●ナイフ ナイフは人が扱う最も基本的な道具の一つである。 そのルーツをたどれば、石器時代にまで遡る。それは生活用品として重要であると同時に、凶悪な武器としても長く人の歴史の中に存在している。 そう。人が真っ先に『武器』としてイメージするのは、ナイフといってもいいだろう。鋭利な先端を見れば、それが皮膚を傷つけ血管を裂くイメージを思い浮かべる。 一つのアーティファクトがある。 このアーティファクトは『傷』を具現化するアーティファクト。人の心を読み、その人が最も恐れるものになって襲い掛かってくる。 ゆえにそのアーティファクト名は『ナイフ』。人を傷つけるイメージを持つ最もポピュラーな存在。 ●アーク 「任務内容はアーティファクトの回収」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタたちに短く要件を告げた。 「場所は廃れた祠。そこに奉納されている小さなナイフ。それを回収してきて」 モニターに地図が浮かび上がる。管理している人はなく、ただ風化するだけの木製の祠。その中にある一本の刀。それを取ってくるだけだ。簡単じゃないの? と首をかしげるリベリスタにイヴは首を横に振って言葉を続ける。 「このアーティファクトは近づいた人間の心を読み、その人が最も恐れるものを読み取って『自分が最も相手をしたくないものと戦う』という夢を見せる」 映し出されるナイフは小さい。飾り気もなく、それゆえに刃の鋭さが目立つ。 「夢というよりは精神攻撃に近い。その夢の中で受けた傷はそのまま現実世界にも反映される。傷が深ければ重傷にもなるし、運命を失うこともありうる。 何よりも、他人の夢には干渉できない。チームワークが意味を成さない」 夢の中とは言え、本当に殺される可能性があるのだ。 「怖いものなんて何もない、と言う人は自分自身が現れる。実際の強さなんて関係ない。その人が恐れていれば犬にかまれたトラウマ程度でも、エリューション並の強さになる。 はっきり言って危険な任務。精神的にも肉体的にも」 山の中にある祠。セキュリティなんて全くない場所なのに誰にも手をつけられずに放置されている理由は、つまりアーティファクト自体が最も危険な防壁であるためだ。 しかしこのままというわけには行かない。神秘の秘匿もそうだが、危険なアーティファクトを放置できない。 危険とわかっていても、その場所に向かわせる。信頼することがフォーチュナの強さ。 そしてその信頼に答えるのがリベリスタの役目。リベリスタたちは笑みを浮かべて、ブリーフィングルームをでた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月04日(水)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●家族Ⅰ 『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が相対するのは養父だった。フィクサードに本物の両親を殺されたとき、助けてくれた人。 フィクサードの養父はまさに飢えた虎。鬼気迫る瞳で日本刀を構え、雷音を睨む。 「君がでてくると思っていた」 強気な口調は予想していたからでもあり、不安を隠す為でもある。 ボクが彼の養子になったことで彼は自分の思うことができないのではないのだろうか? いずれ彼に嫌われ、捨てられてしまうのではないだろうか。そんな不安があることは、自覚していた。 怖い。雷音は恐怖を感じていた。愛からくる喪失感への恐れを。 (最も相手をしたくない者、かあ。間違いなく出てくるのはあのヒトだろうなあ) 『落とし子』シメオン・グリーン(BNE003549)はそんな事を思いながら夢に落ちる。そして予想通り出てきたのは、彼女の母親だった。たれ目で褐色肌のクロスイージス。 母と戦いたくないという感情はひとまず横に置いておく。置かないと殺されそうだ。それはこれがナイフの見せる幻覚だからという意味ではなく、実際に母がここにいて相対すれば殺されそうという意味で。 