● 「今日で壇示に来て、三日目。 意外と、観光客が多いのに驚く。 黒くて磨かれた石の連なりなどこの辺には奇岩群が多く、情報交換として色々話を聞いてみた。 (別記参照)」 「滞在四日目。 なんだか体調がよろしくない。 民宿の人が、しきりに温泉に入るように勧めてくれる。体を温めるのが一番だそうだ。 おかゆを煮てもらった」 「滞在六日目。 嘘のように調子がいい。温泉とおかゆが効いたんだろうか。 この調子なら、装備なしで天狗の鼻岩まで登れそうだ」 「滞在十日目。 コウイカの進入角度から行くと、どうやらあのあたりが奴らの目的地らしい。 明日はそちらに行ってみよう。 やけに体が軽い。 エリューションが出てきても一ひねりできそうだ」 ● 「イカだけならともかく」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がモニターに空飛ぶミサイルコウイカを映し出した。 「タコときて、クラゲにまで増えられたら」 脚から硬質の吸盤を打ち出すガトリングダコ。 更に、それを守るシールドクラゲ。 「落下地点に何かあると考えるのが普通」 まあ、そうだね。 「で。この先に集落がある。人数は少ないけど、人が住んでる。なんであそこにあれが執拗に爆撃を加えようとしているのか、それによって今後の対策をしようと思う。思った。」 モニターに、二文字が映し出される。 『調査』 「そういう訳で、イカタコクラゲのほとぼりが冷めた頃、秘湯ライターに偽装した調査員を送り込んだ」 過去形かよ。 なんかいやな予感がしてきた。 「定時連絡のメールが十日目以降来ない。連絡取れなくなって、12時間たつ。まずい」 うっわ~。 「そういう訳で、虎の子のリベリスタ投入。目的は、調査員の救出。そのための情報の確保。最低、みんなの無事の帰還。リベリスタは貴重」 改めて、集落について説明すると、別のモニターがに地図が表示される。 「集落の名前は、壇示。だんじとよむ。ここら辺は石の産地だったそうで、辺りに石切り場のあとがたくさんある。集落は底で働いていた人たちの子孫。現在は、十数世帯。三十人足らず。子供はほとんどいない」 過疎地帯。と、イヴは言う。 「他の集落とは山を隔てているので、交流はほとんどない。駐在所とかもない。例の天狗の鼻岩とか、温泉が湧くので、それ目当ての観光客が来る。穴場の湯治場としては地味に有名」 そういう訳で、半分の世帯は民宿をやっているとのこと。 「みんなは集落に泊まってもいいし、野営してもいい」 登山客が野営するのは珍しいことではないのだと、イヴ。 「調査員がどの民宿に泊まったかは分かっている」 早いに越したことはない。 「まずは、一泊二日の観光客として。様子、見てきて。ヒットアンドアウェイ。長居は禁物。時間は限られてるから、欲張らないで」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月29日(木)23:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「お父さん、温泉です」 『黄金の血族』災原・有須(BNE003457)は、館内見取り図を指差し、『父』の服の裾を引っ張った。 「うちの露天風呂は自慢の岩風呂ですから」 「楽しみですな。これは温泉好きで連れて行けとだだをこねられまして」 『父』である『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)は、愛想よく答える。 「仕事と家族サービスを兼ねた一石二鳥ってところですな」 年の離れた娘が一人。似ていなくはないが。 偽装である。 金髪オッドアイの有須が、正道の『娘』に見えるように幻視を使っているのだ。 民宿「上鳥」の主人の視線を感じて、有須は正道の大きな背中の向こうに隠れた。 「人見知りでして。男手一つだと行き届きませんで……」 いやはや。といわれてしまっては、主人として、それ以上突っ込んだことを聞くことは出来ない。 