●これはひどい 今、ある事件が起こっていた。とある大型ショッピングモールにて休日のイベントショーが行われていたのだがそこに突如数名の人物が乱入したのだ。 そのあまりの事態からその場に居合わせた人々は声も出せず、身動き一つ取れず成り行きを見守るしかない。 舞台の中央に立つ栗色の髪をした少女。その顔には可愛らしいデフォルメされた猫のお面を被っている。 「ふーはーはーはー、このショッピングモールはこの悪の……悪のー……」 その少女が奪ったマイクを片手にやけに間延びした笑いをあげて何かを言おうとするが何故かいきなり言葉に詰まる。 「隊長、けっしゃです。悪の結社」 「あっ、ありがとー……こほん……悪の結社が占拠したー!」 隣に控えている全身黒タイツに一部プロテクターのようなものを装着した戦闘員Aな感じの人物が小さな声で耳打ち、少女のほうは笑顔でお礼を言うと咳払いして改めてそう宣言した。 それと同時にざわめく舞台前の会場。小さなお子さんはきょとんとした顔でそれを眺め、保護者の皆さんは新しい催しかしらと首を傾げる。 「なあ、何で俺達こんな格好でこんなところに立ってんの?」 「これが今回の仕事だ。そしてこの場所と格好は隊長たっての希望だ。諦めろ」 舞台の後ろの方でまた別の戦闘員風の男達がぼそぼそと小さな声で会話をしている。どうやら二人は互いに不本意ながらその場にいるらしい。 その間にも隊長と呼ばれる少女の演説は続いていた。何でも正義の味方に来て貰う為に人質を取りたいのだとかどうとか。 「誰か人質になってもいいって子いないかなー? あっ、勇気のあるその子にはわたしの飴ちゃんあげちゃう!」 少女の言葉に会場の子供達がわーっと手をあげる。パパさんママさん方もただの催しだと理解して微笑ましくその様子を見守っていた。 「ふわもっふーん!」 そして人質を取る誘拐役なのか舞台袖から現れる怪人……かいじん? 「ああ、俺。サイズが合わなくて本当に良かったわ」 「そうだな。アレは御免だ」 舞台上の戦闘員BとCは現れた怪人に視線を送り安堵の溜息を吐く。 そこに現れたのはデフォルメされた熊のような頭に妙にふわふわもふもふしたボディをした愛らしい二足歩行生物だった。会場からは可愛いやら触ってみたいと子供達の声がする。 どう見てもマスコットな容姿の怪人は会場内を歩き、男の子と女の子を一人ずつ選んで手を繋いで舞台へと上がっていく。 「ところで人質とってどうすんの? 本当に盾とかにすんの?」 「そんな訳ないだろう。隊長に怒られるぞ」 またしても戦闘員BとCの会話。一つ頷いて二人は怪人が連れてきた子供に手にしていたお菓子の袋を渡す。 「ふっふっふ、これで準備は整ったわ。さあ、何時でも掛かってきなさい正義の味方!」 ビシッと天を指して高らかに宣言する少女。その顔はとても楽しそうでキラキラと輝いている。 そんな舞台から少し離れたところに偶然居合わせたリベリスタ達が居た。 「最近のショーってのは凝ってるな」 「そうだね」 彼らはそれが事件だとも気付かずにその様子をのんびり眺めていた。 ●むちゃいうな 一方でその頃アークの深部。万華鏡にて『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)はフォーチュナの力を持ってあることを探っていた。 「どうも、おかしい。フィクサードの事件は毎日起きてるけど、一度にこれだけ感知されたからには……何か事情がありそう。今、アークの方でも調査をしている所なんだけど」 その言葉は先ほど見送ったリベリスタ達へも向けたものだった。今日だけで既に幾つかの事件が発生し、何人ものリベリスタ達を事件の現場へと送り出している。 と、さらにここで一つの予知が届く。 「んっ、また……けど、どうしよう」 今回予知された事件は予知というには近すぎる未来だった。今からリベリスタを集めてアークから出動させては間に合いそうにない。 予知により頭に流れる情報とデータ化され目の前のウィンドウに表示される情報を眺め、イヴはある情報に着目する。 イヴはウサギのポシェットから携帯電話を取り出すと画面に映る番号に電話をかけた。