●陽気な銀行強盗 銀行の中はソワソワしていた。 玄関口に怪しげな二人組がおり、その二人組が来る客来る客を威嚇するように睨むからだ。そのふたりは巨漢と小男という組み合わせで、どちらも黒いスーツに丸いサングラス、鍔の長い帽子被っていた。まるで、コミックや映画から抜け出たような、絵に描いたようなギャングである。雰囲気もカタギではなさそうだし、先程からこの男達は何やらひそひそと話をしているではないか。銀行員もこれには困ったもので、営業妨害ということで警察に連絡するかどうかを迷っていた。なので、ソワソワしているのである。 「アニキ、アニキ」 巨漢の方が、ぶるぶると震えながら小男をそう称する。どうも関係は見た目通りではないようで、巨漢はその体を小さくしながら小男の様子を何度か伺っている。 「わかってる、わかってる。客も居なくなったことだし、そろそろ大アニキの命令通り、事を進めるとするか」 小男は蛇のような眼を細めて、懐からナイフを取り出す。それを見ていた銀行員があっ、と声を挙げる。それに見せつけるように、小男はナイフを床に深く突き刺した。もちろん、床は土でもなければ砂でもない。だというのに、まるでバターのように刺さった。 そのナイフは威嚇や、“これから何かをする”という宣言の意味もあるが、彼らにとってはそれ以上の意味がある。外部からの意識を逸らすことができる能力、強結界。そう、彼らはフィクサードなのである。 強結界が張られたのを確認して、ふたりと同じような格好をした、カタギではなさそうな男達が拳銃を持って銀行の中に雪崩込んでくる。明らかに、統制された動きであった。 「アニキ、アニキ。お、俺もなにかやっていい? やっていい?」 巨漢が震えながら言う。どうも、この銀行強盗という行為に興奮しているらしかった。だが、それを小男が止める。 「止めておけ、お前がやると……」 「うぉぉぉ!! 我慢できなぁい!!」 しかし、巨漢は制止を聞かず、力いっぱい拳を突き出した。突き出した拳は壁にぶち当たり、壁を壊して大きな穴を空けた。壁を開けるほどの威力は爆音と風圧を呼び、それによって銀行員のほとんどが気を失ってしまった。 「お、おい馬鹿! これから人質を取るっていうのに穴をあけるヤツが居るか!」 「ご、ごめんアニキ……。つい、興奮して」 頭をかきながら、ぺこぺこと頭を下げる巨漢。どこかコミカルな図であるが、気を失わなかった銀行員たちにとっては恐怖そのものでしかない。仕方ねぇな、と小男はそっとナイフを取り出して、銀行員に迫る。カタギでない眼力に込められた、迫力は尋常ではなく……銀行員に対する恐怖は増大し、そのショックで残った銀行員も気を失ってしまった。 「これから、ちょっと人質になってもらいます。下手に騒げば……分かってますねぇ」 眼光が鋭く銀行員に突き刺さる。 「といっても、もう気絶してしまいましたか」 どうやら、本気ということは間違いないようだ。とてつもなく大きい相手の、本気。 ●今行われている銀行強盗 モニターから送られてくるリアルタイムの状況を確認しながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は早口に言った。状況は一刻を争うようだ。 「現在、とある市内の銀行にフィクサードたちが立て篭もっている。結界の力が強くて、それに気付いているのは私たちだけ」 ふう、と。真白イヴは小さな口でやはり小さく息を吐いてから、任務の内容を確認する。 「今回の任務は、銀行内にいる人質を救うこと。相手は強いみたいだから、無理して戦わなくてもいいからね」 なぜ正面から戦う任務ではないのかと、リベリスタのひとりがイヴに問う。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 すると、頻発しているフィクサードの事件絡みではないかという推測があるためだという。