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<杵築最終決戦>斬鉄剣客組、最終抜刀大活劇!

●杵築最終決戦
 『マスタープラトン』。
 最大で半径100mの一般人をE・エレメントに変換し、所有者の寿命と引き換えに従属させるアーティファクトである。
 この所在が、とても派手な形で露見した。
 瀬戸内海は小島、杵築神社上空に独特な光と共に浮かび上がったのだ。
 ある者――黄泉ヶ辻『特別超人格覚醒者開発室』は至高の大隊を生み出すプラントとして。
 ある者――六道『斬鉄剣客組』は戦乱の世を作る為。
 ある者――裏野部『ヘビーアムズ団』は破壊と暴虐の為。
 ある者――巨大機竜は自らのコアだったものを取り返すため。
 其々の組織が今、一斉に現地を目指す。
 『マスタープラトン』を巡り、壮大な争奪戦が起ころうとしていた。

●斬鉄剣客組、最終抜刀大活劇!
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はブリーフィングルームのモニターに、小島の地図を表示させた。
「突如その所在を明らかにした『マスタープラトン』を巡り、いくつかの組織が動き出しました。このうちどの組織の手に渡っても大変なことになるのは明らかです。よって我々はやや規模の大きな作戦を立ててこれを阻止することになりました」

「皆さんに担当して頂くのは、六道『斬鉄剣客組』の迎撃です」
 武闘派剣客集団『斬鉄』。そのリーダーである猪狩長介がついに行動を起こしたのだ。
 場所は小島西部。西回りに南へ進軍し、杵築神社を目指している。
 長介は戦乱の世を作ろうとしている。
 それがどういう構図によるものかは分からない。だが多くの者が死に、多くの平穏が壊れるだろう。
「迎撃ポイントはここ……小島南西部の森林地帯です。既に強結界で人払いは済ませてありますので、戦闘には支障はない筈です」
 更に敵戦力をこまかに説明していく。
 リーダー猪狩長介。
 キマイラ化技術によって再稼働した元斬鉄の老剣士4人。
 そしてそれぞれの門下生達である。
 必ずしも全員倒す必要はないが、リーダーの猪狩長介だけは別だ。
 彼は『超戦術』というスキルを保有しており、味方全員の戦闘力を一気に底上げしている。
 それだけでなく、ラーニングによって『地球割り』『不動剣山』『裏土俵合わせ』のスキルを保有。凄まじく強力なフィクサードと化しているのだ。彼を残しておけば後々かなり厄介になるだろう。
「それと……現地で合流して貰う味方も居ます」
 と言って、和泉は通信をオンにした。
『ようアーク、元気にしてたか』
 テレビ電話の向こうでニヤリと笑うサングラスの男。その名も……。
「天道烈斗!」
『おうよ』
 アークと拳で語り合ったことによってリベリスタ化した男、元鉄拳リーダー『天道烈斗』である。
『斬鉄の連中とはそこそこ顔見知りでな。同じ『ホワイトマン』直下の武闘派ってんで責任も感じるし……今回は俺も協力してやるよ』
 コンコンとカメラを指で叩く。
『死ぬほど闘(ヤ)ろうぜ。それが、あいつらの弔いになるってもんだ』

●『超戦術』猪狩長介
 リン、と遠くで風鈴が鳴った。
 梅雨前のしっとりとした風に乗って、空気を割るように響いた鈴の音を、一人の老人は瞑目して聞いた。
「季節外れの、時代遅れ……か」
 禿げ上がった頭を片手で拭い、両手を袖の中に入れるように腕を組む。
 腰から下がった刀は、どこにでもある様な平凡な日本刀。
 それなりの値段はするがやはり平凡な草鞋。
 じゃりりと小石を踏み、老人は目を開けた。
 彼の名を、猪狩長介。
 袴の裾を風が撫でる。
 直後、何十人という剣士が大挙して老人を追い越した。
 けたたましい足音が鳴り響き、いくつもの抜刀音が鳴った。
「布石は蒔いた。犠牲も払った。やるべきことは全てやった。後はわしが命を張るだけよ……」
 刀に手をかけることなく、腕組みをしたまま歩いていく。
「聞けい――」
 長介が声を張れば、足音も、刀の音も、全てが掻き消えた。
 否、そう聞こえる程、彼の存在感は強かったのだ。
「八本刀門下の芋侍ども、今こそ貴君らの剣を示す時じゃ。戦乱の時じゃ! 貴君らが手に血を握って剣を振り続けたのは何のためか、世に起き去られ忘れられ、埋没せんども鍛え続けたのは何のためか。全ては今この時、『戦場(いくさば)』のためじゃ! 剣を抜けい、振り上げい、邪魔する者があるならば、人でも神でも運命でも、斬って捨てて踏み超えい! お主等は、その為に剣を抜け! そして、わしと一緒に誇り高く死ね! 戦乱の世は、すぐそこじゃ!」
「「応ッッ!!!!」」
 ザンッ、と足踏みする長介。
 それを合図に、斬鉄剣客組の進軍が始まった。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月15日(金)23:16
八重紅友禅でございます。
このシナリオは小規模全体依頼『杵築最終決戦』のひとつです。
皆さんの戦果が同地域の他シナリオに影響が出ます。

