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<黄泉ヶ辻>でぃあまいふれんず


 繁華街の中央で、5人の男女が佇む。
 此処で散った友を、最後まで彼らしさを貫き通した、5人にとっての誇りを、想って悼んで彼等は立ち尽くす。
 そう、此処は『骨抜きカルビ』が息絶える戦場となった繁華街。
 だが人通りの多い往来に在って彼等の姿は異様に浮いており、かつ非常に邪魔だ。
 人目を気にすると言う事を何処かに置き去りにした5人を、道行く人々は関わり合いにならぬ様にと避けて歩く。
 そう、それが正しい彼らに対する対応だ。
 なのに、
「おう、お前等こんな所でぼーっとしてんじゃねえよ。邪魔なん……っんんんん?!」
 ガラの悪い男が一人、彼等の一人にわざと肩がぶつかるように歩き、言い掛かりをつけて絡もうとする。
 5人組の中には顔立ちの整った少女等もおり、恐らく男は其の少女に絡むのが目的だったのだろう。
 だが男が最後まで言葉を発する事はかなわなかった。
「ふぅん、口は悪いけど舌は綺麗ね。はい、ちゅーっ」
 大口を開けた男の舌をバチンと切り取り、黄泉ヶ辻に所属するフィクサード『情熱檸檬キャンディ』はレモン汁を振りかけて舐める。
「っ! きぁ…………」
 常識を疑う光景に、道行く女子大生が悲鳴を上げようとするが、其の悲鳴は喉ごと声帯を抉られて掻き消されてしまう。
「お姉さん煩いよ。カルビさんが静かに眠れないじゃないか」
 不機嫌そうにスプーンで女子大生の喉の肉を掬い取った少年は、同じくフィクサード『天才DHC』だ。
「あら、檸檬ちゃんも天才君もせっかちね。じゃあもう、はじめましょうか。ロマネちゃん、絶頂ちゃん、よろしくして良い?」
 先走って人を殺めた2人のフィクサードの行動に『お鍋系アイドル煮え煮え』が全員にGoサインを出す。
「おおおおおおおろろろろろろろろろまねこんてぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 どうみても未成年と思われる少女『憧れロマネコンティ』が翳した酒瓶に、舌を切り取られた男と喉を抉られた女子大生の傷口から噴き出す鮮血が吸い取られて行き、危険を感じて逃げ出そうとした通行人たちは、
「君達にー、恨みは無いけれどー、こうしなきゃ俺達の気が済まないんだよねえ。でも君達は幸運さー。だって絞殺はあらゆる死に方でいーちばん、えきさいてぃーんできもちーんだぜ。えくすたしーぃぇあ!」
 まるでアニメか何かの様に伸びて周囲に張り巡らされたロープに首を引っ掛けて囚われる。ロープの主『首絞め絶頂物語』がロープを一回弾くと、吊られ呼吸困難に陥っていた人々の首の骨が音を立てて圧し折れた。
 平和な繁華街が突如として血と死に染まる。
「うん、貴女ね。貴女が良いわ。はい、りぴーとあふたーみー。OK? あーぶくたったにえたったー」
 お鍋系アイドル煮え煮えの言葉に、恐怖に顔を真っ青にして立ちすくむ一人の女性からぼしゅうと水蒸気が上がる。
「にえたかどうだかたべてみよー。ハイ、出来上がり。皆ー、ご飯にしましょう」
 煮え煮えの呼び掛けに殺戮に励むフィクサード達が手を休めて集う。
「あー、煮え煮えさん酷いよ。目まで煮えてるじゃないかー」
「そうねえ。煮えた舌は流石にセクシーじゃないわねえ」
 口を尖らせ文句を並べるDHCと檸檬キャンディ。だが其れでも彼等が友人からの心づくしを拒否する事はない。
 車座に座るフィクサード達。
「カルビちゃんは此処で死んだのね」
 寂しげに呟く煮え煮え。
「カルビさんはミルクさんと一番仲が良かったから……。でも一言くらい言ってくれてれば、こんな事には」
 血と死の中で、其れ等には無頓着に彼等は友の死を悼む。
 彼らにとって大事なのは己と友のみ。
「アークは皆ロマネコンティにする」
「舌を切り取り」
「目を抉って」
「首を絞めて殺す」
 故に其の友を奪われた怒りは深い。
「……駄目よ。殺しては駄目。カルビちゃんの望みはミルクちゃんを救う事。殺すんじゃなく、捕まえてミルクちゃんと交換しないと、……駄目」
 だが同じ怒りを共有しながらも、煮え煮えは全員に釘を刺す。
 そう、彼等の今回の目的は、もう一人の友である『お洒落ミルクセヰキ』を救い出す事。 
「ロマネコンティにしたら駄目?」
「舌位なら駄目かしら?」
「目も駄目なの?」
「首は絞めても良いと思う」
 口惜しげに、歯噛みするフィクサード達。
「それは良いわよ。寧ろそうしましょう。殺さなきゃ良いわ。一人は捕まえて、後は全員伊達にして返しましょう。……私だって煮殺してやりたいんだもの。せめて其れ位は、ね」
 話と食事を終えたフィクサード達は、殺した死体から骨を抜いて集め始める。
 彼等は彼の友程に骨の良し悪しは判らない。だからせめて数を集めるのだ。
 たくさんたくさん集めれば、きっと一本くらいは彼も気に入ってくれるだろうから。


