● ――雨の日は、好き。 雨が傘を叩く音も、雨に濡れた町の景色も、雨の匂いも、何もかも。 お父さんとお母さんが結婚を決めたのも、雨の日だったらしい。 雨男と雨女の二人のデートは、いつも雨で。 ずっと雨続きなら、いっそのこと雨を好きになろうと、お父さんは言ったそうだ。 私が雨の日を好きになったのは、お母さんからその話を聞いたから。 雨男のお父さんは、今日、家に傘を忘れていった。 早く、駅まで届けてあげなくちゃ。 せっかくの誕生日に、ずぶ濡れで帰ってくるなんて可哀想だもの。 バースデーケーキは、私が焼いた。 お酒が飲めない分、甘い物に目がないお父さんは、ケーキにうるさい。 大丈夫、今日のは自信作。 お父さんだって、きっと喜んでくれるはず。 雨足が、また強くなる。 駅に、急ごう――。 ● 「皆、雨は好きか?」 だしぬけに問いかけた後、『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)は「まあ、好きでも嫌いでも任務に変わりはないんだが……」と言って頭を掻いた。 「雨の日、交通事故で死んだ女の子の思念がE・フォースになった。 放っておくと一般人に被害が出るから、皆にはこれの対処に当たってほしい」 裏を返せば、まだE・フォースによる犠牲者は出ていないということだ。 「女の子のE・フォースは強い雨の日に現れる。 事故に遭ったのは、父親に傘を届けようと駅に向かう途中だったらしい。 E・フォースの思考もそこで止まっているから、まともな会話はできないと思った方がいい」 本人は何も考えずに歩いているだけだが、傘を回したり、歌ったりすることで無意識に攻撃を仕掛けてくる。さらに、雨水からE・エレメントを四体生み出しているため、このまま駅に向かわせたら相当な被害が出るだろう。 「女の子が死んだ日は、ちょうど父親の誕生日だった。 ――だからかもな、想いが強く残ったのは」 数史はそう言った後、どうか気をつけて行ってきてくれ、とリベリスタ達の顔を見た。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月25日(金)23:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 雨足は、次第に強くなりつつあった。 雨に濡れた街が灰色に沈んでいく中、ただ雨音ばかりが響いている。 「父親を迎えに行くために出かけた少女の思いがE・フォースとなっても尚、生き続けるのですね」 周囲に人除けの結界を張るアルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)の言葉に、安羅上・廻斗(BNE003739)が答えた。 「まるで幽霊だな。よくよく、こういう手合いに縁があるようだ」 降り注ぐ雨が、彼らが纏っている雨合羽の表面を叩く。 黒いコート姿で雨の中に立つ『不屈』神谷 要(BNE002861)が、静かに口を開いた。 「彼女は自分の死を理解できずに彷徨っているのですね。 お父さんの誕生日という幸せな日を迎えるために……」 「こんなになっちまっても親父さんを迎えに行くってか。きっと仲良かったンだろうな」 そう言って、『ステガノグラフィ』腕押 暖簾(BNE003400)が僅かに目を細める。 出発前、彼はE・フォースになった少女について調べていた。 少女の名前は、木内雨音(きうち・あまね)。 雨の中、傘を差して駅に急いでいたところ、横道から飛び出した車に撥ねられたらしい。 「……悔しかったろうなァ」 暖簾の呟きを受けて、『骸』黄桜 魅零(BNE003845)が言う。 「滑りやすいのに、走っちゃったりして…… お父さんに会いたかったんだね、早く、早くって」 死してなおE・フォースとなり、雨の日を歩き続ける少女。 その想いは、どれほど強かったのだろうかと、四条・理央(BNE000319)は思う。 「よほどお父さんの事が好きだったんだね。だけど、その想いは潰さないといけないんだ」 アルフォンソと魅零が、理央に頷いた。 「悲しいことだと思います。健気なことだと思います。 でも、その行き場の無い思いは私たちが終わらせてあげないと」 「成仏しなきゃ。永遠に死を繰り返すのは、可哀想だね――終わらせよう」 少し考え込むような表情を見せていた廻斗が、それを聞いて声を上げる。 「……まあ、いいか。 