●斬鉄剣客組
 猪狩長介をはじめとするフィクサード剣士集団です。
 同地域の中では人数が少ないですが、かなり矜持の高い連中です。
 長介の『超戦術』によって全員が強化されている他、彼がラーニングした三つの達人剣術も使ってきます。(ラーニングによるものなので性能はかなり劣化している上、この上更にラニることはできません)
 また、『劣化魔剣化ネジ』と『キマイラ技術』の流用によって一部の斬鉄老剣士を稼働させています。
 幻惑型の加藤国文、防御特化型の高木切乃助、スピード型の仲本落哀、パワー型の志村川家……の四人です。
 特に猪狩長介は倒しておきましょう。

●この地域での戦闘について
 斬鉄剣客組はこの戦域を突破することを目的としています。
 なのでブロックや後衛保護が殆ど意味をなさずかなりの乱戦状態が予想されます。
 尚、(戦闘開始直後くらいのギリギリさで)リベリスタ天道烈斗が参戦します。
 必殺技の豪快絶頂拳は封印中。というか今使ったら絶対死にます。

●他シナリオへの影響
この戦域を抜けた敵NPCは、『マスタープラトン争奪戦』のシナリオへ移動し、マスタープラトン争奪戦に加わります。
色々な組織が入り乱れ多少の潰し合いが起きるため、あえてそれなりに流しておくのも手かもしれません。

以上、あなたの闘志が世界を救うと信じて。



参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
歪 ぐるぐ(BNE000001)
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)

●最後の剣客
 時は現代嵐の時代。
 人類そのものを破壊できる可能性を秘めたアーティファクト『マスタープラトン』を戦いのひとつとして、今ここに大量の剣客集団が集まっていた。
 そして、その誰もが今は足を止めている。
 三拍の沈黙。
 腕を組み、ゆっくりと袴の男が歩み出た。
 禿げ上がった頭と皺くれた顔。
 彼は薄く目を開け、眼前に並ぶ八人のリベリスタ達を眺めた。
 たん、と足音が鳴る。
 八人がひとり。『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が半身を前へ出す。
「逃げないのか」
「逃げん」
 低く呟き、息を吸う。
「白田剣山、路六剣八、富船士郎……人生の全てを代償にしてでも貴殿らと戦いたいと願い、そして敗れた。彼等を束ねる立場のわしが、どうして避けられようか」
「ならば、重ねて言おう。ここにいるのはアークの手練ればかりだ。君の言う戦場はここにもある」
 確かに、ここに居並ぶリベリスタは、神秘世界に名をとどろかせる名士ばかりである。達人殺し。怪人斬り。常識破り。人外魔境。物理破壊。一騎当千。巨人斬り。煽鬼。お祭騒ぎ。裏社会の剣客達が一度は斬り合ってみたいと言われるリベリスタたちが、今はここに並んでいる。
「ボクらと戦えご老人。少女の健気な虚勢を、無碍にはしまい」
「神秘の世界に少女も老人もあるものかい」
 『超戦術』猪狩長介は若者のように笑った。
「頭でっかちな若造どもよ。余計な知恵を巡らせて罠を張るだの囲い込むだのしようものならひっくり返してやるところだが……あいや失礼、感服申した」
 羽織の腕から手を引き抜くと、腰の刀に手をかけた。
「皆殺しの覚悟と見受ける。故にわしからも一つ宣言しておく。聞けい――」
 斬鉄剣客組の全剣士が刀を抜いた。
 長介だけが抜かずに、柄と鞘を持って掲げる。ゆっくりと抜き放ち。
「どちらか全員、死ぬまで退かん!」
 抜刀。
 斬鉄剣客組全剣士数十名とアークリベリスタ八名の死闘が、今始まったのだ。

