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<Lost World>Wing of Sagittarius

●Welcome to Your Summoner.
 不完全なる世界の中に立つ世界樹は荒涼たる風を孕み、三ツ矢の光を木の葉の影として散乱させる。
 散乱する光は慈悲を讃えし大地を照らし、生命の存在を許さぬ乾きの荒野を撃ち貫く。
 語られざる戦場の不文律はいかなる世界においても変わることなき鋼の掟であるらしい。
 中央に立つ世界樹エクスィスに庇護されし、不完全世界ラ・ル・カーナ。
 その生と死の不完全なる天秤の中に立つ勇士の背には、定めを知らせし万華の鏡の庇護もない。
 ただ、そこにあるのは読むことを決して許されぬ運命の書。
 そして、酷薄にして過たぬ死と生の輪舞曲があるだけだ。
 もし、此度お付き合い願えるならば。異端の開き手として我々は告げよう。

「不完全なる天秤の皿、酷薄なる死の宴へようこそ!」と。

●Gauntlet of War
 始まりは時として唐突にして、変えられぬ運命の紅き糸。
 運命の女神は時として酷薄であるらしい。源 カイ(BNE000446)を始めとする、
 千里の瞳を持つ者達が捉えしその姿は、戦人のそれであることを確信へと変えていた。
 馬とも、ヒトとも言えぬその姿。言うならば、半騎半人(セントール)と呼ぶのが相応しい。
 甲冑が守護する上半身、右の手には身の丈程はあろうかという白銀の一突きが握られ、
 馬体たる下半身には鐙なき馬鎧(バーディング)が身につけられている。
 視認した数の限りを見ればその数、3。踏み抜く蹄は一糸乱れぬフォーメーションを形成する。
 それを時として獣とヒトは呼ぶのだろうか、それとも騎士と呼ぶのだろうか。
 鍛えられたる靭やかなる四股は荒涼たる荒野を風の如く駆け抜け、手にせし突撃槍を機能させる。
 鋭き貫通の槍先は、過たず運命への叛逆者達の砦へと向けられ、牙を剥かんとしていたのだ。
 叛逆者たちは各々の得物を手に、戦列へと駆け出す。万華の鏡の加護無きままに。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:Draconian  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年07月09日(月)23:23
■STコメント
ファンタジーで満たされた脳内においてラ・ル・カーナは我が故郷。
ドラコニアンです。オーソドックスな戦闘シナリオでLets Rock!

■作戦目標
オンスローター3騎の『撃退』
『拠点を守護し、かつ全員で生存すること』

■戦地
荒涼たる荒野。戦闘において不自由は一切ありません。

※注意
ラ・ル・カーナにおいてリベリスタは万華鏡のサポートを受けられません。
よって、以下は一部を除いてPL情報となります。PC情報とPL情報の切り分けにご注意下さい。

■オンスローター
アザーバイド、半騎半人(セントール)。
重装備を身にまとっていながら、身のこなしは軽やかです。
所持している装備品はアーティファクトではなく、自身の能力のようです。

※以下PL情報

★所持能力
・装具生成:P:己に適した強力な装備を生成し、即座に身に纏えます。
・戦乱騎士:P:崩し無効・高攻撃力・高防御、移動後の攻撃は攻撃力2倍かつ、ブロック無効。
・貫通槍:A:近物複:直線的な移動攻撃。物防無・圧倒・ノックB
・空落槍:A:遠物単:ジャベリックスロー。飛行対象に必中・飛行状態解除
・反呪槍:A:近神単:自身にかかったBSをそのまま付与する。
・EX:フェイタルランス:A:近物複:必殺・致命・崩壊・?

■ツーポイントアドバイス
補給と書いてBe Patient(我慢強く) と読む。その心は?
状況によっては『生存』を最優先するべし。物損は補える。

それでは、戦乱吹き荒れる異世界でお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
ソードミラージュ
富永・喜平(BNE000939)
デュランダル
虎 牙緑(BNE002333)
デュランダル
真雁 光(BNE002532)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
ダークナイト
ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)
■サポート参加者 2人■
ホーリーメイガス
汐崎・沙希(BNE001579)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)

