●えまーじぇんしーその1 「なんてことだ、これは……」 「危険です、真白室長、下がって下さい!」 「これは……これはおそろしいえりゅーしょんだあー、うわー」 「ああ、そんな真白室長が! うわー」 ●えまーじぇんしーその2 「えっ、堀田さんも山本さんも帰っちゃったんですかっ!? で、でもまだお昼じゃ……な、なんかそんな気分になったってそんなっ!」 「じゃあこれからどうするんで、えっ、あのっ、藤井さんまでー!?」 ●えまーじぇんしーその3 「……アークが、ピンチですっ!」 突然告げられたその言葉に、方々で起きている騒ぎを目の当たりにしたリベリスタ達が 何やら困惑した様な表情を浮かべる――が、それもその筈。 彼らが呼び出されたブリーフィングルームに居たのはフォーチュナではなく、 『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)だった。此処まではまだ良い。偶に有る。 だが、そのエフィカが指し示す今回の任務の資料。ぺらっとした紙に印刷されたその内容は余りにその…… ……良く言えば、異質。悪く言えば―― 「E・フォース、フェーズ1が三高平センタービル近郊。アーク本部付近に出現しました。 このE・フォースは非常に弱く基本的に無害ですが、現在のアークに大打撃を与える能力を持っています」 拳を握って力説するエフィカ。でもその。これ…… 「皆さんにはこのEフォースを討伐して頂きたいんですっ! 出来れば今日中に! まだ業務が回復出来る内にっ! どうか御願いします! このE・フォース識別名――」 ●識別名「今日はもう疲れたから家帰って寝るわ」 気付けばそれは、ふよふよとアーク本部付近を漂っていた。 何故それが生み出されたのかは分からない。決して、誰にも分からない。 けれどではどうすれば良いのか、と言う事をそれは生まれながらにして理解していた。 だからそれは、漂いながらもある一方向へ進路を取ったのだ。 主に心身ともに疲れている人の多そうな――そう。即ち、アーク本部へと。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:弓月 蒼 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月06日(金)23:16 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●えりゅーしょんのきょうい 『あるかも知れなかった可能性』エルヴィン・シュレディンガー(BNE003922)が射し込む陽光に目を醒ます。 今日はアークに所属しての初仕事だ。十分な下準備をし、英気を養い、きちんと睡眠をとる。 流石は趣味:昼寝。目覚めも快調、正に意気揚々と言った所である。 時節は正午を回った頃か、大きく伸びをするエルヴィン。さあエリューションの討伐へ赴こう。 戦いの経験が無い訳では無い物の、だからと言ってリベリスタの戦いは勝手が違う。 決して油断出来る物ではない。準備を整えると彼は厳かに外への一歩を踏み出した。 勿論、ブリーフィングルームから家へ帰宅しゆっくり寝た後の話である。 ところで、ちょっとした余談では有るが我らが『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)は、 確か、任務説明の際こんな事を言っていなかっただろうか。 『皆さんにはこのEフォースを討伐して頂きたいんですっ! 出来れば今日中に!』 「……」 そう。“今日中に”である。 突発的に発生した任務であるからして勿論説明を聞いて家へ帰る暇など有ろう筈も無い。 では、何故にエルヴィンは家に居るのか。そして清々しく午睡から目覚めてしまったのか。 言うまでも無い。これこそが今回出現したE・フォース。通称「今家」の毒牙に掛かった者の末路である。 「しまった! 俺とした事が家へ帰って寝てしまうとは――!」 愕然とするエルヴィンがアークへ帰還するまで数時間。