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<黄泉ヶ辻>白の十字軍

●作りだされた十字軍
 その若者たちは、熱心であった。何に熱心かといえば、正義を行うことに対してだ。
 例えば、道端のごみを拾う。例えば、不良を成敗する。
 良いことをしたあとは気分がいい。それは確かなのだが、彼らはそれをするのを義務だと思っている節があった。
 たいていの場合、そういう思想は現実を前にして折れてしまうものなのだが、彼らには神秘の力があったのだ。それ故に何者にも負けず、自分たちは正しいと信じ続けることができた。
 そんな若者の集団は、十字軍を名乗っている。この神秘の力を使って、世の中を正してみせると本気で思っているからだ。
 さて、この正義を信じる十字軍に関して厄介なことがある。フィクサード組織、黄泉ヶ辻が接触していたことだ。黄泉ヶ辻の幹部であるゴスロリの少女ナツキは、彼らを導く“力のある先輩”として先導をしていたのである。
「ごきげんよう、皆様。今日は、皆に力の使い方と……この力を使った有用な戦術を教えましょう」
 くるりと日傘を回し、力を持った若者たちに授業を始める。彼らは以前、フィクサードに襲われるというピンチをこの少女に助けて貰っていたので、従順なのだ。
 ――それも、黄泉ヶ辻の自作自演なのだけれど。
「ええ、残念なことですが……この神秘の力を使って人々を苦しめるフィクサードという存在が、この世界にはあるのです。ですが、皆様の内にきっと彼らを倒す力があると信じていますよ」
 もちろん、黄泉ヶ辻がまともな先導などするはずもない。過剰な正義を煽り、彼らを暴走させようとしていた。
「ところで、リベリスタと呼ばれている彼らですが……彼らはその正義によってこの世界を揺るがしています。正義とは、それぞれの胸の内にあるもの。だからこそ、止められないのですね」
 若者たちは、頷いている。それぞれの正義があるとは知っているが、それでも自分たちの正義が正しいと思っているからだ。
「ならば、私達が止めてみせましょう」
 ゴスロリの少女ナツキに跪き、胸を張って旗を掲げる男。この男が、十字軍のリーダーであり、“ラムダ”と名乗っていた。
「我々は十字軍。正義の名のもとに、すべて正しき世界へ導く!」
 リーダーがそう宣言すると、十字軍の若者たちはそれに続いて我も我もと名乗りを上げる。
「たくましいこと。だけど、気をつけなさい。あなたたちが死んだら、悲しむ人もいるでしょう」
 くすり、とナツキは笑った。

 血気盛んな若者たちがナツキの助言を無視して行ってしまった後、ナツキは冷笑を浮かべていた。
「クスクス……みんな、好きね。正義って」
 そんなナツキの前に、影から一人の男が現れた。年若いが、その顔にはどこか人間離れしたものが浮かんでいる。
 ナツキに対して相変わらずだと笑うその男は――、
「あら、聞いていたのかしら。ふふっ、こういう遊びもたまにはいいでしょう?」
 黄泉ヶ辻の首領。彼はナツキ同様十字軍に期待してはいない、しかし、リベリスタがそれに敗れればそれまでだと考えている。
「ま、ポップコーン片手にショーを楽しみましょう。せっかく、準備をしてきたのだから」
 お菓子を取り出しながら、少女は心の底から愉快そうに笑った。

●正義を討つ
 白い旗を持ったフィクサードの集団は甲冑と剣で身を固め、高い士気を持って力ある者――あるいは力が芽生えていると思われる物たちを訪問していた。その時に、彼らはこう宣言する。
 ――自分たちはあなたたちを救いに来た。同志となり共に戦おう。
「なんて聞こえのいい言葉かしら」
 リベリスタたちの前で、この“敵”に関する資料を読み上げていた『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)が、顔を上げて鼻で笑う。
「これだけならいいのだけれど、誘いを断ったり疑問を挟んだりすると、強い否定を返してくるのよ。疑うとは何事かって」
 しかも、その否定を聞いて尚彼らは問いを続けるのだという。仲間になれ、仲間になったほうがいいと。
「だけど、それは最後通告。これも断ったら、戦いになる。……戦いを望まなくてもね」
