●お気楽な来訪者 ふわふわした灰色の羽毛に包まれた小さなペンギンが、両の翼を羽ばたかせて飛んでいた。 まるで水の中を泳ぐような動きで、木々の間を軽やかに飛び回っている。 すいすいと風を切るペンギンの後ろには、それを追いかけるペンギンの姿。 よく見ると、前にも、横にも、あちこちでペンギンが飛んでいる。 和気藹々とした様子は、幼い子供たちが追いかけっこに興じているようで。 疲れを知らないペンギンたちは、追いかけては逃げ、逃げては追いかけを飽きずもせずに繰り返している。 もともとはこの場所に迷い込んできたはずだが、ペンギンたちの様子からはそのような悲壮さはまったくもって感じられなかった。 むしろ、この状況を存分に楽しんでいるだろうことは、ほぼ疑いようがない。 林は、今や完全にペンギンたちの遊び場と化していた。 ●空飛ぶペンギン現る 「……そんなわけで、今回は空飛ぶペンギンを捕まえる任務です、はい」 『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)はそう言って、ペンギンたちを映していた正面のモニターの電源を落とした。 「ペンギンとは言ったが、実際はペンギンの雛に似ているだけのアザーバイドだ。前に、何回か似たようなのが迷い込んでるが……まあ、別物と考えた方が良さそうか」 何でも、このペンギンたちは自由に空を飛べる上に、かなりお気楽で図太い性格をしているらしい。 「簡単に言うと、やたら遊び好きなんだな。知らない世界に出てきたってのに、まったく気にもしないで遊びまくってる。おまけに頭の中身も子供みたいなもんだから、とにかく疲れを知らない」 背の高い木々が多い林の中は、彼らにとって絶好の遊び場なのだろう。 「連中は飛行能力の他に、保護色っていうのかな、周囲の景色に自分の姿を溶け込ませて隠れる力を持ってる。それをフルに使って、かくれんぼしたり追いかけっこしたりしてると」 ペンギンたちの運動能力も個体差が大きく、一般人でも捕まえられそうな鈍いものから、リベリスタでも捕まえるのに骨が折れそうな素早いものまでいるらしい。 「ま、そんなのが三十六匹も群れをなして来てるもんで、さくっと捕まえてお帰り願おうってわけだ」 彼らが出てきたディメンションホールは、木の上にぽっかりと口を開けている。 最終的に三十六匹全てをここに戻すことができれば、その途中でペンギンたちと遊ぶくらいは構わないだろう。 そう言った後、数史は小さく溜め息をついてリベリスタ達を見た。 「……あとですね、今回は俺も皆に同行します」 聞いた限りでは危険はなさそうだし、この慌しい時期にアークから必要以上の人員を割くわけにもいかないのだろう。フライエンジェである数史に白羽の矢が立ったのは自然なことかもしれないが、彼は非常に浮かない表情をしていた。 考えてみれば、数史が三高平に来てからというもの、彼が背の翼で飛んでいる姿を見たことがない。 リベリスタの一人がそう言うと、数史は微妙に視線を逸らして答えた。 「俺、高いとこ苦手なんだよ……。地に足がついてないとか怖いじゃないか」 実に使えないおっさんである。 本人も、好きでフライエンジェになったわけではないのだろうが。 「ええと、その、あれだ。色々と大変な時期に申し訳ないが、これも仕事ってことで。どうかよろしく」 誤魔化すようにそう言って、数史はバツが悪そうに頭を掻いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月26日(月)22:04 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●ペンギンも空を飛ぶ 青空をバックに、宙を泳ぐペンギン。 木々の間をすり抜けるペンギンと、それを追うペンギン。 空中で、羽ばたきながらじゃれあっているペンギン。 枝の上で、よちよちと歩くペンギン。 あちこちにペンギン。どれもこれもペンギン。ペンギン尽くし。 林に辿り着いたリベリスタ達が最初に見たのは、そんな光景だった。 