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<鬼道喰らわば>ミニマムオーガコロシアム

●戦場における殺伐と冷遇の遊戯性
「んー、いい夜だなー」
 それは眠気を覚ますようにぐっと身体を伸ばすと、空を仰いだ。星は良い。何時まで経っても変わらない。汚れてしまっても、汚れが取り払われてしまっても、それらは姿を変えることはない。その宝石たちに向けて手を伸ばした。あれを掴みたいものだ。そう思っていたのはいつ頃だっただろう。
 手にした剣を、肩に担ぐ。長大なそれ。刀身だけで十数メートルはある異常な刀。彼女はそれにまるでそぐわぬ小さな身体でやすやすと振り回して見せた。
「なあ、お前らもそう思うだろう……あり?」
 振り向いて、疑問符。配下の鬼共。あの女鬼様より授かった大事な大事な部下達。自分の背後に控えていたはずのそれらは、しかし胴を両断されてすべてがすべて無残に転がっていた。これは警邏も名探偵も必要ない。まず間違いなく死んでいる。
「いったい誰が……」
 視界を巡らせる。目線は刀へ。担ぐそれの先端に、赤いもの。滴り落ちる。思考に三点リーダ。あ、私か。これやったの。
「あ、やっちゃった……ま、いいか。弱くても邪魔なだけだし」
 どうでもいい、という風に。その辺り、幼い見た目でも鬼は鬼ということか。もう気持ちを切り替えたのだろう。彼女はこれから来るであろう脅威に目を輝かせた。
「よーし、いつでも来いよリベリスタ。あっそぼーぜー」
 うきうき。わくわく。そんな感じ。楽しみで楽しみで仕方がない。和気藹々と意気揚々と、殺しあおう。とりあえず殺しあおう。一分一秒も無駄にせず遊ぶために。息を吸い込み、声を響かせた。
「やあやあ、我こそは燈々童子! 正々堂々逆々歪々全周囲から! さあ、攻めてこい!」

●戦場における作戦と非常の重要性
 その日、アークは慌ただしかった。
 温羅への切り札に成りうるという『逆棘の矢』。その争奪戦を繰り広げたリベリスタらではあったが、その結果は完全な勝利と言えるものではなかった。鬼。その力は予想を超える。それだけに、矢の強力さを示すものなのかも知れないが。
 そして、ここで新たな問題が登場する。鬼道は近い内に大規模な進撃を再開するであろう。『万華鏡』がその恐るべき未来を観測したのである。その為、アークとしては決戦に踏み切ることを余儀なくされていた。鬼ノ城を制圧し、温羅を撃破する。簡単にとはいくまいが、それでもやってやらぬわけにはいくまい。無論、ここにいる彼らもその為に集められていた。
「あなた達の担当は、城外のこの地点」
 彼らに向けて、予言の少女は地図を指示した。その一点に、視線が集う。
「城外には、四天王の『烏ヶ御前』率いる部隊が居るわ。この辺りを制圧することで、後退や回復時の支援を万全化できる。作戦全体を安定させるためにも重要な拠点よ」
 そのために、と。彼女は指し示したあたりを丸く囲んだ。
「まずはここに居る鬼を倒す。敵数はひとつだけ。気をつけて。数が少ないということは、それだけ個で強力ということ」
 目線は地図から正面へ。しっかりと、彼女はリベリスタらを見つめて言った。
「頑張って。ここと、四天王と、最後には温羅。連戦よ。どこまで余力を温存できるかは、個々の戦場における勝敗が関わってくるわ」
 ぎゅっと、誰かが拳を強く握りしめた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:yakigote  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月09日(月)23:47
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

鬼ノ城、城外に配置された鬼。燈々童子を討伐してください。
彼女はひとりだけで城外に構えていますが、その分単体としての戦力は非常に強力です。

●エネミーデータ
燈々童子
・人間で言えば十代半ばの容姿を持つ鬼。天真爛漫で自由気まま。戦闘を遊びと楽しむところがあり、今回の一件も楽しむために参加している節がある。
・非常に怪力かつ素早い。ただの投石でも砲撃に等しい威力。また、バッドステータスへの回復力も高く所持している。
・常時二回行動。

