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【四月馬鹿】暗黒邪悪王VS聖なる戦士たち


 余の名は暗黒邪悪王ザラーム。
 伝説の邪剣を携え、絶大な魔力をもって世界を暗黒と氷に閉ざす破壊の化身なり。

 近頃は小賢しい正義の使徒どもが余の命を狙っているようだが――
 矮小なる人間如きに、余の覇道を阻むことなど出来はせぬ。
 彼奴等の剣や魔法など、この身に纏う闇のローブで打ち払ってくれよう。

 さあ、余を討ちに来るが良い。聖なる戦士たちよ。
 この深き森を、貴様らの墓場としてくれる。


「皆、ゲームは好きかね。ほら、RPGとかそういうの」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に、『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)はそう問いかけた。
「……まあ、何でこんな話をするかというと。今回の敵が、ファンタジーRPGに対する憧れから生まれたE・フォースなんだな。自分たちを、そこに登場する敵キャラだと思いこんでるっていう」
 それだけなら、普段のエリューション退治とそう変わるところはないのだろうが。
 生憎、話はそこで終わらない。
「E・フォースが五体いるが、その全てがアーティファクトの力で強化されている。
 これがちょっと厄介というか、面倒な点でな……」
 頭を掻きながら、数史は説明を続ける。
「アーティファクトは『四月馬鹿』。鳥に似た感じの人形だが、
 こいつを持っていると『周囲で起こる現象を、自分の望むシチュエーションに変える』ことができる。
 さらに、そのシチュエーションにそぐわない行動は全て無効化されてしまうんだ」
 現在、『四月馬鹿』を所有しているのは、ファンタジーRPGの敵キャラになりきったE・フォースだ。
 つまり、どういうことかというと。

「自分たちもファンタジーRPGの登場人物になりきって戦わないと、奴らに傷一つつけられないってこと」

 E・フォースのボス格は、自らを『暗黒邪悪王ザラーム』と名乗っている。
 彼は配下たる四人の魔道士を従え、深き森にて正義の使徒たる『聖なる戦士たち』と戦うべく陣を敷いている……ということらしい。
「奴さんが『聖なる戦士たち』とやらの戦いを望んでる以上、それに付き合ってやらないといけない。
 ファンタジーRPG風の格好をしてみたり、正義の使徒らしい台詞を言ってみたり、
 方法は問わないが、どうにかして『聖なる戦士』と認められない限りは、まったく勝負にならんだろう」
 逆に、『聖なる戦士』に完璧になりきることができれば、E・フォースに対する攻撃の精度や威力が上がるかもしれない――そう、数史は言った。
「『聖なる戦士』として認められても、E・フォースはそれなりに強い。くれぐれも油断はしないでくれ。
 あと、『四月馬鹿』についても破壊か回収をよろしく」
 手の中のファイルを閉じ、数史はどうか気をつけて、とリベリスタ達に声をかける。
 その後、彼は思い出したように呟いた。
「そういや、もう四月なんだなあ……早いもんだ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:宮橋輝  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月09日(月)00:30
 宮橋輝(みやはし・ひかる)と申します。
 
●成功条件
 E・フォースの全滅と、アーティファクト『四月馬鹿』の回収あるいは破壊。

●アーティファクト『四月馬鹿』
 鳥のような外見をした人形です。
 『周囲で起こる現象を、所有者の望むシチュエーションに変える』機能があり、そのシチュエーションにそぐわない行動は一切が無効化されてしまいます。

 ※『四月馬鹿』は暗黒邪悪王ザラームが所持していますが、彼を倒さない限り回収・破壊は不可能です。

●敵
 E・フォースが合計5体。
 ファンタジーRPGに対する憧れから生まれた存在で、自らをその敵キャラだと思い込んでいます。

【※重要※】
 E・フォース達はアーティファクト『四月馬鹿』の機能で強化されています。
 『ファンタジーRPG』らしい装備で、『悪と戦う聖なる戦士』らしい振る舞いをしない限り、一切の攻撃・行動がファンブル扱いとなります。
 (ただし、銃などの装備でも『ファンタジー世界における説得力(例:これは魔法を撃ち出す道具だ、等)』があれば効果を発揮できる可能性があります。要はアイディアと工夫次第です)   

