●異界の食事 ――気付いた時にはもう遅かった。 「あ……う、ぁ……?」 意識がハッキリしない中、地に倒れている女性の瞼が緩めに開く。 ……ここは? そう思考する中、自身の腹部を何かに舐められている感触を感じた。 何事かと視線を巡らせれば暗闇の中に妙な物体がある。犬や猫の類では無い。 なんというか、アレは、そう――スライム、の様な…… 「――ひっ」 その時だ。気付いてはいけない事に気付いたのは。 腹部に張り付いているスライムに舐められているのは肌では無い。 いやまさか、そんな馬鹿なと思考を掛け巡らせるが、それはただの逃避だ。 分かっているのだ。だが分かりたくないのだ。まさか、まさか舐められているのは―― 「ひ、ぃ、あ、え」 自身の体の内側――内臓だ。 皮膚を喰い破り、化け物は女性の内臓を舐めている。 味わう様に無数の舌で転がしながら、肉を舐め取っているのだ。ゆっくりと、ゆっくりと血管を掻き分け、流れ出る血液を呑み込んで、そうして内臓だけを綺麗にすれば、 「ガ、ぁ、あ――?!」 鋭利に尖った歯で――すり潰した。 “何か”潰れる音が体を伝って耳に届く。繊維の千切れる音だ。 ただ、不思議な事に“痛みは一切無い”。体を内から傷つけられ、蹂躙されていると言うのに痛みは無いのだ。柔い感触だけが脳に届いて“喰われている”という事態を正確に把握させているにも関わらず。 そしてそれはとてつもない吐き気を女性に与えていた。なまじ喰われている感触があるのに体が自然に発する警告文“痛覚”は一切の反応を見せず、この状況を見過ごしている故に――女性の精神はこの時点で限界にまで達していた。 「う、げぇ――あ、あ、あぁぁ、あ、あ……!?」 だが狂えない。理由は分からないがとにかく“狂えない”のだ。 叫び散らして助けを求めたいのに声は出ず、口の端から漏れるのは弱々しい悲鳴だけ。 それに反比例する形で脳だけは鮮明に自分の喰われる状況を捉えているのに、何故なのか体は“危険信号”を一切発さない。故に狂えず、故に苦しみだけが永遠と続いて、 「だ……だずけ……」 言葉は悲壮に紡がれるも彼女は――この後、24時間苦しみは続いた末に絶命する事と成る。 ●無感覚の恐ろしさ 「麻酔とは便利な物だな。痛みを抑えるが故に、医療では非常に役立っている」 そんな言葉から会話を始めたのは『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)だ。 一体何を意味しているのかと言われれば無論、 「奴の能力だとも。スライム形状のアザーバイドたるコイツは、人の体に麻酔を撃ち込む。そうして抵抗できなくなった人間をゆっくり咀嚼する訳だ。映像の様にな」 指し示すモニター映像においては、犠牲者となる女性に群がる複数のスライム達がいた。 女性そのものは抵抗しているのだが、非常に動きが鈍い。説明の通り、襲撃されて麻酔を撃ち込まれたのだろう。段々と包囲の輪は狭まって、体に取り付かれれば皮膚が豪快に喰い破られて―― 「おっと映像はここまでだ。ブリーフィングで吐きたくは無かろう? 諸君らにはこのスライムどもを全て余さず殲滅してもらう。ま、気を付けるべき点はいくつかあるが――その内でも最大のポイントを説明しておこうか」 それは、 「奴らの攻撃を受けた場合痛みが分からない故、“どれほどのダメージを受けたのかの把握は無理”だ。つまり、自分の残存HPが分からなくなる。他人の目から見れば――まぁ、ある程度は分かるかも知れんが、あくまでの他人の目だ。参考に留めたまえよ」 ダメージが分からない。それはそれで脅威である。 麻酔によって自身の痛覚が麻痺すると言うことは自分の限界を把握できないと言う事。限界を見据える事が出来ず無理に戦い続ければ――運命を大量に消費してしまう可能性は否めないだろう。 「ああそれと……ダメージが分からないのでな。“BSに掛っているかどうかも分からない”。