物語は少しだけ巻き戻る。 ●えっちなのはいけないとおもいます アーク本部から出て徒歩で少々。三高平センタービルのスタッフ専用玄関。 激戦は、アークのお膝元と言って良いそんな身近で行われていた。 「まさか早々に1人脱落する何て……うわーなんておそろしいエリューションなんだー」 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)は頑張らない。 はたして何時になったら本気を出すのかと言う問い掛けがこれ程虚しくなる人物も居ないだろう。 ワンピース型の水着に身を包み、ダブルシールドを構え貝になっている小梢からは一切やる気が感じられない。 何故水着なのか。そも、何故そこまでやる気が無いのにリベリスタ何てやっているのか。 だが最初から無い物は無くせない。びば無気力。寝て起きて寝る、それが小梢の生き様である。 でもごめんね。やる気が無いと当たり易くなるだけでやる気が無いから効果が無い訳じゃないんだ。 「あー、カレー食べたいなー。 そうだ家へ帰ろう」 接触したダブルシールドから伝わる睡魔の誘い。 完全な護りを為した小梢はこれに対し僅かなダメージを反射してのけるも、 その誘惑はやる気の無い者にとっては死毒にも等しい。好物の名を呼びながらふらふら立ち去る脱落者2人目。 「って、脱落早――!!」 叫ぶツァイン・ウォーレス(BNE001520)仕方無い。不可抗力である。 せめて誰か止められれば良かったが、そもそもこの場にはツァイン。小梢を含め4人しかメンバーが居ない。 本来であれば静止を掛けるだろうエフィカすらが不在である。何故か。 理由は容易いが理解は難しい。着替え中だからである。 「というわけで、エフィカたんのために白スク水に白ニーソを用意しました」 スタッフ用玄関へ続く廊下。『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)が清々しくもきっぱりと言い切る。 うんうん、と大いに頷く『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)。 困った様に笑う『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)へと順繰りに視線を巡らせ、沈黙。 「いえあの、ちょ、ちょっと待って下さいっ」 掌を挙げて、薄く緑がかった翼がへにょりと落ちる。 眼前に展開されている光景の意味が全く分からない。と言った体の受付天使。けれど現実は非常である。 「依頼成功のため着替えてきてください」 「無理ですっ!」 畳み掛ける様な竜一の言に、流石に抗弁せざるを得ないエフィカである。 「えっ、何で!?」 「何がですかっ!?」 信じられない答えを聞いたかの様に愕然とする夏栖斗。でも愕然としているのはむしろエフィカである。 「や、スク水めっちゃ似あうよ? いうなればスク水着るために生まれてきたと言っても過言じゃないって。 きっとスク水はエフィカのためにデザインされたんだろうな!」 「無いですから! 無いですから! 無いですからっ!」 大事な事だから3回言いました。ぶんぶん首を振りながら明らかに一歩引くエフィカである。 何で此処にこんなに全力投球なの、こわい。 「大丈夫、恥ずかしがる事はありません」 「恥ずかしいに決まってるじゃないですかーっ!?」 無茶振りも此処に極まれり。何でこうなった。 「む、無理ですよ!? 何で水着なんですかっ!? それに私なんかが水着になったって――」 「それだけでいい」 「えっ」 「それだけで、俺はここに立つ。立っていられる。だから、さあ!」 「えー……あの、何と言いますかその……あっ、紫月さんだってそんなの嫌ですよねっ! ねっ!」 思わず押し切られそうになるエフィカ、起死回生を託したのはこの場唯一の女性である紫月。 けれど残念ながら、真に残念ながら。彼女は業務に誠実なタイプだったのでした。 