●予兆絶頂ラストバトル それは、長く苦しい戦いだった。 傷ついた仲間、中には道半ばで倒れた者も居た。敵の恐怖に、絶望に、諦めかけたこともあった。何度も涙を流し、乗り越える度に強くなった。気づけば渇望していた力を得て、本当の勇気とは何であるかを知った。 笑いあったこともあった。勝利を讃え合い、凱旋したこともあった。だがそれも、否。これから起きることでもある。あるはずだ。世界を闇に陥れた元凶。そこにようやく辿り着いたのだから。目を瞑れば思い起こされる仲間の笑顔。散っていったあいつ。別れに泣いたあの子。これは愛だ。愛と勇気の物語だ。 それも、これで終わる。最終決戦。武器の貯蔵は充分だ。世界に平和を取り戻そう。剣を磨き、具足をはめ、いざ。 目標を見定める。最後の敵に相応しい、一体で、一匹だけで相対する。多勢に無勢とは思わない。それほどに強大な相手であるのだから。 睨みつける。意識を研ぎ澄ませる。それは、その怪物は。こちらには分からぬ言語で。聞こえぬ声で。意識の中にたった一言、悍しい猛りをあげた。 「も!」 ●限界突破アルティメットレベル 「皆、辛く苦しい戦い。これまでご苦労様だったニャ」 いつもは軽い調子でおちゃらけた猫であるものの、今日ばかりは真剣な面持ちだ。それもそのはずだろう。ようやく、ようやっとだ。この戦いに終止符が打てる。その局面にまで辿り着いたのだから。 「そして……否、これ以上の言葉は無粋だな。後は勝つだけニャ。勝利を、この手にしようじゃないか」 そこで、ひとりが挙手をする。ここに集められたメンバーのひとりだ。どうにも、事情が分かっていない様子。どうしたというのだろう。 「あの―――」 「おや、どうしたニャ? 否、わかってる。わかってるさ。あれだけの戦いを乗り越えてきたんだもの。何か思うところはあるに違いない。でも待って欲しい。ここで何か言っても後に響く。よくフラグがどうの言うだろう? 思い出は、今は心の中にしまっておけ。ほら、前回の報告書でも眺めながら。何、ないわけはない。報告書の中に前回のものが見えないならそれはきっと探し足りないだけだ。ほら、段々そんな気になってきただろう。あの戦いが思い起こされるだろう。な?」 うん、素直に手を下ろす。そうだ、自分は何を言っているんだ。あの戦いの日々を忘れるわけがないじゃないか。心を切り替えろ。気持ちをシフトしろ。ここで勝たなきゃ、散っていったあいつらは何だったんだ。 「じゃあ、いこうぜ。これが最後の戦いだ。ひとつの物語を終わらせよう。いくぜ、戦士達」 振り上げられた拳に、皆が応と答えた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月28日(木)23:52 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●抱腹絶倒エルドラド 回想シーンに入るのがお約束。 ぽかぽかの陽気。明るい日差し。晴れ渡る空。青。蒼。広がる緑。美しく咲き誇る花。そう、ここまで形容を並べたのだ。理解できるだろう。これが戦場だ。戦いの場だ。終着点なのだ。ここにいる。それはいる。 それは諸悪の権化だ。全ての最悪だ。何もかもの終わりだ。最後の始まりだ。頂点にして混沌だ。這い寄らない過去だ。切り開けぬ未来だ。だが、倒さねばならない。ここで物語は終わる。そうして新しい世界を紡いでいこう。思いを胸に。言葉を誓いに。 さあ、剣をとれ。 僕らは、ここから始まる。 ●天魔覆滅ライオット これから毎日、フラグ立てようぜ。 いったい、どれだけの。 犠牲のそれを数えようとして、『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)は頭を振った。それは終わってからでいい。今ここでやるべきことはそうれではないはずだ。 手にしたものを、ぎゅっと握り締める。兄の、形見といえるものだ。馬鹿な、死んだのかイケメン。 「さあ、行こう! これ以上悲しみを産まないために」 戦うことの怖さを、彼女は知っている。抗うことの辛さを、彼女は知っている。一歩。たった一歩を進むだけでいい。これで、終わるんだから。 分かり合える未来は、あったのだろうか。なんて。今更だ。ここまで来て、誰も振り返ることなんてできやしない。だが、その敵は。最後のそれは。彼女にも、予想できないものだった。 「君は!」 丸いぷにぷにの身体。いろんな表情を見せるつぶらな瞳。覚えている。かつて仲間だった。異種族として自分達を裏切り、それでも最後は守ってくれたはずの。