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ジューンブライド・キラー

●赤い爪の殺人鬼
 六月。ジューンブライドで有名なこの月は、結婚式で各地の教会が忙しくなる。この時期に結婚式を挙げたがるカップルは多いのは皆も承知の通りだろう。
 そのため、町の郊外にあるその教会では、毎日のように結婚式が行われ、毎日のように幸せの象徴であるブーケが空を舞っていた。
 結婚という人生の一大イベントを前に、人々の顔には幸福が浮かんでいたのである。
 そして、その日もまた幸福が一組の男女の顔に浮かんでいた。
「さ、手を出して。ここからは、お姫様だっこで送るよ」
「……えっ。あっ、えっと……」
「嫌かい?」
「そうじゃなくて……。そうされるの、ずっと夢だったの。……お願いします」
「……はい。お姫様」
 人目があるにも関わらず、イチャイチャとし始めるこのカップル――いや、新しい夫婦を前に、集まった人々はヤジと祝福の声を投げかけていた。
「お幸せに!」
「幸せにしなかったら承知しないぞ!」
 友人や家族に囲まれ、満面の笑みを浮かべる夫婦。きっと、ラブラブな彼らの前にも様々な困難な立ち塞がるだろう。だけど、これからどんな困難があろうとも、お互いに助け合って生きていこうと決めた彼らは無敵だ。
「さ、みんなにも挨拶しよう」
「……うん! ありがとう……みんな。私、幸せです!」
 幸せの象徴であるブーケが空を舞い――空中で切り刻まれた。
「――え?」
 続いて、新婦のウェディングドレスが血に染まる。
「ガッ!?」
 状況が分からない。何が起こっているのか、新婦には何も分からなかった。先まで幸せな結婚式は行われていたはずで、投げたブーケは参列者に投げ渡された、はずなのに。
 なのに。
 目の前にいた新郎の体に突き刺さっているものは、いったい何なのか?
「あ、ああ……」
 驚愕の顔を浮かべる新郎の体から長い爪が勢いよく抜かれて、赤い血が吹き出る。吹き出た血は、ウェディングドレスと顔にべったりと張り付いていき、これが夢ではないと新婦に教えていく。
 目の前にいる赤い爪の“誰か”は、そんな新婦の顔を見て――、
「――いい。素晴らしい。素晴らしい表情だ」
 にやりと笑った。

●花嫁攫い
 アークの作戦会議室。ここに用意された衣装は、今までになくトンチキなものだった。
 それが何かといえば、ウェディングドレスだ。用意したのは、『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)である。
「私も着たかったけど、やっぱりこういうのは場を弁えないとね」
 少し羨ましそうにウェディングドレスを見ている乃亜は、ため息をついていた。やはりウェディングドレスと結婚式というのは女の子の夢なのだろうか。
 アークの連絡によれば、そんな夢を悪夢に変える凶悪なフィクサードが出たという。
「さて、六月といえばジューンブライドなのは皆も知っていると思うわ。これはギリシャ神話に由来する事柄で――」
「そこはいいです」
 乃亜の長ったらしい講釈が始まりそうだったので、リベリスタの一人が止める。あらそう、と反応して依頼の解説に乃亜はスイッチした。
「結婚式に乱入して新郎を殺し、新婦を拉致して監禁するっていうフィクサードが出たわ。……ええ、精神状態はまともじゃないでしょうね」
 一瞬だけ苦い顔をして、乃亜は敵の精神状態について解説する。カレイドシステムが示した未来を乃亜は見ているのだ。その未来は見ていて気持ちのいいものではなかったのだろう。それを分析しなければいけないのだから、フォーチュナも大変だ。
「出る場所と日時は決まっているわ。町外れにある教会。忙しい時期だったけど、その日はなんとか貸し切りにできたわ。アークの力はさすがよね」
 無理に笑ってから、指で丸を作る乃亜。
「ここに潜入して、フィクサードをおびき寄せるために結婚式をやって欲しいの。――あ、もちろんままごとで結構よ」
 フィクサードはどういうわけか結婚式というものに強い執着をしているらしい。そうしていれば簡単に出てくるとか。
 そんな乃亜の発言にざわつくリベリスタたち。やはり、結婚といえば一大イベントであり、リベリスタたちにとっても他人事ではない。だから、皆も強い興味を示した。
「結婚式のまねごとは大変だろうけど、お願いね。……放っておけないから」
 乃亜は用意したウェディングドレスを軽く撫でてから、真剣な表情でリベリスタたちにお願いをした。
 女の子の夢を壊すフィクサード。それを許すわけにはいかないから。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:nozoki  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月15日(金)22:58
 はい。六月と言えばジューンブライド。ネタ被りも気にしないの精神でやっていますnozokiです。
 結婚は女の子の夢! 男の子の夢かもしれませんがまあそれはそれで。
 ともかく、結婚式をしてくださいという依頼です。同性結婚でも複数の組がやってもハーレムでも偽装結婚でもなんでも来てください。