 怒号を上げて突撃する何十人と言う剣士の群れを、『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は涼しい顔で眺めていた。
 巨大な対物ライフルをどこからか引っ張り出し、支脚も無しに乱射した。
「老い先短いどころかすでにお迎えが来ている皆様にお迎え間近のお館様、ついでに無駄死にする皆様、皆纏めて戦場の終着駅へご案内します。何故だなんて野暮は言いませんね」
「無論!」
 モニカの銃撃はただの銃撃ではない。軽自動車なら一発でスクラップにでき、並のリベリスタなら二発で死体に変えられる程の強烈な威力である。裏社会で『物理破壊』と言われるだけのことはある。
 死の鉛雨を駆け抜ける無数の剣士達。味方の屍を踏み越え特攻をかけてくる。
 しかしこちらは一機当然のリベリスタ。
 『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)と『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)が真正面から突っ込み、大剣とハルバートで出会った先から吹き飛ばしていく。
「はっはー、撃ちてしやまん! 下剋上するくらいの気概も無いの草食系ー!」
「お祭騒ぎだ! くははっ、今日はツイてる!」
 目の色を変えて斬り込んでくる剣士を、岬は一撃で(上半身だけを)吹き飛ばす。とある瞬足フィクサードをして『吹き飛ぶ前に死ぬ』と言わしめたトレードマークのハルバートは、この戦場にしてよく目立つ。
 そんな彼女と並び立ち、陽光に煌めく半透明の大剣を嵐のように振り回す宗一。
 誰も彼らの進行を停められはしない。
 仮に止められるとしたら、達人たちに他ならない。
「雑魚のあいてなんてしてらんないっ、さっさと達人と勝負しに行こーっと! 奥義奥義ー、新しい奥義ーぃ!」
 銃弾に薙ぎ払われる剣士達の肩や頭をぴょんぴょんと飛び石のように跳ねていく『Trompe-l'eil』歪 ぐるぐ(BNE000001)。
「げ、常識破りが居るぞ!」
「ぐあああああむかつくウううう!」
 岬とはまた別の意味で血相変えて襲い掛かってくる剣士達をひょいひょいと交わしながら駆け抜けていくぐるぐ。
 そんな彼女とは対照的に『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)が獣のように低い姿勢で駆け抜けていく。途中途中で残影剣で剣士達を斬りつけ、するすると間を抜けるのだ。
 そして、目的のものを見つけた。
「紅涙りりす。一手、馳走仕る――」
 どことなく非人間的な口調で、太郎太刀を担いだキマイラへととびかかる。
「志村川家君だな」
「……ギ」
 語る口はもう無いか。
 りりすはとろんとした目で呟いた。
 ――同刻。
 『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)は剣士達を薙ぎ倒しながら走り抜けていく。
 裏社会では『なぜあいつは剣に自分の名前を付けたがるのか』と議論されていると言う大振りな剣が唸りを上げ、次々と剣士達を吹き飛ばす。
「あの白黒イケメン(笑)……」
 今もこの島で戦っている仲間を想う。
「ここは絶対に通さない。誰であろうと」

 そんな戦場に、一足遅れてやってきた男がいる。
 名を天道烈斗。
「お、もう始まってんのか」
「よ、久しぶりだな。赤いのからの伝言だ」
 ぽんと肩を叩く『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)。
「『遠慮は不要。その拳存分に振るうといい』だと」
「優希は来てねえのか、残念だな。つうか存分に振るったら死ぬっての。げ、常識破りがいやがる!」
「ま、それはともかくよろしく頼むぜ戦友。あの小さい連中守ってやってくれ」
「胸が」
「言ったら死ぬぞそれ」
 猛と烈斗は拳を軽くぶつけ合い、剣士の群れの中へと同時に飛び込んで行った。

