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なんてったってアイドル!?


「来たわね。座って」
 ブリーフィングルームに顔を出したリベリスタたちの顔ぶれを見て、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が座るように促した。
 アークの依頼や任務の中には、時々妙なものがある、とは聞いていたが、今回は特に妙だった。
「今日は、実験。みんなに試してもらいたいのは、VTSの応用で作られたゲームの、テストプレイ」
 VTS――ヴァーチャルトレーニングシステム。
 アークの誇る天才、『研究開発室長』真白・智親(nBNE000501)が作り上げた、画期的な訓練施設である。
「だから、みんなの身には危険は及ばない」
 そう言いながらイヴが配布していくるのは、一枚のカードである。
「これって……?」
 あるリベリスタの手元には、実に可愛らしい少女が3人ほど、ちょっとエナメル質っぽい服に身を包んでこっちを見て笑っている。隣のリベリスタの手元のカードは白いすだれのようなものを腕につけた精悍な男性。
 イヴがひとつ、頷いた。
「アイドル。」
 それ、VTSとどう関係するの……?
 幾人かのリベリスタが嫌な予感を覚えて逃走を図ろうとしたが、ドアは硬くロックされている。
 諦めろ、と?
 そんな表情を浮かべたリベリスタに、イヴはもうひとつ、頷いた。
「諦めて」

 その後説明されたところによると、どうも、そのゲームとはアイドルになって戦え、ということらしい。
 スキルなどは、リベリスタたちのものと同じ――むしろ、だからこそのテストプレイなのだろう。
「みんなのスキルとかを反映したデータを入力してある。一人に一枚の、専用カード」
 ご親切に、どーも。
「このゲームは、完成したらアーケードで稼働させる予定。
 もしうまく行けば、みんなの使う神秘の技を間違って撮影されたりしても、このゲームの再現CGだ、って主張できるようになるかもしれないから」
 最近は大きな事件も増えて、神秘の秘匿が大変になりつつある。
 その中での、せめてもの抵抗ということだろう。
「そのためにも、稼働後は注目を集めるよう、話題になりやすい題材を選ぶことにした」
 それが、
「アイドル。」
 ……どうしてそうなるの?


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月05日(土)22:43
最近の曲はよくわかりません、ももんがです。
アイドルになって敵と戦え!

●ゲーム紹介
「スーパーアイドル対戦ARK」
あなたは仮想アイドルグループ「ARK」に所属するアイドルです。
このゲームでは敵のアイドルグループ「BaroqueNights」とのソングバトルに勝利し、歌のチカラで世界を癒すことが目的となります。
※尚、この名称は全てテスト中のものです

今回は稼働テスト(及び、データ反映実験)なので、勝敗までは関係しません。

●敵データ
以下の二種から選択してください。
(【タグ】でチームを作った場合、誰か一人が選択していれば良いとします)

A・わらわら108
 数に任せて歌ってくるグループです。
 人数がある分、ハモリなどの連携を見せてきます。

B・しっかり1
 圧倒的歌唱力でソロの座に立ったアイドルです。
 一人だけですが、その実力は侮れません。

●戦い方
スキルをひとつ選び、プレイングに記載してください。
そのスキルを、
『どのようなアイドル衣装で』・『どんな曲に乗せて』・『どんな思いを込めて』
歌うかを記載してください。
勝敗等はそのノリといきおいを見て決めます。
(VTSなので、ダメージ反映はありません)
【 】のタグでくくったグループは、アイドルグループとみなします。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。←重要!
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(同じタグを利用する参加者に対しては、場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。

●参加NPC
・梅子・エインズワース

※このシナリオの注意※

プレイングは
1行目:選択した敵
2行目:選択したスキル
3行目以降:自由記述

で書いていただけると、とても助かります。
参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)
 


■メイン参加者 50人■
ナイトクリーク
ウーニャ・タランテラ(BNE000010)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
マグメイガス
アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)
ソードミラージュ
カルナス・レインフォード(BNE000181)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
ソードミラージュ
閑古鳥 比翼子(BNE000587)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
ナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ソードミラージュ
富永・喜平(BNE000939)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
インヤンマスター
門真 螢衣(BNE001036)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
覇界闘士
衛守 凪沙(BNE001545)
クロスイージス
蔡 滸玲(BNE001593)
ホーリーメイガス
伏見・H・カシス(BNE001678)
マグメイガス
音更 鬱穂(BNE001949)
覇界闘士
阿部・高和(BNE002103)
クロスイージス
フィオレット・フィオレティーニ(BNE002204)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
ナイトクリーク
三輪 大和(BNE002273)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
ソードミラージュ
ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
マグメイガス
小鳥遊・茉莉(BNE002647)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
クリミナルスタア
オー ク(BNE002740)
クリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
マグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
スターサジタリー
桜田 京子(BNE003066)
マグメイガス
斎藤・なずな(BNE003076)
プロアデプト
アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)
ソードミラージュ
津布理 瞑(BNE003104)
マグメイガス
セレア・アレイン(BNE003170)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
クリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
覇界闘士
緒田 直樹(BNE003570)
ダークナイト
ルーチェ・ルートルード(BNE003649)
ダークナイト
スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)
プロアデプト
小梅・結(BNE003686)
クリミナルスタア
七篠・祢子(BNE003736)


 宇宙的な何かを漫画や何かで描く時、とりあえず最初に思いつく方法。
 ――真っ黒とか紺色とか、そんな交じり合った闇色の中に向けて、白や青、赤などの絵の具を飛沫にしてわーって飛ばしてみるような。
 なんかそんな感じの背景が、前後左右足元頭上に広がっている。
 その安っぽさに突っ込まれた時、アークの誇る天才、真白・智親はこう言ったという。
「背景間に合ってないだけだ。別にいいだろ、テストなんだし」