●勝利条件
 フィクサード“花嫁攫い”の撃破

●舞台
 町はずれにある教会です。アークの財力によって一日貸し切られており、人目はほとんどありません。
 教会内部は狭く10mほどしか距離がとれないので、戦い辛い場所です。
 逆に外部は郊外にあるだけあって非常に広いため、戦いやすいですが相手が逃げやすい場所でもあります。

●フィクサード“花嫁攫い”
 長く赤い爪を装備していることが特徴のフィクサードです。大きな外套とガスマスクを常に装備しており、非常に怪しい人物です。男ということは分かります。
 精神に異常をきたしているらしく、まともな意思疎通はできません。
 結婚式に強い恨みを持っており、新郎を殺し新婦を攫うという行為をしようとします。その理由は分かりません。
 戦い方は、長い爪によるヒットアンドアウェイです。高い速度、高い回避、ステルスを持っており、一筋縄ではいかないでしょう。
 攻撃に使用するスキルは幻影剣です。
 そして、大事なことですがこのフィクサードは新郎を狙って攻撃し、新婦を攫おうとします。攫われた女性はひどいトラウマになることをされるそうです。

●結婚式のまねごと
 結婚式のまねごとをするために、花嫁衣装と花婿衣装が乃亜によって用意されています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
四門 零二(BNE001044)
ナイトクリーク
★MVP
双海 唯々(BNE002186)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
プロアデプト
柚木 キリエ(BNE002649)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)
レイザータクト
日逆・エクリ(BNE003769)
レイザータクト
プラチナ・ナイトレイ(BNE003885)
覇界闘士
ヘキサ・ティリテス(BNE003891)
■サポート参加者 2人■
デュランダル
虎 牙緑(BNE002333)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)

