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勇者たちの戦場

●英雄たちの旅立ち?
「馬鹿な……早すぎる……!!」
 彼は終末を彩るかのごとく染まった空を見、思わず呟いた。それは恐怖から自然と漏れたものであり、来るべき脅威に対する警鐘であった。しかしそれは彼の無力故の危惧であり、決して世界の無力を示すものではなかった。
「全く、あいつらはせっかちなんだから」
 女は呆れたように言う。世界が終末に染まりつつあるのであれば、己の力でそれを払えばいい。それが力を持つものの宿命。運命に導かれしものの必然。彼女は自らの力を信じている。だからこそ、焦燥に乱れることなく、未来を見定める。
「しゃーねえな、ケリつけにいくか」
 男は長年戦場を共に歩んだ獲物を固く握りしめる。これが最後になるだろうか。最後までこいつを信じ抜くだけだと、男は決意を改める。
 彼らに先んじて、前に出る男がいた。男は肩にかかった髪を風で優雅に揺らし、大剣を肩に担いだ。その顔に微笑みを称えながら、表情には険しさが見受けられた。男は、彼らを鼓舞するように、呼びかけた。
「さあ、行こうか」

●それで
「何が始まるんです?」
 リベリスタは問う。彼らは強大かつ大仰な何かの野望を止めるため、向かっていくように見える。そのために彼らは命をも懸ける覚悟があるのだろうし、力のすべてをぶつけるつもりなのだろう。けれども、彼らは一体、どこに向かっているというのだろう。何を果たしに行くというのだろう。
 天原和泉(nBNE000024)は瞼を閉じて俯き、やがて目を開く。そして勿体ぶった沈黙の後、言った。
「何も」
 その刹那、永遠とも訪れる空白が訪れた。言葉はそこに存在することを許されなかった。動きの一切は沈黙の前に希薄なものとなった。
「重要なのは何が起こるかではなく、何をすべきか。そう思いませんか?」
 何かごまかされてる気がする。
 けれどもリベリスタは、それ以上の追及が無意味であることが何となくわかっていた。
「これから皆さんをあるアザーバイドの作り出した特殊な空間へと送り出します。……ああ、幸いにして、一般人は取り込まれておりませんので、ご安心を。
 アザーバイドの求めているのは決戦の空気。
 例えば絶望的な戦場に足を運ぶ弱者の嘆き。
 例えば圧倒的な強者に立ち向かい、武者震いしている熱気。
 或いは剣戟の飛び交う戦場での熱い言葉の掛け合いだったり、
 また或いは強者と敗者が決した後の、戦いの終わりのクールな言葉。
 またはそれらに準ずるもの。
 そういったものを求めて、アザーバイドは色々な世界を旅しているそうです。そのアザーバイドは、それを十分楽しめば穏便にこの世界を去ってくれるとのことです。姿形もわからない敵を戦って追い出すのも難儀ですからね、穏便に行きましょう」
 それじゃあ何をすればいいのか。
 和泉が言うには、答えは一つであった。
「中学生みたいなクサイセリフを吐けばいいって、室長が言ってました」
 本当に言ったか責任転嫁かはさておき。
 まあ、戦場の雰囲気を醸し出せばいいとあれば、普段ひっきりなしに戦場に赴いているリベリスタには朝飯前だろう。
 ところで。
「あいつら、だれ?」
 自分の世界に入り込み、格好付けて映っている彼らを指差し、リベリスタの一人は聞く。
 またもや沈黙が訪れ、やがて勿体ぶったように間を置いて、言う。
「……さあ?」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:天夜 薄  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年06月03日(日)23:44
 天夜薄です。

●依頼達成条件
・お前も邪気眼になれ
・もとい戦場っぽい雰囲気を出すこと

●要約
 戦場における格好いいシーン・セリフを演出してください。
 シナリオ開始時、アザーバイドの作り出した特殊空間内にいます。
 世界観・状況は問いません。自由です。各々がどんな状況を演出したとしても、それをまとめるのは私の役目なので気にしなくていいです。
 場所は問いません。自由です。大抵の場所はアザーバイドが用意してくれます。
 敵・道具などは問いません。自由です。ただし自分で用意してください。
 単独で・ペアで・グループで。どれでもどうぞ。当依頼は大体ウェルカム。
 エキストラの使用をご希望ならば記述してください。OPで格好付けてた方々が頑張ってくれます。
 基本的に厨二病すぎるほど、アザーバイドからの評価が高くなります。
 ただし高くなったから何があるとも限りません。
 アザーバイドに攻撃するとか言う方は程度によっては重症になる可能性もございますのでお気をつけ下さい。別に立ち向かうくらいの意気込みなら全く以て大丈夫です。ただしアザーバイドがどんなものであるかはわかっていません。