これもまた他人の目からみればなんとやらだが、BSに掛っている事に気付かず戦況が不利のまま進むなど冗談ではないだろう? 連携やなんらかの対策を考えて行く事をお勧めする」 つまりこの敵は、自身の状態を把握することが難しくなる敵、と言う事だ。 BSも体力も不明確のまま闘う。当たり前の事だが力押しで戦えばその慣れぬ感覚に間違いなく押し潰される事だろう。 だが引く訳にはいかない。映像の様な悲劇を、これ以上起こす訳にはいかないのだ―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月19日(土)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●戦場入り 痛みとは体の発する危険信号だ。 危険だ。これは危険なのだと体が主に警告する。そうして主はソレを回避しようと動く。生きる為に。 逆に言えば痛みが分からないと言うのは“危険が分からない”と言う事だ。 なれば、喰われているのに危険では無いと体がしている状態はいかほど危険なのか。 それはあまりにも拷問だから―― 「――!」 射撃音が鳴り響く。その一撃が穿つは、スライムに襲われている被害者の頭部だ。 弱々しい抵抗が一気にゼロと成れば全身から力が抜ける。その銃弾を放ったのは『ガンスリンガー』望月 嵐子(BNE002377)で。 「ごめんね……出来れば助けてあげたかったけど……」 悪意の一撃では無い。むしろ、彼女として誠意ある一撃だ。 助ける事が無理であるのなら、もうどうしようも無いのなら、せめて楽にと。 「……ッ、さぁ行くよ! キミ達は必ず、殲滅してみせる!」 先の一撃を開戦の号砲とすべく、嵐子は思考を切り替える。 やらねばならないのだ。アザーバイド達の、殲滅を。 「うふふ……お初にお目にかかります……とっても愛らしい姿ですね……?」 飛び出し、スライムの造形をその眼に捉えるのは『黄金の血族』災原・有須(BNE003457)だ。 地を這う不定形の生物。その姿がどこか愛おしく見えるから、 「存分に――愛し合いましょうね?」 己の命すら代価として瘴気を発生させる。 闇のソレは夜に紛れてスライムへと愛を振り撒くのだ。酷く、痛みを伴う愛を。 「痛みにも文学や哲学で語られる精神的なモノも多く含まれますが……このスライム達の場合は、疼痛ですかね」 『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)の語る言葉は有須の行動を見て語られていた。彼女の推測する、スライム達の麻酔が何に作用しているかの正体。 それは――疼痛。 医学用語における脳の発する痛み作用だ。脳が痛みを認識した後に起こる現象であり、“結果”である。ダークナイト達が命を代価とする痛みは精神的な形での痛みだと仮定するならば、疼痛はその内の一つ。 「ま、要は痛みとは“物理的な物ばかりでは無い”訳ですが―― さてそうなら私自身の心と勘を信じるしかないのでしょうね」 脳が誤魔化されるのなら、脳に頼らならければ良いのだ。 無論それこそが難しい訳だが、ただの一般人では無いリベリスタたる彼女らならば不可能ではないだろう。少なくともなんらかの手段と道筋はある筈だ。 だが向こうも向こうで黙っている筈は無く、動きを見せる。死した“食糧”よりも眼前に現れた乱入者に対処するのが先だと判断したのだろう――リベリスタ達に対するように、陣形を広げている。 ただ……その動きはどことなくぎこちない。何故なのかと言えば理由はごく単純な事だ。 「悪意が無かったから……でしょうかね」 『熱血クールビューティー』佐々木・悠子(BNE002677)は察した。 ……あぁこの異邦人達と、分かり合うことは絶対に不可能なのだろう、と。 