 まあ、そんな感じの空間に、リベリスタたちは放り出されたわけだ。
 もっとも、本当に放り出されたわけではない。
 宇宙空間のような背景の中、唐突にぽつんと存在する二組のステージ。互いは向き合い、そう、互いのパフォーマンスを魅せあうのに最適な環境。
 体は安全を確保された状態で、意識だけが放り出された空間。
 ――VTS。その創りだした、架空の宇宙。
「はー、これがVTSですかー。でもアーケードに出すならある程度デチューンされるんですよね?」
『いや、実際に出まわらせる筐体とほぼ変わらん。出荷時にはもうちょいブラックボックス化させるが』
 分からない事なんて無くして見せる、そう意気込んだ『極北からの識者』チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)の野望は打ち砕かれる。つまり、目の前にあり、触れているのに、理解できないのだ。
 アークに所属するリベリスタには、少なからずVTSを使ったことのある者もいるだろう。そして、それを利用したゲーム筐体が、時村グループのアミューズメント施設に配置されているということを知る者も。
 智親はオルクス・パラストが極東の空白地帯を11年守護した見返りの要求、その俎上に上がる程の存在なのである。アークに所属するリベリスタが手にしている幻想纏(アクセス・ファンタズム)もまた彼の作品だ。箱舟(アーク)の進水から一年が経過し、離反・出奔した元リベリスタは残念ながらゼロではない。その結果、幻想纏も流出を免れなかったはずだ。だというのに、例えばフィクサード組織を見回したところで未だ類似の機能を持つ物は存在していない。目の前に現物があれど、模倣さえもできない――それほどの才を持っているのだ、真白・智親という男は。

 それはともかく、用意された仮想空間にて遊べと。
 それが今回の任務なのである。

● |> しっかり1(ウーヌス)
「面白そうな企画でしたので参加させていただきましたわ。そうですね……私が歌うとしたら、燃えるような愛の歌。ダークでねっとりしとした歌では演歌向きで、アイドルらしくありませんしね」
 そう言って小鳥遊・茉莉(BNE002647)が選んだのは、アクティブかつスポーティーな、赤を基本とした衣装。選曲は夏の恋をイメージさせるような熱い歌。メロディラインにフレアバーストを載せて、一気呵成に歌いきる。
「でも一番の楽しみは他の女性が歌う姿。……男性はどうでも良いです」
 一部のリベリスタ、がっくり。
「せっかくだし一緒に楽しもうと思ってな。てーか、スキルをゲームに反映させるとか無駄にすげぇよな室長」
「アイドルバトルって、一体何をバトルするんでしょうね」
『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)と『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)の兄妹が、興味津々といった風情でステージを見回す。
 スキルの反映は、VTSに既に実装されているシステムではある。たとえ劣化版の筐体であっても、参加する人数を絞り、使用条件やエフェクトパターン等をプログラムに沿わせれば、そう難しいことではないらしい。ただ、そのスキル類を使用したりする感覚を革醒していない人間にわかりやすく説明するにはと考えた結果が、例のカードということらしかった。
 ともかく。二人が用意した設定は、中性的な衣装の双子デュオ。残念ながら外見までは変わらない。
 レイチェルが左側、エルヴィンが右側。
 鏡像のように、相方とを片手を合わせながら、同じ曲を、同じ想いを載せて静かに歌いあげる。
 ――人形みたいな美女ユニットを思い出した人は、きっと書いてる人と同年代。
 エルヴィンがふと考え込むような表情を見せた後、笑顔を浮かべた。
「俺らは兄と妹だけど、双子だったらまた違った感じになってたのかな?
 ま、俺は今の関係が好きだからこれでいいけどね」
 兄弟姉妹、それぞれにそれぞれのカタチ。
 黒エナメルのボンテージ風、ちょっと際どくもあくまでアイドル衣装の範疇なのがミソ。そんなデザインの衣装でセレア・アレイン(BNE003170)は叫ぶ。
「あたしの歌を、聴k」
 おおっと音声に不調が! そのまますぎることなんて言ってないですよねセレアさん!
 すぐに復調した音響機器はテンポの速い、歌い上げるようなロック調のミュージックを流し始める。よく聞けば歌詞はどこか悲しげな色合いを帯びているが、ガッツを感じる歌声と音程はまったくそうと感じさせない。
 好きな相手をとりあえず歌で相手を感化させて、そのままの勢いで精神的にぶちのめして自分のモノにしてやる! ――そんな勢いの、4色の魔曲。
「銀河美少女、颯爽登場!!」
『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)、『さくらふぶき』桜田 京子(BNE003066)とのユニットははにゃーんでにゃんにゃかにゃーん、な『熱海プラス』。
 ふりふりの正統派アイドル衣装を、京子は桜色で彩り、舞姫はチーター耳にチーターしっぽのメイド服。
 いや待てその耳と尻尾とメイド服のどこが正統派なのか説明をだな。
 それはともかく。明るく楽しいポップな曲をギターで爪弾く京子の、インドラの矢が桜吹雪のように火の粉を舞い散らせるのを背景に、舞姫がトップスピードで軽快なダンスを披露する。
「戦場ヶ原先輩が作詞したがるので、少し乱暴な歌詞になりますが、作曲は私、楽しく明るい曲になります」
「キミのハートをロックオン☆ にゃんにゃかにゃーんにしちゃうゾ☆」
 歌詞は舞姫いわく「歌はラヴソング♪」とのことで、10代の少女の甘酸っぱく切ない気持ちを、軽快なポップに乗せて歌うもの、とのことだが。
「全部全部デストローイ、みんな害獣になーれ!
 素直になれないアナタに、遠いその場所から聞いてくださいデストローイ!!」
 ……………らぶ?

