● 「ハロー、お元気? 時化た面してたら楽しい事起きないわよぉ? でねっ、此処に居る貴方達は沖縄旅行決定ね! きっと楽しいわよ。豚を一匹、殺すのよ。あの脂肪、よく燃えるんじゃないかしらね、キャハハハハハ!!!」 『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)はブリーフィングルームに集まったリベリスタを見回しながらまずそう言った。その横から『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)はため息一つ吐いてから、言う。 「沖縄にまだ、楽団が居るのです。 グレゴリオ――かの混沌事件以前からケイオスの下で存在していた楽団員です。 彼、先日の三高平での事件には顔を出さないなあと思っていたら……まだ沖縄に居たみたいなのです」 「まあ、存在しているだけで討伐対象よ、あんなの。精々、沖縄県民が餌にされ尽くす前に殺る事ね……だって」 ● 「みーんな、死んじまったんだなぁ」 とはいえ正直そんなに悲しくも無ければ絶望もしていない。 確かに自分にとって楽団とは居場所でありケイオスという敬愛する主も居た。だがそれも今と成ってしまっては過去の出来事に過ぎない。 今ある現実は、一人に成ってしまったという事だけ。 『これからどうするんですか? 轟音クラッシュベル』 「あー……そうなんだなぁ、やることないんだなぁ~」 まるで骨をポテトチップスか何かと勘違いしているのか、この男。若干赤い付着物がある人間の骨を強固な顎で噛み砕きながら、どろりとした目を隣の死体に向けた。 「お前も死んじまったしなぁ~透明ノイズ~相棒よ~!!」 『ええ、悲しいんですか? それは嬉しく思いますよ』 いくら動かしてみても、これは自演で一人芝居。相棒が言葉を紡いだ所で楽しくない。 楽しくないし、つまらない。 つまらないし、寂しい。 寂しいし、やることない。 やることないし、動きたくない。 それでも、人は腹が減る。 「最期に、喰えないってくらいに食事がしたいんだなぁ~」 『とてもいい考えですね、わたくしもいつか貴方の胃袋の中身決定ですが……』 ● 「解った? このままじゃ大変な事になるわよ」 「そういう事なのです。できれば急いで沖縄に向かってください。交通手段は全てこちらで用意致しました」 そう言って杏里が持っていた封筒から飛行機のチケットが十枚。 「お気をつけて。リベリスタさんたちが着く頃にはまだ彼は動き出していません。……というか沖縄を堪能していて海辺でバカンスしています。 一般人は居ません、アチラの強結界が効いているものと思われます。アンデットも思いの外、そう数はいないようです、ずばり、チャンスですね!」 渡された資料、特に危険なアーティファクトには赤い字で記されていた。 ――ファラリスの雄牛。 「戦闘不能になったらお気をつけて。これはそうなった革醒者を燃やして死亡させる危険なものです」 「ま、つまりは戦闘不能なんなきゃいいのよ。 楽団はこの世のゴミ、そう思って焼却処分しちゃいなさい?」 「それでは皆様、いってらっしゃいませ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月11日(木)23:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● とっても良い臭い。 死体じゃない、もっと新鮮な肉でできていて、滾る血で潤っている。噛めば、それはそれは潰れた蜜柑の如く。甘い快楽と酸味の刺激が脳内を幸福で満たしてくれるのだろう。 それを期待してもいいかな。 「なぁ? リベリスタぁ」 グレゴリオは細くした瞳を此方へ向けた。獲物を見つけた、獅子の瞳で。 腐臭が香る、沖縄なのに。場違いにも程があるだろう。こんなの沖縄じゃない、終わらせるんだ。『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)は強固な意志を込めて人差し指を元凶たる敵へと向けた。 