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罪無き悪無き純真無垢に発狂中


 むく。
 肉塊散乱する、コンクリートの上。火葬していると言うのか、それらには地獄の炎が付き纏う。
 赤色、赤色、赤色。血が地面の灰色を染め、炎が白い肌を照らす。
 その中心で起き上がった少女――『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ。
 ごとりと持ち上げた消火器、の形をしたアーティファクトを見つめ。
「これ? 何に使おうとしてたのよ……あ、もう喋れないかぁあああっ!!」
 マリアはリベリスタとして、フィクサードに盗られる前に、アーティファクトを確保する依頼をしていた。けれど、短期間とは言え、元剣林である彼女がとった行動はとりあえず武力。
 己の力をフルで使い、燃やし、切り刻み、石へと変えて。
「すぐに壊れちゃ、遊べないじゃないの」
 ゴミを見つめるような目線を炎へと向けながら、白い翼は上空へと消えて行った。
「帰ったら遊ぼ!」
 向かう、アークへ。一直線に。


「で、これはなんのアーティファクトなの?」
「はい、先程調べていたのですが……えーと資料資料」
 そんなこんなでブリーフィングルーム。
 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)の手前にアーティファクトを置いて、マリアはそれを弄り始めていた。戦場から帰ったばかりであり、その体には返り血が未だ着いている。
「マリアさん、その栓。抜いたらダメですからね? めっ!」
「わかってるわよ、あんま子供扱いすんじゃ無いわ」
 とかなんとか言われてしまったら外したくてたまらない。
 杏里が資料に目線が行っている最中、マリアはその栓を力任せに引き抜く。
「あ、ありました! えーと外見年齢がかわ……マリアさーん!!?」
 眼の端で不審に動くマリアに焦点を当てれば、ほら、やっぱり抜こうとしていて、それで抜けちゃって。
「いだっ!?」
「それ抜いたらだ、め、きゃーーーーっ!?」
 抜いてはいけなさそうな栓を抜いた瞬間に、ホースから白い煙がぶしゅー。杏里を直撃。マリアはマリアで抜けた勢いで後頭部を地面にぶつけながら転んだ。
 咄嗟にマリアは栓を力任せに戻し、しばらくして白い煙が消えていく。その一部始終をマリアは見ていた。
「な……な、な、ななっ」
「あら?」
「なにしゅるんですかーっ!!?」
 そこにはおよそ三歳児くらいであろう杏里が、居た。
「しょれは外見年齢が変わってしまう、『玉手箱の中身』というアーティファクトでし……て?」
「ふ、ふふ、ふっ」
 杏里が小さい体で必死に説明する中、マリアは玉手箱の中身を持ち上げた、そして。
「ぶっ、はは、あはははははははは!!! きゃはっぎゃははははははははははは!!!!!」
 そのままブリーフィングルームを飛んで出て行った。無駄に魔陣展開とかしていた。
 残った杏里は顔面蒼白。おそらく新しく買った家電を早く使いたい。そんな心境で持っていったのだろう。
 携帯からスマートフォンに乗り換えた杏里は、タッチパネルの上を高速で指が滑る。そして手当たり次第にリベリスタへとメールを一斉送信。

『アーティファクトを持った凶悪な少女が三高平徘徊中! 注意してくださーいっ><。』
 ま た マ リ ア か 。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月23日(土)23:18
 夕影です
 普段通りの一日にアーティファクトが介入するお話です

●成功条件:平和な一日をお過ごし下さい!

●アーティファクト『玉手箱の中身』
・消火器型アーティファクト。正しくは中身をさす

・玉手箱を開けるとたちまちおじーさんに!! というアレのランダム番です

 触れると外見年齢がランダムで変わります。効力は24時間
 服も何故かぴったりのサイズになります
 精神年齢はそのままです

(ランダムとありますが、プレイングでPLさんからの年齢指定がありましたらそちらを優先します。
 ですが、PCさんはいくつに変わるのかは分かっていません。
 また、玉手箱の中身に当たりたくない場合は、プレイング冒頭に【回避】と明記下さいませ。

 三高平は、80歳でも若い方等沢山いらっしゃいますが、今回は年齢相応の見た目になってもらいます。
 年齢相応とは個人差が勿論ございますが、こまけえこたーいいの!です!)