 白衣の『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)が、鎮魂の意味を持つ賛美歌を歌い上げる。
 聖神を賛美し、その御許へと迎えられることを賞賛する歌。
 新しく生まれた命に、消えゆくものに、生き残り幸せをかみ締めるものに。
 ただ一心に生の喜びを、死の冷たさを、生きることは戦いであり救いであり、そして愛であることを。
 その後ろの『ジェイド・チャーム/翡翠の魔除』蔡 滸玲(BNE001593)はどこか古めかしいエプロンドレスで、見事なシンクロバックコーラス。
「コンサートと言えバ怪我人は付き物でございマスわヨね」
 VTSなのでけが人出ません。
 そして同種のエプロンドレスはエプロンドレスでも、メイド服に分類される衣装――というかいつもどおりの服装のエリス・トワイニング(BNE002382)が、僅かに首をかしげる。
「アイドルの……歌なんて……よく……知らないから……」
 そう言って、「これは……知っている」と頷きながら入れた曲は、メロディアスで切ない、恋の歌。
 天使の歌をセットして、皆の心が癒されるようにと、心を込めて歌う。
 三高平学生アイドルを目指します、と宣言した『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)の服装は三高平学園中等部制服に、青いアンダーリムの眼鏡。ただしアイロンの掛かったワイシャツの上に結んだネクタイは淡い赤、ジャケット下にはベージュのベスト。ところでVネックのベストって良いと思いませんか亘くん。
 テクノポップな曲に合わせて、スタイリッシュな歌声とダンスを共に披露して見せる。
「聴いてくださる方が楽しい、幸せ、嬉しい、思わず笑顔がこぼれて優しい気持ちになる――。
 それを歌と身体とスマイルで全力で表現する。
 その上で皆さんを魅了出来る位素敵な歌になる様頑張るのです!」
 最後にターン、そして右手右腕人差し指をびしっと伸ばし、君のハートをゲット!
 ――ラブ&ピースな歌詞は日本語と英語が程よく混ざって、なぜだかちょっぴりNOBUリッシュ。
 着物イメージの服で、人魚をイメージしたトランスを歌い踊った『静かなる古典帝国女帝』フィオレット・フィオレティーニ(BNE002204)が次に交代した途端、突然ステージが暗くなった。
 仮想の宇宙には月がなかったはずが、いつしか赤い月が浮かぶ。
 雲に覆われ、朧げながらも徐々にその禍々しさを強く見せつけてくる、悪しき月(バッドムーン)。
『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)は、漆黒のウェディングドレスを身に纏っていた。
 その口からなめらかにすべり落ちるのは、子守唄。
 ――さあ、歌いましょう。世界を平穏で満たすために さあ、歌いましょう。世界を静寂で満たすために
 この世のすべてに等しく安息の眠りを 赤の月に照らされて、穏やかな闇に包まれて眠りなさい――
「誰も彼もが眠りにつけば、きっと世界は癒され平穏になる……。
 再び目覚める眠りなのかどうかは、御想像にお任せします。ふふふ」
 微笑みのカタチを作る、鮮血の如き赤のルージュ。黒のヴェールで隠され、伺えぬ瞳。

「私はアッパー系担当! アイドル斬風! 超かわいい!!」
「なずなさんはいつも元気ね」
 ハイテンションな『赤猫』斎藤・なずな(BNE003076)が、『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)の髪を嬉しそうに撫で回しまくっている。ふたりのユニット名は【AaN】。糾華&なずな、ということだろうか。
 糾華の服装は、ミニスカドレスにタイツなほかは、あまり普段と変わらない。むしろなずなの服装が糾華に合わせたのか、赤×白のリボンやフリルのふんだんにあしらわれたミニスカートをへそ出し生足で、靴も赤のバレエシューズである。マーメイド!
 ポップな曲が流れてくると、なずなはそのテンションを持続したまま歌い始めた。振り付けも可愛らしさを重点的に攻め、ウインク+ばっきゅーん! とかデフォルトである。
「私! 超可愛い!!」
 自分で言っちゃってる。ただしその言葉に嘘はない。
「歌のチカラで世界を燃やす! もっと悲鳴を上げろ真っ赤な炎を吹き上げて転げ回れ!!」
 全てを焼きつくすようなフレアバースト、そんな歌詞だけは、可愛いとは申せませんが!
 そしてなずなの後ろでいぇ~いとかわぁいとかヤル気があるのかないのかわからない合いの手を入れいてたダウナーテンション糾華さんが、自分のパートになった途端に覚醒した。
 決まるマイクアクション。ターンと同時にカメラ目線で死の味漂う投げキッス。
「ふふっ、私の虜にしてあげるわ」
 そんなキメ台詞でトドメ。
「アクセスファンタズムで切り替えて――あ、それはダメなんですか?」
 衣装替えは自力でお願いします、『目指せトップアイドル!』伏見・H・カシス(BNE001678)さん。
 結局、エメラルドの鎧のような服装で、シンセサイザーメインの曲に合わせてダンスを始めた。
「傷つかない、日々に甘えていた私を、突き飛ばしたあたしは、一体誰? わかっている♪」
 私だって変われる。あたしはいつだって側にいるよ。もう一人の自分はいつだって側に。
「駈け出した私(あたし)は、止まらない――Blaze Up……!」
(だから負けない。心の炎が燃えるから! 私(あたし)の目指す高みへ立つまでは!)
 握りしめ、天に向けて突き上げたカシスの右拳から炎が沸き立つ。
「幻視なしでもコスプレで押し通せるようになるの? もうマスクで顔半分をすっぽり隠さなくて良いの?」
 いくつか確認しだした『禍蛇の仔』ルーチェ・ルートルード(BNE003649)、多分それちょっと誤解。
「やだ、アーク素敵。多分に誤解してる気がするけど、気のせいってことにするわ」
 うわあ確信犯(誤用)だった! じゃあく!
 選んだのは、重厚感あふれるクラシックを取り入れた曲。
「蛇王国からやってきた高慢な姫という設定になりきるわ。春になったから侵略開始するのよ」
 設定から入るんですね。
「爬虫類は怖いのでしょう?
 その恐怖を文化的侵略で塗り潰し、従順なシモベに変える為にARKに所属したの」
 えっと、設定、ですよね?
「メインターゲットは被支配欲を持つ聴き手。さあ、存分に癒してあげるわ」
 ターゲット層かなり狭い気がします、ルーチェさん!