「彼らはきっと、ただお腹が空いてご飯を食べただけ……“誰か”にとっての残酷は“誰か”にとっての普通であって、それがこの場の事であって……」 “あっち”と“こっち”の違い。 それが深すぎて、致命的すぎて、だから相容れる事は不可能。 実際に今。スライム達はこちらに対して敵意というよりも恐れを抱いている。普通の事をしていたのに唐突に攻撃されて、怒りよりも先に防衛本能が働いているだけで。 「それでもあたし達は見逃せないんだよ。 ……数も多いし、早めに減らして行かないと――ねッ!」 手榴弾……否、閃光弾のピンを櫻木・珠姫(BNE003776)は外す。 直後。スライム達が固まっている所に右腕をしならせて放り投げれば、弾が砕けて光が満ちる。 閃光が、夜中の公園に激しく瞬いた。 ●光の中で 『定めず黙さず』有馬 守羅(BNE002974)はその瞬間に駆けた。 大太刀を肩に背負い身を低く突撃すれば、地を這うソレを薙ぐ形で、 「行、くわよ……!」 呼吸と共に振り抜いた。 スライムが形を歪めて後方へと吹き飛ばされて、水溜りの様に薄く広がる。すぐさま形を取り戻そうと動き出すが、距離は取れた。 「やれやれ。しかしこの数だと後衛として戦うのも最初は難しそうですね」 そして、アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)は己の認識しうる視界を戦場全域に広げていた。その結果として、という程の物ではないが、スライムの数的に自身が後衛として専念する事はやはり無理がある事を再認識せざるを得ない。 8対8。確実にブロックは超えられる数であるし、せめて2体程は倒さねば前衛と後衛の陣形を組むことすら難しいだろう。 「――!」 そうしてスライム達も攻勢を開始する。 リベリスタらに液体を飛ばして、あるいは接近して“捕食”しようと。 「私達も食べられる訳にはいかないわ。だから最初から全力で、ね……!」 『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)が攻撃の直後に合わせて詠唱を開始する。高位存在を読み取る術たるソレは癒しの力を持った息吹として顕現し、張り付いたあらゆるBSすら祓わんとして。 だが、いくら力を行使しようとも祓えぬモノはある。 「……不思議な感じね。ダメージがあるのは確かに分かるのに――痛みは全く感じないだなんて」 悠子が見る先。それは己の右腕で、先程スライムの体液が直撃した箇所だ。 ニニギアの詠唱で傷自体は塞がったものの、妙な感覚は未だ残っている。原因は分かっている。これが情報にあった“麻酔”なのだろう。 傷口より侵入して知覚を誤魔化し、あらゆる危険を危険と感じさせない。 「なら出し惜しみしないで行くのが一番だね。探索型RPGの基本はケチらない事だよ!」 その宣言通り、嵐子は出し惜しみするつもりは無かった。 引き金を絞り上げて数多の弾丸をスライム達に叩き込む。麻酔で体力が分からなくなる? ならば最初の内は全力振り絞って相手の数を減らす事に専念すれば良いのだ。ガス欠は早くなるのだろうが、優位を保てれば勝利は近くなると思考して、 「固まっているのなら、纏めて叩き潰して差し上げましょうか」 彩花は往く。踏み込んで、3体のスライムを範囲に捉えれば、電撃を纏って至近のスライムを上から踏みつける。 次いでそのまま土を抉る勢いで足を横にスライドさせながら二体目のスライムの下に潜り込ませた。直後に真上に蹴り上げればスライムの体が宙に浮いて、重力に従う前に右の拳で地に叩き落とせば。 「――!」 背後から3体目のスライムが口を開いて彩花に襲いかかった。 されど彩花の武舞はまだ途中。続ける形で自身の体を後ろへと振り向かせて、スライムの口を両手で受け止める。鋭い歯が指に食い込めば、千切れそうな感触があるが痛みは麻酔の為か存在しない。 故に、 「散りな、さいッ!」 噛み砕こうとする力を強引に凌駕して、二つに引き裂いた。 