着信相手は二、三コールでその通話に出る。 『はいはい、一体どちら――』 「わたし、イヴ。実はフィクサードが大変」 『はい?』 イヴの電話の相手先のリベリスタは突然の電話に疑問符交じりの声を返す。 「ショッピングモールで開催されてるショー……観てる?」 『ああ、丁度。って、何でそれを――』 「その人達、フィクサード」 イヴの言葉に電話先のリベリスタは声を失う。正しくまさかと言ったところだろう。 リベリスタが言葉を取り戻す前にイヴはたたみかけるようにして情報を伝える。 『つまり、あいつらを倒せと?』 「そう。あとエリューションのことばれちゃ駄目」 つまりイヴからのオーダーはこうだ。ヒーローショーのようなあの舞台に乱入してフィクサード達を倒せ。但し派手に壊したり明らかな超常的な手段は用いずにと。 電話先のリベリスタは暫しの間をおいて――。 『む――プチッ』 「んっ、次は……」 何かを言う前に通話を切り次のリベリスタの電話番号をプッシュするイヴ。話の途中で切ったのは決してそれはわざとではない。そう、事態は急を要するのだから。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月28日(土)01:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ヒーロー参上! イベント会場の舞台が乗っ取られて僅か数分。ガヤガヤと騒がしい舞台に一人の少女が現れた。 「たいへんたいへん。ショッピングモールが悪い秘密結社に占拠されてしまいました」 舞台袖からひょっこり現れた『A-coupler』讀鳴・凛麗(ID:BNE002155)が両手で掴むマイクに向かって喋り始める。 「でも大丈夫。困った時は正義の味方が助けてくれます。みんなで助けてって呼んでみて。さあ、せーの!」 凛麗はヒーローショーの司会らしく振る舞い素晴らしいマイクパフォーマンスを見せながら会場の子供達に向けてマイクを向ける。 「「「助けてー!」」」 子供たちの明るく大きな叫びが会場内に響き渡る。それと同時に一つの影が舞台の上に降り立った。 「待てい、悪党ども! 子供達を人質に取るとは不届き千万。天に代わって成敗致す!」 どこぞの風来坊のような身なりの男、その頭には編み笠を、そして顔にはにゃんこの仮面。誰が呼んだか流浪の剣客。ねこざむらい――もとい『市役所の人』須賀 義衛郎(ID:BNE000465)の登場である。 さらに、そのねこざむらいの隣に降り立つ翼の生えた少女。頭に浮かぶエンジェルリングが頭の動きにあわせゆらゆら揺れる。 天使の装いをしたハルバードを振るう戦士――『あほの子』イーリス・イシュター(ID:BNE002051)だ。 「正義のひーろー! 天界少女イーリス参上なのです! わるいやつはぶっとばすのです!」 さらに今度は二つの影が舞台の奥の上方にある踊り場に現れる。 一人は細身の体に緑のチャイナ服を身に纏い腕を組んでポーズを決める中華娘――『超時空★チャイナメイド』ケイマ F レステリオール(ID:BNE001605)。 もう一人は白い給仕服に身を包みその手に魔法少女風の杖を手にしたやる気なさげのメイド少女――エリス・トワイニング(ID:BNE002382)。 「超時空チャイナメイド★ケイマちゃんアル!」 「まじかるメイド、エリス……あなたの心を、萌やしちゃう」 そんなヒーローが続々登場する中で舞台袖のセットに登ったまま影に隠れておどおどしている少女が一人。 「こんな形で大勢の前に出るなんて……は、はずかしい」 フリフリのレースをふんだんに使った魔法少女風の格好をした『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(ID:BNE002166)は仲間のリベリスタ、否。ヒーロー達が現れる度に会場からあがる歓声についしり込みしてしまっていた。 しかし、その心に宿る正義の心とちょっとした好奇心に後押しされふわりと飛び立ち舞台の上へと舞い降りる。 