●惚れた弱みと力の関係 「あんたたち。アタシの顔に泥を塗る気かい? それなら良い度胸だ。アタシが漢(おとこ)ってのを教えてやるよ。とっとと、オモテに出な!!」 威勢良く啖呵を切ったのは、山楝蛇 蘭子(やまかがし・らんこ)。 いわゆる自由業の小さな一家、山楝蛇一家の3代目に生まれた彼女は、ありとあらゆる悪行に手を染めて一家を解散寸前にまで追い込んだ2代目の父を嫌い、徹底した任侠道を貫いていた。 そして今、蘭子に説教されているのは、一家の若手4人組。ちょっとだけイケメンな彼らは、モデル事務所の若手を装っては、若い女性をナンパしては、いけない所に連れ込んで、いけないコトに勤しんでいたらしい。 しかも、そのときの映像を撮って、そのスジの業界に流していたのだとか。まったくロクでもない連中。 しかも『格』の違いってヤツが見えてないらしく……、 「いいぜ。こちとら4人掛かりだ。たとえ、お頭だろうが負けやしねぇ。こっちこそ、頭の堅ぇあんたに男を教えてやんよ!」 と威勢良く切り返して事務所を出ようとする。 しかし。そんな彼らの前に一家の幹部、火巫 拳(ひかなぎ・けん)と、雷頭 貫一(らいず・かんいち)が立ちふさがり、拳固で張り倒してゆく。 「このド阿呆が! 今すぐ姐さんに土下座しろ!! てめぇら三下じゃ、100人が束んなったところで姐さんにゃ敵うめぇよ。何しろ、今の俺ら2人でも歯が立たねぇんだからな!!」 まさか……! 倒れたまま、驚愕の表情でへたり込む4人。彼らとて腕っ節には多少の覚えがあったのだが、幹部の拳や貫一には全く歯が立たなかったから。 「すんません、姐さん。あっしらの目が曇ってやした。こいつらは責任持って鍛え直しやすから、今日の所は俺らに免じて勘弁してくだせぇ。こいつら、出来は悪いが有望な奴らなんす!」 2人の幹部が蘭子に向かって深々と頭を垂れた。 「あんた達がそこまで言うんじゃ致し方ないねぇ。よし、こうしようじゃないか。例の件、ひとつアタシら一家もやってやろうじゃないか。そっちの4人にゃ、その肝の部分を務めてもらう。いいね、文句も質問もナシだよっ!」 「ありがとうございやす。粉骨砕身、不惜身命、お務め全うさせやす!」 「よし! それからもう1つ。今回はアタシも出るよ。勿論このアタシが出る以上、失敗は許さないからね!」 (姐さん……姐さんはそれほどまで、あの旦那のことを……) 拳と貫一は、敬愛する姐御の『女』の部分の望みを叶えるべく、命を賭ける覚悟を決めて蘭子のことを見つめていた。 ●拉致事件 「……ひとことで言うなら拉致事件? ん、でも見ようによってはナンパみたいな……」 アーク本部に設けられた1室で、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集められた者たちに、珍しく歯切れ悪い感じで話を切り出した。 それは、一斉に多くの事件が感知されたから。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 そう言いながらも、まずは目の前の事件についてだけど……と話を切り替える。 「小さなフィクサード集団、山楝蛇(やまかがし)一家が今夜、繁華街で堂々と女性を拉致しようとするの。一家のボスは女フィクサードの山楝蛇 蘭子。そして一家の幹部、火巫 拳と、雷頭 貫一。そして、下っ端にあたる若手4人。彼らも皆、フィクサード。他にも構成員はいるようだけど、戦闘には絡まないので考慮はいらない」 さらに続く説明によれば、拳は覇界闘士(火炎無効)、貫一はプロアデプト(電撃無効)同様の力を発揮し、蘭子と若手4人についてはアーク未知の能力を持っていると言う。 「まず、4人が女性に声を掛けて裏通りに連れ込む。他の3人は見えないと思うけど、近くにいるのは間違いない。放っておけば纏めて姿を消してしまうから、不安はあるけど、このタイミングで仕掛けるしかない……と思う」 人目に付きにくいことを考えるなら、なんともシビアな話。 