●桜の下で ひらひらと桜の花びらが舞い散る下で、少年は少女を待っていた。 「おまたせ! ごめんね、待った?」 「……いま、来たとこ」 笑顔で駆け寄ってくる少女に、少年はささやかな嘘をつく。 少女はその嘘に気付く様子もなく、頭上の桜を見上げた。 「あたしたちも卒業かぁ。この桜とも、もうお別れなんだね」 小学校で過ごした六年間。 まだ十二年あまりしか生きていない少年と少女にとって、それは人生のほぼ半分にあたる。 六年もの間、桜は彼らを見守ってきた。 彼らが生まれる前からずっと――桜はここに立ち、春になるたび花を咲かせてきた。 「……あのさ、リカ」 「なに? イタル」 しばしの沈黙の後、少年は意を決して少女に想いを告げる。 「おれ……おまえのことが好きだ」 少女の頬が、桜色に染まった。 小さく俯いた後、少女は顔を上げて少年を見る。 微かに動いた少女の唇が、少年への返答を口にしようとした、その時だった。 ――ゆるさない。 「え?」 すぐ近くで響いた声に驚き、少年と少女が揃って顔を向ける。 男子とも女子ともつかない顔立ちと服装の子供が、桜の木の前でこちらを睨んでいた。 ――ぼくを置いて幸せになるなんて、ゆるさない。 桜の花びらにも似た無数の淡い光が降りそそぎ、少年と少女を襲った。 ●がんばれ男の子 「……と、まあ、こういう事になるわけだ」 『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)は、つい先ほど“視た”光景をリベリスタ達に告げ、肩を竦めた。 それは、万華鏡が感知した未来視。数日の後、小学校の卒業式の日に起こるはずの出来事。 「二人の小学生を襲うのは、『嫉妬』の感情が実体化したE・フォースだ。 と言うのも、この桜の木には『ここで告白して成就したカップルは幸せになれる』って言い伝えがあってな」 真偽はともかくとして、この小学校に通う生徒たちにとっては絶好の告白スポットだったらしい。 告白により成就したカップルは数知れず、そして無念の玉砕を遂げた者も数知れず――というわけである。 「で、まあ、上手くいかなかった連中のやっかみやら何やらが色々と集まった結果、E・フォースになったと」 E・フォースの攻撃力はリベリスタ達にとっては大したことないが、放っておけば子供たちが大怪我をしてしまう。 そうならないよう、E・フォースを倒すと同時に子供たちを守ってほしい、と数史は言った。 「指定した時間に現場に向かえば、少年が告白した後、E・フォースが出現するタイミングに間に合う。 戦いそのものはそう苦労しないだろうが、くれぐれも油断だけはしないでくれ」 どうかよろしく頼む――と言って、黒翼のフォーチュナはリベリスタ達に軽く頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月19日(月)23:25 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●叶わなかった想いの澱 ――幸せになるなんて、ゆるさない。 唐突に現れた見知らぬ子供を見て、イタルとリカは困惑の表情を浮かべる。 同じくらいの年頃に思えるが、まったく見覚えのない顔だった。 男子か女子かすらもわからないが、少なくとも自分たちを良く思っていないことだけはわかる。 イタルは、咄嗟にリカを庇おうと動いた。ぼう、と淡い光が、子供の全身を包む。 桜の花びらにも似た輝きがイタルとリカに降りそそごうとしたその時、『星守』神音・武雷(BNE002221)の巨体がイタルの前に立ち塞がった。 「まだ、そういう痛みは経験しなくてもいいんじゃねぇかな!?」 目にも留まらぬ速さで割り込んできた大きな背中を見て、イタルとリカが目を丸くする。 武雷に続いて駆けた『おっ♪おっ♪お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)が、リカを背に庇った。 (嫉妬とかあちきにはよくわからんお) 桜の木の前でイタルとリカを睨んでいるE・フォースを眺め、心の中で呟く。どうやら、あれは過去に失恋した子供たちの『嫉妬』の感情から生まれたらしいのだが……理由はどうあれ、無関係の子供を傷つけようとするのは悪いことだ。E・フォースを倒し、子供たちが告白をやり直せるよう、精一杯頑張ろうと思う。 「伝説の樹……、まさか本当に存在していたとはね」 そんな冗談を口にしつつ、『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)は桜の木を迂回するようにしてイタルとリカの反対側へと走った。この桜の下で結ばれた二人は、末永く幸せになれるのだという。 「今まさに人生の一大イベントだった所を邪魔するような不届き者には、ちょっと黙っていてもらいましょうか」 彩歌はそう言って、煌くオーラの糸を放った。急所を貫かれたE・フォースが、イタルとリカを睨んでいた視線を気糸の飛来した方へと向ける。少年とも少女ともつかぬ嫉妬の化身は、怒りを露に彩歌との距離を詰め、桜の花びらに似た無数の光を撒き散らした。 そこに、『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)が走る。 「危ないから下がってるんだよ」 イタルとリカを追い越しながら声をかけた後、彼は幻想纏いから装備を召喚してその身に纏い、E・フォースをブロックした。ヒーローの登場シーンさながらに流水の構えを取る彼を見て、イタルが「わあ」と目を輝かせる。 続いて、『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)が、己を集中領域に高めながらE・フォースの前に立った。 「せっかくの勇気、こんな形で終わらせはしないです、よ」 控えめな口調で紡がれるのは、揺るぎのない彼女の決意。 彩歌を庇うように走りこんだ『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)が、嫉妬の化身たるE・フォースを見て口を開いた。 「フラれた辛さのまま幸せそうなヤツらに八つ当たり、って気持ちはわからなくもねーさ」 だからっつって俺らが止めない理由にはならねーけどな――と、彼は一般人除けの強力な結界を張る。 迷いのない声が、後に続いた。 「その想いごと、きれいさっぱり吹っ飛ばしてやるよ!」 今回の任務は子供たちを守り、その告白を応援すること。 初仕事としては悪くはない、と思いながらリリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)は詠唱によって自らの魔力を増幅させる。視界の端にイタルとリカを映して、彼女は誰にともなく呟いた。 「それにしても、マセてるというかなんというか……今時の小学生ってこういうものなの?」 リリィの呟きを聞いて、エルヴィンの反対側で強結界を展開していた『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)が何気なく彼女を見る。 「……う、うるさいわね。別に恋くらいしてなくたっていいでしょ!?」 そう言って、リリィは視線を逸らした。正直なところ、プレインフェザーも恋愛には疎かったりするのだが……。 大丈夫、若い子たちはまだまだこれからですよ。きっと。 ●『嫉妬』の困惑 武雷が、イタルを腕に抱え上げて後退する。同様にリカを抱えたガッツリが、イタルとリカの距離を空けるように別の方向へと下がった。嫉妬に凝り固まったE・フォースは、特に『告白』といった恋愛要素に敏感に反応する。現状で狙われる可能性が高い二人を一緒にしておくのは、少々リスクが高い。 子供たちの離脱を支援すべくE・フォースをブロックする疾風が、千里眼で周囲を見渡す。今のところ、他の生徒や教員、父兄などの姿はないが、早めに決着をつけるに越したことはないだろう。 