●やる気の無い連中 「よぉーし。じゃあ皆行くぞー」 「うぃーす」 どことなくやる気の感じられない声が夕暮れの住宅街に響く。 それに次いで住宅街を歩き始める男達。その数総勢7名。コートを着ていたり、半袖半ズボンのラフな格好だったりと服装は様々な集団だ。 しかしそんな男達には一つの共通点が見られる。 ――武器を持っているのだ。ナイフ、ショットガン等の実に危険そうな武器を。 「大将ーどこまで歩くんですかい?」 「ああ? んな事決まってるだろ――夕日の彼方までさ!」 「大将ーそれ中二病ですぜー」 先頭を歩いている“大将”と呼ばれた三十代の男はショットガンを肩に担ぎながら仲間達と気さくな会話を交わしている。まるでそれは日常的な会話の様だ。 ……だからこそだろうか。彼らの持つ武器が余計に目立つのは。 「……なんだアレ?」 武器を持つ男達の歩く先、一人の少年が当然の疑問を抱く。 視線は勿論手に持つ武器、武器、武器――本来ならそれを見ただけで少年は彼らを危険と思い、逃げ出した筈だ。 だがコントじみた会話が耳に入ってくれば危険という思考が濁った。本当に危険なのか? そう思って――しまった。 「お、べっ!?」 その一瞬の間に鳴り響く銃声と奇声。若い少年の命が一つ呆気無く消え去った瞬間だった。 「大将ーいきなり撃つとか容赦無さ過ぎですぜー」 「い、いやいやいや! 今の手元狂っただけだから! 殺す気は無かったから!」 「でも死んじまいましたぜこの外道ー。蝮原の奴が居たら苦い顔してる所ですぜー?」 「うぐっ……い、良いんだよ別に! ウチはウチ、余所は余所! それにこれで騒ぎも大きくなるだろうが!」 少年に向けて構えていたショットガンを一振りして再び肩に担ぎ直す男。 ――と、同時。女性の悲鳴が周囲に響く。 男達の視線が一斉にそちらを向けば、どうやら遠くから現場を目撃していた女性が居たようだ。逃げるように走っている後姿が目に映る。 「ほら見ろ! これで目的の一部達成だろうが! どうだ俺の英知は――崇めて構わんぞ!?」 「大将ー偶然を手柄にしてカッコ悪いと思わないんすかー?」 「それを言うんじゃねぇよぉ――!」 声と共に空に向かって放たれる銃声。閑散な住宅街に響くその一発は、騒ぎが大きくなるにそう時間は掛らなかった。 ●やる気? なにそれ美味しいの? 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 真剣な眼差しで『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が言葉を紡ぐ。 「ある街でこれから大量に怪我人が出る事件が発生するの。原因は、フィクサード達が街で暴れるためなんだけど……今回は少し妙」 「妙とは?」 「簡単に言うと、彼らには“やる気”が全く見られないの」 イヴがモニターに視線を向ける。カレイドシステムの結果を表した映像が流れているそのモニターの中では複数の男たちが暴れており、住民は逃げ惑っている様子が映し出されていた。 フィクサードの絡む事件ならば、ある意味普通の光景とも言えるソレだが――確かに妙な点がある。暴れている側に“やる気”が本当に感じられないのだ。 映像をよく見ればフィクサード達は皆面倒くさそうな顔をしている。一部のメンバーに至ってはタバコを吸いながら雑談していたりと自由奔放な様子だ。 「……なんだこりゃあ? 連中、何のために暴れていやがるんだ?」 「暴れている理由はよく分からない。……だけど、彼らが暴れて怪我人がたくさん出るのは間違いの無い事実。そしてその日は決して遠く無い」 だから、とイヴは言葉を前置きし、 「この連中を撃退してほしいの。