●少女の想い 貴方の微笑みと、真っ直ぐな言葉が大好きだった。 ただ、貴方の傍にいたかった。 でも、それが罪となるならば……私はどうすればいいの? 貴方に会いたい、貴方の声が聞きたい、抱きしめて欲しい。 今は叶わないって分かっても願って止まないの。 貴方の望む私になりたい、けれど自信はない。 大丈夫、頑張るよ? だって、私を受け止めてくれた人の願いだもの。 私は貴方の事を……狂おしい程、愛してます。 ●繋ぎ止める手 「今回はちょっと面倒なお話になるわ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はバツ悪そうに集まったリベリスタ達へ語り掛ける。 続けてスクリーンへ投射されたのは、何故かエリューションでもなければフィクサードでもない。 二人のリベリスタだ。 「こっちの男の人は瀧想介(たき・そうすけ)、こっちの女の人は浅井花音(あざい・かのん)。二人ともリベリスタよ」 何故敵の情報ではなく、仲間の情報が出て来たのか? 首を傾げる彼等の反応をみれば、イヴは苦笑いを零す。 「まぁ……落ち着いて聞いて欲しいんだけど、まずこの二人は恋仲の関係なの」 そこ、出て行こうとしない。と、踵を返したリベリスタへツッコミを入れるイヴ。 「ただ、何かあったみたいで……二人の距離が離れてしまったの。 それだけなら別にどうでもいいんだけど、問題なのはその所為で花音の方が死んでしまう予測が見えた事」 火スペの如く刺されるのか? それとも無理心中でも図るのか? どちらにしろリベリスタのそんな死に様は相当激しい事になりそうだと各々浮かべる最中、遮る様にイヴが咳払いをした。 「花音は戦いの情報を耳にすれば、どれだけボロボロでも出向いてしまうわ。 幾つか候補になる戦いに手を打ったのだけど……未来は変わらない。 寧ろ、根本的なところからどうにかする必要があるみたい」 ここまでの説明で、ある程度の経緯に理解を示すリベリスタ達。 イヴもスクリーンの情報を切り替え、言葉を続けた。 「一番近い未来予想だと……このエリューションとの戦いね。多分、現地の傍で彼女と接触したほうがいいわ」 途中で聞き入れた様子が見えても、嘘をついて戦場に先回りされてしまったら目も当てられない。 現地に着いてしまえば、最悪の事態は避けられるという事だろう。 「あと、想介。 彼にも接触して? ちゃんと二人の仲を修復する事が出来ないと意味がないから」 彼の意識も何かしら改めるところがあるかもしれない。 随分と回りくどい話になってきたところで、イヴが眉を寄せる。 「こんな事で有能なリベリスタ達を失うのはあまりにも酷いから……面倒だけど、頼むわね?」 溜息をついたリベリスタもいるが、資料を受け取る辺り、仕事はこなしてくれそうだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月04日(金)00:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●伝わらぬ思い 「今日の敵もなかなかの奴だったぜ」 そこら辺にありふれてそうな格好をした少年が居たのは、居そうにもない林の中であった。 傍にある小屋から研ぎ石を運び出し、濡らした表面へ鋼を擦る。 しゃり、しゃりと小気味いい音が林の静寂に溶け込んでいく。 「……誰だ?」 誰か居る。 途中の刀を構え、鋭い視線で辺りをゆっくりと見渡した。 「こんちはー、アークの依頼できましたー」 苦笑いと共に両手を上げ、式乃谷・バッドコック・雅(BNE003754)が姿を現す。 続いて、『紅玉の白鷲』蘭・羽音(BNE001477)と、『黄金の血族』災原・有須(BNE003457)が木陰から現れる。 早速説明に入ろうと、3人が口を開こうとした瞬間。 「幸せになろうとしないリア充なんて、爆発しちゃえ!」 