●祀られる石 ヒビの入った巨大な石が道端に転がっている。石、といっても実質は岩のようなものであり、道端にこんなものがあったら視界に入って仕方がない。 この石はエリューション・ゴーレムである。神秘の力を石の体に蓄えて、徐々に大きくなったという魔物だ。そしてこの石は、人を襲って犠牲者を作り出すこともあり、少し前も女子高生の石像を作りだしていた。幸い、その石像はアークによって回収されたことで人目に付くことはなかったが、それでもこの石化を解くにはこの石の魔物を倒すしかない。 しかし、このヒビは前回アークのリベリスタが戦って付けたものだ。その時は一歩届かず、この魔物を倒すことができなかった。 その時より、この石のエリューション・ゴーレムは力をつけている。このサイズになるまでと同じように、道端の石として何気なく日常に交じりながら、戦いの時になるまで力を蓄えているのだ。 当然、この石を放っておくわけにはいかない。アークはそう考えているのだが、少しだけ厄介なことが起きた。 この石は、動かなければただの大きな石にしか見えない。故に、メディアで取り上げられて一般人の関心を惹いてしまった。 凶暴性を隠しているこの石を人は祀り、注連縄が付けられた。これを見に来る観光客なども、この道に来ている。 騒がしくなった道端を前に、石はいつか行動を起こすだろう。この石にとって、人など少し息を吹きかければ石化させてしまえる存在でしかない。 もちろん、カレイドシステムが見せた未来の中でも、この石は犠牲者を作り出してしまっていた。 しかも今度は、前回よりも多くの人数をだ。 となれば、リベリスタの出番である。道端に集まった人をうまく払いながら、この石を砕かねばならない。 それが神秘と人を守るということなのだから。 ●破砕せよ! ブリーフィングルームに集まったリベリスタたちは、前回戦ったが生き残ったという石の魔物についての説明を『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)から受けていた。 「このエリューション・ゴーレムは石を元にしているわ。路傍の石として力を蓄えて、フェーズ2まで進化した……っていうのが簡単な顛末ね」 渡された資料には、元は小さな石ころであったということが書いてあった。 「特徴は動きが遅くて言葉を発しないことと、非常に高い防御力と石化のブレスを備えていること。これは元が石だから、その特徴をエリューション化しても持っているのね」 だからか、自分の居場所から動こうとはしないらしい。それはアークにとっては都合のいいことだ。 「一番気をつけなければいけないのは、やっぱり石化のブレスね。攻撃方法はこれだけだけど、少しでも触れた石化する上にダメージもあるわ。……ブレスといっても、口があるわけじゃないのよねこの石」 ではどこから出しているのだろう、と皆思うが、どうやら神秘的な方法で発生させているらしい。リベリスタも何もない空間に火を出せたりするので、そこは納得するしかなかった。 「見た目は完全に大きな石ね。私よりもでかいわよ」 一部のリベリスタは、乃亜の胸を見てそりゃでかいと思ったりもするが、これはまた別のお話。ともかく、大きくて重い石であるらしい。 「さて、注連縄が付けられているわね。これに関してだけど、どうやら祀られちゃってるみたいなの。そのせいか夜にでもならないと人は少なくならないし、その夜でも人払いをしないといけないわ。この点に関しては皆にお任せするわね」 その点はリベリスタに丸投げということらしい。何かそちらでいいアイディアを思いついてくれ、というと横暴だがリベリスタは納得した。そういう依頼も、仕事のうちだから。 「さて、お願いね」 フランクに頭を下げた乃亜に対して、リベリスタたちはそれぞれ仕草を取ってから準備に取り掛かった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月24日(火)00:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夜の御石さま 人は夜を克服した。