・斬軍刀の一振り
長大な刀、斬軍刀を振り回します。通常攻撃ですが、範囲性を持ち、致命・ノックバック効果が付与されます。

・魂喰らい
周囲に散らばった鬼に残されたエネルギーを、それに触れることで食します。回復効果。


●シチュエーションデータ
夜間での作戦です。周囲に障害物らしいものはありませんが、拳大の石などはそこらに転がっています。


●重要な備考
・このエリアは『城外』です。
・このエリアの作戦達成効果は『後退回復支援万全化』です。
・当シナリオの結果次第でエリア『城外』の作戦達成度が変動します。
 エリア『城外』の作戦達成度が目標値以上になると作戦達成効果が発動し、アークに有利が発生します。
 作戦達成度の目標値については『鬼道喰らわば』作戦ページをご確認下さい。
 作戦達成効果は『温羅』との決戦に適用されます。(例えば回復支援が万全なら後退で回復支援を受けられる為、死亡確率が低下し、立て直し易くなります。進撃効率が上がれば大きな被害を受けずに目標に到達出来ます。鬼角の術が破れた場合、温羅の防御力が低下します)
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
ウーニャ・タランテラ(BNE000010)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
プロアデプト
阿野 弐升(BNE001158)
スターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
スターサジタリー
百舌鳥 九十九(BNE001407)
デュランダル
宵咲 美散(BNE002324)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)

●戦場における心情と決意の融合性
 支配だとか。支配だとか。平和だとか、戦争だとか、侵略だとか。領域だとか、鬼道だとか、人間だとか。どうでもいい。そんなものはどうでもいいのだ。短い人生を楽しまねば損だというならば、長い人生こそ楽しまねば大損ではないか。楽しもう。もっと、もっと。純粋に。単純に。極端に。

 鬼と聴いて浮かぶ特徴。剛力。戦闘主義。人間の敵。強靭で、豪放。ただ、イメージとしての。視覚的な話での怪物性を外にして考えるのだとすれば、その鬼はまさしく鬼らしい鬼であるのだといえるだろう。
 小鬼で、ロリで、巨大武器。それなんて王道と『ピンクの害獣』ウーニャ・タランテラ(BNE000010)は心中で呟いた。なんというか、抑えるところを抑えているといった感じだろうか。まったく、これだから天然は気の置けないものなのだ。間違った意味で、だが。念のため、敵の不意打ちも視野に入れておくとしよう。どうにも、自覚なしに寝首をかかれそうで恐ろしい。まったく、これだから天然は。天然というやつは。
 ただ、戦いを遊びだと表現する鬼。戦を好む。『無軌道の戦鬼(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)はその言葉を反芻した。策謀も策略も抜きにして、ただただ楽しみたいのだという相手。この命がけを命がけとして遊ぼうと言う敵。シンプルで、強い。なんと気持ちのいい。真正面からぶつかろう。喰らいあって楽しむとしよう。夜空を仰ぐ。満点の星。嗚呼、どうせなら。月と桜も舞えばよかったものを。
 可愛い見た目。資料によれば十代半ば頃のそれだとか。それでいて、それ相応に見せる言動。無邪気さ。奔放さ。豪放磊落。それでいて怪物の名を欲しいままにする。二束三文の鬼程度は無意識に両断し、ただの直球が砲弾のそれ。強い。ただそれだけの体現。そうあって、そうであり、そのままの存在。『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)はこれより、それとそのままと相対するのだ。
「見た目は可愛いくせして、剛力とか!」
 鬼退治。『論理決闘者』阿野 弐升(BNE001158)にとって、そう言える仕事はこれで二度目となる。しかしまあ、随分と気持ちの良い相手があったものだ。鬼だとか人間だとか。戦略だとか作戦だとか。敵だとか、味方だとか。彼女にはあまり関係のないことなのだろう。きっと、関係のないことなのだ。純粋に戦う。純粋に殺しあう。それでいい。それだけでいい。単純で、明快だ。純粋で、豪快だ。まったく、なんと殺り甲斐のある相手だろう。
 金棒ではなく長大な刀を担ぎ。筋骨隆々ではなく可憐な少女としてナリを潜めず。奸計をと思考せずただただ威風堂々。なんとも豪快だ。姿こそ想像と伝承のそれとはかけ離れているものの、彼女は間違いなく鬼なのだろう。燈々童子。鬼。まさに鬼。その風に、その様に。『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)には敵ながら好感さえ持てるものだとさえ感想できた。だからこそ倒さねば、彼女は竜巻みたく根こそぎにしてしまうだろう。
「おおう、何と言うかバトル大好きって感じの相手ですのう」
 威風堂々と名乗りをあげるからには、きっと強いのだろう。強力。それはそれだけで厄介なことである。しかしまあ難儀なものだ。戦闘技能はともかくとして。見た目がいけない。十代半ばの少女。『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)は、女子供を手に掛けるなど好きではないのだから。しかしまあ仕事に私情を挟むわけにもいくまい。撃とう。容赦無く。まるで化物みたいに。
 何事にも楽しみを見つけるというのは必要なことだ。それが仕事だというのであればなおのこと。どこかに快楽は必要である。よって、『戦闘狂』宵咲 美散(BNE002324)は敵を求めている。それは使命感や家柄からくる伝統観念でもない。美散が美散で在り続けるための本能的な切望であるのだ。だから、ほら。強い相手が現れた。自分を賭けられるだけの敵が今回も現れてくれた。言葉はいらない。そこに剣戟の音と戦塵だけがあればいい。