「さて諸君、敵が現れた」
 集まったリベリスタ達を前に『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)はシンプルに告げる。
「敵は黄泉ヶ辻のフィクサード5人。彼等は『お洒落ミルクセヰキ』の救出を目的とし、『骨抜きカルビ』を殺害処分した一件で諸君等に恨みを抱く、明確な敵だ」
 一連の事件の発端は、『お洒落ミルクセヰキ』と言う名の女性の中身を吸い取り残った皮を着込むと言う変態嗜好を持つフィクサードをアークのリベリスタ達が捕らえた事。
 そしてつい先日その友である『骨抜きカルビ』をやはりアークのリベリスタ達が激戦の末に撃破し、殺した。
「繁華街は既に血の海だ。其の血の海の中央で奴等は諸君を待っている。もし諸君等が現れねば、奴等は別の場所で同じ事をするだろう」
 其の偏執的な妄執を注力した黄泉ヶ辻は、ある意味裏野部よりも破壊的で、始末に終えない。
「彼等は一人一人が『お洒落セヰキ』や『骨抜きカルビ』と同格だ。非常に厄介な手合いと化している」



 資料

 フィクサード1:情熱檸檬キャンディ
「情熱キッスは檸檬味♪」
 他人の舌を切り抜き、レモン汁をかけて嘗め回す事をべろちゅーだと言い張るフィクサード。
 舐め終わった舌はごっくんするらしい。

 アーティファクト:舌切り雀
 出血効果付きの鋏。口を開いた相手の舌を狙う際の部位攻撃にペナルティが掛からない。

 EX:伊達男
 近単物。非常に大きな威力を誇り、部位攻撃にペナルティが掛からない。出血と必殺付き。


 フィクサード2:憧れロマネコンティ
「此れが! 此れこそが! ボクの求めたロマネコンティ!」
 ロマネコンティとしか言い様が無い。未成年の残念な女性。

 アーティファクト:黒々とした瓶
 血を吸い集める瓶。手作りの『ろまねこんてぃ』と書かれたラベルが貼られている。
 半径30m以内に出血状態の者が居た場合、其の者は通常の出血ダメージに加え100点追加でダメージを受ける。この追加ダメージ分の血液が瓶の中に蒐集され、所有者が瓶の中の液体を飲む事でその収集分のHPを回復する。

