● うねうね。 もふもふ。 ころころ。 うねうね。 うに……うに? ● 「ねこ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、端的に物を言った。 「猫っぽいアザーバイドがこっちで遊んで帰る途中で、ボールになった。今回のお仕事はボールを元に戻して、D・ホールの向こうにお帰りいただくお仕事」 猫がボール。 くるんと丸まって起きないんだね。 今回は、ねこちゃんを起こすお仕事なんだね。可愛いなあ、可愛いなあ。 「ちがう」 イヴがモニターをいじると「ねこっぽいアザーバイト」の絵が出て来た。 可愛い猫の頭から胴体、胴体と同じ太さの尻尾がどこまでも伸びてて……。 おててやあんよはどこ? 「おててとかはこの辺。一応ある。ほら、この、毛に埋もれてるの。肉球もあるよ」 なんか、すっごく短いよ!? ダックスフント――は、犬か。 マンチカンなんてもんじゃないよ? 「ヘビトカゲという、四肢が退化したトカゲがいるんだけど……」 ああ、あのほとんど蛇の。 「あれのねこ版と思ってくれれば」 うわああああん。 長いよ、長すぎるよ。 「それが、絡まった。自分たちだけでは解けなくなったらしい。体も絡まってるし、毛もからまったりしてもう大変」 直径1メートル強のボールになっている。何匹からまってるのか見当もつかない。 「冬眠中の蛇が甲からまりあって寝てるの、テレビとかで見たことない?」 イヴが参考画像とモニターに画像を表示する。 ぐぬぐに、うねうね。 「これのねこ版と思ってくれれば」 うわああああん。 「具体的に言えば、噛み付かれたり、引っかかれたり、締め付けられたりしながら、このねこだまを解いて、D・ホールに叩き込んで」 「そのまま戻したら……」 「まともに動けないから、食物連鎖の上の方の餌」 それもかわいそうだね。 「異世界の動物だから、言葉も意志も伝達できなかった。動物会話、タワー・オブ・バベル、先行隊が試してみたけどだめだった」 リベリスタが呼ばれるという事は、それなりに危ない仕事なんですね。分かります。 「でも、もふもふだから」 喜んで行ってまいります。 「これ、よかったら。猫用グルーミングキット」 痛み入ります。 「提供は、三高平市商工会議所」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月18日(月)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● この先ですよ。 魅了されると困るから、僕らはここで。 別働班が指差すほうに向かって、リベリスタたちは歩き出した。 小高い丘の上。 丘の下には、子供の背丈くらいのもふもふした塊から飛び出したにゃんこが、口々に、にいにい鳴いていた。 ● 「ぶ・さ・か・わ───っ!!!」 『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)、野原の真ん中で趣味嗜好を叫ぶ。 叫んで、丘の下まで猛ダッシュ! だれもアンナを止められない。 今回、エリス・トワイニング(BNE002382)と『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)が、回復支援に専念してくれるのを一番喜んでいるのは、アンナだ。間違いない。 この手の「もふもふは出来るけど、油断してると大怪我するよ?」な案件では、仲間がもふるのから目を背けたいけど、視界に入らないと術に入らないから、涙したたらせながら回復呪文を詠唱する切ない役回りが多いのだ。 怪我する前か。ほんとに最後にちょろっともふれたら、それがささやかな幸せ。 しかし、今日は! 「くふふふ、思う存分そのなっがい胴をもふってくれるわ……!」 脳みそ漏れてる。 