やる気が無かろうが何だろうが……彼らが振るっているのは“暴力”なんだから」 ――もう一度リベリスタ達に真剣な眼差しを向けるのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夕暮れ 「ふんだかったーふんだったー♪」 「大将ー鼻歌止めてくだせぇ何と言いますか――至極、耳障りです」 「そ、そこまで言うかお前ら!? 酷くね?!」 日が沈み始める時刻。住宅街の細い道を歩く複数の男達の姿があった。 彼らはここに騒ぎを起こしに来た者達……正確に言えば、人を傷つけるために来た外道共である。 しかしそんな物騒な目的とは反し、彼らの口調は非常に軽い。緊張感という言葉が存在していないかのようである。 「しっかしおかしいなぁ? まだ夕方だってのになんでこんなに人が居な――」 その時だった。大将と呼ばれた男の言葉の途中で、後方から音が混ざりこむ。 ――打撃音だ。 肉にめり込む鈍い音が嫌でも耳に届き、次いで響くは壁に何かがぶつかる音。 何――という思考を行うより早く、大将は反射的に音のした方向に顔を向ければ、 「チッ、親玉じゃぁなかったか……」 『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)が己の鉄槌を構え直している所だった。 壁をすり抜けてからの奇襲を行った彼の攻撃は想像以上に効果があったようで。敵が攻撃を悟るよりも早く、回復手の男を横の壁に吹き飛ばす事が出来た。 そう、 「我々の目的通りに……ねっ!」 刀が振るわれる。『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)の狙いは先程壁にぶつけた回復手の男。最も厄介な役を担う者から潰す――そういう思考の元に、彼は刀を振るう。 男の短い悲鳴と共に舞う血。突然の事に一瞬呆気に取られていたフィクサード達だったが、 「な、なんだテメエら!?」 ナイフを手にしている一人が声を張り上げた。 途端に警戒の色が周囲に満ちる。と、同時。 「ワタシかね?!」 今度は逆。前方から声が掛けられた。 「天が呼ぶ、地が呼ぶ、宇宙(ソラ)へ翔ぶ! ワタシがキャプテン・ガガーリンだッ!」 前方に立つは宇宙服の男『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)。大きな扉……いや盾を手に持ち、立ち塞がる様にその存在を露わにする。 「さて、まぁとりあえず早く帰ってくれると有難いのだけどね?」 「そうでーす。痛いだけの事なんて止めて帰りませんかー? 怪我したら大変ですよー?」 太く、鋭いダーツ状のダガーを持つ『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)と『きまぐれキャット』譲葉 桜(BNE002312)の声も前方から。 「……この一帯には、結界を張らせていただきました……一般の方々は来られません……」 「つーわけでだ。覚悟しろよ――クソ野郎ども」 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)はフィクサードがここに来る前から行動していた。結界の発動の為に、だ。 同じく『不退転火薬庫』宮部乃宮 火車(BNE001845)も同様に、強めの結界を発動させている。これで、一般人が近づいてくる可能性は大幅に減ったと言えるだろう。もっとも、それでも絶対とは言えないが。 「……成程なぁ。道理で人が居ないと思ったぜ。はぁーあ面倒だなぁこりゃあ」 「んーじゃあ退いてくれるの?」 呟くように『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)が声を発する。感情が無いような、薄い声色だ。 続く言葉は大将で、それは否定の意味を伴う言葉。 「だがそう言う訳にもいかなくてなぁ。