●誰にでも出来る簡単なお仕事です。 「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。 「お願い。あなた達にしか頼めない」 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。 ●お仕事は赤ちゃんが生まれるキャベツを見つけることです。 「本物のキャベツではない。親指サイズ的アザーバイドの赤ちゃんが入ったキャベツ的外装育成ユニット。識別名「キャベツもどき」 この次元の気候が生育にいいって、いつの間にか畑の中に紛れ込んでいる」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、このくらいと本物の春キャベツを出してきた。 「こんな感じに埋まっている」 ご丁寧に、(´・ω・`)フィギュアが中にねじ込まれている。 「今回は、アザーバイドの回収。まだ生まれてないようなもんだから、この次元への影響は軽微。ある程度の環境に放置しておけば、後は勝手に帰る」 ああ、本当に簡単なお仕事。 「回収場所だけど……」 モニター、ドン。 いちめんのみどり。 「ズームアウト、ドン」 引いても緑。 「更に、アウト」 地平線の向こうまで緑と来たもんだよ、ト゛畜生。 「この範囲の中から、キャベツもどきを探し出してきて。今年は異常気象で、普段はトックニ収穫が終わってるるはずの田んぼで不良品の振りして転がるパターンなんだけど、今年はこのまま行くと本物と一緒に収穫される」 一般のご家庭で、キャベツを切ったら、中から赤ちゃんが。 「それならまだいいけど、収穫の際に刃物とかが近づいてきたら、防衛機能とかが働いて、農家の人が危ない」 かたぎの人に迷惑かけられないね。 「このまま放置できない。ただし、幸い未来の話。今、介入すれば、対応可能」 そのためのあなた達と、イヴは言う。 「という訳で、行ってらっしゃい。農業研修生」 一面のキャベツ畑で、普通じゃないキャベツを探すのだ。 「全部で、140面くらい。で、キャベツもどきは、12機」 ぶっちゃけ全部チェックし終えて、キャベツもどきをみつけるまで帰れません。 12体見つけてしまえば、それでOKなのがわかっているのが唯一の救いだ。 「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」 イヴは、もう一度頭を下げた。 「お願い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月27日(金)23:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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● 「ガーデンパーティがありますよーって言われてワゴン車に乗ったら、その後で説明があったわけで……」 『魔法少女18歳(♂)』内薙・智夫(BNE001581)、事実誤認。 「今日は! 娘と! 一緒にお仕事です!」 『テクノパティシエ』如月・達哉(BNE001662)、超満面の笑み。 ● キャベツ畑にむかう送迎ワゴンの中では慣習と化したコールが行われていた。 「よぉーし☆ おまいら、キャベツもどき12個だ! 最も多く見つけた者には、フルコースおかわり優先権を与えよう。返事の頭にはサーをつけろ! わかったらきびきび働け、この青虫ども!」 『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)のあおりに、おーとかあーとかうーとかしくしくとかいろんな反応が返って来る。 「とらたいちょー、拙者、智子でござる。出来れば番号で呼ばないでください、サー」 智夫が拙者とか言い出したら脱走兆候の合図。 最後列に放り込まれて容易に逃げ出せないようにされております。 「サー、イエス、サー!」 『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は、どこまでも清々しい。 