●拾い物 それはただの偶然だった。 時村財閥所有のとある遊園地。その片隅で彼が“ソレ”を拾ったのは。 「こ、こいつはすげぇ……コレさえあれば俺は……!」 見つけなければ良かったのだ。興味を抱かなければ良かったのだ。拾わなければ良かったのだ。 だが彼は見つけてしまった。興味を抱いてしまった。拾って――しまった。 一度抱いた野望の火は衰えず彼の心を燃やし続ける。仮にその果てが己の身を滅ぼすことであろうと、 「俺はやるぞ! 俺はコレを使って……必ず頂点に立ってみせるッ!」 決意は固い。 出来る、出来るのだ。これさえあれば自分は夢を叶える事が出来る。 だから行く。だから止まらない。誰にも邪魔などさせるものか。 俺は“コレ”を使って―― 「遊園地のバイト王に、俺は成る!」 ドンッ!(効果音) ●着ぐるみマリオネット 「……なぁにあれ?」 モニターに映るのは先の遊園地だ。 その中に着ぐるみが数体、せわしなく動いている様子が映っている。中に入っているスタッフが頑張っているのだろう……が、 「アレはアーティファクトだよ。識別名“着ぐるみマリオネット”。効力は複数体の着ぐるみを同時遠隔操作する事が出来、それらに防具アーティファクト並の強度を与える。というもの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう言ってモニターの映像を一時停止すれば、着ぐるみがアップで映し出された。 その場に映るのは五体。黒い(´・ω・`)と白い(´・ω・`)。それから緑の(´・ω・`)と赤の(´・ω・`)にやけにリアルなゴキブリの人型サイズ着ぐるみが居て―― 「って、おいちょっと待て待て流すな――! なんだ最後の! おかしいだろ!」 「気にしちゃダメ。アレもただの着ぐるみだから。何も問題ないから」 「いやアレだけ子供避けてんじゃねーか! なんか泣いてる子いるぞ! せめてデフォルメ化しろよ! なんでいらん方向にパワーアップさせてんだよ!」 五体の中の一体、ゴキの着ぐるみだけ周りに人がいない。というか避けられている。誰だこんな物作ったのは! 心なしかゴキの着ぐるみもなんだか元気が無い様に見える! 「……とにかく、あの中の一つがアーティファクトだから回収か破壊して欲しいの。それも、なるべく早くに」 「ん、何か問題でもあるのか?」 「アレはね。遠隔操作する数が多ければ多いほどその負荷が増えて行くの。中に着こんでいる人が超体育会系だから五体も操れているんだけど……そんなのいつまでも保つ訳ない。ぶっちゃけその内過労死レベル」 つまり無理やりにでも回収しろと言うことか。 「そうだけど、あの内のどれに入っているかは分かんないし、着こんでいる訳だからそう簡単には奪えないよ。後、遊園地内での活動に成るから……子供の夢を壊す様な行為も簡単には駄目だからね?」 着ぐるみの中には誰もいないんです。夢が詰まっているんです! 故に一体どうやって着ぐるみを奪い取るか――考える必要があるだろう。 「……ま、ドリーンの着ぐるみぐらいなら支給してあげるよ? 使うかどうかは自由だけど、頑張ってね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月15日(日)00:04 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ゴキ「解せぬ」 晴れていた。 実に快晴である。本格的に夏の季節へと移っている証だろう。 それはここ――時村ランドも例外では無くて、 「……ねぇスタッフさん。あの着ぐるみがあるのってここだけなの?」 文珠四郎 寿々貴(BNE003936)が指差す先には(´・ω・`)の着ぐるみだ。 見える限りに情報にあった四体が居る。最初から存在していた物と、“拾い物”とに何かしら区別が付けば幸いと、スタッフに聞いてみたのだが。 「ん? ああ、いや。