・玉手箱の中身はマリアが持ち運んでおり、PCを見つけたら手当たり次第に噴射し、笑って去っていきます
 話しかければ留まってくれますが、アーティファクトを奪おうとするとEX堕天落し(全体石化ダメ0)とか撃ちながら去っていきます

*噴射され、マリアが去っていった後の行動をプレイングにしても大丈夫です

●『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ
・元フィクサード
 金髪赤目、フライエンジェ×マグメイガス
 やたら上から目線です
 彼女については、夕影のクレイジーやCrazyや狂の着く題の拙作には必ず登場しています

●牧野 杏里
・貧乏くじを引きやすい
 ブリーフィングルームでよたよたしています

●その他
場所:三高平市内全域
・いつでも、どこでも、彼女はやってくる
 お腹が減るまでやってくる

時間帯:お昼~夜の平日

●注意
・このシナリオはイベントシナリオです
*参加は50LPです。
*イベントシナリオでは全員の描写が行われない場合もあります
*報酬はVery Easy相当です
 行動はやりたことを絞ってプレイングを書く事をお薦めします
 また、倫理規定違反や他人の迷惑になる行為、そして白紙は全て描写外とします
 特定のPCと一緒に行動する場合は名前(ID)を書いてください
(例:牧野 杏里(nBNE000211))
 団体で行動する場合は、【団体名】か【場所】を分かりやすく書いて下さると嬉しいです
(例:【三高平高校教室】)
 NPCに話しかけたい場合は、名前(ID)は不要なので、マリアや杏里とあれば大丈夫です

それでは、いつもと違う日常をお楽しみ下さい!
参加NPC
牧野 杏里 (nBNE000211)
 


■メイン参加者 36人■
プロアデプト
歪 ぐるぐ(BNE000001)
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
インヤンマスター
依代 椿(BNE000728)

クウガ・カシミール・ファーブル(BNE000788)
ソードミラージュ
アーネスト・エヴァンス・シートン(BNE000935)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
プロアデプト
阿野 弐升(BNE001158)
スターサジタリー
百舌鳥 九十九(BNE001407)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
デュランダル
蘭・羽音(BNE001477)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ホーリーメイガス
ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)

レイライン・エレアニック(BNE002137)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
マグメイガス
宵咲 氷璃(BNE002401)
デュランダル
ジース・ホワイト(BNE002417)
マグメイガス
百舌鳥 付喪(BNE002443)

小鳥遊・茉莉(BNE002647)
クリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
ナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)

石動 麻衣(BNE003692)

アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)


 メールを受信しました。
 その日、三高平内のリベリスタに送られたであろう。この内容に反して緊張感が感じられないメールは何だ?
 シェリーは少々苛立ちながら、道路を真っ直ぐに歩いていた。
「だいたいどう注意しろというん」
 プシュー!
 そこまで言いかけて、曲がり角に差し掛かったあたりで視界が一斉に真っ白に染まった。ついでに女の子の笑い声も傍で響く。
「なんだこの白い煙は、煙くて前がみえんっ」
 掴めない煙の中で、手が泳ぐ。しばらくして見えたのは。
「くっ……なんだこの感覚は。世界が小さくなったような……妾に谷間があるのだが、何があった!」
「キャハハハッ! 玉手箱の中身、面白ッ!」
 マリアが通り過ぎていく中、シェリーは己の身体を確認した。
 良くわからないが、身体が成長したようだ。しかも胸は大きくはり、くびれは引き締まっている。
 フ、まぁいずれこうなる事は分かっていたけれど。
「よし、折角手にいれたボディだ。有効に使うとしよう」
 一人カラオケ、一人ボーリング、一人飲みに、一人バッティングセンターまでどんとこい。
 そんなシェリーがヤッホウ!と通り過ぎていく風を感じながら、プレインフェザーは冷静でいた。
「お勤めご苦労さん」
「あら、アナタにもかけてあげるわよ」
 片手を軽くあげて、マリアに挨拶。
 聞いた話では、それにかかれば外見の歳が変わるというでは無いか。避ける者が何処にいると?
 考えてもみろ。
 プレインフェザーが生まれたとき、彼女の思い人は成人式を行っていたとか、それは凄い年齢差だ。
 その差が一瞬でも埋まって、あの男の隣に立っても違和感が無い大人の女になれたなら!
 白い煙がふりかかり、それが消えていくと。
「はあ!? 嘘だ、ありえねえ」
 すらっと伸びた両手の指を見て、ショウウィンドウに映る己の姿を見て。
 身長さえ伸びて、年齢は十二歳加算されたと見ていいだろう。ちょっとお胸は無いほうであるが。
「あたしがこんなに、その……び、美人に、になるワケあるか!」
 叩き上げた拳がショウウィンドウの硝子を簡単に破壊する。大丈夫、三高平ではよくあること、多分。
 己の姿に顔を真っ赤に染め、マリアをキッと睨むプレインフェザー。
「年を取るアーティファクトなんて嘘だな?!
 こんなん絶対見せらんない、すげえ恥ずかしい……もう、24時間、部屋から出ねえ!」
 そのまま顔を隠してダッシュで帰っていった。頑張れプレインフェザー、負けるなプレインフェザー。だが何と戦っている。
 