両の親指を除く四指から血が溢れるも、それすら武舞の一部と見れば映えるものだ。 「今はとにかく攻め時……! 絶対近付かせないからね!」 そして珠姫が密かに接近するスライムを見逃さない。 真空刃を手中に発生させ、大振りに投擲。指向性を持たせれば軌道を微修正しつつスライムの体を切り裂く様に直撃した。水滴が飛び散り、体積が減る。 しかしそう簡単には止まらない。複数方向から近付くスライム達は、どうやら回復手たるニニギアに狙いを付けた様だ。お前がいては邪魔だとばかりに、口を開いてニニギアに齧り付かんとする。 「させませんッ! それは予測していた事です……!」 そこを阻むはアルフォンソだ。彼はその身を盾にしてスライムの眼前に立ち塞がる。 激痛が一瞬だけ庇った左腕に生じるも、麻酔の効果で次の瞬間に痛みは消えた。なんとも不思議な感覚だが、それだからこそ注意しなければならない。ダメージはまだしも、BSが知らぬうちに付いている可能性が否めないからだ。 「ふふ……でも、倒してしまえば……関係無いですね」 言うは有須。 己が生命を削り取って愛と成し、アルフォンソを襲ったスライムに呪いを横から叩き込めば、 「ここで確実に数を削っておくとしましょうか」 悠子がさらに追撃する形でスライムに死の爆弾を埋め込んだ。 オーラで作られたそれは僅かなタイムラグを置いて炸裂する。内側からの衝撃に、ほとんどが水分で出来ている彼らは破裂するかの様な音を残して体が四方に飛び散った。修復不可なダメージを受けたのだろう。先と違い、元の形に戻る様な動きすら見せずただの水と化した。 「これで後6体……気を抜かずに行きましょう!」 再び高位次元に呼びかけながら癒しの詠唱を行うニニギア。出し惜しみしない戦術に時間をかけてはいけないと、リベリスタ達は消費を気にせず攻勢を続ける。 故に。皆が追撃の一歩を踏み込んだ。 ●Anesthesia 嵐子は今回の闘いの為に肌の露出を多くしていた。 それは出血の有無を確かめる為である。麻酔によって自身の状況確認が困難ではあるが、肌から出血しているかどうかを見れれば話は別だ。出血している=BSに掛っている事が判明するからである。 「……ま、今回は短期決戦のつもりだからそこまで重要では無かったかな」 長期戦ならともかく、今回に限ればニニギアが毎回全力で聖神の息吹を使用している。よって、確認されようがされまいがBS回復スキルの使用が確定しているので意味合いは少々薄かった。息吹を毎度使用している間はだが。 「ッ、意外にジャンプ力あるわねコイツら……!」 守羅はフライエンジェとしての特性を利用して低空飛行しながらスライム達に相対していた。麻痺やショックを付与されては困るからだが、存外スライム達にもジャンプ力があったらしい。それ以上高度になればともかく、3m程度ならば近接攻撃の手が届く様だ。とは言え、普段は地を這う生物故か攻撃しにくそうな様子はある。 「このスライム達がファンタジーに口伝されているモノに忠実なら、もう少し楽だったかもしれませんわね」 冷気を拳に纏い、スライムを彩花は殴り飛ばす。 スライムは火や冷気に弱い事がある。弱点は物語によってマチマチだったりするが、目の前のモノ達は特に冷気に弱い、訳では無い様だ。 「うふふ……でも吸うことは出来ますね……?」 近場のスライムを抑え、有須はヴァンパイアの特徴たる歯を――水の塊に突き立てた。 傷から溢れるのもやはり水。いや、成分的にはともかくこれがスライム達にとっての血かもしれない。故に喉を鳴らしてその水を呑み込めば、僅かに体力が回復する。 弱点がどうであれ殺せるなら殺せるし、吸えるなら吸えるのだ。 ――あぁ何故だ。何故お前らは我らを害すのだ。 されどスライム達が行動する。食事の最中に横から現れた“異形”共を退ける為に。 逃がさない。お前らも喰らう。喰らってやる。 