●~日常、あるいは平凡な日々~ 「こんにちは~ あ、シロもいたんだ? こんにちは、シロ」 「ワフン」 「お疲れさまです~ ……あれ? どうしたんですか? マルコちゃん?」 少女、ヤミィの問いにマルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は、笑顔で手に持っている機械を見せびらかした。 一般的にデジタルビデオカメラ等と呼ばれる動画を撮ったり音を一緒に録音したりするカメラである。 一般向けに発売された当時は大きくて両手で支える様な大きさだったというそれも現在は軽量化され、片手に収まるほどに小さくなっている。 「えへへ、ちょっと借りちゃいまして。せっかくなので、これから皆さんを撮ってこようかなって思うんです」 良かったらヤミィさんも一緒にいかかがですか? 笑顔でそう言われて、少女も笑顔を返してみせた。 「楽しそうですよね~じゃあ、せっかくなんで私も」 「皆さんが普段、どんな事してるか……こっそりと突撃調査ですよ」 「えっ!? こ、こっそりとかは、流石に……」 「でも、興味ありません? あ、もちろん忍びこんだりとか、そういうのは絶対しませんので!」 「……うぅ……そ、そういう事なら……まあ、ちょっと、興味もありますし」 「はい、決定。それじゃ……」 笑顔で行ってから、マルガレーテは足元のリベリスタにも尋ねてみた。 「シロも一緒に行く?」 問いかけに犬のリベリスタは少し首を傾げた後、元気にワンと、頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月30日(土)00:06 |
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●出発前のトラブル ボクもみなさんの行動には興味がないわけではないのだ。 「こんなおもしろいことずるいのだ! 混ぜて欲しいぞ」 「いや、その、何て言いますか……マ、マルコちゃん? ……あれ?」 「逃げたのだっ!?」 「むむっ!? 追いかけましょう、雷音ちゃん!」 「がってんしょうちなのだ!」 ●修練の日 森の中で胡坐をかき、精神統一。 シェリーは魔道を極めるための基礎トレーニングの最中だった。 体に流れる魔力の流れを正しくコントロールし、緩やかに周囲を流れるマナを体内へと取り込んでいく。 「大自然は、無駄なことを一切しない」 空虚な時間や虚無な空間を満たすべく造られたモノは何も無い。 「魔道とはこれら自然を操り掌ること」 魔力とは自然の力を己が内へと掴み取る力。 自然とは即ち、万物の根源。 ―Mana―である。 詠唱するように呟きながら、シェリーは修練を続けていく。 映画を見る。東洋哲学系の本を読む。 それが天斗の余暇である。 一番の趣味は体を鍛える時。箱根や秩父で、かけずり回りながら一人ハイになる。 「そういうのも良いですね」 「今日はじゃあ、どこかに行ってるんですかね?」 入手した情報を基に2人はそんな感想を漏らしたが、それには検閲が入っていて……子供たちが知ってはいけない情報は削除されていた。 もっとも、単語を聞いても2人は首を傾げるだけ……いや、今の時代ネット等あるし、やはり知られるべきではないだろう。 ●三高平市街地にある雑居ビル 「では悪の秘密結社の幹部会議を始めまーす」 「ミーティングを始めるとしよう」 フィオレットの言葉に、達哉が頷いた。 「ていうか……何でボクと兄さんだけなのさ?」 「娘達は友達(一般人)とゲーセンに遊びに行ったし、他の面子は本業があるからな」 「ユーヌはドラゴンとデート行っちゃったしさー」 末永く爆発しろー!! って感じ? そう言い放つフィオレットを眺めてから、達哉は真剣な表情で、とにかくだ、と説明した。 「本国の経済が危ない以上、僕らが稼ぐしかない。当面は食品を売りつつ資金を稼いでいこう。兵器や人員の増強はそれからだな」 そこで、がらっと雰囲気が変わったように感じられたのは……見物者たちの気分だろうか? 