あのタイプはこの遊園地のあちこちにいますよ。まぁこの周辺にいるのは今見えてる連中だけですが……それが何か?」 「そう、なんだ……まぁ。それは良いとしてだね……」 視線を移す。 目標の着ぐるみは五体だ。(´・ω・`)四体と、そして、 「――ねぇ。あのゴキなんなの? すずきさん経営者なら出禁ものですよ?」 「い、いやあれはイタズラ心というか、『構わん、やれッ!』と上からGOサインが出たと言うか……」 リアルゴキ着ぐるみ一体ッ。 他の(´・ω・`)着ぐるみに対してはまだ子供達が群がっているのに、ゴキにだけはいない。むしろ積極的に逃げられており、風船渡そうものなら泣かれる始末である。ちょっと不憫。 「二の腕ぷにぷに、ぷにぷに! うっわ、なんですかこの外見と違う柔らかな感触――マーベラス!」 そのゴキに突進するは『もそもそ』荒苦那・まお(BNE003202)だ。背後より襲いかかり、節足付近の部位を全力で揉んでいる。そのリアル加減からは想像できないほどに柔らかなもふもふの様で、まおは存分に堪能しているようだ。 ただ、ちょっとしたミスがあったのだろう。彼女は彼女のビーストハーフとしての特徴を隠すための幻視が準備不足であった。仕方なし、服の襟で口元を覆い隠せばなんとか誤魔化しきれるか。 「あ、ははは……でも流石に間近で見ると結構威圧感があるねコレ……」 そして『本屋』六・七(BNE003009)もまたゴキの付近に。 まおの希望もあって件のリアルゴキぐるみにまずは集中してみた訳だが、凄まじい威圧感だ。近付けば近付くほどに体表の光沢が強さを増し、まおのぷにぷにに抵抗する動きを見せればぬるぬる動く。背筋に悪寒が走らんばかりの勢いである。 ともあれ、だ。近くで様子を窺ってみたものの――どうやらこの中に誠也はいないらしい。声を発する事も無く、動きもなんだかぎこちなく感じる。恐らくこれがAFと言うことは無いだろう。 「そうなら、とりあえず確保しておくべきかな。誠也くんの負担を減らすことにも繋がるし……再起不能と言うか、少なくとも動けないようにすれば――」 その時だ。 七がどうやって捕縛するか思考した、まさにその横から、 「煌く拳は勝利の証ッ! “必”ず“殺”すと書いて“必殺”! ジャスティスクラーッシュ!!」 ――『三高平高等部の爆弾娘』蓮見 渚(BNE003890)がリアルゴキに先制攻撃を仕掛けた。 「こんなリアルすぎるG……正義じゃない! 子供を泣かしている時点で悪の手先確定! さぁ倒れろ! 私のアイスの為に――!」 何やら最後に俗っぽい理由が混ざったが、ゴキは危険だ。子供が泣いているから。 故に、腹の部分を抉りこませるように拳を叩き込めばゴキがくの字に折れ曲がる。物理的な攻撃は得手ではない渚ではあるが、全力の一撃だ。殴る、殴る、まだ殴る。君がッ 泣くまで 殴るのを止めない! 「園内の平和はアリアが守るのだ! 往くぞ、平和を(多分)乱しているゴキめ! 成敗してくれる!」 「さおりんの遊園地は……あたしが、あたしが守るのです!」 そしてさらに追随するかのように『おてんばクラウン』アリア・オブ・バッテンベルグ(BNE003918)と『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が参戦した。双方ともにリアルGは苦手であるが、そう言って逃げる訳にもいかない。 なるべく自然な風に、ショーが始まったフリをして片付ける事にした。 「覚悟するのですッ! マ・ジ・カ・ル・ぷりてぃアタックなので――す!」 ……は、恥ずかしいのです! そあらは顔に熱が籠るのを感じるが、これはさおりんの前に居る時の熱とは違うモノだ。どうしよう、助けてさおりん。(´・ω・`) 「わー! どりーんだ!」 「ぷりてぃどりーんだ! すっげぇー!」 「おねーちゃん、風船頂戴ー!」 「こ、こら待つのです子供達! あたしは“ぷりてぃどりーん”とかでは無くてですね、あっ、こら! ふ、風船も持ってないのです! 