 ――ところで、目立ちたくないという欲求を抱える人というのも、時々いる。
「またしても自分の意思とは無関係に人前に出るお仕事に。
 VTSだからまだましとかそんなの気休めですよね。
 えぇもうこうなったらあとは目立たないようにするだけです」
『ネガデレ少女』音更 鬱穂(BNE001949)、こんなこと言いつつ、バンド趣味かつゴシックパンク衣装。
「私がアイドルなんて、絶対に無理だと思うけど……」
 こちらの『名乗る名はない』七篠・祢子(BNE003736)にいたっては、スク水マジシャン。
 それでしっとりした曲にヘッドショットキルのせてくるのだから、最近の手品師は怖い。
「でも、本当は恥ずかしいし……余り目立たない方が良いんだけどね?」
 露出度の問題ではないのだろーか。
「えっと……はい、だぶるぴーす」
 鬱穂さん何してはるんですか。
「アイドルになるべき人間は別にいるんです。私が目立つ必要なんてないんです。
 誰も私なんて望んでないんです。ちょっとはアイドルとかに憧れはありますが」
 やっぱり憧れてるんですね。
「でもわたしにはむりむり。やっぱりアイドルの座は他の人のものです」
 言いながら、もう一度ダブルピースの鬱穂。

「さぁ世界よ! 鬱になれーーーーーー!? 私だけじゃ嫌だから、世界全員道連れだーーー!!」
 ほとんどいつもの服装ながら、胸元や太ももをちょっと大胆セクシーにした『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)は、顔の左半分をピエロの仮面で覆い隠した。
 ダークで妄執的、かつ憂鬱な歌詞を、テンポの早めなバラードにあわせて歌う。
「人は生きると殺し愛♪ いつも心は激痛DEATH!
 世界が悪意で満ちていてもズダボロに壊された身体を引きずって
 死より苦しい煉獄人生 大事なものは奪われて 世界は君の心を塗りつぶす~♪」
 ……楽しそうですね?
 男の戦装束。それはビジネススーツ。
 髪からは整髪料の香、そしてきらりと覗く機械の腕。『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は愛用のネクタイを締め直し、にやりと口の端を歪めた。
「さぁ、開演時間だ」
 ジャズ調の曲に、無限機関に直接つなげたかのような情感を込めて、喜平は歌う。
 生きるには侭ならない事の方が多い。だが誇りや決意、例え其れが塵芥の様な小さな思いでも固く固く握り締めて、地を這う様に舐める様にでも進み続けるなら、明日には何かが少しはマシになる。
 自分の人生をダブらせながら歌うそれは、諦めを促すでも、努力を強要するでもないケ・セラ・セラ。
「今日は酒でも飲んで寝て明日は少し力を抜いて等身大の自分で生きるかなぁ……。
 とか思わせたら俺の勝ち」
 勝率、高いなあ。
 スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)はいつも通りのドレス姿である。
「私らしくあるために、一番馴染んだ服で。……アイドル衣装に見えないこともない気もします?」
 選曲しながら、もう一度、自分の想いを確かめるように口にする。
「普通でもいい。普通でいい。こんな普通の私でも、誰かの力になれることがある。
 大事なのは、一歩踏み出す勇気。……私も、頑張るから。だから一緒に、頑張ろう?」
 そして、曲のイントロが流れ――なかった。
『ごめんね。その曲、あなたのじゃないよね』
 イヴの声が、VTSを通じてスペードに届く。
『皆自分の曲じゃなかったりするかもしれないけど、そこはそれ、これはこれ。その曲は流せないの』
 なんかメタいこと言ってるって? 気のせいだよ!