「よく来たな。チーズケーキを焼いてみたんだがどうだろうか?」 「組織拡大のための商品開発ってやつ? 食べたら感想聞かせてほしいな」 「あと地中海オレンジ100パーセントのお土産(2リットルペットボトル)もつけるので美味しかったら宣伝してくれるとうれしい」 「悪の秘密結社って言ってるけど悪事の作戦会議してるわけじゃないから」 「ついでに対弾防刃仕様のバニー服もお土産にあげよう。依頼で着用してくれたまえ」 (……あの? なんで私たちの事ってバレたんですかね?) (分からないですけど人によっては千里眼とかありますしね?) ●堤防のふたり まあ、別に家の中でいちゃいちゃちゅっちゅしてもいいんだが……竜一は、思った。 「それだと、ほら、思春期な俺としてはさ、こう、ね……良い子の全年齢でそれはマズイというわけで……」 「まぁ、我慢せずに思春期的なのぶつけて来ても構わないんだが。我慢は体に毒らしいぞ? 何をしたいのかは知らないが」 ユーヌたんに、そんなこと言われたらっ!? 「ま、まあ! そういうわけだからお外でデート! 具体的には、釣りデート! フィイイイイイイッシュ!」 ダメになりそうな自分をドラマ判定に成功したかのように無理矢理に動かして、竜一はユーヌと一緒に三高平の港の堤防で釣りをしていた。 麦わら帽子を被ったユーヌは竜一の隣に座りこむ。 釣るのは竜一担当、自分は見学。 頑張れ、と気のない声援を送りつつ竿の動きに一喜一憂する彼を……ずっと、見続ける。 (竜一はくるくる表情が顔に出て退屈しないしな) 「悪戦苦闘見るだけで十分楽しいぞ?」 つまらなくないかと問われれば、そう答えて。 冷たいお茶買ってきて、熱中している竜一の頬に……ぴとっと押し当てる。 「随分集中してたな?」 楽しいかと問えば、釣れなくても俺は楽しいと彼は答えた。 「俺にとって重要なのは、ユーヌたんと一緒にいられることだからね!」 ぺろぺろ! その言葉に、少し間を置いてからユーヌは応えた。 「うん、偶にはこういう休日も悪くないな」 ●三高平の商業地区 「あ、チョコミントキングサイズトリプルカラースプレートッピングのワッフルコーンでお願いします」 真っ青な空、心地の良い風、笑顔溢れる平和な街並み。 それを感じるだけで、心が温かくなり笑みが零れる。 目的なく過ごす、平穏な時間。 キャンペーンをしているアイスクリーム屋さんを発見した亘は……ふと視線を感じ辺りを見回した。 (確かアークの……マルガレーテさん達でしたか?) 「ふむ、なぜここに居るかは分かりませんが……これもまた縁ですね」 彼女達の分のアイスも頼みむと、亘は自己紹介しつつアイスを手渡した。 お礼を言う彼女たちに、暑くなってきてるので体調には気をつけてと微笑んで。 のんびりと散策を開始する。 「……調べた雑貨屋さんにたどり着けないのだ!!」 地図が間違ってるのか? アリアは辺りを見回しながら呟いた。 彼女は先日、アークに来たばかりである。 初めての日本、初めての任務、初めての一人暮らし! 一人暮らしでいるものは家から送ってもらった。 (でも他にも色々みてみたいのだ) 「三高平の地図は日本に来る前から勉強してたから完璧!」 そう思って雑貨屋へ出発したのである。 「三高平、広い街なのだ……」 仕方ないので休憩。 買ってみたクレープとやらを食べてみる。 「……三高平には、こんなおいしいものが売っているのか」 彼女はひとまず目的を変更した。 「いっぱい探検するのだ!!」 ●とあるデパートにて 仕事を終えた木蓮は、そのままカーテンを買いにデパートを訪れていた。 見に来たのは龍治の部屋用のカーテンである。 (……龍治は今ちょっと出掛けてて居ない。けど夏の間に戻ってくるはずだから) 涼しく過ごすためにも、今のうちに新調しておこうと思って。 「おっ……白と緑のボーダー柄か、シンプルだけど分厚すぎないし良いなぁ」 よし、これに決定! (あとで付け替えておこう、前のやつは洗濯して干そうかな?) 