「ペンギンさん……なんか来るたびに数が増えてるね……」 無邪気に遊ぶペンギンたちを見上げて、『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)が呟く。 彼女は皇帝ペンギンの雛そっくりの外見を持つアザーバイドに何度か遭遇しているが、最初は二十体、次は百体だった。今回は三十六体なので単純な数こそ抑え気味だが、捕まえるリベリスタの人数を考えると、一人あたりのノルマは増えている。 「まぁ、今回もがんばって捕まえないとだね!」 そう言って、気合を入れるアーリィ。空飛ぶペンギンの群れを眺めていた『おっ♪おっ♪お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)が、何かを思い出したように口を開いた。 「ペンギンだおーん。そういえばちょっと前にエイプリルフールでこんな動画が流れたお」 あれは大掛かりなジョークだったが、目の前で空を泳ぐペンギンたちを見ていると、あながち間違いではなかったのかもしれないと思えてくる。 ガッツリは地上に視線を戻すと、持参した道具を使ってペンギン捕獲の準備を始めた。 餌を置いた地面にザルを立てかけ、つっかい棒で支えるという昔ながらのトラップである。ペンギンたちの知能は人間の子供並みらしいので、食い意地の張った個体には有効かもしれない。 「ペンギン……ペンギン! 優希、ペンギンが沢山飛んでるぞ!!」 『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)が、やや興奮した様子で『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)に声をかけた。普段は称号の通りやる気に欠ける彼だが、隠れ動物好きとしてはテンションを上げざるを得ない。 傍らの優希もまた、「絶景だな」と頷いた。 「翔太、容赦なくペンギンをモフ……おっと。任務を確りとこなすとするか!」 ふわふわした灰色の羽毛を持つ三十六体のペンギンが、空で彼らを待っている。 一方、地上には大きなペンギンたちの姿もあった。 巨大化したペンギン……ではなく、ペンギンの着ぐるみを纏ったリベリスタ達である。その数、五名。 姿形が似ていれば、ペンギンたちの気を惹きやすくなるかもしれない。 皇帝ペンギンの雛に似たアザーバイドを見て、『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)が「可愛いものだな」と口にする。ヒーロー番組のスーツアクターとして活躍する彼だが、ペンギンの着ぐるみは少し勝手が違うだろうか。 「放っておくと世界への影響もあるからね」 疾風の言葉に、『悠々閑々』乃々木・白露(BNE003656)が「頑張りましょうね♪」と応じる。 もともと動物好きの白露は、あちこちで遊びまわるペンギンたちを見て表情を綻ばせていた。 「ふわもこなペンギンが沢山……可愛いなぁ」 中性的な容姿をペンギンの着ぐるみに包んだ彼の姿も充分に可愛らしいが、それはさておき。 すっぽりと着ぐるみを纏った『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)が、てぽてぽと音を立てて歩きながら、使い心地を確かめていた。動くのに邪魔にならないものが良かったのだが、そうは問屋が卸さなかったらしい。 その様子を眺めていた『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)が、思わず呟いた。 「かっ、かわいい着ぐるみさん、よちよちペンギンさんとセットで、いっぱい……!」 着ぐるみ組を愛でたいという衝動を、ぐっと堪える。 (今日は、寝顔を見るという目標、あるので、我慢、です……っ) ひそかな野望のためにも、ペンギンたちと存分に遊んでやらねば。 ●高速の空中鬼ごっこ 自前の翼を持たない仲間達に、白露が翼の加護で小さな羽を与える。 「皆さん、捕まえるの頑張ってください」 彼の激励に応えるように、捕獲役のリベリスタ達は一斉に飛び立っていった。 