 そこで、それもう待っていた。ずっとずうっと待っていた。
「遅かったじゃないか。待ちわびた……ねえ、遊ぼうぜ?」
 長大な刀剣を担ぎ、殺し合いなどどこ吹く風と朗らかに笑っている。何も関係がなく。自由で、強い。これの名を、燈々童子と。そういった。

●戦場における酒豪と宴会の先駆性
 協調性がない、なんて。言われた時には笑ったものだ。笑ってやったものだ。なんだ、まるで人間みたいなことを言うじゃあないか。言うんじゃあないかと。自分らは鬼だ。鬼の自覚をしよう。それがわからなければ、誰かが言ったそれでもいい。そうだ、鬼であれ。

 場所を変えよう、と。提案したのはウーニャであった。まだ血で汚れていない、まっさらな場所で戦いたいのだと。否、真意は事前に聴いていた治癒能力を妨げたいがためであるのだが。それを、鬼は快く承諾する。疑わないのではなく、何かあってなお好しとしてという風に。
「燈々童子たぁ良い名前じゃねぇの」
 その場所にどっかと座り、盃を差し出したのは『足らずの』晦 烏(BNE002858)である。さすがの鬼も不意をつかれた顔をしたものだが、それも好しと酒器を受けとった。その場に腰を下ろす。リベリスタが顔を出しても、戦闘の空気が漂おうとも。何処吹く風ぞ。傾けて、飲み干して。
「過去に生きた鬼、そして今に生きる人。何方が未来へ至る道を掴むものか、さぁ宴を始めようじゃねぇか」
 大盃を投げて、乾いた音を立てた。それが合図。高まる威圧。この幼い姿にどれほどの威力を秘めているというのか。剣を構えよう。銃弾を装填しよう。さあ敵は、遥か強大。

●戦場における達観と快感の感受性
 戦闘に喜びを感じることを、愚心だと揶揄されたことがある。まったく、馬鹿げたものだ。なんだ、それじゃあ。その悪巧みも残虐も侵攻も、楽しくてやってるんじゃあないって言うんだろうか。

「こんばん、は。素敵な星空の下……心行くまで、闘争の宴、を楽しもう。踊って、くれる?」
 堂々と姿を表して、天乃は敵対を宣言する。
「……いや、驚いた。てっきり不意打ちでも来るものと楽しみにしていたのだけれど。嗚呼、その意気や良し」
 天乃が駆けた。円を描く動きで側面を位置取ると、そこから致命の黒力を放つ。
「……滅する」
 だが、そう易易と小さな体を捉えることはできない。掠めるものの、躱され。剛力により後ろへと下がらさせられる。埒があかない。そう感じて一間、意識を研ぎすませることとした。当然のごとく、そこを狙われるわけだが。
 横薙ぎに切り裂かれた。腕と胸に、深い刀傷。腱を切られたのだろうか、力を込めても持ち上げることができない。真っ黒に染まりそうな意識を、天乃は毅然と否定した。認めない。認めてやらない。自分はまだ、戦える。
「想像以上。いい、ね……もう少し、やろう?」
 次の黒は、定めた未来を的中させていた。