良い買い物をしたと帰途につこうとして……彼女は別の売り場で狼のぬいぐるみを発見した。 (銀色の狼……) ………… 我に返ると、狼を抱きしめる自分と店員の視線。 木蓮は慌てて誤魔化すように口にした。 「……さ、さて、これも買うか! レ、レジはどっちかな?」 ●量販店の買物 「この手の大型量販店だと見失い易いですからね……」 「子供じゃないんスから、そんな迷子にならないッスよ」 お店を見て回る時も余り離れず迷わないようにと注意する凛子に向かって、リルはそう返した。 リトル・トイズの蛍光灯を取り変えるついでに必要そうな日用品も買ってこようという話になって、2人は此処にいる。 ちなみに空調の準備もする予定だ。 (目移りしたりはするッスけど、凛子さんから目を離したりしないッスし) 反論しつつも迷子になった時の為にと、ふたりは携帯の番号を交換した。 「凛子さんの番号……」 (便利ッスけど、なんか緊張するッスね) もちろん使う気はなかったものの……短い時間の後、凛子は量販店の休憩スペースでリルへと連絡を取る事になった。 「こういう時は便利ですよね」 そう言って合流し、ちゃんと買い出しリストにかいてあるものが揃っているかを確認してレジに向かう。 「ところで、このチーズのお菓子は?」 会計を終えた後に凛子が尋ねると、リルは……口籠ってから、ちょっと視線をそらす感じで口にした。 「えっと……………今日のおやつッス。凛子さんと一緒にお茶したかったッスから」 その答えと態度に、くすっと微笑んでから。凛子はリルに提案した。 「帰ったらまずは紅茶でおやつにしましょうか」 ●夏の日差しに そろそろ日差しも肌に刺さるような季節になってきたから。 「水着を、買いましょう」 「水着! いいねーっ! もう夏が来てるって感じだねっ」 そんなやり取りがあって、こじりと壱也はショッピングモールを訪れていた。 「明るい色が良いかしら」 「こじりさんは、綺麗な黒髪だし、色も白いからなんでも合いそうだねっ」 考え込むこじりに向かって、壱也は黒も白も、派手な感じでもきっと似合うと断言する。 ビキニ系か、ワンピース系か……ワンピースは少し子供っぽい? 考えつつ、こじりは傍らの壱也へと視線を向けた。 「どれがいいかなぁ~?」 主に可愛い系に目移りしているようすの彼女に向かって。 「羽柴さん。貴女、これどう?」「どれ~? ってそれスクール水着じゃん!!」 「何よ、冗談よ」「やめて!! なんか色々思い出すし!」 「貴方の彼は、どんなのが好きなのかしら」「ど、どんなのだろう……考えたことないなっ」 「フリル付きだと、胸が小さくても大きく見えるらしいわよ」 「フリルか……いいね、こう、ボリューム大事だしね……」 結果、壱也はフリル花柄のビキニを持ってレジへと向かった。 こじりは見栄など張らないからどうでも良いと、白と黒のビキニを一点ずつ。 ……あと、男物の水着も一点。 「この後はそうね、餡蜜でも食べに行きましょう」 「うん! 甘い物食べたい! 美味しいところ知ってるよ~!」 そう決めて、ふたりは次の目的地へと足を向けた。 ●大御堂重工 「くぁー、今日は平和だなぁ……まったく何より……」 慎也はのんびりとした休日を満喫していた。 なんか地下の方から変な気配とか音とか感じるけど、表向きはいたって平和といえる。 それは平和だろうか等というツッコミは入れない。 「……こんなことひとりぼやきながら、ずっとスクワットって……」 俺、他にやることないのか……? 「……って、ケータイなってた……」 確認して、イヤーな予感を感じつつ……それでもぼやきながら其処に向かう辺り、彼の性格というべきか。 彼が入っていったビルには、よくわかるようにグループの名が記されていた。 「……ここはこっそりは無理そうですよね?」 「もう変装して取材とかにしましょうか? 帝国とかバレてたし」 「……ううむ……」 「……ワウン?」 