● 「イエス・アリス、ノー・ロリータ。パニッシュメント・イン・ロリババア!」 お察しの通り、LKK団である。 非常に多くの派閥を抱え、一枚岩ではないため壊滅が難しいフィクサード集団だ。 が、たまにいいこともする。 幼女を守るためならば、その身を危険に晒すこともいとわない。 いつでも命を投げ出す覚悟がある。 今日も、ご近所の公園で、彼らは異世界から飛来した脅威から幼女を守るべく、必死に戦っているのだ。 「いかん。このままでは守り切れん」 「仕方ない。決め技だ。ふ、俺にこの技を使わせようとはな」 「幼女たちはみんな逃げたな。健やかに育て。そして、新たな幼女をもっとたくさん……」 「正義降臨、貴様らの腐った性根を打ち据える!」 ● 「半径20メートル、結構広い」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、モニターに円を表示した。 「住宅街の公園にアザーバイド出現。幼女を見守っていたLKK団が初期対応。公園内で遊んでいた幼女とそのお友達の男の子の保護、避難、アザーバイドの足止めに邁進」 おお。珍しい。役に立っている。 「ただ、実力差と人数不足で、次第に押されてくる。何しろ一人だし。こいつ、自分のテンションが落ちてくると、『精神注入』という技を使おうとする」 イヴさん、その厨二テイスト満載のネーミングのはなんですか? 「ぶっちゃけ、普通のアッパーユアハート。使うとテンションが上がるみたい。注目集めるし。でも、使えば使うほどジリ貧になる。神秘系じゃないし」 テンションあげるためだけ? なにそれ、ひどい。 改めて、赤く点滅する半径20メートル円。多少の誤差はあるけど、ご近所のお宅が何軒か確実に巻き込まれる。 「誰もいないならともかく、住宅地の真ん中でそんなもの使用される訳にいかない。こいつの技名叫ぶの聞きつけたご近所の皆さんが何かの撮影と勘違いして、見物状態。更に悪いことに、こいつ、ギャラリーがいればいるほど燃えるタイプ」 神秘は秘匿すべきものと習いませんでしたか、そうですか。 「アッパーユアハートは、ダメージゼロだけど、怒りがつく」 ご近所さんが怒りに任せて、こいつを殴ろうと現場に大挙して乱入してきたらまずいですな。 「そんな事態になる前に、リベリスタ投入。介入する時間的余地はある。幸い、今からいけば十分間に合う」」 それがいいと思います。 「チーム編成によって作戦が代わると思うけど、基本的にLKK団を鼓舞する方向で。『英雄派』に分類される、褒めれば伸びる子だから。連中やる気と戦闘力が正比例する」 幼女を背中の後ろにかばってみたいお年頃なのね。 「ただし、くじけると、とたんに弱くなり、『精神注入』に頼ろうとする」 おだてて、おだてて、「てめえの――」とか言い出す前に倒せばいいんだね。 「で、めんどくさいことに、自分がいいカッコしたい。幼女の目があるし。こっちが一方的にやっつけると、へたれる」 なんか、根本的に性根を叩き直さないといかんのではないか? 「という訳で、みんなの立ち位置は、特撮ヒーローをチラッと助けて、風のように去っていく美味しいとこ取りキャラ。もしくは、ヒーローを励ますエンジェル。もしくは、『お前らがやらなきゃ、俺が倒すぜ!』的ライバルキャラ。など、それぞれ主役をかっさらわない程度に派生してほしい」 「演技力」の三文字が、モニターにドンと相撲文字で表示される。 「改めて言うけど、今回の依頼は、アザーバイド掃討。こいつの扱いは不問」 あ。と、イヴは、思い出したように言った。 「アザーバイドは、でっかい熊のぬいぐるみ。爪と牙が凶悪だから」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月10日(日)23:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ごほ~おっ!! 熊の縫いぐるみ、鉤爪が生えた腕を高く上げ、片足を上げる。 俗に言う、荒ぶる鷹のポーズ。 爪の先は赤く汚れている。 「いいから、ここは俺に任せて、逃げるんだ!」 振り返り、振り返りしながら走っていく幼女(とその友達の男子) 「まかせたぜ!」 