と言われることもあるが、当然夜中は人の活動が行われる時間ではない。故に、少し外を歩いてみれば人と会うことも少ないだろう。 とはいえ、珍しいものに群がるのは人間の性なのだろうか。夜中でもその石の周りには少しの人がいた。 なので、まずは『クロスイージスに似た何か』内薙・智夫(BNE001581)が強結界を張ってみる。これで少しでも違和感を覚えて離れてくれればいいな、という意図だ。 「んー……。目的がある人にはあんまり効果ないのかな?」 それでも動こうとはしない一般人を見て、智夫はその様子を仲間たちに伝える。仲間たちはそれを聞いて、作業服と幻視の力を用意し始めた。 当然、智夫も作業服を用意してきたのだが、少しサイズが合わずぶかぶかな作業着に違和感を覚えてぶるぶると震えていた。そうしていると、作業用のヘルメットがずり落ちて少し前が見えなくなる。 「うー……小さいからちょっと似合わないのかな? 男でクロスイージスなのにぃ……」 ヘルメットを押し上げながら、空いた手で指を軽く咥える智夫だった。 「……おい今チビって言った奴誰だ。……いや、本当の事だから何も言えねェけどよ……」 小さいという言葉に反応したのは、『チェインドカラー』ユート・ノーマン(BNE000829)だ。条件反射的にそう言いながら振り向いたものの、その先にいたのが首を軽く傾げてクエスチョンマークを浮かべる智夫だったので、ユートは顔を背けた。 「……見目はいわゆる不良だから、まァ似合わねェ事ァねェだろ」 自分にそう言い聞かせ、ユートは自分の作業を始める。というのも、実際に作業灯を付けて戦闘の際に役立てようとしているのである。これから行う一般人への言い訳にも合っている行動だ、誰も止める者はいないだろう。 「なんだか楽しいねこれー♪」 ダンスをするかのようなリズミカルにステップを踏みながら、作業服姿の『枯れ木に花を咲かせましょう』花咲 冬芽(BNE000265)はキープアウトと書かれた黄色のテープを周囲に巻いていく。この先は行けませんよ、という一般人への警告のためだ。 「くるっ、くるっ♪」 ステップに飽きたら少し小走りになって、一回転。それからちょっとはしゃぎすぎたことを反省して、自分の頭を軽く叩く冬芽。 「あはは。……夜中に出歩くのってテンション上がっちゃうよね。お化けさえ……いなければ……」 お化けのことを自分で言い出しておきながら、テンションがそこで下がる冬芽だった。夜中の道ってそういう雰囲気がある。 「一般人の皆さまの退避が終われば、戦闘ですね。過去にも岩のエリューションを相手にした事があります。衝撃破砕は得意ですし、思う存分やらせて頂きましょう」 一方偽装のためにトラックを道に置いてきた『アメリカン・サイファイ』レイ・マクガイア(BNE001078)は、幻視で銀の髪を黒く染めていた。あまり目立たないようにするためだ。ヘルメットから飛び出たアホ毛と作業服からはちきれそうな盛り上がり……要するに巨乳が目立っているのはご愛嬌。 ある程度偽装作業が終わったことを示すピースサインを皆に向けるレイと冬芽。これもダブルピース。 「アルもアルもー」 看板を設置し終えた『ナーサリィライムズ』アルトゥル・ティー・ルーヴェンドルフ(BNE003569)も、同じく仲間たちに向けてピースする。喜んでぴょんと跳ねるその姿は、作業服に身を隠していてもちょっとふわふわした印象を受ける。 「あっ。はうっ」 目立ちすぎたことに気付いたのか、ユートが作業している電柱の陰に急いで隠れるアルトゥル。ユートは一瞬びっくりしたが、その子供らしい可愛らしさに微笑んでから――ぷいっと顔を反らした。 さて、一般人が来ないように準備を整えたとはいえ、まだ石を見物に来ている一般人は数人いる。 「すみません。