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<相模の蝮>鉄拳コンクリート少女隊

●断片少女
 追われている、追われている。
 切れる息、上がる息。喉から異音が流れ、肺が悲鳴をあげている。
 追われている、追われている。どうしようもなく追われている。
 嗚呼畜生、どうしてこんなことに。
 何時も通りの筈だった。日常の延長でしかなかったはずだった。昨日から今日へと日が廻るように、今日から明日へと月が落ちる筈だった。
 どうして、どうしてこんなことに。
 別々に逃げた仲間は無事だろうか、そんなことを考える。そんなことを考えている場合ではないとも考える。嗚呼畜生、畜生。
「察知」
「感知」
「補足」
「了解、襲撃します」
 何かに、躓いた。
 転倒する。受身も取れず、顔が舗装された道路に接吻する。鼻がひしゃげる。血が流れ、心が惑う。
 振り返る、蹴躓いた先を振り返る。振り返った先に、この期に及ぶ己の楽観さを後悔し、絶望し、痛みに精神が反っくり返る。
 足が無い。脚が無い。膝上からごっそりと消し飛ばされている。蹴躓いてなどいるものか、蹴り飛ばす脚そのものがないではないか。痛みに混乱する、混乱する。恐怖で頭が真っ赤に染まる。轟き叫べと心が訴えかけている。
「ロック」
「ロックオン」
「了解、終息に移行します」
 冷たい声に、恐怖が別の恐怖で塗りつぶされる。もう痛みなど感じ無い。心が余所に移ってしまっている。伝染ってしまっている。
 顔を向ければ、足があり。見上げれば、あどけない顔が見えた。
 少女である。年の頃は義務教育を出たか、出ていないか。その程度。地に触れるほどの大きなガントレットを両手にはめている。赤い塗料が見えた、あれはきっと自分のものだろう。
 巨大な拳も恐ろしくはあった。だが、それだけでは足りない。たった1人の少女如きでは、こうまで恐れるはずもない。
 少女は、少女達は今や自分を囲むように立ち、見下ろしている。ひふみやいのむ。嗚呼、6人居る。6人も居る。同じ顔、同じ顔が並んでいる。怖い、怖い、恐ろしくてたまらない。
「終息」
「終息」
「お疲れさまでした」
 最後に聞いたのは、ひしゃげた音。それは自分の顔面か、頭蓋か、全部か。もう分からない。わからないまま世界は赤く染まり、そうして暗転した。

「おえかき」
「おえかき」
「報告を」
「了解、報告します」
「こちら(雑音)、報告です」
「了解しました。(雑音)は次の夜まで待機致します」
「承知しました。(雑音)は次の夜まで待機致します」
「お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」

●本編幼女
 いつもの本部、いつもの作戦室。それが今日は、なんだか慌ただしかった。
 元より連日発生する常々外の事件に奔走しているアークではあったが、ここ数日で起きたフィクサード事件の数は異常と言えた。
 殺人、強盗、誘拐、殺人、殺人、誘拐、殺人……数えきることのできない赤点が地図中に散りばめられている。自分たちも、このどれかの解決に当たるのだろう。
「毎夜、おかしな殺され方をしている事件があるの」
 うさぎの小物で身を固めた少女は言う。
 被害者はどれも殴殺。奇妙なことに大の男でもありえない程巨大な拳で殴りつけられ、磨り潰され、消し飛ばされたものと推測される。また、現場には被害者の血で解読不明な原語羅列が散りばめられていた。
「犯人は例によってフィクサード。数は6名。ごめん……これくらいしかわからない」
 悔しい。無表情のそれでも、その感情だけはありありと見えた。
「でも、場所だけは見当がつくの」
 予言の少女は周辺地図を広げ、殺害現場に赤い丸をつけていく。均等に、等間隔に並ぶ4点。それは、まだ点けられぬ1点を除けば完璧な正図形を描いていた。
「五角形……ううん、五芒星、かな。毎日、毎夜、必ず起きるのだとしたら……今晩はこのあたり」
 黒い丸を地図に印付ける。
 最もシンプルな儀式印が三角形だとしたら、最もメジャーな儀式員は五芒星であろう。だがそれ故に、それ故に。
「単純すぎる……あまりにも明確で逆に儀式殺人には見えないの。現場の痕跡も、わざとそうしているみたい。それにどうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」
 表情は変わらない。それでも不安気に、わかるぐらいに不安気に。
「気をつけて。敵の目的はわからないし、戦力もよくわかってない。だから、今回の任務はここで殺人を起こさせないこと。それだけを一番に考えて。絶対に、無理はしちゃ駄目」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:yakigote  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月28日(土)01:38
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
毎夜、儀式めいた殺人を犯す六つ子のフィクサードから一般市民を護ってください。
敵の確かな実力はわかりませんが、見た目は記述のとおりとなっており、そこまではイヴの予言にもでてきています。
任務内容はあくまで守護。深追いしすぎぬよう、お気をつけください。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
クロスイージス
ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)
プロアデプト
ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)
プロアデプト
阿野 弐升(BNE001158)
デュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ホーリーメイガス
アンナ・クロストン(BNE001816)
ホーリーメイガス
秋月・瞳(BNE001876)
インヤンマスター
護孝 愁哉(BNE002383)