彼。大切な。だが、ここにいるというのならそうなのだろう。これが敵だ。あれが敵だ。最後の敵なのだ。 「君が、最期、か……久しぶり、といえるのかもしれんな……」 思わず込み上げて、言いそうになった何かを懸命に堪えた。手を取り合う未来はない。ないのだ。そんなもの、とっくのとうに失われてしまったのだから。 交わされる視線。愛くるしいその瞳が、優しさを伴っていると感じるのは自分の甘えだろうか。今更だ。唇を噛む。痛みが自罰のようで、ほんの少しだけ心が軽くなった。同時に、苛まれもしたけれど。 握り締める。強く。強く。痛いほどに。そうあれかしというように。だから、心とは違う言葉を出した。ふるえはない。意志を持って。それは、戦うものに相応しく。 「君は、ボク達の敵だ」 瞳は、誰より強い。 一年。否、もう少し長いのか。 『論理決闘者』阿野 弐升(BNE001158)は、戦いの始まりを思い返していた。なんて、長く。なんて、苦しい。そんなお決まりの感想を、もう何回繰り返しただろう。思い起こされる始まりの時。たかが訓練でしかなかったはずのあれ。まさか、これほどまでに続く戦いの警鐘であっただなんて。まったくもって、これっぽちも感じなかった。あの時ああしていれば。嗚呼、これも何度何回繰り返し願ったことだろう。 寧ろ、今でも信じることができない。仲間を見る。ひとりひとり、その覚悟が見て取れる。強い表情。自分も、こんな顔をしているだろうか。そう言えば、頼れる仲間ともあの時に初めて出会ったのだ。幾人かは去り……幾人かは散っていったのだけれど。 だが、こうして。最後の最後まで一緒に有れたこと。素直に嬉しいと感じる。誇り高いのだとも。失った仲間の顔だって、今でもはっきりと思い出されるものだ。終わったら結婚する。彼女が待っている。後で話がある。そんなことを言った方が生き残っているのだから、皮肉なものだ。 「ここは俺に任せて先にいけ、なんて。使い古されすぎて正直笑っちゃいましたよ。まあ、貴女なら本当にどうにか出来ると思ったからお任せしたんですけどね」 さあ、思い出話はこれくらいにしておこう。最後までありきたりで申し訳ない限りだが、泣いても笑ってもこれが最後なのだから。 馴染んだ武器の感触。何もかもが問題ない。十全。十二全。思いを原動力に。意志の炎を滾らせて。この身は既に不退転。ハッピーエンド以外は認めない。認められない。認めてなんて、やるものか。大手を振って笑い合い、勝鬨を鳴らして凱歌を歌う未来の為。 いざ、尋常に。 最初は、『From dreamland』臼間井 美月(BNE001362)だって軽い気持ちだった。簡単な依頼に思えていたからだ。自分の実力は、痛いほどにわかっている。臆病な自分。脆弱な自分。それでも、これくらいなら。この程度なら。自分にも出来る。そう思っていた。そう思って、甘く見ていた。軽んじていた。それがあんな結果になるだなんて、想像もせずに。 こんなつもりではなかったのだと、思った。言い訳をした。逃れようとした。分不相応な任務だと、関わったことを後悔したことだってある。否、過去ではない。今も、そうだ。心のどこかで、呪っている。どうして自分がと、誰のせいにも出来ずに恨んでいる。 辛い。痛い。怖い。何より、重い。失った仲間。倒した敵。激戦と、未来と。その重みに耐えられなくて、逃げ出したくて。それでも、今はわかってる。その方が、辛い。痛いし、怖い。ずっと、重いんだ。もうわかってる。臆病な自分だからこそ、そんなものは嫌だから。 だから、もう逃げないと誓ったんだ。 敵との戦力差。考えたくもない。 下手をすれば一撃で一人屠るほどの腕力。 ※こっちがな。 一撃で戦線を瓦解させないほどの全方位光線。 ※マイナスイオンくらいは出てるかも。 身体を苛む苦痛の数々。 ※良心の呵責的な。 そして止め処も無く続く怒涛の増殖 ※放置すればの話です。 思いつく限りの不安要素。流れだして止まらない。怖い。勝てるわけがない。喚き散らして投げ出してしまいたい。戦う前からかく汗は、きっと冷や汗なんだろう。足はふるえている。視界も滲んでいる。そういやさっきからお腹が痛い。けれど。だけど。 勝つんだ、絶対に。 自分にも、出来るんじゃあなくて。 皆で、するんだ。 さあ、行こう。 世界を平和にしてやる。 「みんな……信じてる、から、ね……」 戦闘の最中。っていうか敵戦力の低さ的に開始直前以外に時間がないのだが、『灰の境界』氷夜 天(BNE002472)の意識にはこれまでのことが思い起こされていた。