 要するに脅迫だ。正義感と義務感からやっているからたちが悪い。
「そんなわけで、彼らとは戦わざるを得ないのよ。彼ら、このままだと一般人にも剣を向けるみたいだしね」
 カレイドシステムはそれを予見してしまったらしい。ならば、止めるのはリベリスタの役割だろう。
「で、こっちが敵の資料。8人居てそれぞれ能力も違うから、気をつけて」
 乃亜は前かがみになって机の上に資料を置きながら、指を立てる。
「説得は難しそうよ。だから、今回の目的は撃破」
 彼らの生死は問わないという。これに対して、リベリスタたちは返答を返した。
 その返答の内容は――。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:nozoki  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月05日(土)22:25
 黄泉ヶ辻のシナリオですが、戦うのは十字軍と名乗る八名の小規模なフィクサード集団です。
 正義の思想に染まった敵が相手となります。少しやりづらいかもしれません。とはいえ敵なのでやっちゃってください。
 皆様のプレイングを楽しみにしています。

●勝利条件
 十字軍の撃破

●舞台
 路地裏にある彼らの溜まり場です。彼らが定期的に人払いをしているため、人目はほとんどありません。
 多少狭いですが、戦闘には支障ないでしょう。

●十字軍
 全部で八人のフィクサード集団です。若者の男女で構成されており、最近神秘の力に目覚めた者が大半です。
 自分たちの正義を疑っておらず、人を襲います。
 正義を信じており、世の中には悪と善しかないと考えています。その為、フライエンジェ、ホーリーメイガスとクロスイージスに攻撃を控え、ビーストハーフ、クリミナルスタアやダークナイトを優先的に狙う性質があります。
 詳細は以下の通りです。
・“ロード”ラムダ
 銀髪の青年でイケメンです。十字が描かれた旗を持っており、味方を鼓舞することを得意とします。
 彼は独自のスキルを3つ持ちます。それぞれ『十字軍』『栄光の賛歌』『清浄の名誉』という名前です。3つとも使用することで味方全員の攻撃力と防御力を強化するスキルで、3つの効果はすべて重複します。
 彼自身も能力がそれなりに高く、槍を使って戦闘をします。
・騎士
 騎士を名乗るフィクサードたちです。3人存在し、3人とも前線に立っての直接戦闘を行います。
 剣と盾を持ち、攻守共にバランスが取れています。
 女性二人に男性一人です。
・クレリック
 癒し手を名乗るフィクサードたちです。2人存在し、「相手の攻撃によるダメージを僅かに軽減しバッドステータスを発生させなくする」という能力を持ちます。
 防御力は普通ですが、戦闘能力はほとんどありません。
 二人共女性です。
・勇者
 勇者を名乗るフィクサードたちです。2人存在し、「仲間の数だけ」強くなるという能力を持ちます。
 素の能力はそれほどでもありませんが、8人全員揃っている時の彼らはリーダーよりも強力です。
 貴族風の男性二人で、銀のナイフを使って戦います。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
マグメイガス
アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
クロスイージス
ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
デュランダル
真雁 光(BNE002532)
ナイトクリーク
逢乃 雫(BNE002602)
クロスイージス
ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)
ダークナイト
一条・玄弥(BNE003422)
■サポート参加者 2人■
ホーリーメイガス
アンナ・クロストン(BNE001816)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)

●光の道、覇者の道
 街を行きながら、リベリスタたちは十字軍を名乗る者たちの元へと向かっていた。その足取りは少し重く、しかししっかりとしたものだ。
