●実験 森をモチーフにした自然溢れる町はずれの公園。森林浴が楽しめるナチュラルスポットとして有名なこの場所に、神秘的な雰囲気を持った双子と一人の男がやって来ていた。 時刻は早朝。町から遠いこともあって、この公園にはまだ誰も来ていない。 「ねぇねぇ、京介ちゃん思うんだけどさー。あいつらにちょっかいかけるのってそんなにおもしろいー?」 「ええ、面白いわよ。貴重な部下に、貴重なアーティファクトを使い潰すくらいには」 男と双子の片割れ――ナツキは京介という名の男と会話をしている。ナツキは上品な笑みを浮かべて、くるりと日傘を回していた。その身を包んでいる衣装がゴスロりということも併せて、目立つことは確かだ。 対して、この京介という男は黄泉ヶ辻の首領だ。今日は偶然時間があったので、同じ組織で動いている双子の様子を見に来ているのだ。 「あの人たちの戦いを見るの、嫌いじゃないわ。――それに、姉様は彼らで実験をしているの」 「実験? なにそれ超面白そうじゃん。どんなひどいことすんの? ねぇ、ねぇ」 今度は双子のもう片方が地面を這っていた小さな虫を摘まみながら言う。その顔には冷笑があり、反応をした男の狂気じみた笑顔。 「そうね。簡単な実験だわ。……彼らの力の源がどこにあるのかを調べる実験。物足りないかしら?」 手の甲で口を隠しながら、あくまでも上品に笑うナツキ。くすくすというその笑い声は、公園に点在する森林に響いて行く。 「どうして彼らは戦うのか、どうして組織のために戦えるのか。彼らの“正義”と“理由”は何なのか――少しずつ、データは揃ってきているわね」 「へぇー……なかなか面白いことしてるんだねぇー」 ニヤニヤとした笑いを浮かべながらも、京介という男……感情を表に出していない。底の知れなさがあった。 「さて、今日の実験を行いましょう。フユミ、材料は用意してあるわね」 「はい、姉様。アーティファクトの準備は済んでいます」 フユミはその手の中にある盾の形をしたアーティファクトの中に、先ほど拾った虫を入れる。すると、すぐに反応が起こり、中の虫はアーティファクトの力を纏って巨大になっていく。 しかし、巨大になるばかりで神秘的な力は感じられない代物であった。 「……あらま。今回はちょっと失敗作と言える作品ね」 「あー。京介ちゃんは嫌いじゃないんだけどなー、こういうデカーイの。でもよわっちいーからやっぱ嫌ーい」 京介の手には果物ナイフがあり、既に巨体の一部が切り裂かれていた。その一撃で力を見極めた京介は、興ざめとばかりに肩を落とす。 「制御はできないみたい……。さっさと離れてしまいましょうか、姉様」 「そうしましょうか。まあ、暴れるだけの生物とはいえ……これはこれでデータが取れるわね。どうせ彼らは来るだろうしね」 「がんばって暴れて、人をいっぱい殺して来いよー」 周りにある木々の背を超えるほどに成長していく巨大な虫をバックに、まるで散歩をするように三人の男女は去っていく。 数時間後、周りの木々を薙ぎ倒した巨大な虫は人を餌にして暴れまわった。 三人にとっては力のない巨体であっても、力のないものにとっては脅威に変わりない。 ●甲燐を纏うワーム ブリーフィングルームにリベリスタたちを集めた『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)は開口一番にこう言った。 「巨大生物が発生するわ」 まるでB級映画とか地球を防衛するゲームみたいね、と自分で突っ込みを入れつつ乃亜はモニターに向けてチャンネルのボタンを押す。すると、そこには森の中ですくすくと育つ巨大なイモ虫の姿があった。甲羅のような燐があり、とても堅そうだ。 「ワームと名付けられたこの生き物だけど、生き物を巨大に変えるアーティファクトによって発生したものね。今回はこのワームとアーティファクトの回収が任務ね」 続いて、盾の形をしたアーティファクトの姿がモニターに映される。なるほど、ワームはこの盾を甲燐にして纏っているようだ。 「このワーム……巨体に見合ったパワーとタフネスを持っているわ。パワーとタフネスだけみればかなりのものよ 見た目通りというわけだ。パワーだけならフェーズ3のエリューションにも匹敵すると言うのだが、乃亜の顔は明るい。 