● ――あの子を死に至らしめた全てのものが、許せなかった。 あの子を傷つけ、苛み続けたあいつらも。 一番近くにいながら、あの子の自殺を防げなかった私も。 全てを滅ぼし尽くした時、私の復讐は終わるのだと信じていた。 復讐は、あの子のためではなく、私のため。 あの子は、そんなことを決して望みはしなかっただろう。 それを知りながら、私はあの子を復讐の道具にした。 だから、あの子は歪んでしまった。 あんなに優しかったあの子を、私が歪めてしまったのだ――。 ● ――姉さんには、心から感謝している。 弱く、脆く、愚かだった、かつての僕はもうどこにもいない。 姉さんが復讐を願い続けてくれたから、僕は力を手に入れることができた。 完全体になる前に容れ物を壊されてしまったおかげで、少しばかり回り道にはなったけれど。 今は、こうやって力を蓄えている時間すら、いとおしく思える。 時とともに、僕の力は満ちる。 姉さんがくれたこの力で、僕は僕の復讐を果たそう。 僕を虐めたあいつらも。 見て見ぬフリをしたクラスメイトも。 肝心な時に気付いてくれなかった姉さんも。 みんなみんな、まとめてこの世界から消してあげるよ。 ● 「――よし、全員いるな。依頼の説明を始めるぞ。 今回はかなりの数の敵を相手することになるから、そこを頭に入れておいてくれ」 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達の顔ぶれを眺めた後、『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)は手にしたファイルを開いた。 「任務はE・フォース一体の撃破。 ただし、こいつは配下を大量に生み出して自分の回りを固めている。 皆にはこれを突破して、親玉を倒してもらいたい」 数史はそう言って、傍らの端末に手を伸ばす。 彼がたどたどしく端末を操作すると、正面のモニターに廃ビルが映った。側面には、非常階段が見える。 「この廃ビルが、今回の現場だ。 親玉は屋上にいるが、こいつの能力で付近ではいっさい飛行ができない。 全員が面接着で壁を上れるなら別だが、そうでなければ非常階段を上っていくしかないな」 当然、配下のE・フォースが群れをなして襲ってくる。 一体一体はさほどの強さではないが、とにかく数が多いため、少人数で分散して動くにはリスクが高い。 「敵の攻撃は、屋上に近付けば近付くほど激しくなる。 屋上に辿り着くまでに戦闘不能者が多く出ると、かなり厳しいことになるだろうな」 さらに、今回は戦場も少々厄介だ。 非常階段は横に三人並ぶのが限界で、隊列をしっかり考えていかねばならない。 屋上は充分な広さがあるものの、柵などは設置されておらず、吹き飛ばされた時に落下の危険がある。 落ちても死にはしないが、地上から屋上に戻る時間を考えると事実上の戦線離脱に等しい。 「親玉のE・フォースは、『黒岩シン(くろいわ・-)』という少年の思念がベースになっている。 ……だが、こいつはもはや別人と言ってもいい」 話せば長くなるが、と前置きして、黒翼のフォーチュナは説明する。 「黒岩シンは、同級生の嫌がらせを苦にしてこの廃ビルから飛び降り自殺をした。 それを目撃した彼の姉――黒岩ミサは、弟を死に追いやった同級生たちに復讐を誓ったと」 黒岩ミサはフィクサードであり、アーティファクト『復讐者の黒水晶』を所持していた。 死者の思念を宿し、その無念を晴らさんとする復讐者に力をもたらすとされていたアーティファクトだ。 彼女は迷わずそれを用いたが、『復讐者の黒水晶』には秘められた真の機能があった。 「研究開発室の分析でわかったことだが―― こいつは、死者の思念を核に強力なE・フォースを作り上げるんだ。 負のエネルギーを大量に取り込み、やがて激しい爆発とともにE・フォースを生む。 出てくるのは負の感情で歪みきった死者のE・フォースってわけだ」 幸い、黒岩ミサの復讐はアークのリベリスタに阻止され、『復讐者の黒水晶』も爆発前に破壊された。 黒岩シンはE・フォースと化したものの、現在は不完全な状態であるという。 「今の黒岩シンは廃ビルの屋上から動くことなく、じっと力を蓄えている。 だが、今回の任務で彼を倒せなかった場合、フェーズが進行する可能性が高い。 そうなれば、黒岩シンは無差別に人を殺して回るだろう」 弟の復讐を近い、それを阻まれた姉――黒岩ミサは現在、アークが管理する病院で昏々と眠り続けている。 