その為、リベリスタも慎重に動いて欲しいとのこと。 頷いてから、改めてフィクサードが映るモニターを見上げる。そこには、見張りのフィクサードが六名と、ロープで縛られた銀行員が五名。それから、玄関口に立っている小男と巨漢。 それから、地図を見る。それほど銀行の中に入るには、通風ダクトや玄関口、巨漢が空けた壁を使えば入れそうだ。ただ、銀行自体はそれほど広くはないため、隠れる余裕はなく、すぐに見つかってしまうだろう。電撃作戦が必要なようだ。 何をするにせよ、目立つ巨漢と小男のコンビが厄介になるとリベリスタたちは思う。あのふたりの能力は別格であると感じるからだ。 「危険に晒されている普通の人を助けるためにも、お願い」 真白イヴもまた、今起こっている状況を映し出しているモニターを見ながら言う。手はぎゅっと握られており、真摯な眼は心配を表している。 任せな。そう、誰かが言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:52 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●得体の知れないフィクサード 現れた謎のフィクサードが占拠した銀行より少し離れた落ち着いた場所。そこに、リベリスタたちの姿はある。タイミングを伺っているのだ。 今回の依頼の相手……フィクサードの集団は不可解な敵であり、相手が何を考えているのかわからない以上、こうして覗いているのだが。そのフィクサードたちの姿はどう見ても銀行に籠城する銀行強盗のそれだ。映画やTVなどではよく見る光景ではある。 「実戦の緊張もあるが……何より相手の目的が見えないのが不安だ……。銀行強盗とは言うが、盗みや人を殺すのが目的とは思えない」 普段ならば柔和な表情を浮かべている『夜波図書館の司書』ハイデ・黒江・ハイト(BNE000471)も、作戦前の緊張感と相手の考えが分からない不安感から、固い表情を浮かべていた。 考えを払うように、ハイデは髪の毛を指で払う。途中バレッタで指が引っ掛かれば、バレッタを腹で軽く叩きながら思案を始める。しかし、分かるのは厄介な事件であるということと、人質救出が最優先であるということ、それから……敵が強いということだけ。 「……うむ。駄目で元々。これから何をするつもりかと、銀行強盗達に尋ねてみよう」 一人頷き、固くなっていた表情を柔らかくしていく。そう決めたのなら、不安にも負けない。 「銀行襲うなんて金に困っとるんやろか?」 受け取っていた銀行の全体図と睨めっこをしながら、オペラのような美声を振りまく『唄歌いのマイゼル』ユーレティッド・ユール・レイビット(BNE000749)だ。愛用の毛糸の帽子に片手を置いて、同時に疑問も振りまく。それは、先にハイデが思案したものと同じだ。皆同じような気持ちを持って、この作戦に臨んでいるのである 「だからといって目の前の事件は見過ごすわけには行かない。リベリスタですものね」 しかし、今は現実だ。ならば、まずはこのレトロな相手を何とかして、最近漂っているイヤな空気を少しでも払拭しなければならない。そう、『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)は髪を撫でながら思う。その日は風が吹いていなかったが、その髪は糾華のゆるやかな決意に呼応するように、可愛らしく波打った。 「しゃーないなー、今回は特別無料奉仕でお手伝いいたしますゥ。何が目的か知らんけど、一般人巻き込むなんてけったくそ悪いしな」 ユーレティッドは愛用のマフラーを一度撫でてから、八重歯を覗かせる。少しケチくさい覚悟であるが、彼なりのスタイルがそこにあった。 「そうそう、今は目の前の物に対処するだけだね。さてさて、今日も一つの不幸を摘みに行こう」 さあ、救出といこうじゃないか。と両手を挙げて『サマータイム』雪村・有紗(BNE000537)のポニーテールが空を舞った。