「わたしだって猫と絡まりたい!」 ぼうっとしていてゆるゆるの『本屋』六・七(BNE003009)が、アンナの後を追い、駆け出した。 珍しい。 「絡まったまま丘の天辺から麓までごろごろ転がりたい……わたしは猫と戯れるためにリベリスタになったといっても過言ではないごめんやっぱり過言だったでもしかしそのくらい猫はいいなあ、猫いいなあ」 人は何故、愛らしいものを見ると句読点なしでうわ言をまくし立てるのだろう。 答、溢れる思いを止められないから。 「もふもふしちゃいましょうそこにそこに触ると気持ち良さそうなもふもふのかれらがいる限り!」 雪白 桐(BNE000185)も、一気にまくし立てた。 重機にも燃えるが、もふもふも好きだ。 (そういえばこんな形の猫の人形が昔売ってた気がしますね) 生まれる前のSFマニア界隈のことまで知ってるなんて、桐君は可愛い物好きさんね。 「俺は元々ぬこの虜だ、あれは他の生物とは格が違う」 『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)は、厳かに言い切る。 「ぬここそ、まさに愛されるために生まれてきた最強生物!」 誰か、こちらの御仁に目の鱗を溶かす目薬を! しかし、世界のすべてがおねこさま信奉者という訳ではない。 「いつもあたしを見ると追いかけてくるねこどもめ。今日は団子になってていいき……じゃなくて、仕方ないのでほどいてやるですぅ。ありがたく思うと良いですぅ」 『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)にとって、猫は襲撃者だ。ヘイチュー。 そのピルピルのお耳が、長いお尻尾が、ねこの嗜虐心を煽るのだ。 やんぬるかな。 「ですが日頃のなんとかというやつなのですぅ。思い切りやってやるのですぅ」 吸血鬼ににんにく。 猫には柑橘類。 必殺オランジュ・ミスト発生装置である皮を握り締める指ががうずくお年頃。 ふ~は~は~。復讐するは、我にあり~! 「猫ですよ猫。この間から猫にはあまりいい目に遭ってねーのです」 『働きたくない』日暮 小路(BNE003778)の場合、猫は占有権を侵害してくる存在だ。ヘイチュー。 (やつらとあたしは布団を奪い合う関係) 目線を下まで映すと、まんまるボールから、みよ~んとはみ出している個体発見。 (――って、長。長いですってこの猫。しかも絡まってます。なんとかほどかねーといけねーですね) よっこらっしょっと布団を背負ったまま、小路は坂を下り始めた。 「少々変わっておるが、お猫様に違いはないしのぅ」 そんな暴走する青春に悔いはないぜ的おねこさまらびゅんもしくはへいちゅーな人達の後ろから、ゆっくりと『嘘つきピーターパン』冷泉・咲夜(BNE003164) が坂を下る。 傘寿の余裕。 「ここはやはり、もふっとしつつ解いてやり、もふっとあちらに送り返しすのじゃ」 そう言って、未だ緊張で一歩を踏み出せない『シューティングスター・ジェイド』 茅木・美沙(BNE003712)に、手を伸べる。 (初めての参加で緊張してるんだ。あーもうドキドキが止まらないんだよね。ダメダメこんなんじゃ、皆に迷惑をかけちゃうんだよ) 差し出された手に掌を預けながら、美沙は大きく深呼吸を繰り返す。 「お猫様、無事に返すためともに尽力するのじゃ」 咲夜は安心させるように、美沙の肩を叩く。 「もふは正義。わしはアメショー派じゃ」 ● 「これはみごとにでっかいねこだんごなのですぅ。ひしめきあってるですぅ」 マリル、及び腰。 無数のにゃんこの頭だのお尻尾だのが突き出している。 でこぼこのついた毛糸を巻いて玉にしたような外見。 直径一メートルだが。 動くが。 ついでに、にゃあにゃあ鳴いてるが。 というか、穴の表面からはもとより、くぐもった泣き声が玉の中からも聞こえてきてくる。 