●The Line
 駆け出す勇士の時を止め、駆け出す勇士の群れと白銀の三騎の対比が彩る数瞬を切り取れば、
 そこに織り込まれるは英雄譚を模るタペストリ。
 運命に愛されただけのヒトたる一粒種が負い込んだ、過酷なまでの宿命は、
 万華の鏡とて見ること能わぬ。そこに綴られたのは果たして栄光であったのだろうか、
 それとも一敗地に配され、泥に濡れたる無様なまでの悲壮な姿か。
 数多(あまた)の星々、様々なる英雄譚に埋もれて消え行く一つの物語、ここに綴る。

 ★ ★ ★

 人間程に賢く、また愚かな生物は得てして居ない。ヒトは比較でしか物を認識することはできず、
 また失うことでしか在りし物の恩恵を認識し得ない為である。
 叛逆者たるリベリスタたちが万華の鏡の恩寵を失い、天文計算に基づく運命の先読みを失った時。
 この時初めて戦場の神は熱狂と共に平等たる戦いの宴へと招き入れたのだ。
 その始めの末席に招き入れられた者の名、源 カイ(BNE000446)。
 此度の戦端の始まり、白銀の戦騎を視認せし男であった。
 駆け出すその両端に仲間の身を借り、視線の先にある白銀の槍を打ち破るべく、
 機械の四股を男は駆動し、駆ける。恩寵無き戦いの宴に身を投じ、先への希望をつなぐために。

 舞う土煙はヒトと獣たる存在の激突を告げる。双方引かぬ不退転の構えを崩すことなく。
 駆け抜ける達の耳に届くかどうかは定かでない言の葉は、唇より紡がれ空へと消える。

『我等に敵意は無い、そちらに害意無くば退かれよ』

 紡がれた言葉は無情なる戦乱を告げる蹄の中に掻き消え、戦への意思を揺るがすこともなく。
 所詮は獣、人語を解することもない。解する者こそ鬼と妖、二種しかあり得ぬ不全の天秤。
 言霊の主、『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)は、
 その冷淡なる事実を刃と共に握りしめていた。
 祈りは届くことはなく、戦輪は一度廻れば止め行くこと、決して能わず。
 白銀の刃は今やスラリと祈りの鞘より抜き放たれ、一つの決意をここに示すのだ。

「やるしか、無いか……。」
「待て待てぇい!! …止まって下さいお願いします。」

 戦端たる意志を、言の葉が固める。
 それに付随するように、呼応する言葉。言葉の軽重の対比が、どこか鮮明に映る。
 言の葉の主を辿れば、それは狩猟者のそれと詮無く知れて。
 言葉と体は相反する。『終極粉砕機構』富永・喜平 (BNE000939)の準備は、済んでいた。
 迎撃戦の構えを見せる急転の戦場を、飢えた得物は食い破らんと欲している。
 その『屠殺の咆哮』が戦場に響く時は、遠くない。それをまるで告げるかのように。
 風は湿気た吐息をふと孕んで返していた。紫煙を燻らせた風が荒野を流れて消えていく。

「ま、奴さんらも早々退いてくれるわきゃぁねぇ。やるっきゃねぇさ。
 しかし、猛襲せし者、か。何ともおっかねぇ名前を付けたもんだ」

 手にする戦歴の年輪のコッキングレバーを引き、金に光る死神の慈悲を込める手。
 その皺の寄った手の主を問えば、『足らずの』晦 烏(BNE002858)とすぐ知れる。
 老練の死神が握る得物、現代に蘇りし村田式散弾銃の銃口には赤茶けた戦歴がふと浮かんで見えて。
 その円筒の向こう、白銀に煌めく3騎との対比は此度の激戦を思わせるには十二分。
 種火を切る手は語ることもなく。 ただ淡々と時を紡ぐ。その紡がれる時の中に、
 一人の若き男の言霊が混ざったように聞こえたのは、錯覚だろうか。

「オンスローター……ねぇ。 こっちの世界に少し用事があるんだよ。
 終わったら帰るからちょっと目ぇつぶっててくれないかな」

 若き男のどこか気だるそうな、若々しき声色。
 その言の葉の紡ぎ手の姿を見れば、それがヒトたる種よりやや外れたる存在であることが分かる。
 蜜色の瞳は琥珀のそれに似て、尚虎目石のごとく輝く。
 その瞳は違いなき『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)のもの。
 若き獅子の血脈を引きし男は此度の戦いの中ただ忠実に努めを果さんと、刃を向ける。