小さなロビーで新聞を読んでいた別の客『√3』一条・玄弥(BNE003422)は、ふらふらと表に出て、辺りに居る老人に話しかけ始めた。 「このあたりで、あれですか。隕石が降るっちゅう……」 「ああ、新聞読みなさったんかね。ありゃあ、若いもんの花火じゃ。最近山に登る連中が目に余っていかん。天狗さんの鼻もこすれてきてのお。だから――」 よそもんを招くのはいやだった。と容易に続きそうな言葉を口の中で老人はもぐもぐとかみ殺す。 その様子を、玄弥は「やっぱり隕石とは違いますかぁ」と返事をしながら、冷静に観察していた。 「なんでも、行く方不明がでたとかぁ。怖いでさなぁ」 年寄りがなにを言っていると眉をひそめた。 「あっしが泊まってる宿で、ここに長逗留してた兄貴が帰ってこねえって娘さんがね……」 ● 「すいません! 兄貴が払ってない宿代とかないですか。払いますんで!」 『宿曜師』九曜 計都(BNE003026)は、小木の「妹」として宿帳に「小木計都」と記名し、ぺこぺこと頭を下げながら、すかさず財布を手にした。 「いえいえ、ちゃんと清算なさっていかれましたから。そうなんですか。お帰りになってないんですか。確かに何日かはお加減悪そうでしたけど、お出かけのときはお元気だったんですよぉ? ねえ?」 民宿「上鳥」の奥さんは、心配ですねぇ。と、眉を八の字にする。 「あ、すいません。取材なんで、表の看板とってもいいですか?」 『隠密銃型―ヒドゥントリガー―』賀上・縁(BNE002721)は、本職のフリーカメラマンだ。 構えたファインダーの中には「上鳥」の文字が刻まれた看板。 「読みは『うえとり』さんでいいんですよねー?」 「ええ。そうです。よくかんどりさんとかうわどりさんとか言われるんですけど」 外国人バックパッカーに扮した『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は、 テントを設営していた。 林の中には今まで設営されていた跡があり、比較的楽に設営することができた。 ただし、ここでヴィンセントが眠ることはない。 ここはおとりだ。 すでに寝だめはしてある。 持参した携帯食料と水を口の中に押し込んだ。 (ここの温泉や食物は明らかに危険です。源泉掛け流しだの山の幸だの地酒だのに興味なんて……キョウミナンテ。くっ) 観光客に扮する仲間は、不審がられないために温泉と料理を堪能するのだろう。 万が一のときには、ヴィンセントが頼みになる。 今回は、そういう役回りなのだ。 時は金なりとばかりに、ヴィンセントは意識してもっきゅもっきゅと味気ない携帯食料を噛み砕いた。 『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)は、露天風呂から天狗の鼻岩を見上げていた。 あそこから、星龍もイカタコクラゲを迎撃している。 こうしてみるとだいぶ形が変わっている。 その原因が、タコの吸盤攻撃であるなど、食らったものでなければ容易に信じられない。 (今までイカタコの標的になっていた場所の情報収集ですか) 外で、檜風呂に入るのも乙なものだ。 (単なる秘湯を楽しむ依頼でしたら気も楽ですが、情報収集で行方不明になった方も居るそうですので気をつけませんと) とはいえ、湯加減はいい。 (温泉に浸かって酒を飲みたくなるのも我慢しませんと) 酒は大好きだが、飲んで仕事に支障をきたすには星龍も本意ではない。 とはいえ、このリラックス振りは、どこぞで携帯食料噛み締めてる青年に首を絞められても文句は言えない状態だ。 (ここから出たら、一度村の中を撮影して、土産物買ってみたりして) ふっと、表情が真顔になる。 (小木さんについての話題を出したりして、村人の変化を調べます) ● 正道と有須は、石室を調査しに来た。 集落の外れ。 開けた野原の真ん中に、異質な黒い塊。 子供が適当に積み上げた風情の大小さまざまな黒い石が見上げるほどの高さに積みあがっている。 大きいものは正道の体積の三倍はありそうだ。 危ういバランスを保ちながら、それはずっとそこにあるそうだ。 