 EX:ブラッドムーンフォークロア
 アーティファクトの力を借りて敵対者の血を噴出させ、空に深紅の月を作る。
 遠全神、出血、不吉。


 フィクサード3:首絞め絶頂物語
「首絞められるのってさいこーぅ! 超! えきさいてぃーん! 君も、締めたげるよ。うへへへ」
 首を絞められてエレクトし、其のお返しに首を絞めるフィクサード。
 自分自身も良く絞める。

 アーティファクト:SM上級者用首絞めロープ
 呼吸不要を持つ者がこのロープで首を絞められれば攻撃力分回復する。
 呼吸不要を持たぬ者がこのロープで首を絞められれば、ダメージと共に呪縛を受ける。首を絞める際の命中判定にペナルティを受けない。

 EX:首絞め絶頂物語
 アーティファクト『SM上級者用首絞めロープ』を伸ばし、複数の人間の首を一気に吊り上げる大技。
 遠複物、呪縛、必殺。


 フィクサード4:天才DHC
「ほら、マグロの目玉とか頭に良いっていうじゃん? そんなんで頭良くなるなら人間の目玉はもっと頭良くなるんだよ。うん、僕様天才」
 人の目玉を食べると頭が良くなると信じる子供の姿のフィクサード。実際の年齢はそれなり。

 アーティファクト:僕様専用スプーン
 肉をさくりと掬い取れるスプーン。出血効果付き。

 EX:おすそ分けDHC
 神味全付、命中大きく+。


 フィクサード5:お鍋系アイドル煮え煮え
「あーぶくたったーにえたったー、にえたかどうだかたべてみよー。うん、おいしv」
 黄泉ヶ辻限定のマイナーアイドル煮え煮え。

 アーティファクト:超絶沸騰鍋掴み
 この鍋掴みで触れられると、触れられた物(者)の中の液体が沸騰する。お湯を沸かすのに超便利。
 生物がこの鍋掴みで触れられるとこの世の物とは思えぬ苦痛と共に大きなダメージを受ける。必殺付き。

 EX:おなべの歌
 神遠味全。BS回復、HP回復。



「気持ちの悪い連中だ……。諸君等の健闘を祈る」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月14日(月)23:20
 このシナリオはフェイト残量によらない死亡判定はありませんが、戦闘不能状態になって捕獲されると以前捉えたフィクサードや、今回捕縛したフィクサードが交換で解放される可能性があります。

 さて『仲良し七人組』の残り全部がでてきました。
 他にも色々考えはしたのですが、この5人でいきます。
 気持ち悪いフィクサード一杯思い浮かぶんですよねえ。

 一人一人が結構強力な実力者です。
 では戦いましょう。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
★MVP
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
インヤンマスター
門真 螢衣(BNE001036)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
ホーリーメイガス
ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)
デュランダル
ノエル・ファイニング(BNE003301)
インヤンマスター
華娑原 甚之助(BNE003734)


「DHCじゃなくてDHAだろこのバァァァァカ!!」
 響く『華娑原組』華娑原 甚之助(BNE003734)の哄笑。
 正にその通り。マグロの目玉に含まれてると言うのはドコサヘキサエン酸、DHA。DとHとCのは、化粧品やサプリメントを販売する会社の名前だ。
 けれど、その言葉に涙したのは『天才DHC』では無く……。
「わ、悪い!? 誰にだって間違いの一つや二つは……うぇえぇん天才ちゃんごめんー」
 名付け親である『お鍋系アイドル煮え煮え』だ。
 彼等の名称は当人の物である一つを除き、全て彼女が名付け親である。
 そして彼等は、その名を仲間の絆として名乗り、その名に大きな誇りを抱く。
「だ、大丈夫だよ煮え煮え! ほら、DとHとCの会社ってば通販健康食品売り上げNo1(1999)だったりするんだよ。No1だよ! 天才の僕様にぴったりじゃん! 僕様、ほら目玉! 健康食品!」
 酷い茶番である。お前何歳だよ。
 大慌てでフォローにはいる天才だが、甚之助の口の悪さはそのフォローを遥かに上回り……、
「ケッヒャ! 泣いた顔はよりブスだなドブス! んなブスだからドマイナーなんだよ!」
 品の悪い笑い声が響き渡る。
 其れは涙目になりながら鍋掴みで掴み掛かる煮え煮えを式符・鴉と合わせて誘い出す為の演技……、と言う訳でもなく普通にこれが彼の素なのだろう。
「いってェぞブス!」
 超絶沸騰鍋掴みで掴まれ、体内の血液が沸騰する痛みに顔を顰めながらも、口は減らない彼。
 けれど彼は知るべきだったのだ。
 バチン、と鋏が何かを絶つ音が響く。
「貴方品が無いわねえ。顔は悪くないけど、流石に貴方の舌は要らないわ。二枚も三枚もありそうだし、ねぇ? 伊達男さん」
 冷め切った声。『情熱檸檬キャンディ』が耳元で囁き、声帯ごと喉を断ち切られた甚之助が血を吹きながらゆっくりと地面に……、
「やだなあ。そんなに簡単に倒れないでよ。目が狙いにくいじゃん」
 倒れ行く身体から肉が恨みの篭ったスプーンで大きく抉り取られる。