 (。非。【壁】

「なによぅ、まだ追いかけて来るのかしら?」
「はいー、ひたすら追いかけます」
 マリアは壁を伝う熟女蜘蛛、まお。こうなったのも少し時間は戻り。
 杏里からのメールを見て、これは三高平中が煙だらけになってしまうと危機を感じて、マリアを追いかけたものの。
 ぶしゅーっと白い煙をあっけなく浴びては、熟女となって今に至る。
「待て待てーですよー」
 マリアは羽を広げてばさりと飛びたつ。その後ろを壁を伝って、屋上を伝って、追いかけていくまお。
「鬼ごっこ! 鬼はまおだ!!」
 堕天落としの魔法陣が瞬時に展開されると、黒き閃光がまおを射抜こうとした。
 だが、寸前で避けた彼女はそのまま前に進んでくる。複数の閃光は周囲の人々にも飛び火したけれど、石化しただけで問題無い(さむずあっぷ)
 そのうちマリアは狭い建物と建物の間に入っては進んでいった。いつもなら通れるのだが。
「おや、ちょっとこれは」
 熟女体は、その隙間には入れない。登ってマリアを探してみたものの、大きくショートカットして行った彼女は既に見当たらなかった。

 所変わって、白い霧を噴きかけられたソラ。
 おばあちゃんになるのは嫌だと白い霧の中で思ったが、霧が晴れてみると。
「うふふふ、なにこれ、すごい。これが本当の私」
 すらりと伸びた両手両足。大きく膨らんだ胸。そのナイスなバディを晒しながら、市内を歩く。
 願望ありきで、元の姿に戻りたくないまでに考えた。
 むしろこっちが本来の姿なのだから戻るという表現はおかしい。
 本当のソラ、デビュー★
 目に見えたマリアのアーティファクトを奪い取ろうと彼女は走り出す。
 それさえあれば!真ソラ先生バンザイ! みんなが待ち望んだソラ先生がここに!
「きゃー!!」
 とまあ、堕天落としの犠牲になっていった。

「まったく……少々やりすぎですよマリアさん。そのAFは回収します」
 亘がマリアの前に、青い羽を散らしながら飛び降りる。まあ、その言葉に返ってくる言葉は分かっている。
「べーっだ」
 NGワード:回収。
 瞬間的に、飛んだ堕天落としを浴びながら、それでも亘は笑っていて。
「ならお姫様が納得いくまで遊び倒しましょうか!」
 マリアが満足するまで。
 石化を抜けて、高速で飛んでくる亘は白い霧に包まれる。
 伸びる腕、高くなる背。みるみるうちに歳が上がる亘が、弾丸の如く突っ込んできた。
 けれどもその両の手をするりと抜けて、マリアは上空へと消えていく。最後まで上で、あっかんべーとされていた気がする。
「あはは……いってらっしゃい」


「年齢不詳の多い街とはいえ、これ以上年齢不詳の人が増えたら街が混乱する。俺も混乱する」
「マリアー」
 昼頃。クッキーを両手に持った快と雷音が町中を歩く。メールで来た通りなら、マリアが町で暴れているはず。
 早々に止めなければ、お前誰だよーという事態になりかねない。
 作戦名、クッキーで釣る作戦。これで本当に釣れるのかと快が疑問を持ち始めたが、でかい釣り針はよく釣れる。
「キャハハハハハハハハ、アハハハハハハハ!!!」
「!」
 上空から急降下してきたマリアへ手を伸ばす快。そのアーティファクトはキケン――
 だが、彼の手をすらりと抜けて少し上へと飛んだマリアは、そのまま二人に白い霧を吹きかけた。快は快で、行き場の無い勢いのままに前に転んでいく。
「む、逃げられたか! 何をしてるのだ! 快! っ?!」
「痛ててて」
 そこには小さくなった快が居た。そして半ズボン。
「俺、ちっちゃくなってる? 具体的には小学6年生くらい!?」
 ショタというやつ。小さな彼は見上げると、大きな彼女――雷音が居た。
 雷音は堪える様にして小さく笑う。それを見た快が顔を真っ赤に染めながら、マリアの逃げたであろう方向を指差す。
「わ、笑うな! それより、急いでおいかけよう!?」
「すまない、いや、アークの守護神がこんなに可愛らしい頃があったのが見れたのが僥倖というか。
 ……笑ってすまない、怪我はしてないかな?」
 雷音の長い腕と細い指が、快の血の流れる膝に絆創膏を張る。更に典型的な少年の絵に近づいた。
「この姿ではお互いやりづらいな。クッキーもいつの間にか奪われた」
 快の手を引いて、雷音が走り出す。とは言え、歩幅が違いすぎて手を引かれるというより引っ張られている状態。
 妙な気分のまま、快は雷音の背中は見つめながら。