「宵咲が一刀、宵咲美散。行くぞ、童子」
「おいで、宵咲美散。鬼退治だぜ」
 ぶつかり合う、槍と長刀。一撃は重い。重たい。横薙ぎに奮われるそれ。得物を地に突き刺して防御を試みたものの。受けきれるものではなく、大きく後方へと押し飛ばされた。それでも、攻撃の意志が失われることはない。身体は痛む。それを無いものだと自分に言い聞かせ、間合いを詰めた。刺突。剣戟。金属音。ぶつかり合う殺意のそれら。殺しあう。この上なく残酷に満ちたその行為が、なんと心躍らされるものか。
 躱される。次を当てる為に意識の比重を攻撃に傾けたものの、そこを見逃す鬼ではなかった。突き刺される。鎖骨から、内臓を貫いて脇腹の後ろへ。咳き込んで、血を吐いて。肺をやられたか。そう自覚した頃にはもう、運命の消費を選択していた。
「楽しんでいるか?」
「おうよ、もっと遊ぼうぜ」
 唇の端が釣り上がる。獰猛に、獰猛に。笑ってみせた。笑い合ってみせた。

 実のところ、隙を見ての一斉攻撃を模索していたウーニャだが、その企みは失敗に終わっている。仲間内全体として、それに沿った行動をとれていないことが原因だろう。幾人かは、この鬼に習い堂々と正面からぶつかり合うことを選択したのだから。
 それでも、彼女が思考したいくつかは成功している。ウーニャの言葉により戦場を変更したことで、燈々童子は治癒性能を発揮できずにいた。鬼の膂力。鬼の性能。鬼の体力。それらを併せ持ったシンプルな強さ。その一角を確かに削ったのだ。
 傷を負い、後ろへと下がった味方を回復させる。傷癒技能を抑え込んだところで、その攻撃力は健在だ。刀傷を癒しながら戦わねば、先に倒れるのはこちらだろう。
 味方と味方の隙間。その先にいる彼女目掛けて、一枚のカードを投げつけた。嘘つきピエロ。助けてください。カードが長刀と火花を散らす。
「貴女も害獣にな~れ」
 人の不吉を、絵柄の道化が笑ったようにみえた。

 その膂力を持って長大な刀剣を瞬時に二度振るう。それは聴くだけでも戦慄する攻撃手段だ。しかし実のところ、燈々童子は本来あるべきその能力を活かしきれないでいた。弐升の仕業である。戦闘が始まった直後、白兵の距離まで詰めた彼は。その奮われる斬軍刀の根本へと自分の全神経を集中させた。
 多角的な攻撃とはいえ、それは物理力によるものだ。世界の規範を見出さずに行動する以上、その可動性能には身体能力とは別の限界が存在する。だが純粋な力として、大の男といえど鬼のそれをひとりで止められるものではない。吹き飛ばされ、宙を舞う。刹那のうち、繰り返される二度目を止めることはできない。それでも、しかし確実に。範囲性という脅威を彼は半減させていた。今更ながらに付け加える。
「一応名乗っておきます。論理決闘者にして群体筆頭、アノニマス。正々堂々なんでもアリでバラし斬る」
「ただの鬼、燈々童子さ。逆々歪々なんでもアリでかかってきやがれ」

 七海の放つ矢が、弾き飛ばされた。防がれたのではない、武器を狙ったのだ。あわよくば破壊することもと考えての行動だったのだが。どうやら、頑強さも鬼のそれに相応しいものらしい。
 意味がないと悟ってすぐに、番える矢を変えた。自身の呪いによって形成された一線をしっかりと指で握り、弦を引く。眼前に、硬質の何か。
 それが岩だと気づいたのは鼻の骨が砕け、大地に叩き伏せられた後だった。放り投げたのだろう。それだけでなんて威力。全くもって羨ましいほどの。
 ふたつめを放り込まれた。眉間にあたり、痛みと衝撃で転がりまわる。罅。で、済むものではない。だが倒れることもできない。死をなかったことにしてでも立ち上がった。こんなところで死ねるものか。また会わねばならない相手がいるのだから。運命に、ねじ曲がれと命じる。しかし現実は変わらない。介入するにはあまりに死から遠い。三度目の砲撃。迫り来るそれが、やけに長く感じられた。