「イエス、マム!」 (女性の上官には「サー」ではなく「マム」と答えるのが正しい) 民間軍事会社に所属していたクリスティナ・スタッカート・ワイズマン(BNE003507)が、この上なくいいお返事。 ワゴンの中の異様な空気に、メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)は、首をかしげる。 (戦闘も無いって言うし、周りはなんだか凄い先輩ばかりだし、何より『簡単な仕事』だって言うもんね) だが、先輩達の様子がすこぶるおかしい。 なぜに、ここまでテンションが乱高下しているのか。 「違う! 俺は参加者じゃない! ワゴン間違えただけなんだ!」 『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が、ワゴンの最後尾から悲鳴にも似た声を上げる。 参加者リストに名前が掲載されているのだから間違いない。 「終わったら温泉とかでキャッキャウフフできるような仕事にエントリーしたハズだったんだ! 係員さんはこのワゴンって言ってた!」 混浴はありえないのだから、同性とキャッキャウフフしてどうする。 アークの守護神ともあろう者がうれしはずかしノゾキイベントなんて、許しませんよ!? 「泥だらけになるだろうから、帰りにスーパー銭湯には寄ることにはなってるんだって~」 予定表にそう書いてある。 「この一面、いや百面のキャベツ畑を素手で収穫!? 冗談じゃない! 俺は帰る! 帰るんだからな!」 キジも鳴かずば撃たれまい。 「ヒャッハー! 守護神狩りだァ!」 虎美は歓声を上げると、二丁拳銃をぶっこ抜き、問答無用で守護神を捕縛した。 「敵前逃亡は射殺、と言いたいけど、ここはとら軍曹の軍法会議にかけるよ。心折れるまで強制労働決定!」 異論は認めない。 「見習うといいよ」 虎美が指差す先には、麦藁帽子に作業着、首に手ぬぐいのIKETERU農作業ルックにお着替え済みの『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)がいた。 「久々に簡単なお仕事だー☆ 超頑張るー」 喜色満面。 好き好んで来てると体から発散される気が言っている。 訓練されたリベリスタになりつつある『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)は、くすくすと機嫌よく笑っていた。 「簡単! 全部見つけて葬操曲でばっちり倒して、え……」 わざと深刻な顔をして、とら軍曹は首を横に振る。 ずいっと突きつけられる、今回のお仕事要約書。 太字でぶっとく。 『手荒い取り扱いはもとより、攻撃、だめ。絶対』 「そっと触れて確認するだけね……大丈夫。任せてっ」 ドヤ顔で胸を叩く姿は、釘抜き使えないと逆切れしていたようには見えない。 経験は人を強くする。 「あ、女の子達は日焼けに気をつけてね♪」 終が、日焼け止めを投げる。 簡単な仕事は、作業が簡単なだけであって、決して楽な仕事ではないのだ。 ● 「変態行動さえなければ最高の父親なんだが……。監視が解かれてから磨きがかかっているのは気のせいなのか?」 クリスティナ、父の背中の向こうの遠い何かを見ながら。 「あ、芋虫みぃ~つけた。 こんなはっきり言って気持ちの悪い虫があんな可愛い蝶々になるなんて、判ってても信じられないよね。じぃ~」 メイ、開始一分。この先を考えると、リベリスタの目に浮かぶ涙。 ● 牧歌的風景だ。 「分け入つても 分け入つても 青いキャベツ」 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は、昨年度末テストの範囲だった自由律俳句のもじりを口にしてみる。 特有の青臭い匂いが当たり一面充満している。 良いお天気。 逆に言えば、さんさんと降り注ぐ真夏と変わらない紫外線。 照り返し、干上がる喉、春特有の埃っぽい空気。 「うわ~ロールキャベツの素がいっぱい……。これで何人前作れるのかな?」 メイの子供らしい台詞に、一同に束の間笑顔が浮かぶ。 