●斬鉄
 りりすは眼帯が無い方の目を大きく開けた。
 眼一杯に巨大な刀身が映り込み、りりすはかくんと身体を反らした。
 鼻の先を太郎太刀が豪速で通過。
 背中のバネを使って跳ね起き、ジャックナイフを高速で振り込んだ。
 志村の身体に深い十字創を刻む。
 剣士の死体と複製魔剣化ネジのキマイラとされる志村。彼は怪我などひとつも負っていないかのように躊躇なく踏み込むと、りりすの胸を思い切り踏みつけた。
 遠心力がかかったこともあって蹴倒される。
 大上段に振り上げられる太郎太刀。
 太刀が地面に叩きつけられた頃には既に転がっていたりりすだが、あまりに強い衝撃にそのままごろごろと転がった。
 普通に起き上がっている暇はない、駆け込んできた志村に対応して跳ね起きる。
「死んだくらいで走狗となるようなつまらん相手じゃない……みたいだな。魅せてみろよ、その一撃を」
 志村は大きく踏み込み、身体ごと派手に回転。起き上がったばかりのりりすは回避が遅れる。ナイフでガードを試みるが身体ごと吹っ飛ばされた。
 付近の大きな岩に背中から叩きつけられる。
 否、その岩をも破壊して地面をバウンドしながら転がった。意識が完全に吹き飛ぶ。フェイトを使って持ちこたえた。
 見上げれば志村が再び突撃してくる。
 咄嗟にナイフを翳すりりす。
「世界の行く末なんざ、英雄にでも任せとけ……僕らはそんな、大層なモンじゃないだろう?」
 なあ。
 そう呟いたリリスのナイフは、志村の眉間に深く突き刺さっていた。
 対して彼の太郎太刀は、りりすの肩から胸にかけて深々と斬り込まれて止まっている。文字通り崩れ落ちる志村。
 そしてりりすは、意識を失った。

 風を相手にしているようだ、と猛は思った。
 いくら殴りつけてもするするとかわす仲本落哀。
 猛の頭上をコンパクトに回転しながら飛び越えると、背後から短刀で斬りつけてくる。
 そんなやり取りがもう何度も続いていた。
「倒れ……るか!」
 じりりと踏みとどまる。
「俺の腕と脚が完全に止まるまで動き続けてやらあ!」
 振り向きざまに蹴りを繰り出す。その回転とほぼ同じ速度でぐるんと反対側に回り込み、再び背中を斬りつけてくる。
 同じところばかりを切られたせいか、猛の全身から急激に力が抜けていく。いや、血が抜け過ぎているからか。
「くそ、俺が負けるわけにゃいかねえんだよ。背負ってきたんだ、いろんなモン、いろんなヤツから飽きるくらい、山ほど」
 前方に転がるようにしてから反転。
 片膝立ちの猛に素早く短刀が投げつけられた。
 顔の前ギリギリの所で片手キャッチ。刃を握ってしまったせいで手からぶしゅんと鮮血が飛び散った。
 それを蹴りで押し込もうとしてくる仲本。その足を無理やり掴み取る。
「こいつで、終わりだあああああ!」
 足首を掴んだまま振り上げ、壱式迅雷発動。紫電と共に地面に何度も叩きつけた。
 やがて動かなくなる仲本。
 猛もまた、その場にがくんと膝をついた。

 りりすや猛が達人たちと一対一でやり合えているのは、大量の剣士達を雷音やモニカが纏めて相手しているからである。
 そもそもこの連中を逃がしてしまえば戦闘も楽になるし、彼らをどうしても倒さなくてはいけないわけではないが、ことここに至っては致し方ない。
 剣士達が逃げも避けもせず、どころか血相を変えて襲い掛かってくるのだ。
「來々氷雨、全てを凍らせろ!」
 大量の剣士相手に陰陽・氷雨を発動。
 次々と敵を凍結させていく。
 その攻撃を掻い潜って来る剣士も勿論居る。
 雷音の胸から腹にかけて鋭い一撃が走る。ばっくりと裂かれた肉から血が噴き出した。
「んぐっ……!」
「ああくそ、ちょっと退け!」
 烈斗が雷音を背後に庇ってそこから先に続く怒涛の連携攻撃を一手に引き受ける。広域回復の手段が無い分とにかく耐え凌ぐしかない。
 勿論うっかり倒れでもしたら雪崩れのように別の仲間たちへ敵が押し寄せ、それこそ雪崩さながらの全滅状態が待っているだろう。メンバーの半数程が死亡することは間違いない。
「ったく、何で俺がこんな役回りなんだよ!」
「麗しの少女達を庇う王子役も悪くは無かろう」
 背中にぺたんと傷癒術をかける雷音。
「何処に居るんだ麗しの少女。ボンキュボンのグラマラスになってから出直して――うううおっ!」
 烈斗の側頭部に対物ライフルの銃口が当てられ、反射的に屈んだ。雷音も屈んだ。
 直後、彼等を中心に大量の鉛弾がまき散らされ、剣士達がばたばたと倒れていく。
「バケモンか……」
「路六剣八はこれ以上のものでしたよ。高射砲なんて持ち出して」
 ライフルを涼しい顔で担ぎ上げ、反対側へとまき散らし始めるモニカ。
 達人たちはこの範囲から自然と離れ、達人の邪魔をしてはならんと門下生達が一斉にモニカたちに押し寄せた結果、こういうことになっているのだが。
「正直、あまり長く持つ気がしませんね」
 リロードしながら、モニカは小さく呟いた。

