●好事家の囁き 冬の風に送られて、春がふわりと舞い降りる。 開けた空は果てなく青く、大地を覆う下草は緑の絨毯。 ぽかぽかと降り注ぐ陽を浴びて、さらさらとせせらぐ音に耳を澄ませる。 黒々とした岩壁を背に、枝垂れ桜は気高き美をまといて仄白く咲き誇る。 夜の帳が視界を闇で覆う頃、戯れ踊る淡緑の煌が灯る。 ゆらゆらと漂い浮かぶ小舟たちが、そろそろ現へお帰りと誘う。 渓流を下る小舟を送るように、紅雪が、はらり、はらりと降り積もる。夢の残滓に満たされる。 そんな素朴でささやかな、けれどとびきりの時間を望むなら、茂みの陰を覗いてごらん。 ともすれば踏みしだかれそうな小さな花が教えてくれる。 先達が残したかすかな痕跡が迷いの中に手を差し伸べる。 秘密の通路が、そこに在る。 ●風雅の勧め 「穴場なんだってよ」 彼は唐突に言った。 「知る人ぞ知る、ってヤツだ」 疑問符を浮かべる一同に勿体をつけるかのように、ゆるりと言葉を繋ぐ『駆ける黒猫』将門 伸暁(nBNE000006)。 「山全体が桜の名所、みたいな山ん中に、特に『通』好みのスポットがあるそうだ。絶景なのは言うまでもないが、その空間そのもの、過ごし方が真の醍醐味らしい。……まぁ、真理だよな。花見ってのは花をただ眼球に映すだけじゃなくて、場の空気や雰囲気、共有する時間を味わうモンだろ?」 少し意外そうな眼差しを受けて、情感を解さぬようではアーティストたり得ない、と伸暁は口の端を引き上げた。 「お前たちには今回、其処へ行ってもらう」 遊びに行けと言ってるわけじゃないからな。 そう釘を刺してからようやく、説明らしい説明を開始する。 「まずは、森人の小径とか呼ばれてる入口を探すとこからスタートな」 無粋な輩に荒らさせまいと皆が秘密を漏らさぬためか、得られた情報は「山のこの地点の何処かに入口があるらしい」という断片的なもの。 梢のトンネルとも称される道は、はじめは這いつくばるほど狭く、進むにつれ広さを増す。と言っても、大人は身を屈めねば立てぬ程度というけれど。 「で、小径を抜ければお待ちかね、メインステージに到着だ」 森が開けたささやかな空間。高い空の下、立派な枝垂れ桜が満開の花をつけた枝を広げる。陽射しは暖かく、風は涼やかで、岩間から湧いた清水はやがて谷を流れる渓流へと続く。 「折角だからピクニック気分で弁当でも食えばいいさ」 「ピクニックって……。仕事の話はどうなったんだ」 「待て待て、そう急くなよ」 半ば呆れ顔のリベリスタを、どうせ夜にならねば仕事にならないのだから、楽しんだってバチは当たらないと伸暁がそそのかす。 「ターゲットはエリューション・ビースト、蛍のバケモノ二体だ」 ソレは夜になると現れて、枝垂れ桜の幹に貼り付き尻を優美に明滅させる。 「無害っぽい……ていうかむしろ夜桜ライトアップに一役買ってそうに思えるかもしれないが、エリューションは存在自体が有害だからな。あぁ、ちなみにサイズは大人のひと抱えほどだから。桜を傷付けないようにして、さくっと倒してきてくれよ」 一体の攻撃は輝く光をまとって連続で体当たり。もう一体は眩い十字の光を放ち遠方の者をも撃ち抜くようだ。 「で、終わったら帰りは小舟で渓流を下ってくるといい。無数の桜に見送られて……なんて、随分ロマンティックなエンディングじゃないか」 深い谷の遥か頭上、断崖の上に咲き並ぶ桜の花弁が雪のように降り積もり、やがて小舟はいっぱいの花弁に満たされる。 