいですね……」 言葉は通じなくとも、それぐらいはわかる。ギバドの浮かべたか表情は目の前の蝿を払うものではなく、獲物を追い詰める狩人の表情。リンシードは戦闘を愉しむバイデンと、戦闘しかできない自分を比べる。 (彼らが戦闘民族なら……私は戦闘人形) 自ら戦いに身を投じるバイデンと、誰かに命令されて戦うリンシード。その趣旨は違えど、心が戦闘に傾倒していると言う意味において二者は似通っていた。 「特に恨みはありませんが……相手してもらいます。覚悟してください」 リンシードの剣の軌跡が光を放つ。幻惑の光と共に加速した刃がギバドのタトゥーを傷つける。誇りを傷つけられたのかギバドの表情が怒りに染まり、骨の鞭がリンシードに巻きつく。鋭い突起がリンシードに巻きついて傷つけると同時に、高く持ち上げられて叩きつけられた。 「……! まだ……大丈夫です」 血を流しながら、仲間に無事を告げる少女。息を整え、剣を構える。 「愛しくて仕方ないから」 りりすは痛む身体を押さえながら二刀の刃を構える。その目の前には骨のグローブをつけたレガナと呼ばれるバイデン。体内のギアを上げながら、りりすは前に、そして速く進む。 「僕は君を殺そうと思う」 その生き様に。心に。愛を感じる。りりすはバイデンのその在り様に笑みを浮かべていた。欲を言えば全員食い殺したいのだが、それはできない。それは戦略的な余裕でもなく、純粋な実力によるものではなく、 「浮気はよくないからね」 そんな理由。まさに『僕』らしい。りりすを知るものならそう評しただろう。 フェイントも何もない。ただ真正面からりりすは切りかかる。それに応じるように骨のナックルガードをつけたレガナが迎撃のために拳を振るう。低い位置から迫るりりすを蹴って動きを止め、振り下ろすような拳の一撃で殴打する。 りりすの顔に浮かんだのは苦痛ではなく、愉悦の笑み。愛しい。それでこそだ。速度を乗せた二つの刃が、レガナの右足と左腕を切り裂く。前に。斬る。前に。穿つ。前に。突く。止まらない刃のダンス。積み重なる傷。 共に防御を無視した攻防。与える傷をコミュニケーションとして、レガナとりりすは語り合う。 「シムド!」 火車は枝分かれした角を手に持つ隻眼のバイデンの前に立つ。言葉は通じなくても固有名詞ぐらいは伝わるのか。片目のバイデンは叫ぶ火車を見下ろした。 火車は口を歪ませ、片目を閉じてもう片方の瞳にバツの印をつけた。もう一つの瞳もつぶす、そんなジェスチャーだ。火車はそのまま拳に炎を纏わせて、バイデンに向かって走りだす。 シムドは自らの胸を二度叩き、何かを握りつぶすようなジェスチャーを取る。意味合い的には『貴様の心臓を、つぶす』だろうか? 「へっ! 今ぁ機嫌良くねぇぞ……トコトンやるってんならバイデンだろうが歓迎だ……!」 炎の拳がシムドに叩き込まれる。炎熱がバイデンの肌を焼き、拳のような火傷の跡を残す。 お返しとばかりにシムドはシカの角に似た骨で火車の動きを捕らえる。そのまま動きを拘束して拳を振り上げた。 「良いぜぇ? 引っ掛けてろよ? ぜってぇ離れんなよ!」 動きを制限された状態で、火車は炎の拳を振り上げる。押さえられるということは、相手はこちらに意識を向けていると言うこと。そして拳が届く位置に居つづけるという事。火車にとってそれは望むところだった。 「オラァァ!」 押さえつけられながら放つ火の拳。その威勢にシムドは歓喜の表情を浮かべる。フュリエならここで絶望していた。コイツラは違う。闘争の血が燃えたのか、火車に向かって拳を振り下ろす。角で抑えている分、火車のガードは甘くなる。だが、 「押さえつけんならつけ続けろ! そのままぶん殴ってやっから気にすんなよ! なぁ!」 