●アイアンナックル
 待っている。
 待っている。
 空を見上げて、土を見下げて。
 此処が何処かなどとうに忘れて、何処が何処かなどとうに見果てて。
 拳を振りあげて、鉄塊になったそれを眺める。
 すぐに見飽きた。
 待っている。
 待っている。

「……あまり、良い気分ではありませんね」
 殺人を繰り返すフィクサードの少女達。心を見せない顔で、『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)は何を思うのか。
(人を惨殺するフィクサード……何か理由があるはずだ。そうでなければ、そんなむごいことができるはずがない……っ)
音が鳴るほどに、『シルバーストーム』楠神 風斗(BNE001434)は強く強く噛み締める。殺人へと走るロジカル。殺人へと浸るメンタル。それに至るプロセスが、例えどれほど異端であろうとも。
「目的はリベリスタ……いや、アーク、か?」
『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)は考える。狡猾性のまるで見えない儀式殺人。対抗勢力を意識しないはずがないのだ。五芒星そのものがフェイクだとすれば、裏腹はどこに。
「出来る事なら、一人でもとっ捕まえてみたいものだがね」
「誘っているなら乗ってやろうじゃないか」
 頭の大部分を機械化された『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)。一帯にカモフラージュを施し、一般人からは立ち入り禁止と見えるようにしている。一種の結界とも言えるだろう。
「色々ときな臭い事はありますが、先ずは目先の事を解決しませんとね」
 正直なところ、『消失者』阿野 弐升(BNE001158)からすれば儀式だの殺人だのどうでもいい。仕事は受けた、それを確実にこなすこと。それがなにより重要なのだ。
「関わる以上は全力で依頼に意識を傾けてやるぜ」
『未完の器』護孝 愁哉(BNE002383)にとっても似たようなものだ。殺人鬼の思想など見当もつかない。それでも全力で当たるだけだ、それでいい。
「やはり、気になるのはその巨拳だな」
 間合い、威力。超大なガントレットが相手では、白兵戦において不利と言わざるをえない。かと言って今回のケースでは『鉄血』ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)も後衛に甘んじるわけにはいかないのだろう。
「そろそろ行きましょう。時間が惜しいわ」
『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)の声で、準備を終えたリベリスタ達は歩みを急がせる。
 敵数6名。目的は不明。実力も同じく。明らず隔たれた死線の向こうへと足を踏み入れる。躊躇いはなく、そこにはきっと慈悲もない。