「お食事中失礼するの、貴方のバカンスもここで終わりなの!」 彼女の後方から現れる七つの影。そしてその瞬間、戦闘は開始した。先手は此方、リベリスタだ。 「最初から本気? いいね、いいね、小生も直ぐに追いつく」 舞い上がったのは砂塵では無く、海水。速さを誇る『続・人間失格』紅涙・いりす(BNE004136)を差し置いて、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は指に挟んだ札を放った。刹那に召喚されたのは正しく四神が一体――玄武。 「やれ。遠慮はいらん」 そう吐き捨て、玄武は海水を制して楽団一派に局地的津波を引き起こして消えた。 「これで、綺麗になったか?」 腐臭も死体も楽団も水に洗われて消えれば良い。そうユーヌは口ずさんだが。 「これで綺麗になったら……たかが一匹の楽団に十人も不要です……」 『深紅の眷狼』災原・闇紅(BNE003436)がそう言った傍から爆音が周囲を支配した。リベリスタ達の足下の砂塵が舞い上がる程の衝撃にリベリスタ全員が後方へと吹き飛ばされてしまう。身体が震える程度の、畏怖を覚える程の馬鹿力。これが、ポーランドの事件から健在する楽団員の力だっていうのだろうか!? それを放った本人は至ってシリアスとは無縁。びっしゃりとその身体を海水に濡らしたグレゴリオが対のクラッシュシンバルを合わせつつ。 「もうちょっと楽しんでいたかったんだけどなぁ~、バレット様やシアー様もやっている以上、おらもやらないとなんだなぁ~」 とかなんとか。さり気無く最後にめんどくさいと付け足していたのはリベリスタには聞こえなかったが。 「そうこなくっちゃね☆」 闇紅の横を『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)が元気に駆けて行った。砂を踏む足から真っ黒な漆黒を漏らしているあたりから殺る気も満々らしい。 そして罪作りな鋏を開く。狙いはグレゴリオの手前に居るエルヴィーノだ。だが、アンデットが一体、彼の腹部を抱き込んで彼の行動を静止。ソウルバーンを撃つにはまだまだ目標は遠くだ。つい邪魔だと吐き捨てながらその鋏はアンデットの首を狙った。 『ウフフ、久しぶりに見る顔が多くて嬉しいですね』 エルヴィーノはお得意のフルートを奏でれば、怨霊の弾丸が葬識の肩を噛み千切った。 「なんや、片方は死体になってまったんか。ていうか大丈夫かいな!」 「俺様ちゃん、生きてるからへーき☆ エルヴィーノちゃんはね、一回目の沖縄旅行でね、殺したんだよねー」 『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)は「そか」と言って煙草に火を点け、戦闘スイッチをONへと変える。死んだ奴でさえ相手にしなくてはいけない楽団、なんてめんどくさい存在なんだろうか? 「まあ、ここで殺すけどな」 『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)そうシリアスに言った瞬間、指で作った銃をグレゴリオに向けてバンと撃つ。 「それじゃ、リベンジいかせてもらおうか。キャッシュからの――パニッシュ☆」 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)はカレー皿を指でくるくる回しながら言う。 「二度殺すってのもめんどくさい。まだ生きてる楽団もめんどくさい」 それでも。 「グレゴリオ、ぶっとばーす」 「威勢の良いリベリスタ共なんだなぁ~」 「いや、私は攻撃しないけどね」 「あ、そう……なんだなぁ?」 小梢は背中に隠したルーメリアを見た。ふと笑みが零れる、その笑顔に小さな少女は顔を斜めにしながら笑い返してくれた。 ――護りぬく事こそが、パーティを勝利へ導く礎である事を何より知っていたから。 「めんどくさいから、さっさと終わらして、帰る」 もう、本気を出す時じゃない。 ● 『ぼっち』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は『アメジスト・ワーク』エフェメラ・ノイン(BNE004345)の加護を受けて走る。 「なんか気持ち悪いよ……楽団」 大丈夫なのかとエフェメラは舞姫を見た。だがその舞姫はサムズアップしつつ駆けていく。 攻撃に狙うのは、アンデット。彼女はアッパーユアハートを放ち、そして自分へと矛先を向けさせた。 「あと、頼んだよ――」 そう言って舞姫はアンデットの群れの奥へと消えた。 ぎちり、踏み込んだ足の筋肉が吼える。砂を蹴散らして、駆けたいりす。 再び霊弾を放とうとするエルヴィーノだった。その後方から大きく駆け廻って来たいりすの影が太刀とリッパーズエッジを横に振り被って表れた。 『おや、これはいつの間に?』 「喋る必要無し。ぶちのめす」 光の飛沫と砂塵を切り裂いてナイフは駆ける――その先、エルヴィーノの首を狙ったアル・シャンパーニュ。だがそれが薙ぎ払ったのはアンデットだった。庇って頭が綺麗にミンチになって吹き飛んだ、その鮮血が舞うその奥――いりすの灰色の瞳はエルヴィーノの出した怨霊に飲まれた。 『本当はあちらの回復手を狙いたかったのですが……プレゼントです』 「舞姫さん!! いりすさん!! 駄目ぇぇええ!!!」 叫んだルーメリア。両手の中、光を集めた。 けして誰一人、戦闘不能にはできない――楽団の奥の手には危険な『ファラリスの牡牛』があるから。 「神様、仏様、うーうん、なんだっていい!! 仲間を、大切な皆を助けてなの!!」 少女の願いは単純だが純粋。聞き届けた異界の神って奴は祝福を与えた。祈り手で願うルーメリアの後方から現れた白い羽は、リベリスタの傷を治し尽くすために召喚されたもの。 だがその手前で小梢はアンデットの拳を受け止め、ルーメリアへの被害を最小限にしている。編成の大きな要、回復手だ。此処で早々に葬送されては困るのだ。 ――そして再びの衝撃波と爆音が響いた。 「ルメ子さん」 「?」 ルーメリアへ向き直った小梢。その小さな彼女の身体を抱きしめ、背中で衝撃を受け止めれば軽く背中の服が破けた。 「なんか嫌な音したのおお! 大丈夫? 小梢!!」 「……きちんと、護るよ。だから、帰ったら美味しいカレー作ってください」 「そういえば、熾喜多の死体はみつけれた?」 「その質問にはノーコメントで対応させて頂くんだなぁ~」 耳をほじって不真面目に葬識の声を跳ね返すグレゴリオ。 脳にこびり付いた程に覚えていた。熾喜多一族の墓を暴いて、それを使役せんと挑発したグレゴリオの発言を。見つけてくれたらそれはそれで、一度愛(ころ)した人を再び愛せる絶好の機会だったが――。 「けどね--さんはここにいるからさ」 「何を言ってるんだなぁ?」 グレゴリオに、いや、その場に居たリベリスタでさえ聞き取れない、名前らしき言葉。いつも二人称を『ちゃん』呼びする彼が珍しく『さん』呼びをしたのはそこに意味があるからなのだろう。 クラッシュシンバルに吹き飛ばされて砂に埋まった身体を起こして、葬識は己の武器――逸脱者ノススメの刃先をグレゴリオへと魅せる様に向けた。 愛しい人がそこに居る武器。武器こそ愛おしい彼女。だから居る訳が無い、熾喜多の――母親の死体なんて見つかる訳が、無い!! 彼はエルヴィーノを庇っていた死体をその鋏で強引にふき飛ばし、頭を踏みつけ、首を狩る。 「呼んでよ、愛する人をもう一度」 大衆は彼を何処まで理解できるのか? きっと武器たる母を架空とか、幻想と呼ぶのだろう。しかしだ、彼にとっては現実。 「呼び出されたなら、また魂ごと燃やし尽くすからさぁ!!」 彼が肯定する限り、幻想は事実と成る。 「怖」 『怖』 ……えーっと、なんか触れてはいけない事に触れた気がする。と、グレゴリオとエルヴィーノの背筋に寒気が走った。 その葬識の頭上を闇紅が高速で跳躍し、飛び越えていく。そしてエルヴィーノへと小太刀の刃先を向けた。 闇紅が翳した刃先はエルヴィーノの喉から胸まで縦一閃。瞬時に闇紅は再び跳躍してルーメリアのもとへと戻った。 「ゾンビ斬っても反応無いし……」 痛いとも、苦しいだの言わない。