『ちんたらやってると、衰弱死エンドもありうる』 無表情のイヴの言葉が頭の中でリフレイン。 あの無表情は、こう言っていた。 そんな事態になったら、俺様、おまえら丸齧り。 小路による、攻めどころと守りどころ、どこから始めるかの指揮に従い、リベリスタはへびねこさんに手を伸ばす。 「くぁっ!!」 威嚇するにゃんこ。 脳に染み通る『かわい~』という衝動と、脳内快楽物質。 いや、ここで、はにゃ~んになってる場合じゃないんだよ。 「一番! くろすとん! もふりじゃなかった、ほどきます!」 (神攻がどう解く力に変換されるのか良く分からないけど神秘っぽく解く!) どの猫をどう動かしたらどうなるか。 プロアデプトでもない身での選択は、神秘の技『勘』しかあるまい。 上位存在様の言うとおり! だ。 (なるべく一体を集中して解いてへびねこの手数…手数!?を減らしつつ解く!) つまり固まった猫玉から、一匹ずつ救助! 最大、長さ1.5メートルのへびねこ。 おなかの辺りつかむ。背骨をたどって、まず害の少なそうなお尻尾救出。 ちょっとひっぱる。動かない。 猫の柄を覚えて、指でたどる。 地道な作業が始まった。 「さて、がんばって解きますからね」 わしゃわしゃっとした短い猫の毛の手触り。 それがへびねこが身じろぐたび、しゅるしゅるとゆびの間をくすぐる。 触感が、ふぁんたくてぃっく。 桐は、手を突っ込む隙間を作るため、もぎゅうううと押し込む。 毛並に埋もれた四肢がじたばたと動く。 出来た隙間に手を突っ込み、ほどいていく。 といっても、あんまりぐにっとすると背骨や尻尾が折れて死んでしまう。 それに、ぐっと握られて、あらぬ姿勢をとらせられるのだ。 へびねこの方だって、言うまでもなく痛い。 よって、激しい抵抗っ! ばりばりばりっ! 桐の手の甲に格子状の跡が出来た。 歩くのに使っていない爪は、子猫のよう。 細く鋭く深く、神経をかき乱し、のた打ち回らずに入られない痺れが身体中に走る。 「……手で払えば余裕かな~なんて。前足ばっかりだめですね。後ろ足見てなかった……」 ふるふるふるっ。 「肉球さわるのがまんしてたんですよ!?」 ぷにぷにぷにぷにぷに! 肉球、絶妙の強さで連打。 「あ、ほどいちゃだめです。せっかくのまん丸が崩れるじゃありませんかっ!?」 戦士よ、至福と狂喜の極みから、正気に戻れ。ブレイクフィアー!! 「どうして絡まっちゃったんだろう、遊びすぎたのかなあ」 七は、にまにま笑顔が浮かびっぱなしだ。 毛並に葉っぱとか木の枝とか草がたくさんついているので、おそらく丘の上から転がってきた結果がこれだろう。 そういうのも混じっているので、なかなかへびねこ達だけではほどけなくなっていると推測された。 「可愛いなあ……長いなあ……何匹いるのかなあ」 実際、長い。 尻尾も長いが、胴も長い。 四肢が短いので余計に長く見える。 「色んな模様がある……全員に名前付けるのも良いよね」 この子は茶虎、この子はぶち、三毛、ライラックポイント……。 というか、作業をしている内にいつの間にか効率を上げるため、通称が生まれていた。 「キジ、ない? そっちに。こっちに前足あるから、三時方面にしっぽがあるはず」 「あ~、はいはい。キジ尻尾発見。ほどくよ~」 「ありがと~」 「あ、ペルシャっぽいの、顔出てきた」 「どこっ!? 見たい! どこ!?」 (ちゃんと解いて元の世界に戻してあげるから、少しの間頑張ろうね) 七は、出てきたペルシャの頭をなでた。 ● 美沙は緊張していた。 アザーバイドさん、初お目見え、こんにちは。 友好的ではないが、凶暴敵性エリューションが初陣でないだけ、スタートは上々だ。 「ちなみにワタシは真っ白い子に弱いんだ。足のところだけ靴下とかはいてるっぽいのも弱かったりする」 緊張のあまり無駄口が多くなる、 絶対に魅了されないアウラールと咲夜の間に座らされた完璧な防御体制だ。 