彼女も、弟が手を汚すことを決して望んではいないはずだ。 「長丁場になる上、失敗した時のリスクも高い。厄介な任務になるが、頼まれてくれるか」 黒翼のフォーチュナはそう言って、リベリスタ達に頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月28日(木)00:16 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● 私は、今も闇の中にいた。 手も足も、背の翼さえも、思うように動かない。 澱んだ闇に流され、浮き沈みを繰り返しながら宙を漂っている。 光も音もないそこに、灰色の四角いものが唐突に現れた。 近付くにつれ、それが廃ビルであるとわかる。 忘れようもない。このビルから、あの子は身を投げたのだ。 廃ビルの屋上には、黒いものが渦を巻いていた。 その中心に、人影が見える。 歪んだ笑みを浮かべて、世界の全てを呪っているのは――あの子だ。 私は、あの子に手を伸ばす。 ごめんなさい。私が、あなたをこんな姿にしてしまった。 私が、自分の復讐にあなたを利用したから――。 ――そしてまた、私の手は届かない。 ● 廃ビルの真下、アスファルトの地面に血の痕が残っているのが、遠目にもはっきり見えた。 同級生から受けた嫌がらせを苦に、ビルの屋上から飛び降りた少年――黒岩シンは、ここで死を迎えたのだろう。 聞けば、少年は姉の目の前で身を投げたらしい。 黒い思念がわだかまる屋上を見上げ、『名無し』氏名 姓(BNE002967)は、“その時”の光景を頭に描いた。 線の細い少年が、柵のない屋上の端に立つ。 灰色の翼を羽ばたかせた黒髪の女性が、上空から彼の姿を見つける。 弟の意図を悟り、彼女は全力で翔ける。 それに気付いた少年が、ゆっくりと姉の方を見た。 姉弟の視線が交わり、少年が空中に一歩、足を踏み出す。 女性が、弟の名を叫びながら手を伸ばす。 あと少しというところで、彼女の指は空しく宙をかいた。 少年の華奢な身体が地面に叩き付けられ、アスファルトに血の花が咲く。 赤い赤い、いのちの花が――。 もちろん、姓は実際に“その時”に居合わせたわけではない。 全ては、一連の事件に関する資料の記述をもとにした想像に過ぎなかった。 だが、初めて資料に目を通した時、姓はこのような印象を持った。 黒岩シン――彼は、まるで当てつけのように死んだのだな、と。 この場に立った今も、そう思う。 ● 黒い鬼火のようなE・フォースの群れが、廃ビルを取り巻いていた。 これを突破し、彼らを生み出した大本のE・フォース――黒岩シンを倒すのが今回の任務だ。 現場はシンが展開した不可視の結界に覆われており、この中では翼を持つ者も飛ぶことができない。 メンバー中、壁を垂直に歩けるのは『もそもそ』荒苦那・まお(BNE003202)一人だけだったので、リベリスタ達は非常階段を通り、シンの待つ屋上に向かうことを決めていた。 こちらに気付いていないのか、鬼火の群れはビルの外壁に沿ってぐるぐると同じところを飛び回っている。 物陰から非常階段を視界に収めつつ、リベリスタ達は隊列を整えていった。 「さーて後始末っ♪」 無骨な暗視ゴーグルをかけた『バトルアジテーター』朱鴉・詩人(BNE003814)が、ごく軽い口調で言う。 彼は先日、E・フォース化したシンの出現を目撃した者の一人だった。シンの姉である黒岩ミサや、彼女が弟の復讐のために用いたアーティファクト『復讐者の黒水晶』についても知っている。 死者の思念を核に、周囲に存在する負の思念を吸収して強力なE・フォースを生み出す『復讐者の黒水晶』。 建前上は『死者の復讐を果たそうとする者の力を高めるアーティファクト』とされていたらしいが……リベリスタ達が止めなければ、E・フォースが生まれる瞬間に『復讐者の黒水晶』は爆発し、ミサは死んでいただろう。アーティファクトの来歴は不明だが、まったく性質が悪い。 リベリスタ達によりミサの復讐は阻まれ、『復讐者の黒水晶』は破壊された。 あとは、中途半端な状態でこの世に現れてしまったシンの思念を、彼が完全体になる前に倒すだけだ。 「今回もがんばっていきましょうか」 真紅のパラサイトメイルに身を包んだ『狂気と混沌を秘めし黒翼』波多野 のぞみ(BNE003834)が、懐中電灯の明かりで前方を照らす。