「この世の悪事は全部まとめておしおきするわ。魔法少女あひる、華麗に参上よ!」 「まだまだいるよっ」 そう言って舞台の上をバク転から宙返りとアクロバティックに登場したのは深紅のドレスに身を包んだ犬耳少女の戦士。 「真っ赤な爪を引き摺って、颯爽登場ジャッカル京!」 舞い上がるドレスを丁寧に押さえ、携える赤い爪を構えた『Dual identity』小鳥遊 京(ID:BNE000880)だ。因みに言うと彼は男であるが、会場の皆は誰も気づいていないようだ。 そして最後。のっしりと力強い歩みで舞台袖から現れるのはさながらプロレスラーのようなガッシリした体系に鋼鉄の覆面で顔を隠した謎の男、『メタルマスクド・ベビーフェイス』風祭 爽太郎(ID:BNE002187)である。 「むむむっ、お前達は何者なのー!」 そしてノリノリ、というより素でお決まりの台詞を言う隊長と呼ばれる少女に爽太郎はビシッと指差してこう告げる。 「通りすがりの……正義のレスラーだ!」 かくして正義と悪の役者は舞台に揃ったのであった。 ●正義と悪のバトル! 「くうぅ、カッコイイ登場しちゃってずるーい!」 「隊長、そんなことより命令をお願いしますっ」 頬を膨らませて悔しがっている猫仮面少女に戦闘員Aがなだめながらにお願いする。猫仮面少女の方もその悔しい分をヒーロー達にぶつけるべくキッと睨みつけて命令を下す。 「みんな、やっちゃえっ! 正義の味方をお祭りにしちゃって!」 「隊長、それを言うならお祭りでなく血祭りです!」 何か締まらない内に先頭は開始された。襲い掛かる戦闘員達にヒーロー達も迎え撃つ。 まず一番槍を果たしたのはイーリスだった。正面に向かってきた戦闘員Aに向けてハルバードを振り下ろす。 「こどもたちはかえしてもらうのですっ」 「ふっふっふ、折角捕まえた人質をそう簡単に返すと思っているのですか?」 ハルバードを己の槍で受け止めた戦闘員Aは悪役らしい台詞をもって挑発する。 イーリスの振り下ろす的確な連撃を見事にいなす戦闘員A。その演技とは思えない殺陣に観客の子供達はおろか保護者の皆様も思わず拍手を送る。 刃を交えている二人の上方から少女の声が落ちる。視線を向ければそこにはいつの間にか舞台のセットに登ったエリスの姿が。その手にした魔法のステッキをくるくる回しながら呪文を唱えている。 そのステッキが戦闘員Aを指したところで不可視にした魔力弾が戦闘員を襲う。戦闘員Aはそれを間一髪で避けると、床に当たった魔力弾はパンパンッと音を鳴らして僅かな焦げ痕を残す。 「……マジックアロー、刺さると相手は萌え萌えになる……萌えた?」 かくんと首を傾げるエリスに戦闘員Aは無言のままゆっくりと態勢を立て直してから一言返した。 「生憎、私が愛しているのは隊長一人だけです。しかし、萌えたかと聞かれたならば是と答えましょう!」 槍を構えながらにしてカッコイイ口調でエリスの言葉を肯定する戦闘員A。そう彼は小さめな子供が大好きな紳士だったのだ。 やけにやる気を増した戦闘員Aにイーリスとエリスは僅かながらに戦慄を覚えた。 「あーあ、副隊長はまた悪い癖だしてるし」 「アレは死ぬまで治らない病だ。そっとしておけ」 一方でまたメタな発言を繰り返す戦闘員BとC。しかしそんな馬鹿な会話をしながらもしっかり仕事はこなしていた。 義衛郎の放つ一閃を戦闘員Bが受け止め、それを援護しようとして接近するケイマを戦闘員Cの銃撃が襲いその出鼻を挫く。 「早く子供達を渡しなさい……あれ?」 あひるは言葉を間違った気がして首を傾げながらも限りなく色を薄くして照明で誤魔化せる程度にした魔法矢を放つ。 しかしそれも戦闘員Cの技なのか悉く銃撃で撃ち落とされてあちらの連携を崩すことができない。 「やはり見かけどおりではござらんな」 何となく役になりきったままで侍口調を続ける義衛郎は一歩退いて態勢を立て直す。 戦闘員達は見かけは雑魚戦闘員に見えてもやはり中身はフィクサードであり、強敵であった。 「ところでこの人質のお子様達って返しちゃ駄目なのか?」 「当たり前だ。