 その傍らで。紡がれる時の中で此度の戦いに胸を躍らせ、新たなる力の糧にせんと願うものも居る。
 ある者は此度の異世界での初戦闘に対する意気を高め、ある者はただ敵に対して言の葉で問う。
 その中。言の葉を消して紡がず、己が装甲を見つめながら思う一人の男がそこにいた。

「…(アークが開発した新装備、果たしてどの程度かな?)」

 瞳の先に捉えられた暗黒の装甲は緩やかなる光を浴びて黒壇の輝きをただ返している。
 その輝きは深く果てなき勝利への道か、それともヒトたる道を踏み外す。標となりうる深淵か。
 装甲の主、『系譜を継ぐ者』ハーケイン・ハーデンベルグ (BNE003488)は、
 そのようなただ淡々たる問いを己が力へと向けていた。
 問いは深くも明快で、その答えはただ戦場の中に。己が力は誰がためか。己が力は何処までか。
 それを知らねば、守るべき者は守れず、用意に道を踏み外すことは至極当然とも言える。
 その事実を、この男は戦いの中で痛いほどに知っている。故に。

 各々の思いは仄暗き混沌に沈み、そしてまた浮かび上がっては沈みを繰り返す。
 浮沈子の如き不安定なる世界の中の闘争。その事実すらも捉え方によってはまた光となる。
 異界での戦闘という初めての経験に胸を躍らせ、その酷薄なる真実すらも無邪気に捉える姿。
 その姿は暗き永遠の闘争の中の希望の光であり、また同時に無知のなせる技であろう。
 新たなる力に心を踊らせ、乙女は――『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)は、
 明るき空の元にある暗き深淵、永遠の闘争へと身を投げる。
 その地にあるのは、ただ血で血を洗う混沌でしか無いことを、知らずに。

 不完全なる天秤にチップは今や置かれ、戦輪も今や回りだす。
 止め得ざる歯車が止まる時。それは双方何方かが台から降りるか、それとも死ぬか。
 今、熱戦の火蓋は切って、落とされた。

●Blood on the Blood
 己の肉体を共とする者達同士がぶつかり合う紅の戦場。
 その始まりを告げたのは屠殺者の咆哮から放たれる残像から成る殴打であった。
 重き甲冑に衝撃を伝え、敵に的確なる痛打を与えるその高速の一撃の交錯に、槍と銃が交わされる。
 馬体の加速力と突撃槍の重量を加えた貫通の一撃は平然といかなる甲冑にも風穴を開ける。
 その初撃を以って観測し、データに変えるのは補助員として入りし癒しの女神と蒼き秘跡である。
 発語を嫌うその本心を押し殺し、言葉で標をつける。その役目をただ淡々とこなす姿は、
 献身の徳たるそれを思わせるに相応しい物。その姿に呼応するように、
 己の肉体の枷を外し、威力を高めたスラリと魚を圧延したかのような繰手の大剣が振るわれる。

「戦人同士、己の力を発揮するのが努めでしょう?
 ――さぁ剣を取りて切り結びましょう、それが喜びなのですから」

 鬼神は声のみでまた哂う。その姿は紅き戦鬼を想起させるには足りる物。
 刃が返す朱に染まりながらも。雪白 桐(BNE000185)は刃を通し、雄弁に語る。
 白銀の相剋が双方の肉体を梳る。この乱闘とも言うべき戦いは、未だ決すること無く。

 白銀の三騎が相互に槍を重ね合わせる広々とした戦場で、
 叛逆者たちは二名で一騎を抑える戦術を以て相対する。騎兵の突破は覚悟の上。
 馬体と槍の重量を合わせた突撃の一撃を極力封殺せねば、己に勝機はないことを悟るがゆえに。
 その見解は限りなく正解に近いものである。しかし、正答を以てしても此度の戦いは末期戦に等しい。
 双方の痛み分けを以て五分とするのが現状におけるリベリスタの限界とも言えた。