愛敬のよい顔からは、救えるものを救わないといけないという使命感が伺える。同時に、敵は倒さなければならないというドライな部分も。 「あーしには仲間がいる、ハイデもっ! 帰る場所もある。人によっては小さな、ほんの小さな幸せ。それを守るためにあーしは全力で戦うっ」 猫のように瞳孔を丸め、今にも動き出しそうにしているのは『さすらいの猫憑き旅人』桜 望(BNE000713)だ。にははっ、と笑う彼女の背には不安はない。自分にできることを精一杯やるだけ、という単純だけれども、強い一本の芯がそこには見えた。 そんな望や有紗に釣られるように、ハイデたちも自分たちのやることを確認し、それに全力を尽くすことを考える。今回の作戦内容は、ひとつ。同時に別口から襲撃し、それぞれの役目を果たして、人質を救出し逃げてしまおうというものだ。何事も人命が第一だ。 作戦開始の合図は携帯電話が握っている。それぞれの合図があれば、一気に侵入する手筈である。 皆の顔に緊張と笑顔が走って。それから決意が瞳に宿る。 「果報は寝て待て。カレーは三日目。……さて、そろそろ時間だろうね」 独特な例えをしながら、ハイデは小さくウインクをする。作戦開始だ。 作戦の為、狭いダクトを匍匐前進で進んでいた『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)と『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)は、お互いに埃で汚れた尻尾を見て声を出さずに笑っていた。相手の意図は見えなくても、こうして目線を合わせれば仲間の心はわかる。 静は思う。 (あいつら何してんだ? アークの知名度も上がってきたことだし。リベリスタをおびき寄せようとしてるんだったりしてな? ) だとしたら、この事件は静たちリベリスタに対する挑戦状なのだろう。試験と言い換えてもいいかもしれない。しかし、どんな理由であれ人質が居て、困っている人が居るのは確かだ。だから、理由なんて関係ない。 (人質を絶対救出するぞ!) 心の中でポーズをとる。そんな心を表情から察しているのか、玲はころころとした可愛らしい笑顔でそれを見守っている。 そんなふたりは突入口付近に辿り着き、合図が行う。こうして、作戦が三か所で同時に行われた。 ●1on1 銀行の正面玄関。日を浴びて、ポカポカとした陽気にうとうとしていた巨漢は、耳を尖ったもので突かれてハッと目を覚ます。もう食べられない、と思考が浮かびそうになった時に、彼が敬愛しているアニキの声が聞こえた。 「この大事に寝てるんじゃない。ほら、来たぜ」 もちろん、巨漢を起こしたのはこの小男だ。小男は指先に光る尖ったもので道を指し示すと、その先には巨漢にも負けないほどの大きな男性と、堂々と歩いてやって来る細身の女性がやって来た。手にはガントレットにグレートソード。カタギではないのは誰の目にも明らかだ。 「おお、来た! 来た! アニキの言った通り!! すごい!!」 巨漢は興奮して、厚い自身の胸板を何度か叩く。小男は顎に手を当てて、何かを考えるようにしている。 「……複雑じゃのう。あのふたりを見ると、近所の子を思い出す」 やって来た男性――『眼鏡っ虎』岩月 虎吾郎(BNE000686)はそんな様子を遠目に見ながら、自身の指二本ほどの大きさしかない伊達眼鏡を動かして感想を述べる。その筋肉だらけの体は高い背も相まって、凄まじい威圧感を周囲に与えていた。 「たのもーたのもー、銀行強盗諸君! 君達は完全に場違いである! 早急に立ち去って頂こうかな!」 やあやあ、と挑発するような声を大胆に挙げながら突撃するのは、有紗だ。手にはグレートソードを持ち、その身は闘気に包まれている。 「おおっ、来た! 来たよアニキ!」 「黙って戦え!」 文句を言いながら小男はちらりと背後の銀行内部を確認する。