「愛するあなたにねばねばぎちぎち あふれる想いはしゅくる・てぃれ♪
 くるくる絡めてあまいあまい砂糖漬けにしちゃうのだ♪」
 小梅・結(BNE003686)の歌は、束縛愛がテーマのハイテンポな曲。疾走感に溢れすぎて、どこかなまむぎなまごめなまたまごとなりつつある歌詞が特徴。
「だいじょうぶなのだ。あなたをきずつけたりはしないのだ
 甘い毒でどろどろ溶かしてはむはむ食んでくだけなのだ♪」
 ――は、良しとして。外見年齢6歳、成長が止まっているとは言え10歳の結が歌うには、ちょっとだけ刺激的な気がしなくもない。服装は真紅の生地に、蜘蛛の巣を模した黒いレースのどくどくしい赤ロリ。
「セアカゴケグモとかそんなかんじなのだ」
 女郎蜘蛛とかではなく、あえてそっちなのか!
「にーげーだしてもむーだーよー
 しゅーちゅーうかさねて、つぎのこいのわなはりめぐらせーるわーねばねば♪」
 女医風衣装の『下策士』門真 螢衣(BNE001036)が選んだ曲は80年代アイドル風バラード。17歳の彼女では生まれてもいない時代の音楽ではあるが、80年代前半はアイドルの黄金期だと言われている。今でも耳にする機会は決して少なくない。
「最近、自分に自信がない方々がたくさんおられるようですね。
 なにもできないと諦めて、日々を無気力に過ごしてしまう。
 そんな方々に自分にもできることがあるということを思い出して欲しいのです」
 歌唱力に自信はないのですが、と前置きしながら、彼女はスキルに『魔眼』を選んだ。
「おぼえていませんか、あなたが褒められたことを。おぼえていませんか、あなたが成し遂げたことを
 あなたにもできることはありますよ」
 愛ならきっと、多くの人がおぼえているのに。
 普段あまり歌わないから、とロック調の曲を選んだ『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)、いつもの服の下にドロワーズを穿いてきた。パンツじゃないから激しく動いても大丈夫!
「ボクはずっといなくなった神父様を探してる。神父様だけを思って長い道程を歩いて来たんだ。
 探し出せたらボクの思いを込めた絃で絡め取り、ボクの愛で痺れさせる」
 えっ。
「もう二度と離さない。だからボクを見て。もう何処にもいかないで」
 アンジェリカ、病ん……!?
 今はここにいない神父に届けとばかり熱唱したアンジェリカは、歌い終えると、微笑みを浮かべた。
「気持ちよかった……!」
『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)のスカートは制服、だが上半身は細身のシャツに革ジャン。最近の流行ではないが、だからこそ涼子自身が好きで選んだのだとわかるパンク風のアレンジ。
「うたっておどる、かわいい女の子をそう呼ぶのは知ってる。
 けど、わたしのアイドルはギターヒーローで、しゃがれ声のシンガーだ。
 わたしなりにやってやるよ」
 ハウリング寸前のセッティングに、鬼のようなカッティングでエレキが騒ぐ。
「今日こそは、夢に見るような、涙が出ずにいられないような音を鳴らしてみせる。
 この声と音だけで、魂ごとゆれるような3分をつくる……!」
「ねぇ サイリウムを投げ捨てて、パンクス
 思うように頭をふって 思うように空を殴りつけろ――!」

 一方。
 着ているものがチューブトップとタイトミニにロングブーツをあわせ、鋲の付いたコートを羽織っても、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)はいつもの己を崩さない。戦いの相手なら、数は多いほうがいい。
「アイドルって偶像って事でしょ? これがアタシのアイドルよ。
 音楽なんてその音楽を聴いた人がこの曲を聞いてどう感じるかでいいのよ」
 よく言う「アイドル」とは程遠い衣装。黒と銀しか見えない彼女なりの戦闘服を身にまとい、かき鳴らすのはギターのバラード。歌詞などない。ベースとドラムのバンドサウンドをバックに、思い人への熱く情熱的な愛情を乗せてギターを鳴かせる。
「上手く言えないけど、その感情と、旋律を重ね合わせて、心を動かしてくれればベストだと思うわ」
 もし彼女の想い人がここにいれば、心のままに鳴らす音を聞けば、もしかしたら何かが伝わったかもしれない。――残念ながら、不在なのだが。

● |> わらわら108(ワンオーエイト)
 杏を皮切りに、対108戦のテストも開始されていた。
 続いてアークの制服を着た、三人の男が並ぶ。
『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)は赤のネクタイを締め、ギターを抱いたままマイクの前に立つ。
 その指が弦を弾くと、その音が空間を支配した。
「この歌のタイトルは……『方舟の戦士たち』」
 優希の低い声に続け、その左後方で青いネクタイを締めてベースを手にした『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)が、その称号を裏切るような覇気をほとばしらせ、叫ぶ。
「俺達の歌をきけー!」
 うん、雰囲気もだいぶ違うからこっちはオッケーで!
「OK,set sail…」
 一気に会場のボルテージが上がる(観客はいないが)。ドラムセットの前で、黄色いネクタイのツァイン・ウォーレス(BNE001520)がスティックを鳴らした。
 赤・青・黄――『RYB』の三人が演出するのは、正統派学生バンドのセッションである。
「明日を示す 万華鏡が 形を変えたとき、避けられぬ戦いへと 方舟は 漕ぎ出すよ♪」
「あの時継いだ遺志を 未来に繋ぐため 空を翔ける意志の刃は いつの間にか世界のために♪」
「死線を越えてなお強く 歪な夜の闇を打ち崩せ 今立ち上がれ戦士たち! たった一つの証を燃やして!」
 何があろうと戦い抜く。
 神秘から身を守る力のない全ての人達のために剣を振るう。
 優希の、翔太の想いを受けて、ツァインが一層激しくドラムを打ち鳴らし、声を張り上げた。
「三人の……いや、俺達「ARK」の魂のこもったこの歌が! お前等なんかに負けるかよぉーッ!」