ご協力お願いします」 だから、『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)たちは声をかけることにした。ヘルメットと髪で顔を隠した七海は正直怪しい雰囲気があるが、作業服と無表情の組み合わせが非常にそれっぽかったのである意味似合っていた。 「悪いけど、どーっしても今夜の内に調査をしないといけなくてね。上が連休前に調査結果をまとめろって五月蝿くてさ。ああ、やだやだ、締め切りって世知辛いね。ま、そんなわけで今夜は諦めてくれないかな。また明日になれば、参拝できるからさ」 七海が説明している間に割り込んで、上司のように振る舞いながら『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)は言葉をまくしたてることで説明をしていた。ここで帰らなければ脅すことも当身することも厭わないと考えていたため、クルトの心中は少し焦っていたのかもしれない。 「人の少ない夜中にやることになったので、よろしくお願いします」 さらに後方からピースサインを受け取った『閃拳』義桜 葛葉(BNE003637)も説明に加わる。真面目で誠実そうな上に鍛えているから作業員っぽい葛葉の言葉に一般人たちは頷いた。もちろん、七海とクルトの説明もあったからだが。 ともかく、一般人には納得してもらえた。彼らは何も知らずそれぞれの帰路につく。 「Gluck entsteht oft durch Aufmerksamkeit in kleinen Dingen, Ungluck oft durch Vernachlassigung kleiner Dinge」 クルトがその背中を眺めながら、ドイツ語で何かを呟いていた。アルトゥルはその言葉に深く頷いていたが、智夫や七海は首を傾げるだけだったとか。 「もう人払いが済んでるようならお勤めご苦労様ですっ♪」 完全に一般人の気配が消えたところで、ぴょこっと冬芽が出て来て石のエリューション・ゴーレムの周囲を窺う。すると、少しずつ動いているのが分かった。 「――出すぎた杭は誰にも打てない…なんて言葉があるけど。これ以上出てくる前に、しっかりと打ち砕くよっ」 懐中電灯を腰に括り付けて、純白の羽を広げた冬芽が空を飛ぶ。 「ターゲット補足。戦闘行動を開始します」 窮屈そうだった作業服(主に胸が窮屈だった)を派手に脱ぎ捨て、いつもの修道服になったレイが拳を真っ直ぐに向けていた。布一枚だから当然胸も揺れる。それがない冬芽からすればちょっと恐ろしい光景。おっぱいオバケだ。 「見た目はただの石、か。だが、どうやら油断は出来ぬ相手の様だ。ならば、最初から最後まできっちりと事を進ませねばな。さて、勝ちに行くぞ……!」 レイと同じく拳を向けた葛葉が、唸るような低い声と共に気合いを入れる。 この石をこの拳で打ち砕く。レイと葛葉は、その一心を体と拳に込めていた。 「石のゴーレムかぁ……。凄く固そう……」 そして智夫の不安をよそに、石との戦いが始まる。 ●石の魔物、再戦 ヒビが入った巨大な石としか形容できないそのエリューション・ゴーレムは、注連縄がされていることによってどこか神秘的なものに思えた。エリューション化しているのだから、実際神秘的なものなのだが。 「それにしても、人間って何かを祀るの好きだよね」 「んー、日本人ってなァ変な物拝むんだなァ」 クルトとユートはお互いに軽口をたたきながら、動き出す。相手の動きは見た目通り鈍い、ならば今のうちに動いておこうということだ。 「ブレスをくわらないように、散開から行こう」 最初にクルトは皆に声をかけて流水の構えを取る。息を整え、先に気合を入れたレイや葛葉に負けないよう、心の奥でクールに燃え上がっていく。 「さて、と。俺の仕事はまァ決まってる。呪い無効で石化が効かないクロスイージス、ってことならやるこたァ一つだ」 クールに燃え上がっているのはユートもだ、散開した仲間達を見届けてから距離を調整し左腕の義手を右腕で抑えこみ――ジャスティスキャノンを石に放った。