演出的にも『取り返され』ないと駄目に決まっているだろう」 相変わらず空気を読まない戦闘員BとCの言葉。 「アイヤー、完全に舐められてるアル。それじゃあ、ちょっと本気をだすアル!」 ケイマが腕を体の外周から回しながらゆっくりと内側へ移動させ中央にて構えを取る。中国拳法のようなポーズのまま一気に飛び出す。 それを迎え撃とうとした戦闘員Bだが、なぜか体が僅かに重く感じられる。よく見ればその腕に見えないくらいに細い気糸が絡まりついていた。 「あっ、糸とか汚ねぇ!」 「勝てば官軍アル!」 卑きょ……ではなく見事な策で接近を成功させたケイマに続き義衛郎もそれに続いて切り込む。 しかし戦闘員BとCもただでやられるわけもなくまた一進一退の攻防が始まるのであった。 「皆、もっとヒーローさん達を応援して。みんなの声が力になるからっ」 『マスクさんは怪人の相手をお願いしますー』 凛麗はショーの解説をしながらハイテレパスにより舞台全体の状況を皆に伝えていた。 そして凛麗の指示でメタルマスクの男、爽太郎は怪人と相対する。お互いに身の丈は同程度。 「いくぞっ、お前らの野望もこれまでだ!」 「ふわふわ、もっふーん!」 爽太郎は怪人に向かって走りこみ身を固めてそのまま突撃する。対するふわもふ怪人はそれを迎えうちその突進を受け止めにかかる。 ぶつかり合う巨体。凄まじい力と力の勝負により床に皹が……。 「あっ、こらー! 会場壊しちゃ駄目って言ったでしょ!」 『マスクさんももう少し抑えてください』 と、怪人には猫仮面少女の。爽太郎には凛麗のお叱りの声が届く。二人は暫く組み合ったあと、顔を見合わせてから頷き同時に後方に飛び退る。 そこで選手交代と言わんばかりに飛び出してきたのは杏だった。しかも、飛び出してきたのはセットの上からと言葉のままの意味の通りで。 「ふわもふ怪人、覚悟してくださいなの!」 「もふわー!?」 そしてそのまま渾身のダイビング・ニー・アタック。小さな体ながらも上手いこと胸元に綺麗に入った飛び膝蹴りに怪人も思わず後ろへとひっくり返る。 京の方は反動を利用して綺麗に回って着地。ついでにVサインを会場に向けてファンサービスも忘れない。 「もっふもっふもふふーん!」 二、三度転がってから起き上がった怪人は怒りを表現しているのか両腕を振り回してそれをアピール。 と、次の瞬間にきぐるみの癖に俊敏な動きで走り京に怒りのドロップキックが炸裂。 「きゃああっ!」 避けきれずに真横に飛ばされる京を、爽太郎が何とか受け止める。 「負けん。正義に敗北は許されないからな!」 「ふわもふっ!」 互いに戦意を高揚させていくヒーローと悪の結社達。 果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか。 ●お約束 『悪の幹部? ……なんか安っぽい』 『な、なにおー! わたしだって強いんだよっ』 戦闘員Aとの戦闘をそっちのけにして舌戦に入るエリス。因みに二人ともテレパスによる念話なので会場の皆様にはその様子は睨み合ってるようにしか見えない。 ぶんぶか手を振っている猫仮面少女にエリスは相変わらずの無表情で眺め、おもむろに近づくとその仮面に手を掛けた。 「な、何する気っ!?」 「……にゃんこ仮面を倒すには……コレが一番」 ぐいぐいと仮面を引っ張るエリスに猫仮面少女は慌ててそれを阻止しようと抑え返す。 「なっ、隊長ー! くっ、悪の結社として顔を隠していることが仇になるとは!」 「いや、何と言うかな……」 ヒーローショーらしく相手役も入れ替わり立ち代りして戦闘員Aと相対していた義衛郎はエリスと猫仮面少女のやりとりを見て流石に言葉を詰まらせる。 戦闘員Aはこれまで一人でも数名掛かりで迫るヒーロー達を払いのけてきたが、今は猫仮面少女のことが気になるのか精細さに欠いている。 それをチャンスと見た義衛郎は力を解放してそれを脚力へと転換すると、早すぎない程度に加速して戦闘員Aに刃を奔らせる。 「くっ、少しはやるようですけどこの程度では私を倒すことなどできません」 ニヒルな笑みを浮かべる戦闘員A。 が、やはり今まで以上に十分に隙は出来てしまっていた。