そんな会話をしていた数人と1匹は、ビルの脇に大型のトラックとリベリスタを発見した。 御龍と、彼女の自慢のデコトラ『龍虎丸』である。 駐車場で荷物の積み込みを行う為に待機をしていた彼女は、空いた時間を利用して愛車を整備したり洗車したりしていたのだ。 演歌をかけながら、のんびりと丁寧に。キラキラと輝くメッキパーツには丹念にワックスやコーティング剤をかけて。 『二代目龍虎丸』は25tの大型デコレーショントラック。 荷台の箱には運転席側に勇ましい龍の、助手席側には咆哮する虎のペイントが入っている。 全体の飾りは煌びやかでド派手。夜になれば電飾が燈され更に魅惑的に輝くその愛車を、彼女は嬉しそうに綺麗にしていく。 その様子を一通り見物すると……一行は再び視線をビルへと戻した。 ちょうどその時、見学に訪れたミリィの姿を、彼女たちは目撃した。 雑居ビルを改造した大御堂重工の三高平支部は、1階がロビー、2階以降は仕事関連の部屋、最上階は彩花の私室という構成になっている。 地下室は物置兼試作開発室兼訓練場兼バカメイドの居住区。 ……バカメイド? ビルの隣には駐車場兼大型車両用出荷口の広スペース有。 その最上階の私室にて、彩花は書類の整理……と、学校の宿題を片付けていた。 「この手の処理はこまめにやる事が重要ですからね」 溜めれば負担も大きく、処理する意欲も湧き辛くなる。 その遥か下の階ではモニカが正面受付で、知人と……怪しくはあっても素性はダダ漏れの取材希望者について対面していた。 月に2、3回ほど完全休養と称してほぼ丸一日部屋で寝ている彼女だが、今日は疲れも眠気もない。 許可を出すと早速、モニカは来客達をお嬢様、彩花の許へとを案内した。 取材と名乗る見学希望者たちを、彩花はお茶を出して歓迎する。 「客の前だと気取った恰好してますけど普段ジャージ姿なんですよこの人。まあウソで……」 「その辺で寝てなさい馬鹿メイド!」 言い切る前にモニカへと腹パンが突き刺さる。 そんなやり取りの後に。 のちほど射撃訓練でもご覧に入れますと話しながら、モニカは一行を地下室へと案内する。 「大御堂重工のお話は色々と聞いてはいましたけど、こうして実物を目にするのは初めてです」 ミリィはそう言ってからモニカに案内の礼を述べた。 チャイカの仕事を見学に来たついでに、他の部署も色々と見て回ってきたのである。 「今回のOB-3では燃焼室の加工を……とと、こちらは企業用の説明でしたね。ご覧の通り、酸素と水素でこんなに大きいエネルギーになるんです」 チャイカは出来るだけ専門用語を使わないように、簡単な言葉でミリィへと実験について説明する。 だからといって理論そのものが簡単になる訳ではないのだけれど、伝えようとする気持ちを強く感じて、ミリィは彼女の説明を確りと聞き続けた。 そういった事を趣味としているチャイカは、重工の地下で開発や実験、それらの手伝いなどを行っている。 今回は新型ロケットエンジンのお披露目だった。 混合の液体燃料を使用した強力な燃焼実験。解説はもちろん彼女である。 その実験の手伝いに、さり気なくエナーシアも参加していた。 「何でも屋JaneDoeOfAllTradesは週末でもお仕事なのだわ」 重工には仕事探し等でよく入り浸っている。 様々な人種が出入りするし、重工自体からの仕事もあるのだ。 常人には難しくともリベリスタには容易という仕事も世の中には意外とある。 「ロケットエンジンの燃料ってだいたい強毒物なのが危ないとこだけど……」 (まあ爆発させる頻度は某番組よりは少ないから何とかなるでしょう) 少々物騒な事を考えたりもしたものの……無事に実験は完了した。 成功への祝辞を述べてから、エナーシアは自分のスケジュールを確認する。 一方で、嬉しそうにしているチャイカを見て自身も嬉しく感じながら。 解散後にミリィはチャイカへと話しかけた。 「見てくれましたかっ!? 成功しましたよー! 