「長引いて他の一般人が現れても不味いしね」 怒りから覚めたE・フォースに向けて、フィネが全身から気糸を放つ。E・フォースが咄嗟に身を捻って束縛を免れたのを見て、彼女ははにかむような仕草で語りかけた。 「ね、聞いて? フィネ、このお仕事が終わったら、告白のお返事貰うのです」 ――ゆるさない。 フィネの眼前で、E・フォースの細い眉がつり上がる。 続けて、脳の伝達処理を高めたプレインフェザーが、腕時計を覗き込みながら口を開いた。 「あー、マジやべー。これからデートなのになー。早く終わらして遅刻しねえように行かねーとなー」 棒読みも良いところだが、それでもE・フォースは『デート』という単語に敏感に反応する。 ――ゆるさない。 さらに畳み掛けるようにして、エルヴィンが背後に立つ彩歌に熱い視線を向けた。 「大丈夫、君には指一本触れさせないさ。この想いと誇りにかけて、俺は君を護ると誓ったんだから」 ちょうど彩歌を庇う位置にいるため説得力は充分、護り手としても嘘は言っていない。 「俺の事は大丈夫。君が無事なら……それでいいから」 姫君を護る騎士の如く男気を見せたエルヴィンを、E・フォースが睨んだ。 ――ゆるさ…… 「いいの? この後『年の差なんてっ』とか『私には家に妻と子供がっ』とかそういう展開が待っているわけだけど無視しちゃってもいいの?」 ――? 彩歌の言葉に、E・フォースが呆気に取られたような顔になる。 今、何とおっしゃいました、貴方。 年の差? 家に妻と子供? あれ? あれれ? 外見上、十代の少女にしか見えない彩歌と、発せられた台詞がどうしても結びつかないらしい。 E・フォースの混乱を感じ取った彩歌は、補足するように続けた。 「そう。今の状況を小学生にも分かりやすく説明するなら、友達の家に遊びに行った時に『おまえんちのとーちゃんとけっこんしたい』と言い出すような」 ――??? 余計分かり難くなったよ! とーちゃん? ねえ、とーちゃんなの!? 「だけどここで邪魔しないと万に一つの可能性でいちゃらぶ空間が発生するかもしれないわよ?」 ――! E・フォース、ここでようやく『いちゃらぶ空間』に反応。 数歩引いた位置から、同行者たちのいちゃいちゃ誘導作戦(仮)を何ともいえない目で眺めていたリリィは、心の中で呟きを漏らした。 (いくら作戦とはいえ、人前でそんなことを臆面もなく言えるだなんて……。これだから大人って) 小さな溜め息とともに四属性の魔術を組み上げ、E・フォースに向けて四色の魔光を放つ。 「責め苦の四重奏、とくと受けなさい」 魔の旋律が、色鮮やかな輝きとともにE・フォースを襲った。 持ち前の回避力で辛うじて魔曲の直撃を逃れたE・フォースが、わなわなと小刻みに震える。 一体、何がどうなっているのかわからない。わからない、けれど。 とにかく許せないものが自分の周りにいっぱいある、それだけは確か。 ――みんな……みんな、不幸になればいいんだぁああああ! 半ばヤケクソの叫びとともに、E・フォースが嫉妬の呪いを撒き散らす。 小学生メンタルの集合体にとっては微妙にハードだったらしく、よく見るとちょっと涙目になっていた。 まあ、無理もないか。 ●新たな花を結ぶために 嫉妬から生まれた呪いを受けて、半数近くのリベリスタが運を大きく封じられた。 この状況で無理に攻撃を仕掛けても、不運に阻まれてしまう可能性が高い。回復を待ちながら、リリィが思わず呟いた。 「嫉妬の力ってここまで凄いものなのね……」 大体、E・フォースを生み出すほどに嫉妬していただなんて、どれだけマセていたのだろう。 あれが嫉妬の集合体ということは、そんなマセた子供が一人や二人ではなかったということだ。 小学生が恋愛をするなとは言わないが、他にもっと色々と楽しいことがある時期ではないだろうか。 その頃から人間関係で深く悩むようなことをするのは大変ではないかと、リリィは彼らを少し気の毒に思った。 (……私だって、チャイルドスクールで楽しいことくらいはあったもの。