たったふたりで正面突破をするというのは、よほどの蛮勇か、もしくは作戦だろうと当たりをつけたからだ。 事実、音が聞こえた。だがしかし、それに対応しようと動き出すことはできなかった。目の前に迫った虎吾郎がその体を掴み、反対側に投げて来たからである。 「もう少しわしと手合わせしてくれんか」 くるりと空中で身を捻ってから着地をしながら、小男は舌打ちをする。 「仕方ねぇ。相手をしてやるよ」 小男は舌を鳴らし、眼に力を込める。逃がす気はないと分かった以上、立ち向かうしかないだろう。 「ほらほらそこのでっかいでくの坊! 小さいお人のお言葉なしでは動けないのかな! 自分の頭がついてるならば、こっちへかかっておいでよ!」 有紗は挑発を重ね、指をクイクイと動かして巨漢をおびき寄せる。これに巨漢は釣られて、怒りを言葉にできない擬音のような声で表現しながら、その巨体を揺らし有紗へと向かい始めた。それに小男は頭を抱えながら、指示を飛ばそうとするが、虎吾郎がお大声を上げたためその声は通らない。 「何を言ったのか教えてあげる! やるしかないってことだよ!」 オーララッシュを飛ばしながら、有紗のバックステップに合わせてポニーテールが揺れる。 陽動は始まったばかり。有紗と虎吾郎はとりあえず引き寄せることに成功したから、後は仲間たち次第。 ●救出開始 黒服たちは僅かに焦っていた。どこかで戦闘の音が聞こえ始めている。となれば、次は――。 「いよぉぉぉし!! 逃げんなやぁ――っ!!」 来た。しかも、叫び声と共にマジックアローが。反応が遅れた黒服のひとりはそれが突き刺さり、武器を構えるのに一瞬遅れた。だから、目の前に風のように現れた引き締まった女性の体から放たれた幻影剣をまともに受けて倒れてしまった。 「ふむ、まず最初はこんなところだろうか」 最初の一撃は仲間に当たらぬように配慮されたユーレティッドのスキルであり、二撃目はハイスピードにより強化されたハイデが放ったスキルだ。 「貴方達の暴挙はここまでよ!」 彼らリベリスタたちがどこから来たかといえば、先に巨漢が空けてしまった壁の穴からである。なだれ込んできた糾華と望は、それぞれのスキルを使って黒服たちの相手をしようと飛び込んでいく。 「こんな事したらダメやよっ」 そのうち跳躍して黒服の一人を押し倒した望は、そのままギャロッププレイによってマヒをさせることに成功した。その黒服に向かい、メッとした顔でデコピンを一発。 しかし、黒服たちもただやられたままでいるわけではない。統制の取れた動きを四つの拳銃が構えられ、一斉に向けられる。その上、引鉄を引こうとする動作までもが同じであった。 「そっちが連携で来るのなら、こっちも連携でお返しだ!」 「ちゃんと無事に逃がすからね!」 しかし、リベリスタの連携は引鉄を引くよりも早い。ダクトから這い出て、後ろに回っていた静と玲がメガクラッシュと業炎撃の連続攻撃でひとりを吹き飛ばし、そのまま戦闘不能にした。これで残りの黒服は三人。もう一人減らしておきたかったところだけど、十分な人数だと玲は考える。静と玲はお互いに頷き合うと、人質の方に向かって走り出した。 黒服は拳銃を使って静と玲を撃つものの、連携を崩され三人まで減らされた黒服の攻撃は大したダメージにはならない。しかし、痛かった。静と玲は痛みに耐えながら、人質を担いで走り出す。 黒服たちは再び拳銃を連続発射しようと構え直すが、その射線上には回復のスキルを準備しているユーレティッド。 「絶対に一般人に危害は加えさせないっ」 そして両手を広げた望が、文字通り体を張って立ちはだかった。ちょうど入ってきた日差しによって抜群のスタイルが日に照らされて銀行内にシルエットを映し出し、次に彼女の覚悟を表す背中が照らされる。太陽を背負う格好になった彼女の眼には、黒服たちに対する慈愛すらあったのである。 ●脱出 状況は刻一刻と変化している。 まず、人質のうち二人までは外に運び出すことができた。