 夏栖斗の奴が見たら、何て言うだろうな。

 その目の前をツインテールの綺麗な女性と、その弟なのか息子なのかと思うほど膝に絆創膏をした少年が通り過ぎて行った。
 ふと、よく知っている香りがした。
「御厨くん?」
「……今なんだか僕のよく知っている二人が、目の前を通った気がしたんだけど」
「何言ってるのよ、今通ったのは女とただの子供」
「見てなかった」
 夏服を買いに来たこじり。それから二人で混雑する繁華街へ歩き出し、ついでにマリアを探す。
 はずだった。
「ぶわっ?!」
「キャハハハハハハッ!!」
 突如こじりの眼の端には、長い金髪。それが夏栖斗に向かって白い霧的気体を吹きかけているのを最後に、彼の姿を見失った。
「くっそ~、マジで! ……こじりー!」
 ……目つきの悪い餓鬼に話かけられたわ。そう思ったこじりは刹那、眉の間にシワを寄せまくって、すぐに表情を柔らかく変えた。
 子供は嫌いだ、けれど此処は穏便に。まるで定型文をそのままなぞる様に、つい出た言葉が。
「何? 私、子供って嫌いなのよ、面倒臭いから」
(どうしたの、お母さんは?)
「どんな本音だよ!! 優しくしてやれ! 子供には! 僕だよ! 夏栖斗! 御厨夏栖斗、君の彼氏!」
 ランドセルが似合いそうな程までに縮んだ彼氏は、一生懸命に短い足を地団駄しながら彼女を見上げる。
 信じてもらおうと夏栖斗が一歩迫るごとに、こじりは一歩引くのだった。
「えー……じゃあ、私のバストサイズは?」
「え? あったっけ?」
 その反応、まさにマイダーリン。
「いや、マリアにやられて! ねえ? 聞いてる? こじり? こじりさん?」
 夏栖斗がこじりのスカートをくいくい引っ張る中、こじりは目を閉じて、機能停止。
 そうか、これが、このちっさい生物が………ふむ。
「か……かわ、かわ」
「皮?」
「かーわーいーいー!」
「今からマリアを捕まえにって僕がつかまったああああ!」
 覚醒したこじりが、細い腕で夏栖斗を抱えて頬ずり頬ずり。嗚呼、この頬の感覚、匂い、嘘じゃない。
 走り出す彼女は、そのまま自宅へ強制連行。夏服を買うよりも、マリアを捕まえるよりも、優先すべき事が彼女にはできたのだろう。
 爆発しろ。

「見つけたぞ、マリア! 今日こそお兄ちゃんと呼んでもらう!!」
 竜一がマリアに指をさす。
「なっ!? いつから兄になったのよ!?」
 と、顔を真っ赤にして逃げ始めるマリアの背中を、竜一の足が追うのだ。
 今日の竜一はぼっちなのだが、ブリーフィングルームで妹の失態は兄が尻拭いしなければと、小さな杏里の頬をすりすりしながら悟った彼。
 きちんとマリアが謝ってくれれば、その身体を抱きしめて頬ずりしながら褒めてやる。これぞ兄妹愛。
「マリア、待てぎゃーーー!!」
 伸ばした腕、儚く。
 飛んできたのは堕天落としと、ついでに玉手箱の中身。
 竜一の姿はみるみるうちに歳をとり、ダンディーな歳になったとかで。これでは見た目は兄というより、親である。
「なんや竜一さんみたいな人が石化されておる……おぉ、マリアさん……って、なんやのその消火ぶぁっ!?」
 と、通り過ぎのマリアの保護者。お約束のように霧に飲み込まれて咳き込んだ。
「椿! え?! 椿……なのぉ?」
 霧が晴れた頃にはマリアの眼は丸くなった。高い身長に、ちいさな腰、大きな胸。美女がそこにいた。
「いきなり何するんや、お?」
 視線が高いことに気がついて、己の姿を見た瞬間に大粒の涙が瞳から零れていく。
「え?! なんで泣くのよ!!」
「いや、もう二度とこの姿なれへんって……そう思っとったから」
 慌てて椿に近寄ったマリアの顔に、涙があたる。そっか、いつもの姿はそうだったもんねとマリアの胸が少し痛む。
 するとぶわあとマリアの足が浮いた。細い腕に持ち上げられ、抱っこされ。
「よし……今日はお姉さんがご飯奢ったる!」
「マリア役得!」
 なつかしの自分に、こんにちは。こうなったのもマリアのおかげ。
 この姿ならマリアを養子にしても問題ないとまで思って、出た言葉が。
「マリアさん、大好きやよ!!」
「親ばかなの?」

 びしゅーと白い霧がきたような。そういえば、今日はカレーの珍しい材料が手に入った。
「マリアさんではないですか。こんな所で何をされてるんですかな?」
 と言うか、今私を狙いましたよな?
 駄目ですぞーとマリアの頭を撫でる九十九。ちょっと照れながらもマリアは受けていた。
 そういえばマリアは学校に行くのか? と問いかけてみたものの、マリアはかなり微妙な反応。
 人通りの多い場所はあまり好きではないようだ。
 それでも変りの無い彼女を見れて満足。去り際にマリアの手にあんぱんを投げ。
「三時のおやつってやつですな。後、いたずらも程々に。皆さん狙ってますぞ?」
「わーかってるわよぅ」
 もふっとあんぱんを齧りながら、青い空に消えていった。