「ふむふむぅ~ポックンの守護天使候補生が108人の血の繋がらぬ妹に分かれて、赤い髪の女装美少年とデュエルするって流れで理解した!」
 ほむほむ、じゃなかった優希たちのセッションを見ながら『IKETERU☆転聖覇界闘士』緒田 直樹(BNE003570)は何やら壮絶な誤解をしてのけた。ブリーフィングルームで何やら勘違いのたねをばらまかれたらしい。好きとか嫌いとかほむほむとか最初に言い出したのは誰なの。
 魔法少女マジカルほむらちゃんにちょっと期待してたのに。
「ほむーん、頑張れ。強く、生きろ」
 優希に突っ込みを入れようと立ち寄った結果、参加者に紛れ込んでしまった『無軌道の戦鬼(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)が、センスフラグを全力で活用しようとしている直樹を横目に呟く。なお、天乃の服装は黒のフリル付きキャミソールと、タータンチェックのミニスカート。ちなみに中は穿いてない。
「見せないよう、動くぐらいは……容易いこと」
 その言葉を実践しつつも派手に動き回るが、曲はしっとりとした、だけど情熱的なラブソング。
「私、にそんな相手はいない、し……そうなるとも、限らないんだけど、ね。
 でも恋愛って、周りを見てる限り……そんな感じのもの、だと思うから」
 フォーチュナでもなければ、未来なんてわからない。予想もつかないきっかけで、想像もつかない相手と恋に落ちることだって、ありうる話だろう。依頼でバカップル演じたのがきっかけとかもありうる話なのだ。
「アキバ系萌えソングと共に全力のオタ芸で心に夢を描くですぞぉ~!
 アイドルは永遠の幻想 その前ではいつだって僕らはネ申に祈る信者!
 信者と書いて儲ける? そんな言葉は聞こえない! 財布の残高フェイト0 Sレア引くまで諦めない!」
 無反応なセンスフラグを心に抱いて、叫ぶ直樹。これが……これが、ライフライナーというやつか!!
「良かったのかい? ホイホイ俺をシークレットキャラにしちまって。
 俺はアイドルおたくでも構わないで虜にしちまう男だぜ」
 ドラマティックで止められそうにない、男が振り向くほどのいい男。
 皆ご存知『いい男♂』阿部・高和(BNE002103)、まさかの、いやあえて言うなら待望の参戦。
 衣装は勿論いつものツナギ、ベンチ片手に数年前に流行った曲をチョイスしようとして。
「なにぃ!? 俺の出番は中止ぃ~!
 急遽上からの反対が出てストップが掛かっただってぇ!!
 仕方ないね、最強あべがりこーん」
 前回り受け身しながらログアウトする阿部さん。しーましェーン!!
『リベリスタの国のアリス』アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)の服装は、割と通常運転のような気もする空色のエプロンドレス、それをさらに魔法少女っぽいフリフリにしたものだ。
「アイドルなんて、やった事ありませんけど……。
 他のアイドルの皆さん達と一緒に、アイドルとして一生懸命歌います」
 流れだす音楽は、最近はやりの、セーラー服が似合いそうなポップミュージック。
「私達、皆さんの為に、思いを込めて歌いますっ、応援して下さいね~♪」
 自分はまだまだ未熟だけれど、みんなの役に立ちたい、力無き人々の為に戦いたい。
 そんな気持ちを歌に載せ、選んだスキルは魔曲・四重奏。
 ――いやだいぶ強力ですやん!!

「「二人は淫乱キュア☆淫乱ぴんくとド淫乱ピンクよ☆」」
『ピンクの害獣』ウーニャ・タランテラ(BNE000010)と『シュレディンガーの羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)、ろくでもねーことハモりやがった。
「でも今日は清純派なの。ルカとうにゃが一緒だとどうせ脱ぐんだろ? っておもうでしょ?
 違うわ。アイドルヲタ清純派」
「オタが大好きな清純な格好といえばもちろんロリ系よね。ろりっ☆」
 二人の格好はなんと、幼稚園スモックと黄色い帽子である。
 おい何かロリの意味を危ない意味で正しい方に間違えてないか。
 そんな二人の入れた曲名は『INRANN★キュア』。
「淫乱で~デッドオアアライブ
 っていうか、デッド優先ぶっちゃけあり得ることは
 ないといっていいでしょう~
 二人はド淫乱~」
「ら、らーららー……ららー」
「ピンクは淫乱って誰がきめたの?
 でもだいたいあってる♪」
「ンーンンー……」
 カンペ片手に鼻歌状態のウーニャが入力したバッドムーンフォークロアは発動もしそうにないが、一方ルカルカの入力したスキルはアル・シャンパーニュだったりする。
 歌と思いの食い違い。一撃必殺系と速度上乗せ系の違いはいかんともしがたいものがある。
「行くわようにゃ、奥の手よ」
「こうなったら奥の手ね、ルカちゃん!」
 劣勢の中、二人は瞬間のアイコンタクトを取り――服に手をかけた。
 ばつん。電源を落としたテレビのような音が響き、二人の視界は真っ暗に。退場ー。
 白とピンクを基調としたライトファンタジーのプリーストのような衣装。『課金騎兵に捧ぐ戦歌』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の着用するソレは、梅子の衣装とまるで対になるかのようで。まあぶっちゃけ腹パンの悪鬼の人の服s――ごふっ――いえその清楚さたるや、カードならまさにSレア+。
 さっき書いてる人の腹あたりから、柔らかい肉を殴打するような音が響いた? 気のせい気のせい。
 彼女の選んだ曲は『恋もガトリングガン』。明るくポップな曲調ながら、最大の特徴は『弾幕』とまで称される歌詞の速さ。高速詠唱でもなきゃまともに歌えないと三高平のカラオケ『もる』でも評判の一曲である。
「恋の前に立ちふさがりし数多の有象無象どもを一片一切の区別なく私の弾幕は許しはしないわ」
 なにかあったんですか、エナーシアさん。
「一緒に頑張ろうね!」
「こういう……目立つの苦手ですが……アーリィさんと一緒なら……がんばります……」
 緊張しているのか、表情の硬い黒ゴス『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)を、白ゴスの『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)が手をとって笑顔を向け、励ます。
 組み合わせたスキルはインスタントチャージにアル・シャンパーニュ、選曲はアップテンポなダンスナンバーである。歌うアーリィはサポートを忘れず、笑顔も二人のタイミングを合わせる。
「踊るのなら得意です……歌は、あまり大きな声、出せないので苦手ですが……」
 その言葉通り、リンシードは光の飛沫を撒きながら踊る。

