●剥いた後に、興味はないの。 間接照明だけがともされている、薄暗い部屋。 女は、機嫌よくりんごをむいている。 白いTシャツに黒いハーフパンツ。長い髪はかろうじてポニーテイルの体裁を保っている。服装に頓着はないようだ。 ガラステーブルの上に置かれた皿に、細い皮が途切れることなく山のように積もっていく。 その下。床には、剥かれた後食べられることもなくすでに茶色くなったりんごが数限りなく積み上げられている。 甘いりんごの香りの底に腐敗臭さえ漂いかけている。 「……わかってるわよぉ。普通の女子供には手を出すな。男でもなるたけ命はとるな。でしょぉ。大丈夫、大丈夫、どーんと任せてぇ」 ハンズフリーに設定した携帯電話に向かって、耳をふさぎたくなるほどの大声で話しかける。 電話の向こうが辟易しているのに、一向に気にするそぶりがない。 低めの声。少し間延びした語尾。メタルフレームの眼鏡を指で押して元の位置に戻す。 うふふぅ。 とろけるような笑いを浮かべる。 「もう何人かに声は掛けてあるからぁ。みんな、話が合う子だから心配しないでぇ。命とるとかそういう怖いこと、こっちから勘弁だしぃ」 ごろん。 また、床にりんごが転がされる。 美しかった白い果肉が、タイルの床に落ちた拍子に茶色く変色する。 「こっちはそっちの用事済ませて、欲しいものを手に入れたらさっさと帰るからぁ。後は任せるねぇ。あんた達もその方がいいんでしょぉ?」 ●刃を研ぐ音がする。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、無表情ながらもご機嫌麗しくないのが、ありありと分かる。 「そういう訳だから、気を引き締めて。今回の事件はフィクサード。中心になっているのは、曽田七緒、24歳。職業、写真家。サブカルチャー方面の一部ではカリスマ的存在らしい」 モニターに写真が映し出される。 本人の写真写りはどうでもいいらしい。 「彼女の被写体は、皮。りんごの皮を山盛り剥いたのとか、みかんの皮とか、たまねぎの皮とかの写真を撮る。剥くっていうのが大事らしい」 モニターに参考資料として七緒の作品が映し出された。 偏執的に大量の皮が積み上げられている。 「覚醒して彼女の嗜好に変化が見られた。彼女は今度は人間の皮を題材にしたがっている」 モニターに、室内プールが映し出される。 「ここが現場。とあるホテルの室内プールサイド。結構広い。多少椅子とかテーブルとか置いてあるけど、戦闘に支障ないレベル。ここで物色して、気に入った男の皮をピーラーで剥こうとしている」 そう言って、イヴがモニターをいじると、穴の開いたナイフのようなものが表示される。 「縦型万能皮むき器を改造してる。この穴の両端が刃になってる。舐めてかかると危ないよ。今まで見たことない妙な技を使う。こちらの弱点をついた上、出血や流血を強いるよ」 更に、ばらばらと写真を表示する。 「これが、彼女が連れているフェイズ1。人数は、4人。全て同行の士。つまり、そういう趣味。みんなで欲しいところを山分けにしようとしている」 イヴは大きく息を吐いた。 「作戦目標は、猟奇行為の阻止。フィクサードが何を考えているのかわからないけれど、打たなければならない手は全部打つ」 きりりと表情を引き締めたイヴは、真っ直ぐにリベリスタを見つめた。 「妙な感じがする。気をつけて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●女子会は品定め 天を覆うガラスから降り注ぐ日光。 光を反射するプールの水面。 デッキチェアにテーブル。 プールサイドでドリンクを片手におしゃべりの興じる若い女達。 調度品のように控えるギャルソン。 「お目当てちゃん達が来たよ」 「あたしたちがふつーの人襲うとか思ってきてるんでしょ?」 「もう普通の飽きちゃったよね」 「少し変わったのがいいよね」 「あ、イケメンばっかじゃなーい」 「あの子、隠れてるつもりかなぁ。もろ見えなんですけど」 「七緒タンはどれがいいの?」 「あれかなぁ。ちょっと熟れてるのが好きなのぉ」 電話していた女は、携帯を傍らに置くと、とろけるように笑った。 「しぶい。さすが七緒ちゃん!」 ●男はおまけです。 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は男性陣の影に隠れて気配を消し去っていた。 「………趣味を持つなら、こういう趣味のが健全だろうに。