「でも、鈍重であらゆる状況変化に弱いみたい。工夫して戦えばすぐにハマってくれそうね」 ということらしく、戦いやすい相手のようだ。パワータイプでかませキャラの典型みたいなやつである。 「場所は森をイメージした自然公園よ。時間が余ったら森林浴や宴会をしてもいいんじゃないかしら? 恋人たちの憩いの場みたいだしね」 あげくここまで言われるワーム。少し可哀そうになるリベリスタだった。 とはいえ、人を殺す未来を見せているそれを止めないわけにはいかない。背後に何者がいようとも、それを打ち砕くのがリベリスタだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年06月01日(金)23:50 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●それはまさしく災厄であった 森の木々をなぎ倒すパワー。あらゆる攻撃を耐えきるタフネス。この二つが揃っていて弱いと言えるものは言えるだろうか。否、いない。 それゆえに、この甲鱗を纏ったこのワームは世界のパワーバランスを崩し甲鱗ゲーと呼ばせるほどの力を――。 「でも甲鱗ゲーをはびこらすわけには行かないよー。退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! バニラに(攻撃とブロック以外の)能力はないのだー」 持っているはずなのだが、今は『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)と力比べをして互角という有様だ。おかしいな。 「河期の災厄の象徴! まさに氷河期の災厄の象徴のワーム様じゃないかー! 緑なのに飛んでる鳥なんかよりファッティの甲鱗様だよねー」 巨大なパワーをハルバードのアンタレスで受け止めながらも、愉快そうに笑う岬。この戦いを楽しみ、ジョークも忘れないという特攻野郎の見本みたいな女の子である。 「四肢切断にすら耐えるワーム様に胸を借りに行くとすっかー、アンタレス!」 そう言いながら邪悪な形状のハルバードをワームの歯に食い込ませ、力で一気に押し上げる形でメガクラッシュを放つと、ワームは大きく仰け反り、地面に倒されてしまう。 馬鹿な、あれほどのタフネスを持つワームが倒されるなんて! 「今回の相手は、大きいとはいえ組みし易いようですね。楽な仕事で、儲けもそこそこ良い事です」 そんな風に倒れるワームを柔らかい糸目でにこにこと見ている山田 茅根(BNE002977)は後ろでこっそりトラップを仕掛けていた。いざとなれば使ってワームの動きを止めるつもりなのだが、どうも優勢なようなので見物に回っているという。 「無茶はいけないと思いますが。……今は後ろで見守らせて頂きますね」 この言葉通り、温かい目線はエネミースキャンでもある。抜け目のない茅根だ。 そして外面の情報を得てからは、内面の情報をリーディングで読んでみようとしてみる。虫の思考なんてわからないだろうけど、とやってみたのだが――、 「これは……これは……」 少しだけ感じ取れてしまった。それは、アーティファクトによって無理矢理変質させられてしまったが故の苦しみ、体の変化によって発生した痛みに悶える心。 「なるほど、ふざけていてもフィクサードの仕業。ということですか」 顎に手を当てて、少し思考する茅根であった。その背後では岬がワームによって派手に吹っ飛ばされており、少しアンバランスな光景を作り出している。 「デカくて鈍くて異常に弱いワーム、ね。倒そうと思えば簡単に倒せるでしょうけど、それじゃつまらないわよね」 「弱くはないー! 3発食らったら死ぬんだぞー!」 吹っ飛ばされている岬の声が聞こえてくるが、『雷を宿す』鳴神・暁穂(BNE003659)それをあえて無視して拳に力を込めてバチバチと自分の体を運転していく。メタルな体に、雷の力。それが暁穂だ。 「……それにしても、難儀な体質」 体から発せられる電気のせいで髪が跳ねてしまうことを気にして、暁穂は拳に力を込めるのを中断して何度か自分の髪を撫でる。しかし、何度やってもサラサラにはなりそうにないので諦めて再び拳に力を入れた。 