うまく相手の攻撃をコントロールし、石化しない自分がブレス攻撃をすべて受けきるつもりなのだ。 「はンッ。さて、どうなるか」 動かない石にジャスティスキャノンは見事命中するも、石だけに効果が及んだかどうかはよく分からなかったので、ユートは真剣な顔で様子をうかがっている。 案外表情豊かなユートが舌なめずりをして、石が動くのを待っている間に、無表情なレイが石の背後に回って攻撃を仕掛けようとしていた。 「岩、それは硬さの象徴。それに対抗するは柔らかく滑らかな動き、人体の柔軟な部分、つまり……。胸ですね」 こんなことを言っているけど、やっぱり無表情だ。宣言通りとても柔らかそうな胸を布がかわいそうになるぐらいに揺らしている。石の後ろに回っていたので、仲間の皆からもよく見える。 「大きな胸は時に戦闘の邪魔となり、切り落とす部族もあったとか。だが私はその質量さえも活かし、拳法に利用します」 これから叩き込む技の理屈を説明しながら、ボクサーがやるように身を屈めながら左右に体を振って胸を派手に揺らすレイ。大人の女の人ってメルヘンな体なんだねとアルトゥルは思う。 「揺らし、振り回し、重心を考慮に入れて……慣性を制御し、力を集中し、叩き込む! これが私の拳法! 喰らうがいい!」 滅茶苦茶な理屈で手から繰り出された土砕掌は確かに威力があったようで、ヒビが入っている石の体に内部からのダメージを与える。効果があったのかは……神のみぞ知る。 「水の雫がやがて、巨大な岩をも穿つように……俺もまた、その布石を打たせて貰う……!」 さて、葛葉はまともな理屈で拳に力を込め……一息を付いてから側面から石を殴り始める。 「ホワタァッ!」 一撃一撃を丁寧に積み重ね、何度も何度も殴りつける。これもまた、土砕掌の一つの形だ。 腕の筋肉が脈動し、丁寧な攻撃は速度を上げて光速の拳となる。まさに、閃拳の二つ名に相応しい攻撃と言えるだろう。 閃光となった攻撃はヒビを撫でて、ダメージを蓄積させていくのだ。 「どうなんでしょうアレ……」 まったくタイプの違う柔と剛の拳、そしておっぱいを見ながらユートに浄化の鎧を使う七海。色々と考えさせられるが、それは横に置いておいてとりあえず戦いに集中しようと思うのであった。 「……あっ」 そうしていたら、目の前にブレスが飛んできた。突然石が動いて放ったブレス攻撃であり、それは七海を狙って来たのである。 「チッ……」 ユートは石化ブレスをまともに受けて石化してしまった七海を見ながら、石の方を改めて見る。怒りは付与することができなかったようだ。 「大きくて固い、かぁ。なんとなくクロスイージスに似てるかも……?」 ブレイクフィアーを使って七海を直しつつ、智夫は石とユートを見比べて、軽く首を傾げてそう思う。決して自分とは比べていないのが智夫らしいのかもしれない。 「御石様はすっごく硬い……ね。ならばこそ、だよね。攻撃が通じないならば、通じさせればいい。隙がないなら、作ればいい」 クマのぬいぐるみ状の影を作り出し、曲刀を鳴らして両手で持ちなおす。純白の翼を羽ばたかせ、振りかぶって一気に飛び込む。 「攻撃が通じないならば、通じさせればいい。隙がないなら、作ればいい。それが私達ナイトクリークの信条」 その目的は――、 「ナイトクリークの一撃は必殺――どんな敵をも逃がさないよ」 一閃。翼を使って飛び降りる勢いを乗せた曲刀の一撃は影の刃と共に石を切り裂き、ヒビを撫でた。 それは致命的な一撃……クリティカルヒットとなって石の体を裂いていく。 「いぇい♪」 うまく決まったのでピースサイン。にっこり笑って、良い戦果。 刻まれた刃は石の一部を切り飛ばした。とはいえ、まだ倒しきれていないので戦闘は続く。 「狂気のメルヒェン、カミサマに昇格! でもでもそれは人に被害を与えるカミサマ。神秘に触れないしあわせな人たちが、しあわせに過ごせるように。だから、アルは、アルトゥルは。