安全対策ということで、周りに柵が作られ、上からネットがかぶせられている。 『危険ですので、石を抜いたりしないで下さい』 石がなだれ込んでくる手がきイラストがついた立て看板がついている。 英語もついている所が、観光化を進めている一環だろう。 「………」 ぐるりと正道は周囲を歩いてみた。 「建坪六十。三階建て。優良物件ですね」 「……お父さん……」 不動産屋にも見えるというのが、正道の正道たる由縁である。 隙間から中を覗き込んでみたが黒い石に光が吸収されて、中の様子はよく見えない。 「いしむろ……ってことは。中に空間があると言うことだと思うんですけどねぇ……」 正道は、有須に耳打ちをした。 有須は、子供らしい仕草で柵の隙間から身を乗り出して、石室のあちこちに取り付き始めた。 「いけません。危ないから、よしなさい」 自分で有須に頼んでおいて、心配そうな父親を装う。 落ちていた黒い石を指でもてあそびながら、その様子を見ている正道は、家族サービスに努めているように見える。 ふと気がつく。 手の中の小石が、存外にずっしりと重いことを。 適当に積み重ねたように見える石。 大きなものは、正道の体積の三倍。 そんなものを、どうやって見上げるほどの高さに持ち上げたのだ? 建造物ならともかく。ただ積み重ねてあるだけ。 一体、どんな目的で? ヴィンセントも、その場に来ていた。 正道と有須の「親子連れ」を視界に入れても、目線を交わしたりはしない。 (昼と夜とじゃ、やっぱり違うんですかね) 極まばらな観光客は、へー、ほー、ふーん。と、石室を見上げたり、野原で遊んだりし始めている。 注意していた、小木のようにハイになっている者は見受けられない。 「ああ、もう。いけませんよ」 有須を柵から引き剥がす正道。 いやそうな顔をする有須。 「どうですか、中に入れそうですか」 「入れる大きさの穴はないです。けど……」 小声で交わされる状況。 「ほんのちょっと、潮というか、生臭いにおいがします」 「――魚ですか……?」 「どちらかって言うと……」 有須は自分の手の甲をなぞって見せた。 その下には青い。 血管。 ● 『Trapezohedron』蘭堂・かるた(BNE001675)は、家族思いの少女だった。 「家族旅行の下見なんです」 他のメンバーが老人メインで会話している分、話す相手は若年層を優先した。 そもそも他の集落との交流はあまりなく、配偶者は、他所の土地から来るのが通例だと言う。 「みんなUターン組」 「進学とか就職で県外出るんだよ。こんな田舎、二度と戻ってくるもんかー!って。でも、帰ってきちゃってんだよね。帰巣本能って感じで」 「だまされました。絶対、田舎に戻らないって言うから結婚したのに。ある日突然、どうしても帰るって、会社辞めちゃったんですよ。周り中、皆そんなの」 民宿の若夫婦はそんなことを言いながら、笑う。 「そうなんですか。この黒いの、なんでしょう?」 黒いひらひらしたモノが豆腐と和えてある。 「きのこなんですよ。この辺りにしか生えないんですよね」 食べたことのない香りと歯ざわり。 「土地の年寄りは、イシムロダケって言いますね」 「こういう特産物にも力入れていこうって話になってまして」 「あと、温泉水とか」 「この辺特産の黒石、お水に入れると、お水が美味しくなるんですよ」 「ご飯炊くときも入れてます。どうぞ、お試しになってください」 確かに、つやつやでおいしいご飯だ。 地域振興に情熱を燃やす、若年層。 かるたには、そういう風に見えた。 ● 特産と言うのは本当らしい。 星龍が泊まった宿にも、「上鳥」でも、夕餉には同じきのこが出された。 二人はそれぞれ食った振りをした食物をサンプル袋に入れていた。 飯の後は風呂。 「上鳥」の星降る露天風呂をひょいとのぞいた玄弥は、違和感に襲われた。 なにがどうと言う訳ではない。 特産の黒石でしつらえたという岩風呂だ。 源泉かけ流し。空には満天の星。 夜空を映した湯船に入れば、星空に溶けていくような気持ちになれそうだ。 秘湯ファン垂涎のいい風呂に、玄弥はどうしても入りたいと思えなかった。 