「異世界での初の戦いだ、慎重には慎重を重ねるぐらいじゃねぇとな」

 敵の巨体を神気閃光が過たず撃ち貫き、衝撃を以て敵の動きを鈍らせる。
 しかし、その鈍らせた動きを以てしてもなお早く、重い敵の一撃は叛逆者の希望を吹き消すに値する。
 悪夢を希望に差し替える道の難しさは、語るまでもなき苦難の道のりであると先人は綴る。
 その事実はこの不完全世界でもなお変わることはない。
 事実に叛逆すべく、黒の装甲を纏う男が、言の葉に挑発の意思を載せて戦場で紡ぐ。

「言葉は通じぬがこれは分かるか?…そら、ここに風穴を開けてみろ」

 剣で盾を叩き、後衛の癒し手を守護すべく攻撃の矛先を逸らすために。
 男はあえて囮とならんと敵を愚弄し、今ひとたびの眩惑の盾となることを望む。
 されど、運命の女神は時としてその代価を高く付けることも厭わない。

 乱戦の最中。駆け抜ける白銀の装騎が、槍を構え白銀の道を作る。
 その走軌の上に立つ者に、鎧の騎士は鎧をいともたやすく打ち貫く突撃槍を振るう。
 田楽刺しの如く、走行路上に捕らえし叛逆者たちを打ち貫く銀の杭が過たず臓腑を抉った。
 それは、癒し手達すらも例外に含まれるということはない。
 脇腹の肉が抉り取られ、痛みに思わず苦悶を挙げる者たちの声が響く。

「ケッ、挑発の代価にしてはでかすぎるな……。
 まぁいい。どれ、意地を見せるとしようか。」

 癒し手の術式がそれを癒すも、完全なる救済にはやはりほど遠いことは知れていた。
 希望の階は此度においてはいつにもなく遠く。そして、茨の道にも感じられた。
 軽口をたたく余裕も、此度の戦いでは惜しい。それほどまでの、熱戦。

 叛逆者たちはこの圧倒的守勢を打開すべく、火力を収束することによって敵を落とす。
 暗黒を纏った剣が敵の鎧を梳り、そこに重なるは神々の怒りたる雷光。
 祈りの騎士もそれに合わせ、重打の一撃を剣で重ね合わせる。
 敵に対する戦意を奪うにはいまだ至らぬ一撃の積み重ねは、いつぞ崩落するバベルの塔の如く。
 砂上の楼閣の向こう側、虚ろなる勝利の光をただ目指し、黒の騎士と英雄は剣を振った。

 戦場の鬼神たるその存在も希望を決して絶やすということはしない。
 己の得物たる白銀の大剣を握り、その刃を勝利のための身に振う。
 振われる刃は確実に敵の巨体を梳り、突撃槍の矛先を鬼神に向けさせる。
 しかし、その裏の狙いを知り得ぬことが、獣にとっては不幸だったのやもしれぬ。
 馬体の後背に回り込んだ視認手の絞殺の気糸が敵を縛った。
 振り払わんとする動きに対し、面接着を以て抵抗しながら、首と装甲を縛り上げる。
 手技によって己の勝利と栄光を掴まんと願う、その御業。
 今だ戦いに出向かんとするそれを、勝利の女神は良しとしたのだろうか。
 運命の綴り手は決してそれを知る由もないがままに、戦輪はいまだ廻る。
 まわり続けたその先に、勝利があるのかすらも定まらぬままに。

 揺るぎえぬと思われた傾きし天秤は、緩やかに調和を取り戻し始める。
 長き戦乱に決着が付くその時は遠くないと知れる乱戦の最中。
 ある一体の馬体の後方からショットガンシェルが悪魔の咆哮を挙げていた。

 狩猟者たるその男もまた、すれ違いざまに一騎の後背に飛び乗り、
 至近射撃の乱撃を加えていたのだ。後背より響き渡る咆哮が、敵の装甲に風穴を開けていく。
 咆哮は時として葬送の音に変わり、敵への戦意を奪うための楔となる。
 打ち込まれし楔により生まれる数瞬を見逃さず、必殺の刃をそこに重ねて打ち込んだのは、
 大剣を繰る虎目の男だ。

「馬は虎に喰われるもんだ、後ろ見せてるとその尻尾の生えたケツに噛みついてやるぜ」

 不敵に笑う男の瞳は、わずかなりに生まれた余裕を示す物。
 不完全なる戦輪の向こうにある一片の希望を掴むべく、男はそこに粉砕の一撃を振るう。
 そこにある、勝利と栄光の身を願って。