●備考
・このシナリオはイベントシナリオです
・報酬はVery Easy相当です
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。

・内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
・未成年の飲酒喫煙など、公序良俗等に反するものは描写しません。

参加NPC
 


■メイン参加者 26人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
マグメイガス
アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)
デュランダル
宮部乃宮 朱子(BNE000136)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
クロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
デュランダル
真雁 光(BNE002532)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
マグメイガス
大魔王 グランヘイト(BNE002593)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
スターサジタリー
桜田 京子(BNE003066)
プロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)
覇界闘士
ジョニー・オートン(BNE003528)
プロアデプト
尾宇江・ユナ(BNE003660)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)
レイザータクト
アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)

●勇ましき覚悟
「風が泣いている……」
 濁る空気も寄せ付けぬ程高くそびえたつ高層ビル。その最上階で、亘は呟く。日頃頬を撫ぜている風は、今日は吹かない。無知を突き通すことも許さぬ異常と、感じる悲劇への前兆が、彼に悲痛の記憶を思い起こさせる。
「また、始まってしまうのですか……」
 でも、もう終わらせないと。
 彼は窓から軽く飛び出した。階下に広がる地面がどれだけ固かろうと、恐怖はない。彼の体は重力に逆らう翼を持っている。
 すべてを解放し、自由な空へと飛び立つための。
「自分は天翔ける風。今度こそこの身に全ての非なる運命を乗せ空へとかえしましょう」
 跡を濁したままでは追われない。
 さあ、戦場へと赴こう。

 正義と悪は所詮は相対的なものだ。視点や立場が変われば、その価値観もまた変わる。
 争いは故に起こる。複雑に交じり合ったそれらは、次第に見分けがつかなくなる。
 感情や心がある限り、避けられないことだ。
 ならば必要なものは、誰にとっても等しい『絶対』なる基準。
 立場の違いで善悪が入れ替わるのなら人は全て私の前に立て。
 見るものの違いで善悪が交わるのなら人は全て私を見上げろ。
 彼女はすべての正義が自分に立ち向かうことを望み、悪が自分に服うことを望んでいる。
 世界を秤にかける者、そして万物の基準として。
「『絶対悪《ダークヒーロー》』鳳 朱子だ!!」
 彼女に従う十三人の黒衣の騎士が、姿を現す。
 彼女たちの戦場は、すぐそこにある。

「此処は一体、何処…?」
 眼前の深き森がざわめいた。周囲の仲間が、何事かと気を散らした。
 その深淵がアリスに与えるのは、闇より黒く、邪より禍々しき『異形』の気配。
 ふと彼女の脳裏に走る痛み。誰かの声が、微かに聞こえた気がした。
「私に語りかけるのは誰? …まさか、あれが…【ありえない魔獣】…!? 倒さないと、世界に終末が…!?」
 その時。彼女の手に握られた剣が、眩い光を放った。彼女はすべてを悟って座り込んだ。
「この剣が【ありえない魔獣】を倒せる【ヴォーパルの剣】? …あれはお話の中だけの事だと思っていました…わ、私が…!? む、無理です…」
 けれども、彼女はやらなければならないのだ。それは彼女が一番よく知っていた。それでも、足りなかった。
「大丈夫」
 その時、声をかけた仲間の方を、アリスは見た。彼の顔は、アリスとは対照的に笑みで溢れていた。
「あなたなら、できる」
 連れ添ってきた仲間の言葉に、アリスは救われる想いであった。
 アリスは勇気を振り絞り、立つ。
「私だって、もう護られるだけのお姫様じゃない……! この剣で、災厄を、悲しみを生み出す事象を…斬り滅ぼします!!」