同じく、懐中電灯を携えたアルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)が、彼女の言葉に頷いた。 廃ビルの周辺に街灯はまばらで、この一帯は非常に薄暗い。夜目が利かないメンバーの多くは、照明や暗視ゴーグルを装備していた。 最前列に立ち、“斬魔刀・紅魔”の柄に手をかけた『冥滅騎』神城・涼(BNE001343)が、ぽつりと口を開く。 「嫌がらせを苦にして自殺な。わからんでもないけれども……」 自殺という手段を選んだところで、救いが待っているとは思えない。 身内の死に直面する家族はもちろん、自分自身すらも救えないのではないか。 そういった感想は、所詮は綺麗事に過ぎないのかもしれないが―― はっきりしているのは、ここでシンを止めなければ、多くの人間が死ぬということだ。 一連の事件に浅からぬ因縁のある『Beautiful World』ユーニア・ヘイスティングズ(BNE003499)は、暗視ゴーグル越しに眼前の廃ビルを睨んでいた。 弟の自殺を目の当たりにした絶望と怒りで、復讐に取り憑かれたミサ。 姉が復讐に用いた『復讐者の黒水晶』に歪められ、彼女もろとも世界を滅ぼさんと願うシン。 今、守るべきものは何か――ユーニアは己に問い、それを深く刻みつける。 なすべきことは、決まっていた。 ミサの後悔を取り戻すこと。汚された死者の思いを、解き放つこと。 「誰も望まない復讐劇はここまでだ」 決意を胸に、彼は“ペインキングの棘”を強く握り締める。全体の隊列を確認した『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)が、「行こうか」と声を放った。 非常階段を視線で辿り、屋上を見る。 ――全ての決着を、今日、ここで。 リベリスタ達は、非常階段に向けて一斉に駆けた。 ● 非常階段に突入するリベリスタ達を見咎めて、黒い鬼火たちが集まってくる。 先頭の列を走る『Scratched hero』ユート・ノーマン(BNE000829)が、行く手を阻むように群がるE・フォースに“The RedFlash Ⅱ”――真っ赤なスピードスターの二代目――を繰り出した。柄にヘルメスの翼をあしらった赤いナイフが鮮烈に輝き、黒い鬼火を一刀のもとに切り裂く。 その直後、最後尾に位置する『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)が、ビルの外壁を背にして呪力を解き放った。バロックナイトを再現する赤き月が宙に輝き、負の感情に凝り固まった鬼火たちを次々に消し去る。 横に三人並ぶのが限界の階段で、リベリスタ達は下記の通り四列の陣形を組んでいた。 最前列、ユート、涼、まお。 二列目、アルフォンソ、詩人。 三列目、付喪、のぞみ。 最後列、ユーニア、姓、フィネ。 最前列と最後列が三人、二列目と三列目が二人。 多数の敵に囲まれることを考慮して、二・三列目よりも前後列の層を厚くしていた。 隊列を崩さぬように足並みを揃えつつ、リベリスタ達は整然と階段を駆け上がる。まおの足元から伸びる意思ある影が、彼女がこよなく愛するヤモリの形を取った。 色素を持たないアルフォンソの瞳が、血の色を湛えて戦場を映す。攻撃動作の共有で戦闘の効率化をはかる彼の隣で、詩人が防御動作を瞬時に共有して全員の守りを固めた。 赤月の呪いを逃れて迫り来る鬼火を、涼が迎え撃つ。“斬魔刀・紅魔”の紅き刀身が閃き、鴉の濡れ羽色をしたロングコートの裾が鮮やかに翻った。幻影を纏った斬撃が黒い鬼火を捉え、これを両断する。 「さて、今回は敵も多いですし、現状把握と速度が重要ですね」 レイザータクトの戦術眼をもって戦場全体に認識を広げたのぞみが、次々に近付いてくる鬼火たちの姿を視野に収めた。暗視能力を活かし、照明の向きを調整して仲間達の視界をフォローする姓が、脳の伝達処理を高めて自らを集中領域に導く。 「まずは小手調べだね。露払いは任せておきな」 複数体で固まって向かってくる鬼火を見た付喪が、宙の一点を指して魔炎を召喚した。炸裂した紅蓮の炎が、黒い思念を瞬く間に呑み込んでいく。その脇を通り抜けて殺到するE・フォースたちを、ユーニアが暗黒の瘴気で薙ぎ払った。 「邪魔すんな。話があるのはお前らじゃねーよ」 低く、途切れ途切れに聞こえてくる恨みの声を歯牙にもかけず、彼は上に続く階段を見据える。 こんなところで、余計な時間を食うわけにはいかない。 