結局、存分に遊んでこいと言われているようにしか思えない。 嘆息混じりにそう指摘され、伸暁は軽く肩を竦めるとニヤリと笑みを浮かべてみせた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:はとり栞 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月24日(日)21:52 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●春へ到る径 人の目は美しきものへ向く。 梢の途切れた左手に名所と謳われる桜と滝の眺望が広がれば、誰もが左に意識を惹かれる。そこで右へ行け、と指令のメモは告げていた。蔦の簾と重なる枝葉の真後ろに、有るか無きかの枝道が潜んでいるなど、言われなければ気付くまい。 そうと知らぬ者は認識することさえ無いだろう緑の扉を、知る者だけが開いて越える。 「ちょっとした探検気分ですわね」 緑の扉を抜けた『高嶺の鋼鉄令嬢』大御堂 彩花(BNE000609)らは早速、春の夢へと通じる最後の秘密に取りかかる。一人、もしくは二人組で、各々が『森人の小径』を探すのだ。 幼い日、お屋敷の生垣の隙間から外の世界へ抜け出したときに似た高揚感を抱き、何か見えない? と彼女は帯同するメイドを振り返った。 「競争やよ!」 「負けないから……!」 一番乗りを宣言して別れたけれど、『イエローシグナル』依代 椿(BNE000728)の瞳はいつしか、小径よりも別の存在を求めはじめる。研ぎ澄まされた勘に従い足を進めて、心が欲する桜色に近付いていく。 緑けぶる草香に紛れ、春風が薄く色付いた頬を撫でた。 先を行く兎の姿を追っているのは、『童話のヴァンパイアプリンセス』アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)。 「待ってくださいミル——……あっ☆」 木の根につまずき転んだ少女は、身を起こしかけて動きを止めた。擦りむいた膝の痛みに、ではない。低くなった視点の先、茂みの中に小さな空間があったからだ。 掻き分けた茂みの多くはみっしりと枝葉の詰まったものだった。幾度目か、空洞へ抜けるような軽い手応えに、セシル・カーシュ(BNE000431)は胸の内で拳を握る。戯れの勝負といえど負けを甘受するつもりはない。 膝を付き、身を屈めて覗いた小径は、なるほど確かに梢のトンネルと呼ぶに相応しい。 茂みのふちに幾らか見えた小さな花は零れた一片に過ぎないと知れた。 『鉄心の救済者』不動峰 杏樹(BNE000062)が覗き込んだ連なるアーチの内側は、無数の小花に彩られている。 「あ、杏樹殿……、先駆けは自分に任せるで御座るよ!」 這い進むような小径では後ろからの眺めがイケナイことになると気付き、『ニューエイジニンジャ』黒部 幸成(BNE002032)は慌てたふうに先を行く。 径は細く蛇行して、分岐と交差を繰り返した。 枝々を編んだような天蓋をすり抜けたわずかな木漏れ陽が、光の筋を描いて落ちる。分岐に落ちた簪。枝に掛かった細いリボン。先達の跡をなぞって進んだ先は行き止まりで、けれど二人は確信を持って緑の壁に飛び込んだ。 ぎゅっと目を閉じ、ばさばさと頬を叩く枝葉を突き抜ける。 花の香りがした。 水のせせらぎが聞こえる。 そろりと開いた瞳に、光と、空と、淡紅が満ちた。 其処はまさしく、雄大な枝垂れ桜が咲き誇る、春溢るる幽玄の庭。 ●花謳う庭 「遅ーーいっ!!」 ぷはっ、と枝葉を払って小径の出口に顔を出した『凡暮驟雨』伊勢 一日(BNE000411)を出迎えたのは、待ちくたびれた皆の声。満面の笑み。そして、 「ほな、早速♪」 間髪入れぬあたたかなもてなしだ。 澄んだ薄緑の茶を朗らかに差し出す椿の後ろで『二等兵』隠 黒助(BNE000807)はそこはかとなく目を逸らした。 あやつが迷ったら哀れと思いはじめは同行したのだが、探索の当てが外れたらしき一日からジリジリと遠離り、隙をみて置き去りにしてきたことを悔いてはいない。最下位の罰ゲーム——センブリ茶を回避するには、尊い犠牲を余儀無くされるときもある。 潔く杯を呷る勇姿には歓声と拍手も湧いた。 声にならぬまま悶え転げ、やがて杯を落として力尽きていた一日は、頬に冷たい飛沫を感じてのろのろと意識を起こした。 「そろそろ復活してきたらどうだ?」 「獲りたてのニジマスも焼くで御座るよ」 杏樹と幸成が手招く先、枝垂れ桜を頭上に仰ぐ特等席に、既に宴の準備が整っていた。 「どや! 定番は押さえたで!」 椿が広げた重箱には、おにぎりは勿論のこと、たこさんウインナーから里芋の煮っ転がしまで多彩なおかずも並ぶ。ちなみに卵焼きは甘め派だ。 「ぼくのは豚の生姜焼きや唐揚げもあるよ!」 隣で菊之助が、息子に作ってもらった弁当を披露し得意げに胸を張った。 「……続きまして、わたくしの手作り弁」 「ちらし寿司は取り分けますから、遠慮なく仰ってくださいね」 いそいそとミルフィが取り出した包みは、微笑むアリスの手により、右から左へ流れるようなさり気なさで鞄の奥へ封印された。何故と縋るミルフィを黙殺し、アリスは皆の胃の健康を護りきる。 「花見とエリューション退治、どちらが主目的か判らなくなりそうではあるな」 苦笑しつつも、いずれにせよ今は花見を楽しむのが得策かと洋酒の栓を抜くセシルに、モニカは淡々と料理を並べながら頷いた。 「他所は桜が変異して暴れてる場所ばかりじゃないですか。物騒過ぎておちおち団子も食べられませんよ」 団子、と発する際にチラリと横目で主を見遣る。 「大勢の方とご一緒だと、お食事もより楽しく美味しくいただけますわね」 彩花の取り皿には皆の料理が次々と乗り、そして次々と消えていく。瑞々しいレタスとハムを挟んだこんがりパンのサンドイッチなどは早くも三切れ目を獲得していて、提供した杏樹の顔を綻ばせた。 滝のように垂れた枝から、滴るように花が散る。 瞬きも忘れ見上げる拓真の茶のコップに、泡立つ麦芽の杯がコツリと合わせられた。 「嗚呼……、桜花のなんと儚き色よ」 低い声が詩うように言の葉を紡ぎ、男は物憂げな眼差しで感嘆を吐く。 「良い酒だ、まさに至福。世に刹那の満ちたることを思えば殊更、な」 服も髪も顎髭も草まみれの三十路ニートですけどこの人、とは敢えて言わず、黒助はあたたかなまなざしで一日の空いた杯に酌をしてやる。 豊かな時間は人を潤す。 美味しい食事とのどかな春の陽。昨晩は楽しみ過ぎて寝付けなかった幸成のまぶたが重くなるのも無理はない。 桜餅を握ったままゆらゆらと舟を漕いで傾ぐ頭に、杏樹は微笑み手を伸ばした。眠りにゆるんだ彼の頬は優しい膝枕へ導かれ、ぬくもりに触れて蕩けるような夢へ落ちる。 ●仄光る怪 陽が落ちればやや肌寒くもある山の中、大気に戦の気配が張りつめた。 見守る者の信頼を背負い、戦場に立つ八名は前を向く。 「うちの頑張り見といてな!!」 