 しばらくして地上を歩いていた頃。
「あら、マリア。元気になった様ですね、何よりです」
「悠月」
 きっと悪戯をしているのであろう彼女の目の前に、止めようと思えばいくらでも手はあるものの。
 あえて止めない悠月は、杏里のメールが駆け回っていますと苦笑しながら、そのアーティファクトを見た。
 現代的な玉手箱とでも言うべきか……竜宮伝説の老化はともかく、若返り。それはまるで。
「……月から墜ちた天の人――かぐや姫の蓬莱の薬の玉手箱」
「む、むずかしいこと言うのね……」
 手を顎に、ふむと見つめる彼女に対して、マリアの頭にはハテナが浮かんでいた。
 興味深いが、制御できないのが難点だ。それに効果時間が短い。まだ試作なのか。それはそうと。
「任務の成功と無事の帰還、お疲れ様です。――お帰りなさい、マリア」
「!! あ、あら……むむ、ありがと」
 純粋にお疲れだなんて言われたら、身体がくすぐったい。
 マリアは顔を真っ赤に、悠月の背を見送った。

●ここ一番の?
 そんな中、ブリーフィングルーム。
 平和といえば、まだ平和だが、小さな杏里が椅子に座って新たな依頼の資料を纏めようと苦戦していた。
「杏里、少し良いか?」
「はい! たくまさん! ああ、こんな姿でごめんなさい」
「……大事な話がある、ジースの事だ」
「ええっ」
 持っていた資料をバサーっと下に落とした杏里に、拓真は苦笑しながら息を吐く。
「君も、もう気づいているかも知れないが……今のジースの精神性は、かなり危うい」
 今のジースは、特定の者には憎悪の目で周りが見えなくなる傾向にある。
「何かを守りたい、誰かを救いたいと思う事は尊い事だ。だが、時にはそれも鎖となりその者を縛り付ける」
「は、はい……」
「もしも、機会があれば君が止めてやってくれ。……それが出来るのは、きっと君だろう。重い事を任せてしまうが」
 杏里はどう返せばいいか迷ってしまった。更に、リベリスタ頭まで下げられてしまい、杏里はわたわた。
 それでも何か言葉を捜すように。
「ご期待に、沿えるようにはしてみます。ジースさんの、ため! ですよね?」
 というシリアスな雰囲気をブレイクする、ツァイン。
「幼女化してるまきのんはここですか!」
 扉をドバーンと開いて息荒げに入室。杏里を見て可愛いと思って和んだが、すぐに顔を戻して。
 マリアのことは分かっている。
「分かった、取り戻してくるぜ! でもその前に」
 パシャッと一枚シャッター音。
「つぁいんさん!?」
「すいませんッ、行って来ます!」
 パシャッ。
 これはツァインのカメラでは無く、エリスのカメラ。
 エリスは今日一日、彼女の被害者をカメラに収めていくことをしていて★
「まず……一枚目」
 なんて悪魔っ子はここにも居た。

 ――というわけで市内。
「見つけたぞ!それを返……ぶわっ!?」
 あっけなく霧を浴びたツァインは、ショー○コネリー風のおじ様風。
「これは…む、いかん、追わねば……」
 口調までそれっぽくなってしまった彼に隙は無い。餌でマリアを釣って、捕獲。
 ……かと思いきや。
「やーだ!」
 駄々をこねたマリアの堕天落としが過ぎ去っていく。
 動けない身体。はぁっと息を吐いた彼は最後に去り際のマリアに言葉を。
「杏里の面倒をみてやれ。なに、今ならお姉さん役ができるぞ?」
「いく!」
 ――ということがあった。

 拓真が部屋から出て行った姿を目で追いながら、ジースが部屋に入ってきた。
 話していた内容等、気になることは沢山あるがそれを全て吹き飛ばして。
「杏里ー!」
「じ、じーすさん!?」
 杏里を見つけるや、早々にその身体を軽く持ち上げて高い高い。いつもと違う高すぎる位置にひゃー!?という声を出していた。
 そんな彼女を見ていたらジースの顔も緩む。きっと昔はこんな感じだったんだろうなぁ。
 という平和は早くもぶち壊されてしまうということがあって。
「うっへ、げっほ、うぇっほ!」
 ルーメリアが、咳き込みながら入室。
 今そこで謎の少女に霧を吹きかけられたと涙目で語りながらも、目の前の光景を見てピタリ。
「えっ……と……お、おめでとう! 色々大変だと思うけど、ルメは応援するよ」
 何と勘違いした!? 紅い男の言葉を借りるならば、小さきリベリスタよ。
 杏里っぽいその小さな子は、ジースと杏里との間にできた子ではないぞ!
 とは言うものの、三高平内のリベリスタが見たらきっとそう勘違いされるのだろう。
 さておき、ルーメリアは今更ながら身長が伸びていたことに気づく。
「ならおっぱい出る気がする! 牧野さん、飲んでみる?」
「えっ!?」
 よい子の諸君、BNEは全年齢であることを忘れちゃいけない!
「冗談だよ、ごめんごめん! マリアちゃん探してくるよ!」
「マリアなら、此処にいるよ?」
 居た。ツァインに言われて来ましたと顔に書いてある。
「マリ……ギャー!」
「マリギャじゃないわよ、マリアよ」
 お約束通りに消火器からの霧を浴びるジース。せめて腕の中の杏里にはかけまいと背中でそれを受けた。
 白い視界の中で、彼女の無事を確かめて。杏里!無事か!?といいかけておいて。
「って、俺も縮んだー?!」
 杏里よりは少し大きい十歳の姿。小さくなった己の身体を見回しながら、一生このままなのかと頭をかかえつつ。
 心配そうに見つめる杏里の瞳に自分が映った。
「このままの杏里も可愛いけど……やっぱり俺はいつもの杏里の方が、す……」
「す?」
 そこまで言いかけておいて、その先が気になると杏里は頭を斜めに傾けた。
 マリアが膠着しているジースの耳元に口を近づける。
「すき……やき?」
「違ああう!! なんでもねーよ!!」
 そういえば言わなければいけないことがあったような気がするが、それはまた次回。