●幸せの時
 6月の梅雨時だったため雨が懸念されていたが、当日は雨もなく無事に一組のカップルが結婚式を執り行うことができた。
 と、言っても偽装結婚式であり、神父と参列者は皆リベリスタである。異常な嗜好を持つフィクサードをおびき寄せて、倒すために執り行っている式だ。
 だけど、花嫁としてその場に向かおうとしている『セール・ティラユール』草臥 木蓮(BNE002229)は控室の中で肩を震わせていた。今からやるのはごっこ遊びというのに、嬉しくてたまらないのだ。
「仕事であれこういう服を着れるのは嬉しいな、やっぱり」
 マーメイドドレス型に仕上がったウェディングドレスを見下ろすと、自分が今から結婚をするんだという気持ちがどうしても湧き上がってしまう。その湧き上がった気持ちを抑えるために、眼鏡を指で上げてから隣を見る。新郎役の『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)が普段はしないようなお堅い恰好をして、居心地悪そうにしている。
「……隣に好きな奴も居るし」
 その言葉に反応した新郎の視線がやってきたので、木蓮はあわてて顔を逸らして咳払いをした。
 さて、そんな風にラブコメ風味溢れる控室から視線を移して、参列者を見てみよう。
(純白のウェディング……あたしも子供の頃憧れてたっけ。女の子が、お姫様になって大好きな人と幸せになれる日)
 胸に手を当てて、『鏡文字』日逆・エクリ(BNE003769)は少女らしい憧れを心の中で吐露する。ファンタジーと言われればそれまでだが、こんな普通じゃない世界なのだから普通に幸せな日があってもいいとエクリは思う。
 だけど、エクリはそれを口に出さない。まだまだ世界にはエリューション事件がいっぱい起こっているし、夢を見るのはすべてが終わった後だと決めているから。
「それでも大切だという思いはあるの。これ以上神秘の力で壊させたりしないよ」
 ぼそりと漏らしてから、ぎゅっと手に力を込める。それが素直になれないエクリの、素直な気持ち。
「お願いされたら仕方ねーですね」
 こちらにも素直になれない天邪鬼が一人。『獣の唄』双海 唯々(BNE002186)はまだ新郎新婦が来ていないことをいいことに椅子の背もたれに座って足と尻尾をぶらぶらとさせている。口に出すのは仕方ない、という自分を納得させる言葉。
 綺麗な教会のステンドグラスを見上げて、唯々は目を輝かせている。つまりは、こういうのも悪くないと思っているのだ。口には出さないけど。
「花嫁攫いにも幸せの門出をぶち壊そうする理由があるのかもしれねーですが、イーちゃんそんなの関係ねーですし知りたくもねーです」
 神父役の『闇狩人』四門 零二(BNE001044)にコホンと咳払いされたので、ちぇーっと小さく言いながら飛び降りる唯々。その言葉には皆も共感している。何故なのかはまったく分からないし分かりたくもない。
 ただ、それが迷惑なのだから倒すだけだ。
「寧ろ女の子の夢ぶち壊そうとするヤツは、敵って考えるのが妥当じゃねーですか常識的に考えて」
 へん、と笑って耳をぴこぴこと動かす唯々。両手を組んでポーズを決めているのだが、どうも動いている尻尾と耳が気になる。
「人生一番の晴れ舞台を奪うなんて、ずいぶんと趣味の悪い人ですね。そんなヒネている人にはお灸が必要なのです。遠慮はいりませんよー!」
 後ろのほうの席で「がおーっ」と言いたそうに両手を上げて怒っているのは『極北からの識者』チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)である。その顔は張り付いたような笑顔で、ちょっと楽しそうにも見える。というのも、先に言った遠慮は要らない、の部分を自分でも実行するつもりなのだ、チャイカは。
 むろん、結婚式に憧れていないわけでもないし、それはそれでフラワーガールの役をやるためにチャイカは知識と論理を蓄えてきたから、本気度は伺える。
 戦いも結婚も、チャイカは本気なのだ。
「新郎だけを狙うって……羨ましくて嫉妬に狂ってんのか?」
 若者らしい熱気を振りまいて、両手の甲を合わせている『デンジャラスラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)はツリ目を更に吊り上げて、強気にフィクサードを糾弾していた。
「だいたい、ガスマスクっていうのが気にいらねぇ! 変な格好しやがって、モテたかったら顔くらい見せやがれ!」
 声を挙げて、行き場のない怒りを燃やしているヘキサの姿を見て、『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は少し懐かしい気持ちになった。
「ふふっ……」
 シスターの服装がよく似合う中性的なキリエに微笑まれていることに気付いたヘキサは、少しバツが悪くなって俯く。それを見て、キリエはクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げた。
「ふふ、相手が居るというのはなんとも羨ましい状況だな。まあいいよ、今回は大人しく見物人にまわるとしよう」
 長らく続いた病院生活で培ってしまった線の細い自らの体を腕で軽く抱いて、『徒花氷刃』プラチナ・ナイトレイ(BNE003885)は長い銀の髪を撫でる。病室を抜けてから時間も経ったというのにサイリウムの残り香がして、少し顔をしかめた。
「しかし結婚式を潰そうとする男か……。今回は人事ではあるが、いずれ関係せんとも限らないし、まあ放ってはおけないだろうな」
 クールな顔で参列の席に加わっているが、プラチナも当然女の子だ。結婚式に憧れる部分も少なくないし、人並みの幸せというものにも興味がある。
 だから、それを奪う者を許せるわけもなく。腰から覗く大太刀の鞘に手を添えていた。
「さて、キミたち。そろそろ時間だ」
 零二の声がかかって、リベリスタたちはそれぞれの持ち場につく。