嫉妬とかより楽しめなかったなんて、そんなの可哀想過ぎるわ) 不運の影響をまったく受けないエルヴィンが、ブレイクフィアーの輝きをもって仲間達の運を取り戻す。 直後、フィネが再び全身から気糸を放ってE・フォースを絡め取った。 つい先日、贈り物のモチーフが予知で惨劇の対象となり、それを理由に変更したら相手と被ってしまったという間の悪さを実感したばかり。今さら不運が重なったところで、恐れるには値しない。 「嫉妬ねえ……バケモンにしちゃ随分人間らしいじゃねえか」 人の思念から生まれたなら当たり前か、と呟きつつ、プレインフェザーがオーラの糸を紡ぐ。 子供の思念が元になっているためか、今回のE・フォースは随分と表情豊かに見えた。 「――別に、嫉妬そのものが悪いとは思わねえぜ? ただ、そのあまり八つ当たりするんじゃ、見苦しいことこの上ないってな」 自分の幸せを願うのならともかく、他人の不幸を願うのはいただけない。 放たれた気糸が、癇癪を起こしたE・フォースを射抜いた。 仲間たちが稼いだ時間で、武雷とガッツリがイタルとリカの二人を安全な場所まで逃がし終える。 ここまで来たら、E・フォースの呪いも届くまい。 「もう大丈夫だ! ちょっとここで待ってろよ!? 動くとあぶねぇからな」 武雷がイタルに声をかけると同時に、ガッツリが魔眼の暗示でリカの動きを封じ込める。敵がブロックを突破しない限りは、下手に動かれるより安全だろう。 呆けたように立ち尽くすリカを見て、イタルが彼女に駆け寄ろうとする。 それを押し留めた後、武雷は迷いなく笑った。 「でももしも、リカちゃんが危なくなったら、お前が守ってやれよ? だーいじょうぶだよ! 男ってぇのは好きな子の為ならいくらでも強くなれるもんだ!」 威風を纏う武雷の力強い言葉を受けて、イタルが「うん」と大きく頷く。 それを見届けた後、武雷は戦いに戻っていった。 ――いやだ、いやだよ。みんな幸せそうなのに、どうして。 気糸に縛られて駄々をこねるE・フォースに、疾風が炎を纏うモーニングスターを繰り出す。 失恋は確かに辛いことなのかもしれないが、だからといって告白の邪魔をするのは野暮というものだろう。 ――どうして、ぼくだけ置いてかれちゃうの? 気糸に縛られたまま炎に包まれる嫉妬の化身を、ガッツリの投擲したスローイングダガーが貫いた。 リカから目を離さないまま、ガッツリはさらに千里眼で周囲の様子を窺う。万一、人が近付くようなことがあれば、すぐに仲間に報せなければいけない。 (あちきは戦闘向きじゃねーからお。皆の足を引っ張らねーようにそのほかの事を頑張るお) チームで動くからには、戦うだけが全てではない。こういった役割を引き受けるメンバーがいるからこそ、安心して戦うことができるのだ。 仲間の全員に余力があることを確認し、プレインフェザーが再び気糸を放った。彼女がいる限り、リベリスタ達がエネルギー切れを起こす可能性は低い。 詠唱により、自らの周囲に魔方陣を展開したリリィの赤い瞳が、鋭くE・フォースを見据えた。 「さあ、派手に行くわよ!」 魔方陣から生み出された魔力の弾丸が、子供の姿をしたE・フォースを穿つ。 「馬にけられるまえに、綺麗さっぱり雲散霧消してもらうぜい!」 タイミングを見計らって待機していた武雷が、強き意志を秘めた十字の光で嫉妬の塊を撃ち抜いた。 ――ひとりだけ不幸せはいやだよ。みんな大嫌いだ、みんな不幸になれ。 気糸を引き千切って束縛から逃れたE・フォースが、嫉妬の呪いを手当たり次第にばら撒く。 決して運を奪われることのない彩歌の気糸が、緻密な計算からE・フォースの弱点を的確に捉えた。 その前に立って彩歌を護るエルヴィンが、神々しい輝きで邪気を退け、不運を払う。 彼の戦いとは、共に戦う仲間たちを、そして力なき人たちを『護る』こと。 「桜が散るのは、次もまた、綺麗な花、結ぶためです」 自らの魔力で道化のカードを生み出しながら、フィネがE・フォースにそっと語りかけた。 めいっぱいに咲き誇って、鳥達を誘う、桜のような恋をして。 