「善悪二元論。清濁併せ呑めねば、何れ人は道を踏み誤る」
 傲慢にも、大地を踏み抜く勢いで歩いているのは『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)だ。その鍛えられた肉体から発せられる風体からは、王者の風格が見える。
「いくぞ刃紅郎。ふざけた餓鬼に教育をしてやらねばならん」
 その隣を行くのは、いつものように悪い目つきで周りを威圧するようにしている『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)だ。その手には葉巻があり、表情は冷笑気味だ。
「“十字軍”とはよく言ったものだ。視野の狭い小僧どもに、一つ灸を据えてやるとするか」
 刃紅郎の言葉の節々からは戦う相手を理解し、気遣おうという心境が見て取れた。とはいえ、王である彼は相手の心情すらも飲み込んで、自らの意志を通すタイプなのだが。
「餓鬼のごっこ遊びだな。耳に心地いい事だけを聞いて自分が正しいと思い込んでいる。浅はかに過ぎるな」
 対して、ゲルトの言葉は彼らを否定するかのようだ。しかし、彼も刃紅郎とどこか同じタイプだ。
 あまり表には出さないけれども、二人は心の中で仲間を心配している。
「ひとつの正義が万人にとっての正義であるはずはないですよ。その人の中のいろいろな想いが合わさってその人の正義が構築されるです」
 自らを信じ、自らの正義を疑わない。それは勇者に必要な素質だろうと、『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)は小さな胸の中で感じている。だが、自らの正義だけが正しいものだとは、絶対に思えない。それに――、
「正義なんて他人に押し付けるものではないのです。自分が信じてればいいのです。想いに共感してもらえるかしてもらえないか。ただそれだけです。共感した相手は善、共感しない相手は悪だなんてことはないです」
 自分の胸を撫でて、光は考える。外の世界をあまり知らなくとも、幼い体であろうとも、目指す勇者像は決して進んで人を傷つけたりしないものだ。
「ボクが信じる正義が全て正しいとは限らないです。間違いがあれば周りの人に正してもらうです。勇者は日々成長するものなのですよ」
 だから、日々成長して自分の中の勇者像に少しでも近づけるよう、光はがんばっている。自分だけでなく、みんなの力を借りて。
 振りかざした剣に、金の髪と青の瞳が映る。どこまでもまっすぐなその瞳と、輝く金の髪は少し眩しいと『√3』一条・玄弥(BNE003422)は思う
「ま、あっしは悪だと名乗れるほどてぇした人間じゃぁありやせんが……。正義も悪も所詮はコインの裏表」
 玄弥は手元で硬貨を弄ってから、親指を使って軽く弾いてみる。宙を舞うコインは何度も回転して、光を反射させる。
 そのコインを掴んでから、玄弥は独り言のように空に向けてつぶやく。
「それも人を殺して名乗る正義なんぞ。ただ現実から背けて殺しに酔う、ただの人殺しの戯言。そんな地に足もつかんようなやつらにゃぁ、死して屍拾うものなしやなぁ、おぃ」
 手のひらの中で、表か裏か分からないコイン。しかし、玄弥はコインを懐に仕舞う。コインの表裏など、今は関係ないということだろう。
「正義。それが彼等の誇りを賭すに値するものであるならば、私にそれを否定する権利はございません。ならば私は私の誇りを賭して戦いましょう」
 凛として、済んだ声で宣言するように言いながら。一歩一歩背筋を伸ばして歩を進める『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)は、まっすぐに顔を上げている。その貴族風の顔立ちは、美しくも勇ましい。
 そして、同時に眩しくもある。
 その光に付き従う騎士のように、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)もまた、光の中を歩いている。その顔には、曇りは一点もない。
 凛として、立ち向かおうとしている。
「己の正義のみを妄信し、それ故に力を振るうのであれば、それは悲劇しか生み出さない……人類が歴史で証明してきた事です」