嬉しいのです!」 嬉しそうに抱きついてきた彼女に驚きつつも、確りと受け止めて。 「ええ、見てましたよチャイカさん。おめでとう御座いますっ!」 ミリィは笑顔でチャイカを祝福した。 ●公園のお昼休み 「……誰かの指示が欲しい、命令して欲しい……」 公園の木陰に、目立たないように。リンシードはこっそり座っていた。 今日は依頼もなく、特に、用事もなく……こう、ぼけーっとするしかないのである。 そのまま数十分間ほど過ごして……彼女はサンドイッチを取り出した。 「ふぅ……ご飯でも食べましょうか……」 もぐもぐと食事をして……ふと、鳩にパンを屑状にして撒いてみる。 「いっぱい集まった……ふむぅ……」 つられて集まった鳩たちを見て、満足気に呟いて。 「……あ、あそこにいるのはフォーチュナさん……?」 依頼か用事かと考えたものの、すぐにその人物は何処かに行ってしまって。 リンシードは少し考えこんでから……再び鳩たちに視線を向ける。 いつものように、公園で。 ベンチでお弁当を食べた後は、公園にいるネコたちと遊ぶ。 それがエリスの休日の過ごし方だった。 公園の木の下で……ネコたちと一緒にお昼寝するのが、彼女は大好きなのである。 同じく公園で昼食を食べながら、ツァインは携帯端末を開いていた。 MGKの活動として市内巡回をして、ちょうど昼休みに入った所である。 『街中でマルガレーテとヤミィ発見!』 『シロ見かけた。やっぱ可愛いなぁ~』 (あの二人と一匹とはゆっくり話した事ないんだよなぁ、会えるといいなぁ……) 直後、クーンと鳴き声が聞こえて見下ろすと…… 「ってシロきたぁー!? あぁ、ご飯に釣られた訳ね。いいよいいよ、あげる。」 頑張れよ? でも無茶すんな等々声をかけ、撫でて、遊んで。 マルガレーテたちも発見したものの、隠れられたので気付かないフリ。 「ホラ、そんじゃお前も二人のとこ戻れ、またな~」 ワウンと鳴いて背を向けたシロを見送りながら、ツァインは小さく呟いた。 「またいつかゆっくり話せるといいなぁ」 ●あかつきの午後 「お散歩かお遣いの途中かな?」 訪問に驚きはしたものの、カイは笑顔で来客を歓迎した。 「折角ですから、お菓子を食べていきますか?」 訪問者、シロの頭を優しく撫でながらたずねると、嬉しそうにワンと鳴き声が返る。 週末。まったりと珈琲館を営業していたカイは、注文の珈琲を淹れつつメニューを夏向けに差し替えなければと思案している所だった。 どうぞと差し出せば、シロはお礼を言うように鳴いて、そっと……散らかさないようにお菓子を食べ始める。 「お遣いを頼んでもよろしいですか?」 マカロンを包んだ風呂敷をシロの首に括り、お裾分けでマルガレーテさんやヤミィさんに届けてもらいたいのですがと頼めば、シロは再びワフンと鳴いた。 ●いつものふたり 「フツの似顔絵、かけたっ! どう、似てるでしょっ……!」 「よく似てると思うが……このオレ、ちょいとかわいくなりすぎじゃねえか?」 週末の学校の図書室に、制服を着たあひるとフツの姿があった。 「フツの方が1つ先輩だから、教えてもらうんだ……っ!」 そう意気込んでの勉強会だったのだが……一緒に、ノートの端にお絵かきしたり、お手紙書いたり……の方が、メインになって。 けれど、笑顔のあひるを見るとフツも嬉しくなる。 (あひるからはこう見えてるのかと思うと、照れくさいが嬉しいネ) そのまま学校の帰り、2人はクレープ屋へと足を向けた。 (恋人つなぎで、フツの隣を歩いて……幸せだぁ) 違う味を1つずつ買って……帰りながら、ほお張って。クリームとイチゴたっぷりで、甘くて幸せ。 「フツの隣で、もっと幸せ!」 (この幸せを、一口ずつ、分けっこしよう……っ!) そう思って差し出せば、フツは大きく口を開いて。 「わわ……!! あひるのクレープ!? フツの一口、大きいよ……!!」 大きく一口ほお張ったフツに抗議するように言うと、大きな一口で食べちゃうもんねとあひるは口を開いて。 