「その条件下でそいつらを倒し、拉致を食い止めろって訳か。意外とキツいな」 「そう。でも倒すのは二の次。まずは拉致を食い止めるのが最優先……」 イヴは頷きながらも、最低限のラインを示す。 「ただ……向こうは何故か命を賭けるくらいの気持ちで臨む人がいるみたい――そうなると、こっちもそれなりの覚悟は必要かもね」 イヴは内容の割にはいつもと然程変わらない淡々とした口調で、こう告げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:斉藤七海 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)22:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●裏通りの拉致 ……だからさぁ。今はキミたちみたいな娘がいいんだって。 ほら、読モだよ、読モ。えっ、読んでない? そりゃそうさ、再来月から新創刊だもん。 頼むよ。俺らも可愛い子を連れてきてって言われてるんだから。ね? 信用できない? 大丈夫だって。さっき名刺も渡したでしょ。 女の子2人の肩に手を掛け、半ば強引に裏通りへと連れ込んできた男たち。 オシャレで軽妙な語り口からは、到底そのスジの人間には見えなかったが、かと言って安易に信用できる相手とも思えない。連れ込まれてきた彼女たちもあと一押し、と言ったところか。 「ん~壊すほどの『モノ』でもないし、あまり興味はないかなぁ~? まぁ、でも少し痛い目でも見てもらいましょうかぁ~」 『血まみれ姫』立花・花子(BNE002215)のそれを契機に、彼女たちの所へと割って入る4人のリベリスタ。 「ちょっと! AVしか仕事がないってどういう事よ! だましたのね!」 口火を切ったのは、『戦うアイドル』龍音寺・陽子(BNE001870)。ポニテでスタイルも抜群の彼女は普通にモデルをやっていてもおかしくない。 続いて花子が、騙しただの無理やり連れ込んだだのと人聞きの悪い台詞を連呼。 「ちょっと待て! お前らなんて知るか。だいたいその恰好は何のコスプレだ? ここらじゃ流行らねぇぞ」 ブチッ! 「ちょっと。花子の自前のお洋服に何か文句でも?」 もしかしたら、少し沸点が低いかも。が、それを制止するように『BlessOfFireArm』エナーシア・ガトリング(BNE000422)が間に入る。 「モデルの仕事だって言うから登録したら、AVの話しか来ないんだけど! どういうことなの? 主人をアリクイに殺された人妻の役ってなんなのよ! おいィ、聞いてんのか!」 怒りを前面に出しつつも、随分キワモノなネタを振る。 さすがに女の子たちもドン引きし、リベリスタたちの剣幕にたじろぐ男たちを振り切って、ジリジリと距離を置く。それを見計らったように声を掛ける『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)。 「甘い言葉で何人の女性を毒牙にかけて来たのかしら……本当に人間の屑ね」 そして、彼らは界隈じゃ有名な悪質キャッチよ。早く表通りへと立ち去りない、と彼女らに告げた。 自分たちよりも幼い恵梨香の言葉ながら、瞳の中の剣呑な雰囲気に思わず頷くと、逃げるように立ち去ってゆく。 (大丈夫でしょうか……それに幹部格の人たちはいったい、どこから?) 一歩引いたところで警戒しながら、女の子らを見守る『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)。 「待てや、おい! せっかくゲットしかけたのに、何しやがる!!」 「チョーシくれてっと、てめぇらこそ、売るぞ!」 豹変する若者たち。 そこに、『悪夢の忘れ物』ランディ・益母(BNE001403)が姿を見せる。と同時に全身から闘気が漲り、溢れ出る。 