後はハイデが呼び出した救急車に回収されるだろう。残りは三人、作戦完了は目の前と言えるだろう。 そこまではいい。だが、巨漢と小男は想像通りの強敵であった。 「うぐっ……若いの、やるのう!」 「っ! ……図体ばかり大きくて総身に知恵が回りかね! ああみっともないみっともない!」 両手を前で交差した虎吾郎の防御と、グレートソードの刀身を盾として構えた有紗の防御を巨漢のスキルは打ち崩して吹き飛ばしたのだ。小男の方も、巨漢をサポートするように、睨むことでダメージを発生させていっている。 虎吾郎と有紗はまだまだ、という言葉を表情に貼り付けながら立ち上がる。人質救出はもうすぐなのだ、膝を付く時間も惜しい。 「貴方達は何があっても足止めさせてもらうわ」 その言葉に合わせて糾華の世界への諦めと疑いが混じり合った目は引き絞られ、ゴスロリの服は黒と白がはっきりとしたコンストラストを表現しながら巨漢の前に降り立つ。足止め組の助太刀に入った糾華のハイアンドロウは、巨漢の体に吸い込まれる。 「木偶の坊、独活の大木。こっちの方が組し易いかしらね? ほら、あっちはネズミや蛇みたいだもの。あらやだ怖い」 くすくす、と笑い声まで追加して。挑発をしながら有紗と共に、できる限り小男の視線を避けながら巨漢を相手取る。 彼女ら三人の背後では、ハイデ・静・玲が人質を抱えて走り出し、それを狙う黒服を相手に望とユーレティッドが立ち回っている。勝利はすぐそこだ。 「あ、あ、アニキ!」 「……分かっている! 思ったよりもやるな!」 それに勘付いていながらも、目の前のリベリスタを突破できない小男と巨漢は焦ったような声を出す。ハイアンドロウを決めた後は、全力防御に徹する糾華とオーララッシュを止めてこちらも防御に徹した有紗が壁となって、時間を稼いだ。彼女らを無視しようとすれば、虎吾郎が攻撃を加えてくるため、壁を無視することもできない。 「ふんっ! これぐらいでは、わしは倒されたりはせんのじゃよ」 巨漢と小男のスキルは虎吾郎を一度倒すだけに留まり、救出の時間を稼ぎ切ることには成功する。リベリスタたちの勝利だ。 「それじゃあね!」 「これで私たちの勝ち……さよなら」 糾華は髪を舞わせながら下がっていき、有紗が防犯ベルを叩いて走り去る。 「お主、自分がやっている事が悪い事だと解っておるのか?」 同じように虎吾郎は逃げる直前、最後の最後で巨漢に問う。純粋そうな巨漢の姿を見て、その真意を確かめたくなったのだ。 「あ、アニキ。わ、悪いこと……なのか?」 「ああ、悪いことだよ。俺たちは銀行強盗だ」 開き直ったような顔をして、小男がズボンのポケットから一円玉を取り出し、指で弾く。弾かれた一円玉は、殿をしようとマジックアローの体制を取っていたユーレティッドの顔に当たる。 「お金を粗末にしたらあかんて」 その一円玉を掴みながら、ユーレティッドはマジックアローを放ってから逃げ出した。 「逃げるよ!」 最後に玲の斬風脚が小男に飛ばされて、リベリスタたちは逃げ出すことに成功する。相手の黒服をほとんど倒せたことからか、追撃はなかった。 ●おかえり 逃げる直前、ハイデは宣言通りに聞いていたが、答えは小男の薄い笑いだけだった。 結局、相手の目的は分からない。 しかし、今は戦いと救出の疲れが体中に溜まっており、遠くから救急車が近づく音が聞こえている。 まずは、帰らなければ。帰って、「おかえり」を聞かなければ次は始まらない。 だから、リベリスタたちは疲れた体を引っ張りながら、帰路についた。胸の中に人を助けたという満足感を抱えながら。 後に聞いた話では、銀行から盗まれた金額の総計は一円だけだという。ますます訳がわからない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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