気丈に頷く男子と目を交し合い、アーク識別名「モフリーベアマーク2」と対峙するLKK団英雄派、まだ二つ名ないの、早川シンジは前に向き直った。 少年の顔に縦に傷が刻まれていた。 (はははっ! 俺もここまでか。幼女を護って散るなら、LKK団英雄派としては本望。だけどもさ) シンジは、口元の血を手の甲でぬぐいながらふっと笑った。 (この世最後のお願いに、――幼女戦士、落ちてこないかなぁ。ははは。まずは必殺技繰り出してからだ) 「――せ――」 『お兄ちゃん☆』 弾む発音は、まごうことなく心技体揃った幼女の声。 目を上げれば、赤茶の髪のもち肌ロリ。 お迎えですか? がんばった俺に、リアルエンジェルヘブンから降臨? 「何時もニコニコ貴方の平和にアークのリベリスタですっ♪」 オレンジの髪のゴスロリ・ロリロリ! ひゃっほう。 これが噂に聞く、「アークからの贈り物・私刑前のご馳走」!? 「無様だな、早川シンジ。こいつは俺が倒す。お前は指を咥えて黙って見てろ」 ふっと笑いながら、黒髪ロリ、緑髪ロリ、白髪ロリを引き連れ現れた、ちょっと陰のあるイケメン高校生だと、ゆるせん。 金髪のクール系ロリが、上目遣いで言った。 「お兄ちゃん、今回はお友達も連れてきたんです。私達と一緒にクマさんと戦ってくれますか?」 「よろこんでぇ!!」 食いつき気味のシンジの返事に、金髪ロリは、内心若干退きながらも、にっこり頷いた。 「任務開始。さぁ、共に戦場を奏でましょう」 ● 話はちょっぴりさかのぼる。 アーク送迎車内、リアルロリたちはおでこをつき合わせるようにして打ち合わせをしていた。 「うゅ、つまり、わたしのいうことを何でも聞いてくれるお兄さんのお手伝いをするってこと?」 『歪な純白』紫野崎・結名(BNE002720)ちゃん、正直は美徳だけど、もう少しオブラートで包むことを覚えようね。 うん、でも大体合ってる。 「『LKK団』英雄派……私にとっては何がどう違うのかちょっと分からないのですが、幼い女の子や男の子を助けようとした事は素直に良いことかと」 今だ『本物』を見たことのない『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は小首を傾げる。 確かに英雄派は比較的ましな部類ではある。 「ずいぶんと目立ちたがり屋の人がいたものですね」 『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)、一刀両断。 車の窓から、吹っ飛ばされるシンジを見た『うさぎ型ちっちゃな狙撃主』舞 冥華(BNE000456)は、一言言った。 「ん、へんな人がいる。へんなこと言ってるし」 おかしいな。 アーリースナイプで撃たれた訳でもないのに、胸に穴が開いたような感じがする。 「まぁ、ヘクスには関係ありません。前に出張ってくれる人が居るなら仕事としてはすごく楽になりますしね……」 ガード職人とはヘクスのことですよ。 「でも、今回のお仕事はこのへんな人……しんじーの援護? かっこよくもふべあーをたおせるよーにすること」 ザッツライト。エグザクトリィ。完璧です。 「精神注入でご近所さんの怒りを買うのはダメダメです。同じレイザータクトとして情けない気分になると言うか…。情けない姿を晒させない様に頑張って鼓舞するしかありませんね」 ミリィちゃん、ちょっと頭痛い。 「ちょっとめんどい。お仕事えらべないりべりすたの悲運。仕方ないのでそれなりにがんばる」 その自己犠牲精神にサムズアップだ、冥華ちゃん! LKK団各派閥それぞれで喜んでるよ、多分! 「チッ、金にもならねェってのに……アークの仕事だから仕方ありやせンけどね。 ま、これも芸を磨く機会って事で。――んんっ、えへん!」 可憐な声を出す為の発声練習に余念がない『やったれ!!』蛇穴 タヱ(BNE003574)ちゃん、お仕事にはちゃんとお手当て出るよ。 がんばれ、お金は君を裏切らない。君が使い方を間違えない限り。 「戦う時は決め台詞をいうんだよ?」 『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)は、割とご機嫌。 「日本のアニメーションは面白いよね。ノリノリ ワイワイ イェイイェイで盛り上げちゃうよー」 日曜の朝、何をしているかで割りと別れる女の子事情。 