互いに足を止めての殴り合い。炎の拳と赤の拳。闘争心に火がついた二人は、ただ殴りあう。 『――――ッッッ!』 バイデンたちの咆哮が響く。『外』から来た小さな生き物の抵抗に。それは鬨の声。それはリベリスタ達の掛け声と交じり合い、荒野に熱い空気を生み出していく。 ● 天秤の傾きはシムドと火車の戦いから起きた。壮絶な殴り合いの結果、体力の差で火車が燃え尽きる。 「まだだ! 誰も邪魔すんなよ……!」 火車はおのれの運命を燃やして拳を再燃する。追い詰められたときこそ、この男の真価。研ぎ澄まされた意識がシムドの拳を見る。もう何度繰り出されたか覚えていないが、拳の動きは手によるようにわかる。 炎を纏った右手で、シムドの拳を迎撃する。角で動きを止められているのなら殴ってくる拳を払えばいい。口を笑みの形に変える火車。 天秤は傾く。ゲガルグの一撃を受けて、羽音が運命を削られる。倒れそうになる身体を精神力で支え、羽音は破界器を構えて疾駆する。 「あたしの一撃は、重いよ」 戦いに興じるバイデンの一撃は、物理的に重い。 だが、仲間を守るために自らの存在とも言える運命を燃やす羽音の一撃は、その物理の重さを補って余りあるほどに、重い。共に戦う仲間のために、橋頭堡で活動している仲間のために。ここで膝を折るわけにはいかない。 りりすとリンシードの二人の攻防は一進一退だ。回避に優れる二人は敵の攻撃をまともに受けずに攻め続けることができるが、再生能力を持つレガナとギバドに傷を残すには時間がかかる。バイデンの高い体力もあって、長期戦となった。カイの回復もあるが、それ以上の打撃と裂刃が荒野を走る。 「絶好調だ」 「まだまだ、戦えますよ……」 りりすもリンシードも運命を削り、戦場に残る。相対するバイデンもかなり疲労している。あと一押し。その決定打をお互い欠いていた。 『――――ァッ!』 「!? きゃあ!」 ゲガルグのハンマーを受けて、黎子が吹き飛んだ。二度目の復活はなく、彼女はそのまま荒野に伏す。 「おい……後があんだろ、後がよぉ!?」 シムドに角で押さえられている火車が、倒れた黎子に向かって叫ぶ。いろいろ彼女には思うところがあり、後で問い詰めることがあった。しかし目の前のバイデンを無視していくわけにもいかないし、そもそもそんな余裕はない。気を抜けば、自分も倒れかねない。 ゲガルグのハンマーが次の目標を定める。美散に向かって振り下ろそうと――するゲガルグに絡みつく、背骨の鞭。ギバドの武器。 「……魅了、成功……。あのバイデンを、絡めてください」 リンシードガ繰り出す光の剣舞。それに精神をかき乱されたギバドが敵味方の判断を間違え、ゲガルグに鞭を放ったのだ。一瞬後にギバドは我に変えるが、 「ここで決めるよー、アンタレス」 その一瞬を見逃さず、岬がゲガルグに向かって真空刃を放つ。重量ある斧槍が生み出す烈風は、赤い瞳のハルバードの軌跡のままに胸を裂き、ゲガルグを地に伏した。集中砲火の結果である。 「全員揃って帰るのダ!」 「仲間は……守る。だからあなたたちを……ここで倒す」 今までゲガルグを集中放火していたリベリスタたちが、レガナのほうに殺到する。りりすはやれやれだ、と肩をすくめた。あまり邪魔されたくはないが、これも運命か。そんな諦めに似たジェスチャー。もちろん、『愛し合うこと』を止めるつもりはない。 りりすが真正面から相手に迫り、低く潜って起き上がりざまに二刀を振るう。長さの違う二つの刃が高速でレガナを切り裂く。レガナから振るわれた拳をりりすが刀で受け流して衝撃の一部を流しているところに、岬の風の刃が肩口を切り裂いた。 『――――ッ!』 怒りの表情を見せ、叫ぶバイデン。