● ざさぁ 風が枝を揺らして、擦れ合う花弁同士が音を立てる。そのうち何枚かが風に浚われてひらりと宙を舞って木の下に立つ私と彼を囲んでいた。 その音を聞きながら、私は向かい合う彼に問う。 「本当に、行ってしまうの?」 私は瞳に涙を溜めて彼を見る。だが分かってしまう。幼馴染として、愛する人と彼を意識する前からの長い付き合いだからこそ分かってしまう。彼の目に決意の光が宿っていることに。 「もう決めたことだから」 かちりと着込んだ軍服を撫でる彼。 嗚呼――、此処で私はなんと言えば良いのだろう。行かないでと泣いてその軍服の裾を握れば彼は止まってくれるのだろうか。 ぐるぐると頭の中で廻る思考を、揺れる私の瞳から気持ちを読みとったのか。彼がカラカラと笑いながら桜の幹を撫でる。 「大丈夫、僕はきっとここへ帰ってくるさ」 本当は解っている。もう何を言ったって駄目だって。だって彼がこうなったらもう梃子でも意見を変えることはない。幼い時からそうだ。彼は決めたことを途中で変えるような人じゃない。 こうなった彼に私はもう何も言うことができない。だからせめて約束をするんだ。彼との絆が切れてしまわないように。 「うん、待ってる。私、ずっと貴方を待ってるからね」 行かないでとは、言わないよ。だからもう一度私の下に帰って来てね。私は必ず貴方を迎えるから。 そう思いを込めて、彼の瞳を見上げる。 「あぁ、僕は何があってももう一度ここに帰ってくるよ。そうしてもう一度君と満開に咲いたこの桜を見るんだ」 彼はしっかりと私と目を合わせて笑顔で頷いてから、軍靴の音を響かせて私の前から姿を消して行った。 ● あの時から何年になりますか。 戦いが終わって幾年経っても彼は帰ってこなかった。周りの人は諦めろと言うけれど、そんなことは私には出来なかった。もう一度此処で会うって約束したから。 季節が巡って、夏が来て若葉が茂って、秋が来て葉が落ちて、冬が来て凍えて、又春が来て桜が咲いて。 また花弁を散らしていく桜を見ながら、どうか、どうかと願うけれど。 何度季節が廻ろうとも貴方が履いた軍靴の音は聞こえることは無く、私の命の火も消えてしまいそうになりました。 もう一度あの桜の下に行きたいけれど、衰えた私の足はベットから立つことを許してくれそうにもありません。 本当にごめんなさい……もう一度、もう一度貴方に会いたかった。 もう、待つことのできない私を許して下さい。もう、貴方が帰ってきても迎えることが出来ない私を許して下さい ● 「死後まで残される想い。それは本当に強くて純粋な物だけど、容易くねじ曲がってしまう」 『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)がプリントアウトした一枚の資料を集めたリベリスタ達の前に提示する。 「『桜の下に立つ女の幽霊』?」 「そう、今一部のオカルト界隈で有名になってきている都市伝説。 内容は単純、少し小高い山の中に一本咲いている大きな枝垂れ桜の下に着物を着た若い女性の幽霊が立っている。という物」 「それがどうかしたのか?」 「この噂は、事実。ただし出現しているのがフェーズ2のエリューション・フォースであると言うだけ」 彼女は語る、予知能力によって見た、死して尚彼への想いを鮮烈に残す女性の一生を。 「こうして彼女は亡くなった。でも彼女の想いはこの世を去ることはなかった。 そして彼女の想いは革醒したのよ」 今、彼女は別れた当時の姿に若返り、桜の下に立ち続けているというのが都市伝説の真相らしい。 そのまま軽く眉をしかめ資料の最後の項を読みあげるイヴ 「アークが事前に調べたところ、彼女の想い人は既に戦死している。 彼女の、待つだけの悲しい想いを断ち切って。それが唯一の救いだと思うから」 嗚呼。もう一度貴方に会いたい。会いたい。貴方に会う為ならば、会えるならば。 ――私は、鬼にだってなりましょう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月28日(月)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●さくらさくらI 風が枝を揺らして、擦れ合う花弁同士が音を立てる。 その内の何枚かが風に浚われてひらりと宙を踊り、木の下に立つ誰かの視界を色に染めた。 一度風が吹き抜ければ、ひらりひらりと白が舞う。 薄桃色の白が舞う。風に遊んで、時に揺られて。 ほんの僅かな春の残り香を名残惜しむように舞い遊ぶ。 少しだけ悪戯な、せっかちな風に煽られて――儚いひと時の『春』はまさに終わりを告げようとしている。