その姿が、本当に可愛らしくて。 「ああ、ほら、大きな口で食べたから、ほっぺにクリームついてるぜ」 片手は繋いで、片手はクレープ。 「両手が塞がってるんだから、舌で舐めとるしかねえよな」 そう言ってフツは、悪戯っぽい笑みを浮かべた。 ●アーク本部にて 「さおりんにおでいとに誘われたのです」 いちごのデザートが美味しいお店につれていってくれるって。 あたしの為にいろいろチェックしてくれているのです。 お食事の後は夜のドライブをしてそれから…… 「……やだ恥ずかしい」 早く残りのお仕事終わらせて、おでいとの時間を増やすのです♪ 「……はっΣ!? シロさんΣ 何時の間にそこにいたですΣ」 我に返ったそあらは、その場にいた犬リベリスタに慌てて質問した。 今の聞いてたです? たずねると、シロは首を傾げた。 今来た所? たずねると、シロは頷いてみせた。 「あーよかったのです……え!? 何でもないのです」 そあらは胸をなでおろす。 「危なかったですね……」 「……シロが居なければ即死だった」 「うむ、なのだ」 そんな会話を続けるうちにもシロは次の部屋へと向かっていく。 空いてるブリーフィングルームの様な一室を借り、エインシャントは紅茶片手にフィクサード団体の情報収集と整理をしていた。 今回デスクに積まれた本や資料は、ソレッレに関する物である。 依頼で幾つか確認出来たので、その辺りから規模や知名度等を収集していく。 二十人程度が確認されている傭兵的な小集団は、派手さはないが堅実な仕事ぶりという感じの評価を受けているようだった。 メンバー個々に関しての情報は、やはり少ない。 いずれは他のメンバーとも相見えるか…… ふと目を向けると、ちょうどシロが入って来て。 エインシャントは菓子を幾つか、小さな同業者に分け与えた。 ●くもりぞら 「あれ? シロちゃん……どしたの? ひとりで散歩?」 愛犬のモコを連れウォーキングも兼ねて市内を散歩していた遥香は、歩いてきた白いわんこリベリスタに挨拶した。 キョロキョロと辺りを見回すものの、他に知り合いの姿はない。 その間にモコはシロを仲間と認識したらしく、しっぽを振って友好的にくんくんペロペロ。 シロもクーンとしっぽをふる。 二匹を交互に撫でてながら。 「E・ビーストやゴーレムも、皆どんどんフェイト降りてきて……リベリスタの友達になってくれたらいいのにね」 ……善良なノーフェイスの人達は、言うまでもなく。 その時だけ……いつも明るく元気な彼女の顔に。 一瞬だけ、切なげな愁いが浮かんだ。 ●ひとつの、答え 「まぁ……土手にでも」 火車の言葉に、悠里は頷いた。 腰を降ろし………互いに無言の時が流れる。 彼女の事を考えているんだろう。 悠里はそう思った。 気にするなと言われるかも知れない。 だからと言って、割り切れない。 「悠里は立派だ」 絞り出すように……火車は、口にした。 オレとは違う手段で、だが……しっかりと守った。 オレは、オレの手段で。 「……掴み零した」 解ってる。 朱子が向かったのは、因縁のある敵が居た場所だ。 一緒に向かった奴等も信頼に値する連中だ。 「解ってる」 誰が悪い訳じゃあない。 オレ達はいつも全力でやっている。 「けど……解らねぇんだ」 その瞬間、朱子は満足して逝けたのか? 貫くべきを、貫けたのか? 「ごめん、僕にはわからないよ」 悠里のまぶたの裏に……何かが浮かぶ。 あの時、彼女の激情を見た。 彼女の想いを聞いた。 「彼女が命を賭ける程あの敵を許せなかった事は、確かだ」 けれど……だからと言って、命を粗末にしたわけでもないと思う。 「もっとずっと火車と一緒にいたかったと思う」 (あぁ……そうだ) それだけは、ハッキリと解ってた。 火車のまぶたの裏にも……何かが、浮かんだ。 「互いにそうだった筈だ」 後悔する様な生き方はしていない。 「だから一緒になったんだ」 「だから起こった奇跡なんだろう」 だから悠里は思ったのだ。 