 烏の散弾銃が、ひとつぶのそれを吐き出した。遠目に見ていて、その強さがよくわかる。小さな身体。どこに長大な刀剣を自在に振り回すだけの力が潜んでいるというのか。鬼は立ち回り、受け、躱し、暴虐を奮い。そうして笑っていた。楽しそうだ。楽しいのだろう。
「鬼は人を喰わねば生きていけないのか。喰わずとも済むなら共存の道もあるとは思うんだがね。互いに切磋琢磨しあえるライバルとしてよ」
「えー、なんだってー?」
 聞き返された。手を休めてくれないものかとも思っていたのだが、聴こえなかったらしい。この距離なら当然か。互いの間合いを思い返して、自分の行いに失笑した。
 振り抜いたところを狙い、引き金を絞る。地面に当たり、鬼の顔へと跳ね返る銃弾。流石に予想していなかったのか。彼女は驚愕の表情を見せた。跳ね返った分、威力は充分と言えるものではないが。
「この一撃では仕留めるに『足らず』、だがこの隙が致命の一撃にはなるだろうよ」

「くっくっく、私の弾丸に撃たれて血を流すと良いです」
 銃を撃つ怪人と、銃に撃たれる少女。背景を考えず、その構図だけ見ればどちらが人間の敵かわかったものではない。無論、その頭部にありありと浮かぶ鬼の象徴。双角がなければの話ではあるのだが。鬼。鬼だ。鬼は強い。鬼は恐ろしい。鬼は制し難い。だがそれでも、生きているのだから。生き物なのだから。撃たれれば傷つくし、そうであれば倒すことは可能なはずだ。古来よりある幾つもの伝承にも、鬼が絶対無敵の不可侵であると記述された試しは無いのだから。ついでに、戦いを遊びだと楽しむその傲慢さも、撃ちぬいてしまえればなお良いのだが。
「そう言えば名乗ってませんでしたな。九十九って言います」
「ご丁寧にどうも。燈々童子だぜ」
「私と貴女と、どっちが先に地獄に行くのかは分かりませんが。どちらにしても、再会を楽しみにしましょうか」
「いいね、そいつは退屈しなくて素敵だよ」

 この戦闘も終りが近い。俊介はそれを感じ取っていた。どちらの。それはまだわからない。鬼の息が上がっているのは確かだ。回復性能を事実上無効化し、戦闘技能も一部を削ぎ落とされ、満足に自分を奮えない鬼と。数では有利でありながら、個々人としては単体の彼女に劣るであろう自分達と。限界が近い。息が上がっているのはこちらも同様であるのだから。
 傷の塞がらぬ仲間に、清浄で編んだ鎧を纏わせた。出し惜しみしていて勝てる相手ではないが、そうそう何度も唱え続けられるほど精神力も潤沢ではない。まったくもって。
「強いなあ、ほんとに、さ。非力な俺には、大きな力はうらやましい。だから目の前の彼女は素敵だ。でも今の俺にはそれはできないから。やれる回復を、打ち込んで支えるんだ。この手ですべてを守れるなら、俺はなんだってする」
 だから、生命を賭けようとした。死に近づいて、代償を糧に一瞬を願おうとした。だがそれも叶わず、勝負の行方は。

●戦場における豪放と磊落の単一性
 嗚呼、楽しかった。

「いやー、もう限界」
 切り結んでいた最中だというのに、その鬼はあっけらかんとその場に倒れ伏した。否、寝転んだという方が正しいか。仰向けで、荒い息をつきながら。空を見ている。星空を見ている。
「強いなー、ほんと強い。いいね、楽しかった」
 楽しかった。鬼はそう言う。殺し合いを、純粋な戦闘を、ただただ殺意のぶつけ合いを。楽しかったのだと。戦争も侵略も防護も種族も思想も経歴も関係なく、楽しかったのだと。彼女はそう言う。
「時代がな、悪かったんだろうなぁ……」
「いやー、いつでも一緒じゃないかな」
 悲しいとか。悔しいとか。苦しいとか。そんなことも彼女には関係がないのだろう。全力で、遊んだ。それだけだ。どこまで行っても人間は人間で、鬼は鬼なのだ。それは変わらない。だったら、考えないに越したことはないのだと。
 ここでの戦闘が終わる。鬼はこれでおしまい。リベリスタにはまだ仕事があるだろう。楽しいと言った彼女。残虐性のない鬼。
 満天の星空。今度こそ掴めないものかと、力無く手を伸ばした。
 了。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
何事にも楽しいと笑う。それが案外難しい。