負の思念に歪められたシンが、破壊の権化となって解き放たれてしまう前に、屋上に辿り着く。 ――全員で、必ず。 ● 「雑魚には用はありません、退いてもらいますよ!」 のぞみが、神秘の閃光弾をE・フォースの群れに投擲する。網膜を焼く強烈な光が輝くと同時に、ビルを揺るがす轟音が響いた。付喪の稲妻が宙を駆け抜け、動きを止めた鬼火たちを残らず貫いていく。 屋上まで、あと半分といったところだろうか。敵は確実に増えており、倒す端から新手が押し寄せてくる。 執拗に体当たりを仕掛けてくる黒い鬼火をマントで払いつつ、アルフォンソが前方を見た。彼我の力量、あらゆる状況を見抜く眼力をもって、攻撃のポイントを定める。彼は味方を巻き込まないギリギリの地点に閃光弾を投げ込み、進路上の敵を無力化した。 使い手と同じ“fine”の名を冠する短弓を携えたフィネが、天使の歌声を響かせて皆の傷を癒す。後列の仲間達を振り返ったユートが、E・フォースの体当たりによる痺れをブレイクフィアーで消し去った。 最前列中央を走る涼の周囲に、彼の残像が浮かび上がる。細くしなやかな弧を描く真紅の長刀が唸りを上げ、疾風の勢いで鬼火たちを一度に斬り裂いた。 蜘蛛を思わせる動きで壁を這うまおが、ブラックコードを巧みに操って三体のE・フォースを同時に仕留める。黒き鋼糸の根元で、小さなヤモリのフィギュアが軽やかに揺れた。 最後尾の手すり側で守りを固めるユーニアが、己の生命力を代償に暗黒の瘴気を呼び起こす。呪いを孕んだ瘴気が踊り場のE・フォースを捉えた直後、それを追うように放たれた詩人のスローイングダガーが魔弾となり、さらに上方の一体を貫いた。 後方から仲間の状態に気を配る姓が、消耗の激しい者に自らの気力を分け与える。非常階段における戦いは、あくまでも前座試合に過ぎない。屋上で待ち受けるメインイベントのために、可能な限り余力を残しておかねばならなかった。 敵の攻撃は、いよいよ激しさを増していく。それは、目指す屋上が近いことの証でもあったが――倒しても倒しても纏わりついてこられるのでは、鬱陶しいどころの話ではない。 「チ、こうゾロゾロ押し寄せてきちゃキリがねェな」 鮮やかに輝く“真っ赤なスピードスター”で鬼火を切り伏せたユートが、小さく舌打ちする。 残像を伴う高速の斬撃で周囲の敵を一掃した涼が、彼の言葉に答えた。 「ある程度片付けたら、そのまま突破して屋上に向かいたいところだな」 「全滅させんのは、ちと骨が折れそうですしねぇ」 詩人が、彼らの後ろで閃光弾を放りながらうんうんと頷く。壁を駆け上り、突出し過ぎない程度に先行したまおが、黒き鋼糸を繰って鬼火たちを蹴散らした。 「百舌鳥さん、大丈夫ですか? 今回復しますね」 のぞみが、隣で肩を並べる付喪と自らの意識を同調させる。消耗した活力が再び満ちていくのを感じながら、付喪は「助かるよ」と礼を述べた。 性懲りもなく集まってくる黒い鬼火たちを黄金の兜越しに見て、彼女は魔力を解き放つ。 「――せいぜい、派手にいかせてやるとするかね」 蒼き稲妻が、激しい雷鳴を轟かせながらE・フォースの群れを襲った。 四散した鬼火が、闇に溶けて消えていく。 目指す屋上まで、あと僅か二階を残すのみ。階段上に群れる鬼火に向けて、ユーニアが暗黒の瘴気を撃つ。反動で身を蝕まれようと、この際構ってはいられない。 非常階段の突破に要した時間を計算しつつ、姓が自らを再び集中領域に導く。 味方も無傷とは言えないが、少なくとも脱落した者はいない。 第一の関門は、何とか全員で突破することができそうか――。 屋上での戦いは、さらに激しいものになるだろう。 気を引き締めつつ、姓は上に続く階段を駆け上った。 ● 禍々しい負の思念が、激しく渦を巻いていた。 その中心に浮かぶ少年――黒岩シンが、屋上に辿り着いたリベリスタ達に視線を向ける。 『わざわざここに来るなんて、物好きな人達だね。 もう少し待っていてくれたら、僕の方から会いに行ってあげたのに』 青白い面に歪んだ笑みを張り付かせて、シンは黒い炎を揺らめかせる。 それはたちまち勢いを増し、隊列を組み直そうと動いたリベリスタ達を呑み込んだ。 この世の全てを拒絶する呪いが、業火の熱で全身を焼く。 炎に包まれてよろめくアルフォンソを、黒き怨念の魔弾が撃ち抜いた。 「アルフォンソ様……!」 運命を削り、辛うじてその場に踏み止まったアルフォンソを、フィネが天使の歌で癒す。 予想していた以上に、シンの攻撃力は強力だ。