たおしますたおしてやります。ぜったい!」 自分たちが負けてしまったから石にされてしまったという女子高生のことを胸に秘め、メルヘンハートにくやしさを載せて、ぎゅっと小さな手でライフルのトリガーを握る。 「ごめんなさい。だけど、これでカミサマごっこも、これでおしまい!」 アーリースナイプ。ヒビ割れの中に銃弾を何度もねじ込んで行く。 この小さな銃弾が、きっと大きな大切なものになるとアルトゥルは信じている。 幸せな物語が最後はハッピーエンドになるように、終わりへの布石だと思っている。 ●割れたもの 再び放たれた石化のブレスは、七海の体を吹き飛ばし倒れさせてしまう。 「ぐぅ……っ」 地面に叩きつけられまるで跳ねるようになってしまった七海。当たりどころが悪かったらしく、地面から起き上がれない。その特徴的な髪がダルそうに垂れて、戦闘不能だということを認識させる。 「チッ、緩急をつけてのフェイントか。……俺のところに来れば問題なかったのになァ」 それを見て舌打ちをしてから、ユートはジャスティスキャノンを放つ。そろそろこっちを来いと心の中で願いながら放たれたそれは石の中心を撃ちぬいてみせた。 「……来たか!」 石は意識をユートに集中させ、石化のブレスを放ってくる。 「ぶんぶんするよっ!」 「わわっ。今度はうまく回復させないと!」 冬芽が白の翼で風を起こし、天使の歌を智夫が奏でる。白い羽が飛び散って、ユートの体を包む神秘の鎧が反撃に光を飛ばして石を傷つけた。 神秘的な光景とはこのことか。 「硬いなら、内から崩せばいいだけのこと」 その光景の中を駆け抜けるように、走って来たクルトがにやりと笑って、体を崩して攻撃の体勢を作る。 木行崩拳。それが、クルトの土砕掌だ。 「さあ、最後だ!」 そのまま石の巨体を吹き飛ばし、クルトは電柱の影に隠れていたアルトゥルに声をかける。 「アルはアルトゥルは、今度こそ今度こそ、守るんだ!」 内部からの破壊を促す攻撃は、銃弾が何発も撃ち込まれていたヒビを広げていく。 「もう誰も悲しませたり、しないもん。もうこれでほんとうに、ばいばいだよ!」 アルトゥルはライフルを構え、子供らしい叫び声と共にアーリースナイプ……エンディングへの弾丸を放つ。 その弾丸はヒビが広がり割れかけていた石の体に直撃し、真っ二つにしてみせた。 「任務完了、だな。……これはオマケだ!」 割れた石の体を、レイと葛葉の土砕掌で更に細かく砕く。おっぱいと筋肉が揺れて、それぞれ勝利のポーズ。 「やはり胸は強かったですね」 相変わらずの無表情でダブルピースするレイと、フィンガーグローブを付け直して一息を付く葛葉。 「色々あるんだなぁ……」 ユートに助け起こされながら、リベリスタの多様性を改めて感じる七海だった。 アークのスタッフが持ってきた大きな石と簡単な社を置き、器用なレイを始めとした皆で協力してリベリスタたちは後始末を終えた。後は撤収するのみなので、葛葉などは荷物を纏めて次の戦場に向かってしまっている。 「誰かを傷つけないと誰も守れない。当たり前だけれど、やっぱりすこしだけ、悲しいな」 転がっていた石の残骸を手のひらで転がしながら、アルトゥルはふわふわの髪を風に揺らして月明かりの中で悲しそうな顔を浮かべていた。 「次はみんなと仲良く暮らせるような存在になれるといいね」 アルトゥルの頭を軽く撫でて、智夫は回収した残骸に祈りを込める。 「さようなら、またねっ!」 冬芽がそう言い残して、去っていく。 その明るさを見て、アルトゥルと智夫も帰路についた。 「さ、帰るぞ」 ユートのぶっきらぼうだけど優しげな声色が、帰り道を行く仲間達を優しく包む。 帰り道はある。 帰る場所もある。 それはたぶん、幸せな物語の条件。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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