下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






この手に堕ちないでメロウなボーイは、あの奇跡を五度目の正直。


 それは、割とこっそりと掲示されていた。
「VTSによる研修・アーティファクト編 *依頼ではありません。あくまで希望者のみ参加」
 リベリスタに対する依頼一覧から外れるようにして、短い文。
 後になって思えば、「希望者」の部分だけ、やけに念入りに太字だった。
 なんで、あんなものみつけちゃったんだろう。
 

「ウィルモフ・ペリーシュなんてビッグネーム出すまでもなく、アーティファクトというのはとても厄介」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、無表情だ。
 というか、何かこみ上げてくるものを我慢しているようにも見える。
「アークは志願制をとっている関係上、アーティファクトが関係している案件とあまり出くわさない人もいると思う。やはり、ある程度はどういうものか分かっていてほしい」
 イヴはモニターに三文字を表示する。
「Ⅴ・T・S」
 経験不足を補うために使われた、ヴァーチャル・トレーニング・システム。
「今回も、効果が出たとき一番現場が混乱する、人心誘導系」
 ふんふん。そういうのに対処する方法を探る上でも大事だよね。
「それを有効に使うため、とあるゴーレムの効果もプラス」
 え。なんだろう。この既視感にも似たいやな感じ。
「例によって、今回も以前発生した事件の追体験をしてもらう。ちゃんと解決した案件だから。人数も大量に投入するから問題ない。発生した敵は一定時間経つと瓦解するから元に戻ることは確定済み」
 なんか、きな臭い感じがする……。
 今すぐこの背後のドアを開けて出て行った方がいいんじゃないかな、いいんじゃないかな。
「ちなみに、今回使う案件は、E・ゴーレム。識別名『とりかへばや……」
 脳に走る冷たい感触。
『とりかへばやの鏡』
 怪しい光線を照射し、対象の性別を反転。
 本体を破壊しない限り、戦闘終了後五日間そのままという強効果。
 その容姿は、本人の願望・恐れ等々を体現させ、外見年齢すら超越させる。
 心に住まう人物に似通ってしまう事例まであり、あなたの心のひだお見通しになってしまうのだ。
 現物は既に破壊されているが、そういうモンまで再現しましたか。
 誰か、あの自称天才室長、死なない程度にシメてこい。
 ろくでもない効果という点では、満場一致だ。
 更に、体に傷がつくわけではない。
 効果範囲も広い。
 確かに実験にはもってこいだが。
 心の傷はどうしてくれるの。
 ここまで、リベリスタ的脳内処理。
「『……の鏡』の案件」
 失礼しまっす!
 背後にダッシュ。
 ドアに手をかけるが、開かない。
 何これ、電子ロック!?
「言っておくけど、『とりかへばや』は、あくまで補助。メインは……」
 画面になんかエロい感じの少年の裸身をモチーフにした香水ビンが映し出された。
「『ヒュアキントス』」
 それって、つけた男子に深刻にラヴしちゃう奴じゃないですか、やだー!
「「「開けて~!! ここ開けて~!!」」」
 男性リベリスタ、扉に殺到。
「大体感づいたみたいだけど、改めて説明する。女性には『とりかへばや』で男性化した上、男性陣はその後に投入。『ヒュアキントス』をつけた対象と対峙してもらう。効力はある程度弱めるので、どのくらいの強制力がかかるものか、体感しほしい」
 それって何の拷問?
「ちなみに、『ヒュアキントス』つけるのは、男性なら絶対に好きになりたくない人にすることにした。これなら、そう簡単に篭絡されることはないと思う」
 まあ、本物じゃない、データ投影だけだけどね。と、イヴ。
「三高平で一番の女性の敵、沙織につけてもらう。それでも、よろめいちゃうかも。アーティファクト、怖い」
 なんで? なんで、そんなひどいことするの?
「この間のアドーニスの実験、女性化した男性がかなりの比率で思考狭窄の上暴化、リベリスタ同士での戦闘勃発。VTSだったからよかったけど、実践だったらと思うと恐ろしい。これは、女性が男性化したときのデータも取っておくべき」
 いや、それなら、女子だけでもいいじゃん。
「男子は、ちゃんと抵抗のための鍛錬。ファイト」
 そう言って、拳を固める幼女、マジエンジェル。
 だけどもさ。やっぱりさ。
「「「出して~!!!」」」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月10日(火)22:36
 田奈です。
 覚悟完了が必要なイベシナ、お待ち。
 大丈夫、大丈夫。現実じゃないから。
 コスプレ気分で。
 ただ、あれだよ。
 みんなと記憶共有してるから、今後のリベリスタ人生に影響しても田奈は知らないよ。
 自己責任、自己責任。
 大事なことなので、二度言いました。
 どうなっちゃうか詳しくは、拙作「今はなき~」二作と、「飛んで火にいる~」「ヒュアキントスは~」をご覧下さい。
 ま、知らなくても、どうにかなります。