「ほれ、この辺が白いぞ」 咲夜のアドバイス。 (えっと、出来ればちょこっとはもふもふしたいんだけど。皆に迷惑かけそうならちょっと考えるね) ばりっとか、がりっとか、むぎゃーとか。 物騒な音と、短い悲鳴と、われわれの業界ではご褒美です的短い声が至近距離かつ複数方向から聞こえてくる。 エリスと麻衣の詠唱がさっぱりやむ様子がないのが、この状況があんまり平和じゃないことを如実に現している。 定期的に、隣のアウラールさんが光るのは、みんなが猫にらびゅん、俺以外の奴ヘイチューになると、同士討ちを始めて危ないからだ。 (でも、ちょっとくらいは……ああ、うーん難しいよー) 恐る恐る手を伸ばす。 しゅるしゅるとうごめく、ねこだま。 あちこちつついて結合を緩ませるべく、手を伸ばすがふと気づく。 (まさか攻撃すると、可哀そうな鳴き声とかあげちゃうのかな?! き、危険だ危険すぎる) いくら怪我しないって言っても、やっぱり気になるよ。 (で、でもこれをしないと衰弱しちゃうんだもん。我慢我慢だよ。もしももふもふ出来たならば、しっかり堪能しつつ解くのを頑張る!) こうして、また一人のリベリスタが戦いの中に身を投じた。 もふもふもふもふもふ。 ばり、がり、しゃー! ● 「ああ、ぺろぺろも、かりかりも、しっぽも、まるまるも、みんな回避しなくちゃいけないなんて、何の拷問ですかー!?」 桐が天に嘆く。手は、ねこだまに突っ込んだまま。 視界がゆがむのは涙のせいじゃない。目に猫の毛が染みただけだよ。 視界がゆがむのはアウラールも同じだ、 なにしろ、狂喜の極みにダイブ出来ない。 だって、そういうの効かない体だし。 もちろんへびねこはかわいい。 たまらん。 ただ、ヘブン成分が足らん。 いや、それは邪道だ。ぬこはぬこの魅力だけで十分素晴らしい。 も、いっそ、「呪い無効」とかAFから外してくればよかったかななんて、内なる悪魔が耳元で囁いたりする。 (しかし俺にだって仲間を攻撃しない程度の理性の持ち合わせはある。というか、これもふ…ほどかないとぬこ達死んじゃうしな。全力でもふ、じゃなく、ほどくぜ) 全てはぬこのため。 割と頻繁にピカピカしながら、ひしめき合ういろんな模様を次々とほどいていく。 マリルは、不敵な笑みを浮かべていた。 「ひっさぁつ!」 薬室、圧縮開始! 「『破滅のオランジュミストぉぉぉ』!!!」 今時、必殺技の名前を叫ぶ奴がいるだろうか、ここにいる。 身も蓋もない言い方をすれば、みかんの皮の汁が飛ぶ。 甘苦爽やか、おにゃんこさまが大嫌いなあれだ。 猫が嘔吐を引き起こす可能性があるのだ。 「ふんぎゃらぎゃあああああああああっ!!」 マリルの技を食らったにゃんこがいっせいにマリルに牙をむく。 ふぎゃぐるふぎゃぐる。 「にゃんこめぇ!」 がぶ、あぐ。がちがちがちがち。 「耳にかみつくなですぅ!」 あぐ、はぐ、ちゃぶ、ぐちゅ。 「あたしをみてよだれをたらすなですぅ!」 もちゅうもちゅもちゅもちゅ。じゅうじゅるじゅるじゅる。 そして、りばーす。 猫は、よくはく生き物です。 「これに懲りたら、にどとあたしをいじめるなですぅ!」 いかんせん、近接範囲攻撃。 つまり、十分へびねこの間合い。 「どうですぅ? かなりきいてるですぅ?」 いや、よだれだの、いえないものまみれのマリルちゃん、そっくりそのまま君に返す。 もう一滴もでないみかんの皮をポケットにしまうと、マリルはぺてぺてとねこだまをまんべんなく叩き始めた。 みかんの匂いのしみこんだおててにひるんだへびねこは縮こまり、それ以上のへびのこの混線を妨げる。 (べ……別に本気でやったらかわいそうとか思ってないですぅ) ぺちぺちぺちぺち。 まふ。 「おのれ、素早くて反射神経ばっちりぃのあたしをもふもふではにゃーんとさせるとか敵ながらなかなかやるのですぅ」 あ、犠牲者。 