それを見送った後、白露は『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)や数史と預かり所の設置に移る。 仲間達が連れてきたペンギンたちが再び逃げないよう、見張っておくのが彼らの役目だ。 「全部で三十六匹迷い込んでるのか。結構沢山いるんだな」 着ぐるみの背に生えた羽で木々の間を飛びながら、疾風が千里眼で周囲を見渡す。 枝の影になって見え難い場所にいるペンギンの位置を幻想纏いで仲間に連絡すると、彼は近くにいたペンギンに手を伸ばした。 「よーし、良い子だ」 両手で包むようにして捕まえた後、ペンギンを優しく撫でる。 灰色の羽毛はほんのり温かく、もふもふとした良い肌触りだった。 「追いかけっこは……望むところなのよ……」 同じく、着ぐるみ姿の梨音が、高速で飛び回るペンギンの一体に狙いを定める。 翼の加護で羽を得た以上はスピードの勝負、そうそう負けはしない。 「わたしはスピードスター……鬼ごっこなら……ソミラの天下よ……」 逃げるペンギンを見事にキャッチ、アンド、存分にもふもふ。 彼女の手の中で、ペンギンがくすぐったそうにキャッキャと笑った。 着ぐるみ組の中には、積極的にペンギンたちの輪の中に加わっていく者たちもいる。 「空飛ぶ終ペンギン参上☆」 身体能力のギアを上げた『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)が両腕を伸ばして飛ぶさまは、ペンギンたちの度肝を抜いた。自分たちと似た姿をした大きな生き物が、ブーンとかキーンとかそんな擬音で空を駆けているのだ。何それかっこいい。 俄然盛り上がるペンギンたちを、終は「待て待て~♪」と追いかけて捕まえていく。 ペンギンを怖がらせないように心掛けつつ、『シュタートゥエ』カルテ・ロレ(BNE003440)がそこに混ざった。着ぐるみの背中から出した自前の翼を羽ばたかせて、しっかりとペンギンをキャッチ。 「つーかまえーたー!」 少し恥ずかしいが、胸に抱きしめたペンギンはさも楽しそうにはしゃいでいる。 言葉は通じないものの、きっと「つかまっちゃったー」とでも言っているのだろう。 ぎゅっとペンギンを抱いたまま、カルテは幻想纏いで仲間に連絡を入れた。 「空飛ぶ高速ペンギンと追いかけっこが出来る!」 翼の加護を与えてくれた仲間に感謝しつつ、翔太が宙を駆ける。 彼の傍らを飛ぶ優希が、ひときわ速い動きで飛び回るペンギンの姿を捉えた。 「翔太、あいつに突撃するぞ!」 追いすがる二人を、ペンギンが軽やかな身のこなしでかわす。 ペンギンの中にはリベリスタでも簡単に捕まえられない個体がいると聞いていたが、おそらくはそのうちの一体だろう。顔を見合わせた翔太と優希は互いに頷きを返すと、二手に分かれてペンギンを追い込みにかかった。 「そっち行った!」 翔太の声に、優希がペンギンの進路上へと素早く回りこむ。 息の合った親友同士の連携を前に、高速を誇るペンギンもとうとう捕まってしまった。 優希に柔らかな羽毛をわしゃわしゃと撫でられ、観念したように大人しくなるペンギン。 「ははっ、これでも食らえ!」 そう言ってペンギンに小魚を差し出す優希の表情は、すっかり緩んでいた。 フィネが枝に結んだ風鈴が、りん、と涼しげに揺れる。 『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)が奏でるフルートの旋律に、フィネが鳴らす鈴の音が重なった。 楽しげな音楽につられて、近くを飛んでいたペンギンたちが次々と二人の周りに集まる。 そこに、フィネがリリアンに連ねた小さな鈴を差し出した。 翼や首に鈴をかけてもらったペンギンたちは、喜んでくるくると踊る。 フィネとペンギンたちが鳴らす鈴の音色が陽斗のフルートに加わり、ちょっとした林の音楽会になった。 (鈴を持っててくれたら、保護色になっても音で見付けられますし、ね) 一石二鳥とは、まさにこのこと。 背に生えた小さな羽を器用に操り、ガッツリが木々の間を飛ぶ。 メンバーの中でも速度に優れる彼女は、特に素早いペンギンから狙って追いかけていた。 「ダイビングキャッチするお」 ペンギンのスピードがわずかに緩んだ瞬間を見逃さず、空中から一気に距離を詰めて捕まえる。 