いきなりの怒号を浴びせたのは、『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)だ。 引っ込み思案な何時もの彼女からは、想像出来ぬ叫びだろう。 「……あ?」 今怒られたのは、今件のキーとなる人物、瀧 想介である。 不機嫌そうな表情で睨み返す彼に、相変わらずの苦笑いで雅が言葉を続けた。 「急で悪いんだけどさ、花音の事、ちゃんと理解してる自信ある?」 唐突な質問に、訝しげな表情を浮かべたが、小さく頷く想介。 「じゃあ今彼女が何してるかも知ってる?」 「どういう事だよ?」 どうやら知らなかったらしい。今にも殴りかかりそうな文を羽音と有須が抑え込み、気づけば修羅場である。 「貴方の恋人が……たった1人で戦って、死ぬ未来が見えたの。今はあたし達の仲間が、助けに向かってるけど」 「何だよそれ……」 目を見開き、驚きをあらわにする彼の様子から、彼女の行動が想定外過ぎることがわかるだろう。 「放っておいたら、彼女はきっと、同じことを繰り返す。貴方の言いつけを守って、ね……」 自分の言いつけ、そのフレーズに心当たりは無いらしい。 何を言ったか? 全力で思い起こそうとするが何故か浮かばないようだ。 「強くなる様に言ってたそうですが……それって花音さんに傷ついて欲しくないってことでしょうか?」 有須の問いが、全てを彼の中で繋げていく。 「そんな未来、望んでないでしょう? だったら、あたし達と一緒に来て。彼女と、ちゃんと話し合って欲しいの」 ハッとした様子で顔を上げると、苦虫を噛み潰した様に表情を歪める。 「あんの馬鹿、どういう理解の仕方だよ」 想介は悪態をつくと研ぎ途中の刀を鞘に収め、小屋へと走る。 「彼氏が彼女を追いつめて、泣かせて! これで彼女を助けに行かないなんて言ったら、ほんとに爆発させるよっ?!」 「うるせぇよドチビ! 刀取ってくるからお座りして待ってやがれ!」 酷いキレ合いである。地団太踏む様に怒りを加速させる文を尻目に、言葉道理別の刀を手にした想介は4人へ道案内を頼み、現場へと向かうのであった。 ●すれ違い 寂れた廃校へ向かう一人の少女が居た。 可愛らしい服装とは似合わぬ巨大な剣が、一際目を惹くだろう。 体育館の鉄扉を開き、錆びたレールの音が耳障りに反響する。 その音に誘い出され、高まる不快感は戦いが迫っている事を少女へと伝えていた。 「アークのリベリスタだ。協力させてもらう」 彼女、浅井花音に声を掛けたのは、デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)である。 (「あれ……? 誰にもこの事は話してない筈なのに」) 突然の援軍に戸惑う花音だったが、敵は待ってくれない。 すぐさま怨念が具現化され、一種の生命体の如く揺らめくフォース・エリューションと姿を変えたのだ。 「花音お嬢さんは、想介くんが好きなの?」 ざっくりと問いを投げかけたのは、『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)。 「ふぇっ!? あ、その……はぃ。 好き、ですよ?」 ぽんと頬が紅潮し、戸惑いながらも素直に応えてしまう花音。 (「らぶこめいづぢゃすてす。らぶこめいづぢゃすてす」) 何故か復唱される言葉は、それだけ大切なことなのか? ともかくりりすが先陣を切り、疾風の如く駆け抜ける。 赤い軌道を残しながら連続攻撃が放たれるも、どうにか当たった程度だ。 「俺がカバーする、全力でやってくれ!」 快の心強い言葉にこくこくと頷く花音は、期待に応えるべく背負った大剣の柄に手を掛ける。 りりすの攻撃で体勢の崩れたエリューションへ、狙い済ました縦一線を浴びせるも手応えは浅い。 「ミリーも混ぜなさい!」 『出力セーブ中』ミリー・ゴールド(BNE003737)が小さな拳に業炎を携え、宙へ飛び出す。 