 そんな中で、表情を崩して皮肉げにユーディスは笑う。
「……よりによって十字軍と名乗るなんて……。似合い過ぎて、気の利いた皮肉としか思えませんね」
 少し、俯く。だけれども、決して歩みを止めることはない。
 立ち向かうのは十字軍を名乗る者たち。己の信念である“護るための戦い”をする、ユーディスは一歩も引けないのだ。
「他者から与えられた正義をひたすら信じているとは」
 先に光は仲間との付き合いの中で正義は正されるものだと言ったが、人に示された道をただ行くだけも違うと『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)は言う。その鍛えられた筋肉質の腕にはメイスが握られており、行く手を遮るものはすべて打ち壊すような雰囲気を纏っていた。
「その状況については同情の余地はあるが。その正義で他者を傷つけるのはいただけないな。確実に、止めてやらんとな」
 そう決めたのだから、愛用の金属盾を掲げてただひたすらに前を行く。それが義弘という男だ。覚悟を持った彼を止めるのは、難しいことだろう。
「殲滅指令……了解しました」
 一方、ただ冷淡に相手を止めることを目的とするのは指令の達成を第一に考える逢乃 雫(BNE002602)だ。ただ、雫の場合は再起不能や死亡なども含めるのだから、少し他のリベリスタとは趣が違う。機械じみた性格の雫には、アークの指令は絶対なのだろう。それも、正義の一つの形といえる。
「……」
 そして、雫はそのままビルの影に消えていく。他のリベリスタたちにも気付かれないように、視線の上を。
「さて、行くか。後は戦いの中で語るのみ」
「そうだな」
 それを横で見ながらも、刃紅郎とゲルトは気にした様子もなく歩を進めていた。

●正義の執行者
 路地裏を溜まり場にしている十字軍は、若者の集団ということもあり、どこか変わった暴走族のようにも見える。暴走族と十字軍、その二つにはそうそう違いなどないのかもしれない。
「やれやれ、十字軍という名を聞くと、どうも自意識過剰な正義集団にしか思えないですね……」
 懐の銃に手をかけながら、『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)はそんな風に思う。というのも、彼らは既にリベリスタたちに問いを始めているからだ。
「キミたちは不思議な力を持っているようだね。どうだい、僕達と協力を」
「断る!」
 刃紅郎ははっきりとそれを断り、光はゆうしゃのつるぎを構える。話し合えるのならばそれが一番いいとは思うが、しかしこの後十字軍を名乗る彼らが何を言うのかは予想が付いている。
「ううん。大丈夫、僕達に協力すれば危害を加えない。僕達と一緒に正義のため、リベリスタという悪を倒そう」
「断ると言っている!」
「なら……僕達に倒されるかい?」
 断り続ける刃紅郎に向けて、ぎらりと光る刃を見せつけた十字軍は脅しをかける。それに対して、前に出たのはアーデルハイトだ。
「良いでしょう。我が名はアーデルハイト・フォン・シュピーゲル。敬虔なる信徒の皆様、その断罪の剣を見事この心臓に届かせてごらんなさい」
「……仕方ないね」
 そのアーデルハイトの言葉が、決裂の合図となった。それぞれの軍勢は一斉に動きを始めて、ぶつかり合う。
「さあ餓鬼の遊びに付き合ってやる。これは断じて「聖戦」などではないぞ――傲慢なエゴをぶつけ合う、ただの戦争だ」
「十字軍ね。いや、よく似合った名だと思うぞ。当初の目的を忘れ聖地奪還を謳いながらまるで見当違いの方向を攻めて略奪を繰り返す。……あぁ、全くお似合いの名だ。愚の骨頂を極める貴様らには、な」
 刃紅郎とゲルトの言葉も、ここまで来ればただの挑発にしかならない。
「意に沿わねば、その刃を力無き人々にも向けるのですか?」
「ああ」
「――ならば、その行いこそフィクサード」
 ユーディスの指摘は少しは効いたようだが、それでも彼らは刃を降ろさない。
「――さあ、踊りましょう。土となるまで、灰となるまで、塵となるまで」
 言葉を語る時は、既に過ぎた。

 さて、まず二人の勇者を名乗る者(光とは違う)がそれぞれ剣を持って飛びかかってくるが、それを義弘とゲルトがそれぞれの武器を使ってブロックする。