「うわヤダなにこの人、敵にすると凄くこわい」 何せこっちの攻撃は防御され、向こうの打撃は圧倒的。げんなりもする。 目の前にいるのはかつて共に戦った一般の傭兵仲間や下っ端軍人。そして今の仲間であるアークの構成員。 「仲間、か……」 『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)は出てきた『敵』を認識して、愕然とした。まさかかつての仲間が『戦いたくない相手』だとは。 だが考えてみれば然りだ。敵は容赦なく殺せるが、仲間はそうはいかない。……ちがう。そういう意味じゃないことは自分でもわかっている。 (戦場で生き残る為に仲間を撃ったから、その負い目がこの悪夢を見せているのか) ブレスは銃に手をかけ――ようとしてその動きが止まる。今のオレにこの銃を抜く権利があるのか? 仲間を殺した銃を、抜く権利が。 『最弱者』七院 凍(BNE003030)には怖いものは沢山ある。その辺のDQNとかヤクザとかは勿論だけど誰と話すのだって怖さってのはある。引きこもりオタだから仕方ないね。家でパソコンやってフィギュア集めれれば幸せだよね。 でもね、アッコさんは桁違いなんだよ! 酒飲んだアッコさんはもうどうしようも無いんだよ! え? アッコさんって誰かって? 近所の人なんだけど、色んな人を家連れ込んで夜遅くまで酒盛りしてるんだよね。近所迷惑だけど誰も文句言えないよ。キミには居ない? 絶対に逆らえない人って? そんなアッコさんが目の前にいる。回れ右して帰りたくなった。それもできないんだけど。それでいいのか革醒者。 「偉そうに勝つって言っちゃったけど、ほら、こんなバケモノ出てくるとは思わなかったからさ」 キョドりながら目をそらす凍。しかし目の前のアッコさんは消えないのであった。 ●敵Ⅰ 『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)という少女は孤児として原理主義的教会で育ち、銃器の扱いに非凡な才能を見せたため凶手となる。家に帰ってドアを開ける程度の気安さで銃の引き金を引き、的確な判断で人間の振りをするのも如才ない。正に天性の暗殺者である。 「10年程前の私」 エナーシアは目の前の少女を見て、それが若かりしころの自分であると気付く。真正面からまともに打ち合えば、勝ち目はない。だが向こうはこちらの存在を知らず、こちらが先に攻撃できる。不意打ちできるアドバンテージを逃してしまえば、勝機はなくなるだろう。 出会い頭。まさに必殺の一撃が、叩き込まれた。 かつて自分を作り出した組織がある。 その組織がなにを目的として『彼女達』を生み出したか。その真意は知れない。だが『彼女達』がその組織にとって有用でなかったのは確かだ。 失敗作。欠陥品。 そう呼ばれ、廃棄されて死ぬ筈だった『長女』は死の間際で寵愛を得て、生き延びた。生き延びてしまった―― 結局その組織は『長女』の動きにより壊滅するのだが。 『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)はその『長女』と向き合っていた。天使のような悪魔。氷璃以外の全ての『姉妹』を惨殺したお姉様。氷璃は彼女から逃げる為に欧州を捨て、この国へと辿り付いた。 「生贄が必要なのよ。だから育てて上げたの。極上の、生贄を」 その瞳は冷たく、そして逃亡を許さぬ裁定者の瞳。氷璃はその視線だけで動けなくなっていた。 「やっぱりお前か」 『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)はわかっていた。誰が目の前に立つのかが。 出会った回数は三度。三度とも勝つことはできなかった。 「無様ですね、鼠のように逃げるばかりですか」 最初は時村貴樹暗殺事件のとき。 「皆さんはまだまだ誤解していらっしゃる。最強たるバロックナイツを、伝説たるジャック・ザ・リッパーを、そして――」 二度目は本人の招待状。