そんな気がした。 『探究者』環 澪(BNE003163)が言った。 「桜の下には何とやらってよく言うけれど。本当の所、こんなに綺麗な花に血生臭い話は似合わないわよね――」 それは極々短い時間だったけれど、まるで永遠のようで。 『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)が言った。 「ここまで待って貰えるなんて、相手が少し羨ましいね。いや、少し不謹慎なのかも知れないけれど――」 幻想めいた光景は日々、多くの神秘に触れて生きるリベリスタ達にさえ息を飲ませるそれだった。 薄桃色の花びらが、咲き誇った花が散る。 桜の木の下に立つ『彼女』は――紫の矢絣に行灯袴で帯を締めた少女は――現代の『徒花』に違いない。昂ぶる少女の感情のままに意志を持った花びらも今は無く。鮮やかな『当時』の想いを切り抜いたかのような少女は不思議そうに世界を、光景を見つめていた。 「……永いですね、本当に」 「愛という感情はさまざまな奇跡を起こすな。良くも、悪くも。尤も、オレはまだガキだから解らんが」 嘆息に似た吐息を零した『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)、『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)の双眸が無防備にも見える女学生の姿を捉えていた。 必ず帰る、と耳に触れた約束を彼女は嘘にする事は無い。 愛しい人が囁いた「もう一度君と満開に咲いたこの桜を見るんだ」その言葉を嘘にする気は無いのだ。 例え戦争が終わろうと、貴方が戻ってこなくても。 何度季節が巡ろうと、貴方が戻ってこなくても。 少女がやがて美しく成熟し、老婆となって、貴方が戻ってこなくても。 やがてベッドの上で彼女が人生を手放したとしても――貴方が戻ってこなくとも! 彼の履いた軍靴の音を少女は唯、待つばかり。 そこに救いが無かったとしても、理性より先に貫き通した一人の老婆の未練はこの期に及んでも曇っていないのが、物悲しい―― 「でも、貴方が望んだのは、人を殺める事じゃない筈」 アーバレストを『引き絞る』――黒鉄色のライフルのその照準を動かぬ少女にピタリと合わせた『後衛支援型のお姉さん』天ヶ瀬 セリカ(BNE003108)は呟いた。 「唯、そこに居たかったんでしょう? 鬼になりたい訳でも無く。会いたかった以外の何者でもなく」 でもそのやり方は間違いだった、セリカは胸を衝く桜の風景に灰色の瞳を細めて内心だけで呟いた。 照準の中の少女が動き出す。ふわりと袴が膨らんで魔的に美しいこの光景に新たな色を刻まんと動き出す。 ざわざわと風が鳴る。 あの日よりも枝振りを増した桜の梢を青い空の溜息が無粋に揺らす。 銃声が高く嘶く。 あの日と変わらない有り得ざる遠き幻影(かげ)を引き裂くように、それは何処か戦争の様を思わせて。 「――――」 息を呑んだのはリベリスタ。 少女の視線が宙に妖しく彷徨った。その口角が幽かに吊り上がった。花びらのような唇がそっと笑む―― ●戦争の時代 ――時間は僅かに遡り、丘の上。 「大正桜に悲恋在り、か。 桜と恋と悲劇は常に一体となって伝承となることが多いね。 今回の彼女もまた、そういった悲劇の一部なのか、偶然か。 それはわかりはしないけれど。せめてその道行灯火を照らすとしようか――」 『闇夜灯火』夜逝 無明(BNE002781)のその声は風の中に良く通る。 全ての物語はシェイクスピアが完成させたと言われもするが―― 古今東西、人間と人間が織り成す戯曲は、此の世という劇場は実に多くの『凡庸なる悲劇』を繰り返してきたものだ。 そこに特別な理由は無く、特別な意味は無い。呼吸をするのと同じ程度の気楽さで運命の女神(しょうわる)が望む大いなる流転は激流を行く木の葉の如き人の一生に時に痛みを刻み込むものだ。安直なデウス・エクス・マキナこそ幻想の中に遊ぶ青い子供の夢物語に過ぎまい。悲劇に意味が無いとするならば、救済にもまた意味は無く。現実なる書き手がシェイクスピアより劣った戯曲しか描けない事等、大人は誰でも知っていた。 「戦争は栄光と悲劇を生む。昔からの道理よの」 十代半ば程にしか見えない姿格好より重々しく、吐息のような言葉を吐き出したのは目の前の光景に目を細めた『雪暮れ兎』卜部 冬路(BNE000992)だった。この日、アークより指令を下されたリベリスタ達はとある地方都市を見下ろせる小高い丘の上に急行していた。彼女以下八名のリベリスタ達が請け負った今日の任務は『桜の木の下に佇む女学生のエリューションフォースを破壊する事』である。 