悪いが少し俺らに付き合ってもらうぜリベリスタさんよ……!」 フィクサード達が動く。俊敏に、陣を組むように数が別れた。 前方に二人、後方に三人という布陣。大将とダメージを受けた回復手の男は真ん中におり、前方後方どちらにも対応できる位置にいる。 「ま、予想はしてたけどそう簡単には退かない、か」 「別にいいけどな。どっちみっち俺らは……」 ミュゼーヌがダガーを構え、影継が鉄槌を肩へと担ぐ。 そして彼は言う。己が決意を、言葉に乗せて。 「全力で――叩き潰すだけだ!」 ●住宅街の攻防 「おらぁあああ!」 雄叫びと共にまず前線に躍り出たのは火車だ。 彼の視線は眼前に立ち塞がるフィクサード……では無く、中央に居る回復手の男だ。 地を蹴り、壁役の者達の横を駆け抜ければ拳を振り上げ、 「ドンドン行くぞっ! ドンッドンなぁ!」 下ろす。 炎を纏ったその拳は回復手の男の頬を穿ち、追い詰めていく。元々ダメージを受けていた所為もあってか、非常に相手は怯んでいるようだ。さらに火車は畳みかけるように連撃を行う。 「おーおー威勢の良い奴なこって……」 「こっちにもいるぞ! むぅぅん! 地球(テラ)・イズ・ジャァァスティス!」 大将の意識が火車に向いたその一瞬、ガガーリンは盾を合わせそこから光を放った。 十字の閃光はナイフを持った男を直撃し、その身を焼く。 無論これだけで倒れるような事は無い――が、 「ほらほら早く逃げないと……蜂が、刺すわよ?」 ミュゼーヌの手から線が飛ぶ。ダガーの投擲軌道だ。 いくつもの線が敵の前衛に向かって振るわれ、交差すれば血が噴出する。相手へと襲いかかるダガーはまるで、蜂の様だ。 「まったくもー下手したら死んじゃうのになんで戦うんですかー? 得が無いからやめませんー?」 そしてその線はミュゼーヌからだけでなく、桜からも振るわれていた。 微妙に説得を続けながらも、弱っていると見られる者に対しダガーを振るう。徐々にではあるが、確実な削り方だ。 「ぐっ、舐めんな!」 しかしフィクサード側も攻撃を受けてばかりではない。ナイフを持った男が思い切って前進し、自身の持つオーラを輝かせながら距離を詰める。 間髪入れずにガガーリンに打ち込むはナイフの連撃。その攻撃をガガーリンは盾をしっかりと持って防ぐ。扉の様な盾を持ち、退かずのけ反らず――耐えた。 「ほう……攻守共に中々やるじゃねえか。……前方は押され気味、か」 その様子を中央付近で窺っていた大将が呟くように感想を。 そして後方でも、 「ハンマーチャンスだ、ぶっ飛びやがれ!」 「さて、狩り取ろうか。なるべく早めに……ね」 影継と都斗が同時に攻撃を仕掛けた。お互いに武器を構え、敵の前衛に対し影継は電撃を放ち、都斗は己が鎌に全力を込めて振り下ろす。 同時。防御――その発想がフィクサード達の頭の中に思い浮かび、瞬時に防御行動を彼らは取った。攻撃を受け止める、あるいは少しでも減らすために。 しかし、 「早々に退場してもらいますよ……貴方がたは少し、狂暴すぎるのでね!」 そこへ孝平が間隙を縫って幻惑の一撃を加えた。抜いたレイピアで相手の腹を狙い、翻弄するように動きを見せてから横に薙ぐ。片方の防御の姿勢が、揺らいだ。 直後に振舞われるは鎌の一撃。崩れた形で防御するも、受け止めきれない。衝撃を直に受ければ、体が後退してしまった。陣形が僅かに崩れを見せる。 猛撃だ。まさに、猛撃。前方でも後方でも、短期決戦を狙っているのか非常に攻撃の度合いが激しい。 そんなフィクサード側が押されている様子を伺えば、自然に大将の口から言葉が漏れた。 「おーおーおーおー。後方も若干押されるとはやるねぇマジで。予想以上だぜこりゃあ」 「……ならば……大人しく捕まるか帰ってもらえませんか?」 シエルの声が大将に向けられる。