「自分がゲームになるなんて、すげー楽しそうじゃん。よーし、頑張って素敵なアイドル目指すぞ」
 突撃系俺っ娘(10さい)な『突撃だぜ子ちゃん』ラヴィアン・リファール(BNE002787)、その衣装は赤をベースとした魔法少女風。――しかし流れてくる音楽は、なんだか熱血系アニメの主題歌っぽい。
 いや、魔法少女と熱血系はその実、両立するものなのかもしれないが。
「歌の秘訣は『皆を楽しませるには、自分も楽しむこと』だぜ!」
 選曲理由と勢いを殺すことないその勢いに、フレアバーストが音楽に乗って広がる。
「闇があれば光もそこに。あなたの前には正義の味方。
 赤い瞳は焔の意思。小さな体で街を守る。
 殲滅、殲滅、殲滅! 自慢の炎で敵を討て♪」
 ……うん、やっぱそういう魔法少女は、あんま見ない気がするなあ……。
「普段なら隠さないとな黄金の翼も衣装と言い張れる。
 これは人は誰も大空へと羽ばたく翼を持っているとかではなくあたしがすごいことを示している!」
『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)、強気な主張。
「歌うのは! 題して「とりあえずデイブレイク」!
 今世紀最大級のラブスペクタルを歌い上げた人類遺産級の名曲だよ!」
 太陽を切り取ったかのような輝きを放つ翼、音の壁を破り迸るそれは漆黒の夜空に描かれる刹那の夜明け!――と、自分で語って解説する比翼子。
「さあ感じろ! あたしの魂を!
 どんな敵もダメージ0で包み込む愛を! 多分もう飽きられてるだろうなという焦りを!!
 星と太陽と(長かったので省略されました)奥義!  ひよこ! デイブレイク! キィィィィィック!!」
 ……その奥義の輝きと、驚きの安心感。見る人はほろりと涙が流れるのを禁じ得なかったと言う。
 白いコックコートをイメージしたミニドレスにコック帽。『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)は、迷惑なリサイタル状態になってしまうからと普通の歌を避けていた。
「――だから少しでもできそうなラップで勝負だよ」
 日本語ラップならたしかに、音楽が苦手な方でも結構――げふんごふん。
 その歌詞は、デミグラスハンバーグの作り方を、材料とか調理法の中でも肝心なところを強調したもの。
「あたしの歌は宇宙だ!」
 キャベツはどうしますか。コロッケじゃないから別にいいか。
「ナチュラルアイドルの瞑ちゃんが参加しないわけにはいかないでしょ?」
 キラキラの純白に輝く衣装に身をつつみ、『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)、ドヤ顔。
 ポーズはまさに『そげぶ』。
「そう、これがダブルアクション!
 ヒトならざる動きを実現したうちの華麗なダンスでファンを魅了してあげるわ!」
 電子音がぷるぷるーんなほわーんな電波ソング。
「でも聞いて、きっとかわいくてもう超アイドルなんだから!」

 スポットライトが照らしだしたステージ上。一際異彩を誇る集団が、そこにいた。
「勝つためには手段を選ばない! コスプレお笑いどんと来い!
『歩く焦土作戦』『萌えの絨毯爆撃』アイドル候補生白石さんと、頼れる……」
 壇上の『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)、一旦沈黙して背後を確認した。
「頼れる? 仲間たちが、アイドル乱立戦国時代を統一してみせる!」
 マーチングっぽい服装の明奈が、アップテンポな、希望と情熱を込めた曲をスタートさせる。
 夢を諦めず何度でも立ち上がり挑む心意気、それを高らかに歌い上げる明奈の後ろには、『戦火の村に即参上』オー ク(BNE002740)に『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)そして『錆天大聖』関 狄龍(BNE002760)の3人が、男二人は揃いの白ジャケットに白スラックス、白いソフト帽。性別不詳な狄龍はツーテールにフリフリチャイナに、なぜか白いジャケット。何故かスリーテールのかつらをかぶった竜一が、スティックだけを手にして雄叫びを上げる。
「中二病を患ってギターに触れ、メタルヘッズなギタリストとして成長した俺!
 バックバンドは任せろ! リズムを刻むぜ!」
 ドラムもギターも、お持ちでないように見えますが。
「ドラム? 触ったことねえよ! でも任せとけ! これが俺のエアドラムだあああ!」
 激しいヘッドバンキング、振り回されるスリーテール。そして繰り広げられるエアドラム。
 ……あ、コメントなしで。
「ぶたのプリンスさまっ♪ アブRAMI1000%! このあっしの超絶テクを生で拝ンで驚きやがれ!」
 ディスコで鍛えたダンステクニック。マグマのように滾る欲望の篭められた、じっとりとした熱視線。
「さあ……あっしの豚技(ブギ)に酔いな!」
 オークのドヤ顔が輝く。ええいマグマで焼き豚になってしまえ。
 さらには、3人が縦一列に並んでぐるぐると回転をはじめる。
「音楽や踊りってのは、心でやるんだ! でなきゃ心にひびかねえだろうが!」
「うおおー! ゆーあーそーないどるー! アイドルぱぅわーをギュンギュンにチャージ!」
「まさにトキメキを運ぶ電車ってやつだ。あっしのカードランクはBR(豚レア)だな!」
 そしてバックダンサー( )たちが決めポーズを取った瞬間、明奈が上着を脱ぎ捨てた。
 けんこうてきせくしーな、ノースリーブのミニドレスへの早着替えを披露してみせたのだ。
「108人が相手ならワタシは108回ドラマティックに立ち上がってみせるぜ!」
 決まった。
「キラッ☆ これが俺のアイドルテロールだZE☆」
 狄龍がその後ろでさらに何か主張したりもしているが。
 ――ところで、約一名。
「ふう、踊りきったぜ。いい汗かいたなァ」
 VTSの外で、同じダンスを披露している『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の姿があった。
 うん、カードの必要事項の入力と準備されていたデータの不一致で、不戦敗だったんだ。すまない。
「お疲れ様でした」
 凛子が快に冷たい飲み物を手渡しながら微笑む。さらにその後ろには、自前のデジカメで撮影した映像を確認するエリスの姿があった。VTS内は撮影できないが、外なら余裕。やったね!