「せっかくの機会なんだし、真っ向から殴ってやるわ! わたしのコブシは、シビれるわよ!」 そして、ワームに向かって飛び込んでいき、その顔にめがけて雷鳴を纏った拳をぶち込む! そのギガクラッシュの一撃で、ワームは再び仰け反る! だが、ワームはメトロノームの針のように仰け反りから戻ってきて、暁穂の体に巨大な頭を叩き込む! すると、岬と同じように暁穂の体も派手に吹っ飛んで行ってしまう! 「っ……さ、流石に効いたわ」 紙一重のところで直撃を避けることができたが、掠っただけでも吹っ飛ぶこの威力! やはりワームは強い! 「うわー、見た目に似合う気持ち悪い動きだねー……」 そんな大怪獣のような動きをするワームを遠くから見上げて、羽柴 双葉(BNE003837)は女の子らしい可憐な表情をしかめさせる。この前まで普通の女の子だったのに、いも虫の直視ができるはずもない。……のだが、双葉は割とケロリとしていた。 「まあ、そこまで嫌いでも無いからいいんだけどね。さっさと終わらせてピクニックといきたいなぁ」 そんな風に呑気に考える余裕もある。とはいえ、動かないわけにもいかないので余裕を持って力をコントロールしていく。 「せっかくだから、射撃練習をさせてもらおうかな。えーと、こう……かな?」 おっかなびっくり、メイジスタッフを振って魔力の弾丸を中空に作り出す。「わっ」と慣れない力に驚きながらも、メイジスタッフを勢いよく振ってワームに射出。 射出されたマジックミサイルはゆっくりと空に飛んでいき――、 「あれー?」 空中で三日月のような弧を描いて、ワームの頭に直撃。ビターン! と勢いよく倒れるワーム。 「結果オーライ、なのかなー」 えへへ、と自分の後頭部を撫でながら笑う双葉だった。 「パワーとタフさなら相当なものかぁ。真っ向からぶつかれたら楽しい戦いになりそうだね」 漆黒の羽を羽ばたかせ、少し間抜けなワームと双葉の姿をくすりと笑う『極黒の翼』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)は、上品なようにも見えるが頭の中は真っ向からの勝負をしたくてたまらない。猪突猛進な性格なのだ。 「本当は前に出たいんだけど……今のわたしじゃ力不足だしね」 ウズウズと動く羽と震える大太刀を抑えて、距離を取る。今は冷静になる時だ、 「わたしの中から生まれた闇に捕らわれ悶えろ……ってね♪」 だから、後方から暗黒の力を使って攻撃を始める。振り回された大太刀の軌道に合わせるように作られた刃の暗黒は、ワームの体を裂き、血を吹き出させた。ちょっとグロい。 「わたしの戦いは、ここ。魂燃え尽きるまで、戦ってみせる……!」 柄を握った手のひらに、力が入る。少女の体躯は戦士のものに見えてくる。 ワームもその意気に応えて、立ち上がってみせた。 「話には聞いていましたが、本当に頑丈ですね……。倒す糸口があるだけありがたい、ですが……」 そんな風に何度も何度も立ち上がってこちらに牙をむくワームの姿を見て、『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)は気を引き締めていた。愛用の長剣を自分の顔と垂直になるよう構え、ツリ目はワームをまっすぐに見据える。その距離は十分に離れており、いい間合いだと佳恋は思う。 「世界のために、この一撃で!」 凛として、突き出すように剣を振るう。突きとなった剣の一閃は風を切り裂く疾風となってワームの体に突き刺さった。 その一撃でワームは苦しみ悶えて、全身から血を噴出! まるでB級スプラッター映画のようだ! 「鈍重な相手ですが、攻撃力はバカにできません。気を引き締めて行きましょう」 その様子を見ながらも、佳恋は油断はしない。気を張りつめて、敵の動きをよく見ていた。 「ワンサイドゲームはフェアじゃないわ! あんたの土俵で挨拶したげる! 効率は悪いけど」 仁王立ちをするようなポーズで、ワームの頭がちょうど前に来るように浮かび上がりながら『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)は自身の炎を燃やし始める。正々堂々真っ向勝負。手加減なんてない。 両手に炎を舞わせ、勢いよくミリーは自らの体を使って飛び出す! 