闇紅が聞きたいのは断末魔だ。死に際に振り絞る、生への執着が聞きたいんだ!! 「そうでも無いかもなんだよね」 つまらないと吐き捨てた闇紅だった。だが葬識がへにゃりと笑いながらふにゃりとエルヴィーノへ指さした。 『わ、わわ、わわあ、わわわわわわたくしの身体がキッサマァアアアアアアア!!!』 見てみろ、この慌てふためくナルシストの光景。 「あら、意外に愉快じゃない」 これなら少しは遣り甲斐が有ると云うもの。だが油断してはならない。フルートの音色が高くけたたましく、その音色の音響は闇紅――では無く、小梢の三半規管を支配した。 沖縄には美味しいものが沢山ある。ソーキそばとかゴーヤチャンプルーとか。 折角此処まで来たのだ、暑いし、海綺麗だし、観光がしたい!! そして何より。 『何、椿。マリアについて来たの? でも沖縄行く事になっちゃったじゃない、勝つまで帰るんじゃないわよ、良い?』 そう強気を言いながら、娘は寂しそうな顔をしていた。それを思い出した椿の腕がふるふる震えた、怯え? 否、武者震い。 「――だから何があっても、はよ戦闘終わらせなあかんねん!!」 「落ち着け、椿」 ユーヌがつっこんだ。 人一倍帰る理由が重い椿が両手の指に挟んだ札八枚を持ってグレゴリオへと突っ込んだ。舞姫がアンデットを引きつけている今こそチャンスである。 「ラフテーとかはよ、食べたいんやああああ!!!」 「さっき食べたんだなぁー」 放った札、それがグレゴリオの周囲を囲むようにして点となり、線で繋がって檻を作る。 「そこでしばらく、大人しくしとき!!」 「ヒュー! かっこいいね組長!」 「組長言うなや!!」 おそらく翔護は三高平に帰ったら、体育館裏に呼び出されて椿におっと、この先は言えない。 話は戻って、翔護はそれに続いて攻撃を行った。 「澄んだ海と高い空、優しい風、そしてオリオンビール! ウチナーの良さを思い知ったならもうやめるんだ!」 だが翔護の狙いはグレゴリオでは無く、エルヴィーノ。今まさに顔が傷ついて発狂している彼の腕目掛け。 この後、飲みに行く予定とかあるからね、負けられないね。…って、もうちょっとまともな理由で負かされたいけど!! 「二度ある事は三度あるっていうけど、楽団に三度目は与えないZE☆」 『また貴様ですか、この死にぞこないがああああ!!』 トリガーを引くキャッシュ、精密な射撃を行える魔弾のパニッシュ。翔護の闘志――不穏を奏でる楽器と、その奏でる腕を貫いて弾丸は駆ける。 ボン! 弾けた、その腕。 『な、えひ?!』 「終わり、終わりだね、終わるんだよ……もう一度黄泉の旅路に――」 消えた両腕を見つめたエルヴィーノの背後だった、いりすが腕をクロスさせて両手の刃を首の動脈と静脈を挟む。 『き、き、きさっ』 「逝ってらっしゃい」 ボン! 次に弾けたのはエルヴィーノの頭部。目を見開き、それはそのまま砂浜に転がる。 「あとは、グレゴリオちゃんだけになったね、さびしんぼだよね……ん?」 「葬識さん、なんか足についとるで」 「やだーとってよ依代ちゃん!」 だが、エルヴィーノの胴体部はまだ沈黙した訳では無い。その腕は葬識の足首を掴んでグレゴリオへの進行を止めるのだ。 それはエルヴィーノの意識では無く、グレゴリオの命令――死してなお、相棒の御身でさえ自らの肥やしと成っているのだ。既にそれを除去するために動いたユーヌ。 「見るに堪えないな、餓鬼道へ落ちる予行練習か?」 その腕、否――その胴体のためにユーヌが不穏しか見えぬ未来を占う。 「残念だが……悪魔の正位置だな」 その意味――堕落。そして極めて危険な暴力の象徴。ユーヌが指を親指だけ立て、拳を握る。それの親指を下に向けて一言。 「虚無に消えろ、二度と這い上がれない闇に囚われてな」 ボン! 弾ける、エルヴィーノの身体。追撃のエフェメラのフィアキィの出した炎と共に。漆黒に彩られた運命、それは正位置の悪魔(ユーヌ)の通りになったという――。 ● 残ったのはグレゴリオだけか――取り巻いていたアンデットも舞姫とエフェメラのおかげで掃討が叶ったという所。 だが楽団はまだ諦めていない。