「紫の矢絣に行灯袴……大正時代の衣装。 彼女が生きていた時代、出征が当時であるなら……もう一世紀程。 帰りを待ち続けるというその想い、解らないでもない物ですが……」 悠月の言葉を受け、冬路の愛らしい顔に奇妙な苦笑が浮かんでいた。 (この軍服は父のお下がりだけども、もし父が戦死した事を知らなければ。 もし私が病床に伏せ、革醒していなければ。もし私がフィクサードの組織に囚われていなければ―― 私は彼女と同じように、父の帰りを待ち続けていたんじゃろうか) 冬路はそこまで考えて小さく頭を振る。 「……いや、考えても詮無いか」 戦争に引き裂かれた男女等、数数えるまでも無い。 冬路は父親を失い『彼女』は恋人を失った。それが時代というものだったのだろう。 悲しいかな、誰もが経験し得た『凡庸なる悲劇』は――悲しいかな、目の前の『少女』の時間を止めた。有り触れた悲劇の形は、有り触れた神秘に触れて有り触れた事件となってここに在る。とは言え、相対するリベリスタがそれを素直にそう受け止められる道理も無い。 神なる視点は常に物語を望んでいる。運命と人生を俯瞰して眺める意地の悪い神様はこんな時間にこそ快哉を上げるものなのだろうか―― 「待てなかった事を『罪』と思うのかしら」 セリカが問う。 「貴女は自分を責めたの――?」 「あんたはオレの何倍もの時間を生きてた。 その永く続く想いにオレがどうこう言うのもきっと間違ってるんだろう。……だが、仕事なんでな」 桜の木の下でゆらり揺らめく女学生の影が現れたリベリスタ達の姿を認め、その魔性の香りを強くした。 そこに『在り続ける事のみ』を望む彼女にとって、『それを邪魔する人間』は明確な敵である。殆ど周囲への害意を持たないエリューションフォースではあるのだが、放置出来る筈以上――何処まで待ったとて、彼女の想いが叶う事は無い以上、構えを取った福松の言う排除が必要なのは間違いの無い事実であった。 ――、―――― 『少女』の薄い唇が幽かに動く。 リベリスタ達を見回す少女のその言葉は聞き取れない。或いは最初から声等無かったのかも知れない。 桜の周りを意志を持った花びらが舞う。それは彼女の使役する想いの残滓。 彼女の願いを、満開の桜を今一度二人で見るという願いを最も強く表した彼女を守るガーディアンである。 此方に在るは八人のリベリスタ、彼方で待ち受けるは少女と四枚の花びら――エリューションゴーレム。 「この国の古き良き時代の頃の住人がやってきたのか。 現代の彼等に対しても興味が尽きないが、彼女と彼女の生きた時代にも強く興味をそそられる……」 『野良魔女』エウヘニア・ファンハールレム(BNE003603)が独白めいた。 誰にともなく呟いた彼女の視線はそれで居て、穏やかながら人為らざる薄い光を放つ少女の姿に注がれている。 「惜しむらくはお嬢さん、君がエリューションフォースである事か。 是非話を伺いたいものだがそうはさせて貰えん事情があるのがが口惜しい」 望む望まないにせよ、どんな不具合な事情があるにせよ、狭量な世界は彼女という神秘を受け入れる事は無い。執行者を気取るリベリスタ達の行動がその先に待つ自分の運命を呪う事それそのものだったとしても――今はそれを問う時間では有り得ない。 (……こんな事をしたってもう想い人には会えないのにね) 探求者を気取る澪の零した心の嘆息は幾らかの憐憫を含んでいる。 一途な想いも強過ぎれば毒になる事を彼女は良く知っていた。彼女は死者の未練を断ち切るその術を解決とするのを生者の傲慢と知りながら、同時に今も永遠に叶わぬ妄想に踊る哀れな女を救う術が一つしかない事を確信している。 「ままならないわ」 苦笑めいた声。研究者然と白衣を着こなす彼女はそのステータスが連想させる『冷たい』イメージよりは随分人間味のある方だった。 「辛い想い出は想い出のままで、悲しい物語はこれで終わりにさせましょう」 「残ってしまった想い、送ってやるとするか」 「ええ。歪みに触れてしまった以上――その歪みが、彼女の想いの容を完全に壊してしまうその前に」 澪の言葉にクルトが、悠月が頷く。 そして、エウヘニアは居住まいを正し、冷静に言葉を紡いだ。 「では、始めるとしよう。どの道今日に――それ以外の結論は無いのだから」 ●さくらさくらII 「どうせ花見をするならのんびり出来るに越した事はないけれど。桜の舞いを眺めながらの戦いも悪くはないわね」 呑まれそうな魔性の風情に敢えて嘯く言葉は澪のもの―― 十分な戦力を整えたリベリスタ達は少女と桜の花びらを強力に攻め立てた。 