 はやく決着を付けなくちゃいけない。
 そんな焦りが壱也にはあった。
「わたしのパワーで、幻惑なんてぶちやぶってあげる!」
 豪快なメガクラッシュを叩き込むが、それは加藤の残像だった。
 頬と膝、同時に薄い刀傷が走る。
「っ……!」
 やられたか、と気づいた時にはもう遅い。
 壱也を中心に十五人近くの加藤国文が剣を構えて取り囲んでいたのだ。
 きっと幻影だ。どれか一つが本物で、いつか襲ってくる……などと思っていたら全員一斉に襲い掛かって来た。
 しかもそれらが放つ斬撃の全てが実態をもち、物理的に壱也の小柄な身体を切り裂いていくのだ。
「幻惑だか何だか知らないけど、そんなので……!」
 剣を思い切り振り回す。
 全ての幻影を叩き切ってしまえば良いだろう。と思ったら全ての幻影が霞のように消えた。
 はっとして顔を上げる。頭上から加藤が急降下してきた。防御が間に合わない。
 肩から膝にかけての長いラインをバッサリと切り裂かれた。
「ぁ……」
 意識が遠のく。
 視界が赤い。
 全てがブラックアウトするような感じがして、壱也は奥歯を強く噛んだ。
「わたしは」
 身体はボロボロになった。
 これ以上斬られたら死んでしまうかもしれない。
 けれど、心はどうだ。
「心が折れない限り。何度でも」
 殆どうわごとのように呟いて、壱也は剣をぶん回した。
 狙いなどつけていない。
 直感である。
 しかしそうやって振り込んだ剣は、加藤の首をばすんと切り落としていた。
 信じられないという顔で転がる生首。
 そして崩れ落ちる加藤の身体。
「……やった」
 壱也は大量の血を噴き散らしながら、その場に仰向けに倒れた。