 そんなこんなでマリアが再び遊びに消えた後のブリーフィングルーム。
「あら」
 マリアの気配を辿っていた氷璃が訪問してきていた。
「杏里にそっくりね。貴方達、何時の間に――?」
「だから違うってのおぉおお!!」
 分かっているけれど、ついからかいたくて。

 ――そんなことを思い出しながらも、今は市内上空。
 優雅に飛んでいた所で、遠くの空でマリアが白い鴉に囲まれているのを見つけた。
 小さく笑いながら、氷璃はマリアの更に上空から強襲抱きつき。
「探したわよ、マリア。おかえりなさい」
「っ!? こっ、氷璃! ……じゃない、姉様」
 おかえりだなんて言われて、真っ赤に染まった顔を見せまいとマリアは顔を下に向けた。
 そんな彼女の頬や身体に着いた何処の誰とも知れないフィクサードの血をハンカチで拭う。血塗れだなんていけない。
「しょうがない子ね。後でお風呂に入れて上げるわ」
「ん……それくらい自分でできるわよぅ!」
「だって、折角のプレゼントが汚れてしまうでしょう?」  
「へ……?」
 差し出されたのは黒と赤を基調としたクラシカルなゴスロリ。
 プレゼントだなんて、マリアはつい無意識にもそのプレゼントに手を伸ばしていた。
「気に入って貰えたかしら?」
 プレゼントに刹那、目を輝かせたものの、すぐにぷいっと違う方向を見る。けして嫌な訳ではないけれど、反抗期と素直になれない彼女の心がぐるぐる回っている。
「姉様は……いや、氷璃はちょっとマリアに過保護なのよっ! マリアはこわーいフィクサードだったのよぉ!」
「あら、私は甘やかすわよ?」
「ど、どうしてよぉ……」
 ――私はマリアのお姉様だもの。
 それからはマリアは何も言わず、目さえ合わさなかったけれど。氷璃の服の袖を掴んで離さなかった。

●三高平公園
 いつも通りに二人で公園を歩いていたとこだった。すると俊介と携帯に杏里からのメールが入る。
「どうしたの? 俊介」
「物騒なのがいる。まあ、俺達なら大丈夫っしょ!」
 とか笑顔を羽音に向けるこの彼氏の背後で、マリアが笑顔で接近していた。
「あぶないっ!」
 そう言って俊介の身体をど突いて押し退け、代わりに羽音が霧状のアーティファクトに巻き込まれていく。
 しばらくして煙が消えて、羽音は周囲をきょろきょろしながら彼の姿を探した。
 嗚呼、大丈夫。俊介はちゃんと無事だ。
 けれどもおかしい。俊介が大きい、というか世界が大きい。
「羽音!? どうしたんだ、その格好!? なんてなんてなんて」
 ひょいと持ち上げられ、足が宙に浮いた羽音。抱きかかえられて胸に仕舞われて。
「なんて可愛いんだ!!」
 そっか、自分が小さくなったんだね。
 羽毛もヒナ特有のわた毛になったりして、三歳くらいだろうか。こうなったらもう遊んでしまえ。
「しゅんすけおにぃちゃーん、あそんで?」
「ぐっふぅう」
 服をぐいぐい引っ張りながら、羽音は強請ってみせ、俊介はその行動に鼻血が出そうになるのを気合で抑えた。
「かたぐるまとか、おんぶとか、いっぱいしてー」
「お、おう!」
 傍から見ると俊介は今、訴えられたら勝てない重度のロリコンである。