他の着ぐるみ達の所に行って欲しいのです――! ていうかどっから湧いて出てきたのですか――!」 そんな事を思っていたら何時の間にやら子供達に取り囲まれていた。 目を輝かせる子供達。だが、ゴキからは完全に注意を逸らせた様で、今の内とばかりにゴキを目に見えぬ所へとリベリスタ達は連行する。 「うう……にんぎょうってわかっててもだめなの~ にがてなの~ ちかよりたくないの……」 渚らの集中攻撃によってやけにぐったりしているリアルゴキを、どりーん着ぐるみを着たテテロ ミミルノ(BNE003881)が嫌そうにどこぞへと運びこむ。 ゴキに視線は合わせない様に、ゆっくりと引き摺って運搬しながら――まずは一体排除完了。 ●着ぐるみ襲撃ッ さて、ここからは本格的に二つの班に分かれる事と成る。 ゴキは見つけやすかった為に両の班が遭遇したが、誠也の体力問題がある。あまり時間を掛け過ぎぬ為に班をリベリスタ達は分けたのだ。 内訳は片方がまお、ミミルノ、七、渚の四人。 そしてもう片方がそあら、寿々貴、アリアに、 「やれやれ。リアルゴキブリが違ったとは……構いませんが、面倒ですねぇ」 『黒い方』霧里 くろは(BNE003668)を加えた四人だった。 日差しの強さから、なるべく影のある所を移動中だ。暑さに気だるさを感じるが表情には出さぬようにして。 「皆! 皆! あっちに(´・ω・`)の着ぐるみが居たのだ! 風船貰ったぞ!」 声はアリア。赤い色の、ヘリウムガスによって軽く浮いている風船を片手に、着ぐるみを一体見つけた様だ。が、 「ん――アレは違うっぽいです。なんていうか、そんな気がします。 多分、操られている着ぐるみだとは思うのですが……」 そあらが残念そうに言葉を紡ぐ。 超直観によって増大させた観察眼で僅かな動きの異変に気付いたのだ。中に人間が居るか居ないかではやはり微妙に差異があるようで。 「うーん、なら仕方ないね……じゃあアレはどうしておこうか。ゴキみたいに倒しておく?」 「縛り上げておきましょうか! 大丈夫です、直ぐに終わらせてくるのです!」 「ええ。物影にでも引っ張り込んでこう、サクッ、とやっちゃいましょう。大丈夫大丈夫――直ぐ終わります」 寿々貴の問いにそあらとくろはが着ぐるみをロックオン。なんだか“終わらせる”の意味合いが若干違う気がするが、何も問題は無い。多分。 残り、三体。 「暑い……日本は暑いよママ……ノルウェーが恋しいよ……」 まるで激戦を闘い抜いた後の様に疲れている渚。 無理も無い。ノルウェーと日本の平均気温はおおよそ10度近く違う。慣れぬ気候が故の事態だろう。とは言え、 「でもアイス……アイスの為に闘うよ……アイスの為に頑張るよ!」 アイスの為に彼女は奮起する。 寿々貴と約束していたのだ、無事に終わればその後にアイスを買ってもらえると! 暑いこの時期に冷たい氷は正に至福。渚はテンションが燃え上がっていた。熱い! 「あくの はびこる よのなかに、どりーんず、さんじょうっ!」 一方で着ぐるみ着こんだテテロは人形が減っている異変を子供達に気取られない様に、必死にショーの役を演じていた。さすれば視線が一気にどりーんテテロへと集中して、 「……あのぅ、すみません。まおは記念写真を撮って欲しいのですが……宜しいですか?」 その隙にまおが目標の着ぐるみへと近付いた。 記念写真。それを撮って欲しい一般人のフリをして―― 「あ、涼しい所で撮って欲しいので、あっちに行きましょう。そうしましょう!」 建物の影、人通りの少ない死角地点へと着ぐるみを誘いこんだのだ。 中身に人が入っているかいないかは確認できていないが、どちらにしろ問題は無い。これもまた再起不能へと追い込むだけだ。 「うーん。これも違うかー誠也君のを見つける事が出来ないなんて運が悪いね……ま、でも」 七が、まおの気糸に縛り付けられ暴れている着ぐるみから視線を動かせば、いる。 