●ブラストボム
 例えば。
 異常とも言える行動に理由があれば、誰もが納得するのだろうか。食するためにと精神医が告白したとして、太陽が眩しいからと異邦人が吐露したとして。
 例えば。
 異常としか見えない論理に理由があれば、誰もが納得するのだろうか。幼少期に虐待にあった。性的なトラウマがある。脳髄に障害を持って生まれた。そもそもどこかで何かが違っていた。
 誰もが納得するのだろうか。「それじゃあしょうがない」と許すのだろうか。そもそも何を許すのだろうか。
 馬鹿馬鹿しいと自嘲する。どれが何でどうあったとして、自分達は殺人鬼なのだから。殺人鬼になってしまったのだから。
 精神は戦闘へ。心は希薄へ。0と1で会話し、零と唯で結論せよ。
 来た。
 来た。
 敵が来た。

 リベリスタ達がそこに来たとき、既にそいつらはそこにいた。
 民草の姿はない。事の終わった様子もない。
「異を唱えます」
「異を唱えます」
「無論、我々はまだ何も始めてすらいない」
 同じ顔が6つ。少女達。少女達。背は低くて、髪は短くて、巨大な巨大なガントレットを両手に嵌めた少女達。
 手甲は地につき、地を抉り、地に反している。あつらえられたかのようにお似合いで、あつらえられなかったかのように不釣合だ。メタルフレームであることを隠そうともしない。常人でないことを隠そうともしない。バレたからなんだ。触れたからなんだ。不都合なら殺せばいい、都合がよければ殺せばいい。
「それが殺人鬼」
「それが殺人鬼」
 同じ声だ。同じ身形だ。同じ生き物だ。
 殺人鬼達は群れをなし、軍集団として結束する。来いよ正義の味方。笑えよ光の勇者様。エンジン音が鳴り響く。駆動音が増す度に戦場のボルテージが沸騰していく。
「見せてみろアーク」
「見せてみろアーク」
「ここまでが侵略で」
「ここからが戦争だ」
 駆け出す1歩目は、盛大な6脚はひとつの音に聞こえた。幕は上がり、拍手は鳴り響き、指揮者はタクトを奮う。捜すような手間など省け、逃がすような腹など飛ばせ。チケットは完売。満席御礼仍って外野の隙間なし。さあ、符のない楽譜で弦を弾こう。
 どるん。
 
●ガゼルエンジン
 五芒星は嫌いなんだ。

 音が遅れてやってきた。そう錯覚させるほどの疾走。
 力任せに、それでも並の剣戟よりは遥かに速く鉄の拳が叩き込まれる。しかし、幾ら速くともこの距離であれば回避もそう難いものではない。
 リベリスタを捕らえられず地に打ちつけられるガントレット。そこからのディレイはなく、少女達は次の構えに移っている。
 ターン進行。攻撃の準備ができたのはフィクサードだけではない。
 次の手を仕掛けようとした少女の一人が身体を仰け反らせる。その上を通過する漆黒のオーラ。地につけたガントレットをバネに大きく飛び退る。それを、致命の一撃を外したうさぎが追いかける。
 対峙する少女達。分断し、戦局を分化するリベリスタ。戦いは次の段階へ。

 理由は知らない、あるのかも分からない。だが少なくとも、この敵に殺人への罪悪感などないのだろう。顔には出さずに思う。心を見せずに思う。誰にも何と気付かれぬまま。
「後で、後悔しないといいですね」
「無論、後顧の憂いもない」
 鉄拳を既でかわす、頬の皮1枚が速度だけで切り裂かれる。流れる血を気にしている暇など無い。すぐに次の一撃が来る。
 避ける、避ける、掠る、避ける、掠る、掠る。ただ振り回されているだけにしか見えない鉄塊の、なんと複雑で怪奇なものか。攻撃パターンも見つけられず攻めに出ることもできない。かと言って強引に斬りつけようにもカウンターをもらいかねない。
 襲う上段。鼻先を焼く機械腕に気を取られ、意識のそれた腹に対の拳を叩き込まれた。たまらず転がり、咳き込むうさぎ。胃の中が回転している。ぐるぐる回る。気持ち悪い、気持ち悪い。こみ上げる嘔吐感と解放への生理反応を必死で我慢する。駄目だ、今吐くな。吐いたら戦うことが出来なくなる。心が折られてしまう。
 徐々に、落ち着いてきた。しかし未だ悶えるフリをする。ゆっくりと近づいてくるフィクサード。まだだ、まだ起き上がるな。だるまさんがころんだ。
「故に、後悔するのはお前らだ」
 声は目前、気配は直前。余裕綽々のフィクサードを前にうさぎは跳ね起き、その手の刃を振るう。一瞬、無情から驚愕へ変わる少女。ざまあみろ。