「え、あの、よくわからないのですが。合わせます。その、すごく恥ずかしいのですが……」 ミリィはテキトーなシャルロッテの動きを覚えようと生真面目に凝視している。 「皆でポーズとか踊ったりするんだよ。あ、踊るのは終わってから? そうしたら戦う幼女戦士? きっとテンションアップするんだよ!」 随喜の涙流すね。 (まぁ、普段着でも十分目立ちますしこれでいいんじゃないかなと思うんですが……衣装とか……) 巨大な盾に阻まれあまり戦闘中に印象はないかもしれないが、ヘクスは常日頃よりゴスロリを愛用している。 (なんか名乗りみたいなことするなら、なんか硬いとか、緑とか、それっぽいこと言っておけばオッケーでしょう。たぶん) 「いしょーとかおどりとかきめぜりふーとか……よくわかんないけど、とりあえず合わせとけばおっけ?」 冥華も日曜朝はテレビの前にいないタイプ。 (ククク、これはチャンス……! 公園のどっかにデジカメ置いといて、録画っす! あとで高く売れそうっすよー) タヱ、一部の需要を見越してほくそ笑む。 だが、いいのか。君も踊るんだぞ。 そんな幼女達を横目で見つつ、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は、戦闘前の一服を済ませる。 『――え? 今回このロリコンは討伐対象じゃないの?」 ロリコンコロスシカナイネー。と呟いたのをいやいやと止められて、きょとんとした顔をする。 「そう、残念ね」 携帯用灰皿に灰を落とす。 「まあ、小さな女の子が可愛らしいから好きというのは分からなくも無いわ。というか可愛らしい小さな子は、あたしも大好きよ」 というか、杏が精魂傾けて溺愛しているのは小学男子である。 一方、思想というか嗜好に全く共感出来ないのが、『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527) である。 ジャパニメーションの洗礼を受けるか受けないかで人生の岐路は思いの他大きく分かれる。 「――たった一人で子供達を助けようとするその心意気は買おう」 だから。 「俺はおまえの強敵になろう!」 「強敵」と書いて「とも」と読む。 ツンデレライバルキャラ、発進! ● 「きゃー、やっぱりこわいよー」 タヱがシンジの背中にくるりと回った。 戦闘経験がほとんどないシンジの目には、無謀に突進していって、モフリーベアマーク2にやられて急いで自分の元に帰ってくる幼女達。 実際は、さりげなくシンジの前に立ち、かばっていたりするのだ。 「天真爛漫でお兄ちゃんの事が大好きだけど、ちょっとそう言うのも恥ずかしいお年頃☆ でもでも、いざって時にはきっとお兄ちゃんが守ってくれるって信じてう!」 タヱが打ち出した芸風は、シンジのハートをジャストミートだった。 (今時そんな幼女はテレビの中にも居ねェだろ! と言う、ド直球なぶりぶり幼女っす。捻りが無い? いやいや、王道と言って欲しいっすねェ) シンジから見えない位置で、タヱ、にやぁり。 いつの間にやら、モフリーベアマーク2のお目目はビヨンビヨンと取れかけているし、馬鹿正直に正面にいるシンジには分からない背中もざっくり破られている。 結名やミリィがこっそり空跳ぶかみそり刃を飛ばしていたのだ。 (けっこー遮蔽物おーいけど、冥華の九九式狙撃銃ならなんとかなる?) 冥華はスコープをのぞいている。 幼女の応援を一身に受けてつっこんでいくシンジの攻撃モーションを灰色の瞳が見てる。 それにあわせて、シンジが作った傷の中にもぐりこむように、冥華の魔団がモフリーベアマーク2に叩き込まれる。 狙いを定めて引き金を引くまで、刹那もかからない。 気づかれてはいけないのだ、他ならぬシンジに。 もんどりうつモフリーベアマーク2の様子に戸惑うシンジに、冥華の平板な声援。 「おにーちゃんすごーい、かっこいー」 ● 「よし、いくよ!」 「誰がどの色?」 「え? なんて言ったらいいんですか?」 幼女達の認識力の相違や好みのずれ、音楽性の違いなんかも合って、決めポーズが決まらない。 これが特撮マニアだったら怒りの的だろうが、英雄派だろうがなんだろうが所詮LKK団だ。 ああでもない、こうでもないと、シンジの目を気にしつつ打ち合わせをする幼女達を温かい目で見守るシンジ。 