詠唱を唱え、彼女の目が届く味方の傷を癒しながら、目線は大将へ。 「うーん。だが、やられっぱなしは性に合わないんでね……」 そう言えば、大将は一度手に持つショットガンを遊ぶように一度だけ回すと。 「――ちょいと反撃してから帰るとするさ」 即座に引き金を絞り上げた。 狙いは、ただ一点。 「っ! い、たっ!」 桜だ。大将はダガーを投げた瞬間を狙って桜の胴体に向けてショットガンを放った。 攻撃に意識を向けていた桜はその腹に弾が直撃する。幸い、致命傷では無いようだが、少々傷が深いようだ。 「……桜さん! くっ、今すぐ回復を――」 「! シエルさん! 余所見はいけません!!」 シエルの目線が傷付いた桜に移った時、後方にいた孝平が声を張り上げた。 彼は見たからだ。大将が桜を撃った後に即座に狙いを変えたのを。変更先の狙いは―― 「お前さんだよ。シエル・ハルモニア・若月さんよ」 言うなり引き金を絞る。しかし、今回は一回だけでは無い。二回、三回と連続した射撃だ。それら全てがシエルの心臓部分へと向かい、 轟音が鳴り響く。 「あっ――かっ――!」 同時、シエルの口から血と掠れる声が零れ、彼女の体が地に倒れた。 ●勝ったのは 「よーし、相手の回復手を潰してやったぜ」 大将は満足気な様子でショットガンを肩に担ぐ。最初に回復手を攻撃された意趣返しだろうか、リベリスタ側の回復手であるシエルを狙ったのは。 それより、この辺りが潮時かもしれない。あまり長く続けてやられてしまっては本末転倒だし―― 「そう簡単に逃がすかぁ!」 と、大将がそこまで思考した所で殺意を含んだ影継の声が飛ぶ。 鉄槌を構え、振り抜くのはフィクサードの前衛。しかし彼の狙いは大将。それなのに前衛に攻撃した目的はただ一つ。 「ぬぉ!?」 前衛が鉄槌の衝撃によって後退する。いや、後退させられた。 ――大将の立っている方向へと。 思わず声を挙げた大将はステップを踏んで回避し、弾込めを完了させる。 「あぶねぇあぶねぇ。邪魔される所だったぜ……まぁいいけどな。こっちの用事はそろそろ終わりに――」 その時だった。影継達のいる後方側へ目を向けたその時――大将の背に衝撃が加わる。 攻撃。それは瞬時に理解できた。 だが誰のかは分からなかった。ダガーの感覚では無い、これは、もっと何か別の、 「……やれやれ……最近の漫画雑誌は……厚いですね……!」 目を向けた先に映るは、先程倒れた筈のシエル。己が前面に魔法陣を展開しており、それで大将を攻撃したのだろう。 見れば、服の下に漫画雑誌が入れられていた。とはいえ、それがショットガンの威力を相殺したとは思えない。彼女が助かったのはもっと別な理由……運命的な何かだろう。 口から一筋の血が流れ、息も荒い。だが彼女は立ち上がった。 「この光の矢で……命の重さ……教えて差し上げます……!」 「チッ……! だがそれならもう一回……!」 「やってみな大将さん――よっ!」 火車の拳が唸る。炎を乗せた一撃は大将へと真っすぐ向かい、その体にめり込ませる。 抉られる衝撃が大将へと加われば、思わず苦悶の表情を。 「な、なんでテメェがここに……!」 「さっきの奴はもう潰したに決まってんだろ! ほらどうした大将さんよ! 肝心の、作戦は!」 見れば、確かにフィクサード側の回復手が居ない。既に撤退したのだろう。 あともう少しぐらい時間を稼いでくれれば良かったのだが、流石に初手にダメージを受けては耐えきれなかったか。 「うるせぇガキだ……少し、黙ってろ!」 続く火車の拳。それはショットガンを持っていない方の腕で捌けば、即座に銃口を火車の顔の前に割り込ませ――放つ。 顔面に弾が直撃した。 「っ――まだまだぁ――!!」 が、倒れなかった。脚で地を蹴り、むしろ前進する。 額から血が流れるが知った事ではないという風に、彼は大将を追い詰めようと。 