残存の二体が、だ。 そのどちらかに誠也がいるのは間違いない。 さぁ――説得の時間である。 ●説得 ……おかしい。なんだかおかしいぞ? 誠也は自身の操る人形へと掛る異変に気付いていた。 先程から段々と負担が減り始めている。いや、正確には人形を動かせなくなっているからだが、これは一体どういう事か。この人形の能力が突然劣化した訳では無さそうだが。 「何か起こってるな……」 赤い(´・ω・`)の着ぐるみの中に居ながら、さてどうしたものかと考え込む。 他の着ぐるみの様子を見に行くべきだろうか。風船配りながら移動すれば持ち場を離れても平気の筈だが、何やら嫌な予感もする。どう動くのが最善だろうか―― 「こんにちは誠也。私はアリアと言うのだ――ちょっとお話しても大丈夫かな?」 「!? な、なんだお前――って、何その圧倒的な風船の量は……?」 「ち、違うのだ! これは、その、近寄ったらくれるから……う、うっかり沢山貰ってしまっただけなのだ!」 思考する最中に背後から大量の風船を持ったアリアが誠也を発見した。 これは(´・ω・`)を調べている最中に無関係な着ぐるみから風船を手渡される限り受け取り続けたアリアの習性……もとい性格から起こった事だった。その風船の数、およそ十前後。うっかりすぎである! 「はいはーい。この(´・ω・`)ちゃん、ちょっと体調が悪いみたいだから、 新しい(´・ω・`)ちゃん連れてくるです、ごめんね」 「えー! おねえちゃんは(´・ω・`)じゃないのー!?」 「だ、だから違うと何度も言っているのです――!」 「いや、というかその前にお前ら俺を一体どこへ連れて行くつもりで――」 問 答 無 用 ! そあらが子供達の気を引いた内に、近場の裏通りへと誠也を強引に連れ込んで行く。 「な、何をするだ――! これ以上俺のバイト王になる夢を邪魔するのなら客とは言え容赦は、」 「……おにーさん、そのやり方じゃ王様になんてなれないよ」 誠也の抗議に口を挟むは寿々貴。 彼女は言う。誠也のやり方では無謀なだけだと。 「着ぐるみをさ、いくつも勝手に動かしてるよね? それじゃあ無駄だよ。一人の雇用契約じゃ時給なんてそう変わらない。無理をした分だけキミがボロボロになってそれでお終いだよ」 それに、さ。と言葉を続ければ、 「着ぐるみの中に人は居ない事に成ってるけれど―― 中に夢や想いを詰めているのはやっぱり人間なんだよ。そしてそれを配っているのもね。 操ってるだけの人形は……空っぽさ。何もないんだ。夢も、思いも、何もかもね」 「そうだよ。それに、沢山の着ぐるみを動かしたからって、お給料増えるの?」 寿々貴の言に七が続けば現実的な問題――給与について触れる。 重要だ。そも誠也は“金を稼げる”と思っているのだから。 その点をなんとか説き伏せる事が出来れば、説得の道は開ける筈である。 「ん、増える可能性はあるんじゃないか? 俺が五体分動かせばその分人件費が浮く。ある程度は給料が増える可能性はあるさ!」 「でもそれ、そういう風に契約してるの?! いっぱい動かしたらその分増える、みたいな。 してないでしょ?! 普通はね、一人で動かせる着ぐるみは一体だけだもん……! 死んじゃったら……稼いだお金も何もかも、無駄になっちゃうんだよ!? 分かってる?!」 「……むっ、それは……」 誠也が渚の反論に口ごもる。 契約の関係はしていないのだろう。そもそも複数の着ぐるみを動かせる――などとどうやって説明すると言うのだ。一般に神秘が秘匿されている以上、AFの能力を説明しても信用してはもらえない。 そう言った観点からすると、渚の言葉は誠也の主張の弱い所を的確に突いていたのだ。 「誠也――その魔法の着ぐるみをアリア達は回収しに来たのだ。だから、渡して欲しい。 お金が大切なのも分かるけれど、無理して使い続けた結末は悲惨だぞ。 