まずは戦場の不利を補い、陣形を整えなければ話にならない。 「てめェの相手は後だ!」 シンを正面に見て屋上の左端に走ったユートが、“幻想纏い”からトラックをダウンロードした。 続いて、右端に駆けたまおが同様にトラックを置き、姓とのぞみが自分達の背後にさらに二台を呼び出す。 大型の車両で三方向に壁を作り、落下による戦線離脱を防ぐのがリベリスタ達の狙いだった。 「悪いですが、これで私達を途中退場できなくさせてもらいますよ」 シンに向き直りつつ、のぞみが声を放つ。 トラックの障壁を背にして、リベリスタ達は素早く隊列を整えた。 前衛の涼とまおがやや突出し、中衛と後衛に四人ずつ振り分けられた八人が互いを庇える距離につく。 「こっからが本番だね。皆、気合入れていくよ!」 陣形のほぼ中心に位置する付喪が、幾重にも魔方陣を展開しながら口を開いた。 己の全てを速度に最適化し、身体能力のギアを最大に高めた涼が、“斬魔刀・紅魔”の切先をシンに向ける。 「災厄は止めなきゃいけないからな。哀れに思わなくはないが、ここで復讐は幕引きだ!」 『やってごらんよ。君達にできるものならね!』 せせら笑うシンの全身から、再び黒き炎が上がった。 炎にまかれるリベリスタ達を狙い撃つように、無数の黒鎖が伸びる。猛毒を帯びた鎖がまおと付喪の手足に絡みつき、二人の動きを止めた。 敵の攻撃を後衛に届かせまいと大盾を掲げるユートが、邪を退ける光で黒炎を消し去り、毒の鎖を砕く。 鬼火のE・フォースが屋上に集まりつつあるのを見たアルフォンソが、機先を制してフラッシュバンを投げた。神秘の閃光弾が炸裂し、範囲内にいた鬼火たちを封じ込める。 認識を広げ、屋上の全てを視野に収めた詩人が、シンの動きを先読みしてスローイングダガーを放った。 避けきれず肩口を貫かれたシンに向けて、茶化すように口を開く。 「ねえねえ、復讐するのに力を蓄えてるこの瞬間どんな気分?」 対するシンは、魔弾に穿たれた傷も意に介さずといった風情で邪悪な笑みを浮かべた。 『楽しいよ。力が満ちて、全てを滅ぼし尽くす時を想像するだけで笑いが止まらない』 天使の歌を響かせて仲間達を癒すフィネが、シンをじっと見つめる。 「どうして、死ぬ事を選んだのですか……?」 『さあね』 おざなりに応じる彼に、フィネはさらに言葉を重ねた。 「革醒者の家系に生まれたあなたは、世界なんて簡単に壊せると知っていたはず」 『あいにく、僕は出来損ないの役立たずだったからね。 力もなければ、現実に立ち向かう度胸もなかった。そんな自分を思い出すと、反吐が出るよ』 「それだけ、ですか」 『……何が言いたいんだい』 なおも食い下がるフィネを、シンは不快げに睨む。 「お姉さんに知られること、怖かったのでは、ないですか」 『相談はしたさ。あの頃の僕は、姉さんに頼りきっていたからね』 「あなたが受けた仕打ちの全てを、話しましたか」 一瞬の沈黙。それだけで、フィネは確信する。 シンは、苦しみの全てを姉に背負わせることができなかった。 そうやって抱え込んだ痛みに押し潰されて、自ら命を絶ったのだ、と。 ――その弱さは、優しい強さ、何にも代え難いもの。 ヤモリの形をした影を従え、まおがシンに迫る。 地を這うようにして間合いを詰めた彼女は、シンの懐に潜り込んでオーラの爆弾を炸裂させた。 『この……ッ』 大きく表情を歪めたシンが、まおを怨念の弾丸で撃つ。 湧き上がる黒い思念が衝撃波と化し、リベリスタ達の全身を打った。 吹き飛ばされたまおの小柄な体を、ユーニアが受け止める。 「有難うございます、ユーニア様」 まおの礼に頷きを返しつつ、彼はシンに視線を向けた。 「力を蓄える前に殺さないと不味いな」 現状でこの強さだとするなら、完全体になった暁にはいよいよもって手がつけられなくなるだろう。何としても、討ち漏らすわけにはいかない。 暗黒の瘴気を呼び起こすユーニアに続いて、姓が煌くオーラの糸でシンを狙い撃つ。 疾風の如き速力を宿した涼が、そこに鋭い斬撃を繰り出した。 「此処で確実に、きっちりとカタをつけてやるぜ!」 真紅の軌跡を幾重にも描く斬魔刀が、シンに無数の傷を刻む。アルフォンソが誘導性の真空刃を放ち、空中から追い撃ちを加えた。 『よくも……よくもッ!!』 怒気も露に、シンが叫ぶ。彼の感情に呼応するかのように鬼火たちが飛び回る中、黒い炎が屋上を覆い尽くした。 呪いを帯びた漆黒の鎖が蛇の如くのたうち、リベリスタ達を絡め取ろうと一度に襲いかかる。 