相手がどんな存在であろうと、それが害為すエリューションならば討ち滅ぼすだけだ」 帽子の位置を直した『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)もまた、銃を手に口を開いた。 「不運が重なり死を迎え、肉体が朽ちた後も想いは残る。 だが、想いは想いのままだから儚く、そして尊いんだ」 理央が全員に翼の加護を与え、足場の不利を打ち消す。 脳の伝達処理を高めた『名無し』氏名 姓(BNE002967)の黒い瞳が、傘を差して歩く少女と、彼女の周囲に浮かぶ四体のE・エレメントの姿を捉えた。 「ハーッピバースディトゥーユー、ハーッピバースディトゥーユー♪」 魅零の歌声に、時を止めてしまった少女が振り向く。 『今日はお祝いなの。一緒に、歌おう?』 両手持ちの槍を構える魅零は、目の前で微笑む少女のように傘は差せない。 だが、彼女もまた、雨を愛する者の一人だった。雨に濡れることを、厭いはしない。 ――貴女の死を悼むために。さ、戦おう。 ● 低空を滑るように駆けた廻斗が、巨大な水滴の如きE・エレメントの一体を抑えに回る。 「哀れな娘、雨の亡霊。お前を討ちに来たぞ」 彼は低く声を響かせると、少女とE・エレメントたちを巻き込んで暗黒の瘴気を放った。 すかさず、福松が“オーバーナイト・ミリオネア”のトリガーを連続で絞り込む。 黄金に輝くダブルアクションリボルバーから飛び出した幾つもの弾丸が、全ての敵をほぼ同時に射抜いた。 アルフォンソが攻撃のための動作を全員と共有し、戦闘効率を瞬時に高める。 背の翼でふわりと浮いた要が少女の前に立ちはだかり、強き意志をもたらす十字の加護を仲間達に与えた。 「事故に邪魔されて俺達に邪魔されて、辛ェだろうが……」 癒しをもたらす生命力を自らに付与した暖簾が、相棒たるスペードの女王“ブラックマリア”を構えて見得を切る。 「往くぜマリア、このお嬢さんの名誉の為に」 誇りを胸に運命を引き寄せた暖簾の傍らで、姓が少女の頭上に浮かぶE・エレメントを気糸で撃った。 中心を貫かれた水の球が、怒ったように表面を波立たせる。 そこに、少女の歌声が響いた。 呪力によってもたらされた豪雨が、リベリスタ達を激しく叩く。 E・エレメントたちの半数が水の弾丸を撃ち、残りの半数が廻斗と姓の顔に覆い被さった。 状態異常の効かぬ姓は窒息を免れたものの、廻斗の動きが止まる。 それを見た理央は邪を払う神の光を放ち、その輝きをもって廻斗を救った。 同時に、呪いの雨がもたらす重圧から解き放たれた魅零が、魔閃光でE・エレメントを貫く。 「貴方達を退けないと、彼女に届かないじゃない」 自己再生能力を持つ少女を後に回し、まずE・エレメントから確実に倒していくのがリベリスタ達の作戦だった。 「六体までなら問題ない。一瞬で撃ち抜いてみせるさ」 その言葉通り、福松はE・エレメントたちに弾丸を叩き込んでいく。 雨で視界が遮られている不利をまったく感じさせない、速く正確な射撃だった。 アルフォンソが、戦場全体を視野に収めて己の認識を広げる。少女をブロックする要が、攻撃を跳ね返す防御のオーラをその身に纏った。 「どいてくンな、お嬢さんに用があンだ」 暖簾がE・エレメントを指差し、黒紫の銃指から不可視の殺意を撃ち出す。 弱い部分を的確に貫かれたE・エレメントが水風船のように弾けて霧散した。 眼前の敵が倒されたのを見て、廻斗は次にダメージの大きいE・エレメントの元に向かう。彼の生命力を糧にした暗黒の瘴気が敵を包み込むと同時に、姓が比較的傷の浅いE・エレメントに向けて煌くオーラの糸を放った。 このメンバーで、E・エレメントの包み込みを無効化できるのは姓だけだ。一体でも多く攻撃を引きつけ、仲間達を守るつもりでいる。 スカイブルーの傘を差し、反対の手で大きなカーキの傘を携えて。少女は、楽しげに歌声を響かせる。 激しく打ちつける雨の中、怒りに我を忘れた二体のE・エレメントが姓に水の弾丸を撃ち、残る一体が福松に襲い掛かった。あらかじめ敵の攻撃が顔面を狙ってくると読んでいた福松は、すんでのところで直撃を逃れる。 「体力の回復はボクが。神谷さんはブレイクフィアーをお願い」 専任の癒し手として体力と状態異常の双方を気にかける理央が、天使の歌を奏でながら要に声をかけた。肩越しに頷きを返した要が、仲間達を蝕む痺れと重圧を聖なる輝きで消し去る。 まだ怒りに囚われていないE・エレメントに向け、アルフォンソが神秘の閃光弾を投げた。味方を巻き込まぬように絶妙の位置へと放られたそれが炸裂し、残る一体の動きを封じる。 