口を大きく開けて一斉に襲いかかれば、前衛を担うリベリスタの柔肌に噛みついた。 ニ ガ サ ナ イ。 そんな呪いの言葉が送られてきた様な気がして、 「ぐッ――! ま、だまだぁ……! こんな所で倒れる訳にはいかないんですよ!」 「皆、大丈夫!? 出血してるかどうか確認して!」 声が響いた。それは、アルフォンソと珠姫の両名だ。 代わる代わるニニギアを庇い続けていた二人は、スライムの攻勢に珠姫は声を放ち、アルフォンソは運命を消費して、なお前線に留まり続ける。体の痺れが確認出来れば手に持つ魔術書で強引に感覚を取り戻すべく、自傷してでも。 もっともどれだけ自傷してもそれ単体で感覚を取り戻すには至らないが。そして、 「相容れない。どうあっても、貴方達とは……相容れる事は出来ないのですね」 悠子がスライム達の至近距離外からヒットアンドアウェイで襲撃した。 黒きオーラを形として、水の体にそのまま叩き込めば必殺の一撃がスライムを穿つ。当初は8体居た彼らもリベリスタの攻勢に耐えれず、段々とその数は減らざるを得なかった。 「後もう少しだね……!」 そんな様子に、嵐子は好機と見て銃弾を放った。 ただ撃ったのではない。狙いを付けた一撃であり、着弾点はスライムの歯だ。 回転する銃弾と硬い歯がほぼ真正面から突き当たり、甲高い音を響かせて歯の方が押し負ける。前進する力があった分だけ銃弾が優位だったのか、水が飛び散り、歯は砕け散って内部からスライムを傷つけた。 「自分がどんな状態か感じれないって怖いかもしれないけど…… それでもアタシは銃使いだからッ! 命と右手が感じられる限り、アタシはアタシであり続けられるんだよ!」 一喝する言葉はスライム達に。 麻酔など無駄だとばかりに吠え挙げれば、彼らは危険と感じたか逃走の動きを見せる。 「逃がすものですかッ! ここで必ず仕留めてあげるわ!」 瞬間。ニニギアが魔力で作られた矢を放つ。回復よりもここは攻めるべきだと判断したのだろう。魔矢が空を切り裂いてスライムの一体に直撃する。 ここで万が一逃がしてしまえばさらなる犠牲者が出るかもしれない。いや既に被害者が出ている以上――彼女は絶対に彼らを見逃すつもりは無かった。必ず殲滅せんと、意思が迸る。 一体、また一体と水と成り果てて行く。最初のリベリスタの大攻勢で体力を擦り減らされたのが原因か、そう長く耐えれる個体は多く無かった。回復スキルがあれば別だったろうが無い故に――想像以上に短期決戦の効果が出たようだ。 そしてとうとう最後の一体と成ったスライムの体が一閃される。 「液体の身体に……鞘走りした電撃よ」 それは守羅の一撃。 オーラを電撃として武器に纏わせ、捨て身の一撃で放つソレは大太刀と完全に親和していた。居合の形で鞘走りさせれば、雷撃の如く戦場を走り抜け、 「効くでしょ? ――意外と」 スライムの体が、言葉と共に砕け散った。 夜中の公園に、幾つもの水塊が唯の水滴と化した跡が残る。 だがそれでもようやく。この公園は来訪者の居ない元の平穏な姿を取り戻したのだ。 ●祈りは届いて 「ごめんね、間に合わなくて……」 戦闘の音が成り止んだ公園内。スライム達に食糧とされた被害者の傍に、ニニギアは駆け寄った。 息はもう、無い。嵐子の一撃で苦しまずには逝けただろう。 「でも大丈夫。もう終わったから、何も、かも……」 それでもニニギアは助けられなかった事を悔やむ。 だから、ただせめてとばかりに。 「もう、終わったから――安心して眠って……?」 被害者の目を優しく閉じさせて、黙祷の意を捧げた。 その時だった。気の所為とも思える程の僅か一瞬。既に死した彼女の顔が少しだけ、 そう、少しだけ――安らいだ笑顔を見せた気がした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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