「どうしてこうなったのでしょう……とは思うのですが、仕事は、仕事なので……」 「あー……うー……うぅ……」 泣きそうになりながら見つめてみても、この流れは既に確定事項である。 「……えっと、私も着ますので……」 「っ……紫月さんが、そう仰るなら……」 微妙に慰めにならない紫月に、肩を落としながら白のスクール水着他一式を受け取るエフィカ。 「YES!!」 「よおしやる気出て来た! 今日は水着パーティだいやっほう!」 ばんざーい、ばんざーい、と万歳三唱し合う竜一と夏栖斗。当人らは既にふんどし&ボクサーパンツ。 でももしかして、これセクハラなんじゃないでしょうか? ●ジブンヲトキハナテ! さて、そうこうしている間にもE・フォースとの戦いは粛々と続いている。 ごっちゃと用意された栄養ドリンクや携帯食の山を背に、舞い踊るはその名の如し。 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)である。 「皆の分の栄養補給まで考えるなんてああん、さすがわたし! 女子力高いわー! いいのよ? 惚れてもいいのよ? いいいやっふぅぅぅっ!!」 高い。テンションが、ボルテージがMAXである。これには流石の『今家』もたじたじだ。 まあ、表情も何も綿雲みたいな物質に感情表現など有る筈も無いが、 どや顔で攻撃を避け続ける舞姫は丸きり帰る素振りを見せない。意外と寂しがりな子である。 「正直言えば、家帰ってお風呂にゆーっくり浸かってから缶チューハイでのんびりしたいんですが……」 生活に草臥れたOLの様な事を口にしながら、『紅瞼明珠』銀咲 嶺(BNE002104)が両手で杖を振り被る。 白ブラウス、タイトなミニスカと言う一見秘書風な格好と相俟って、絵面的には相当アレである。 「でも、これを倒すのにかかった時間の分、通常の残業代の10倍出すって室長が……ふ、ふふふ」 「ファンのみんな……今日はMAI†HIMEのコンサートに集まってくれてありがとう! わたし、歌います! 曲は、『渚のラブ☆ガールズ』!」 世知辛く笑みながら綿雲を撲殺する白翼の秘書。 テンション↑↑で携帯ミュージックプレイヤーから曲を流し歌い始めた舞姫とセットにして、 『これは酷い』とタイトルを付けたくなるシュールさだ。 「帰って来たら貴重な水着女子が1人減ってる……絶望した……」 「待て、帰ろうとするんじゃない! まだ2人増えるんだろう、プラス1じゃないか!」 「どれだけ相手が強大であろうと、立ち向かうのが俺達アークのリベリスタだ!」 さらっと失われた竜一のやる気を取り戻すツァインの的確なアドバイス。そして―― 「今日の僕はやるきまんまんだ! 24時間水着姿なら頑張れる! 寝るもんか! 絶対に寝るもんか!」 夏栖斗の燃え盛る(水着に対する)情熱が怠惰の極地とも言える『今家』を大きく退かせる。 叩き込まれる攻撃は込められた熱意の分苛烈さを増すが、決して硬くも無ければ頑丈でもない綿雲は けれど幾ら殴っても切りつけてもまるで痛痒の素振りすら見せない。 かくして小間。 「よっ、姉さん方! アークのオアシス! 清涼なる女神!」 「……あの……」 ツァインの声援に割り込んで、玄関扉の向こうからエフィカが顔を出した頃には既に陽が傾きかかっていた。 勿論、この間戦闘区画に近寄らない様掲示をしたり一般従業員を遠ざけたりと諸々雑務をしていた物の…… 「予想以上に恥ずかしいので……」 「やっぱり普通の格好じゃ駄目でしょうか……!」 エフィカと紫月のある意味当然の意見は、けれど何故かこの場ではマイノリティなのである。 「迷いも揺るぎも微塵もない! 俺が俺であるために、俺は戦う!」 「行ける! 今なら僕はどんな障害だって突破出来る! 女子水着とか超テンション上がる!」 やる気が当社比2割程向上した2人はとりあえず置いておいて、 戦う前からやる気が低下し続けるエフィカ。目のハイライトは既にどんより濁っている。 