 そして、結婚式が始まった。
「緊張……はする、が、その方がリアリティあるよな……?」
 花嫁が恥ずかしがりながらも、顔を赤くしながらも花婿と共にやって来る。
「花嫁さんきれい……」
 ハッと自分が見惚れて思考停止していたことに気付いたエクリは、首を振って意識を研ぎ澄ませる。フィクサードはいつ来てもおかしくないのだ。
 しかし、そんなエクリの考えとは裏腹に結婚式は進行していく。
「――では、指輪の交換を」
 神父役の零二がそう言うと、照れくさそうに木蓮は指輪を手にして、恥ずかしさが頂点に達した龍治はできるだけ木蓮を見ないようにしながら指輪を探り――敵の出現を知らせる合図の行進曲が流れる。
 そして、教会のステンドグラスが音を立てて派手に割れた。

●戦いの時
 ガスマスクのフィクサード――花嫁攫いは、ステンドグラスを割って結婚式に乱入をしてきた。ただ乱入するだけでなく、持っている爪を使って新郎を突き刺そうとして来たのだから恐ろしい。
「……くっ、いいタイミングで!」
 だが、相手が一般人ならともかく、今回の結婚式は警戒を怠らなかったリベリスタだらけだ。その奇襲は失敗に終わる。花嫁の木蓮は歯を強く噛んで悔しがったけれども。
「……花嫁の略奪など悪趣味が過ぎる」
 神父役だった零二がバスタードソードを素早く抜いて放ったメガクラッシュが花嫁攫いの腹に叩き付けられ、教会の中央まで吹き飛ばしたからである。
「堕ちた理由も狂った原因も敢えて問わぬ。オレが貴様にしてやれる事は理解でも同情でもない。……ただその外道を断つ事だけだ!」
 零二の意志に続くように、追撃の疾風居合い斬りが引き締まった男の腕から放たれて花嫁攫いの体に傷を付けていく。
「大丈夫、オレが……いや、オレたちぶっとばしてやるよ」
 疾風居合い斬りを放ち、ぐっと指を新郎に向けて立てているのは、最前列に座っていた『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)。新郎の友人役、ということでこの場面でも親友を演じてみているのだ。
「……そういうのは、いい。だが、俺はともかくあいつを」
 それを聞いて、龍治はAFから得意の火縄銃を取り出して……ちらりと横の花嫁を見る。
「なんでもない。撃ち抜かせてもらおうか」
 後方にステップをし、落ち着いた動作で火縄銃からアーリースナイプを放っていく。慣れている分、戦闘は気が楽だと龍治は感じた。
「逃がせば不幸なカップルが増えるだろう、ここで確実に仕留める」
 やれやれ、と自分の帽子を深く被ろうとしたキリエは違和感を覚えながらも扉の閉鎖に向かう。違和感の正体は、いつもの帽子を被ってないことだ。
 あ、と気付いてからピンポイント・スペシャリティを使い、花嫁攫いの体を貫くキリエ。その表情は変わらない。
「ブッ飛ばして、あの世で反省させてやるよ!」
 同じくヘキサも扉の方向へと向かい、花嫁攫いの進路を防ぎながら距離をとる。そして、キリエの攻撃に合わせるようにしてボレーシュートをするように足を振って斬風脚を使っていく。
「よっと……」
 花嫁攫いを釘づけにする攻撃を尻目に勢いを付けてからジャンプをし、翼を広げたチャイカは飛行を使って割れたステンドグラスのカバーに向かう。
 これらは、相手に逃げ道をなくすための動きだ。
「……!!」
 それに気付いた花嫁攫いは攻撃を受けながらも鋭い爪を手に動き出す。その表情はガスマスクに隠れて見えない。
「来るぞ!」
 相手が自分と同じ革醒者と知りながらも、新郎に向かって一直線に走りだし、一瞬で間を詰めて爪を振るう。爪の軌道はいくつも重なって、周りのものを巻き込む複数の刃となる。――幻影剣だ。
「……ぐっ!」
 その攻撃から新郎を庇ったのは零二で、
「御機嫌よう、空気の読めねークソ野郎」
 ブロックをうまく使うことでそこの攻撃の被害を抑えたのは唯々であった。爪をまともに受けてしまったことにより、頭からは血が流れて、フェイトの力を使わざるを得ないところまで追い込まれたが、それでも唯々の顔は笑っている。
「イーちゃんがアンタに祝福の鐘の代わりに破滅の鐘を鳴らしに来てやったですよ? 遠慮はいらねーですからさっさとくたばるがイイと思うです」