あの時、彼女はさらわれた。 「結構! ならば聖女の血を購う前に、貴方がたに今一度教えてあげましょう――力の差というものを!」 三度目は赤い月の夜。血霧とナイフの中、意識を失ったあの夜。 「やっぱりお前か――後宮シンヤ……!」 赤いナイフの魔人。ジャック・ザ・リッパーの刃。そして悠里にとっては恋人をさらった憎き男。それが、目に前にいた。 トゥリア。紅い瞳と猫の尻尾を持った、私のたった一人の友達。 「ああ、やっぱり貴女なのね」 『鉄鎖』ティセラ・イーリアス(BNE003564)はかつて自分が殺したノーフェイスと相対していた。 とあるリベリスタ組織で生まれ育ったティセラ。その組織で共に過ごした友達。辛いことも悲しいことも共に過ごして乗り越えてきた戦友。 「貴女と一緒ならきっと戦えると思っていた」 だけど現実は非情で残酷。 初の実戦でトゥリアはティセラを庇い、フェイトを全て失う。 ノーフェイスとなった彼女を、ティセラは撃った。エリューションは撃つべし。そう組織に教えられていたから。 「その眼で……私を見ないで」 撃ち殺される寸前の怯えたまなざし。それでいて撃つことを急かす瞳。 「トゥリア」 友人の名に、ティセラは様々な感情を込めた。銃剣を握り締め、赤い瞳を見る。 ●家族Ⅱ 雷音は周りに刀を浮遊させ、養父の攻撃を受け止める。 赤く血走る瞳は悪鬼の如く。その目は本当の彼とは違う。 「リベリスタになった彼の目はとても優しくなったんだ」 何かにつけて世話を焼く養父の顔を思い浮かべる。 「出会った頃に比べて笑うようになったんだ」 喫茶店で過ごす日々は、とても心地よい日々だ。 血の繋がらない親子。元フィクサードの父と、フィクサードに実親を殺された娘。歪な関係。歪な家族。誰かに指摘されるまでもない。そんなことは雷音自身自覚している。それでも。 「ボクはそんなアナタが好きだ」 この気持ちだけは歪ではない。それだけは確かだ。 「ボクの怯えの結晶、倒させてもらう」 怯えの正体は養父に捨てられること。フィクサードに戻り、離れてまうという喪失。 「起きて、あの優しい笑顔に会いに行くんだ」 だから負けない。雷音は真っ直ぐにフィクサードの視線を受け止める。 変わらず怯えの感情はわきあがるけど。 怖いものは怖いままで構わないとおもう。だけど、ソレに打ち勝つ力をもつことができれば。 「ボクはすこしでも前に歩き出せる」 一歩前に。 シメオンは常に笑顔を絶やさない。何を云うにもするにも、常に柔らかな笑顔だ。 それはおのれの母が殴りかかってくる状況においてもだ。 近接攻撃しか使えず、またシメオン自身の火力不足もあるのでとにかく距離を離す。 ギリギリまで逃げて意図で相手を拘束して、その後に糸で精密射撃を行なう。 「姑息でも卑怯でも、これが僕の戦い方だしね」 人には人の戦い方がある。真正面から戦うだけが戦闘ではない。というよりは。 「うわあぁ!」 頭の上を通り抜ける一撃。まともに受ければ三度目は耐えられないだろう母の一撃。こんなのと真正面から戦ってられない。 「本気でやらないと殴り殺されそうだけど」 母のクセを読みながら、それを元に回避行動をとる。が『わかる』ことと『体が動く』ことは別問題だ。ましてやこれはシメオン自身の心から来る恐怖を投影している。本物の動きとはまた別なのだ。 「本気で逃げても殴り殺されそうだ――あいたぁ!」 一撃を受けて地面を転がる。血の味が口の中広がった。 「なんともいやらしいアーティファクトだ。これ作った奴はきっと凄い性悪だろうね」 シメオンは常に笑顔を絶やさない。何を云うにもするにも、常に柔らかな笑顔だ。 ブレスは敵の攻撃から逃げる。思わず抜きそうになる銃を意識して留め、逃げ続ける。 「敵なら容赦なく殺せるが、味方だとそういう訳にはいかねーだろ」 言ってから皮肉げに笑う。何故仲間が襲い掛かってくるのか? 理由は明白だ。かつて自分が生き残る為に仲間を殺したからだ。傭兵として幼い時から幾つもの戦場を渡り歩いてきた。奇麗事ばかりでは死んでいたこともある。