 そう、彼は知るべきだったのだ。恨みを集め、我が身を囮とするならば、せめて立ち続ける為の手段くらいは用意すべきである事を。
 彼等は個々に、欲望のままに、バラバラに戦う不仲なグループでも、決まった条件でしか、或いはランダムにしか攻撃対象を選べないテレビゲームの中の敵役でもないのだから。
 此れだけ腹の立つ相手に集中攻撃しない理由は特に無い。


 黄泉ヶ辻がフィクサード『仲良し七人組』の5人がリベリスタ達の想定を大きく裏切っていたのは、そう、彼等の全員が前衛として前に立っていた事だ。
 その様は、前回『骨抜きカルビ』と戦った面子にくっきりと彼の戦い様を思い起こさせ、5人が彼の弔いと復讐の為にこの場に立っている事を強く物語る。
 その結果起こったのが、そう、骨抜きカルビとの戦いと同じく前衛枚数を敵が上回る事で起こる後衛への浸透。
「いかせねえよ」
 トンファーで口元を庇う事で舌切り雀を警戒しながらも檸檬の前に立ちはだかったのは『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)。
 恐らくは純粋に1vs1の戦闘能力は一番高いであろう檸檬を後衛に切り込ませるわけには、いかない。
「あら、キスも怖がるチキンの癖にナマイキ。でも行くのは私じゃないわよ」
 けれど、檸檬は夏栖斗の前から動かない。
 もっとも夏栖斗が恐れるのは舌を切り取られる事其の物よりも、後ろに、中衛に控える恋人、『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)の眼前でベロチューなんぞしようものなら後でどうなるかわからないと言う、ある意味非常に幸せな恐怖なのだが。
 それはさて置き、煮え煮えも、天才も、より前衛的なアーティファクトを持った彼等は動かず、3枚となったリベリスタの前衛を越えて浸透したのは『憧れロマネコンティ』と『首絞め絶頂物語』の二人。
 迎え撃つ様に『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)の持つRising Forceから放たれた銃弾。
 ロマネコンティの動きを注意深く観察し、信頼してくれた仲間からの期待を裏切るわけには行かぬとの想いをこめて、宙を裂いて飛ぶ銃弾は確かにロマネコンティの手に持つアーティファクト、黒々とした瓶に命中する。
 ……だが、虎美の表情が歪む。硬い。あまりに硬すぎる手応え。
 虎美の弾丸は確かにアーティファクトに命中はしたものの、瓶の硬度に弾かれ僅かに所持者であるロマネコンティを揺るがせた程度に終る。
 一瞬で乾きひり付く喉に、焦るなと自分に言い聞かせた虎美は、今度こそと更に神経を細かくして狙いを定めるのだが、……そう、既に彼女は焦りに囚われ、縛られていた。
 虎美を縛るのは、仲間達からの彼女ならと言う信頼。その信頼が、一度は失敗してしまった、成功の望みの薄い作戦から彼女を解放してくれない。