全身全霊の拳を降りぬくが、残念ながら空振り。 だが気合の乗った拳が当たっていればどうなっていた事やら、風切る音が破壊力を物語る。 「いくのですよ~」 間延びした声とは裏腹に、空気を押し遣りながら魔力の固まりを来栖 奏音(BNE002598)が放つ。 マジックミサイルの名に相応しい破壊力がエリューションに直撃し、弾けるエネルギーの飛沫が花火の如く踊った。 時は少し遡り、AFで花音と合流したメンバーへ連絡を入れた4人は、想介と共に急いで廃校へと向かっていた。 「なんで花音に『強くなれ』だなんて言ったの?」 雅の問いに、想介の表情が曇る。 実際のところ、問わずとも彼の言う言葉の意味は察しが付いていたが……念の為だ。 「愛ゆえにですね、ですが……その花音さんは必死に戦っているのですよ……? あなたの本当の望みは。花音さんに強くなって欲しいことではなくずっと生きていて欲しいってことじゃないのでしょうか……?」 正誤どちらとも言わず、走り続ける想介。 それが雅の辿り着いた答えに確信を与えていく。 「そういう……意味もあるが、そういうこっちゃないんだ」 どちらとも言えぬ答えに、雅以外の3人が首をかしげる。 「違っていたら、ごめんなさい……。ですが、もし思う所あるのなら急ぎましょう? 手遅れにならないうちに……」 「あぁ、悪いな」 5人は向かう、今見えぬ答えを探り合う仲間達の下へ。 ●男にとって死活問題 2/14、3/14、夏のビーチ、12/24~25……その日の思い出が走馬灯の如く脳内を廻る。 「ぐぅっ!?」 苦い思い出が脳を握り潰さんとするかの様に鈍い痛みをもたらし、苦悶の表情を浮かべる。 新田 快、23歳の青年の事だ。 よりにもよってこの思い出を引っ張り出されるという不幸、それは恐らく無いであろう何て懸念をすれば意識した事となり、見つかりやすいものだ。 寧ろ、神様としてはこの方が面白いとか抜かしかねない。 「ふよふよと面倒な奴だね」 りりすの刃は尾を引く粒子を撫でるだけに終わった。 だが、勢いの止まらぬミリーに関しては別の様だ。 「何のために剣を担いでるのよ! 壁を押しのけてでも前に出なさい!」 飛び上がり、一回転加えての拳は下へ引き摺り下ろすハンマーブローが叩き込まれ、炎が爆ぜれば亡霊が地面で弾む。 炎に包まれたエリューションへ、花音の大剣が横薙ぎに迫り、ど真ん中を切り裂いた。 「やれば出来るじゃない! 自分に素直、コレ大事よ。まずは自分に出来る、自分だけの強さを探すのだわ!」 唐突の褒め言葉に呆気に取られる花音。 「まだまだですよ~♪」 追い討ちは終わらない、ミリーから、花音からと攻撃を浴びせられ、よたよたとしたエリューションに魔力の爆撃が降り注ぐ。 再び地面にめり込まされるかの様な深いダメージに、エリューションは一度四散すると、奇声を上げながら再構築されていった。 「もう分かっていると思いますけど~……奏音達は花音さんと想介さんの事で、ここに来てるんですよ?」 再びエリューションが攻撃態勢を取り、一同に身構える中、奏音は言葉を続ける。 花音もミリーの言葉がそこを指し示していたと理解すれば、納得し小さく頷く。 「多少でしたら譲れるところを合わせるのもアリだと思いますよ? でも、相手の理想だけに合わせてしまうのは駄目だと思うのですね~」 けれど、どうすれば? と思う花音に奏音は続けた。 「自分を想介さんの傍に置いておきたいのでしたら、初めは何か一つでもいいですから自分で好きになれる自分を見つけて、それを宗助さんに解って貰う方が良いかな〜……と、奏音は思うのですよ」 同じ名前同士、偶然の一致にクスッと笑い逢う二人。 そんな彼女達の傍で、再び快が呻き声を上げていた。 2012/2/14(火)平日の事だ、彼は夕日を背景に川辺に居た。 土手の上、空ろな表情で川を見つめ、手にした小石を投げる。 