「みっともねぇな、筋モンがカタギの女相手によ」 もちろん『カタギ』とはリベリスタたちの事じゃないが、武装した彼の台詞を、連中はそうは取らなかった。 「んだと!」 2人が問答無用の拳で殴り掛かる。が、ランディは一方を難なく躱し、もう一方を左手で受け止める。そしてその手を払うと、2人を無視して斧を素早く抜き放ち、逃げた娘たちを追おうと走り出した若手を、斬る! 「ボクより早くだなんて、手が早いね。ま、こんな最低な男たちには何したって良いけどさ」 陽子が流水の構えから、敵に対抗するように拳を繰り出す。そこに燃え盛る炎を纏わせて。 「バラバラにしないんじゃ~遊びにもならないねぇ~」 次いで身体のギアを一段上げた花子が手近な若手の背に豊かな胸を押しつける。 ぎゅっ! 「な、何を……」 言っている間に彼を抱き寄せ、その首筋にかぷっ! ちゅーっと彼の血を吸い取る。 走っていた若手が2人して振り返り、懐から抜いたハジキを早射ち。弾がランディと花子の身体を掠める。 「あら、銃で勝負? 望むところよ」 エナーシアのリボルバーが吼える。目にも止まらぬ速さで若手全員を撃ち抜いてゆく。同時に彼らの視線の変化を見極めてハンドサイン。 「貴方たちじゃ相手にならないわ。さっさと尻尾を丸めて帰ったら?」 恵梨香がグリモアールを開いて魔炎を炸裂させると、高圧的な態度で挑発。 (拳の兄い……、貫一の兄ぃ……) 幹部に助けを求める彼らの心の声が響く。その時……。 視線が泳いだ先、古いビルの朽ちかけた入り口から、2人の男が姿を見せた。 1人はガッチリとした筋肉の塊のような中背。そしてもう1人は、ダークグレーのスーツにシャープなサングラスをかけた痩身。 「さすがはアークのリベリスタどもだ。こいつらじゃ歯が立たん……かよ。だが、男として舎弟の落とし前は付けさせてもらわにゃ。そうだろ、ランディさんよ!」 中背の男(火巫 拳)が語りかけた。 「で、そっちの姉さんはエナーシア。銃火器のプロフェッショナル、だったな」 痩身の男(雷頭 貫一)は、光栄だの何だのと言った台詞を心なさげに並べ立てている。 (危険な方たちですね……。でも、トップの方は一体?) 嫌な予感が脳裡を過ぎり、カルナは天使の如き歌声で仲間を癒すと、速やかに2人の後を追うのだった。 ●幕間 ~蘭子~ その頃、逃げだした2人を護衛し、表通りに送り届けに向かったのは、『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)と、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)。 「さっきの見てたよ。タチの悪い人に捕まっちゃったねー。危ないからあっちまで一緒に行こ?」 「あの人たち本当にひどいのよ。捕まったら大変なの。早く表通りへ、ね」 2人で彼女たちを挟み、周囲を警戒しながら先を急ぐ。超反射神経で不意打ちは防げると言っても、それは飽くまで文自身が避けられるという話なのだから。 ――しかし。そう容易くは運ばないのが人生。 「ちょいと、お待ちよ!」 仲間たちの姿が見えなくなった頃、後ろから妖艶ながらもドスの効いた女の声。彼女たちを追って来たのか? 「逃げて!」 答えず、すぐに2人の背を押すニニギア。そして文は自らの影に手を翳し、意思持つ従者を召喚した。 「何だい、物騒だねぇ。人の話になんか聞く耳持たないってかい? じゃぁ仕方ない」 女の声がしたと思った瞬間、文の背後に気配が生じ、首筋に鋭い痛みが走る。 「痛っ!」 朱の筋が1本。そしてそこにピタッと添えられているのは真っ赤に染まった鋭い爪。 爪の主は、博徒のような薄地の着物姿をした妖艶な女、山楝蛇 蘭子。 「よくお聞き。あんた達2人が逃げず、仲間も呼ばずにあたしの相手をしてくれるなら、あの子達にゃ手を出さない。でも聞けないんなら、あの子達の首、すぐ掻き切りに行くよ!」 一般人を救うため――2人は、ただ黙って頷くことしか出来なかった……。 ●幹部、2人 「おい。てめぇらはこれでお役御免だ。