 格好だけ、台詞だけでも行動は可能ですが、なりきり度が高ければ高いほど活躍できる可能性が上がります。
 
■暗黒邪悪王ザラーム
 世界を闇と氷に包むことを画策する邪悪の王(という設定)です。
 時折(3~4ターンに一度)二回行動を行います。

 【闇のローブ】→P:回避力・物理防御力・神秘防御力アップ。全てのバッドステータス無効。  

 【邪悪王の剣】→物近単[必殺][致命]/クリティカル補正高め
   禍々しい剣で対象一体に強烈な一撃を加えます。      
 【氷の矢】→神遠単[氷像]
   呪文とともに氷の矢を放ち、対象一体を氷に封じます。
 【氷柱落とし】→神遠範[弱点][氷結]
   巨大な氷柱を召喚し、範囲内の対象を攻撃します。
 【凍結衝撃波】→神遠全[ブレイク][凍結]
   凍てつく冷気を放って全ての敵にダメージを与え、強化を無効にします。

■魔道士×4
 暗黒邪悪王ザラームに仕える魔道士たち(という設定)です。

 【刃の網】→神遠単[麻痺]
   魔力で鋭い刃の網を生み出し、対象一体を絡め取ると同時にダメージを与えます。
 【炎の矢】→神遠単[火炎][隙]  
   呪文とともに炎の矢を撃ち、対象一体を炎に包みます。

●現場
 森の中。
 実はあまり人里から離れていませんが、アーティファクトの効果もあって一般人はまず近寄りません。
 昼夜を問わず薄暗い場所なので、何らかの対策は必要でしょう。

●装備について
 仮装に必要な衣装や小道具などは、アークの協力である程度揃えることが可能です。
 プレイングに記載していただければ(設定等が無茶でない限り)採用します。

●補足
 4月1日の出来事になりますが、他シナリオとの時間軸は深く考えなくてOKです。
 細けぇことはいいんだよ、の精神で。
 ネタっぽい感じですが、敵はそれなりに強いので油断されませんよう。

 情報は以上となります。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
マグメイガス
ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
クリミナルスタア
セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)
インヤンマスター
小雪・綺沙羅(BNE003284)
覇界闘士
鳴神・暁穂(BNE003659)
プロアデプト
尾宇江・ユナ(BNE003660)


 鬱蒼たる深き森を、八人の戦士が歩む。
「ここがザラームの棲家か……」
 超古代文明の遺跡で入手した魔法の筒が放つ光で周囲を照らしながら、『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)が呟いた。只人が立ち入ることの叶わぬ魔の森。ここに至る道のりは辛く、厳しいものだった。飛行戦艦の艦長を務める終がいなければ、辿り着けなかったに違いない。
「とうとう、此処まで来たんだな……この先に、“奴”が居る」
 『聖炎の導き手』葛木 猛(BNE002455)――戦士タケルは“聖炎”の祝福を受けた瞳で闇を見通し、邪悪王ザラームの軍勢に滅ぼされた自らの故郷を想った。家族と友人を殺され、復讐の炎に身を焦がしていたタケル。しかし、仲間達との出会いが彼を変えた。
(復讐じゃない……もう、二度と大切な物を失う事が無い様に俺は戦う。見ていてくれ、皆……)
 静かな決意を胸に秘めるタケルの横顔を、『雷を宿す』鳴神・暁穂(BNE003659)が複雑な表情で眺める。
 雷を操る魔拳士である暁穂は、邪悪王に唯一対抗できるとされる“聖炎”の力を宿すタケルに、羨望とも嫉妬ともつかぬ感情を抱いていた。
 龍を模した金の髪飾りに、金糸で龍を刺繍した白の法衣を纏った『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)が、煌びやかな大正琴にも見紛う武具を手に祈りを捧げる。彼女は、四神を統べる黄龍に選ばれし巫女だった。
「ついにここまで辿り着けた……。黄龍よ、最後まで我らを導き給え」
 手に掲げたランプが、進むべき道を照らし出す。
 やがて、戦士たちは暗黒邪悪王ザラームのもとへと辿り着いた。
「てめーらがザラームと四天王か!」
 眼前に立ち塞がる強大な敵を前に、終が叫ぶ。
 禍々しき邪剣を携え、四天王と謳われる魔道士たちを従えたその姿は、まさに邪悪の王と呼ぶに相応しい。
『とうとう、余を討ちに来たか。小賢しき正義の使徒よ――』
 地の底から響くような低い声が、戦士たちの鼓膜を震わせる。
「ついに見つけたわ、暗黒邪悪王ザラーム!
 あんたの野望も今日ここまで。わたし達があんたを打ち倒すわ!」
 気圧されまいと声を張り上げる暁穂の傍らで、名乗りを上げようとした『小さな街の小さな勇者』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)が、寸前で自らを押し止めた。
 英雄の子として生まれながら盗賊に身を落とし、故郷の小さな街で厄介者扱いされていた自分。そんな自分が聖なる戦士の一行にいて良いものかと、セシウムは常に自問を続けていた。
 だが、志を同じくする頼もしき仲間達のためにも、この戦いに敗れるわけにはいかない。彼は勇気を振り絞り、邪悪王に相対する。
 戦いに向けて身構える仲間達を横目に、道化師の衣装を纏った『進ぬ!電波少女』尾宇江・ユナ(BNE003660)――“遊び人おうえ”がひらひらと踊っていた。どうやら賢者への転職は決戦に間に合わなかったらしい。
 やや後方に立つ『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)が、邪悪王ザラームを見て表情を翳らせる。闇の魔術師であった彼女は、かつて邪悪王の配下として聖なる戦士たちと何度も矛を交え、そして正義の心に目覚めた。そして今、元の主人である邪悪王を討つべく、彼の前に立っている。