斜め後ろには愛を語らう男女が一組、少女から差し出される小さな包みに、照れくさそうに受け取る少年。 静かに波紋を浮かべて小石は川に沈む、けれどそれが浮かび上がる事が無いのは彼の心とて同じだ。 仲間を救えても、自身の……心は、今救えていない。 「これは……ヤバイ」 今にも消え入りたい、地獄の日を思い起こされ、脳味噌がミキサーに掛けられたかの様な気分である。 よろよろとしながらも相変わらずの防御体制をとる。 体力は問題ないのに、何故此処まで辛いのか、理解した瞬間潰れそうだ。 そこへ勇気づけるかの如く、そろそろ到着しそうだとAF越しの連絡が入る。 「想介が向かっている、そろそろ着くそうだよ」 嬉しそうな割には余り明るくない微笑を見せる花音、複雑な思いのまま戦闘が続くも、ダメージはなかなか積み重ならない。 だが、敵の攻撃は止まらない。トドメを刺すと言わんばかりに快のトラウマを抉るのだ。 『DTの分際で……』 あの冷え切った声と共に蘇る、DTのフレーズ。 そして報告書にすら記載されたDTの一言。 最初の攻撃、二度目の攻撃、そして最後の攻撃……全てに繋がるのは、このDTという事。 成すべき事を成さずして、魔法使いになるだとか、そんな不穏な予測を言われたことを思い出す。 それを見抜いたか否かは不明だが、息の根を止めようと見せられた映像はこれだ。 ……2019/2/22 夜、そこに仲間が居たかどうかは分からない。けれど、下の名前だけで微笑を浮かべて呼んでくれる女性は居ないのは確か。 目の前にはバースデーケーキ、チョコレートプレートに書かれた『誕生日おめでとう!』の文字が心に染みる。 蝋燭は大きくて長めの物が3本だけ、妙な数に怪訝そうな彼の耳に響くのだ。 『30本一気に消すのは大変だろう?』 「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 大絶叫、まるで世界の終わりを見たかのような守護神にあるまじき叫びである。 周りにいた少女達も驚き竦み、いったいどんな生き地獄を脳内に焼き付けられたのか想像出来る筈も無い。 それは男にとって、所謂死に近く、人生の死……なのかもしれない。 空ろな表情のまま膝から崩れ落ち、握られたナイフと盾がガランと音を立てて床を転がる。 そのままピクリとも動かない、正に異常な光景だ。 ●本当の答え とても今の快が戦えると思えないのか、それとも余りの絶叫に恐れをなしたのかは分からないが誰も彼に声を掛けない。 「そろそろ当たってもらおうかね!」 他の面々の攻撃が外れる最中、りりすの刃が吼える。 赤い軌道から放たれる一瞬の連続攻撃が、とうとうエリューションを切り裂いた。 ばっちりの手応えと共に、エリューションの動きは鈍っていく。 消えられる前に痺れさせる事が出来たのはいいタイミングだ。 「花音!」 「想介さん……!」 全力疾走で現れたのは、想介とリベリスタ達だ。 各々獲物を抜くと、攻撃準備に入る。 「このまま終わらせるのだよ」 今度は残影で翻弄しながらりりすがエリューションを切り裂く。 既に動きの鈍った標的に直撃させるなど容易く、体勢を思いっきり崩させれば後続の仲間に繋ぐ。 「逃がさないよ」 羽音のチェーンソーが唸りを上げて喰らいつくが、直撃だけは避けようとエリューションも必死の防御を見せる。 「あんたも! いじめとかわかんないけど、いつまでこんなとこにいるつもりよ。ここでウジウジしてるくらいならスカッと次の人生楽しんできなさい!」 防御中の脇から接近するミリーが三度の拳を見舞う。 ステップから勢いを乗せたストレートパンチが中心を貫き、炎が燃え上がる。 破壊力と炎の噴出に吹き飛ばされ、エリューションのオーラは確実に弱まっていく。 この一撃で快も正気を取り戻し、どうにか戦線復帰のようだ。 「大丈夫ですか~?」 