否、断じて走馬灯などではないのだろうけれど。 初めての戦場。気力はとっくに底を見せ、体力もあと僅か。死を感じる。ここが戦場だということに、殺し合いをしているのだということに、ようやっと自覚を持ちだした瞬間のことだった。 奪われてはならぬと、渾身の力で投げた鼻メガネ。危うく敵の手に渡りかけるも、それを受け取った仲間の勇姿は今でも語りぐさとなっている。 合体とビームは漢のロマンだ。そう言って散ったはずの彼が、後々デコトラに馬乗りで帰ってきたあの日。自分も、ロマンは死なぬ、絶対にだと叫び返してやりたかった。 暴風雨の中で戦ったこともあった。雨で張り付いた服、風で舞うスカート。誰もが興奮を隠し、固唾を飲んで見守ったものだったが。あの見えそうで見えないという乙女の嗜みには、敵わなかった。 辛いことも、苦しいことも。だが、同じだけ喜びと充足感がこの道にはあったのだ。そういえば、冷蔵庫にパインサラダを入れっぱなしだ。帰ったら食べよう。そういえば、ずっと好きだった君にまだ思いを伝えてないや。今の自分にならその勇気もあるような気がする。帰ったら、きっと。 でも。 その時、心の中に何か熱い叫びが届いた気がした。フェイトを燃やせ。お前なら出来る。もっと熱くなれよと何かが自分に向けて訴えている。そうだ、まだ負けられない。闘志を燃やせ。運命を書き換えろ。歯を食いしばれ。 骨が軋む。肉が悲鳴をあげている。でも死んじゃあいない。死んでないならもうちょっとだけ頑張れる。 感傷に浸るのはガラじゃない。そう言う『最弱者』七院 凍(BNE003030)にも、この戦いへの思い入れは数えきれぬものだった。 サブカルチャーが好き。ぶっちゃければオタク。インドア派。精神的に強いわけでもない自分。不安から逃げようとした時だって、何度もあった。あの時だってそうだ。無理だって逃げて、逃げようとして。あのどら猫に叱られた。その時は、感謝だなんてできないで。背を向ける自分が後ろめたくて、だから彼女のことが、とてもとても怖かった。ただ、怖いとだけ感じていた。 でも、彼女は自分を励ます為にメイド服まで着てくれたんだ。ミニスカートだったにも関わらずくるりんと回ってくれたりしておいおいマジかここまで見せてむしろ魅せて大丈夫なのかよキャドラかわいいとキャドラあふーあふーありがとうキャドラ僕前屈みになってるけどまだ戦えそうだよ強くなるよキャドラ。 ※あんときゃマジ儲かったニャ。 支えがあったから。支えてくれたから。逃げ出しそうになっても、最後には戻ってこれた。戦えたんだ。今はもう、逃げない。そう有れるくらいには、強くなったのだから。どうなったっていい。画面の向こうのヒーローみたいに、格好良くなくたっていい。死に物狂いで戦おう。まだ、心の炎は折れていないのだから。 武器を手に。さあ、覚悟を決めろ。敵は全ての根源。不安も、喜びも、苦しみも、泣いても笑っても全部全部受け止めよう。強くなった。まだ強くなれる。弱い自分が積み重ねてきた勇気。必ず、力になってくれる。 雄叫び。そうと呼ぶに相応しい。敵を見据え、得物を構えた。集中する。神経を研ぎ澄ませた彼の目には、仲間の全てがメイド姿に見えていた。 最早救いようがない。 長い、本当に長い戦いだった。それでも、覚えている。『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)はこの戦いを覚えている。 始まりは、始まりと呼べるものは突然だった。この記憶を忘れはしない。否、忘れることなど出来はしないだろう。もう何度、夢に見たことか。 家族や村人達。彼らは為す術もなく蹂躙されていった。目の前で失われていく友人。自分を庇い、生命を落とした婚約者。あの日、あの悪夢の日。故郷は、故郷は、地図から消えてなくなった。なに、長い年月を経て、もう国すら存在しては居ないのだが。 自分とて、生きてはいたものの無事であったわけではない。瀕死の重体であった自分の前に、ひとりの男が現れたのだ。力が欲しいか。その提案を断ることなどできなかった。二の句を告げずに頷く。自分の全てを奪ったあいつらを、殺して殺して殺し尽くせるだけの何かを得られるというのなら。他に何もいらなかったのだ。 それからは、戦いと呼べなかった日々はない。ずっと、ずっと。復讐という某かにのみ縛られ続けた。この追い剥ぎ共の矮小さが愉快で愉快でたまらなく空虚なほどに。何年も、何十年も、きっと。何百年も。 あの男がくれた力は、きっと一種の呪いか何かだったのだろう。