 戦か、とアルトリアは心を湿らせる。
 好ましいことではない。血を流さずにいられるなら、それが最良であるのだから。
 けれどもこの場においては、甘い思考は身を滅ぼす破滅の罠となる。
 弱いものは死に、強いものは生きる。
 理解しているのなら、命を乞う敵も、いないだろう。
 けれどもアルトリアは、自らの誇りを捨てるつもりは、ない。
 命を乞えば去ることをよしとした。去る者は追わず、どこのものとも知らぬ異界の戦士に、最後の選択の機会を与えた。
 それが、彼女が戦場において敵に差し向けられる、最後の寛容さであった。
 立ちはだかる敵を見据え、彼女はレイピアを構える。その獲物に込めるのは、相手の誇りを切り捨てるという覚悟。
「正々堂々とはいかずとも、高潔な戦いを期待する」

 どこかで銃が吼える音がする。終は、物憂気に空を見上げながら、呟く。
「ああ……また戦争か……」
 何度同じことを繰り返せば気が済むのだろうと、呆れる想いだった。
 人間の歴史はすなわち戦争の歴史だ。戦争の合間に一時の平和が訪れる。
 平和というぬるま湯は、戦いを経験したものにはあまりに物足りなさすぎるのだ。
 戦いの与える刺激。攻撃性、恐怖、興奮。
 凄惨さは薄れ、そればかりが増幅される。
 そうして彼らはまた、戦いに身を投じるのだ。
 終とて、同じ穴の狢であった。
 彼の頭に刻まれた戦いの記憶が、彼は戦へと駆り立てるのだ。
 どれだけ憂いても、彼はもう、自分がこういう場所でしか生きられないことを、知っている。
「それじゃあ、行くとするか……」
 獲物を取り出しつつ、遥か彼方に向けて、彼は一人呟いた。
「戦友よ、あの世でまた会おうぜ……」

「人は誰しも、自らの宿業から逃れられないというのか……」
 けれども、それが運命だというなら、彼は抗って見せるという気概があった。
 ただしその宿命はあまりに重い。
 彼の身に宿った『原書の混沌』。圧倒的なその力は、世界の滅亡を予期するほどに、強大だ。
 止められるか、抑えきれるか。命をも懸ける所存であった。
 力を暴走させた自分はもういない。
 失えないもの。
 守るべきもの。
 今自分にある大切なものを、失うわけにはいかないのだから。
 あのときのようには、決して。
「いくぜ、終幕の使者よ。
 どちらにせよ、お前は生き残れないのさ……。
 カーテンコールに、貴様の座はない! 飲まれろ、混沌に!」

 戦いの時は訪れた。宗一は、向き合ったその人間に、語りかける。
「分かっているだろう。俺達がぶつかり合えば、どちらも無事ではすまないと」
 言葉を吐きながらも、宗一は知っている。
 戦わなければならない、運命なのだろうな、と。
 出会う形が違っていたなら、違う未来もあったのだろうか。けれどもそれは、餅を絵に描くよりもむなしいことであった。言葉に出そうとして、けれども彼は口を噤んだ。
 相手が剣を抜く。宗一もそれに合わせて獲物を抜き、覚悟を決める。
 信頼できる仲間が、同じ戦場にいる。
 そして自分には、帰りを待っている人がいる。
 この戦いが終わったら、正式に付き合いたいと思っている。
 絶対に負けられない戦いがここにはある。
 不意に、二人の視線がぶつかった。同時、彼らは足に力を込めた。
「さあ、始めようか」
 生き残ったものが、勝ちだ。
 
 世界に闇がかかって、その間にも状況は目紛しく変わっていく。
 暗転の後、彼らの増幅した想いが決壊し、そして、戦いの火蓋は、切って落とされた。

●ぶつかり合う信念
 駆ける。攻める。誰かが放った魔弾が戦場を一閃し、刀剣の描く円弧の軌道から血液が放射状に吹き出した。それはこの場所における一部分にすぎない。言うならば米粒。蟻の大群。少なくとも、彼らを踏みつぶすほどの強大な存在からしてみれば、そうとしか見えない光景であっただろう。