 前衛を越え、中衛へと侵攻してきたロマネコンティと首絞めを眼前にしたこじりは、何かを無理矢理飲み下す様に、喉を一つ鳴らす。
「同属嫌悪、と言えるのでしょうね」
 敵の瞳に映る自分の姿が、いやに醜く見える。
 不安だ。自分が本当に恋人を、御厨・夏栖斗を心から愛しているのか。
 想いは確かに胸にある。でもその想いの正体を、今のこじりは信じられない。
 執着の理由は……。
 眼前のフィクサード達と自分はそう大差無い。そんな風にすら思えてしまう。
 そう、例えば、彼を自分の手で殺してしまえば、彼は永遠に変わる事無く彼女の中にあり続ける。
 そんな、誘惑。
 舌に乗せて放つはずの毒が、じくじくと我が身を蝕む。
 けれど、きっとそう、駄目なのだ。目の前のフィクサード達の様に我侭に、傷を舐め合って生きるには、彼女は少々気高すぎる。故に彼女は唯一人苦しみ続けるしかないのだろう。
 思いを馳せたのはほんの一瞬。
 まるでスイッチが入ったかの様に、こじりの、一匹の戦鬼、デュランダルの体から闘気があふれ出す。
 戦いの緊張感が、吐き気を、胸のつかえ、不安と憂いを、ほんの少し和らげてくれる。
 彼の戦う後姿が、何かを胸に灯す。
 何時も心砕く戦場に向かう、誰より優しい彼の為に、何も出来なかった悔しさと苦痛。
 眼前の、彼女を惑わした敵達に『退きなさい』と彼女は思う。彼の背中を隠さないで。私と彼の間に立たないで。
 私が、私が、私が、私が、傷付く彼を、全てから、
「私が、彼の心を護る」
 その宣戦布告は襲い来る運命に。舌に乗せきれぬ万の想いの一欠けら。


 凛と立ちはだかるこじりに足を止められるフィクサード達。
 一人ならば、もう一段階向こうへも行けるのだが、……けれど此処で充分なのだ。
 前衛へと回復を飛ばせるギリギリの距離に居た『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)と『鋼鉄魔女』ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)と視線を絡ませ、極上の獲物を射程に収めた首絞めが破顔する。
 切り込む事で、全員を認識下に、或いは射程範囲に収めた2人のフィクサードの全体攻撃。
「逝けよ。エキサイティングハイウェイロープスペシャル!」
 適当な技名を叫ぶ首絞めのEX技『首絞め絶頂物語』が発動し、伸びるロープがリベリスタ達を絡め取り、縛る。
「…………ろまねこんてぃ、……むーん・れっど!」
 次いで襲い来るは首絞めの適当技名に触発されたか、ほんの少しの迷いを見せたロマネコンティのEX『ブラッドムーンフォークロア』。
 巫山戯て見える2人だが、放たれたEX技の齎す被害は甚大だ。
 首を縛り上げ、血を絞り出す。空に血で作られた深紅の月が登る。
「キリシマ、よぅやった。褒めてやる」
 けれどその連携攻撃にも癒し手の一人、ゼルマは囚われる事なく切り抜けた。
 回避能力に優れる訳でも、何か特殊な能力を持つわけでもない彼女が首絞めとロマネコンティの魔手を逃れえた理由はただ一つ。 
 詠唱にて聖神の加護を願うゼルマが先程誉めた通りに、俊介が己が身を犠牲に、盾に、彼女を庇い通したからだ。
 発動する癒しの手にある者は血を止め、ある者は身の自由を取り戻す。
 癒し手達の薄氷を踏み渡る様な、ギリギリの支援。
 だがそれでも尚、傷跡は深く残る。