「ゲルト・フォン・ハルトマンだ。付き合ってもらうぞ」
「勇者ってのは、勇気ある者って書くよな。だが、他者から選ばされたソレが勇気であるものか。自分や仲間と共に何かを選んだ者だけが勇者って言えるんだ」
 鍔迫り合いをしながら、他の仲間たちの元へは行かせないという気概を二人は見せる。特に義弘は、先の光の言葉を思い出しながら、言葉を浴びせていた。
「この世界に絶対の正義があるかは知らん。あったとしても貴様らのこれは断じて違う!」
 義弘のジャスティスキャノンが勇者に飛び、勇者が振りかぶって下ろした剣をゲルトがナイフと盾を使って受け止めてみせる。
 一方、クレリックの作り出した防御壁をぶち破りながら、刃紅郎は一撃を見舞う。敵のリーダーの立てた十字軍の旗によって強化された防御であったが、それすらも打ち抜いていた。
「崩れたところに切り込みます!」
 吹き飛ばされた所に合わせるように、もう一人のクレリックにユーディスの刃が突き立てられる。リーガルブレードによるこの攻撃も、防御壁を突き抜けてクレリックの体に突き刺さった。
「状況クリア……戦闘を開始します」
 更に攻撃は集中する。背後の影から出現した雫の刃が、ダンシングリッパーとなってクレリックを串刺しにして動きを止めた。
 残るクレリックは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていたが、こちらにも攻撃が続く。具体的には星龍のカースブリットだ。
 しかし、それでももう一人のクレリックは破れず自身を回復させている。
「やりますね。ですが、私達の正義があなた達を討つ!」
 そして、十字軍が動き出した。
「栄光よ、我らに力を!」
 栄光の賛歌により強化された、勇者たちが義弘とゲルトを押していく。
「……アンタ達ね。今の時代で普通に十数年生きてきて、世の中が善と悪だけで割り切れると信じてるって、どんだけ頭使ってないのよ。もう一寸周りを見なさい。」
 その勇者たちの攻撃は、『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)の聖神の息吹による回復によって事なきを得たが、敵の攻撃は続く。騎士たちが雫を狙って攻撃を仕掛けてきたのだ。
「回避……失敗?」
 ヒットアンドアウェイを駆使して、騎士にダメージを与えながらその攻撃を回避しようとした雫だったが、それは失敗して双方にダメージを残した。しかも、強化された騎士たちの攻撃は一気に雫の体力を奪い、倒れさせる。
「任務……失敗……?」
 ばたり、と倒れ伏せた雫。その見には、大きな傷が刻まれてしまっていた。
「女騎士を剥いてええなんて、じーちゃん、滾るでぇ」
 そうした中、騎士の内の一人……女性の騎士は玄弥に抱きつかれるようにして纏わりつかれており、非常に嫌な顔をしていた。しかも舌なめずりをしながら嫌らしい視線を送っており、自らの方に攻撃を集中させようという狙いがある。
「へっへっへ……」
 でも、嫌らしい笑みを見る限り好きでやっているのかもしれない。ついでに暗黒を使って、暗黒の渦に騎士たちを巻き込んでいく。
「貴方々の敵はここにいる。生者の血を吸い、死者の棺で眠り、魔術を修め、神が定めし理に背いて不老不死に迫る魔物が」
 それを冷ややかな目で見てから、言葉に挑発を織り交ぜたアーデルハイトは自身の体を発光させる。正確には、掲げた手のひらに電撃の力を集め、一気に解き放とうとしているのだ。
「チェイン……ライトニング!」
 漆黒のマントで振り払うと同時に、手のひらの中に溜め込んだ電撃を一気に解き放つ。すると、後方まで飛ばされていたクレリックが電撃によって倒れ、同時にリーダーにもダメージを蓄積させる。
「ボクたちが正義……だなんて言いません。ボクはボクの正義を信じて行動するだけです」
 続いて光が剣を振るい、電撃を剣先から広げていく。これもチェインライトニングの一つの形だ。
 技一つとっても、正道というものは存在しない。このチェインライトニングによって、騎士も勇者もダメージを受けていき、騎士の一人はこれによって撃破される。勇者の勝利だ。
「貴様らの正義に殉じてここで死ぬか、それとも潔く敗北を認めるか。選ばせてやろう」