『約束の場所』を守らんと頑とした意志を張る少女達もこれに激しく応戦したがリベリスタ達の連携と手数の威力には流石に抗し得るものでは無い。 エウヘニアの放つ神気は大いなる波となり、無明の『現実』を光の内に飲み込んだ。冬路の軍刀が凄絶に閃き、無明の一撃は神聖を帯びる。セリカの銃撃は正確無比なる冴えを見せ、澪の支援は的確に仲間達をサポートした。クルトの抱く迅雷は『慈悲深く、まるで慈悲等無いかのように』想いの花弁を打ち砕き、福松の神業と称するべき抜き撃ちは見事にこれをシュートする。 「あんたの行き先はきっと想い人と一緒さ。安心して逝くといい。黄泉路への案内はオレが仕ろう。何、これも仕事だからな」 「――百年。もう十分に待ったでしょう。 此処で待ち続けても、想い人と逢う事は出来ません。 ……そろそろ、自分から逢いに向かっても……良いのではありませんか?」 そして福松の軽口に瞼を僅かに伏せた悠月はその言葉を肯定し、朔望の書より収穫の黒い大鎌を展開した。 花びらは砕かれる。 風が吹き、桜が散る。散ってしまう。 「待ち人来たらず、されど自らも辿り着くことなし。君の悲しみはよくわかる、私も雑ではあるが女性の身だからね」 無明が言う。冷静な言葉に確かに憐憫を込めて言う。 「桜が咲くのはほんの刹那の一時だけよ。どうしたって――そういうものなのよ」 徒に長引かせるのも忍びない、澪の言葉にリベリスタ達が勢いを増した。 ひらり。 ひらり。 ひらり、ひらり。 「あの時代は、家族を、良人を護るために、人々が命を散らした時代じゃった。 きっとお主の想い人もそうじゃったんだろう。その想い人も、もう帰っては来ぬ。じゃが、それでも――!」 声を張る冬路の声に強い感情。誰よりも少女を『理解』する強い、感情。 どれ程、少女が願っても叶わず。不可逆の時間を巻き戻したい彼女を――嘲るように桜は散り、逝く。 ――かくて、物語は冒頭に収束した。 蒼穹の見下ろす『劇場』の幕を引かんとしたセリカの銃撃が少女の体をくの字に折る。 見るからに分かる致命傷は――もう人間ではない彼女に奇妙な人間くささを表現させた。 ――、―――― 届かない言葉。 何事かを呟く彼女の唇が吊り上がった。リベリスタ達は咄嗟に身構える。 エリューションが『余裕』を見せたならば、それは―― 「……違う」 ――しかして、危険の予感はすぐに冬路に否定された。 少女の茫洋とした視線はもうリベリスタ達を見ては居なかった。 咄嗟に彼等が背後を振り返ればそこには――軍服を着た凛々しい青年の影がある。 「マジかよ」 「……成る程、人の恋路に要らない気遣いだったか」 呟く福松にクルト。 冬路やクルトは彼女への手向けに『軍靴の音』を聞かせてやる心算で居たが――それも今更。 「ずっと帰りを待っていたんだろう。もう待たなくていいから、君は迷わず逝くべきだ」 そっと歩き出した青年の影――顔も定かではなく見えない、全く不明瞭なその影に道を譲り、クルトは少女に声を投げた。 この桜の下に僅かに残った残留思念が、少女の力の残滓に触れて形になった――いや、これは唯の奇跡。奇跡なのだろう。 青年の手を取った少女がリベリスタ達に視線を向けた。微笑むその表情には悔いも、怒りも、何も無い。唯、感謝のみがそこに在る。 ――、―――― 何かを言う少女は変わらず声を発する事は無かったけれど、唇を読めばその単語は―― 青年が少女を抱きしめる。二人はそのまま光の粒子と化して、混ざって消えた。 後には何も残らない。美しい見事な桜の木が一本佇むばかり。 「見事な枝垂桜と女学生の悲恋、か。私の記録の中に刻ませて貰うとしよう」 「良かったな。あの人の叶わぬ想いを、ただ見てる事しか出来なかったお前もこれで漸く報われた」 エウヘニアが呟き、福松は桜の幹に手を当て、通じる筈も無いその一言を投げかける。 「命短し、恋せよ乙女、とは言うけど―― 死後も怨念が残る、言い換えれば鬼になるほど鮮烈な恋を私はしたことはないのよね。 それは幸せなのかしら。それとも、不幸なことなのかしら」 苦笑交じりの、僅かに羨望するようなセリカの声。 「何よりよ」 「……Wiedersehen、さようなら」 澪が、クルトが小さく呟いた。 「桜散り 折れ枯れ逝くも 恋惑い 討ちて辿れよ 死出の道行――せめて、安らかに」 無明の歌を耳に挟み、悠月は抜けるような青空を見上げる。 眩しく光を注がせる四月の空は間も無く終わる短い春と、初夏の近い訪れを予感させていた―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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