凛とした声と共に、椿の指が印を切る。守護の力が磁場を震わせ、結界が細波のように広がっていく。 厚い雲が月を覆い、桜の幹に貼り付き交互に明滅する二つの蛍光だけが夜を照らした。 その闇に、鮮明な青白い光が閃いた。我が社の提携メーカーのものですのよ、などと微笑む余裕を見せて彩花がかざす携帯電話のLEDライト。窺う様子の蛍へ向けて更に黒助が、掲げたランプを点滅させる。 巨大な蛍が蠢いた。 ヴヴ……とかすかな翅音を立て、一匹が幹を蹴る。 ふわりと浮いた淡緑の光は瞬く間にランプへ迫った。短く息を呑む黒助に頭から突っ込んでいく。 だが、衝撃は彼女を打つ直前で遮られた。堅い外殻と金属の手甲とが搗ち合う鈍い音。みしりと骨に響く重みを受け止めた一日は、もう一撃、と蛍がわずかに身を引いた間隙を突いて鋭い蹴撃をお返しした。 蹴りが生んだ風を往なして旋回した蛍は突然、ビキリと響いた音と共に地に墜ちる。鞘翅に突き立った矢は、桜を射線に入れぬよう真横に回り込んだ杏樹が射たもの。 墜落した蛍に、すかさずセシルが肉薄する。その肩を十字の光が貫いた。幹に残るもう一匹が光の砲撃を放ったのだ。奥歯を噛んで痛みを捩じ伏せ、彼は全身から気糸を放出する。 絡む気糸を払い脚をばたつかせた蛍は、四色の魔光に全身を穿たれてその脚すらも失った。光の幾つかは避けても、終焉からは逃れきれない。魔を導き杖をかざした姿勢のまま、アリスは一匹が完全に動かなくなるまでを見届けた。 大丈夫。私だって立派に戦える。 杖を握る両手にもう一度力を込めて、残る一匹に向き直る。 「桜に蛍というのも悪くない……が」 これも仕事と瞳を細め、黒助は首筋に触れた。首輪を飾る銀のクロスの冷たさに息を吐く。吐息は天使の囁きを連れ、清らかな微風となって仲間の痛みを削いでいく。 「これがエリューションでなければ、幻想的な光景と言えただろうがな」 異形であれば粛正するより他にない。セシルは桜を仄かに照らす淡緑を見据え、手にした鋼糸を引き絞る。 光線を放つ術を持つ一匹は攻撃のために幹を離れる必要は無い。それでも、椿の操る光の誘惑に、蛍はもぞもぞと落ち着きなく幹を這った。揺れ動き点滅する緑の光に、とうとう、堪らぬ様子で飛び立った。 まっしぐらに椿へ向かう蛍の前にまたも一日が立ちはだかり、仲間の報復とばかりに命を啜ろうと掴みかかる。抗い暴れた蛍が彼から逃れるやいなや、杏樹の精密射撃が翅をかすめる。 蛍の尻が光を強め十字に煌めきかけたとき、桜との間を断つべく蛍の背後に回った幸成が吼えた。 「杏樹殿には指一本触れさせぬ!」 暗黒に染まった鋼糸を手繰り絞首の輪を投げ掛けると、両端を左右に引いてギリリと一気に締めつけた。 そこへ、炎を滾らせ彩花が駆けた。 二匹それぞれに得意の技があるならば、反対に苦手な分野もあるということ。狙いのずれた蛍の光線に腕を灼かれたが、彼女は構わず踏み込み懐に入る。深く落とした腰を基点に抉るように拳を突き上げ、蛍の腹に灼熱の一撃を叩き込んだ。 淡緑の光が放物線を描く。ゆるく一度明滅した光は、地に墜ちる前に消えたきり、もう二度と光を帯びることはなかった。 ●現に視る夢 桜の根を傷付けぬ位置に死骸を埋めた黒助は、はらはらと花弁を散らす枝垂れ桜の下で鎮魂の唄を捧げた。杏樹は負傷者の血を清水で濡らしたガーゼで拭い、そっと包帯を巻く。 「あとから来た人らが嫌な思いせぇへんよぉ、綺麗にしてかんとね!」 椿らが宴のあとの掃除もきちんと済ませ、一行は渓流を下る帰路につく。 