「ところで、お兄さん? お兄さんはあーいうのはお好きかしら。あーいう、魔法少女を模した戦闘幼女達は」 あ、引率のおねーさん。 違う。杏だ。 残念ながらアークが誇るナイスおっぱいも、LKK団英雄派の純情少年の前ではただの胸部の脂肪に過ぎない。というか、それなんなの、飛んでいきそうで怖い。 「戦闘幼女、われわれの業界ではごほうびでっす!」 その意気やよし。 「仕方ないから今回は共闘してあげるわ。でもね、アンタの為じゃないの。アタシの為にアタシがあのアザーバイドを倒すんだからね」 アークが誇るオネエ様系ツンデレも、LKK団英雄派の自称硬派少年の前では馬の耳に念仏。 おまえ、人生の半分を損してるぞ、シンジーっ! 「じゃあ、どっちが止めを刺すか競争する? 良いけど負けないわよ?」 勝ったら、幼女達のメアド教えてくださ……いや、見返りも止めるのいくない。 きっと買ったら、フラグが立って、「これ、連絡先……」と、丸っこい字でたどたどしいブロック体でつづられたメアドのメモがわんさかわんさかなのさ。 それが、ヒーロー! 英雄! 「ほごわ~!!」 モフリーベアマーク2は、日曜の朝テレビを見る習慣がないので、美少女幼女戦士とかヒーローに何の思い入れもない。 しゃぎょげーっと、ダブルラリアット的に走りこんでからの急速旋回クロースピン。 幼女ちゃんたちがアブないっ! しかし、みんな可愛すぎて、どの幼女ちゃんをかばっていいのかわからない! ああ、何で俺は分身出来ないんだ! 今この瞬間、俺はソードミラージュになりたい! ……いや、ソードミラージュでも分身してかばうとか出来ないから。 そんな中、シンジに無言で助けを求めるオレンジの髪の幼女――シャルロッテがいた。 潤んだ瞳、物か足りたげな唇。 俺に助けを求めている! 体から猛烈に黒い何かが噴出しているが、漆黒開放であって、桃子さん的ナニカデハアリマセン。 (防御力が全く無いからLKKの人に庇ってもらうんだよー。シャルロッテか弱いの) すでに、かばわれるの、確定事項! 献身を信じて疑わない、なんかすげー幼女って感じだ! 「肝心の敵が動物みたいで知能がないのが残念ですが……ヘクス的に決まりなので言わせていただきます。砕いて見せて下さい。ねじ伏せて見せて下さい。この絶対鉄壁を」 緑の幼女たん――ヘクスが、あんずの前に立ちはだかる。 モフリーベアマーク2-の鋭利な爪が奥歯が鳴動するけたたましい金属音をきしらせながら、ヘクスの巨大な鉄盾の上を通り過ぎていく。 シンジの背中をえぐっていく。 それ以外は、血。 清らかな幼女の血が虚空に飛び散る。 「やめろおぉぉぉぉっ! やるなら俺をやれよ。俺だけやればいいだろぉ!?」 シャルロッテをかばい、自ら傷ついたシンジの目に涙がにじんだ。 やだなあ、モフリーベアマーク2にとってはみんな美味しいマンマだよ。分け隔てなく、おいしくあむあむだよ。 「おまえの力はそんなものか」 禅次郎は、銃剣を構える。 (早川に華を持たせたいところではあるが、微妙に舐めてかかれる相手ではないので全力で攻撃する) モフリーベアマーク2に向けて突進する禅次郎の脇を、四種の魔力で編み上げられた光の奔流が通り過ぎる。 ぬいぐるみのファンシーなキャラメルブラウンが毒で腐敗し紫味を帯び、中で逆流しているのか縫い目から薄汚れた綿が爆ぜ出始めた。 真っ赤に染まった銃剣が、モフリーベアマーク2に最期のお報せを携えて、その腹を突き刺す。 「シンジおにいちゃん、がんばって!」 「禅次郎おにいちゃんは信じているの。きっとシンジおにいちゃんならあの熊を倒すことが出来るって!」 「後もう少しです。お兄ちゃん、頑張って!」 「あたしたちなら、大丈夫!」 結名は、翼を広げ、福音召喚詠唱を行う。 初めて見る者は、実はちょっと感動する。 シンジも例外ではない。 響き渡る福音、フレアがかかった光の下、詠唱でトランス状態の結名。 よく出来た宗教画のようだ。 とても、さっき冷凍光線発しそうな目で「思ったより使えないです」と呟いていたお口には見えません、ばら色の唇。 中から無限に飛び出してくる綿に窒息させられそうになりながらも、禅次郎はシンジに向かって叫んだ。 「立てえ、シンジ! おまえは、お前は、俺が見込んだ男だーっ!!」 