「これがアークよ!」 正面突破! 舞い上がった炎を爆炎に変え、それを直接ぶつける形でミリーは行く! ワームもこれに反応し、頭をミリーにぶつけようと巨体を振り始める! 「カウンターされても望むところ! フル出力で派手にいくわよ!」 爆炎は焔腕となり、赤く燃え滾った一撃はワームの頭とぶつかる! その瞬間に、爆音が轟いてワームとミリーの体が吹き飛んだ! 「流石、やるじゃない!」 ダメージも勲章。口から流れる血を舐め取って、ミリーは再び体に力を込める。炎はまだ、消えていない。 「無茶しやがるぜ。ま、甲燐様と戦えるっていうんだからテンションあがるわな」 天使の歌を使って、先ほどから殴りかかっては吹っ飛ばされている三人娘(岬、暁穂、ミリー)を明るく援護している『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)は、少しだけそんな女の子たちを羨ましくも思った。 「ま、それでも俺は守る戦いをする。これが俺の戦いだからな」 誰にも聞こえないよう、ぼそりと小さな声で言うフツ。その頭は太陽の光を反射して光り輝いていた。 「がんばれよ」 笑顔で声をかけるフツの姿に、攻撃を仕掛けている女性陣は皆素直に頷いた。 「……あれ? さり気無くハーレム? まあ、いいけど」 双葉はそう思ったが、まあ後ろで援護している二人の男性は無害そうなのでどうでもいいかな、とも思う。 タフネスが高いだけに、戦いは長く続いていた。 その間、封殺しようと思えばできるのだが、リベリスタたちは敢えてそれをせずに、ワームを追い詰めている。というのも、戦い好きの血が騒いでいたからだ。 さて、そんな戦いも終わりが近づいていた。 「巨大化もないがー装備品のアンタレスは強いよー!」 全力で振り下ろされた岬の一撃が、ワームを頭上から叩きのめした衝撃で地面を割ってみせる! 「ちょっと威力の調整を誤ったかー? でも甲鱗様だから仕方ないねー」 「ちょうどいい穴よ! その割れ目に叩き込んであげるわ!」 「私も、お手伝いをしましょう!」 暁穂と佳恋はその一撃で割れた穴に目をつけた。そこに叩き込むようにして、拳と剣をワームの頭にぶつけたのだ! すると、ワームは体が凹んで穴の中にぎゅうぎゅうに詰め込まれてしまう。 「外郭は鎧で覆われてても、お腹はどうかしらね? 下準備はバッチリ……最大出力で行くわよ!」 そのタイミングで味方に回避を呼び掛けるミリーは、両手を掲げて巨大な火球を作り出していた。全力全開の火力。今まで使えなかった鬱憤を一気に晴らすかのような、巨大な力の集約! 「わぁ! 逃げろ逃げろ!」 「すごく、明るくて大きな力……!」 そこから逃げるようにして距離を取る双葉と、大きな力に見惚れるフランシスカ。それぞれの反応を見て、少しいい気になりながらもミリーは力を込める。 「どんなに大きかろうと! 堅かろうと! ミリーが焦げ炭にしてあげるわ! 噴火点にありったけを注ぐ、もっと熱く!もっと燃やせ!!」 そして、巨大クラスにまで成長した火球を振りかぶって、投げた! 「こんのおおおおおおおおおおおおお!!」 一瞬の閃光。 少し遅れて、爆音。 その一撃はそれらの現象と爆炎を引き起こし、ワームの活動は停止させた。 「相手が悪かったけど、あんたも強かったわよ」 へへん、といい気になってミリーはくるりと一回転。残り火が金のツインテールを鮮やかに彩って、かわいらしくも危険なミリーを演出していた。 「火力には勝てなかったかー」 岬は少し納得をしながら、焼け焦げて跡形が少ししか残ってないワームの体からアンタレスを使ってシールドクロークをはぎ取った。これで、任務は終了だ。 あとは……、 「さて、これからどうする? ピクニック? 日向ぼっこ? なんでもいいよ、ゆっくり休みたいしさ」 「ピクニックだな!」 フツの言った通り、遊びが残っている。遊ぶのも立派な仕事だ。きっと。今日に限っては。 「わ、私は森林浴とかそういうのは……。任務で来ているのですし……」 佳恋は少し困ったように身を腕で包んで見せるが、 「楽しいピクニックだよ! わたしもおにぎり、作ってきたわ!」 「ああ、ちゃんと身と心を清めないとな」 というフツと暁穂の声に折れた。 