「こっちばっかはアレだ、公平にいこうぜ?」 一方、暖簾はE・エレメントとの距離を詰めると、心身を砕く魔力の眼光で一体を射抜いた。敵が僅かに動きを鈍らせた隙を逃さず、福松が“オーバーナイト・ミリオネア”の早撃ちで怒り狂う二体のE・エレメントを沈める。 敵が数を減らしたのを見て、廻斗が歌い続ける少女に駆けた。 激しい雨を掻い潜り、赤く染め上げたサーベルを真っ直ぐに繰り出す。僅かに狙いを逸れた刀身が、少女の肩を掠めた。 雨に打たれた仲間達を、理央が天使の歌を奏でて癒す。閃光弾の直撃を受けて動けぬE・エレメントを魅零の魔閃光が包んだ直後、姓の気糸が止めを刺した。 ● 雨はまったく止む気配を見せず、少女は歌声を響かせ続ける。 弾んだ調子のメロディーや明るい歌詞とは裏腹に、恐るべき破壊の力を込めた豪雨がリベリスタ達を襲った。 全身を強く打った魅零が、ぐらりと宙によろめく。 遠のきかけた意識を、彼女は己の運命を引き寄せて繋いだ。 頭から足の先までずぶ濡れになりながらも、福松が少女との距離を詰める。 「お前に罪はない。そして、これから罪を犯させはしない」 激しい雨の中でも白さを失わないシルクストールを靡かせ、彼は拳を繰り出した。 少女が翳すスカイブルーの傘ごと、強烈な打撃を叩き込む。 グリモアールを片手に携えたアルフォンソが神秘の刃を空中に放ち、少女の白い肌を裂いた。 先の雨で廻斗の動きが鈍っているのを見て取り、要は迷わずブレイクフィアーの聖なる光を輝かせる。 自動的に傷を癒す能力を備える少女との戦いで鍵になるのは、回復を封じる技を持つ廻斗の存在だ。彼を守り、その攻撃を支援することが、勝利への近道になる。 廻斗もまた、己が重要な役割を担っていることを承知していた。 確実に致命の一撃を当てるため、彼は自らの神経を研ぎ澄まし、集中を高めていく。 「お嬢ちゃんどこに行くのかな?」 前に出た姓が、少女の動きを鋭く読みながら彼女に話しかけた。 これ以上、歌を連発されては後衛に立つ魅零やアルフォンソが危うい。まともな会話は期待できないにしても、喋らせることができれば歌は止められるかもしれない――。 『駅まで行くの。お父さんのお迎えに』 「お父さんを迎えに行くの? 偉いねえ。お父さんの事が大好きなんだね」 微笑んで答える少女の瞳は、どこか虚ろで。姓は、そんな彼女の急所を狙って“氏屍”を繰り出す。 幾多の名に塗り潰された黒い卒塔婆が、少女の鳩尾を打った。 「――雨音お嬢さんよ」 暖簾が、少女の名前を呼びながら前進する。 僅かに視線を動かした彼女に、彼はそっと語りかけた。 「親父さんは駅にゃ居ねェ、お前さんはもうこの世のもンじゃねェ」 『? お父さんが、駅で待っているの』 不思議そうに首を傾げる少女。 声は聞こえても、言葉は彼女に届かない。それは、最初からわかってはいたが――。 何にしても、自分達にできるのは彼女の幕を引くことだけだ。黒紫の鉄甲を纏う暖簾の拳が、少女を打つ。 「気づいて、貴女は死んでしまったの。もう、その傘は誰にも届けられない」 カーキ色をした、男物の大きな傘。それを大事そうに持つ少女を魔閃光で撃ちながら、魅零は声を投げかける。少女はまだ、首を傾げたまま。 雨に奪われた仲間達の体力を取り戻すべく、理央が癒しの福音を響かせた。 その直後、少女が手にしたスカイブルーの傘をくるくると回す。瞬時に生み出された真空の刃が、凄まじい勢いで前衛に立つリベリスタ達を切り裂いた。 一度、二度――立て続けに強烈な斬撃を喰らい、廻斗と姓が膝を折りかける。 「……勝負はこれからだ」 廻斗が運命を燃やして自らを支えると、姓もまた、己の運命を代償にその場に踏み止まった。 深手を負った廻斗を庇うべく、要がフォローに入る。機転を利かせた福松が黄金のダブルアクションリボルバーから不可視の殺意を放ち、少女の頭部を撃ち抜いた。 生じた一瞬の隙を逃さず、廻斗が赤き魔具と化したサーベルを構える。 庇われながら戦うのは慣れない。だが、それが仲間の役目であるならば――自分は、敵の癒しを阻むという己の役目を果たすまで。 充分な集中から繰り出された鋭い突きが少女を捉え、雨による自己再生能力を封じる。 あとは、攻撃を集中させて撃破するのみ。 雨の中に立ち止まったままの少女を真っ直ぐに見据え、廻斗は思う。 死んだことに気付かず、何度も同じことを繰り返す哀れな魂。 それを討ち滅ぼしてやるのも、ひとつの救いだろうか――と。 彼はすかさず、首を横に振った。 