「やべえでさあ」 背筋にいい知れぬ冷たいものが走る。 夕飯を食らっていたなら、嘔吐していたかもしれない。 AF越しに情報を受け取った正道は、ぼそりと呟いた。 「もう、入っちゃいましたよ」 正道と有須は、石室見物した後、すでに昼風呂としゃれ込んだのだ。 その時は、アーティファクトの気配はしなかったが……。 「ところで、有須さんは変な感じはしませんか」 「アンタは?」 「自分は今のところ、別に」 「アタシもそんな感じはしません」 ● 「お加減いかがですか。おかゆですよ」 「すいません……。ありがたいです」 「小木さんちの冷蔵庫、なんか腐れてるんじゃないの」 「そうかも」 計都は、小木が食べたかゆを食べるため、腹痛の振りだ。 何の変哲もない白粥に見える。 実際、とろりとして美味しい。 「少し楽になったら、お風呂いかがですか。うちの温泉、胃腸にも効果ありますし。湯中りしない程度に」 「お世話かけます」 人のよさそうな『上鳥』の奥さんは、あれこれと世話を焼いてくれた後、お大事にと出て行った。 ずるずるとおかゆを食べながら、計都は口を開いた。 「閉鎖的な寒村。謎の環状列石。……名状し難きアザーバイドが召喚!? とか思ってたんッスけど」 縁は、だまって聞いている。 「普通にいい人じゃないっスかね」 「そうみたいだけどね」 あの奥さん個人はいい人としても、総体はどうだか分からない。 「以前話した祖母の受け売りだけど、こういう仕事に必要なのは危険に踏み込む勇気ではなく、最後の一線を見分ける眼力だそうだよ。その後、その一線を踏み越えるかは自分次第、とも言ってたけど」 ぺろりと片付けられたおかゆの器を見て、縁は計都を見る。 「君は、一線越える気だろ?」 風呂に行く支度を始めた計都は、にかっと笑った。 「備えもなくって訳じゃないッス。そんでも、ハイになったら、よろしく頼むッすよ」 「うん、それはいいんだけどさ」 もしものときは、計都を担いで集落から離脱する覚悟は出来ている。 「食休みくらいとってったら。せっかくおなか痛い振りしたんだし。玄弥さんからも、ここの風呂やばいって情報来てるし」 おかゆが来てから、五分とたっていない。 「――ところで、縁さん」 「なに」 「なんであたしら相部屋なんスカ」 「他に部屋空いてないからじゃないかな。大丈夫。僕は紳士だから」 ● 「友達がここに長逗留してまして……」 星龍は土産物屋のおばちゃんにそう言う。 小木に関する情報収集は、はかばかしくない。 十日の長逗留とはいえ、村の中をうろうろするときいちいち名前を名乗る訳でもない。 「ああ、そんなのをみたような、見ていないような……」 村の老人達の記憶は当てにならなかった。 それでも、何か隠していたり、後ろ暗さを感じているようにではなかったので、集落の人間に殺されて埋められているようなことはどうやらないようだった。 AF越しにそれぞれが収集した情報が共有化される。 「『上鳥』の風呂、まじやばいッス。あたし、この目で見たッス。岩からなんか出て、お風呂のお湯に溶け出してるっスヨ! 昼はそんなことなかったのに! そこにドボンと入ったあたしをほめてほしいッス! 一瞬頭お花畑になったけど、鉄の心で耐えたッス。頭クリアッス。安心してほしいッス! 計都」 「こっちの風呂はヒノキ。昼も夜も入ったけど、そういうことはないみたいだ 星龍」 「温泉自体に何かあると言うことではないみたいですね。源泉はひとつだそうです かるた」 「血の臭いがするというのが心配だ。少し早いが石室に突入する ヴィンセント」 「念のため、逃亡ルートの再確認 縁」 「こちらも出発しました。後で合流しましょう 正道」 ● ヴィンセントには、夜に見る石室はざわめいているように見えた。 昼間眠っていたものが目を覚ましたような。 いや。そう見えるのではない。 明らかにざわめいている。 石が、振動している。 振動がそれぞれに共鳴し、曰くし難い音がする。 共鳴共鳴共鳴。 響く。ということは、中に空洞があると言うことで。 一個一個の大小の石が、ざわざわと蠢いている。 つるりとした岩の表面にさざなみが立ち、蠕動している。 