「とりあえず、『キャベツもどきを全て見つける』までがんばるよー!」 見つけられればおうちに帰れるね。 というか、見つけるまでおうちに帰してもらえないね。 そんな事実を告げることが出来ない俺達を惰弱だと叱ってくれ、偉い人。 イヴが言ってたか。 こうして洗礼を受けていくんだな、リベリスタって。 「取り敢えずは地図とコンパスをもって、地道に一つずつ潰していくしかあるまい」 闇雲にやっていては終わらない。 野宿、勘弁。 クリスティナが地図を区分していく。 「地図にはいくつか線を引いておいてブロック化しておこう。で、終わったところはマーキングしていけば作業上の混乱もないだろう」 地図を覗き込みながら、イーゼリットも頷いた。 「きちんと端から調べていくのが定石ね。マーカーで印をつけて、場所をメモして、アクセスファンタズムで個数を皆と共有しましょ」 (鬼門のフィールドワークね……。この前の挫折が不安だけれど、でも力仕事じゃないし、別におばけとか出ないんでしょ? それなら……) 何とかなるといいなぁ。 「だいじょうぶ、きっとすぐ終わるよ! がんばろー♪」 『合法』御厨・九兵衛(BNE001153)は、可愛いアメショ系ショタの外見を存分に利用し、巧みに女子の周囲をちょろちょろしている昭和一桁生まれだ。 (パーティーじゃ。ガーデンパーティーじゃ。あ~ん♪ とか、お膝枕でよしよしと寝かしつけてもらったりとか……) 妄想爆発。 鼻の毛細血管も爆発しそうだ。 「ヨーロッパの方では赤ちゃんがキャベツ畑で子供が生まれるという伝承がありますが、それを髣髴させますね。地道に一つ一つ手探りで探すしかないです」 『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)が、あははと絶望的かつそれが一番確実で早い手段を提示する。 てきぱきと作業工程を確立していく愛娘をうっとりとした目で見ながら、携帯用のガスコンロなどを並べる達哉の仕事は、もうそれしか楽しみがないリベリスタの士気を保つための飯炊きだ。 そのためなら、働き手が減っても仕方がない。 ご飯大事。 誰も、「そんなこといいから、働け」と言わないのだ。 「わあー、綺麗なチョウチョ。ウフフ、待て~」 キャベツ畑にモンシロチョウが、ひ~らひら。 智美と名乗る智夫の口調は少女でも、制服は所詮男子だ。 つうか、4月一日生まれなら、学年でもっとも遅いお誕生日ちゃん。 通常通りの進学なら、この三月に卒業したはずだ。 いつまで女子高生気分なんだ!? 「と、見せかけて、拙者は逃げ……」 こわいだろう? 魔女っ子は擬態で、中身は脱走王なんだよ。 しかし、訓練されたリベリスタは、訓練されたリベリスタの逃亡を許さない。 そして、逃走に失敗した脱走王は精神の平常を保つべく魔法少女を召喚する。 ● 「いやぁあああッッーー!!」 イーゼリット、肩に青虫。魂の底からの絶叫(150DB) 「広大な畑がなんだ! 広範囲の土壌改良した私にとって何も問題はない」 虎美、訓練されたリベリスタ、経験の重み。 ● 開始三十分。 作業にも慣れ、ちょっと中だるみな空気が漂う中、牧歌的な電子音が流れ出す。 失礼。と、周囲に頭を下げて、京一が携帯に出る。 「もしもし……えっ……はい……はい……分かりました」 え、なに? 一大事? 申し訳なさそうに京一が叫ぶ。 「下の子供が熱を出したみたいで、急いで迎えに来て欲しいという連絡がありました。済みませんが、ここで早退させていただきます」 幼稚園とか保育園って、病気の子供預かってくれないんだよね。 具合悪くなると、迎えに来てって連絡来るんだよね。 送迎ワゴンのエンジンがかかる。 「では、後をよろしくお願いします」 申し訳ないと何度も頭を下げながら京一が乗り込んだワゴンは一路三高平市にぶっ飛ばされる。 乗せて~。そのワゴンに私を乗せて連れて帰って~。 今、リベリスタの心は一つに。 だがしかし、一人逃げたら作業範囲は確実に増えるのだ。 しかし、訓練されたリベリスタは、訓練されたリベリスタを以下同文。 「え、なに? 誰か呼んだ?」 