 言い放って、血まみれの体で跳躍。教会の中を舞ってから……気に入らないクソ野郎の頭にハイアンドロウを叩き込んでやった。
「よそ見してんじゃねーです」
 その間も、この花嫁攫いはずっと新郎と新婦を見ていた。それが、余計に気に入らなかった。
「あ、やっぱしててイイですよ? その間にイーちゃんがアンタをぶっ飛ばすだけですから」
 小さく舌打ちをしてから、もう一度攻撃を仕掛けに行く唯々だった。
「貴方はどうして壊れてしまったのだろう? この世が理不尽で、幸せな人とそうでない人がいるのは事実だけれど、幸せな人を妬んで不幸の道連れにしても、結果誰一人救われないんだよ」
「人の恋路を邪魔する人は、馬に轢かれてしまうみたいですよ。今の状況とどちらがマシかは、敢えて言いませんけど」
 扉側とステンドグラス側。正反対の位置に居るキリエとチャイカが人体の急所を狙ったピンポイント・スペシャリティを放って花嫁攫いの体に傷を付けていく。笑顔で論理的に戦うチャイカと、静かながらも熱い思いを胸に戦うキリエ。これも対照的だった。
「いや、馬じゃねぇな。人の恋路を邪魔するテメェは……。“ウサギ”に蹴られて死にやがれぇっ!!」
 チャイカの言葉に反応したのはヘキサである。その特徴的なウサギの耳をぴょんと弾ませ、勢いよくジャンプした後に斬風脚を放ったのだ。まさに、ウサギの一撃である。
 これらの攻撃は嵐のようで、攻撃を次々に叩きつけられた花嫁攫いはダメージで息も絶え絶えになっていた。それでも、降参だとかそういう考えはないらしい。爪を手に走り出したのである。
「脱兎の如くってか? 逃がさねぇ!」
 追いかけるヘキサ。しかし、花嫁攫いは速度を上げて割れたステンドグラスに向かう。――逃げるつもりだ!
「――させるか!」
 そこに、一陣の刃が煌めきと共にやって来た。
 プラチナのボールドコンバットだ。集中し、研ぎすまされた力はこの一瞬のためだけのもの。
「いくらおまえ一人が結婚式を潰そうとしたとして、なにも変わらないよ。愛し合うものは結ばれていくのはこれからも変わらないし、結婚式が無くなる事もない」
 氷のように冷たく鋭い刃が、花嫁攫いの体を切り刻む。無慈悲なまでに。
「ただの精神異常者で終わるつもりか? 理由があるなら言ったらどうだ? 私とて少しは理解できるかも知れんぞ?」
 斬り続ける間もプラチナの言葉は続いている。煽りのような言葉であるが、それは少しだけ本心でもあった。というのも、羨ましい、という気持ちが確かにあるから。
「……」
「何も言えないか。哀れだな」
 刀を振り終えて、鞘に仕舞う。この攻撃で花嫁攫いの足を止めることは十分にできたのだ。プラチナは十分な戦果だと満足していた。
「逃げんじゃねーぞ!」
「ここで逃げたら、すぐさまブーケゲットして結婚式挙げて幸せになってやるから。……ひ、人を妬んでないで、あんたも結婚してくれる相手探せば良いじゃない!」
 そうして足を止まったところに、牙緑とエクリがアッパーユアハートを使って挑発して花嫁攫いの気を向けさせる。ちょっとエクリは自爆気味だったがその効果は上々で、花嫁攫いは足を止めたまま牙緑を振り向いた。
 そこで、零二がニヤリと笑った。
「ファーストバイトならぬファーストバトル、だ! ……いけ……!!」
 オーララッシュを使って花嫁攫いを追い込みつつ、零二は後方に待機していた二人に声をかける。オーララッシュは当たらなかったが、これでいいとにやける。
「ラブラブをイーちゃんたちに見せつけてくれるです?」
「興味深いね」
 にやけたのは唯々やキリエもだ。というのも、既にリベリスタたちの視線はそれこそ阿吽の呼吸で動き出している新郎新婦に向けられているわけで――。
「幸せな花嫁の未来を奪う悪趣味な奴は、同じ幸せな花嫁が討ってやる。絶対にな!」
「……何だ、笑うんじゃない」
 龍治の火縄銃と、木蓮の自動小銃。二人並んでそれぞれの獲物を構えて、ロックオン。
「い、嫌なのか?」
「……嫌じゃない。綺麗だ、とても……」
「……へへっ」
 綺麗に並んだ二つの銃は、それぞれの技を放つ。
 その光景をただ見ていた花嫁攫いは、回避することもなく直撃を受けて……敗北した。