だから、仲間を殺した。 (その時と同じく仲間を殺してでも生き残るのが、『普通』と言われるんだろうがよ) そこまで思って気付いた。ああ、そうか。俺は何から逃げてるんだろう。 「俺は生き残る為に殺す『普通』から逃げてたのか」 逃げたかったのは仲間の怨念ではない。それを『普通』と思っている自分からだ。 「だから、味方に対して『普通』に殺した事に怯えた」 あの時引き金を引いた自分は、酷く冷静だった。その冷たさこそがブレスの恐怖の根源。彼にとっての原初の刃。 「なら、『普通』を飲み込んで」 過去を変えることはできない。 「その上で『普通』じゃない道も探すか」 変えることができるのは常に未来だ。 ブレスはようやく銃に手をかけた。 アッコさんを前に勝利の微笑みを浮かべる凍。 こんなこともあろうかと、策は用意してある。式神のシノだ。 アッコさんは子供には優しい。シノでパンチさせれば一発だ。 「こーるをいじめるなー」 凍は式神に命じてアッコさんにパンチさせる。 「いじめないよ。ちょっと仲良くするだけさ」 子供に優しいアッコさんはシノを撫でて大人しくさせると、凍の方に歩いてくる。 如何に凍の精神的な順列においてに幼女の方が格上であるとはいえ、これは『ナイフ』が強制的に見せる夢である。何をしようがこの夢の中では『自分が』『最も相手をしたくない者と』『戦う』ことになるのだのだ。 「さぁ、こっちおいで」 やべぇ。あの笑顔は知っている。ちょっと話があるから家に来なさいって言う笑顔だ。これから四時間ぐらい家の中でプレッシャーをかけられながら、小言を言う顔だ。革醒してもあの言葉には耐えられない。あれ絶対何かのスキルだよ。名前はジャイアニズムとかそんなの! SOS! ボクはもうダメです。嗚呼、現実世界のナイフを早く誰かしまってくれー! ●敵Ⅱ 問答無用の早撃ちは、勝機を掴むきっかけになった。 しかしそれが決定打になったか、といわれればNOだろう。エナーシアもそれは理解していた。 その瞳は敵を見る姿。作業のように黙々と命を奪う暗殺者。 遮蔽物を盾に。お互い移動しながら少しずつ距離を詰めていく。 射撃武器の命中精度は、距離が近くなればなるほど増す。つまり、近づけば近づくほど死にやすくなる。それでも互いは近づいていく。まるで惹かれあうように。 「普段は勝負に絶対はないと言っているけど」 エナーシアはショットガンの弾丸を入れ替えながら口を開く。すぐ真横を弾が跳び、頬に傷がつく。 「奴にだけは負けるわけにはいかないわ」 奴。10年前の自分に銃を向け、引き金を引く。奴は横に跳んで回避しながら、地面を転がるように移動して壁の影に。そんな移動の最中でも銃を撃って来る辺り、まったく恐れるばかりだ。 10年前の自分は強い。単純に『殺しあう』という意味では間違いなく今のエナーシアより強い。 でもその強さは、世界を見ようとしないものが得た強さ。自らに篭り、他人を『殺す相手か否か』としか判断できない強さ。 今のエナーシアは世界を見て、積み上げてきた強さ。自分ひとりではない。他人と接して得た強さ。 銃弾が飛び交う中、二人は少しずつ近づいていく。そして互いの銃口が、互いの『敵』を捕らえた。引き金が引かれ、二つの銃撃音が響く。 銃火器の祝福は、 「Showdown。さようなら。頭のおかしい私」 『今』のエナーシアに。 氷璃は思う。『長女』の動きは全てが計画的だった。 自らを作り出した組織の情報を軍内部の革醒者組織にリークして、復讐を果たす。 解放された『姉妹』は保護されると思わせておいて、実質は『長女』の目の届くところに留まることになる。然もありなん。他に寄る辺はないのだから。 そして『長女』は一人ずつ『姉妹』を殺していく。血に塗れた『長女』は恐ろしく、歯向かう気力さえ折られてしまい、逃げるしかなかった。 そして極東まで逃げてきた。 そう、過去だ。逃げて怯える氷璃はもういない。 極東にたどり着き、アークに身を寄せ、『姉妹』以外の寄る辺を得て。 「私はもう逃げない」 戦う術も、心強い仲間も得た。