とっとと組に帰ってろ!」 「けど、兄ぃ!」 「いいから。ぶっちゃけ足手まとい、ってヤツさ。俺たちゃ、派手にやらせてもらうんでな!」 貫一がサングラスを直しつつ告げる。その瞬間、激しい思考の奔流がリベリスタたちを押し流すように弾けた。 「くっ! ……確かに、そっちの4人とはだいぶ違うみたいだね。けど、全力を見せてないのはボクも同じだよっ!」 陽子が軽いステップで跳ねたかと思うとコンパクトな蹴足からかまいたちを放ち、貫一のスーツの袖をざくっと切り裂いた。 次いで花子が貫一の首に触れ、その血を戴こうと試みるが、こちらは躱されてしまう。 「それはさっき見せて貰いましたからね」 中指でサングラスの位置を直しつつ語る貫一。 「有名人の腕ぇ、あっしに見せて貰えやすか!」 炎の拳を以てランディを殴るフィクサード。若手のそれとは違う重く実践的な拳。 「いいだろう。受け止めてみろよ!」 ランディが斧を振り下ろす。その瞬間に全身のエネルギーを刃に込めて。 次いで、恵梨香が周囲に高速で描いた魔方陣から、高エネルギーの収束体である魔法の矢を生み、フィクサードを貫く。 「じゃ、私の相手はこっち、雷頭さん……だったかしら?」 エナーシアが相手に対抗するように予め知っていた名を告げながら、1$シュート。 互いに消耗を顧みる余裕もないほどの激しい応酬が繰り返される。 拳と斧、剣や銃が交錯し、互いを削り合う。幹部ともなれば先ほどの若手とは比ぶるまでもなく、サシで渡り合ったら厳しいかも。恵梨香とエナーシア、2人の解析が同じ結果を導き出す。 が、幸い手数はこちらの方が上。たとえ僅差でも敗北はない……と。 「たしか、こうやるんだったっけな」 ランディに集中していたかと思った拳が、血塗れながらも不意に身を翻し、陽子の方に斬風脚を放つ。 飛び道具は手応えが感じられなくていけねぇな、とか何とか呟きながら。 貫一の方は、血を吸ってから全力防御の体を取る花子に攻撃。細身のナイフを抜き、その守りの隙を突いて幾度も幾度も刺し貫く。 「拳を振り抜いたり、小さい刃を深く貫いたりすると次の動作が遅れる――教えたんだがな」 「確かに飛び道具じゃ手応えがないよね。だからボクの相手はこっち」 陽子は拳の呟きに答えてから、貫一を燃える拳で殴り飛ばす。でも何でこんな拉致に命掛けようとしてるんだろ。戦うほどに分からなくなる。この拉致も……例の『相模の蝮』の作戦の一部なの? と。 「今頃は貴方達のボスの『旦那』の所にも、こっちの精鋭が向かってるわよ。いいの、 放っておいて?」 魔力を注いだ一矢で貫きながら、一か八かカマをかけてみる恵梨香。 「ふんっ……何の話か分からねェな!」 引っ掛からないどころか、絶対的な心服の証が感じ取れる。ただし……飽くまで姐御への。 「そうかい、喋りたくないなら聞かねぇよ。俺は俺の仕事をこなすだけだ」 高めたオーラを纏わせ、息もつかせぬランディのラッシュ。 その手が止んだ時、拳はゆっくりと膝をつく。 残るは1人……そう思った瞬間、表通りから皆を呼ぶカルナの声が響いた。 ●惚れた弱みと力の関係 ――その少し前。 「わ、わたしだって命賭けてるもん……負けないもん!」 蘭子との勝負となった文が懸命に言葉を絞り出した。 首筋に突き付けられた爪は外れ、改めてニニギアと2人して蘭子と対峙。 「文さん、しっかりして。すぐに痛みはとれるから」 ニニギアの元から神の光が迸り、首筋から止め処なく流れる血を止める。 「いいねぇ、その強い意思。あたしはそういうの、嫌いじゃないよ」 「だったら……どうして女の人を誘拐なんて、ひどいことしようとしたのっ?」 蘭子の態度に、顔を真っ赤にして怒りを見せる文。 「別に。誘拐なんてのは本気じゃないさ。あんたたちに会いたくてねぇ……その為の餌だよ」 (恋する女は強い、それはよく分かってるけど……でも、この女性はそれだけじゃない) 何のために? ニニギアが推測するも、その中に答があるのかと問われれば、分からない。 