 無論リベリスタ達もただ黙って攻撃を受けていた訳ではない。
 白銀の騎士槍が煮え煮えの肩口を貫く。注ぎ込まれる『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)の闘気が爆裂し、煮え煮えの傷口を更に大きく広げ抉る。
 デッドオアアライブ、生か、死か。
 ノエルは口を開かない。交わす言葉も持たない。
 どのような相手だろうと、例え相手が何人いようと、それが世界の敵ならただ貫くのみ。
 彼女は、彼女の信じる正義を成すだけだ。
 けれど服を血塗れにした煮え煮えの唇には、笑み。

 ざらりと占われる不運、現実に威力を持った影が『下策士』門真 螢衣(BNE001036)より放たれ、首絞めを覆う。
 陰陽・刀儀でバランスよく強化された螢衣の陰陽・星儀は、確実に首絞めに付与されていた天才の御裾分けを剥ぎ取った。
「スプラッタショーはこれで終わりです。覚悟をしてください」
 首絞めを見据える瞳は、これ以上はさせぬとの強い意思に満ち、彼女の怒りを物語る。
 惨劇の痕。
 フィクサードとしても最低の部類に入る行いをした彼等を、許せはしない。
 例え人間が他の生命に同じ事を行っていたとしても、人の抱える原罪だとしても、人が人を食い物にして良い筈がない。
 此処に居る5人のフィクサードが自分達を人間だと認識しているかどうかは、わからねど。


 宙を裂いて飛ぶ蹴撃、夏栖斗の虚空が、魔力で貫通力を増した鋭い矢型の弾丸、こじりのピアッシングシュートが、其々に煮え煮えを貫き血を撒き散らす。
 EX『おなべの歌』を歌う事で血を止め、体力を癒す煮え煮えではあったが、そんな彼女を再度ノエルの騎士槍が貫く。
 回復を行ってはいても、此れだけの集中攻撃を受ければ其の身に溜まる被害は甚大だ。
 だが其れでも煮え煮えは笑みを絶やす事無く、歌い続ける。
 煮え煮えは、自分が倒れても構わないのだ。何故なら自分に攻撃が集まれば集まるだけ、仲間達は自由に動ける。
 敵陣へと切り込んだ二人が居る以上、リベリスタの回復役が完全に封じられるのも時間の問題。
 ならば仲間達の勝利を疑う理由がない。
 だから煮え煮えは、少しでも長く、たっていれば良い。少しでも、一発でも多く、リベリスタからの攻撃を其の身で受け止める事だけを考えれば良いのだ。
「おい! 降参しろよ! 無駄に殺したくはねえんだ! お前等も止まれよ! その子が本当に死ぬぞ!」
 投げ掛けられた俊介からの大声での、声だけで嘘で無いと知れる悲痛な降伏勧告を受けても、歌声は止まらない。

 一進、一退、……違う。少しずつ、リベリスタ達が崩れ始める。
 煮え煮えは地に倒れた。けれど、其れはゼルマを庇い続けた俊介もまた同様だ。運命を対価にしても、繰り返される攻撃の前にはまだ足りない。
 俊介を欠いては、ゼルマに首絞めの拘束から逃れる術があろう筈もなく、歯車のズレた時計が止まる。

 死の間際には、時がゆっくりと流れ、過去の記憶を振り返ると言う。
 伸びたロープに捕縛され、身動きの取れぬノエルもまた、近付く鋏、舌切り雀の切っ先を見ながら、己の過去……、否、自らがその手にかけた敵、己の内に刻み込まれた戦いの痕を振り返っていた。
 多く、殺した。ならば負ければ殺されるは道理。唯一つ、自らの正義を最後まで果たせなかった事が口惜しい。
 記憶の最後に出て来たのは、つい先日に槍で胴体をぶち抜いて胴体を泣き別れにして殺した、そう、今迫る死の同胞、骨抜きカルビ。
 さぞや恨まれている事だろう。だからと言って何の感慨も浮かびはしないけれど……。
 だが、ノエルが己の死を飲み込もうとした瞬間、
「殺さないわよ。だって貴女はミルクちゃんと交換する大事な人質だもの。大事に丁重に扱うわ。それが貴女への復讐よ。か弱い正義の味方さん」
 バチン。ノエルは声を上げる事も許されず、意識の糸を切り落とされる。