AFに情報を打ち込みながら、イーゼリットは涙目だった。 (広い……歩き回ってるだけなのに、さすがに疲れるものね……。涼しい季節だと思ったのに、ずっと歩いてるとなんだか暑いし……。足の裏が痛い……まだ、一つも見つからない……泣きそう) 直感に頼りたいが、我慢しないと取りこぼしが出る。 キャベツの前にしゃがみこみ、葉を傷めないようにそっとかきわけ、ベィビィの有無を確認し、再び葉を傷めないようにそっと戻し、一個分移動して、葉を傷めないようにそっとかきわけを繰り返し、一列終わったら、マーカーで線を引く。 単純作業かつ集中力を必要とされ、取りこぼしがあったら、もう一回はじめから。 そして中腰からしゃがみこみ。そのままの姿勢でかに歩きで移動。 誰かに呼ばれた気がしたが、それに返事はない。 幻聴? 頭がボーっとする。 ふと凝り固まった首を回すと、作業着のカーキの上に鮮やかな緑色が。 動いた。むにって動いた。くねって……。 絶叫。 後に居合わせたリベリスタはこう語る。 キャベツ畑の隅々まで響き渡る悲鳴だった。と。 どうやって、振り払ったか覚えていない。 脳から血が退いて、その場にしゃがみこんだ。 (私、どうして飲み物を持ってこなかったんだろう……まさか自分の体力が持つと思ったの!? 馬鹿じゃないの!?) イーゼリットは、力の限り自分を罵倒する。 いくら変質したとはいえ、リベリスタも生物である。 頑丈になったとはいえ、消耗はするのだ。 その目の前に降りてくるスポーツ飲料のペットボトル。 「長時間の農作業の必需品、清涼飲料水もいっぱい用意したよー☆ こまめに水分補給いぇい☆」 悲鳴を聞きつけた終が、大丈夫~?と、声をかける。 涙目で、イーゼリットはペットボトルをつかんだ。 「おしぼり使う? おかしもあるよ☆」 イーゼリットは、何度も何度も頷いた。 ● 「早く柔らかくて美味しいキャベツが店頭に並ばないかなー……そしたらママ料理してもらって、いっぱい食べさせてもらうんだ~☆」 とら、ママは脳内の住人。 「じゃじゃーん☆ ねーこーみーみーきゃーべーつー☆」 終、キャベツもどき発見。猫耳の入手方法は現在調査中。 ● (……終わる気配すらない労働って、拷問。こんな時は、心を空にしてしまえばいいのかしら?) 舞姫は潔く、心をまっぱにした。 「嗚呼、青い空。白い雲。痛い腰。くあー、やってられっかー!」 うわあ、まっぱになっちゃったから、言葉に掛けるオブラートも、身も蓋もないぞぉ。 見上げた空には、緑色の物体が飛んでいる。 とらは、キャベツの外葉を体に巻きつけているのだ。 「皆もやりなよぉ、ひんやりして気持ちいいよ♪」 キャベツの葉っぱには、熱を取り去る働きがあります。 でも、なんか、人としてパス。 「あ、目にゴミが! 突風! あーーーーーーーっ!!」 「あ」に濁点がつく勢いの悲鳴を上げながら、空を飛んでいたとらが、キャバツ畑に墜落した。 空から見て分かるようでは、プロのキャベツ農家さんにばれてしまう。 「こ、このリボンを巻きたか……終君のねこ耳とあわせたら……きっと」 世界中で大人気の無表情なねこキャラみたいになったのに……。 「軍曹おおおおおお……!!」 ほんのちょっと他のキャベツと違う手触りの外装の奥。 ちょっぴりとんがり耳気味のベイビィちゃんがすやすや眠っていた。 (超かわいい) ベイビィを起こさないように、終、無言でガッツポーズ。 (超和む……超癒し……オレ、まだ頑張れる……) 震える手で、ねこ耳キャベツもどきごとベイビィこっそり記念撮影。 AFでみんなに送信。 これ、あくまで業務連絡だからね!? 別に可愛いから撮ってる訳じゃないからね!? でも、キャベツ畑のあちこちで、可愛すぎて生きるのがつらくなった人々が続出したのは明記しておく。 ● それでも、リベリスタはキャベツにかじりついてでも倒れる訳には行かなかった。 何しろ、まだ食べてない。 キャベツ尽くしの賄を。 「こちらラーグリーズ4、目標を発見した。確保を開始する。オーディン1、食料の配給はまだか」 クリスティナのコードネームはラーグリーズ4、達也のコードネームはオーディン1。 