ふむふむ……上から」 ぶつぶつ呟きながら、女性陣の水着チェック。 「れっつぷーる!」 『Trompe-l'œil』歪ぐるぐ(BNE000001)は、白い羽が装飾に見えるひらひらした白い水着でプールサイドにエントリー。 「水着って翼のせいで着れる物が限られるのよね……」 白のホルターネックワンピースで背中の大きく開いたものを選んだ来栖小夜香(BNE000038)は、 脱ぐとすごいナイスバディ。 「……大きければ良いというワケではない。こちらのほうが戦闘には適している」 『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)は、動きやすく機能的なスクール水着。 心ゆくまで女性陣を鑑賞し、竜一は、プールサイドに進み出て、爽やかに肉体美をスタイリッシュなポーズで見せつける。 (毛の処理とかも、バッチリだぜ?) 釣れたらもうけものと思いながらも、避難口のチェックは忘れない。 『好みは腹ちらりずむ(まがお)』秋映・一樹(BNE002066)も目顔で頷く。 今回の一般人の避難誘導のメインは一樹だ。 幸い、一般客は、まばらだ。 従業員は、出入り口とデッキチェアの辺りにいるギャルソンの二人。 デッキチェアに固まっている一見女子会の面々は、曽田七緒とそのお友達だから、勘定からは当然除外した。 ●やぁだ。わかってるくせにぃ。 「そこのおにーさん達、あたし達と遊ばない?」 ひらひらと手を振る女子会風の五人。 水着も今年の流行を先取り。 ホテルでの振舞い方も堂に入っている。 ゆるふわ、ベリーショート、盛り髪、巻き髪、黒のポニーテイル。 お互いがどんな存在かは、一目瞭然。 「あたし達と遊ぶと楽しいよぉ?」 セクシー系黒ビキニ。大人のナイスバディ。ぎょっとするほど青白い肌。 唇に色がないのに、やけに生々しく見える。 やや低く場に合わない大きな声、少し伸びた語尾。 「気に入ったら、もらってあげるぅ」 曽田七緒とそのお友達は、ドリンクを飲み干すと得物を手に立ち上がった。 ● 速攻 「いと高き所にまします尊き方は、かく仰せになりました。『遍く広がる私の威光に傷つく者は咎人である』」 ベリーショートDが一番速かった。 リベリスタ達は皆、全身の細胞の間を何かが通過したのを感じた。 体中に感じる激しい痛み。 次の瞬間、竜一、『肉恋い蝙蝠』李・灰蝠(BNE001880)、クリス、『塵喰憎器』救慈冥真(BNE002380)は体に違和感が生じ、思い通りに動けなくなっているのを感じた。 「ブーメランな君ッ! ぼんやりしてて、いっいのっかなっ」 盛り髪Aが、竜一の間合いに入った。 きらりと光ったナイフの輝きに刀とブロードソードを二段に身構えるが、 「残念。こっちぃ」 光は揺らぎ、背後から大きく切りつけられる。 竜一の裸の背中が真一文字に引き裂かれた。 「祝福よ、あれ」 優しい声が詠唱の最後を締めくくる。 竜一の背を柔らかな風がなでる。出血は止まり、徐々にふさがっていった。 (マナサイクルするつもりだったんだけどね) 小夜香は、自分が定めた基準以上の傷を負った竜一の回復を優先した。 (うっわ、まじ天使) 竜一は、自分の感情に確信を持った。 「まだまだいくよ!」 目の前に立ちふさがる『テクノパティシエ』如月達哉(BNE001662)と、傷ついた竜一に襲い掛かる巻き髪B。 ぶれる影が、ほぼ同時に二人を切り裂く。 まずは自分達の能力を底上げすることを考えたリベリスタと対照的に、当たって砕けろと速攻に出た女達。 「へー。結構いけるんだぁ。あたし達ぃ」 七緒は、少し笑った。 ●一般人にげて。超にげて。 クリスが事前に張った結界も、避難誘導に一役買った。 プールに留まりたくない感じが一般客に芽生えていた。 (放っておけば確実に犠牲者は増える。即ち、黙って見過ごす訳にはいかない) 途切れない違和感に眉をしかめながらも、一樹が速く逃げろと出入り口を指差すと、一般客の男はうなずきながら連れの女を促し更衣室に姿を消した。 「お客様? 何かありましたか?」 出入り口に立っていたギャルソンが、一樹に近づいてくる。 「プールから一刻も早く外へ逃げろ」 「どういうことでしょう?」 訝しげなギャルソン。 何かあったのならば、従業員の彼が対応しなくてはならないのだ。 一樹の肩越しに、リベリスタとフィクサードの争う姿。 「喧嘩ですかっ!? おい、非常ベル!」 デッキチェアの近くに控えていたギャルソンが、あわてて非常ベルを押す。 