迫る羽音のラディカル・エンジンを頭蓋骨のグローブで受け止め火花を散らしているところに、美散の槍がその脳天に迫る。 「その命、もらった!」 槍は的確にレガナの頭部を貫く。レガナが崩れ落ちるのを待ち、リベリスタ達は次のバイデンに向かう。 「思うトコはあるけど――」 りりすは大地に倒れたレガナだったものを見ながら呟き、今は他のバイデンのほうに向かう。次は―― 「クソッ……タレェ……!」 角に捕われていた火車がバイデンに拳をつきたてる姿で意識を失う。最後に放った拳はシムドの瞳を狙ったもの。シムドは最初に火車が行なった挑発を思い出す。もう片方の目をつぶす。その挑発を忘れずに最後まで拳を放ったのだ。この二の足の存在は。 体中に残る火傷の跡。火車との激闘の結果だ。おそらく自分は迫ってくる槍使いとギーバを押さえている斧使いの風刃には勝てないだろう。 それは背骨の鞭を振るうギバドも感じていた。奇妙な回転する武器使いと、二つの武器を持つ素早い者、そして最初から自分を押さえている小さき者。この三体相手にどれだけ持つか。ギーバを押さえている回復の使い手を今つぶしたところで、結果は変わるまい。 だが。 『――――ォォォォォォォ!』 撤退しない。降参しない。死を恐れない。闘争のみが我等四兄弟の信念。滅するときは四人一緒。 彼らの言葉を解するものがいれば、その言葉が聞こえただろう。だが、それがなくともその意味は通じる。 「同じ闘争(もの)を求める者同士、言葉は不要――!」 美散が荒野を蹴って進む。他のリベリスタも、それに負けじと雄たけびを上げた。 ● 激戦の末―― 美散の槍がシムドを葬り、羽音のチェーンソーがギバドの命脈を絶った。バイデンは最後まで戦い、力尽きた。主をなくし戦意を失ったギーバの掃討は、バイデンたちよりも容易だった。 「これガ……お前達が望むものなのカ?」 カイは倒れ伏したバイデンたちに向かって、問いかける。言葉はない。彼らは全て事切れているからだ。最後まで戦いに興じて倒れていったこと。それが答えだ。 「お疲れ様、だね……」 羽音は倒れている火車と黎子を介抱する。傷は軽くはないが、命に別状はなさそうだ。 「縁があったら、またヤろうや。それがこの世か、あの世かは知らないけどね」 りりすは紫煙を吹かせて、レガナの遺体に告げる。異世界で吸うタバコの味は、当たり前だがボトムチャンネルと同じだった。燃焼しきったとはいえないが、満足いくまで愛し合えた。 「もー。相変わらず寝てばっかりだな、アンタレスはー」 岬は愛用のハルバードに蹴りを入れて、幻想纏いに戻す。今回は珍しく後衛で、ギーバに角でつつかれた以外は大した傷はない。そのせいもあってか、元気よく帰路に着いた。 (結構、私はバイデンに思考が近いのかも……) リンシードは戦いの中、思ったことを反芻する。傷ついて死が近づけば近づくほど、生きていることを実感している。戦いの中でしか、自己を証明できない自分。確かに自分は、戦いを愉しんでいた。 「ひたすら闘争を望むことに悪意はあるのでしょうか……『彼女』ならバイデンをどう思ったでしょうか?」 黎子は呟いて、無駄なことを言ったかと自分を戒めた。『彼女』はここにはいない。仮定の話に意味はない。その仮定は永遠に叶わない。なぜなら―― 「鳳……後で、忘れんなよ?」 火車は首だけを動かして黎子にむかって言葉を届ける。バイデンの脅威は去った。後でゆっくりと問いただそう。 動けない者を抱え、リベリスタ達は荒野を歩く。仲間たちの待つ場所へ―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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