血まみれの『長女』に真正面から向き合う。 「本物の貴女が現れたとしても返り討ちにして上げるわ。お姉様」 『長女』はあの時と変わらぬ顔で微笑む。恐怖が氷璃を襲うが、それでもそのときは逃げ出さないと、日傘を手に誓った。 シンヤのナイフが振るわれる。 そのたびに悠里の脳裏にナイフで倒れて意識を手放した記憶が蘇る。傷が痛みを訴える。 痛い。怖い。苦しい。逃げ出したい。 これは夢なのだ。誰かが『ナイフ』の鞘を収めてくれれば覚める夢。だからここで寝てもいいじゃないか。 そんな感情を必死になって押さえ込む。 負けたくないのだ。これ以上アイツに負けるなんて、そんなことは許されない。 「絶対に――」 シンヤのナイフが血の嵐を作る。隙のないナイフの軌跡の中に、踏み込んだ。 思えばいつも誰かに為に戦っていた。いつだって守りたい誰かの為に戦ってきた。 でもこの戦いは違う。自分の戦いなのだ。 「絶対に――!」 決着をつけるのだ。後宮シンヤというフィクサードではない。 「絶対に、負けられないんだぁぁぁああああ!」 自分自身に、打ち克つのだ。 稲妻を纏った手甲がシンヤを穿つ。血霧の中、シンヤは―― 人生の分岐点に立つことは稀で、かつそれがそうだと自覚できることはさらに稀だ。 ティセラはあの時、自分が人生の分岐点に立っていることを自覚していた。 親友のノーフェイス化。 運命はあっさりと親友を世界の敵にした。リベリスタである以上、彼女を殺さなければならない。 「本当は銃を捨てて貴女の手を引いて逃げる事もできた」 そういう選択もあった。むしろあの時はそうしようという衝動が強かった。でも、 「そうやって自分がリベリスタであることを捨てて、貴女も失ったとしたら……私には本当に何も無くなってしまう」 親友の怯えた瞳がティセラを苛む。あの時と同じように。 あの日と違うのはなんだろう? また私は彼女を殺すのか? その痛みに耐えられるのか? 自問は一瞬。答えは既に手の中にある。 「銃に貴女の名前を付けたわ。貴女の剣を使って銃剣にしたのよ」 共に戦うために。彼女と共にリベリスタであるために。あの日と違うのは、そこに覚悟があるということ。リベリスタという覚悟。親友を殺し、なお戦う覚悟。それを破界器に刻んだ。 「貴女を殺した私が貴女と友達でいるためには……私はリベリスタでなきゃいけないの。 他のエリューションを全て殺すなら、貴女を殺した理由ができるから」 ナイフが見せる親友の怯える顔は、もう怖くはない。昔、通過した場所だ。だから、 「許してとは言わないわ」 引き金に指をかける。様々な覚悟と意志を載せて、指に力を込める。 「さよなら」 ●納刀 チン。 小気味いい音を立てて、『ナイフ』が鞘に収められる。 「君はもう一人じゃない」 雷音は『ナイフ』に触れ、その記録を読み取る。人の心の刃を受け、それを写すアーティファクト。その業ゆえに封印されたのだ。大事に持って帰ろう。 ブレスは自分の銃をしっかりと見据える。殺すことに特化したその器物を、本当の意味で見ることができた。その心を忘れることなく、銃をしまう。 「中々貴重な体験をさせて貰えた事には感謝、かな?」 シメオンは夢の中で殴られた箇所を押さえながら、変わらぬ笑顔で感謝を告げた。基調ではあるが、正直二度目をやりたいかといわれるとお断りしたい。 「……すみませんでしたー。アッコさーん……」 凍は夢から覚めてもダメージが残っているのかフラフラしていた。思ったよりも強敵と戦っていたらしい。心配するリベリスタたち。 何はともあれ、任務は完了だ。リベリスタたちはそれぞれの『相手』との戦いを胸に帰路につくのであった。 『あなたにあえてよかった』 たった11文字にあふれんばかりの感謝を込めて、雷音は養父に向けてメールの送信ボタンを押した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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