初対面ですが、いつどこで!? ――などという無粋なことを聞いてはいけないのが、男道である。 「みんな! おれ、おれやるよ! ひっさーつううう!!」 まっすぐ行ってぶっ飛ばす!――と見せかけて、あえて弁慶の泣き所にローキーック!! がっくりと膝を突くモフリーベアマーク2。 「きまったぜ!」 かっこいいポーズとともに振り返るシンジ。 うっかり表情がイヴ並みに消える戦闘幼女。 うっかりタバコの吸い口を噛み切る杏。 モフリーベアに巻き込まれて転倒してしまった禅次郎。 なんとなく、微妙な空気。 (華がねえ。華がねえよ) 誰も一言も言っていないが、公園の「………」がシンジを責める。 いや、あの、レイザータクトはいかに敵の裏を書くかって言うのが大事な戦術で、「これはいくらなんでもやらないだろ」っていうのを敢えてするところがポイントでそんな「空気読め」って、そんな――。 空気の重さに、リベリスタたちは自分達の使命に気がついた。 「――やればできるじゃないか。それでこそ俺が認めた男だ」 「やったね、おにいちゃん、あとはまかせて!!」 「結名ちゃん、お兄ちゃんの怪我を治してあげて!」 「大丈夫、お兄ちゃんは私が守ります!」 「いくよー!! お兄ちゃんがとどめをさしてくれたから、後はあたしたちでも大丈夫だよー!!」 矢継ぎ早にシンジを褒め称え、転倒しただけのモフリーベアマーク2に完全に止めを刺すまで殴るのをやめない。 ぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこ……。 あの、とどめ、俺が刺したんだよね? なのに、何で、そんな執拗に殴ってるのかな、のかな? ふと、そんな疑問が早川シンジの脳裏をよぎった。 が、「おにいちゃんかっこいー! サイコー!」の幼女合唱がそんなささやかな現実認識への取っ掛かりをどこかに吹っ飛ばしてしまった。 ● 「撮影終了です。ご協力、どうもありがとうございました!」 禅次郎はそう言ってごまかした。 「あんた、怪我はいいのかよ」 シンジは、技の反動で傷ついた禅次郎の手を指差した。 「お前一人に良い格好はさせない。それにおまえにしなれては困る」 禅次郎は、ふっと笑った。イケメンだから許される。 「お前にはロリババアの魅力を語ってやらなきゃいけないからな」 「なんだとぉ!?」 激高するシンジ。 分かり合えるかもと思っていたのに。それは、それだけは、ロリババアの存在だけは許せない。 何故って、それがLKK団だから! 「次に逢う時は敵同士。俺に逢う迄に死ぬなよ? 特に今の時期は夏風邪と食当たりに注意しろよ!」 さらばだ! と、やたらと親身かつリアルな心配りをはきながら禅次郎は去っていった。 気がつけば、辺りは暮れなずんでいる。 「お兄ちゃん、少しかがんでもらって、いいですか?」 それでも、ミリィの金髪は陽光を反射してキラキラとまぶしい。 「皆を助けてくれて、ありがとう。これからも皆を助けてあげてくださいね」 ミリィの細い指が、シンジの頭をゆっくりとなでた。 その感触だけで、五百年戦えそうだった。 われわれの業界でこそのご褒美です。 ● 「撮れてる、撮れてる。これは、チャンスっすよ」 公園の陰。 デジカメの画像を確認してほくそ笑んだタヱの肩を、白い指が叩いた。 結名だ。一緒にヘクスも立っている。 「撮影料はいただきます。しょうぞー権は、無料ではありません」 真顔だ。マジだ。 「え? しょーぞーけん?」 肖像権。 ( くっ、しまった……! こんな所に本当の敵が!? ) 結名、動揺を隠せないタヱに手を出す。 「おかねは、大事だものね♪」 ヘクスも頷く。 金の為に戦っているのだ。その辺、厳しい。 どうする? どうする、タヱ!? とりあえず、金銭交渉は三高平に帰ってからにしよう! 青少年よ、男を磨け。 自分の夢を貫いて、力の限りその生き様を見せ付けろ。 その磨きっぷりによって、金に厳しい幼女達がきっと君らを助けてくれたり、くれなかったりするだろう。 君たちの「お兄ちゃん」道は、まだ始まったばかりなのだ! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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