あの時から自分の時間は止まったままだ。死なない身体。死ねぬ身体。心が安らぐことはない。何時まで経っても、自分の中にはあれらへの復讐心と憎悪しかない。最早それだけが自分なのだと言っても何ら間違いではない。 力を授ける時、あの男は自分に頭を下げた。きっと、謝罪だったのだろう。今なら、その意味が分かる気がする。 しかし、それも今日で終わるのだ。 そんな設定なのだ。 これまでを思い返そうとして、椎名 真(BNE003832)は思考をかき消した。この長い戦い、たくさんの出来事がありすぎて。いっそ思い出せない程であったから。 最終決戦。その言葉だけで意気込みも高まろうというものであるが、やはり厳しい戦いになるのだろう。でも、負けるわけにはいかないのだ。世界のため、というのもあるが。何よりあの時散っていったあいつのために。約束したのだから、必ず勝つと。 敗北。それは世界の滅亡に等しい。皆、死ぬ。みんなみんな、しんでしまう。何の罪もない人々も。傷を負い、前線を退いたあいつも。家族も。友人達も。 それだけは、あってはならない。けして、けっしてあってはならない。負けられないのだ。例え両の眼球を潰されようと、四肢を引きちぎられ転がされようと、抉り取られ人の形を失ったとしても。這いずりまわったって、負けるわけにはいかないのだ。 今の仲間達。彼らと共に戦えることを誇りに思う。戦力として申し分ない彼ら。素晴らしい戦士達。これならば、これならば万全の状態を期してあれとの戦いに挑めるというものだ。 『も。』 あのまるっこい半不定形生物。頂点であり最後の敵。名前を聴くだけで、嗚呼、逸脱した強力さを思い出す。鳥肌が立っているのだと自覚できた。ふるえている。武者震いだなどと強がることは出来ない。これは、間違いなく恐怖であるのだから。それでも、やるしかないのだ。 「さぁ、皆。これまで長かった物語……これが最終回だ」 退路などない、必要がない。歩は前へ。掴むのならば勝利のみ。 嗚呼、それと。 親友が、近々結婚するらしい。そのスピーチを頼まれているんだ。帰ったら、何て言うか考えないとな。 こう、枠が見える。枠。枠だ。なんていうか白縁で、黒地の枠だ。ブラックボード。そこに明朝体で『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)が文字を書き連ねていく。 【たびだち なかまとのであい きょうてきとのしとう】 黒板に連ねられた白墨の文字列。書いてはせっせと消し去って、すぐさま新しいそれらを並べ立てていく。 【かずおおくの であいとわかれ】 ある種、凄まじい特技である。こちらが読み進む速度に合わせ、消しては書き、消しては書き。 【たたかいのなかで うしなわれた いのちも すくなくはない】 鎧を着こみ、剣を腰に。その重装備で、その重自重で。 【こころざしなかばで ちった ひともいただろう】 否応なく、注目させられるそれら。有り体に言うと、画面の下3割くらいを占めている。何の、とは言うまいが。 【ぼくたちは いろいろなものを せおって このばしょにたっている】 ひとつ、ひとつ。不思議と心の中に入ってくる。不思議と、心の中に染みこんでくる。 【ここにいるなかまに もう ことばは ひつようない】 感慨深い。眼の奥に熱いものを感じて、ぐっと堪えた。堪えるのに、苦労した。 【こころにひめた おもいは おなじなのだから】 強く、頷き返す。誰も、思い出を語り合うことはない。そんなことは、後からいくらでもできるのだから。 【いっぽをふみだすのだ】 そうして、強く。 【すべてを おわらせ あらたな ものがたりを はじめるために】 そこで、文字列は終りとなる。心に響く。読んでいなくても、奥底まで聞こえてくるような。聴こえてくるような。そこで、光の吐息が聴こえた。 「ふぅ……ナレーション風に喋るのは疲れたのです」 まさかのフルボイス。 ●滂沱感激エンディング やきごて先生の次回作にご期待ください。 ざしゅ。ティウンティウン。 戦いは終わった世界は平和になったたたたたーんたーんたーんたったたーんありがとう勇者達ありがとう英雄達そうして救われたのだしかし悪の思いある限り世界はいつかまた必ずや闇にとか何とか言いながら伏線構築しといてそしてでんせつへー。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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