大盾で鎖を弾いたユートが、ブレイクフィアーで炎と呪縛を払った。 直線的な動きの鎖はともかく、戦場全体に及ぶ炎は射線を遮っても後衛に届いてしまう。自らも火傷を負ったのぞみが、癒しの微風で前衛を回復した。 「流石に負傷が目立ってきましたね。でも、絶対に皆で無事に終わらせてみせます!」 彼女の言葉に頷いた姓が、意識の同調でユーニアに力を分け与える。 仲間達を支え、一人でも多く生かす――それが、自分の役目だ。 ● 群がる鬼火たちを引きつけ、まおが両手のブラックコードを軽やかに振るう。宙を舞い踊る鋼糸が近接距離の鬼火を一掃した直後、ユーニアが暗黒の瘴気で後続を薙ぎ払った。 付喪が荒ぶる稲妻を放ち、黒き思念が支配する屋上を霹靂の蒼で照らす。 あくまでも、優先すべきはシンの撃破だ。鬼火の数が増えすぎないように叩きながらも、その元凶であるシンを攻撃目標に含めるのは忘れない。 『どうして邪魔をする……!?』 シンの口から燃え上がった憎しみの炎が、大渦となって襲いかかる。 『僕は復讐してやるんだ! 僕を虐めた奴らと、見て見ぬフリをした連中に! この世界の誰も、僕を救ってはくれなかったッ!!』 膨れ上がった負の思念が、強烈な衝撃を伴ってリベリスタ達の全身を打った。 咄嗟に身を伏せ、地面に這いつくばって直撃を免れたまおの後方で、アルフォンソがトラックに叩き付けられて意識を失う。 「自分を殺した世界が憎いってか。……わかり易い野郎だな」 吹き飛ばされた涼を両腕で受け止めたユートが、眉間に皺を寄せて呟いた。 彼に礼を言った後、涼は素早く体勢を立て直して紅き斬魔刀を構える。 敵の攻撃は確かに強力だが、それで臆する涼ではない。 むしろ、彼は逆境に陥れば陥るほどに奮い立つ性質だった。 「神城の底力を見せてやんぜ……!」 地を蹴った次の瞬間には、もう最高速に達している。 神速の勢いでシンに迫った涼は、すれ違いざまに無数の斬撃を叩き込んでいった。 動きを封じることが叶わないなら、倒れるまで攻撃を続けるのみだ――。 『復讐して……何が悪いッ!!』 邪を退ける光を輝かせるユートが、シンの叫びに答える。 「てめェの理屈もある程度は正しい。やられたらやり返すってなァ筋が通ってる」 『だったら――』 「“ある程度”だ。無限に正しい物なんて世の中にはねェ」 遮るように言葉を重ね、ユートはシンを睨んだ。 「……やり過ぎだって言ってンだよ。止めるぜ」 ちくしょう、とシンが絶叫する。 なおもこちらに向かってくる鬼火たちを、詩人が閃光弾で黙らせた。 「邪魔すんな空気読め」 シンの攻撃が激しさを増す現状、雑魚にいつまでも構ってはいられない。 隊列も射線も関係なく押し寄せる黒い炎を前に、姓がフィネを庇う。 全体回復が唯一可能なフィネと、チーム随一の火力を誇る付喪は、この戦いにおける生命線と言って良い。 アルフォンソが倒れた今、彼女らを失っては戦線が瓦解する危険すらある。 「運命を削ろうが、この身を捨てようが、最後まで守り抜く――!」 のぞみが、涼に癒しの微風を届けながら声を上げた。 「最後の正念場です、皆で一気に行きましょう!」 シンに向かって駆けながら、それにしても――と、まおは思う。 吹き飛ばしたり、炎や毒の鎖をばら撒いたり。彼の戦いぶりはまるで、まお達に近付くことを避けているようにも見える。 それは、もともとシンが抱いていた思いなのだろうか。 あるいは、『復讐者の黒水晶』を通して伝えられた、彼の姉の思いなのか。 (このような気持ちを、黒岩様のお姉様はずっと一人で抱え込んでいたのでしょうか?) 仮に、そうであるとしたら。 「……正面からぶつかって、スッキリさせてあげるのがお姉様のためだと、まおは思います」 吹き荒れる暴風の如き負の思念から目を逸らすことなく、まおはそこに突っ込んでいく。 小さな手に握られたオーラの爆弾が、至近距離でシンに炸裂した。 呪いの言葉を吐くシンを見て、付喪が溜め息を漏らす。 「全く、姉弟揃って自分の事ばっかりかい。仕様の無い連中だよ」 とはいえ、人間は得てして自分のことで頭が一杯になってしまうものだ。殊更に文句を言うつもりはない。 それに、付喪は決めていた。 ミサと相対した時、彼女にそうしたように――シンの全てを受け止めると。 「全部、吐き出していきな。あんたの思いってやつを、見せてごらんよ」 言の葉をのせて、蒼き雷が奔る。 シンが、苦しげに声を絞り出した。 