「一応聞くぜ、ザラーム。……戦わずに退く気は、ねえんだな?」
 前に進み出たタケルが、邪悪王に問う。
 以前の彼であれば、邪悪王の姿を目にした瞬間に殴りかかっていただろうが――今は、不思議と落ち着いていた。これも、仲間達のおかげかもしれない。
『――退く? 余が退くだと?』
 しかし、邪悪王はタケルの言葉を一笑に付した。
『笑わせるわ。如何に聖なる戦士といえど、たかが八人で何ができる!』
「私達は八人だけじゃない」
 それに答えたのは、『絆の戦士』犬束・うさぎ(BNE000189)。
「見ろ! 守ってくれた人、支えてくれた人、愛してくれた人……心を繋いだ皆、皆が一緒なんだ!」
 うさぎが示した先、戦士たちの背後に幾つもの人影が浮かび上がる。

 自らの命をかけてタケルを逃がし、邪悪王に滅ぼされた“聖炎”の民。
 偉大な英雄として讃えられた、セシウムの父。
 四天王の襲撃により命を落とした、終の友。
 
 仲間達の大切な人たち。
 これまでの旅路で、縁を結んだ人たち。
 聖なる戦士たちに世界の命運を託し、散っていった人たち。 
 彼らの想いは、魂は、常に自分達とともにある。

「始祖の誇りの為、部族の明日の為、そして皆の為! お前達を倒す!」
 かくて、暗黒邪悪王と聖なる戦士たちの最後の戦いが幕を開けた。


「暗黒と氷の化身を称する者よ。黄龍の巫女としてそなたに引導を渡してくれよう」
 綺沙羅が、黄龍の導きにより五行の護りを施し、仲間達の防御力を高める。
 彼女の援護を受けて、四人の戦士が四天王の元へと走った。
 まずは、邪悪王の脇を固める彼らを討ち破らなくてはならない。

 神速で駆ける終が、黄のローブを纏った四天王の前に立つ。
「……雷雲のキュムロスだな」
『いかにも』
 迷わず頷いた魔道士――雷雲のキュムロスに対し、終は二本の短剣を構える。
「お前の相手はオレ様だ。お前に殺されたダチの仇……ここで討たせて貰うぜ!!」
 淀みのない連続攻撃が、キュムロスの動きを封じ込めた。
 続いて、セシウムが黒のローブの魔道士を真っ向から見据える。
「さあ、かかってこい悪の魔導士め……!」
 その素早さをもって距離を詰めた彼は、魔力の眼光で敵を射抜いた。
 魂を貫く衝撃を受けて、黒いローブが揺れる。
 その反対側では、タケルと暁穂が、赤と青のローブを纏う魔道士にそれぞれ向かっていた。 
「行くぜ、先ずはお前らからだ……!」
『貴様は……!』
 “聖炎”の一族の生き残りを見て驚愕に目を見開く赤の四天王に、タケルの燃え盛る拳が打ち込まれる。
 わずかに慄く青の四天王の前で、チャイナドレス風の青い武道着に身を包んだ暁穂が、流れる水の如く攻防自在の構えを取った。 
「魔道四天王と言えど、正義の前には散るしかないってこと、思い知りなさい!」
『人間めが……!』