奏音が快の回復を勤め、傷を……主に心の傷が清らかな詠唱のメロディに癒されていく。 だが全快する様子は無い、相当深いダメージらしい。 ミリーの攻撃に続き、一斉攻撃を仕掛けるリベリスタ達だが、エリューションの執念の防御がことごとく上回り、ダメージに繋がらない。 更に敵は姿を消す小細工まで使って、防御を一気に固めていく。 「早く終わらせるよっ!」 一斉攻撃がことごとく外れる中、背後から接近した文が敵の体へオーラの固まりを叩き込む。 離れると同時に至近距離で爆発するそれは、宙へ逃げようとした体を墜落させ、残った体力を一気に削ぎ落とす。 それでもまだ、息は残っていた。 「行きますね……」 床に沈んだところへ、有須の重火器が狙いを定める。 吐き出される弾丸は呪いの力、先ほど一撃を外した反動もあり、若干ながらダメージを受けていた。 そのダメージがプラスされ、相手を蝕む玉砕覚悟の危険な攻撃だが、その分破壊力も高い。 真っ黒な光が螺旋を描いて直撃、飛び散る漆黒の光と共に、エリューションは闇に消えていくのだった。 「想介くんも、花音お嬢さんが好きなの?」 戦闘が終わり、彼へと振り向いたりりすが花音に同じ事を問う。 当たり前だと頷く彼の方をポンと叩くと、りりすは彼の隣を通り過ぎる。 「何にせよ。幸せになりたまえよ。二人でナ」 後は傍観するのみと、下がるりりすと入れ違いに文が二人の下へ。 「彼女はこんなに頑張ってるのっ。彼氏としてそれをちゃんと見てた?」 「そんな事しってるっての」 「オロオロされるのが嫌だとか、それは想介さんの我が儘っ! 彼女に自信を持たせてあげるのだって、彼氏の役目!」 「だからな、そういう事じゃねぇんだよ!」 と、出会った頃の喧嘩を始めるかのような想介と文。 それを傍観するりりすと有須。 奏音は残ったダメージ(主に心)に頭を抱え始めた快へ回復を施し、介抱中である。 そして雅も、ここではまだ傍観しているだけだ。 「1人で戦えたら、確かに強くなれると思う。 でもね、あたしは……誰かを守りたいって想いが、人をより、強くするんじゃないかなって思うの」 少なからず、自分の強さがそうだ。 事実という確証を胸に、羽音は語る。 「だから、二人で一緒に、強くなればいいんじゃないかな?」 不安そうに想介を見つめる花音、だが彼は被りを左右に振った。 「そうじゃないんだって、だから……」 「力じゃない、そういうことでしょ?」 割り込んだのは雅だった。 かつかつと彼の傍によると、沈黙を続けていた全てを吐き出していく。 「だって最初に背中預けた仲でしょ? そんなに実力が離れてるとは思わない」 花音は力と勘違いしていた、だからこそ、雅の言葉に必死に耳を傾ける。 「だったら何故? その真意は花音に伝えたの? 以心伝心なんて幻よ、相手の事を完全に理解してるなんて幻想だわ。言葉にしてぶつけ合わなきゃ」 「……そうだな」 頑なに否定を続けた想介が、肯定の言葉を紡ぐ。 「これから気をつける、じゃ駄目よ?」 これ以上先の答えを言うのは野暮と、雅は口を閉ざす。 想介は花音へ向き直る。 「強くなれっていったのは、力じゃない。 俺がボロボロになって帰ってきたり、一人で別の依頼に行く時とか、凄い不安がるだろ? 俺は死なない、絶対にだ。何時も俺の傍にお前は居る、お前にだってそうだ」 お揃いの指輪に触れる想介、それが彼を支えている。 「だから信じてくれ、帰ってきたら笑って『おかえり』って言ってほしい。 その為に、心を強くしてくれ」 鳴き声交じりに返事をし、彼に飛びつく花音。 こうして、彼女の無謀な戦いは終わりを告げた。 (「爆発しろ」) 雅の悪態の真意は分からないけれど。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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