それに……ズルはきっとあとあと良くない事が起こると相場が決まっているのだ」 「しごとにもえるいっしょうけんめいさはすごくすてきなのっ でも、これはもえればもえるほど、からだにふたんできけん、なのっ」 アリアが己らの目的を話せば、テテロがさらに畳みかける。 危険なのだ。今はともあれ、このまま働き続ければ間違いなく命に関わるのだと。 「時間で雇われた人は一人で何倍頑張ってもお給料は変わらないと思うです。 こんな暑い時期に五倍近くも無理をして、結局他の人と同じ給料は空しいと思うですよ。 とりあえず休憩して、塩分と冷たい飲み物でも飲んで下さいです。 こんな暑い中頑張っても脱水症状を起こしたら大変なのです」 「ああ君は、君のその類稀なる体力や気力があれば、 そんな着ぐるみに頼らなくても自力で頂点まで上り詰めることが出来る筈だよ。 変な道具に負けないで、頑張って自分の力でバイト王になるのだ」 そして、そあらと七も無理はするなと続けば、誠也の心が揺れる。 無茶は押し通すつもりでこの着ぐるみを操ってきた。だが、確かに給与の面に関しても、死んでしまっては意味が消失する事も確かだ。が、どうするべきなのか。こんな便利な着ぐるみを手に入れる機会は、恐らく生涯でもう二度と起こり得ないだろう。果たして手放す事が最善なのか? 他に、何か道は…… 「おにーさん。さっき、すずきさんは言ったよね? 操っているだけの着ぐるみは空っぽなんだって。そんな空っぽのモノを操ってさ……」 一息。 「キミは、皆が認めてくれるような王様に――なれると思うのかい?」 寿々貴が言った。揺れ動く誠也の心に届く様に。 さすれば彼は答えを出した。迷いながらも、リベリスタらの説得を聞いて、彼は―― 「…………うう、ん……よし、分かった。仕方ない、そこまで言うならこの着ぐるみは諦めよう」 ――己が手に入れた着ぐるみを、諦めたのだ。 リベリスタ達の一部から安堵の息が吐き出される。もしここで誠也が拒否し、抵抗していたら“強引”にでも着ぐるみを奪わねばならぬ事態に発展していただろうから。 「まぁ一か八かで逃げてみても悪くないが……ちょいと人形の数がなー無理だわ」 「賢明ですね。逃げていたらまおの糸で縛って御用していた所ですよ」 ここに至るまでに人形を再起不能状態にしていたのは好手だった。 彼が逃げる事の出来る“手段”。それを潰した事により諦めさせる一因を担わせたのだ。交渉は何も目に見える範囲だけで行われる物では無い、と言うことだろう。 「終、わった……終わった? 終わったね!? と言うことはつまりアレだね!? アイスだね!?」 「アイスなのか!? アイス、食べれるのか!?」 依頼の達成を確信した渚とアリアが冷たいアイスに思いを馳せる。 さすればその約束をしていた寿々貴が笑みを携えながら言葉を紡いで、 「あーはいはい。欲しい人はすずきさん奢るから、大丈夫だよ。 あ、でも量は程ほどにね。すずきさんの財布が夏バテしちゃうから多くは駄目だよ? ……駄目だよ? 駄目だからね? フリじゃないからね? やんちゃしちゃ駄目だよ!?」 嫌な予感全開であるが――さて実際に寿々貴の財布がどうなったのかは彼女のみぞが知る事だろう。 「それじゃ、あーちふぁくとはもってかえるの。せいやっちもおしごと、これからもがんばって、なの~。でもちゃんときゅーけいもしないとだめなのっ」 「AFはあたしも責任を持って運ぶのです。 あたしはさおりんの秘書だから、これくらい当たり前なのです!」 誠也から人形を回収したテテロと(`・ω・´)状態になって運ぶそあら。 帰ったらさおりんは褒めてくれるだろうかとそあらは想像しながら、彼女達はアークへの帰還を始める。 夏の日差しが降り注ぐ――時村ランドでの話であった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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