ようするに、「パパ、おなか減った。ご飯まだ?」だ。 「ご飯だぞ~」 かんかんか~んとお玉で叩かれるフライパン。 「お、おかしい……そんなに大したものができないとか言いながら結局フルコースになっているだと……!?」 達哉さん、こり過ぎです。 「……む、青虫発見」 トングで摘んで畑にそっと放してやるのはいいけど、その青虫、どこにいたの。 畑のあちこちからよろよろと現れたリベリスタのほっぺたは、皆下向いてたのと紫外線で真っ赤に火照っている。そして、微妙に前かがみだ。 「拙者、さっきからキャベツを覗き続けて腰痛が痛いでござるよ」 腰がまっすぐ伸びません。 「見てえ、ロールキャベツ。甘い……大自然の味ねっ! あはは!」 「しっかりしろ、イーゼリット! それは丸のまんなの生キャベツだ! ロールキャベツあるから! ミネストローネ風味のロールキャベツあるから!」 「楽しみにしてたの……パティシェがきっと何か考えてくれてるって……」 「死ぬなら、食ってから死ねぇ!」 「心の支えだったんだよ……食べる。超食べる。あ、守護神は、キャベツもどき全部見つけたら食べてもいい。みんなが食べてる間も働け」 「この妹、猟奇!? お兄ちゃんに言いつけてやるぅ!」 「キャベツうめぇ……」 「キャベツがキャベツ食ってる!?」 「なあ、キャベツワインって、要は青汁のワイン割なんじゃぁ……」 「誰が食っていいと言ったぁ!?」 「シュゴシンッ!?」 ● 「いっぱいいっぱい調べたよ~そろそろ終わりかな? え。まだ1面終わっただけ? 後どれくらい?」 「わーい、モンシロチョウだー。あっちはモンキチョウだー」 「拙者の周りには何故か青虫とかハチしかいないでござるよ……」 『芋虫かんさつにっき 一生懸命葉っぱを食べてます。 ずぅ~と見てたけど全然蝶々にならないので飽きました 終わり』 「ベイビィちゃん、バニー服をプレゼントだよ」 「キャベツって消毒しないと、羽虫だのテントウムシがキャベツの中にわらわらいて、葉っぱを齧っていたりするんでござるよ……っ」 「それが当たり入りだから気をつけろって? ありがとお兄ちゃんやっぱりお兄ちゃんは優しいね」 「たっつ~ん。ごはーん」 「どうして産みの母と遺伝子上の母はあんな男に惚れたのか……。お菓子だな!?」 「最近はキャベツが高いからな……」 「アークのお仕事ってどんなものかは習ってたけど、痛いのとかやだなーとか、わがままな考え持ってたボクに罰があたったのかな? きっとそうかも」 「新田さん! あなたの犠牲、無駄にしないから……」 「ハイ、私が悪うございました。収穫するのはキャベツもどきだけです。これはキャベツです、これもキャベツです……」 「あはあははははは」 「私がんばるよお兄ちゃん今晩はロールキャベツだねわかったよこれが終わったら一つ二つ収穫してもらって帰ろうね」 「キャベツがひとつ、キャベツがふたつ……キャべ……わ~んもう見たくなーい!」 「……ねぇ、幸せ……?自分のチャンネルに帰ったら、ペロペロしてもらうの?」 「んーお兄ちゃんが言うならちょっとだけいいよ続きは家に帰ってお夕飯の後にしてねそしたら今日も一緒にお風呂入って寝ようねお兄ちゃん大好き」 「大丈夫、ちょっと浮遊したら作業再開するから、うん、大丈夫だから……」 「あれ……、首が変な方向に?」 「たっつ~ん、おやつ~」 「お菓子で懐柔したんだな!? あの男の存在は認めたくないが料理は絶品だからな!」 「ゴメンなさい、次は楽なお仕事とかぜいたく言わないからゆるしてー!」 ● その緑の玉の中で、小さな赤ちゃんがすやすや眠っていた。 「これで、十二! 十二、十二……」 キャベツもどきを抱え込み、イーゼリットは泥まみれで笑いながら、キャベツ畑に座り込んだ。 明るくなってきた空には、真っ白いお月様。 薄れゆく意識の中、イーゼリットは作業終了と最後の力でAFにささやいた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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