「よう、マリア。どうしたんだ、随分楽しそうじゃないか」
「アーティファクトもらった!!」
 断じてあげてはいないが。
 目の前のリベリスタへ白い霧を噴射しながら、マリアが楽しそうに宗一の方向を向いた。
「ふぅん……で、手に持ってるそれはなんだ?」
「これマリアが盗ってきたのよ!!」
 胸をはるマリアに、宗一はふうんと反応する。だが、その噴射口をこちらにマリアがさっと向けたのだ。
 にやあっと裂ける口には、嫌な予感しかしない。
「かけてやるわよ!」
「え、まて、うわっ……な、なんだこれ?」
 ぶしゅーっと噴射された白い煙。もくもく消えていって……己の身体が大幅に小さくなっているのを感じた。
「So Cute!! いつまでもそれでいるといいわ!」
 そのまま翼を広げて笑顔で去っていく彼女に、ため息をつき、それから微笑んで見送ってあげる小さな宗一。
 ま、じきに疲れて飽きるだろ。で、これいつまで?
 二十四時間。

「ふざけた真似をしてくれる奴がいると思ったら、マリアのジョーチャンかい」
「アナタも少しは可愛くなればいい!」
 噴射口が瀬恋に向けらた瞬間、その手を掴み、逆に噴射口をマリアへと力任せに向けさせる。
「おいたが過ぎると怖いオッサンとか出張ってくるからはしゃぎすぎんなよ」
 とか言いつつ、右手の砲身が前にせり出す。瞬時に飛んだ魔弾がマリアへと向かう。
「ぁっはァ! やる!? 歌ってね! 綺麗な声で断末魔をぉ!!」
 やり合うには不足の無いマリア。人形とはやったけれど、彼女の力とぶつかるのはこれが初めて。
 寸前でかわして、宙に浮いたマリアが作ったのは火の玉。
「聞き分けのない餓鬼はぶっちめるってのはね! 日本じゃ普通の事なんだよ」
 それを投げられ一気に瀬恋の周囲は爆発の炎に巻き込まれていく。その炎から抜け出し、再び放たれた魔弾がマリアの頬をかすめていった。
「まだまだ遅いのよ!!」
 響き渡る雷鳴に瀬恋が貫かれるが、回を増すごとに威力を増す魔弾がマリアの肩を突き抜けていく。
 そのうちに展開された魔法陣が爆発的に周囲を飲み込み、黒き閃光が放たれた――。

 ぴろり~ん♪

 歳をとった弐升へ、マリアが両手で携帯のカメラを操作していた。
 なんだが普通に年齢変ったら撮ってくれだなんてお願いされたら、ナチュラルに従ってしまった。
 ほら、せっかくのお遊び?ですしどう変化したかこのままじゃ客観的に見れませんし?
「まあ、それは一理あるもんね……」
 と携帯を弐升へと渡して。
「しかし、マリアさんって懐かない寂しがり屋な子猫っぽいですね」
「ど、どういう意味なのよっ!?」
 焦ったマリアに、弐升は冷静。だって、ヘタレ臭もするし。元精鋭なら弱いわけではないけれど。
「まあ、可愛いってことグフッ」
「う、うるさいのよっ!!」
 飛んできた葬送曲の鎖が胴を射抜いていたとかで。


「ハローハロー。あそびましょー」
「Hello! ぐるぐ! アナタも面白可笑しくなっちゃいなさいっ!」
 アーティファクトの噴射口をぐるぐに向けられる。
 ぐるぐは冷静にピンポイントを放ち、噴射口を塞ごうとしたが、瞬時に気づいたマリアが噴射口を上にあげて回避してしまう。
「ありゃ失敗」
「駄目よっ、マリアは浴びさせる方なのよ!」
 続いて噴射される玉手箱の中身。それを浴びたぐるぐが見る見る老いていき、老人の姿になってしまう。
 近くの窓に映った自身の姿を見ながら、ぐるぐはお腹をかかえて、指をさして笑った。同じくマリアもキャハハハと笑い転げる。
「その姿がお気に入りなのぉ……?」
 首を横に傾けて言ったマリア。するとすぐにぐるぐは百面相で元の姿へと戻る。成程、そういう手もあったか。
 感心したマリアの油断を誘ったか、キラリと光ったぐるぐの目。
 パッと玉手箱の中身を取ると、そのまま全速力で飛んでいくぐるぐ。
「被害拡大れっつごー!」
「……あ」
 追撃の堕天落としがぐるぐの背中を襲ったとか。

 なんだかんだで遊びたい時期なんだろうと。
 遊べる時間もきっと少なかったのだろうと。
 サメの鼻を効かせて進むりりすは、ついにぐるぐを石にしているマリアを発見した。
「マリアお嬢さん」
「りりす?」
「じゃあ、僕が捕まえたら、せくはらするね。逃げ切ったら、後で桃缶とうさ耳あげるから」
「唐突すぎんのよ!?」
「うさぎは、さびしいとしんじゃうって。僕、偏差値上がったね」
「マリアうさぎー!?」
 賑わいと、石化飛び交う市内。勿論今回も多重の魔法陣が青空を埋めていた。
 全力防御し、確かにその閃光の光に包まれていくものの、刹那、本能か。
「え?」
「おお」
 石に、ならない。寸前で捻った身体にかすったものの……。
「このっ!」
 むきになったマリアは手の中で火を作る。それを投げてフレアバースト。どちらもガチの戦闘という名の遊びで手は抜かない。
 残像を残して逃げていくりりすに、マリアは手当たり次第に魔力を投げていた。
 三高平壊れる。