「変なのに頼って戦乱の世なんて起こしたって、勝ち抜けるわけねーだろー、自力で起こせよー」
 岬独特のどろんとしたテンポで挑発しながら巨大なハルバートを振り回す。
「あー? よく聞こえんのう、最近耳が遠くて……え、淫乱の夜?」
 長介は涼しい顔をしてテンテンと後退した。
 間に割り込んだ高木切乃助が鋼のような巨体でハルバートをキャッチ。
 そう、手で受け止めたのである。
 手を覆う形のガントレットを嵌めた高木に、ダメージらしいダメージは無い。
「えっ……ええ!?」
 岬が本気で振り込んだ攻撃をノーダメージで受けられる人間などそうは居ない。と言うかいたら化物である。
 その化物が目の前にいた。
「岬、危ない退け!」
 宗一が岬を押しのけるようにして高木に斬り込む。
 長介が彼を『巻き込む』形で地球割弐式を繰り出してきたのだ。
 先刻まで直線状にいた岬は宗一に突き飛ばされ被弾を免れたが、その宗一は……。
「ぐあッ!」
 物理的な防御力はそれなりにあるというのに、まるで防御の間をすり抜けるようにして斬撃が入っていた。
「『裏土俵合わせ』を乗せて『地球割り』って……滅茶苦茶だな」
 血を吐き捨てる宗一。
 それに、鉄壁の高木が彼を庇っている。一方的だ。
 万事休すか……と思われたその時。
「ハローハロー、どつきコントいかがですー?」
 業界で『奴は射撃できない銃をなぜ持っているのか』と議論されるやたらゴテゴテとした銃が飛来。高木の頭部にめり込んだ。
 表情を変えて振り返る高木。
「『超戦術』。戦闘指揮の増幅強化版と見たね。それに同志の技を借りてまとめ上げる結束力……ラーニンガー」
 ぐるぐがあからさまにてれてれとした様子で高木に指招きをしていた。
 挑発に乗ったわけではないだろうに、ぐるぐへと突撃していく高木。ピンポイントの怒り効果が効いているのだ。
「ほい来た、ふぃーっしゅ!」
 高木にノックダウンコンボを叩き込む。
 凄まじい連撃だったが、そのどれもが大したダメージになっていない。
 どころか逆に額を掴み上げられ、地面に思い切り叩きつけられた。
 一度ではない。二度、三度、四度、五度、六度、最後には岩場に向けて思い切り投げつけられた。
 はぎゅんと言って潰れるぐるぐ。
 そのままずり落ちると見せかけて、にんまりと笑った。
「二十……いや、三十回は転がしてやる」
 一瞬だけだが天道烈斗の真似をする。
 彼女が常識破りだと言われる一番の所以は、通常本人しか使いこなせないような技を(劣化してはいるものの)ここぞという場面で使いこなして見せるからである。もしくは、そうなって欲しいと言う願望か。
「豪快――」
 ぐるぐの額に高木の拳が叩き込まれる。
 踏みとどまるぐるる。
「絶頂拳ッ!」
 ぐるぐの拳が高木の腹に命中。
 そして全ての装甲を無視し魂そのものをぶん殴った。
 ぐてん、とその場に倒れる高木。
 そしてぐるぐもまた、キリキリ回ってぶっ倒れた。
 ――同刻。
 地球割壱式と岬のギガクラッシュが正面から激突した。
 衝撃波が形となり両者の背後にまき散らされる。
 これ以上言葉は要らない。挑発も無意味なら、搦め手も意味が無い。
 そう察した岬と宗一は全力でぶつかることに決めた。
「うらあああっ!」
 宗一のデッドオアアライブが炸裂。
 長介は『不動剣山』で防御。振り下ろされる大剣の根元に鞘を押し当てて止めると、反対側から繰り出された岬のハルバートを肩の付け根と柄をそれぞれ突いて止める。
 からの、地球割り零式。
 岬と宗一はモロに吹き飛ばされる。
 だがここで負けるわけには行かない。
 彼だけは止めなくてはならない。
「速力は白田のジジイ程じゃねえんだ」
「地球割りだって、大したこと無い」
 呼吸を整えるのがやっとだが、とりあえず言いたいことは要っておく。
「真似してみろよこの居合切りをさぁー!」
 ハルバートを全力で地面に叩きつける。巻き起こった嵐が長介を滅茶苦茶に切り裂いた。
 そのまま突っ込んでくる長介。
「後の事なんか考えんなよ。行くぜ長介のジジイ、力で押し切る!」
 大剣を全力で叩き込む宗一。
 既に翳されていた刀をまるごと叩き折り、長介の上半身をぶった切った。
 ずるりと滑り落ちる長介の身体。
「……見事」
 そうとだけ言って、猪狩長介は息絶えた。

 宗一と岬はボロボロになった身体を引き摺って歩く。
 モニカと雷音が、倒れた仲間たちを集めて回復に励んでいた。
 烈斗は再起不能なレベルにまで陥り、この先の戦闘は無理だろうと言われている。
 そんな彼らが残した功績は、『斬鉄剣客組全滅』。
 ただの一人も逃すことなく、完全に討ち取って見せた。
 彼等はそれぞれ頷き合い、次なる戦場へと歩を進め始める。
 最後の戦地、杵築神社へ。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
全滅ボーナスと言うことで、『大成功』とします。

このシナリオの結果により、マスタープラトン争奪戦に参戦する斬鉄剣客組はゼロ人になりました。
途中で潰し合いをする筈の裏野部兵隊がまるまま現地へ流れ込むことになりますが、個体戦力が高い斬鉄チームが居ない方がずっと良かった……のかもしれません。その分裏野部は他組織に比べて一番乗りしているのでどちらとも言えません。

――マスタープラトン争奪戦につづく。