 次々と倒れる仲間に、螢衣が下した判断は撤退。
 出された合図に夏栖斗がノエルを、こじりが甚之助を、虎美が俊介を、其々確保しようと動き出す。
 けれど遅い。圧倒的に既に遅いのだ。
 ノエルに伸ばされた夏栖斗の腕の肉が、スプーンに抉られずるりと削げて血を撒き散らす。
 俊介を抱えた虎美の首筋に、中身のたっぷりと詰まった瓶が振り下ろされる。
「……ずっとずっとずっとずっと、……鬱陶しい」
 それも一度では無く、何度も何度も、虎美が瓶を銃で撃ったのと同じ回数だけ。瓶がぬるりと血に染まる。
 目の前で、確保される事を見逃そう筈はない。よしんば確保出来ていたとしても、荷物を抱えていては追いかける気満々のフィクサード達から逃げる事など出来ようものか。
 追いかけるだけの余力を奪うか、諦めの判断を誰も倒れぬうちに下すか、ただの快楽の殺しを目的とせず、明確にリベリスタに狙いを定めて捕獲を企む相手から逃げるにはそのどちらかの徹底が必要だったろう。


「判った、降参しよう。貴様らのような醜悪極まる者にくれてやるほどコヤツらの命の価値は低くないのでな」
 ゼルマのその言葉は、上っ面の皮肉以上に色濃く苦渋、屈辱、怒りが、滲んでいた。
 此れ以上無い、敗北宣言。
「そう。じゃあこれ以上は許しといてあげる。この女、……ノエル? だっけ。此れとミルクちゃんの交換ね。交換場所は指定するわ」
 ノエルの襟首を掴んで喋るは檸檬。他のフィクサード達は、唯黙り、暗く澱んだ目でリベリスタ達を……見る。
 煮え煮えを首絞めが抱え、背を向けるフィクサード達に、
「頼む。待ってくれ」
 袖を掴むこじりを振り解いた夏栖斗が進み出る。
「僕をノエルと交換してくれ。君たちにとってもアークの御厨を拿獲したって事実があるのはそれなりに意味があることじゃないかな」
 仲間を連れ去られる事に耐えれない夏栖斗。
 こじりの言葉を借りるならば、人一倍優しい夏栖斗。
 けれどそれが彼の弱さで甘さなのだ。
「馬鹿じゃないの。要らないわ」
「意味のない申し出だね」
「…………なんで、言う事聞かなきゃならない」
「それで喜ぶのはお前だけだろう」
 フィクサード達の返事は、嘲笑だ。
 尚も言い募ろうとした夏栖斗が、仲間達の手で引き戻される。
 悔しいのは、仲間が心配なのは、屈辱に身を震わせるは、彼だけではない。
「じゃあ、交換ヨロシクね。もう二度と会う事は無いわよ。それがお互いの為ね。貴方達の舌は、別に要らないわ」
 去り行くフィクサード達の足跡に、ぽたりぽたりと血の雫が垂れる。
 其れはロマネコンティがその手にぶら下げた瓶の、手作りのラベルから滲む……ラベルの下に隠された小さなヒビから漏れ出る、一人のリベリスタの執念の証。


■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
 DHC突っ込んでもらえてよかった。
 ほっとした。ありがとうございます。

 プレイングですが、スキル使用する時はわかる形で名前を書いてて欲しいのと、庇うは出来れば庇う側が確り書いてください。
 その他色々は出来ればプレイングを一度読み返して欲しいかなと。

 あと言い合いするのは良いんですが、プレイングの段階までその気分引き摺っちゃうと不健全かとも思います。


 人質交換も無事終了しています。
 彼等の再登場の予定はありません。
 ご参加有難う御座いました。


 MVPは素敵な女の子に。
 心情、行動、共に判り易く可愛らしいプレイングでした。
 ただVTSはもう参照不可能だったので何が書いてあるのか気になったままなんですけれど。