「えーと……言い訳はしない、とにかくゴメンよエフィカ……」 ツァインのフォローにほろりと目元を拭うも、白スク水に白ニーソではもう何か色々とどうしようもない。 最後の抵抗としてパーカー等を羽織っている物の、概ね無駄だ。 「や、俺も男だからしてやっぱり嬉しい訳で……その……とっても似合ってる」 「それは、でも……謝るなら、出来れば止めて欲しかったです……」 その辺は難しい乙女心。褒められれば余計恥ずかしさが増すだけである。 扉と一体化しているエフィカを、それでも何とか宥めて紫月が背を押す。 「でもこれで人員確保は出来ましたし、大丈夫、勝てますよ。エフィカさんは安心して下さいね」 雄叫びを上げながら今家に攻撃を仕掛ける竜一と夏栖斗、 そして自らの欲望の為に戦い続ける舞姫と嶺の様子を見れば、確かにこれは帰りそうも無い。 「でも何か、既にとても大切だった物を失くした様な気もがします……」 厳しい現代社会。安心の代価は、言葉ほど安くは無いのである。 更に時間経過 「漸く戻って来れたか……だが、おかしい。なんだこの空気は……!」 戻って来たエルヴィンが目の当たりにした物は、精一杯オブラートに包んだ形容をしたとして。 阿鼻叫喚の地獄絵図である。 「どんなに辛くても、わたし挫けない……だって、アイドルだもの! ファンのため、永遠にでも歌い続けてみせるわ!!」 アイドルと言う職業は実は物凄くバイタリティの要る仕事だそうです。 そんな注釈を置きたくなるほどにアイドルテンションを続ける舞姫の威容もさる事ながら。 「絡み付く様な年下の男の子からの視線って心地いいですよね、きゃーボタンとか飛んじゃうかもー」 「「「な、なんだってー!!??」」」 嶺のお茶目に今家そっちのけでガン見な男性陣。それを微妙に冷めた眼で見つめるエフィカと紫月。 これは想定し得るエリューションとの死闘。のイメージとは明らかに合致しない。 (いや、何よりもおかしいのはこの敵だ) そしてその隙を突くでもなく攻撃するでもなくふよふよ浮かび続ける白い綿雲。 これの何処が世界の危機なのだろう。首をかしげ深く深く考えるエルヴィン。 「そうか、エルヴィンは初依頼だったな……」 何かを悟った様な微笑で、そんな後輩を見つめるツァイン。彼にもそんな清い時代が有りました。 「獣欲、業を制すとは言え、何てタフさだ。パトスとエロスで誤魔化すにも限界が有るな」 「……仕方無い、皆、グラビアのポーズだ!」 「えっ?」 特定依頼専用の人がまた何か良く分からない事を言い始めましたよ? 「こう、おっぱいを、腕で挟んで寄せてあげる感じで」 「感じで、じゃないですよー!?」 エフィカでなくとも弓を射る手も震えようと言う物。 何よりエフィカには嶺と違って寄せて上げる物がほとんど無い。きょういの格差社会である。 「違う! 誤解だ! これは作戦なんだ! いやらしい意図なんてひとつもない!」 ダウト。 「良く見ておけ……これがアークの依頼というものだぁー!」 それらを一纏めにして言い切るツァイン。真実は時に残酷である。 「そうか、これがアーク……正に測り知れんと言う訳か」 違います。 ●本日、自主休暇につき ことことと鳴る鍋の蓋の音で眼を醒ます。思わずうとうとしてしまった。 うすぼんやりとした頭で眼鏡を着け直す。 コンロの上で煮込まれているのはカレーである。とは言え未だルーは入っていない。 肉とジャガイモは野菜を固形スープで煮込んでから。でないと底が焦げてしまう。 たっぷりと入れた水はうとうとしていた間に随分と逃げてしまっている。 危ない危ない。もう少しで台無しになってしまう所だった。 「今日はビーフカレーにしよう」 解凍した牛肉を軽く炙り、鍋の中へ投下する。ルーをゆっくりと溶かし、一煮立ち。 其処にジャガイモを加えればシンプルながら味わい深いビーフカレーの出来上がりだ。 「いただきます」 今日も平穏無事に過ごせた事を感謝し、大好きなカレーを満足気に頬張る。 小梢はそれで十分幸せだった。それ以上を求めたりはしないし、何事も無いのが一番だ。 何かが有れば動かなくてはいけなくなるし、頑張るのは疲れるし、だるいし、しんどいのだ。 