ジリリリリリリッ!! 「あらぁ、予定より早ぁい。急がなくっちゃぁ。みんな、お土産は欲しいよねぇ?」 『スキンコレクター』とそのお友達が欲しがるお土産。 五人の女達は、それぞれよく似たとろけた笑みを唇に色とりどりの唇に浮かべた。 ●肉斬りと皮剥きの輪舞 七緒に突進したのは、灰蝠とぐるぐ。 「たまにゃーもっと刺激的なデートはいかがかしら♪」 灰蝠は、はしゃいでいる。メスも新調してきたのだ。 (ふふ♪ 親近感でときめいちゃうアル♪ これでアタシ好みに捌き甲斐ある、筋肉質なカラダだたらさいっこーね……!) 七緒は「さいっこー」だった。 鞭のようによくしなる手の中で、ちゃきんと音を立てる縦形ピーラー。 「おじさぁん、その腕のグラデーション素敵ねぇ。もらってもいいかなぁ?」 「……とゆかむしろ、ガンガン剥かれちゃてもイイ位……♪」 フられたらアタシ泣いちゃうもの……っ!! とまで思っていた灰蝠の声は弾む。 一樹が入り口近くにいたギャルソン出入り口から送り出すのと、冥真が非常ベルを鳴らしたまま腰を抜かしていたギャルソンを保護して、出入り口に向かうのを目の端に捕らえていた。 (一樹ちゃん達が一般のコを避難させられるよに、時間を稼ぐて意味でも、じっくりきっちりお相手するアル~♪) 「じゃ、なるたけ痛くないようにはするからぁ。でもその前にぃ……」 ぐるぐを見て、七緒はふふんと鼻で笑った。 「『Trompe-l'œil』っていうんでしょぉ? 昭和一桁生まれが、そぉいう水着ってどおなのぉ?」 うふふぅと、笑う。 「先にお邪魔虫どうにかしてほしいかなぁ。ゆんちゃーん」 七緒の声にかぶるように、ゆるふわCの詠唱が響く。 「古の契約により、我が怒りよ矢となり敵を貫け」 ノーマークだったマグメイガスが、ぐるぐに向かって魔法の矢を放つ。 ぐるぐの腕を掠めて、矢はプールで小さく爆ぜた。 「ごめーん、七緒ちゃん、ちゃんと当てられなかったぁ」 ●菓子職人の主張、フォトグラファーの主張 やられてばかりのリベリスタではない。 竜一の刀と剣に自分の闘気を送り込む。 「どっきりはぷにんぐに期待しつつ、仕事はこなすっ! 一石二鳥!」 叩き込まれる剣に舌打ちしつつ、盛り髪Aは叫んだ。 「うわー。痛すぎる! ブーメランだし。ありえない。七緒、こいつ、きもい!」 斬られても我慢の集中を重ねていた達也は、内に秘めていた高速思考を一気に爆発させた。 (単なる猟奇趣味の頭のおかしい輩でしかない。技術とは人に希望と感動を与え、幸せを運ぶものでなければならない。それは菓子職人にして料理人、如月達哉の意見だ。僕は同じ職人として認めない!) 叩きつけられる思考の奔流に、巻き髪A、盛り髪B、そして運悪く巻き込まれた竜一がどぼどぼどぼと音を立てて、プールに吹き飛んだ。 一瞬、竜一は力なくぷかっと浮いた。 「あたしは職人じゃなくてフォトグラファーなのぉ。あんたに『苺の摘み方が下手だから、ケーキ職人失格だ』って言う人いるぅ?」 吹き飛ばされこそしなかったものの、ダメージは受けた七緒は眼鏡をかけなおしながら達哉に言う。 「技術云々であたしに意見があるならぁ、写真見てから言ってくれるぅ? その後、改めておかしいって言ってくれるならぁ、あたしはとっても嬉しいなぁ」 ●イタイのは我慢できない 「自分の耳でもいじればいいだろう。ホーリーメイガスなんだから回復もできる。人に迷惑をかけるな」 常人には見えない黒い翼で緩やかに宙を滑りながら、ベリーショートDの前に立ちはだかるクリスに、影がそっと寄り添う。 お胸が大きいと、戦闘の邪魔なんだぞ。絶対そうなんだぞ。 ダガーを持つ指に力がこもる。 「ナルシーじゃないんでー。悪いんですけどー」 放たれた気の糸をくるくると避けながら、ベリーショートDは顔を歪ませる。 「すまん、クリス。遅くなった」 蝙蝠の耳を顕在化させながら、一樹がクリスの背後に駆けつける。 「きゃあ、レア耳! しかも、腹筋系細マッチョ!」 Dが、声を弾ませる。語尾にハートが付きそうだ。 「隙あり」 精密射撃が、Dのくるぶしに直撃した。 「いったーい。七緒たん! 聞いてないよー!」 Dは、べそべそ泣き出した。 「あなたの側は空気が澄んでる。癒される感じがするの」 目の前に現れた冥真に、ゆるふわCの目は潤みがちだ。 説明しよう。冥真はメタルフレームだ。彼の変化した肺は空気清浄機の効果がある。 つまり、彼が呼吸するたび、物理的に空気はキレイになっているのだ。 