預かり所に運ぼうとした時、ガッツリは木の陰で休んでいるペンギンを見つけた。幻影を見破る対神秘眼を持つ彼女には、ペンギンの保護色も通用しない。 「あの木の裏にペンギンが隠れてるお」 ペンギンを運びながら、木の近くで周囲を見回していたアーリィに連絡を入れる。 それを聞き、アーリィは任せて、と胸を叩いた。 「こう見えてもペンギンさん捕獲は検定一級だからビシバシ捕まえちゃうよ!」 捕獲検定一級は脳内設定でも、過去二回にわたり同系のペンギンたちと接してきた経験は伊達ではない。マイナスイオンで空気を和ませつつ、そーっと近付いていく。 アーリィの手に捕まえられて、半分寝かけていたペンギンがはっと目を開いた。 「あんまり暴れないでね? 落としたりしたら危ないし……」 言葉は通じずとも、雰囲気で察したのだろうか。彼女の言葉に、ペンギンは小さく頷いた。 ●ペンギンたちの楽園 一方、ペンギン預かり所では。 フィネの持参した温かいお茶と、軽食入りの大きなランチボックスが鎮座していた。 疲れた時にいつでも摘めるようにという心遣いだろう。 長丁場にしたいという意思表示に見えなくもないが、有難いことである。 「ペンギンさん、僕は君のお友達のペンペンだよー」 着ぐるみ姿の白露が、魚を手にペンギンを誘う。 魚型のクッキーをはむはむ食べて仲間アピールする彼に、腹を空かせたらしいペンギンが近付いてきた。 「ええと、こういうのって食べれるのかな?」 差し出された魚を、ペンギンがつるりと丸呑みする。 喜ぶペンギンの頭を、白露の掌が撫でた。 やがて、仲間に連れられたペンギンたちも続々と到着する。 魚の形をしたパイを食べる梨音に釣られたペンギンが預かり所に辿り着き、彼女の手から魚を受け取った。 捕まえたペンギンを一体ずつ運ぶアーリィが、数史にペンギンを預ける。 「よーし! 次の子探しに行こうっと!」 再び駆けて行くアーリィを見送った数史に、ペンギンを抱いて戻った翔太が声をかけた。 「ある意味ピクニックだな、これって」 そうだな、と答えた数史が、翔太の視線に気付いて首を傾げる。 「いや、なんつうか親近感がちょっと」 「……俺みたいな大人にはなるなよ」 大丈夫とは思うけど、と数史。 『やる気のない男』と『どうしようもない男』の間に、通じるものがあるのだろうか。 「まぁ、今後も仲良くやれればいいかなっと」 「ん、こちらこそだ」 捕まえたペンギンを数えながら小魚を食べさせていた優希が、まだまだ大量にある魚を眺めて考えこむ。 「余るかもしれんなぁ……余ったら土産にでもしてやるか」 小さなビニール袋に詰めて、首に巻いてやれば良いだろう。 「はーくん、パスだお」 視界の端に素早いペンギンを見つけたガッツリが、抱えていたペンギンをアンダースローでふわりと投げる。 白露がそれを受け取ると同時に、彼女は次のターゲットへと向かった。 ガッツリの胸には、雨ガッパで作った即席の抱っこ紐。 その中に、一体のペンギンがすっぽり収まっている。 「あちきがままだおーん。なんちゃってー」 風を切って飛ぶガッツリの声に、ペンギンが彼女の顔を見上げた。 捕獲したペンギンの数は、既に半数近い。そろそろ、第一陣を送還する頃合だろう。 ペンギン達に群がられて思うように動きの取れない白露が、数史に声をかける。 「もう少し遊びたいけど、お願いします」 木の上にあるディメンションホールを見て、彼の表情が一瞬凍ったが、他に手すきの面子がいない以上やむを得ない。危なっかしい様子でペンギンたちを穴に送り届ける数史を見かねて、疾風が手を貸してくれた。 ありがとう、正義のヒーロー。 ●遊び盛りの来訪者たち ペンギンの数が減るにつれて、林が広く思えてくる。 「残りが減ると段々見つかり難いね……」 キョロキョロと周囲を見渡すアーリィの言葉に、疾風が首を傾げた。 「木々の間に隠れてるのかな」 保護色で景色と同化されては、彼の千里眼をもってしても視認は不可能だ。 “ARK・ENVG[HERO]”のサーマルイメージャ機能も、ここでは上手く働かない。 うーん、と頭を捻ったアーリィは、ふと一計を案じた。 