川に浮かべた小舟に乗り込む瞬間、小舟がぐらりと大きく揺れて川面に映る月光が千々に乱れた。思わず声を上げかけた杏樹は幸成の手を強く握り、幸成はもう片方の手で杏樹の背も確と支えてやる。 「……はっ!」 揺れが収まり我に返った幸成はパッと手を離し平静を装って舳先に立った。舟が川面を滑りだせば、風が頬の熱を冷ましてくれる。そんな彼の背を目の端に、杏樹は揺りかごのような心地良さに包まれて微睡みの底に沈んでいく。 二人だけの空間で安堵も手伝い、アリスも小さなあくびを零した。ことん、と肩に触れた重みに微笑み、ミルフィはそっと囁く。 「お疲れ様です……お嬢様」 水の流れは揺らめく優しさで舟を抱き、月は仄白い光で宵を見守る。 ひらひらと舞う花弁に見蕩れていたら、彼女の横顔が目に入ってますます見蕩れた。 「に、荷物が多いからやよ!?」 間近で見つめてくる菊之助に、椿は隣に座る理由をそう弁明する。肩や膝が触れてしまうのも、舟が狭いからなのだから、仕方ない。手が触れたのだって、揺れた拍子の偶然だ。 そして、触れた手が互いに離れずそのまま重なっているのも……、離す理由が何処にも無いという、ただそれだけのこと。 「……」 「……」 「……女二人でこんなの乗って虚しくないんですか、お嬢様」 前を行く舟を視界に入れず崖上の桜ばかり見上げる主に、とうとうモニカが切り込んだ。 ピシリと固まってきっかり三十秒、彩花は顔の横で可愛らしく両手を重ねてみたりしながら思いついたように一息に語る。 「わ、わたくしはほら相手が居ないのではなく作る気が無いのですから。それに任務で色恋沙汰目当てに動くなどと不謹慎なことはしないというだけであって……」 「……」 モニカのただ冷えた眼差しが彩花の心を看破する。ぱた、と両手が膝に落ちる。己の言葉がブーメランのように己自身を突き刺した。 リア充爆発しろ。 誰かの心の叫びをも乗せて、河はただ滔々と流れゆく。 取っておいた酒を含めばほろ苦い熱が喉を落ちた。セシルは杯に浮かんだ花弁を肴に、ゆるりと流れる時間の贅沢を知る。 季節は巡り、時は移ろう。景色が色を変えるように、人もまた変わっていく。世界とて、ずっと同じまま続く保証など無いのだとリベリスタは知っている。 ひとり舟に揺られ、花弁のひとひらを掌に握り、拓真は願った。願い、そして誓う。 叶うなら、また再び——、と。 呟くように口ずさんだ唄は風に乗り遥かな高みへ運ばれる。 「また、見に来たいものじゃなぁ……」 来年も、再来年も。季節が廻ったその先に。 「ああ」 目を細めるだけの淡い笑みと共にぽつりと洩れ出た黒助の言葉に、一日は寝転び天を仰いで頷いた。 「望むなら、望むように為せたなら、また此処へ辿り着けるだろう」 予見めいた物言いは、自ら結末を引き寄せる覚悟の上に成り立つ。 「そのためにも、我らは足掻かねばなるまい」 明日を、未来を、世界を望むままにしたければ、他でもない彼ら自身が護り紡いでいくしかないのだから。 はらり、はらり、花弁は静かに舞い降りる。 伸ばした掌が掬う花弁は小さくて、けれどいつしかそれは掌を埋めるほどに降り積もる。川面は淡紅に覆われ、舟は桜色で満たされた。 朧な夢の欠片を胸に抱いて、川は現へと続いていく。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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