 何度目かの競り合い。釘打ち機と鉄拳が正面からぶつかり合い、フラッシュライトにも似た火花を散らす。しかし、五分ではない。大仰なパイルバンカーをものともせず、それを繰り出すソウルごとフィクサードの一打は後方へと押し返す。
 釘打ち機を地に突き刺し、後ろに飛ぶ己の身体を無理矢理に引き止めた。
 強い。自分達よりも上のレベルに居ると実感させられる。ソウルは己の獲物である巨大な止め具を盾に、次の一打を見極める。
「殺させねえ。それはいいが、自分も倒れちゃ意味がねえわな」
 防御。その意志を見るやいなや、少女は拳を振り抜いてくる。その一撃、なんと重いことか。

 肩を狙う気線。
 ヴァルテッラが放つ阻害の一糸を受け、刹那に動きを止めたフィクサードの少女に弐升が斧槍を叩き込む。少女は左の拳でそれを受け止め、右の鉄塊で打ち返す。重武器を振り抜いた隙の一撃。不可避の絶死はしかし愁哉が飛ばした式神に仍って阻まれた。
 納めどころのなくなった攻撃の体を再びヴァルテッラの気線が打ち抜き、揺らいだ身体を弐升が斬りつける。
「専守防衛ってのは、気質に合わないんですよ。力尽くでぶちのめす方が気分的にも楽ですから」
 ぐらり。リベリスタの猛攻を受け、少女が崩れかける。いける、この人数でなら。
 そう思うも束の間。
 止めをと気線を構えたヴァルテッラを、横から鉄塊が殴り飛ばした。嫌な音が2つ。殴打と、骨折。ひしゃげた腕を強く押さえ、痛みにアスファルトの上で悶え回る。元より万全でなかった身体だ。披露した精神は容易く磨耗し、意識を混濁の淵へと奥沈める。
 ヴァルテッラを横合いから強襲した少女は、消耗したもう一人の前に立ち構えた。今度は2対1。数では有利だが、果たして。

「お前達、どうしてこんなことをする!? フェイトを得ているのなら、自意識があるのなら、こんなことできるはずがない! 事情があるなら話してくれ!」
 風斗は思う。殺人を連日連夜起こし続ける少女達。きっと何か理由があるのだと。そこに至るプロセスがあったのだと。彼女らは覚醒し、本能のままに悪辣を繰り返すエリューションとは別個のものであるはずだ。ならば話してみよう、話しかけてみよう。心があれば、交わすことはできるのだから。
 努力が報われたのかと思った。機械的でさえあった無表情は取り払われ、自分と対峙したこの1人は年相応の少女の顔へと変貌している。否、戻ったと言うべきだろうか。何か言いたげな彼女を前に、武器を下げて言葉を待つ。
「親に虐待されて」
 有り得そうな理由だ。幼少期の精神ダメージは人格の形成に影響を与えかねない。何か言葉を返そうとして、異変に気づいた。
「命令されて、同級生から虐められて、性的な仕打ちを受けて。アーティファクトに操られて、アザーバイドに呪われて、大事な家族を人質に取られて。お金に困って、そういう宗派で、そういう風土で育って、罰ゲームで――なんて言ったら許してくれるの?」
 嗚呼、嘲笑われている。少女の顔は今や嘲笑に歪んでいる。理由などどうでもいいと、価値観など下らないと。
 胸に打ち込まれる鉄の拳。鈍い音。
 アスファルトを滑る前に見た少女の顔は、元の無機質な顔に戻っていた。こちらの方がまだ救われる。