 E・ゴーレム「とりかへばやの鏡」
 *本体は、掌サイズの柄鏡です。
 *外見は姫君の姿を模しています。落城時の娘武者姿です。その顔面がひび割れた鏡です。
 *特殊負荷実験ですので、攻撃能力は削られています。安心! 更に、男性人に満遍なく照射した後、早々に消えます。
「とりかへばや」:神遠全・ダメージ無・命中率きわめて高し
   性別が変わります。BS解除スキル・WP判定では回復しません。

 アーティファクト「ヒュアキントス」
 *香水です。つけた対象は射撃範囲の男性のハートを釘付けにします。
  からっと明るいBL方向ではなく、耽美にメロウになります。
  今回は、根性があれば回避できる設定に調整されています。
 
  WP判定に成功すれば、魅了されません!

  もちろん、自発的にメロってくれても全然構いません。
 *香りが取れれば効力はなくなるけど、アーティファクトだから、そう簡単には落ちません。
 *効力が発揮されている間、戦闘行動は無理。彼の益になる行動をします。

 現場:市役所前広場
 *時間は深夜。足元は乾いています。足元良好。
 *今は晴れています。
 *広さは、半径20メートル半円。
  諦めてください、必ず効果範囲に入ります。

 マネキン:沙織ん
 *沙織の外見データと自動行動プログラムで構築されています。
  人間ではありません。投影されたデータ体です。
 *しゃべったり、リアクションしたりはしません。
 *後日、沙織のからかいのネタにされることはないので、安心してください。

 ど根性ルール
 *プレイングに「絶対沙織んに堕ちない!」という気概を込めてください。
  説得力に応じて、WPに0%~50%の補正をつけます。
  
 イベントシナリオのルール
 *参加料金は50LPです。
 *予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
 *イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
 *獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。

 但し書き
 *今回は、イベントです。
  性別変換・魅了は回復不可BSの一種と考えてください。
 *沙織んを視たときの感想は、必ずプレイングに盛り込んで下さい。
  メロメロになる場合は、そこもお忘れなく。 
  田奈のハートをがっちりキャッチなうひょーなプレイングほど描写量が増えます。
  ない場合、描写量が減ります。
  白紙プレイングは、描写なしです。
 *今回は自動的に「とりかへばやの鏡」は瓦解しますので戦闘行為は不要です。
  フレーバーとして、何かをたたきつけたい方はどうぞ。
 *『覚悟完了』と書いていただけると、田奈が神妙な顔をして頷きます。
 *単独、グループ関わらず、他PCさんと絡めて描写します。
  絡みNGの方は、「絡みNG」とご記入下さい。
 *誰かと一緒にやるときは、共通チーム名【****】とつけて下さい。
  コンビなら、相手のお名前とIDを書いて下さい。

 はっちゃけ大歓迎ですが、小さなお友達も読んでいい全年齢対象ゲームですので、田奈の「そういうのいけないと思います」カウンターに抵触した場合、マスタリング対象になります。

参加NPC
 


■メイン参加者 13人■
★MVP
デュランダル
十凪・創太(BNE000002)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
覇界闘士
御厨・九兵衛(BNE001153)
クロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
クロスイージス
ステイシー・スペイシー(BNE001776)
スターサジタリー
ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
クリミナルスタア
古賀・源一郎(BNE002735)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
   