 全編ソロデュエット(!?)を披露してみせたのは、『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)。彼女の脳内の兄が優しく微笑み、ささやく愛のバラード。
 兄を愛する彼女にとって、そこに竜一がいるかのように振る舞うのはもとより余裕のこと。今回本物は近くにいるものの他の女のバックダンサーなものだからぐぎぎぎってなってしまうので、今は脳内兄を見る。
 彼女の身を飾る服やリボン、下着に至るまで殆どのものは竜一からの贈り物。三高平3DTの一角と呼ばれたり、ぺろぺろとかすぐ言い出したりする兄だが、虎美から見ればとても愛しい、大切な存在なのだ。
「生まれた時からずっと傍にいてくれたよねお兄ちゃんほんとにありがとう当然の事だって? でもありがとう愛してるぎゅってしてよやんっ恥ずかしいから人前でペロペロしちゃだめうふふでもほんとはもっとして欲しいなでもやっぱり二人きりでゆっくり過ごしたいよだから結婚してよお兄ちゃん」
 ……ええっと、次いこっか。
「さあて! ここらで真打ち登場なのだわ!」
 根拠皆無の自信に胸を張り、梅子の選んだデータが立ち上がっていく。
 フレアバーストを選び、曲はちょっと前にTVで延々流れていたもの。
「曲名は……っと。『上から梅子』! ……まって今のナシ! ナシ!」
 違うの、あたしはプラムなのー!! と、例によって誰も聞いてない主張を展開する梅子である。
「梅……プーラムちゃ~ん! アイドル対決だって! アイドル対決!
 これはもうスーパーアイドルのプラムちゃんの為に用意されたゲームじゃないか!
 プラムちゃんがやらなくて誰がやるって言うのさ!? もちろん参加するよね!」
 慌てる梅子を見かけた『プラムLove!』カルナス・レインフォード(BNE000181)が、嬉しそうに声をかける。
「そ……そうよね! あたしのためにあるようなものよ! ふふん、誰が相手でもかかってきなさい!」
 おだてられ、高速で木に昇りそうな梅子に、システムメッセージが確認を取る。
『上から梅子、で宜しいですね』
「もちろんなのだわ……あああ!!?」
 時既に遅し。
「大丈夫! オレが"シンクロ"スキルでプラムちゃんにばっちり合わせ引き立てるから!」
 そう言ってカルナスが着用したのは白のゴシック系スーツ姿。
「全人類ををひれ伏させる勢いで歌っちゃおうぜ~!
 世界は全てプラムちゃんのモノ! プラムちゃん・イズ・ゴッデス!
 パック売りされているアイドルユニットなんて敵じゃないよね!」
「あああ……ま、間違えた……の、だわ……」
 歌って踊って見せつけたい。だけどこのままだと、自分で梅子と認めることに……。梅子、放心なう。


「なんだか良くわからない内に勝敗が付いちゃいましたね。うん、もう一回勝負してみたいです」
 レイチェルはふぅむ、と唸りながらそう感想を漏らす。
「はー……緊張したねー……何とか上手く行ったかなぁ……?」
「たまには……こうして、歌って踊るのも楽しいですね……ちょっと恥ずかしかったですけど……」
 アーリィが胸を撫で下ろし、リンシードがもじもじと感想を漏らす。
 女性ダンス&ボーカルユニット状態だったふたりの戦績は、なかなか高評価をたたき出していた。
「リンちゃんと一緒だから凄く楽しかったね! また機会あったら一緒しようね!」
「アーケード稼働が楽しみだね! うちも久しぶりにゲーセンに張り付いてみるよ」
 瞑もアーリィたちと一緒になってテンション高く、待望論。
「偶にはこういう、普段の自分とは違う自分をしてみるのも楽しいですね。新鮮な気分でした」
 いつも通り和装姿の大和が、柔和なほほ笑みを浮かべる。
「おう、テストはこれで終了だ。
 実際にアーケードに出すのはまだ先になるが……」
 楽しかったか、と聞こうとして智親は言葉をそこで切った。
 参加した殆どのリベリスタが談笑していたが、その表情が概ね明るいのを見て、成功を確信したのだ。
「……もうひと頑張りでもするか」
 智親はそう言って顎を撫で、にっと笑った。


<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
大変おまたせいたしました、お疲れ様でした。
激戦の続くリベリスタにとって、遊ぶこと、休養することも仕事のうち。
また新たな展開が始まろうとしていますが、アークのリベリスタなら大丈夫だと、信じています。