「くっ、しつこいぞテメェ!」 思わず気押されたか、向かってくる火車に蹴りを入れ、無理やりに距離を取らせる。 そして構えるショットガン。狙いは顔。もう一度決めるつもりだ、先程と同じ攻撃を。 「……でもね」 構えたと同時、引き金を絞るよりも先にショットガンから甲高い音が響き、大将の手から武器が投げ出される。 見えたのは線。ミュゼーヌの、ダガーだ。 ショットガンの銃身に横合いから投げつけた結果、思わぬ衝撃に大将は銃を落としてしまったようで。 「そんな何度も撃たせはしないわ……それに、ここが退き時よ。貴方達のね」 「ぐっ……!」 ミュゼーヌの言葉は的を得ている。既に何人かは撤退していて、陣形もなにもあった物ではない。 対してリベリスタ側は傷付いているとはいえ回復手は健在で、そして数も有利だ。 「ユー達、現在状況はバッドだ。そこでだ。今日は何も起きず、我々は何も無く、これからもない。……そうだな?」 「……怪我して戦っても何の得もないでしょー?」 盾を構えたガガーリンが警戒は解かずに声を紡ぎ、それに追う形で桜も負傷個所を押さえながら続く。もう終わりだと、そう言うようで。 後方側に意識を向ければ、声が聞こえる。いや、これは―― 「驚いた? デュランダルは回復スキル使えないだなんて……思わない方が良いよ?」 「おいおい回復手は一人じゃねぇのかよ……!」 油断していた。まさか、都斗がそのような物を使えるとは計算外だ。 これでは不利要素がさらに増える事になる。フィクサード側の回復手がいれば、まだ話は別だったろうが…… 「すんません大将、俺退きます!」 「よし、これで後三人……終わりが見えましたね」 フィクサードの一人の声が大将に向けられ、同時にその男は駆けだした。 孝平は戦意を無くした者は追わず、残っている者に対し注意を向ける。残っているのは大将と前方と後方に一人ずつだ。 「く、そ。これ以上は限界か……全員退くぞ! もたもたすんな!」 「一つ教えてやる――良いフィクサードは、死んだフィクサードだけなんだぜ!」 最後の追撃とばかりに、影継がオーラを電撃に変え、撤退しようとする大将に向けて放つ。 強力な電撃を纏った攻撃だが、大将は壁を蹴り、跳躍する形で回避と撤退を同時に行った。 フィクサード達の姿が、街へと消える。 「……彼らは、退きました……か」 「はぁ、少し……疲れましたねー……」 その様子を確認し、緊張が取れたのかシエルが膝をついて呼吸を行う。大分無理をしていたようだ。桜も同様に壁を背にして肩で呼吸を行っている。 「捕まえられなかったのは少し残念だけどな……」 火車が無念そうに、彼らが消えていった方向を見る。どうしても捕縛したかったようだが、残念ながら今回は捕まえる事は出来なかった。 「うーん、でも。あの大将って人はともかく、他は結構簡単に退いたね……なんでだろう」 「さて、ね。……それより、そろそろ人が来るかもしれないわ」 疑問の声を発するは都斗。やる気が無いとは聞いていたが確かに戦闘中、簡単に撤退してく様子を見ていた。 彼らの目的は、一体何だったのだろうか。今の所は考えても分からないが――ミュゼーヌの言う通り、ここは自分達も撤収するのが吉だ。結界の効果もいつまで続くか分からない。 「うむ。では負傷者は手分けして運ぼうか。アークに帰還しよう」 「ええ、そうですね――帰還しましょう」 ガガーリンと孝平の声が響く。負傷者は、確かに出た。 だが一般人への被害は無かった。万華鏡の見た未来では多くの人々が傷付いたと言うのに。 彼らは守った。目に見えぬ、誰かを。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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