「ええい、くそう、扉が破れない!」
『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の、やさぐれた声が響く。
「アークはいったいこのデータを何に使おうっていうんだ」
 君たちの一挙手一投足を無駄にしない。絶対にだ。
『トランシェ』十凪・創太(BNE000002)の目的は、女子たちの鼻を明かしてやることだ。
 この研修は、踏み絵。
(こんなもん気合いで乗りきってやんよ。永遠に残る落腐印押されずに済むよなぁっ!!)
 落腐印。と書いて、らくいんと読む。
 腐女子に日々掛け算され続けるということですか、大体察しがつきます。 
「前もこういうのあったよね、知ってる。僕阿鼻叫喚だったってしってる。男女雇用均等法滅びろ……!!」
 『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)の臓腑の奥から吐き出される、まじ呪い。
 これ、あくまで研修だから。
 男女差別、いくない。
  
 一方の女子は、ノリノリだ。
 いや、彼女達はちぃっと幸せな夢を見ているのだ。
「ヒュアキントス! あれが! あれば! 三高平は平和になる!」
『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)は、ほわほわだ。
 だが、中身が腐ってる。
「ガスは足元からわくのが定石。どこかに香水噴出口があるはず。その奥には夢が! 希望が!」
『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)、おめめぐるぐる。  
 彼女らは過去二回、ヒュアキントスの私物化に失敗している。
 今度やらかしたら、彼氏呼んでおしりぺんぺんの刑を執行委託されても文句言えない程度の悪さだ。
 今だって、ヒュアキントスは所在は三高平市の中枢のアークで、間違いなく三高平は平和だ。
 君らに持たせると、バイオテロだから。
 使ったら、悪堕ちだから。
 まじ狩るよ!?
 ま、どうやったって、無理だけどね。
 だって、ヴァーチャルリアリティだから。
「壱也は撮影よろしくでぇ、Zipで頂戴ねぇん♪ お代はGP払いでいいかしらぁん!?」
 だから撮影もできないってば。
『肉混じりのメタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776) は、微笑が止まらない。
「BLもGLもNLも好き。つまり博愛の心」
 世界よ、ラヴで満たされるといい。
 撮影は出来ないけどな。
 そのあたり、分かってないのがもう一人。
「女の人に変身できるって聞いて、それって凄く心の訓練になるって思って来ました、えへ、えへへ」
 すごくいい笑顔の『合法』御厨・九兵衛(BNE001153)は、イヴの説明をきちんと聞いていなかったのが仇になった。
 というか、ヴァーチャル・リアリティ、よく分かってないかもしんない。
 おじいちゃんだし。
 ショタみたいだけど、傘寿だし!

『女性の皆さん、楽にして下さい。皆さんの身体データを「とりかへばや」シークエンスに基づいて、変換します』

 今回のとりかえばや効果は、あくまで女子だけに適応されます。

「男性の皆さんは、少々お待ちください」

 九兵衛、辺りを見回す。
 げっそりした表情の野郎共。
「そう何度も同じ手にひっかk……りました。周囲がいつもの面子すぎて笑えますね。ハハッ」
『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546) の笑いが虚ろだ。
 ピュアゲージ、若干低下。 
「……はぁ。まず落ちついて深呼吸。ひっひっふー」
 天然ゲージ、若干上昇。
 ヴィンセントなら、天使の卵、産んでくれそうな気がする。
「てかこれ、自分からとりかえばや光線に当たりに行ったほうが安全だったりするんじゃないか?」
 快は虚ろに呟いた。
 マイクロミニで内股涙目のオペ子ちゃんになってもいいんじゃなかろうか。
 この先のことを考えると。
 その相棒の肩を、ぽんぽんと無言で夏栖斗が叩いた。
 そして、首を横に振る。
「相棒……」
「わかってる。現実は非情だ。ただ女子のデータが変換されるだけさ。隙を見てとりかへばやの光の中に飛び込むなんて状況は、そもそも発生しないんだ」
 え~、なにそれ~。聞いてないよ~。
 九兵衛、驚愕。
 あ~は~は~。