ずっずっと位置を変えて、石室が、星空の中で悶えている。 ……けて……。 けて。けてけてけてけて。 岩が動いたから見える隙間。 押しつぶされかけている、人の手。 垣間見える顔。 小木だ。 石は動いている。 とっさに駆け寄り、隙間から引っ張り出そうとする。 「たすけてけてうごくいしをどかしてよるうごくいしがもとはうみだったくろいいしはかえりたくてけてけてけてたすけてけてけてこのしたでもうごくいしししははあははおおきなささってささるいししどかしてどかしてじゃまじゃまじゃ――」 小木の手が、ヴィンセントの手をつかんだ。穴が空いている。 「しななだいじょうぶりべりすたはしななないたいいたすりつぶされだいじょうぶいしがからだのなかにはいひとつにないやだたすけこわしにたくないしにたくないしにたくない……」 うわごとのように呟く小木の黒目が落ち着きなくきときときときとと動くのだ。 石は動いている。 ずり、ずり、とうごいている。 体の半ばを引きずり出す。 体は穴だらけで、どうしてこんなになってるのに生きているんだと不思議に思う。 「あしいいいっ!」 脚が、大腿部が石に挟まれている。 引っ張る。動かない。一人では、無理だ。 黒石が動く。 少しずつ、引きずり込まれる。 小木の体が、石室の中に。 食われる。石の臼歯が、小木の体を噛み砕く。 「しかたありませんな。石を切ります。そのままひいて」 「大丈夫ですよ……それも全て愛なのですから……」 黒石を切り、小木を三人がかりで引きずり出す。 「いやいや、音を聞きつけることが出来てよかった」 やれやれと呟く正道は、運動会の府警協議を終わらせたような風情だ。 「ヴィンセントさん、このまま小木さんとここを離れてもらえますか。我々では彼の手当てが出来ない」 ヴィンセントは、うなづいた。 うわごとを呟き続ける小木を背負うと闇にまぎれた。 「有須さん、そろそろ戻りますか。この石が曲者なのは分かりました。後は分析です」 「『散歩』はおしまいですね、『お父さん』」 「この後、温泉なんて最高でしょうけどね」 「やめておいた方がいいですね。せめて朝風呂にしましょう」 ● 翌日。 ある民宿からみやげ物をたくさん抱えた青年が出てきた。 「いやあ、いいお湯でした。今度は仕事抜きで期待ですね。それじゃ」 鄙びた村の中をデジカメで撮影しながら、青年は自前の4WDに乗り込む。 彼――星龍が買い込んだみやげ物は、ありふれた温泉饅頭から温泉の湯に至るまで一つ残らずアークの鑑識に回ることになっている。 「またどうぞ」の声を受け、壇示を後にした。 また別の民宿。 「それでは、家族五人で仮予約とさせてください。日付正確にわかったら、また連絡します」 本予約がされることは、おそらくはない。 「ほんとにお世話になりました。兄から連絡も入ったみたいで。ほんとにお騒がせして申し訳ありません! そんでも、もう元気です。あの山まで登れそうです!」 「後で、何か美味しいものでも贈らせますので」 計都と縁は、そう言って『上鳥』を辞した。 「おなか、治ったみたいでよかったです。どうぞ、またお兄さんといらして下さいね」 奥さんが送り出している最中に、正道と有須も玄関に姿を見せた。 「いい旅行になりました」 「石室、お気に召しましたか」 『上鳥』のはっぴを着込んだ老人が、相好を崩して言う。 「あら、お義父さん」 「どうぞ、道中お気をつけて」 老人は、深々と頭を下げた。 壇示の集落を出るまで、正道達を見つめる粘つくような視線が一瞬たりとも途切れることは出来なかった。 ● リベリスタ達は、無事に合流した。 幸い、小木は一命を取り留めた。 ただショックが大きすぎて、しばらくは療養が必要だと言う。 壇示集落、石室。 夜になるとうごめく黒石の群れ。 空からの飛来物の目当てはあれだと、リベリスタ達は確信を持った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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