 大きな手を掲げて、更に味方を強化し扇動しようとするロードの前に立ち塞がる刃紅郎。
「……ッ!」
 ロードは一瞬躊躇するような様子を見せたが、それでも手を挙げて行動をしようとしたので、刃紅郎はその喉元をぶん殴って吹き飛ばしてみせた。メガクラッシュによるクリティカルだ。
「ふん。嫌なことを思い出させる」
 人を扇動し、暴徒と変える。そんな力を見た刃紅郎は遠い日の少女を思い出していた。
「……」
 吹き飛ばされながらも、まだ腕を振ろうとしたロードに星龍の銃弾が飛んでいき、その身を穿つ。
「無知故に在り方を誘導され、その結果が今の彼らだとしたら……。知るべきでしょう、世界の在り様を。そして自らの行いの意味を。その上で選ぶべきです、己の道を」
 そして、突きの体勢のままロードの懐まで飛び込んでいったユーディスの刃はロードに対するトドメとなった。突き立てられてトドメ、といっても殺したわけではない。急所は外し、大きなダメージによって体を動けなくしたのだ。
「おっと、よそ見は禁物だ」
 残った勇者二人の一撃はやはり義弘とゲルトによってブロックされていた。彼らはクロスイージスを狙わないが、こうブロックされれば相手をせざるを得なくなっている。しかも、ジャスティスキャノンが飛び交うために注意を向けざるを得ない。
「ふん。騎士だって言うけど、大したことはないわね」
「護ることだって、勇者なのです!」
 そして騎士の攻撃はアンナと光の回復に追いつかず、致命的な一撃を作るまでには至らない。
 ついでに言えば、
「正義だのなんだのいっても所詮はこの世は弱肉強食やでぇ。ほな、らいならぁ」
 玄弥がひっついていた女性の騎士は、鎧の隙間を縫うような爪の攻撃によって敗れ去る。
「へっへっへ。この女はじーちゃんに任せてくれ」
 まあ美しい女ではあったので、下卑た笑みと共に玄弥は見下して許してやった。フェイトの復活もされそうにないから、安心してそういうことができる。
「馬鹿な餓鬼は矯正が必要だ」
「私達は神にはなれません。できることは悩み苦しみ足掻きながら歩むことだけ。それが誇り。生きている証」
 クレリックが破れ、ロードが敗れ、騎士も二人倒れ、敵のコンビネーションは崩れた。アーデルハイトのチェインライトニングが通れば、残りの騎士も倒れ……後は各個撃破だ。ゲルトと刃紅郎が協力して、最後まで残っていた勇者の守りを撃ち抜く。
「だからこそ、俺たちはこいつらを倒す」
 義弘が振りかぶって放った魔落の鉄槌は自身を守るために構えていた勇者の盾を砕く。そして、その身にメイスが振り下ろされたことでこの戦いの決着は付いた。
 彼らの正義は、この盾のように砕け散ったのである。

●本当の光と闇
 リベリスタたちは、仲間の傷を癒しながらも捕縛した十字軍に話し合いをしていた。これからアークに引っ張っていくつもりなのだが、その前に聞くことがある。
「貴様らにこの指示を出したのは誰だ?」
 ゲルトが、ロードの首を掴んで問う。すると、
「いやぁ、面白いねー。正義、正義、正義。正義ってなんだー? なんて、色々くっちゃべるの、京介ちゃん好きよ。見てて面白いから」
 影から、男の声が聞こえてきた。影でよく見えないが、その手には玄弥が事前に用意していた「精神病患者です」と書かれた掛け札があるのがわかる。
「我が名はアーデルハイト……」
「ああ、そういうのはいいから。僕くろまくー。そんじゃねー」
 そして、その男は影の中に消えていく。釈然としないものを感じながら、リベリスタたちは歯を噛み締めるのであった。
 しかし、今はこの十字軍を名乗っていた若者たちの処分からだ。戦意のない彼らを引っ張って行かなければ。
「黒幕さんはともかく、ちゃんと話したいです」
 本当の世界と、本当の光を見せることができるかもしれないから。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 はい、そういうことで十字軍を名乗る者たちを止めることができ、無事捕獲まで行きました。
 それぞれの正義を見せてもらいました。複雑な相手でしたが、お疲れ様でした。
 MVPの理由としては、仲間を気遣い、正確な戦闘プレイングだったからです。挑発のセリフも的確でした。