いや、今日死ぬ諦めならついている、ならば。 「最終公演くらいは華々しく――といった所なんだなぁ」 ――衝撃、耳のすぐ横で爆発でも起きたかのような耳鳴り。 「な、なんやぁ!?」 椿の瞳には見えた、自信の放った札が粉々に千切れた事を。轟音目覚まし? 否、ただ呪縛を力いっぱい抜けただけ。 そして彼は口をあんぐり開けていた、エルヴィーノの頭部を捕食するのか、咄嗟に頭部の前に身体を置いた葬識。 「いっただっきまーすぅ」 一瞬――その一瞬で、葬識の左肩が無くなった。激痛に意識が眩み、その場に倒れて彼のフェイトは彼を死から引きとめる。 回復!! そう翔護が後衛に振り返った、そこではエルヴィーノの置き土産が不運を呼び起こしている最中だ。 「こ、小梢……ッ」 魅了に侵され、小梢の十字の光――その矛先がルーメリアへと向く。 ……まあ、今まで守ってきてくれた彼女だ。彼女に攻撃されたってけして恨まない、そう衝撃に備えたルーメリア。 「思った通りになった、それだけよ」 闇紅が寸前でその攻撃を受け止め、回復手に傷を負わせる事を避ける。闇紅が苦い顔をした、そんな時だった、ふと背後から眩しい光が溢れた。それは温かく――。 友のためだった。 攻撃されても良かった。 護ってきてくれた彼女。大好きな、彼女のために。 「今度は、ルメが護るから!」 ルーメリアは聖神の光を、放つ――。 「心配して損したな」 闇紅の背後にはユーヌの影人が待機していた。結論的には回復手を護る壁は厚かった。 ルーメリアの加護で立ち直る前衛達。 「ぶっちゃけ不味そうだけど、小生を差し置いて暴食とか生意気だし」 未だ血肉の味をその舌で味わう豚に向って鰐は怒りを吐き、その瞬間いりすの身体は消えた。 次に姿を現した時にはグレゴリオの背後を取る――豚ならその動きに反応できないでいる。 「シンバルって、食べると美味しいらしいよ。食べてみたらどうかしら?」 その灰色の瞳は獲物を見つけた輝き。喰らい尽くすための栄華。 「――ッ!?」 流石楽団、指揮せし亡者がいなければこんなもの? 光と砂塵、再びそれらを振りまいて、いりすは二刀を横に一閃しては後頭部の肉をそぎ取った。 「飴玉なら何個でもやれるぞ?」 ユーヌはポケットから取り出した飴をひとつふたつと地面の砂に落した。けど。 「なに、空腹ならば直ぐ消える。空腹を訴える脳髄も胃も口も纏めてな」 再び占うそれはエルヴィーノ同じく、悪魔の正位置。それに続いてリベリスタは総攻撃を仕掛けた。 「残念やったなぁ、混沌事件の次は楽団壊滅事件やんな」 椿は再び札を放った――それがまた点と線で結ばれ――るその前に。 ガチンッ!! 「俺様ちゃん痛いの嫌~」 その頑丈な歯が葬識を再び狙っていた。だがそれは寸前で回避する。その最中に展開された椿の印。 「さ、今のうちやで、派手にやらんかい」 跳ね飛んだ闇紅――鋏を開いた葬識――キィに願いを、炎を生み出すエフェメラ。 「やれやれ」 翔護が、引き金を引いた。 一度負けた屈辱は、此処で晴らす覚悟を胸に。 二度と亡者を跋扈させぬ誓約と共に。 三思、楽団との殺し合いに勝利するために。 「ごちそうさま」 いりすの言葉を最後に――グレゴリオの身体は濁った血を振りまいて倒れた。 ● まだ。 まだ、負けてない。 まだ、死んでない。 まだ、戦える。 どこだ、シンバル。 しかしシンバルは闇紅が踏みつけていて引き寄せる事が叶わない。 「どうやら、お迎えが来たみたいです」 何を――言っているんだ。 リベリスタには見えていた。伸びてきた黒き触手が。 「所詮はどんなに頑張っても君は一人だよ。地獄の猛火に焼かれておいでよ。 もう少しこの世界を楽しんだら、俺様ちゃんも。地獄(そっち)に行くよ」 あ、あ、あ。 ――ファラリス。 あ、ああ、ああああ。 ルーメリアが耳を押さえた。 ああああああああああ――ッ!!! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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