ひょっとしたら、マイナスイオン発生器も併設されているかもしれない。 AFである白衣の裾を翻し、冥真は魔力の矢をゆるふわCに放つ。 (過剰には攻撃しない。深追いはしない。だが、戦いを続けるのに不利な状況を作り出す必要はある) 要するに、嫌がらせだ。 「うわっ、あぶなっ」 芽生えかけた恋心を粉砕する一撃。 「やだぁ! 七緒ちゃん、もう帰ろう!」 Cも文句を言い出した。 ●チップは、あなたと彼の身体 七緒ちゃんは、それどころではなかった。 灰蝠の気の糸を引き千切りながら、楽しい遊びを思いついたのだ。 「なんかやる気満々でしょぉ? あたしのピーラー、受けてみちゃう?」 ぐるぐに向けて、うふふぅと笑う七緒。 「そんでぇ、あんたがまだ立てたらぁ、おじちゃんの皮は今日は諦めて帰ってあげるよぉ?」 スキルを解析し自らのものにするぐるぐとしては、渡りに船だった。 ここまで七緒は何もしていない。情報を分析しようにも材料がなかった。 「立てなかったら、おじちゃんの皮と、あんたのおめめもお土産にするけど、どうするぅ?」 ぐるぐは頷いた。七緒はにたぁっと笑う。 「ワンチャンスだよぉ」 ふっと、ぐるぐの眼前から七緒が消えた。 脇の下から腕を回し、左手がぐるぐの側頭部を押さえ込む。 ピーラーの穴に刻まれた二枚の刃が、細い喉笛にヒタリと当てられ、何の躊躇もなく横に掻き切られた。 前方に噴き出す赤い血が滝のように放物線を書いて床を血の海にする。 傷を負っていたぐるぐは、その攻撃で引導を渡されかけた。 (絶対に倒れない。意地でも起き上がる。スキルを盗むまでは!) 世界からの恩寵を削り落としてでも。 紙のように白くなった顔を起こし、白い水着を赤白のまだらに染めながらも、ぐるぐは立ち上がった。 (分析材料が……、足りない!?) ぐるぐの驚異的な分析能力を持ってしても、たった一回では技の本質に届かない。 もしくは、七緒がギリギリ手を抜いたのだ。 「ちぇー。立ち上がっちゃったかぁ。じゃ、約束だし。今日はいい子で帰ろうかなぁ。結構手際いいんだね、あんた達ぃ」 ピーラーから血を払いながら、あたし達の負けぇと、七緒はぬるく笑った。 「ホテルの人来ちゃったし、予定より早いけど時間切れぇ。あんた達面白いから、また逢えると嬉しいなぁ」 ●痛み分け 止める前に、女達はプールに飛び込んで、ホテルの従業員に助けを求めた。 「助けてくださぁい。この人達、他の人追い払って、ホテルの人にもあっち行けとか言って、因縁つけてくるんですぅ」 「プールに落とされちゃったしぃ。信じらんなぁい」 厳つい警備員に助けられながら、口々に訴える。 「それはそれは……。まずはお着替えいただいて、それからお話を伺いましょう」 「どういうつもりだ! 何が目的だ! お前らの背後にいる奴は、誰だ!」 プールから上がらず、女達を追いかけようとして水をざぶざぶ掻き分ける竜一に、七緒は耳打ちした。 「あたしはぁ、皆が楽しいのがいいと思ってるのぉ。そのためにはぁ、たまには義理を果たさなくちゃいけないこともある訳ねぇ。今日はこのまま別れた方がお互いのためだと思うのぉ。あたし、今は割と機嫌がいいのねぇ」 にやぁっと七緒は笑う。笑う以外の感情表現は持たないように。 「それとも、あの子達にやっちゃえって合図出すぅ? ホテルの人どうなっちゃうかなぁ?」 竜一は、追うのをやめた。 女性職員にタオルを掛けられながら、七緒達は悠々とプールを後にしていった。 リベリスタの側にも、従業員が近づいてくる。 「……お客様、申し訳ありません。こちらでお着替えいただけますか。お怪我もなさっておられるようですし、お手当てさせていただきます」 リベリスタは、慇懃に別室に連れて行かれた。 結局変な女達に因縁をつけられ、仲裁をしたら、投げられたコップで怪我をしたということになった。 リベリスタ達が、警察沙汰にしないでというお願いと丁重なお詫びとホテルのサービス券と一緒に解放されたときには、七緒達はとっくに姿を消していた。 「一人ぐらい捕まえたいって気持ちはあったけどね」 小夜香が、ぽつんと呟いた。 ぞっとするほど色のない肌。とろける笑顔。伸びた語尾。 縦型ピーラーのちゃきんという音が、しばらくリベリスタの耳に残って離れなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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