「いいか、俺たち男って生き物は、性別じゃない。生き様が決める……その価値をッ!」
 説明しよう!
 とりかへばやの鏡によって、性別転換が発生する際、その容姿及び性質は本人が強く想起しているものに多大に影響される。
『くるみ割りドラム缶』中村 夢乃(BNE001189)の場合、とりかへばやの光を浴びると本人の理想が投影されるのか、それはもう男前になるのだ。
 何もない空間では現実感が喪失されているので、デフォルト空間として設定された市役所前広場に特設ステージが設営されている。
 ステージの中央でシャウトする夢乃。
「なんだって、こんなものがっ!?」
 外野から驚愕の突っ込み。
『様々なデータの投影実験も、並列施行中』
 脈絡のない背景及び効果は気にしないで。と、イヴ。
 緑の髪はショート。蜘蛛の巣柄の服の型からは華奢な肩がのぞいている。
 声は高め、目はくりくり。
 ルアは、男子になっても可憐だ。
 パーカーにジーンズ。
 なんとなく彼氏に似た風情になるのは、察してください。
 以前のとりかへばや実験と同じデータの壱也。
「イヴせんせー! 質問デース」
「なに、壱也」
「びん、どこ?」
「今回、ビンによるコントロールは必要ないので、データとして存在しない。更にヴァーチャル空間でいくら手に入れても現実に手に入れられる訳ではない」
 イヴの声は淡々と降ってくる。
「それでは、存分にアーティファクトの恐ろしさをお楽しみください」


 ヒュアキントスは、無差別に男心を魅了する。
 歩いてくる沙織んから感じる動機息切れめまいは、非現実とはいえリベリスタの心を磨耗させる。
 いっそ恋に堕ちてしまえれば楽になれるが。
 あいつに堕ちるのだけは、まっぴらだ!
(メルクリィ……)
『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)は、二つ名に恥じない。
(メルクリィメルクリィメルクリィメルクリィ)
 アークの誇る真空管……敏腕フォーチュナへの一途な思いが誘惑すら撥ね退けると、信仰にも似た思いで反芻される。
 ただ、だんだん「メリクリ!」と、年末間際の挨拶のようになり、恋人はサンタクロースな感じで機械化フォーチュナがトナカイに乗ってプレゼントは私ですゾーみたいな、なにこの妄想、誰か止めて。
「時村の若にか?堕ちんよ。だって男じゃろ」
 そんなぬるい心積もりで、ヒュアキントスの誘惑を打ち破ることは出来ん。
「あっ…!?」
(ドキッ い、いかん、男にこんな気持ち一生のふか)
 そのとき、ハートを貫かれる音がした。
「いやあああ」
 九兵衛、篭絡。

「ってか大して中身変わんないやつらちょっとお前ら自分見ろよお前らもその世界に今入ってんだからな。……ってこれ逆効果かオイ!?」
 創太の言葉に、腐女子な現男子、あぁ。と言った。
「「わたしも効果あるんだったぁ!」」
 二人は、創太達の前10メートルに踏み出した。
 背中が、俺らの生き様見とけ的に男前だ。今、男だけに。
 沙織んの間合い。
 常設効果『ヒュアキントス』効果発動!
「沙織ん……眼鏡とかスーツとかなんなの。萌えるものばっか身につけちゃって!」
 壱也の声も、恋に堕ちそうな気配がする。
「でもね、センター分けはごめんだあああ!!!」
 そこか! でも、大事だ!
「サオリン?! そんなマネキン、スケキヨさんの足元にもおよばない!!」
 全てを肯定してくれる恋人を持ったルアに死角はない。
「スケキヨさんなら、今のままの僕でも愛してくれる!!!」
 超・断・言!!
 説明しよう!
 腐女子は、自分の意に染まぬ全てのカップリングを黙殺することが出来る!
 いかに沙織んが超絶攻めでも、×(自分)の左側にそぐわないと判断した時点で、完全黙殺されるのだ。
 それは、次元をまたいで男女問わず恋愛勝ち組、『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792) 様の、脅し目的濃厚アタックとて例外ではない。
「なぁ……」
 熱病のような熱い視線と吐息。
 野生的な笑みと共にじわじわと、でも触れはしないように。
「……いいか?」
 壁際に追い詰めて、顔を挟みバンと壁に両手を。
「奪って、いいか?」
 吐息がかかる程の近くで、そっと囁くエルヴィン様に、簡潔な一言。
「「ありえない」」
 腐女子とは、かくも操堅き者である。