 仲間達が四天王と一対一の戦いを進める中、うさぎが邪悪王に立ち向かう。
『余に一人で挑むとは愚かな』
 繰り出された邪剣の一撃を楽器に似た奇妙な形状の武器で辛うじて受け止めると、うさぎは軽い身のこなしで邪悪王の背後に回り、死の刻印をその身に刻みつけた。
 狙いは、邪悪王の攻撃を自らに引きつけ、仲間達を守ること。
 うさぎは平原に生きる部族の戦士で、トーテムの導きを受けて正義の使徒に加わった。
 初めのうちは、肌の色も、文化も異なる彼らと旅をすることに不満を抱いたが、それを超えて絆が結ばれた時、うさぎは真の戦士として目覚めたのだ。
「一人一人は矮小かも知れない。けど、私達は一人じゃない!」  
 今の自分には、笑い合える友がいる。背中を預けられる仲間がいる。

 後方から仲間達の戦いをフォローするウェスティアが、かつての主に向けて語りかけた。
「ザラーム様、もう人間と争うのはやめよう……?
 この人達と旅を続けて気付いたよ、人間と私達は手を取り合えるって」
 闇の魔術師として正義の使徒たちと戦ってきた彼女が、聖なる戦士として認められたように――両者は決して、相容れぬ存在ではないはず。
「だから、あの闇と氷の世界に帰ろうよ。
 すぐには無理でも、時間をかけてゆっくり贖っていけるよ……」
 しかし、ウェスティアの真摯な言葉に、邪悪王はまったく聞く耳を持たなかった。

『愚かな! かつて余のもとで一軍を担った将が、人間どもにそこまで染められたか!』

 ウェスティアを睨んだ邪悪王が、怒りとともに凍てつく衝撃波を放つ。
「そんな……黄龍の加護が……!!?」
 五行の護りによる防御結界が破れたのを目の当たりにして、綺沙羅が呻くように呟きを漏らした。
 冷気が吹き荒れ、戦士たちの身を凍らせる中、遊び人おうえが陽気に踊る。
「そ~れ はっするはっする!」
 彼女を中心に輝いた光が戦場を包み、仲間達を蝕む冷気を打ち払った。

 邪悪王、そして魔道四天王との戦いは激化の一途を辿る。
 聖なる戦士たちの力をもってしても、邪悪王と四天王の魔力に対抗するのは簡単なことではなかった。
 刃の網が戦士たちの四肢に絡み、炎の魔力を孕んだ矢が撃ち込まれる。
 邪悪王の凍結衝撃波が激しい吹雪を伴って吹き荒れる中、うさぎが叫んだ。 
「例え吹雪の中でも握った手は暖かい。繋いだ心は凍えない。お前なんかに凍らせられるもんか!」
 うさぎの言葉に、綺沙羅が頷く。
「氷は破滅の象徴ではない。再生への眠りの象徴である。
 破滅しか知らぬ愚か者ども、玄武の聖氷に打たれるがいい……」 
 大正琴に似た武具に添えられた巫女の両手が、雨のような音を奏でる。
 解き放たれた呪力が天に届いた瞬間、邪悪王と四天王の頭上に聖なる氷の雨が降り注いだ。
「響け、私の歌声……どこまでも……!」 
 ウェスティアが、清浄なる歌声を響かせて戦士たちの傷を癒す。
 今の彼女は賢者――攻撃と回復、双方の魔術を操る者。
 闇の魔術師であったウェスティアは、仲間達と行動をともにするうち、光の魔術を行使する力を得た。 
 それこそが、彼女が正義に目覚めた証。

「もうどうにでもな~れ」
 くるくると舞う遊び人おうえが、眩い光を輝かせる。
 刃の網が破れ、炎と氷が消え去れば、聖なる戦士たちを阻むものは何もない。
 好機と見た四人の戦士は、相対する四天王に向けて一気に畳みかけた。

 終が、黄のローブを纏う雷雲のキュムロスに向けて刃を閃かせる。
「積乱雲が怖くて飛行戦艦乗りなんざやってられるか!!」 
 もっとも、“雷雲”を名乗る割には炎しか出してない気もするが、深く考えてはいけない。
 ノリと勢い大事。すごく大事。
 音速で繰り出された連続攻撃の前に、雷雲のキュムロスが討たれる。
 炎の矢で浅からぬ傷を負ったセシウムが、超古代文明の産物たる魔導銃を構えた。
「隠しておきたかった奥の手なのですが……!」 
 魔力の弾丸が、獣の唸り声を上げて黒の四天王を襲う。
 至近距離からの一撃が黒いローブの中心を穿ち、魔道士の心臓を貫いてこれを屠った。
「“聖炎”の力……見せてやる!」
 燃え盛る“聖炎”を纏ったタケルの拳が、赤の四天王を焼き尽くす。
 青い武道着の裾を翻した暁穂が、己の身すら削る激しい雷を呼び起こした。
 同じ魔拳士として、タケルの前で負けるわけにはいかない――。
「――秘技、剛雷拳!!」
 荒れ狂う雷を宿した拳が、最後の四天王を打ち砕いた。