 このソフトクリーム超おいしい!って道端でアイスを舐めていた終。
「あれ? マリアちゃんかな?」
 追いかけて来るリベリスタ達に堕天落としを放ちながら、マリアは終の目の前で急ブレーキして空中で止まった。
「終、良い匂いがする!!」
「一緒にソフトクリーム食べない? ここのソフト超お勧め☆ ……アレ?」
 終がその言葉を言い終わる前に、マリアの口が終の手のアイスを舐めていた。
「ところでマリアちゃん、その消火器な~に??」
「百聞は……」
 ふと向けられた噴射口。ぎょっと驚いた終は両手を壁にして身を護ったが。
「一見に如かずなのよ!」
 噴射された白い霧が終を手から身体まで包んでいった。
 目線がマリアと同じ位置。身体が縮んで、服も縮んで、外見の年齢低下した己をまじまじと見つめた終。
 なにこれ面白い。きっとそれを振りまいてきたんだろうって安易に予想がついて。
「ひゃっはーリベリスタ狩りだー☆」
「次いくのよ!!」
 凶悪な少年がプラスされ、マリアは終を抱えて翼を広げた。

「おいマリア、何だよコレ……!?」
「まあ、見てなさいよね!」
 終が噴射し、マリアが終を抱えて。悪戯は着実に実行されている。
「周りが全部大きくなって、そんでもってヒゲがねぇ!?」
 エルヴィンは、幼くなった身体を見回しつつ、マリアと終の方向を見た。
 凶悪な少女がいるとは聞いていたが、まさに目の前のこれだろう。しかも一人増えてるし。
 なるほど、そういうことか。
「面白そうだな、俺にも一枚咬ませろよ!」
 増えた。
 メイン盾! これでなにも怖くは無い!!
 そのマリアの背後をちらりと見たエルヴィン。嗚呼、追いかけてきた人も居た……。
「マリア、マリアー、クッキーだぞ!」
「雷音ちゃん、見つけた! マリア居たぞ!!」
 美女がクッキーをたずさえ、絆創膏の少年を引っ張り。
「お兄ちゃんと呼んでもらうまで追いかけ続ける!!」
 自称兄が全速力で駆けてきて。
「そのアーティファクト、ソラ先生にわたしなさーい!! 没収よ没収!!」
 胸を揺らしながら、没収という名の奪取しに。
「せくはらしにきたよ」
 武器を持ち、マリア目掛けてサメが一人。
「まだ、決着ついてねーし」
 笑顔でギルティドライブしようと、危ない、この人危ない。
「(もそもそ)」
 もそもそ。

「マリア」
「何よ、エルヴィン」
「後で、謝りに行こうな」
「? 嫌よ」


 ――夜。
「おやマリアかい? あんた、いたずらして回……けふっ」
 ボロボロになったマリアを目の前に、付喪が白い霧に巻き込まれ、歳相応の姿へと成る。
「全く、少しは人の話を効かないと駄目だねあんたは」
「ふん」
「それより、こっちに座って星でも眺めな。綺麗だからさ」
 晴れた夜空。公園の電灯が少し明るいが、見上げる星空は綺麗だ。
 一緒に横に座ったマリアはとんだロマンチストね、と首を横に振る。
「綺麗な物は好きかい、マリア?」
「ふふ、好きよ? 星空に照らされた血と炎なんて綺麗よ」 
「そうかい」
 脅してみようと、シリアスな声でマリアは言ってみたものの、さらりと流されて。
「ゆっくりで良いからさ、好きな物を増やしていくと良いよ。そうすれば、もっとあんたは幸せになれるさ」
 私の事を、もっと好きになっても良いんだよと冗談交じりにおどけた付喪。
「幸せ?」
 まだ答えが見つかっていなかった疑問を口にして、マリアは小さな身体を付喪へと預けた。

「さて、それじゃあ何だ、えーと、帰るかい? マリア」
 差し出した手に小さな手が触れた。

「いやぁー今日はなんだか楽しい一日でしたー!」
 チャイカが今日一日での被害や、エリスの撮った写真やらを並べながら笑っていた。
 その日、三高平は石にされた人や、市内で戦闘始めたりと大騒ぎだった。
 それを一部始終見ながら、外見変ったのを全てこの記憶に収めて満足。
「まあ、いつもの三高平だったよね!」
 ――よね?

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お待たせしました!
楽しい一日になったでしょうか?
マリアと遊んでくれて、ありがとうございます!
個人的には相談のノリがとても面白かったです
また違う依頼でお会いしましょう!