 さて、青少年。
 沙織んが近づいております。
「とにかく、沙織んの誘惑にどう耐えるかが勝負だ。むしろいい男具合なら中村夢生さんの方がカッコいいんじゃないか?」
 それ、夢乃さんのことですか?
 快、ナイスネーミング。
「まあいい、絶対に引っ掛かってやんねぇ!」
 目の前で腐女子魂を見せつけられた創太、覚悟の大宣言。
「おい! お腐れ壱也!」
 夏栖斗、創太の横に並ぶ。
「僕のメンタルがどれだけ強ぇかみせてやんよ! 室長に堕ちるとかぜってねぇし」
「ご指名ありがと御厨くん! 見届けようぞ!」
 撮れなくても、手にはハンディカム。
「撮影が私のソウル!」
 そう一声あげた壱也は、にやっと笑った。
 
「やだ、沙織んってこんなにかっこよかったっけ?」
「意識をしっかり持て! あの人に誘惑とかされたら二重の意味で敗北じゃないか、男として!」
 互いの正気を鼓舞し合う相棒同士。
((絶対に偽物なんかに心奪われてたまるか! なぜなら))
「ダメだ! 僕の五行想は快だけのものなんだから」
「俺の不沈艦はアイツだけのモノなんだ……!」
 重なり合うシャウトに、二人は互いの瞳に運命を見たり見なかったり。
(いま。じらいをふんだ。おとがした)
 快、沙織ん以前の問題で、真っ白に燃え尽きた。
「でも……あの甘いマスク長い指で顎を撫でられて微笑まれたら……僕っ」
「おいカズ! お前も止まれ……!」
 創太、夏栖斗がふらふらっと前に出そうになるところを襟首つかんで止める。
「も」である。
(その甘いマスクと甘い声……ああ……ってああくそ、俺様は普通なんだ……!!!) 
「わかる……いやわかんねぇ、わか……くっ……」
 懊悩。
「ノーマルだから」では、ヒュアキントスの誘惑を振り払えない。
 むしろ、そのシチュエーション、ご褒美です。
「室長……お前のその甘い声で『俺のために死ね』……と……言ってくれ……」
「ちょっと押してやんぞ☆ ドン☆」 
 壱也、夏栖斗と創太を転がして、二人の腕を交差させて布で結んだその間0.01秒。
「そうよ! それでいいのよ!」
 青少年、心労で撃沈!
 所詮……おっと、ここから先は武士の情けだ。
 
 ヒュアキントスと対を成すアーティファクト『サフォー』確保依頼に参加していた彼は、あまりにも危険と判断。
 独断で処分するため、自らの鉄の胃袋を信じて一気飲みして昏倒という過去を持つ。
 彼の名は、『悪夢と歩む者』ランディ・益母(BNE001403)という。
「俺の中のサフォーが囁いている……『ヤツ』……ヒュアキントスを倒せと!」
 気のせいです!!
 ランディ。あなたツカレテルノヨ。多分。
「この目隠しの上にガスマスクを被り、ニニといちゃついてる時間を思い出せば貴様など恐れるるに足らぬ!」
 のろけたね? 今、ガッツリとのろけたね?
「あ、前見えねぇ」
 しかし、僕らのランディは目が見えないくらいで諦めたりしない!
「燃え上がれ! 俺の小宇宙! 限界まで燃え上がり忌々しきヒュアキントスを燃やし尽くせ!」
 小宇宙と書いて、サフォーと読む!
 しかし、君の小宇宙は、女子がきゃっきゃうふふ状態になる香水でいいのか。
「くらえ! サフォーブレス!!」
 もう消化してるから、そんなん出ないよ。
 毒薬Aが毒薬Bで相殺できると思うなよ。
 混ぜるな、危険!
「あ、息吐けねぇ」
 ガスマスク、つけてるからね。
「手強い……だが……俺が負ける事は許されん!」
 ランディ・益母の戦いはこれからだ!
 そこにどかどかと雪崩を打つように飛び掛る篭絡されたリベリスタ達。
「「「うわああああっ!!」」」
 ランディさん、沈黙。
 だって、沙織んが危なかったから。
「今回だけは……堕ちます。さおりんにメロメロになっちゃいます♪ さおりんを独占しちゃいますよー」
『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)、年女のデレ宣言!
「さおりん大好き! いつも意地悪してごめんね! 好きな人には意地悪しちゃうの。今日は出血大サービス! 私の愛憎が臨界点MAXなのです!」
 ハアハアハアハア。
「沙織ん、なんで貴方はそんなに沙織んなの? その眼鏡。軽薄な顔。遊んでそうなオーラ。はぁ、超ぶっ飛ばしたい」
 愛は、暴力! 
「ガバっと力の限りハグしてベアハッグ~。ぎゅーです。すっごくぎゅーってしたい」
 女の体じゃ無理だけど、今は男だから可能!
 ところが、ベアハッグの腕が空を切った。
 あれ、沙織ん、どこ?