『僕の気持ちなんて、誰にも、わかるもんか……ッ! みんな、消えてしまえばいいんだ……この世界の、何もかも!!』 底無しの絶望と憎悪が、全てを焼き尽くす業火と化す。炎に包まれたのぞみが、その場に崩れ落ちるように倒れた。 「……っ!」 黒炎の熱に耐える涼の胸を、怨念の弾丸が貫く。噴き出す鮮血が、彼の半身を紅く染めた。 ――倒れてる場合じゃない。 逆境に燃え盛る運命(フェイト)が、闇に閉ざされかけた涼の意識を繋ぎ止める。 「身体が動く限り、なんでもやってやるぜ!」 彼は“斬魔刀・紅魔”を強引に構え直すと、そのままシンに打ちかかった。 疾風の剣さばきは命の危機に瀕してなお研ぎ澄まされ、音速の連撃で敵を追い詰めていく。 『憎い……全てが、憎いッ!!』 シンの叫びは、もはや泣き声に近い。癒しの福音を響かせながら、フィネは渦巻く悪意に目を凝らす。 歪んでしまったとはいえ、核になっているのはシンの思念。 愛憎と執着の中には、彼が抱え切れなかった想いが埋もれているはず。 たった、ひとかけらで良い。 この黒い渦の中から掬い取って、ミサに届けることができれば――。 その時。 フィネの傍らに立って彼女を庇い続ける姓が、「そりゃ、憎かったろうよ」と口を開いた。 こちらを向いたシンの視線を、三白眼で受け止める。 「君を苦しめた奴らに必要なのは、復讐ではなく裁きだろう? 心の傷を証明するためには己の死が必要だった―― 復讐を望んでたなら、生きてるうちに遺書に書いた事を姉に話せば良かった筈だ」 シンがそれを姉に隠していたのは、先のフィネとのやりとりからも明らかだ。 ――何故? 問いかけに沈黙を返すシンに、姓はさらに声を重ねる。 「君の事だろ? 思い出せよ」 『……知らないよ。そんなことは、もう忘れた』 「姉の目の前で身を投げたのも、ただ、助けて欲しかったからじゃないのか」 『やめろ! それ以上……』 シンの制止を無視して、姓は決定的な一言を放った。 「最後の最期に本当に望んだのは救いの手だった……違うの?」 震える手で、シンが自らの顔を覆う。指の隙間から、涙が溢れた。 『……違う……違う、違う違う違うッ!!』 言葉とは裏腹に、その表情が、声が、涙が、姓の問いを悉く肯定する。 『姉さんだって、僕を助けてくれなかったじゃないかッ! 僕は……僕は……ッ!!』 黒い憎しみを纏ってなおも叫び続けるシンに、ユーニアが駆けた。 「お前はあの人の弟なんかじゃねえ。 たくさんの人の気持ちを歪めて生まれた、ただのバケモノだ」 間近に見るシンの顔は、ミサのそれとよく似ていた。 でも。だからこそ。悪意の塊と成り果てた彼を、シンと認めるわけにいかない。 禍々しく輝く“ペインキングの棘”を、ユーニアは真っ直ぐに繰り出す。 「シンと違って、お前の存在は誰にも望まれちゃいない――だから、消えろ」 告死の呪いがシンを貫いた瞬間、黒い思念が弾けた。 周囲を漂っていた鬼火が霧散すると同時に、シンの身体も崩壊を始める。 詩人が、言い残すことはあるかと彼に訊ねた。 「おねーさんに伝えますよ?」 その言葉が、届いたのかどうか。シンは最期の瞬間、僅かに唇を動かす。 ――姉さん。 そして――かつて黒岩シンだった少年の思念は、この世から消滅した。 終わりを見届けたフィネが、ふと、上空を見上げる。 ミサの昏睡が、シンを生み出した『復讐者の黒水晶』の副作用であったとしたら。 彼女もまた、どこかで顛末を眺めていただろうか――? ● 黒岩ミサは、ベッドの上で病室の白い天井を眺めていた。 目が覚めたのは、つい先ほどだった。随分と長く眠っていたらしく、体が言うことをきかない。 気絶する前のことは、はっきりと覚えている。 『復讐者の黒水晶』が砕かれた直後、彼女は間違いなく弟の笑い声を聞いた。 記憶は、そこで途切れている。おそらく、その直後に気を失ったのだろう。 あの後どうなったのか、今のミサに知る術はない。 深い闇をずっと漂っていたような、朧な感覚だけが残っていた。 弟を喪った痛みや、弟を死に追いやった者たちへの怒りは、まだこの胸にある。 しかし、あれほど荒れ狂っていた感情は、不思議なほどに凪いでいた。 病室のドアを叩くノックの音が、ミサを現実へと引き戻す。 彼女は軽く息を吸い、掠れた声で「……どうぞ?」と告げた。 「よォじゃじゃ馬。やっとお目覚めかよ?」 病室に入ったユートが、ミサの顔を一目見るなり声をかける。 何と答えて良いかわからず、曖昧に沈黙を返すミサに、付喪がいきさつを簡潔に告げた。 