残った『消えない火』(かのじょ)は、ずっと火車と一緒にいたいと思ったから…… 「だから、満足かは、わからない。でも、後悔は、きっとない。」 だから、彼にと……思ったのだ。 火車は、短く口にして。 それを……消えない火を、握り締めた。 快は、自分はデータ整理のアルバイトと説明してから、ひょいとカメラを取り上げた。 このままだと、映像にマルガレーテさんが映らないよ? 「ほら、折角だからなにか喋ってよ。今日一日、リベリスタ達の日常を見て回って、どうだった?」 「……何ていうか、こう……上手く言えないんですが……」 みんな、生きていくんだな……って言うか…… 曖昧に首を傾げる少女に頷いて、快は映像について自分の意見を口にした。 編集はするにしても、消さない方がいいのでは、と。 「日常っていうのは、本当にいつ失われるか分からないから」 思い出を形に残せるのなら、そうしておいた方がいい。 「またひとり、逝ってしまったから、ね」 その言葉に、雷音が頷いた。 三高平の日常は、平和で、楽しくて……少し、物悲しくて。 「でも、みんな生きている」 そう呟いた少女の手を、ヤミィがぎゅっと握りしめた。 失われたものもある。けれども……それでも。 ●ある日の三人 「わあ、ここが三高平のゲームセンター? すっごく広いです!」 セラフィーナが歓声をあげる。 「ようこそ、私の城へ。幼少時から培ったノウハウを全て駆使して招待するわ」 糾華が慣れた様子で口にし、レイチェルはさっそくクレーンゲームでぬいぐるみ取ろうと提案した。 「クレーンゲームねぇ……何か欲しい物ある? ワンコインとは言わないけれど、安く取れると思うわ」 あ、ちょっと調子乗ってるわね、私……と自覚したものの、引っ込めない。 小さい頃からゲームセンターに通っていたらしい糾華の腕前が気になって、レイチェルはどれをやってもらおうかとクレーンゲームを確認していく。 「可愛い、動物のないかな~?」 (ゲームは好きだけど、私は上手いわけじゃないからなぁ……800円くらいで1個 取れたらいいなあ、くらい?) 一方で、巨大なぬいぐるみにひかれたセラフィーナは早速挑戦したものの。 「頑張れアーム! もうちょっと……ああっ」 がっくり失敗した彼女に変わるように、糾華が機械の前に着く。 興味津々というようすで見学していたレイチェルは、その腕前に感嘆した。 「糾華ってゲームやるイメージなかったけど、イメージ変わっちゃう」 上手いなぁと褒めちぎられて、糾華はちょっと照れくさくて。 「ありがとうございます。えへへ。このぬいぐるみ、大切にしますね」 受け取ったセラフィーナは、嬉しそうに礼を言う。 その後も皆で、対戦したり協力したり。一日ゲームを楽しんで……最後に。 「みんなでこれ撮ろう♪」 レイチェルが笑顔で指したその先を見て、糾華は少し……腰が引けた。 (ほら、慣れてないし) 「まあ、こういうのはね。ちょっと……基本ぼっちはこういうのが苦手とか……」 そんな彼女に、レイチェルとセラフィーナが。これでもかってくらいくっついて。 「仲良しっ♪ ピース♪」 「だぶるぴーす!」 「……ううん、いいわ。撮りましょ!」 皆でくっついての、記念撮影! 可愛い絵柄を選んでいっぱい、いっぱい! 「わーい、携帯に貼るね~」 きゃっきゃとはしゃぐふたりの姿が……眩しくて、嬉しくて。 機械の音が、カシャリと響く。 友達との初めての一枚。 うん、ずっと大切にしよう。 ごくごくふつうで、ありきたりで……でも、かけがえのない。 そんな日々の記憶を、胸に抱いて。 みなが、生きていく。 かつて、ナイトメアダウンで……すべてが失われた、その街で。 たくさんの人々が、命が。 昨日を抱いて、明日を目指して。 今を……生きていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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