 舞姫が、高らかに笑う。
「あはははは、見てよ京子さん! あれが、人間だよ。わたしたちが、命をかけて守りたかった世界だよ」
 彼女を駆り立てるは絶望。希望を以て乗り越えようとした過酷を諦め、世界をあるべき姿に変えたいと願った。
 すなわち絶望の虚無へと。
 こんな、こんなもののために。
 京子は彼女を見、語りかけた。
「戦場ヶ原先輩…、どうして? 誰よりも優しかったアナタが…どうしてこんなことをするの?
 私は守りたい、この世界を人々を」
 戯れ言を。舞姫は呆れた仕草で京子を見る。
 わかり合えないことを、共に理解していた。
「ああ、もう、すべて終わりにしましょう」
「終わらせる? ううん、これから始まるの」
 二人は同時に、願う。
 歪曲運命黙示録。
「狂ってるよ、戦場ヶ原先輩……」
「狂ってる? いいえ、おかしいのはあなたたち。
 正気なら、耐えられるはずなんてないじゃない……!」
「確かに希望なんてちっぽけなものだよ。
 だけど信じて信じて、それこそ信じる事を忘れるくらい信じた時に、奇跡は起きるんだ!」
 京子の放つ銃弾を、舞姫はナイフで弾き、一気に接近する。振り下ろしたそれを京子は華麗に避け、距離をとる。睨み合い、しかし数瞬もおかずに距離をつめる。
「邪魔は、させないっ!」
「絶対に、諦めないッ!」

 アルフォンソは感じている。戦場の空気。服を通してなお、肌を突き刺すような空気を。
 レイザータクトの本質は戦場での支援にある。彼はレイザータクトとして、周囲の味方への支援を図る。
 彼はこれを好機と考えていた。
 戦場を支配するのが、一体誰なのか。
 敵に、或いは味方に知らしめる絶好の機会だと。
「我が采配を知らしめましょう」

「クックック、下層世界風情が随分と兵を集めたものだなァ」
 上っ面だけの派手な武装。張子の虎とはよく言ったものだと益母は思う。
 彼の目に映るのは矮小なる弱者の群れ。
 真の捕食者の何たるかを、刻み込んでやろう。
「俺はゼナイズ・ヅージ・バイデン! 百鬼を従えし暴虐の王子よ!」
 益母は合図を出す。自分らバイデン族の暴力を、思い知らせるために。
 100程の軍勢が、彼に続いて戦場へと繰り出した。
 彼に続かぬことはすなわち死である。
 すべてを喰らい尽くすことがその場の正義であった。
 立ち塞がる敵を吹き飛ばし、その旗印『ゴー』へと進撃する。
 その強大な力は、誰とて止めることを許さない。
「我等は奪い、戦う事こそが存在意義! 抗って見せろ肉共よ!」

 立ち向かうは総勢300にも及ぶ兵。
 その中心に立つは、巨大な黒馬に跨がる荘厳なる偉丈夫。
 覇王にして魔王。名君にして暴君。
「我こそ“百獣百魔の王”ゴー・マージン・クローウリアス十二世である!」
 異界からの侵略者の軍勢は、眼前に迫っていた。
 愛する者を護らんとするその時、意思の力は幾多の戦を渡り歩いた古参兵にも引けを取らぬ程に、強力となる。
 自分たちを烏合の衆と嘲った彼らに、それが理解できるのだろうか。
「世界を簒奪し崩界させんとする、汚らわしき悪鬼羅刹どもを根絶せよ。
 我ら一同、世界と人類の守護者たらん!」
 失踪するバイデンの軍に、ゴーの軍勢は弓を射る。両翼から槍兵が壁を成し、正面から騎兵と共に、刃紅郎は突撃する。
 それはまさしく世界をかけた、戦争であった。

 炎を纏いし灼熱の赤竜、焔優希。彼の持つ宝刀『真・次元斬』が暴走し、この世を滅ぼさんとする黒竜の化身、上沢翔太と精神の交換が行われた。
 優希は己の体を身、そして翔太を身、勝ち誇るように笑む。
「これは好機。この器でなければダークエンド・ブレイズは使えぬのだろう?
 ならばその入れ替わった俺の身諸共、今ここで剣戟の藻屑と変えてくれるわ!
 その言葉に、しかし翔太は余裕を崩さない。彼は彼自身の能力を、よく理解していた。
「我がライバルよ。
 ダークブレイズは本気を出さずともいつでも使える、俺の技の中では一番威力が低い技だ。
 見せてやろう、俺の本気を……器が変わろうとも、な!」
 世界を滅ぼすのは、余興にすぎない。この力を持つ者にとってはただの楽しみに過ぎないのだ。
 力こそ正義。
 力こそ悪。
 最強の力を振るうことが、どうして悪となろう。
 世界で自分にしか出来ないことを、見せしめにやるお遊びだ。
 翔太の右腕に現れる黒き炎。
 対抗するように、優希の右手には闇を纏いし剣が煌めく。
 解るか、黒竜よ。優希は語りかける。
 こんな力があるから、世界を滅ぼそうだなどと目論んでしまうのだ、と。
 闇に取り込まれ、ギラつかせた眼で翔太を睨む。
「俺は貴様を倒し、この力を受け継ぐ。そして俺は、新世界の神となる。
 俺が、俺こそが! 世界に君臨する全知全能の高次元的存在となるのだ! フハハハハ!」
「貴様は本来それを止めるために俺の元に来たのではないのかな?
 ククク……まぁいい、絶望という名を俺の身のまま味わうがいいわ!
 溢れ出る黒き炎が、優希の剣に衝突する。それを刃に纏わせ、優希は翔太に、斬り掛かった。