「あんたの弟は、今度こそ逝ったよ」 負の感情に歪んだ酷い有様だった――と、事実をありのまま、言葉を飾ることなく伝える。 唇を噛んで俯くミサに、付喪はそっと問いかけた。 「……実際のところはどうだったんだい?」 「え?」 ミサが、驚いて顔を上げる。 「私に教えておくれよ。あの子は、どんな子だったのかってさ」 付喪に促され、彼女は懐かしむように視線を宙に彷徨わせた。 「シンは……あの子は」 細めた目の端に、涙が滲む。 堰を切ったように、感情が溢れた。 「優しい、子でした……」 嗚咽で、続く言葉がなかなか出てこない。 ようやく――ようやく、ミサは弟のために泣くことができたのだろう。 復讐よりも、何よりも先に。死人はまず、こうやって悼むものだ。 涙に言葉を詰まらせながら、途切れ途切れに弟を語るミサの肩に、付喪が手を置いた。 「まあ、私も年なんで忘れたら、また聞きに来るから。その時は、また頼むね」 涙を拭いつつ、ミサが小さく頷く。 黙ってそれを見守っていたユートが、驚くべき一言を放った。 「――で、続けるか? 復讐」 ミサよりも先に、周囲にいたリベリスタ達がぎょっとして彼を見る。 ユートは、平然と言葉を続けた。 「俺達は立場的に連中の命を守らなきゃならねェんだが―― お前が連中狙うの止める気はねェんだわ、俺は。 言ったろ? 復讐は気持ちの問題だ。納得しなきゃ終わりはねェ」 リベリスタとしての道に反する言葉と承知しているが、それでもこれだけは譲れない。 かつて自分も通ってきた道だからこそ、彼にはわかる。 復讐は、理屈で片付けられるものではないのだ。 「ここでお前殺して終わりにする気もねェしな。気が済むまで付き合うぜ?」 ユートが本気で言ってくれているのは、ミサにもわかった。 弟を死に追い詰めた同級生たちを、恨んでないと言えば嘘になる。 心揺らがせる彼女を見て、ユーニアが口を開いた。 「正直……俺は復讐が間違いだって言えるような立場じゃないんだけどな。 やり場のない怒りや憎しみを向けるために、俺は戦い始めたから」 それは、失ったものに対する思いですらなく。 自らをひたすら戦いに駆り立てる、ただの妄執に過ぎなかったのかもしれないが――。 「でもな、戦ってる間に違うものが見えてきたのも確かなんだ。 俺ガキだし、上手く言えねーけど…… あんたもまた、何か守るものを見つけられるといいな」 ユーニアの言葉に、ミサが僅かに表情を綻ばせる。 彼女は、ありがとうと言いかけて――そして、気付いたようにリベリスタ達を改めて見た。 「そういえば、ちゃんとお礼を言っていなかったわね。……ありがとう」 気持ちの整理はまだ完全についていないまでも、彼らに助けられたことは事実だ。 この場にいないメンバーも含め、自分たち姉弟に関わったリベリスタ全員に、ミサは心から礼を述べる。 病室の空気が少し和んだところで、詩人がかねてよりの疑問を口にした。 「ひとつ聞きたいんだけど、アレって貰い物?」 彼は『復讐者の黒水晶』について真実を告げた上で、どのような経緯でミサの手に渡ったのかを問う。 仮に誰かから譲り受けたのであれば、ミサの復讐心を利用して死者を玩んだ上、彼女を亡き者にしようとした人間が存在することになる。 「あれは、処刑具のアーティファクトと一緒に、死んだ父のコレクションに紛れていたものよ。 父は集めるばかりで自分で使うということをしなかったから、本当のことは知らなかったはず」 「お父さんは、どういうルートでソレを?」 「……ごめんなさい、そこまでは分からないわ」 そのコレクションを探せば面白いモノが出てくるだろうか――などと考えつつ。 詩人は、ふと思いつきを口にする。 「どーせなら期間限定リベリスタやってみます? 正義の味方のが弟さんにカッコつくでしょ」 ミサは、虚を突かれたように目を丸くして―― ややあって、「考えてみるわ」と微笑った。 復讐も何もかも含めて、彼女はこれから自分が何をすべきかを考えていくことだろう。 ようやく笑うことができたミサを見て、フィネは一連の事件を振り返る。 全ては、シンがミサに生きてと伝えるための、必要な遠回りであったのだと―― そう、思いたかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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