 四天王を討ち果たした戦士たちは、残る力を邪悪王に結集する。
「苦戦してるみてぇじゃねーか! オレ様が来たからにはもう大丈夫だぜ!!」
 ただ一人で邪悪王を抑えるうさぎの元に駆けつけた終が、不敵な笑みを浮かべて邪悪王に斬りかかった。
 セシウムが魔導銃から魔力の弾丸を撃ち、二人を援護する。
『小癪な。その程度で余は倒せぬ!!』
 激しく吹き荒れる邪悪王の冷気に、暁穂の足が一瞬止まった。
「なんておぞましい寒気……っ、これが、暗黒邪悪王……!」
 己の身が震えているのを自覚して、彼女は自分を叱咤する。
 これは、ただの寒さ。タケルの前で、敵に恐れをなす醜態は見せられない。
 暁穂は己に喝を入れると、果敢に邪悪王との間合いを詰めた。
「いくわよ、雷の力、見せてあげるわ!」
 彼女の剛雷拳が、邪悪王の胴に打ち込まれる。

 一方、遊び人おうえは。
「おうえ は くちぶえを ふいた! しかし なにもおこらなかった!」
「おうえ は あそんでいる!」
「おうえ は じばくボタン を おした! しかし なにもおこらなかった!」
 実に遊び人らしい行動で、自らの集中をこっそり高めていた。
 これぞ、清く正しい(?)遊び人の鑑である。
 常に真面目に戦う遊び人など、遊び人とは呼べまい。

 閑話休題。
 聖なる戦士たちは、邪悪王と互角の戦いを繰り広げていた。
 しかし、闇と氷を統べる邪王の魔力は四天王とは桁違いに強い。
 立て続けに放たれる氷と冷気が、聖なる戦士たちを苦しめる。
 さらには、邪悪王の全身を覆う闇のローブが、戦士たちの攻撃の威力を悉く減じていた。
「闇のローブに頼ったって無駄だ。だってお前を倒すのは剣や魔法じゃ無い。
 皆の心、ニンゲンの! 絆の力なんだから!」
 邪悪王の猛攻を凌ぎ、今もその前に立ち続けるうさぎが、真っ直ぐに声を放つ。
『強がりを抜かすな、人間が!』
 それを一笑に付した邪悪王は、ウェスティアとタケルが互いに視線を交わしたことに気付かなかった。
「ウェスティア。俺の力と、お前の力……見せてやろうぜ!」
 タケルの言葉に、ウェスティアが迷いなく頷く。
「私はこの仲間達と旅をし、力を合わせることの大切さを知ったよ。
 だから、もう闇に負けたりはしないの……!」
 二人が炎を呼ぶのを見て、うさぎを始めとする前衛たちが邪悪王から離れる。

「父さん、母さん……皆、俺に力を貸してくれ……!
 暫くの間でも良い、この戦いの間だけでも奴の力を相殺する炎を……!」
「これが、仲間と共に在る事で得た力だよ……!」

 同時に放たれた炎が、邪悪王を中心に激しく炸裂する。
 闇のローブが聖なる炎に包まれ、その防御力の殆どを消し去った。
 状態異常を無効にする魔力こそ残れど、今の邪悪王は丸裸に等しい。 

『おのれ……矮小な人間風情がァァァ!!』

 激昂した邪悪王が、禍々しき邪剣を暁穂に振り下ろす。
 並の人間であれば全身を両断されていただろう強烈な一撃に、聖なる戦士たる暁穂は己の運命を捧げて耐えた。
「わたしだって、簡単には倒れないわよ……」
 魔拳士の誇りを胸に立ち上がり、再び両の拳を握り締める。
 駆け寄った綺沙羅が、四神を統べる龍に祈りを捧げて彼女の傷を癒した。
「黄龍よ……その慈悲もて戦士に癒しを……」