 幾重にも重なる願いと希望。その細き希望は幾重にも重なり、勝利を呼び込む。
 しかし、その勝利の前には時として大いなる門が存在し、その勇士たちを試す。
 勝利を握るに値する者か、それとも敗北を糧にし、これより上を目指すべき者かを試す門が。
 その門の試練に耐え得ぬ者は往々にして淘汰されるのが戦場の不文律。
 試練は唐突に、しかし、酷薄なる事実を以て己に迫る。

 前触れがあった、と言えばそれは前触れに感じる者が多いのだろうか。
 しかし、それは前触れとは到底言えぬ現実より顕現していたが為に、不幸と呼ぶのが相応しい。
 後背に乗られていなかった一騎は、幸福と不幸を呼び込む悪夢の一騎となる。
 乱戦の中で傷つき、戦場より撤退するかのように転進したように見えたその一騎は。
 方向を変え、後背に乗る者たちへ伏せたる牙を途惑うことなく突き立てたのだ。

 その一撃は、『致命なる槍』と呼び習わされ、恐れられるに値する一撃。
 全ての防御を無へと還し。存在すらも肉片へと帰す悪夢ともいうべき突撃の一撃。
 馬体に纏う鎧、手にする白銀の一突き。そして、己が肉体の全体重をかけた重突撃。
 それは、避け得ざる一撃として二名の哀れなる戦士をいとも容易く葬り去る。
 臓腑をぶちまけ、生き得ざる状態より運命の寵愛を以て復帰した英雄たちは、
 これ以上の戦いを不可能だと悟るに至る。この判断を以て、英雄たちは更なる撤退戦を開始した。
 既に十分な痛打は加えている。後は敵を寄せ付け得ぬように負傷を与え、
 自らの砦たる場所へ速やかに引けばいいのだと。
 祈りの騎士は守護者として、そして、皆での生存を以て成功とするために、決断を叫ぶ。

「――退け!」

 重突撃を加えた一騎は己にかかる負荷を鑑み、すでに撤退の構えを見せ始めている。
 残りの二騎のみ抑え込めれば、対処は可能と踏んだが故の決断。
 運命が賽を振り、実力がこれと勝負する戦場の中で、勇士たちは血戦を以て砦への帰還を開始する。
 捕縛に足る余裕の一片すらもすべて出し尽くし、完全に引くまでは粘り切らねばならない。
 緩やかに引いては追撃する敵を押し返す。
 飛び散る血が、汗が。赤茶けた荒野に水分として吸い込まれる。
 幾重、それを重ねただろう。勇士たちの紅が砦たるその地に天鵞絨の絨毯を敷き詰めた頃に。
 敵は完全に戦意を喪失し、撤退の構えを見せて引き始めたのである。

●Innocence
 叛逆者たちの砦の門、木製の跳ね橋が緩やかに開き、傷だらけの英雄たちを迎え入れる。
 運命の寵愛を全ての者が使い果たし、ただ休息のみを求める様相を見せる中で。
 いくつかの言葉が、交わされる。苦笑いを伴う物、紫煙を燻らせながらの物。

「……やはり手強かったな…バイデンとやらもこれ位強いのだろうかな?」
「……次は大群で来そうで怖いですね。」

 虎目を持つ戦場の勇士が、紫煙を軽く咥え言葉を吐いた。
 苦笑いと共に吐かれる言葉は、無事に生還したが故の安息が故に。
 しかし、その言葉の恐怖は、裏打ちが有るものであるが故に、一層の恐怖を感じさせる。
 祈りの騎士が、同じような苦笑いと共に、言葉を紡いだ。

「……冗談でも勘弁願いたい。」

 それは、現に今戦ったすべての者たちが思う心の代弁。末期戦というのが相応しい。
 そんな、激戦に重ねる激戦であったが故に。
 誰かがふと、見上げた空。それは、鉛の如く重い雲を、載せていた。

Fin

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
■STコメント
乱戦に次ぐ乱戦でした。「引き分け」があったらそっちにしたい。
白銀の騎兵との戦闘、いかがだったでしょうか?
ご参加、ありがとうございました。

Result:
※敬称略、重症、戦闘不能含む。
重傷者:源、雪白、富永、ハーケイン、汐崎
戦闘不能者:アラストール、晦、真雁、虎