「ふふっ……。それなら、ご一緒させて頂きます」 柔和な笑みを浮かべて、遊びを了承した。 ●楽しいピクニック 火球の跡と割れ目が残ったものの、公園への被害は抑えられた。 「これに懲りたら、もう無茶な事なんてしないように。まあ、私は楽しかったですけどね、血戦……くふふふ」 「いたっ! いたたたっ! 加減してー!」 怪我だらけな上に力を使い果たしてぶっ倒れているミリーの体を包帯できつく縛ってから、茅根は次の標的を探していた。この、きつい包帯巻きを楽しんでいそうな糸目が少し怖い。 「それはそうと、アイスを持ってきました。食後に頂きましょうか」 そんな茅根は怖がっていた岬や暁穂に向けてくすっと笑ってから、クーラーボックスを取り出した。悪戯好きの茅根のことだ、その顔を見たかっただけなのだろう。 「よーし、これだけ女の子がいるんだ。メインのお弁当は誰かが用意してくれた。そうだろう?」 さて、ピクニックを取り仕切っていたのはフツだ。先の戦闘は裏方に徹していたが、今度は俺のターンだと張り切っているようである。 「鳴神もフランシスカも小崎もミリーも料理ができないことがわかっている。だが、きっと誰かが女子力高いところを見せて、お弁当を用意してくれてるはずだ……そうだろ!!」 地味にひどいことを言っているが、事実である。女性陣はびっくりするほど料理できない揃いで、今回フツは不安なところもあった。だが、それならむしろがんばってくれるんじゃないかとフツは思ったのだ。一分の望みに賭けたのだ。 だけど、現実は残酷だった。 「先も言ったけど、わたしはおにぎり作ってきたわ。はいっ!」 「何コレ? ソフトボール?」 暁穂の手から出てきたのはツナマヨたくさん入り大きすぎるおにぎり一人一個。女子力が迷走しているが、突っ込んだミリーも焼き炭おにぎりしかできなかったので人のことは言えない。 「もぐもぐ……この大きさ、悪くないと思う。あ、他にない?」 それを平気で平らげているのが、フランシスカであった。しかも食い意地が張っているのか、他も要求する。作っては来てない。 「ええっと、実は私も作ってきたんです……」 人付き合いが苦手ゆえに、小さく手を挙げて差し出される佳恋のお弁当。美人でスタイルがよく、胸も大きな佳恋がこうやって控え目にお弁当を差し出すのは男子諸君にグッとくるシチュエーションだろう。だがお弁当は真っ黒だ。 「……もぐもぐ。鋼みたいな味がする」 「……ええっ?」 フランシスカの反応に、自信なさげ俯く佳恋であった。 「ここまで壊滅的だと女子力はボクが一番かもー、デパ地下は侮れぬー」 「それはそれでどうかと思いますが」 続いて出されたのは、岬がデパ地下を襲撃……もといデパ地下で買ってきた食糧だ。ある意味正しい判断なのかもしれないが、茅根は首を傾げた。 「おにぎりもあるぞー」 「もぐもぐ……。暁穂のとあんまり変わらない」 「何コレ? サッカーボール?」 大きなおにぎりは定番なのかもしれない。こういう女子には。 「あんまり大したものじゃないんだけど……」 「ふ、普通だ。だが、こんなにも普通がありがたい日が来るなんてな……!」 「何事も平穏が一番ですよ。私は波乱万丈が好きですが」 双葉が用意した簡単なカツサンドとサンドイッチを食べて感動しながら、フツと茅根は普通だからこそありがたい味を噛み締めていた。 ということで、お弁当による女子力勝負は双葉の完勝である。 その後はアイスを食べて、森林浴を味わった。 「さて……。そろそろ帰るか」 ワームに潰された生物、植物たちと通じ合ってから、フツはそれらを弔った。 どんな命であっても、弔われないものはない。次に生きるときは、理不尽に潰されない人生を。 そう、祈りに込めて。 「ふぅん。役に立たないと思ったけれど……。いい仕事をしてくれたわね」 「ええ、姉様。彼らの戦う理由……それは、忠誠ではないのね」 その祈りを見ていた影二つ。影は笑い、消えていく。 閑話休題。茅根の願いもあって、ワームも弔われたという。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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