「……いや、これは救いじゃないな。終焉……だ」 伊達眼鏡のレンズに纏わり付く雨滴を払う理央が、天使の歌を奏でて仲間達の傷を癒す。 体力の回復と状態異常の解除、その双方を可能とする彼女の責任は重大だったが、理央は状況把握に努めることで己の役割をまっとうし、時には仲間の手を借りて全員に回復を行き渡らせていた。 「もう少しだよ。回復は任せて」 理央に背中を支えられて、リベリスタ達は少女に攻撃を集中させる。 姓の黒い卒塔婆が、少女の急所を打った。 「この先工事中で通れないの知ってる?」 問いかけとともに、姓がやや後方に下がる。 『お父さん、待ってるもの』 首を傾げる少女に、魅零が大きな声を上げた。 「貴女は、死んだの!」 暗黒衝動を秘めた闇のオーラが、少女の脇腹を抉る。 『迎えに、行かなくちゃ――』 宙に視線を彷徨わせたまま、少女は再びスカイブルーの傘をくるりと回した。 鋭い斬撃が前衛たちを切り裂くも、彼らを倒すには至らない。 「もう、迎えに行かなくても良いんだよ」 神秘の刃で少女を狙い撃つアルフォンソが、彼女に優しく語りかけた。 「お父さんは君のために祈り続けていると思うから。 君はもう、その思いを抱えていつまでもこの場に居なくても良いんだよ」 『どうして? だって、今日は……』 黒紫の銃指を握り締め、暖簾が声を重ねる。 「もう行かなくていい、もう行けねェンだ。向こうで見守ってやりゃあいい」 固めた拳が、少女の胸を貫いた。 その瞬間、雨の音が急速に勢いを失っていく。 ――ごめんな、おやすみ。 暖簾の囁きに、少女はただ瞬きを返して。なおも何かを言うように、唇を僅かに動かす。 要が、そっと口を開いた。 「大丈夫、これは夢ですよ。幸せな貴方に少しイジワルしたくなったのです」 『……夢?』 少女の声に、要は「ええ」と頷く。 「次目を覚ましたときにはきっとそこは晴れているでしょう。 だから、今はゆっくり休んでください――」 要の言葉を聞いた少女は、儚げに微笑んで。 小降りになった雨の中、その身を跡形もなく散らせた。 ● 少女の消滅を見届けたリベリスタ達は、事故現場に花を供えることにした。 「……また化けて出られても面倒だからな」 ぶっきらぼうに言う廻斗に、福松が答える。 「まあ、二度目の最期を看取った身としては、な」 道路の隅に菊の花を供えた魅零が、その脇にぬいぐるみを置いた。 それらは、少女のために彼女が選んだもの。 「綺麗でしょう?」 少女の声は、もちろん返ってはこないけれど。 旅立った先で彼女が幸せな夢を見られるようにと、要は願う。 暖簾が、少女――木内雨音の名を呼び、その冥福を祈った。 「確かに雨の日もいいもンだな」 そう言って上を向いた暖簾の視線を追い、理央も空を見上げる。 雨足は、大分弱まりつつあった。 しっとりと濡れた街が、柔らかな雨の匂いを帯びている。 「……こういう形でなければ、この子の姿も微笑ましいものだったんだろうね。 事故さえ無ければ、迎えに行く娘がいて、それを喜ぶ父親がいて」 沈黙を保っていた姓が、誰にともなく呟いた。 体が、やけに重く感じる。それは、濡れた雨合羽の表面を流れ落ちる水滴や、じわりと纏わり付く湿気だけが原因ではないのだろう。 そして、姓は思う。 自分にもそういう風に迎えに来てくれる人がいたら、少しは雨が好きになっただろうか――と。 空を覆う灰色の雲を透かし見るように、姓は目を細めた。 「……けど、ただ単純に、晴れた青い空のほうが、私は好きだよ」 囁く声は、雨音の中にそっと溶けていく。 全てが終った後、アルフォンソと魅零は少女の家に向かった。 バースデーカードを収めた封筒を、アルフォンソは家のポストに投函する。 父親の誕生日を祝えなかった少女の想いを代わりに届けることで、彼女がもう思い残すことのないように。 カーキ色の大きな傘を玄関に立てかけた魅零が、インターホンを押す。 急ぎ立ち去った二人の背後で、玄関のドアが開く音がした。 あの日、少女が届けられなかった傘は、今度こそ父親のもとに届くだろう。 悲しみに暮れる両親に少女が贈った、最後のプレゼントとして。 「止まない雨はないって、誰かがいってた――」 ふと立ち止まり、魅零は頭上を見上げる。 雨はいつの間にか止み、夕暮れの空に薄く晴れ間が覗いていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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