「……そう言えば、何か忘れているような」 もぐもぐとカレーを咀嚼し、ふと気付く。何か。しなくてはならない事が有ったような……? 「そうだ、福神漬け」 はたと思い出し、いそいそと福神漬けをカレーに添え改めて食事に没頭する。 春津見小梢は頑張らない。けれど彼女は彼女なりの幸福を追求しているのである。 ――なお、この後ぐっすり睡眠をとった彼女が寝覚めすっきり全てを思い出し、 おっとり調子で戦線に復帰するのは、大体全てが終わった頃になる。 「皆、ありがとう! わたし、普通の女の子に戻ります!」 「いやまだ終わってないっ! 終わってないって!! って言うかまた僕しか攻撃してなくない!?」 さて、しかし如何なる戦いも一般的に言う所の長期戦を超え、超長期戦と言う域も跳び越し、 超々長期戦と言う次元に突入するとだれて来る物である。何やら既に満喫しきった舞姫然り。 「なんて耐久力なんだ……長い、長過ぎる…… 目も霞んできた……腕も上がらなくなってきた……もう……ゴールしても、良いよな……」 思わずふらふら帰路に着きそうになるツァイン然り。 「竜×夏か夏×竜か、そこが問題ですね。あ。竜×夏×ツって言うのもそれはそれで……うふふ」 「こんな腐り系女子の居る場所に居られるか! 俺は家に帰って撮れたてお宝映像を編集するぞ!」 「そうはさせるか――っ!!」 伊達眼鏡にカメラを仕込んでいた事を勢い余ってカミングアウトしてしまった竜一と、 殺到した男共の醜い足の引っ張り合いを眺めては爽やかに妄想に浸る嶺然り。 「……紫月さん、何だか私段々心が折れてきました……」 「も、もう少しですからっ、これもお仕事、頑張りましょう!」 正直大分挫けかかっているエフィカ然り。 恐るべきは変化の殆ど無い平坦な戦い。其処から来る作業感と徒労感である。 ふよふよと浮かぶ綿雲は、けれど度重なる攻撃に大分怯んで来ている。 様な、気が、する。見た目上の変化は一切無い為雰囲気的な物だが。何と無く。多分。 「恐ろしい敵だ……緊張感と言うか、やる気と言うか、そういったものが一切感じられない……!」 戦慄するエルヴィン。別に何時もこうでは無いんです。 ……とは言え、いずれ終わりはやって来る。 「あれ、何か凹んでませんか?」 それに気付いたのは理性的に戦況を観ていた紫月。指差した場所は確かにへこんで戻らない。 「と言うか。縮んでる気がしますね」 嶺が首を傾げ、紫月が改めて頷く。試しに鴉を放ってみると、物の見事に穴が空く。 「これってもしかして……」 力尽きる寸前のエフィカの声に力が戻る。経過する事8時間。 燦々と射していた太陽はすっかり暮れ、月が登ったアーク本部スタッフ用玄関前。 その”限界”は唐突にやって来た。 「えーい、へびーすまーっしゅ」 小梢の軽くて重い一撃が、嶺のフルスイングが、理不尽に頑強だった綿雲を削り取る。 「蝶の様に舞い、蜂の様に刺す! くっはー、わたしってばマジエンジェル!」 そんな台詞と共に放たれた、舞姫による閃光の連撃がこの日の戦いのフィナーレである。 ふわふわ漂っていた雲は刺突に射抜かれ、ぼふりと消える。まるで何も起きていなかったかの様に。 あっけない程に、何気ない程に。 「恐ろしい敵だった……しかし三高平に仕事のある限り、第二第三の今家が……」 抜け目無く纏めにかかるツァイン。かくしてアークはリベリスタ達の手によって救われた、 けれどその裏側には犠牲となった者達が居る事を決して忘れてはならない。 例えばそう。白スク水のマスコットとか、白ニーソの受付の天使とか。 「……今日はもう疲れたので、家に帰って寝たいです」 そう呟くエフィカの背にははっきりと哀愁の色が浮かんでいたという。 めでたくもあり、めでたくもなし。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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