 魔城の最新部へと続く門。悠里は、その奥へと駆けていった仲間を見送り、呟く。
「みんな、必ずこの世界に光を!」
 けれども。
 彼の周囲に蠢くは数多のモンスター。地平を埋め尽くす程の軍勢が、彼を食らわんと身構えていた。
「さて、ここから先には一歩も進ませないよ。僕がいる限りね」
 英雄足り得ると信じた仲間は見送った。彼らを、邪魔させるわけにはいかない。
「人間には無理?そうかも知れない。『人間なら』、ね。
 ……あぁ、そうだ。僕は人間じゃない。闇の眷属『ヴァンパイア』だ!」
 死ぬのにいい日なんてものはない。
 どんなに無様であろうと、命ある生は何物にも代え難いのだ。
 だから。
「今日は人生最悪の日だ!!」
 何者も通しはしない。その覚悟を胸に。

●立ち向かう勇気
 決して楽な道のりではなかった。
 闇に包まれたこの世界。幾多の苦難を乗り越えて、ようやくこの場所にたどり着いた。
 勇者なんて呼ばれているけれど、自分だけではこの場所には立てなかっただろうと、光は思う。
 仲間と一緒だから、乗り越えられてきたのだ。
 運命に定められた仲間だからとか、そんなの関係ない。
 苦楽を共にしてきたからこそ、信じられる。
 とうとう、悲しみの輪廻から解き放つ時は、来た。
 邪悪なる大魔王を倒し、この世界を救うのだ。
「最終決戦……今まで以上に辛い戦いになります。
 それでもボクに力を貸してくれますか?」
 首を振る者はいない。心は一つだ。さあ、戦場へと赴こう。
 決して負けられない戦い。自分たちがやらねば、誰がやる。
 光はしっかりとした足取りで、大魔王の居所へと、向かう。

「ついにここまで来たか勇者たちよ。
 余の部下の尽くを退けた力、見物であった。
 貴様らを侮っていたと認めざるを得まい」
 かけるのは労いの言葉。世界を手中に治めんとし、強大な力を振るってきた大魔王その人が、自分の目の前までたどり着き、自身を脅かす彼らに敬意を払う姿に、勇者たちは思わず戸惑った。
「だが、貴様らもそれは同じだ。
精霊王の力を借りたといえ、人の身で操る術で余の力を抑制できると思ったか。
己の浅はかさを悔いて死ぬがよい」
 その禍々しい姿は、彼らに気を絶やすことを許さない。少しでも気を休めれば、気圧されてしまうようにも感じていた。
 大魔王は、ゆっくりと玉座から立ち上がる。その手で、最後の希望を絶やすために。
 天よ哭け。
 地よ震えよ。
 人よ絶望するがよい。
「余が大魔王グランヘイトである」
 大魔王 グランヘイトが現れた!

 男、否漢には、負けると分かっていても退けぬ戦いというものがある。
 それは、ただ散りゆくというわけではない。
 喜び、悲しみ、怒り。これまで己が一生で培った全てを懸け、最後の一瞬のために、己を輝かせに『征く』のだ。
 そして今。この瞬間、その戦いの時は訪れたのだ。
「拙者は退かぬ! この魂! 燃え尽きるまでッッッ!!!!
 ぬおおおおおォォォッッッ!!!」
 ジョニーはどこへともなく駆け出した。視ることもままならないその強大な敵に向かって。
 彼の最後の一瞬の輝きを、懸けて。