んでも、ちょっと正気に戻すの様子をみた方がいいか? ● 「ほどいた!」 リベリスタたちは、微笑み交わす。 もうボロボロだが。 噛み付かれるのと、しゅるしゅる撫でられるのと、天国と地獄がいっぺんに到来。 でも、肉球もむにむにしたし。 スキンシップ面は申し分ない。 「よし、ではみんなD・ホールへって、あれ?」 へびねこさんや~い。 いや、いるが。 へびねこさん、そこらじゅうにいるが。 みんな、ほどくのに夢中になって、ほどいたへびねこさんをどうするかってあんまり考えてなかったんだよね。 ブラッシングしようとかは思ってたけど、こう、自由になったへびねこさんは、ぶっちゃけその辺に放置みたいな。 この広い野原いっぱい、ほんのり暖か、いいお天気で。 遊びにいくな、固まっておとなしくしてろとか言うの無理だよね? ていうか、そもそも、そんなこと言ってないよね? 「集めなきゃ……」 誰ともなく呟くそんな昼下がり。 「それはいいけど、何匹いるの、これ……」 ひゅるりら~と、ひんやりした風が吹く。 「猫とあたしたちの根競べなのです。野生動物って善意で近づいても敵意見せるですし、まったくもって助けがいがねーですね。こんなやつの為に解きにこないで家で寝てればよかった! 働きたくないのに気が向いたあたしがアホでした!」 小路によるドクトリン! 働きたくない少女の主張! 「何匹いよーと、ふんづかまえるのです!」 しかし、あえて働く。 布団独占のために! それにしても。 お互いの顔を見交わすリベリスタ。 全部回収した確信が持てなきゃ、ブレイクゲート出来ない。 だって、帰れない子が出たら、その子は泣く泣く……。 うわああああっ!? 「大丈夫っ!」 七が声を上げた。 「――大丈夫。全部の子に名前付けたから。覚えてるから」 にゃんこの数、占めて89匹。 ちゃんと覚えてる。 「でかした!」 「早く探しに行こう!」 へびねこちゃんが拡散する、その前に! リベリスタは、それぞれの思いを胸に野原のあちこちに散っていった。 第二ラウンド、カーン! ● キラキラ朝日と共に、へびねこさんはD・ホールの向こうに。 「あっちへ帰れですぅ、あたしをいじめるなですぅ、もっとあたしに感謝するといいですぅ」 お耳かじかじされながらも穴に猫を放り込むマリルの呟きは、もはや呪文の域だ。 「……ブレイクゲート……しなきゃダメ……?」 今度こそ逃がさないように、見張り番していたアンナはいじましくグルーミングキットをこねこねしながら、そんなことを言う。 「また会えたら嬉しいのじゃよ」 同じくブラッシング係をしていた咲夜の方が余裕がある。年の功。 「いくら猫でもほいほい来られたら、仕事がふえるでしょーが!」 働きたくないのに、一度働き出したら粉骨砕身の小路が声を荒げる。 いや粉骨砕身して疲れるから、働きたくないのか? 「今何時だと思ってんの!」 午前四時です。 いやん、朝日、まぶしい。 「まさか猫ならきてもいいとか思ってるアホはいねーでしょうね?」 こんな依頼に志願するのは、アホが多いんじゃないかな。 「今度来る時は絡まらずにきてくださいね」 いやというほどへびねこを堪能した桐は、搾り出すようにそう言った。 「お別れは辛いけど、今度は絡まない様に気を付けて元気でね……」 黒ちゃん、くつしたあんよちゃんと、名前を呼びながら、七は穴の向こうに手を振る。 「もふが足りないのじゃ……この足で猫カフェとか行きたいのぅ」 今回割りと後見役だったからね、咲夜じいちゃん。 帰り、寄り道してこうか。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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