「いつもスカした態度で仕事で無茶ばかり言うくせに、僕達を本当に危険な戦場に送り出す時はすごく辛そうな顔をするんですよね。そんな顔するのはずるいです。何も……言えなくなってしまうではないですか」
 ピュア系ヴィンセント、人攫いに成功。
 噴水の下、沙織んの手を両手でとって、切々と憂い顔で語っている。
「帰ってきた時ぐらい笑顔で「ただいま」を言えたらいいのに。あなたの前では僕は無愛想な態度しか取れないのです」
 ささげ持った手に頬ずりせんと近づける。
 縮まる距離。
 でも、心が叫ぶの。魂が叫ぶのよ。
 なんか違うと。
「うあああ、めーでー。めーでー!!」
 意志の力が、心揺るがす香りを振り払う。
 超幻影でいとしの君の姿を超・完全再現。
(やっぱりうさ子さんだけが僕の心の支えなのです)

 そして、その隙にさらわれた沙織んは更に口説かれていた。
「嗚呼、やっぱり貴方は笑うだけですか」
 誰にも平等な笑みしか向けてくれない沙織んに対して、焦燥と虚しさを包括した恋慕に苦しみが彼を憔悴させているのだ。
 彫は深く、蜘蛛のごとき痩躯。
 ステイシーである。
「その罪の大きさなんぞ全部知ってるかのように。酷い人ですね…まった……く……」
 蜘蛛が獲物を捕らえるべく広げた腕から、掠め取られる沙織ん。
 今、超男前。素肌ジャケット。
 夢乃、というか、快命名、夢に生きると書いて「夢生」。
 沙織んを姫抱っこの上、どっから出したかマイクでシャウト。 
「涙が溢れそうだ。この報われない感情を叩きつけられたなら。それはどれだけ幸せな……だが残酷なことだろうか! 結ばれない、報われないんだ、この胸を震わせるこの鼓動と孤独は!」
 80年代歌謡曲、曲間の台詞的。
「だから……だから、俺はこの気持ちを歌にする!できることなら黒猫とロックセッションを開いてやりたいくらいさ!」
 最高の席に沙織んを座らせ、歌うぜ、マイ・ラヴ・ソング。
 しかし、沙織んは、常時動き回るようにプログラミングされているのだ。
 さらば、夢生!
 かくして、全員が意志の力で沙織んを跳ね除けるまで、沙織んの巡回は続いたのであった。


「最後まで、見届けたから!」
「カイ×カズト×ソウタ、ガチ!」
 ごち! と叫ぶ腐女子に、忘れてくださいと土下座する人々がいたとかいなかったとか……。 

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、ご馳走様でした。
 違う、お疲れ様でした。
 今回のMVPは、田奈に「ぐげほぉっ!」と言わせた創太さんに。
 ナイスな殺し文句でした。

 これで、みなさんは、「あのときに比べればぁ!」が使えます。
 楽しんでいただけましたでしょうか。次のお仕事がんばってくださいね!