「まったく、皆々様方嬉々として戦場に突撃していくわね。
 そんなに急いてどうするのかしら?」
 エナーシアは呆れたように言う。古今の史書を紐解いても、焦って事態が良い方向へと向かった事例なんて、ないのに。
 或いは、それを成したものは別の表現で語られるからかもしれないけれども。
 結果論なら、どんな事でもシタリ顔出来るのだから。
 エナーシアは後方に回り、命を絶やさぬよう用心しつつ、戦場で立ち回る。
「そんな装備で、大丈夫か?」
 エナーシアがの使っている旧式の装備を見、誰かが尋ねた。
 彼女はフッと笑って、答える。
「まだ死にたくないのでね」
 新型、特別製、世に二つと無い。
 響きは魅力的であるけれども、必要なときに必要な威力が発揮できる保証が無いのなら、それは無意味な称号だ。
 80と100の差は容易に埋まるが、0と1の間には埋められない溝があるのだから。
「私は博打事が大嫌いなのよね」
 彼女が引き金を引くと、ライフルは嬉しそうに鳴いた。

「騎士団諸君。すまない、そしてありがとう」
 並んだ騎士団一同に、快は団長として労いの言葉をかける。
 強大な魔王の軍勢に挑まんとするのだ。生きて帰れる保証は、ない。
「突撃ー!」
 騎士団万歳!
 勇者に勝利を!
 声高らかに叫ばれたそれはしかし、やがて弱々しいものへと変わっていく。
 一人、また一人。その命は潰えていった。
 快はただ一人戦場を駆け抜け、生き残り、その刃を魔王の軍勢へと突き立てた。
「栄光ある神聖騎士団(仮)もこれまでか。
 だが、騎士団は滅びても、その誇りは永遠なり!
 うおおおおおおお!」
 刹那。
 刀剣と共に快の体は切り裂かれる。滴る血液が、地面を濡らした。
「快!」
 夏栖斗が横から割って入り、敵を斬る。倒れるのも見ずに、夏栖斗は快に駆け寄った。
「……夏栖斗、すまない」
 これは、騎士団の宝剣だ。持って行ってくれ。
 そして俺たちの代わりに魔王を……。
 王様、申し訳ありません……ぐふっ」
 快の差し出した宝剣。夏栖斗はそれを見つつ、思う。
 本当は戦いたくなかった。けれども仲間は一人、二人と倒れていく。
 僕は何も出来ないまま。
 これで、いいのか?
 僕は勇者だ。この手は誰かを助けるためにある。
 巨大な軍勢に震える自分の、奥底に眠る勇気を奮い起こして。
 ちょっと好色な親友(でも童貞)の騎士、快が、自分を信じてくれている。
 ここで勇気を出さなければ、いつ出すというのか。
「快、この先は任せろ
 その宝剣で、魔王モモーコを倒してくる!
 お前の命は絶対に、無駄にしない!」
 ゆうしゃは どうのつるぎを てにいれた!
 夏栖斗は傷心のまま、敵の軍勢へと駆け出した。

「戦場っぽい? 否、ここは既に戦場だ」
 男にとっていついかなる時も戦場だ。
 生きる事そのものが戦いであり、平和を享受する側だけがそれを忘れていられるのだ。
 仲間が同じように戦場にいるならば、これほど心強い事は無い。
「任務中だ。油断せぬようにな」
 戦いの終わる最後の一秒まで、決して油断せず、戦い抜く。
 その決意を胸に、ウラジミールは戦場を往く。

 この砦の陥落は、すなわち敗北を意味していた。
 負傷者多数、動けるものが僅かな状況は、その結果を目前に控えていた。
「くっ…ここを…ここを落とされてはわが国は滅んでしまう…。退けない…ここは一歩も退けない…」
 瀕死の重傷を負い、戦う事のままならない三郎太は、けれどもまだ倒れる事をよしとしなかった。
「ボクの敗北はボクだけじゃない…ボクの家族…ボクの仲間達…そして僕の国自体の敗北なんだ…」
 彼に残された時間は、もう幾ばくもありはしなかった。その体に鞭を打ち、最後の力を振り絞る。
「命に代えても…この命使い切っても…この場は通さないっ。
 策士としてのプロアデプトの誇りにかけて…この一世一代の奇策、見抜けるものなら見抜いてみるがいいっ!
 離宮院三郎太っ推して参るっ!!」
 三郎太の一世一代の大勝負が、始まる。