たとえ、実らずに終わったとしても――誰かを想って過ごした日々は、心の養分になって人を成長させる。 「あなたもです、よ。ふわふわあったかい気持ち、幸せだったでしょう?」 それを、こんな風に汚してはいけない。人の不幸を願って嫉妬をぶつけるだけでは、何も変わらない。 燻るのはもう、終わりにしましょう――。 放たれた道化のカードが、嫉妬の化身に逃れえぬ滅びを予告する。 いやいやをするように首を振るE・フォースに向けて、疾風が大きく踏み込んだ。 「人の恋路を邪魔してはいけないな」 『響』のコードネームを持つ可変式のモーニングスターが、燃え盛る炎に包まれる。 繰り出された一撃が嫉妬のE・フォースを打ち砕き、桜の下にわだかまり続けた想いごと葬り去った。 ●再び桜の下で 「ふぅ。何とかなったわね」 戦いを終えて、リリィが小さく息を吐く。 E・フォースが消えていった場所を見つめ、エルヴィンが口を開いた。 「次の恋が上手く行くよう、幸運を祈ってるぜ」 たとえ告白に失敗したとしても、その想いや勇気は、決して無駄ではないはずだから。 リベリスタ達の戦いぶりを見て目を丸くしていたイタルに、リリィが歩み寄った。 「イタル君、だっけ。……ね、人を好きになるってどんな気持ち?」 よかったら教えてくれないかな、と言う彼女に、一瞬、イタルは面食らったような表情を見せたが、少し考えた後にこう答えた。 「うまく、言えないけど。リカと一緒にいると楽しいんだ。で、たまにドキドキする」 少年の返答を聞いて、リリィが頷く。 「そっか、ありがとう。幸せになってね?」 イタルもまた、黙って頷いた。 リカを伴って仲間たちと合流した後、ガッツリは戦いの痕跡を残さぬように手早く後片付けを始める。 思わぬ邪魔が入ってしまったが、二人の告白が上手いことやり直せたら良い。 イタルとリカを順番に見て、武雷がニッカリと笑った。 「忘れちまうかもしれねぇけど、こういう必死な経験ってのは心とか魂とかのどっかに眠ってると思うんだ。 きっと二人のぶっとい絆になると思うよ。仲良くしろよ」 プレインフェザーが、イタルとリカの二人の記憶から、E・フォースやリベリスタ達が関わる部分を消去する。 今起こったことは綺麗さっぱり忘れて、何の邪魔もなく告白をやり直せるようにと。 桜の前で向かい合い、ぼんやりと立つイタルとリカを残して、リベリスタ達は速やかに撤収を始める。 セッティングは終わった。あとは、子供たちの小さな恋の物語が、上手くいくことを願うばかりだ。 「ここで俺達は退散だな。成功を祈るぜ!」 エルヴィンが去り際に子供たちを激励し、フィネが「告白の仕切り直しです、ね」と頷く。 「どういう結果になるにしろ、こういうのは本人達の後悔のないように済むのが一番いいからね」 彩歌の言葉に、疾風もまた口を開いた。 「返事がどうあれ、それも青春の思い出になるのさ」 今度こそ邪魔が入らないようにと、ガッツリが少し離れた場所で子供たちを見守る。 (ちょっとあちきが通せんぼしておこうかなだお) 二人の告白が、無事に終わるまで。 告白の結果など、部外者が気にするようなことではない。 プレインフェザーはそう言って踵を返したが、最後に一言、こう付け加えた。 「ま、上手くいくなら、それに越したことはねえんじゃねえの?」 花びらが舞い散る桜の下で、イタルはリカと向かい合っていた。 リカがここに来てから、何かがあったような気がするのだが、よく思い出せない。 でも、それもどうでも良いことだった。 大切な気持ちは、伝えたい想いは、たった一つ。 「おれ……おまえのことが好きだ」 沈黙の後に、イタルはリカに想いを告げる。 じっと彼を見ていたリカの頬が、桜色に染まった。 「――ありがと。あたしも大好きだよ、イタル」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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