 怖い。怖い。
 容赦なく襲い来るガントレットを小盾で防ぐ。防ぎきれず体勢を崩し、後ろへ転がっては構え直す。
 怖い。怖い。
 自分の本懐は後衛だ。あんなものが直撃すれば、重傷はおろか運命に引き戻されることなく絶命しかねない。
 防ぐ、避ける、逸らす。カチカチと五月蝿い歯を噛み締め、耐える。怖いけれど、怖いけれど、それでも、
「こんな物を普通の人にぶつけたのか、アンタ達はっ!」
 怒りが惰弱な精神を凌駕する。咆えろ、死への恐怖など押しのけてしまうほどに。

 瞳の消耗が激しい。フィクサード達の強烈な猛攻に回復が追いついていないのだ。
 直撃すれば即座に戦場から放り出されるほどの応酬。治癒した傍から骨は折れ、肉は弾け、心が削られていく。
 限界が近い。それは自分だけのことではなく、仲間達も同様だ。このままでは押し切られてしまう。
「私の前で人死には許さんよ」
 こんな形であったとして、意地もあれば矜持もある。
 魂を震わせろ。誰一人傷を深めるな。瞳は己を鼓舞し、底の近い魔力の壺をこじ開ける。天使の声よ、まだしばし響くがいい。

●フレアスタンプ
 続きは次回の戦争で。

 どれほどぶつかり合ったのか。金属音、殴打音、金属音、駆動音。鳴り響く戦闘のマーチ。リベリスタ達には疲労の色が濃い。だが、それはフィクサードの少女達にとっても同じことであった。
 ふいに、個別の戦いを送っていた彼女らが大きく後ろへ跳ぶ。1人は倒れかけたひとりを抱えていた。
「エネルギー限界値」
「エネルギー限界値」
「了解。これ以上の戦闘は不要と判断する」
 いぶかしむリベリスタ。
「ここまでだアーク」
「ここまでだアーク」
「帰還。故に戦争再開はまた後日」
 帰還。帰還といった。自分達を捨ておいて立ち去るというのだろうか。彼女らは殺人鬼だというのに。
「どういうことだ?」
 思わず尋ねる。尋ねてしまう。
「質問は却下」
「質問は却下」
「残念。しかしこのままで終わるのも面白くはない」
 いつの間にか、少女の内1人の外装が変わっていた。右のガントレットが砲台に変わっている。それを上に向けた、響くエンジン音。
「土産を。そうだ、あたり一面焦土としよう」
「まさか……やめろ!!」
 轟音。
 砲台から放たれた死神は、名の通り死を振りまこうと空へ、空へと昇り、破裂した。
 火花。闇夜を照らす色とりどりの火花。輪を作り、開花して消えたそれは、
「……花火?」
 唖然としてみれば、少女達は舌を出している。無表情で真意をつかむのに時間はかかったけれど。これは、からかわれたのだろうか。
「「「「「「ばーか」」」」」」
 初めて6人同時に声を聞いたかもしれない。極度の緊張から急速の弛緩、その落差に動けぬリベリスタ達にはもう振り返らず、六つ子の殺人鬼達は再び闇夜の向こう側へと消えていった。

 数秒か、数分か。
「どうやら、本当にいっちまったようだ。周りに他の気配もねえが……今ので誰か来るかもしれねえ。早いとこずらかったほうがよさそうだ」
 あの6人以外にも気を巡らせていたソウルがいう。
 そうだ、戦闘の痕跡は残っている。結界があるとはいえ万が一にも誰かに見つかれば面倒な事になるだろう。早く退散したほうが良い。
 披露しきった身体をお互いが支え合い、リベリスタ達はその場を後にする。
 釈然とはしない。だが、それでも依頼の目的は達成した。この場に置いて死者は皆無。かくして五芒星は未完成となり固執の理由もないと知れた。
 野放しにした殺人鬼達。それへの対処は次とするしかないだろう。それまでに力をつけておかねばなるまい。
 今日のような事態には、二度と陥る事のないように。
 了。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
今までで一番のほのぼの系。