 闇のローブを封じられた邪悪王は、聖なる戦士たちに一層激しい攻撃を加える。
 巨大な氷柱の一撃を辛くもかわした終が、地を蹴って邪悪王に斬りかかった。 
「正義は必ず勝つ……!! 貴様にそれを教えてやらあ!!」
 続けて、ウェスティアが自らの血から闇色の鎖を具現化させる。
「本当はもう使いたくなかったけど……この禁呪も、今なら使いこなしてみせる……!」
 濁流の如き勢いで襲い掛かった黒き鎖が、邪悪王の全身を蝕んだ。
「仲間達が支えてくれると知ったから、もう闇に堕ちる事も怖くないよ!」
「――皆の想いが力をくれる限り、私達は戦える!」
 ウェスティアに大きく頷いたうさぎが、邪悪王に死の刻印を打つ。

『これが正義の使徒の力……しかし、余は滅びぬ!』

 邪悪王が、凍てつく衝撃波をもって戦士たちを薙ぎ払おうとした、その時。
 いつの間にか接近していた遊び人おうえが、邪悪王の死角に立った。
 
 ――おうえ は こけた! かいしんの いちげき!

 遊び人の運か、集中の賜物か。
 彼女が転ぶと同時に繰り出された一撃が、邪悪王の弱点を的確に打つ。
 その隙を逃さず、戦士たちは一斉に攻撃を加えた。

「ザラームよ、年貢の納め時じゃ……。己が非道のつけをその身をもって購うがいい……!!」
 綺沙羅が、軽やかな音を響かせて鴉を召喚する。
「朱雀の眷属、黒点の鴉よ。邪悪を滅せよ!」
 その嘴が邪悪王の片目を射抜いた瞬間、暁穂が拳に荒れ狂う雷を宿した。
「氷を溶かすのが炎なら、闇を切り裂き払う雷もあるってこと、教えてあげる!」
 激しい雷撃が、薄暗い森を蒼く照らす。
 セシウムの魔導銃が、邪悪王の残る瞳を撃ち抜いた。
 そこに、“聖炎”の加護を受けしタケルが拳を繰り出す。
「決着を着けるぜ、ザラーム! ……こいつで、終わりだぁぁぁぁっ!!」
『ウ、ウォォオオオオオオオオオ――――ッ!!!』
 炎に包まれた邪悪王が、断末魔の絶叫を上げる。
 長きに渡る戦いの決着に、セシウムの声が響いた。
「これが、人間の絆の力だ……!」


 暗黒邪悪王と魔道四天王は倒れた。
 ウェスティアは仲間達に別れを告げ、そっと踵を返す。
「私のこの手は汚れすぎているから……皆と一緒に戻ることは出来ないよ。皆……元気でね」
 ノリノリに演技しすぎて恥ずかしくなったとか、いや、そんなことは。

 あとは、忘れちゃいけないお約束。

「おうえたちは れべるが あがった! せつなさが5あがった!」

 はい、ありがとうございます。


 アークの資金提供によるコスプレ大会、これにて終了。
「楽しかったー☆ 折角だし、みんなで記念写真撮ろう☆」
「英雄……聖戦士……心地よい響きでした」 
 持参した一眼レフを取り出した終に、セシウムが満足げに頷く。
 たった一日だけの幻でも、全力で楽しんだ者が勝ちである。 
 ゲーマーを名乗る暁穂もまた、やりきった清々しい表情をしていた。

「さて、『四月馬鹿』を回収しましょうか」
 うさぎの言葉にタケル――猛が頷きを返す。
 アーティファクト『四月馬鹿』は、邪悪王の立っていた場所に落ちていた。
「使用者側のルールを押し付けられるのは結構便利」
 強力な敵との決戦に使えないか、綺沙羅が考えを巡らせる。

 
 後の調査で、『四月馬鹿』はエイプリルフールにしか効果を発揮しないことが判明するのだが――
 それは、また別の話である。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
数史「お疲れさん。……ま、たまにはこんな任務もあるってことで。
   ゆっくり休んで、次の仕事に備えてくれ」

 今回はKSKST発案の【四月馬鹿】企画に乗っかってみました。
 皆様の設定があまりに凝りすぎてて、ほぼ全編そちらの設定で執筆することになりましたが、書いてて非常に楽しかったです。
 まさかステータスシートから変更してくる人が複数いようとは……。

 いつもとはかなり毛色の違う戦いになりましたが、楽しんでいただけましたら幸いです。
 当シナリオにご参加いただき、ありがとうございました!