預かり所の魚を一匹手に取り、辺りを歩き回る。釣られて姿を現したペンギンを、すかさず疾風が捕らえた。 「よーし! この調子でがんばって行こうね!」 一度は預かり所に連れて行かれたものの、まだまだ遊び足りないペンギンもいる。 そんな彼らを、フィネと陽斗が連れ出した。 「体を動かし足りない子は、追いかけっこ、続行しましょうか」 「満足するまで付き合いますよ」 今度は、フィネも逃げる側に加わる。手薄な方にペンギンを手招きしたり、ペンギンを抱っこしたまま空中を落下し、急停止で追っ手を引き離したり。もちろん、本当に見失わないよう、魚で誘導するのは忘れない。 捕まえたペンギンの数を都度確認していく翔太の傍らで、優希が追いかけっこに興じるペンギンたちと、楽しげな仲間達の姿を眺めた。動物は好きだし、ここに居る皆にとっても良い一日であればと思う。 優希の耳が、頭上の枝が揺れた音を鋭く捉えた。翔太に声をかけ、彼は保護色で隠れたペンギンを捕まえにかかる。その向こう側では、梨音が魔氷拳の冷気で即席のスケートリンクを作ろうと試みていたが、戦闘用のスキルで地面を凍らせるのは無理があったようだ。 「つるつる滑る快感を……向こうのペンギンさんにも……味わってもらいたかったの……」 あちらの世界に北極があるかどうかは知らないが、羽毛に包まれた外見からして寒さに弱い生き物ではないように思える。わずかに肩を落とした梨音を慰めるように、ペンギンが彼女の頭に飛び乗った。 その後もペンギンたちは順調に捕獲されていったが、残り一体というところで行き詰ってしまった。 もしかしたら、と自分の設置したトラップを見に行ったガッツリが、地面に伏せられたザルを持ち上げる。 餌を食べつくしたらしいペンギンが、保護色を発動させたまま半分眠りかけていた。 ●おうちに帰る時間です 「これで全部かな」 預かり所に集めたペンギンたちを前に、疾風が数をもう一度確認する。 既に送還した分と合わせて三十六体、取りこぼしは無い。 二重チェックを行っていたアーリィも、大きく頷く。 流石に遊び疲れたのか、ペンギンたちは皆ぐっすりと眠っていた。 仰向けの姿勢で無防備に寝息を立てるペンギンたちの寝顔を、リベリスタ達はそれぞれに堪能する。 眠るペンギンたちを囲んで、軽く休憩することになった。軽食や菓子を摘み、のんびり茶飲み話を楽しむ。 彼らが目を覚ましたら、いよいよお別れの時間だ。 ガッツリが、ずっと行動を共にしていたペンギンにリボンを結んでやる。 木の上のディメンションホールを指し示してやると、ペンギンは小さく頷き、両の翼でふわりと飛び立った。 それを見て、他のペンギンたちも並んで後に続く。 一体ずつディメンションホールをくぐっていくペンギンたちに、リベリスタ達は口々に声をかけた。 「ばいばーい☆ もう迷い込んできちゃダメだぞ」 「またね、ペンギンさん……あれ? また来たらだめだっけ?」 終とほぼ同時に口を開いた白露が、首を傾げて彼を見る。 それに答えるように、梨音が言った。 「なんどか来てるチャンネルだから……また開くことも……あるかもね……。 だから……ばいばい……またね……」 なにしろ、既に『二度あることは三度』の勢いで繋がっているチャンネルだ。 次が無いとは誰にも言い切れない。 「また、遊びに来るなら相手になるけど、あまり来ないようになー」 そう言ってペンギンを見送る翔太の隣で、彼らの空飛ぶ姿をカメラに収めていた優希が、また遊びに来いよ、と思わず言いかけて口を噤む。 こちらから誘うわけにはいかないが、再び迷い込むことがあれば――その時は、また付き合ってやるとしよう。 最後のペンギンがくぐり抜けたのを見届けた後、ディメンションホールは破壊された。 「うむ。これでばっちりだ」 全ての任務を終え、カルテが満足そうに頷く。 「――これでおしまい、ですね。今日は楽しかったです」 フィネの言葉に、その場にいた全員が頷いた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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