● 「大きすぎる」 フォーチュナー詰め所。 今しがたの幻視を分析した『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、ふむと小首を傾げた。 同時に解決しなくてはならない要素が多すぎる。 誰かに手伝ってもらわねば。 「空にそびえる鉄の城での攻城戦に興味がある人」 そんなイヴのこの指とまれに、数多のフォーチュナーのうち、瞳をキラキラ輝かせて手を上げたのは、二人だった。 ● 「試験的に組み込まれた制御AIが、女性型。なので、便宜上、『彼女』 今作戦の識別名『ばけたん』」 ネーミングは私じゃないと呟くイヴが画面に映し出したものは、なに、この化け物。としか言えない機械だった。 ぱっと見、「ぼくがかんがえたさいきょうのこうじょう」 キャタピラの上に船が載り、その上に船の倍の長さのベルトコンベアーが尻尾のように伸び、さらに数本の強靭なアームが数本。互いを何十本ものワイヤーで支えあっている。 そのアームの先には巨大な車輪がつき、その中にリベリスタの二、三人は入れそうなバケツが観覧車のようについている。 つついたらこけそうな頭でっかちぶりだが。 「バケットホイールエクスカベーター。露天採掘の用いられる大型建設機械。人類史上最大の自走機械と認定されてるものもある」 略して、BWE。 「もっとも、これは国内仕様。かなり小さい」 あっはっは。 だよね。こんなでっかいの日本的じゃないよね。 「全長150メートル、全高80メートルくらい」 遠近感、狂ってる。 それ、地面から射撃しても、上まで届かないってことじゃないですか、やだー。 「現在、E・アンデッドとE・フォースとE・エレメントの巣窟」 なぜ。 「偶然にも地面に埋まっていたアーティファクトを掘り起こした。中に封じ込められていたエリューションがばけたんの制御AIを電脳的な意味で拉致監禁。増殖性革醒現象でエリューションが大量発生。フェイズ進行同時発生。さらに、現在も時速10キロで移動中。あまりの事態にちょっと暴れだしたい気分」 そういうイヴは無表情。 「今回は、一度に対応すべき対象が多い上、色々デリケートな大人の事情が絡んでいる。手間を掛けることにした。三チームで対応する」 モニターに、BWE――ばけたんの模式図が表示される。 先端部の観覧車みたいな辺りから本体にあたる部分が青く表示される。 「ここは、メルクリィのチーム」 さらに最上層、アーム部分が黄色く表示される。 「ここは、和泉のチーム」 さらに本体から後ろに伸びる太い尾のような部分が、真っ赤に点滅する。 「皆の担当は、このベルトコンベアー。任務は、今回の元凶となっているアーティファクトの封印」 ポインタが、本体後部に当てられる。 「アーティファクト・識別名「大きな葛篭」 蓋を外すと、雑魚エリューションをだらだらだらだら無尽蔵に吐き出す。雑魚だからって安心しないで。放置すれば、増える、強くなる。しゃれにならない」 実際、アーム部分では、掘り起こした鉱石のエリューション化が確認され、フェイズが進んだエレメントが報告されている。 バケット部分では、しゃれにならない数が跳梁跋扈していると言うことだ。 イヴは、無表情だ。 「さらにめんどくさいことに、この「大きな葛篭」、壊れると近くの「一番大きなもの」にとり憑く。壊れるに任せると、ばけたんが次の「大きな葛篭」になる可能性、大」 それ、なんてホーンテッド。 「由々しき事態」 はい。 「今、アーティファクトはベルトコンベアーの上を、エリューションを無尽蔵にぶちまけながら進行中」 進行方向から逆の方向に飛ばされたりもしているようだ。 「構成要素は、籠の部分と蓋の部分。蓋をすれば、もうエリューションは出てこない」 つまり、今、その二つは……。 「ばらばら。でも、不幸中の幸い。蓋は先遣隊が回収してきた」 つまり、籠に専念していいんですね。 「速やかに発見して。皆がどうにかしないことには他チームが磨耗する」 いかに早く回収するかが鍵になると言うことだ。 「このベルトコンベアー、頭上のバケットホイールが掘り出した土を後方に捨てるためのもの。後ろへ後ろへ進行している。このまま行くと、大量の土砂と一緒に、地面にぽいちょってことになる」 イヴは、無表情だ。 「そうなった場合、事態の収拾が非常に困難になる。幸い、ベルトコンベアーの進みは非常に遅い。エリューションを吐き出し続けているので目印には事欠かない」 ああ、それなら大丈夫そう。 「それから、コンベアーの幅は20メートル。長さは120メートル。そんなに長くないから安心して……」 リベリスタなら大丈夫だね。 「一緒に大量の土砂や鉱石がのってるから。前とかよく見えない障害物競走。一つの障害物は二メートル四方。高さも二メートルくらい」 いや、何のこれしき。 「管制室はエリューションに占拠されている。速度調整がでたらめにいじられて、いきなり最高速とか急減速という目に遭うかもしれない。墜ちたら、落下ダメージに現在時速10キロで動いているキャタピラに轢かれる……かもしれない」 ははは、想定内さ。 「さらにエリューション垂れ流しで、それが襲ってくるから走ることに専念できない」 戦いながらなんて、当たり前のことだよ。 「それから、葛篭の大きさは一メートル四方くらい。多分土砂に埋まってる。コンベアーの上は砂や土や石でごろごろ。足場としては最悪」 そういう訳で。と、イヴはテーブルの上に苦労しながら大きなスコップを載せた。 「提供は、三高平市商工会議所」 なし崩しに受け取ったリベリスタに、さらにイヴは言う。 「他の二つの部隊も、手一杯。連携はまず無理。自力でがんばって。それと『BWE』は日本で非常に貴重なもの。AI制御のばけたんは色々大人の事情があるから、できるだけ傷つけないで」 数秒黙り込んで、こう付け加えた。 「少なくとも、壊すとメルクリィが泣く」 最後は情に訴えるとこ、女子高生マジエンジェル。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月06日(水)00:19 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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