「こっからは本気で行くよ。さぁ、あんたたちの力、見せて貰おうか!」 裏で行われていた幹部連中との戦いよりも、小さいながらも何倍も派手な攻防が繰り返される。 シャドウサーバントの攻撃も意に介さず、文の気糸が蘭子を締め付けようとすれば、力づくで引き千切り、描いた魔方陣から矢を飛ばすも、避けられないとみるや、構わずその鋭い爪でニニギアの頸を掻き切った。 「……だ、大丈夫。まだやれる」 そこにあるのは強い意志。明らかに致命なれど、運命を引き寄せつつ斃れない。 「大丈夫ですか?」 駆けつけてきたカルナ。その柔らかそうな唇から、天使の息吹が紡ぎ出される。癒しをもたらす風が、ニニギアの傷を優しく消し去ってゆく。 「皆さんを呼ばないと!」 裏通りで戦っているはずの仲間に向けて、合図の声。その直後、カルナにも鋭い爪が突き立てられる。 そして、文が力強く叫ぶ。 「命賭けてれば何やったっていいってわけじゃない!」 「はんっ。あんたたちとは考えが合わないねぇ。命を賭けるから意に沿わないことだって出来るんじゃないか!」 運命を引き寄せんとする蘭子の啖呵。何を言おうが埒が明かなそうだった。 が、それでも蘭子たちの企みの一端は分かった気がした。つまり……リベリスタたちを、そして統括するアークを気にしているということだけは。 やがて幹部たちの方から他の5人が駆けつける。 「ニニっ!」 「だいじょう……ぶ。まだ、生きてる……」 正直、結構キビしいけれど。負傷の度合いは明らかに蘭子より3人の方が多い。 ランディは怒りを胸に蘭子に斬り掛かる。 「大したもんだ。けど、それじゃあまだ甘いよ!」 躱され、逆に蘭子の爪に引き裂かれる。が、それでも彼は膝を付いてすぐ立ち上がる。 「……男ってな見栄張って、格好付けてナンボなんだよ!」 代わりにニニギアが下がって、彼に癒しの微風をもたらす。 「しようがないねぇ。それじゃ纏めて相手してやろうかねぇ!」 蘭子が戦い易くすべく肩を肌蹴たところで、斃れた拳を肩に負った貫一が姿を見せた。 「すまねぇ、姐さん。下手ぁ打っちまった……」 蘭子に対し、伏し目がちな様子で声を絞り出す。リベリスタらの動きを見、引き付ける役を務めていたという事か。 「いいよ。あたしがすべて片をつけてやろうじゃないか!」 蘭子が告げる。勝てる……という判断なのか? だが、そこに躊躇いのようなものがあるのを、花子は見逃さなかった。 「蘭子ちゃん『女』の匂いがするねぇ? 相手はいい男なのぉ~? あはっ♪」 「な、何の話だい?」 「さぁねー。でも一つを粘るのが男、次に切り替えるのが女。山楝蛇の蘭子ともあろうヒトが、引き際逃して部下なくすつもりじゃないでしょお~?」 と、あくまで強気。これ以上はお互い、作戦も何もない削り合いが必至だったから。 さぁ、どうする? と。 ●蘭子の決断 随分と長く感じる沈黙の後、蘭子は僅かに悔しそうな色を顔に滲ませて、ゆっくりと語る。 「負けたよ……ここは手打ちとしようじゃないか」 「姐さんっ!!」 「良いんだよ。命を賭けるなんて大層なことを言ったけどね……お前たちの命も賭けられるほど、あたしも割り切っちゃいないんだよ」 これにはリベリスタたちも大いに安堵。このまま戦えば、幾人かの犠牲は免れないだろう。 互いに手を下ろし、文、カルナ、ランディが仲間の元に戻る。拳を連れた貫一も蘭子の元へ。 「あんたたちとは、まだ縁がありそうな気がするよ……次はどうなるか、楽しみだね」 拳の身体を引き取り、軽々と担ぎあげ去ってゆく蘭子。彼女自身もそれなりに傷付いていると言うのに。 「大丈夫か?」 「ええ。ありがとう」 (次は、最初から全力で……) リベリスタたちは今回の労いと、次回の再戦での勝利を期してアークへの帰路についたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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