●温かい時
 その後、自ら息絶えた花嫁攫いを埋葬し終えた後に、結婚式は仕切り直された。
 神父役を続けている零二の言葉が、ステンドグラスからの風が吹く教会の中に響いていく。
「穏やかな昼も嵐の夜も、ふたり寄り添い支え合っていけばいい」
 やや、ぶっきらぼうであったが。それでも参列者たちからの祝福を受けて、二人は着々と二度目の結婚式を進行していき……。
 花嫁と花婿は恥ずかしそうに指輪を交換した。そして、花嫁は空の両親に向かって報告をしている。
 あんまりにも幸せそうな光景だったので、神父は少し意地悪をした。
「新郎、誓いのキスを。……これから何百も何千もするのだろうがね……フ」
「……!?」
「こら、逃げるな! ……嘘の挙式でも気持ちは本物だ」
 そこまでやるのかと混乱する花婿と、ニヤニヤとした笑いを浮かべる神父。
「こういうのも……悪くねーな」
「お幸せに」
「二人とも綺麗ですね……本番でも、ぜひ見せて欲しいものです」
「はいはいごちそうさま」
「ハイハイお幸せにー」
 参列席からは、色々なものが交じり合った視線と祝福の声。
「愛してるぞ、龍治!」
 そして、重なる二つの人影。
 この瞬間こそが奇跡なのだとリベリスタたちは思う。世界も運命も、捨てたもんじゃない。
 ――この奇跡よ永遠に。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 はい、おめでとうございました。
 ということで、無事に戦闘はリベリスタたちの勝利となり、狂ってしまったフィクサードは倒され幸せな結婚式は執り行われてハッピーエンドです。
 戦闘の面はお見事でした。被害も少なく、無事に倒すことができましたね。
 これからもお幸せに。そして、結婚式がまだの皆さんもがんばって!!
 ということで、お疲れ様でした。

 MVPの理由は結婚式を自分なりに楽しみながらも、しっかりと戦闘の面と逃走阻止の細かいプレイングができていたからです。