「……とうとう、この時が来たか」
 拓真は静かに呟いた。
 何時それが訪れるか。それは誰も知らなかった。
 だから何時来ても良いように、ただひたすら剣技を磨き上げてきたのだ。
 この技が、果たしてどこまで奴に通ずるかは定かではない。
 けれども、この時のために磨いた技なのだ。
 戦わぬわけにはいかなかった。
「俺も彼らに着いて……と、思ったがどうやら相手も手をこちらに回していたらしいな」
 周囲にはびこる邪悪の気配。それは勇者を始末しようとする輩。
 けれども。自分は英雄でも勇者でもない。ただの努力を積んだ人間だ。
「……逃げると言う選択肢はない、か」
 自分程度は、すぐに倒されてしまうかもしれない。
 だが、勇者を始末させる事はさせない。
 絶対に。
 口元に笑みを浮かべ、双剣を抜く。同時、敵の姿が眼に入った。
「……俺を倒すのは少々手間だぞ。悪いが、此処から先は行かせん……!」

「間違いないですね、計算通りです」
 観測、収集、計算、演算、反映。
 いかなる戦場でも全力でそれを行使するチャイカの姿。
 現在進行形で超理系クラスタかつ中二病発症間近らしいが戦場ではそんなことは関係のない事だ。
「敵は大型2体中型16体小型64体。陣形は恐らく右方突破で3重ローテーションでしょう。“彼ら”の事は既に調査済みです」
「知っているのか、チャイカ!」
 冷静なかつ正確な分析に、周りの人間がどよめく。
「我々の戦力差は2:8、絶望的と言ってもいい数字です」
 言葉を一旦区切り、ですが、と前置いて、チャイカは微笑みを称えながら言う。
「ご安心あれ。こんな事もあろうかと最終兵器を用意してあります」

「フフ…! 最強の援軍到着です!」
 真打ち程遅れてくるのはこの世界の法則。
 寝坊でも遅刻でもありません、失敬な。ユナは心の中で呟いた。
 刹那、飛んできた攻撃をユナは鉄パイプのようなもので弾く。
「やれやれ。こうなっては仕方ありませんね、『プランB』でいきましょう。
 ……あ? ねぇよそんなもん? いえいえ、戦場ではよくある事です」
 彼女の言うのは『プランBomb』。その名の通り、身を呈した最後の一撃。
 意味? ないですよそんなもの。とはユナの言葉。
 ユナはゆっくりと自爆ボタンを押す。強烈な爆風が戦場を駆け抜ける。
 その中でユナは、恍惚として笑っていた。
「フフ、『プランBomb』……スゴクイィ……」

●物語の終演
 滴る。体中から、血が溢れる。呻く。
 けれども、体よりも心が痛い。
「わたしが、わたしが敗れるというのかっ!? いや、いやぁぁ……」
 舞姫の悲痛な叫びが、響く。
「戦場ヶ原先輩……?」
 呟いた京子の方を、舞姫は見る。
 嗚呼、どうして、私は。
「京子さん、ごめんなさい……。こんなわたしに最後まで……」
 ありがとう。大好きだよ。
 途切れ途切れに口にした言葉が、京子の脳裏を走り抜ける。
「ねえ! 駄目だよ、目を開けてよ、死なないでよ!」
 だって戦いの中で気付いたから。
 一番護りたかった人に。
 ずっと一緒にいたかった人に。
 彼女は諦めない。何度だって、奇跡を信じているから。
 そして、彼女は願う。運命の歪曲を──。

「任務完了だ」
 戦いは終わり、戦場は静けさを取り戻す。ウラジミールはゆっくりと、周囲を見渡した。
 疲弊した仲間の姿が見える。
 傷ついた仲間の姿が、殺した敵の姿が見える。
 けれども、彼らは生き残ったのだ。それをよしとしよう。
「では、解散。次ぎの戦場で会おう」
 途端。世界が弾ける。
 今まで戦場を形作っていた景色の一切が取り払われ、禍々しい神秘の気配は消え去った。
 きっと異界のそれが満足したという事だろう。
 自らの望んだこの『余興』に。
 リベリスタは散り散りに、その場を後にする。
 彼らはまた、仮初めではない本物の戦場へと、向かっていくのだろう。
 けれども今は、一時の休息の中に。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れさまでした。
 戦いの息抜きに戦いをする、というのも変な話ですが、楽しんでいただけたのであれば幸いです。
 ではまた別の戦場でお会いしましょう。