突然向けられるスポットライト、そしてそこに挿す影が一つ。 「うけてみるですあくのてさき! 必殺のー!」 強いスポットライトの光がハルバードの矛先に当たり反射する。ただ、それ以上に何か激しく輝いて見える気がするそれが思いっきり振りかぶられる。 「いーりすすぺしゃるです!」 「しまっ――!?」 全ての言葉を紡ぐ前に直撃を受けて舞台袖まで綺麗に吹っ飛ばされる戦闘員A。 残るイーリスは満足気な表情をしながらダーッとハルバードを掲げて勝利のポーズを決めていた。 そして舞台の中央では一番の目玉と言うべきかマスクヒーロー&獣耳少女VSふわもふ怪人の戦いが続いていた。 「強敵なの。あのボディのせいでダメージがあんまり通ってない気がするの」 京の言うとおり打撃技を幾度と繰り出しているがあのふわもふな体がクッションになっており威力が軽減されているのだ。 ならばどうするかと考えれば爽太郎の頭の中には残された手は一つしかない。 「二人の力を合わせたコンビネーションアタックしかないな」 いわゆる合体技だ。しかし、俄かタッグである爽太郎と京にそれが出来るのかは未知数であった。 だが出来ないなら勝てる見込みは無い。ならば、賭けるしかなかった。 「了解だよ。なら何とかアイツの動きを止めて欲しいの」 「任せろっ」 爽太郎は筋力のギアを一段階上へと押し上げ怪人の正面からローリングで側面、背後へと転がる。きぐるみである鈍重さから怪人はその動きについていけなかった。 その腰をガッチリと掴み取ると、雄たけび気合のままに全力で上体を起こしきぐるみを持ち上げる。そう、バックドロップだ。 「ふもっふーん!?」 そのままに後頭部から床に叩きつけられる怪人。しかも体はガッチリ爽太郎に掴まれて身動きも取れない。 「ジャッカルシャドウバスター!」 そして技名と共に炸裂する杏の必殺技。と言っても一見はただのパンチだが必殺技に恥じない威力が込められている。 さらに怪人は身動きがとれない体勢でそのボディはダメージを逃がしきれなかった。 「も、もふきゅーん……」 ぐるんぐるん目を回して伸びてしまう怪人。ここでヒーロー側の勝利のゴングが鳴り響いた……気がした。 「うわ、副隊長どころか怪人までやられたぞ」 「そろそろ退き時のようだな」 涼しい顔で会話しながら実は肩で息をしている戦闘員BとCは顔を見合わせると互いに頷きあった。 「あっ、こら。逃げるなアルー!」 「え、ええっと……」 背中を向けて逃げ出した二人にケイマとあひるは迷ったところで人質になっていた子供達の確保を優先する。 その間に戦闘員Bは怪人を、戦闘員Cは猫仮面少女を確保して舞台脇へと移動している。 「こ、こら。まだ勝負は着いてないよっ」 「駄目だっての。今回のお仕事はここまで、ばいならばいなら」 猫仮面をぺしぺし叩かれる少女はうーうー呻きながらも諦めたのかがっくり肩を落とす。 「つ、次はこうはいかないんだからね。覚えてなさいよー!」 ビッとヒーロー達を指差して悪役お決まりの台詞を吐く猫仮面少女。ただ戦闘員Cに荷物のように持たれていて全く締まらない。ただ会場の子供達からの受けは良かった。 流石に舞台上で悪の結社―――フィクサード達を縛り上げたりするわけにも行かずヒーロー達はそれを舞台袖から逃げ出していくのを見ているしかなかった。 「まーてーなのです。しょっぴくのですー!」 「待てと言われて待つ馬鹿はいないぜお嬢ちゃーん」 『……今度馬鹿なことをしたら……お尻ぺんぺん』 『ひうぅっ!?』 唯一追いかけていくイーリスに快足を見せる戦闘員達の捨て台詞。そしてエリスからのテレパスで強気な態度から一変して怯える猫仮面少女。 とにもかくにもどたばたの内にヒーローショーもコレにて終焉。 「『おつかれさまでございます。皆さん、またの機会があれば』」 凛麗の一言によって会場は拍手に包まれ無事に幕を閉じた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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