● 新しい職場から家へと続く道の途中に、こじんまりとした公園がある。 (ああ、あの公園によく似ているなぁ) もしそこで彼らに会っていなかったら、自分は今どうしていただろうか。 今もあの公園の植え込みに隠れる日々を過ごしていただろうか。 アークに入ってよかったよかったよかったなぁ。 毎日、色々楽しいし。 覚醒したときはどうなるかと思ったけど、人生、薔薇色だ。 「そこの君……」 角を曲がろうとしたちょうどその時。 振り返ると、ホスト風イケメンが立っていた。 困った顔をしている。 道に迷ったか? この辺は割りと道が入り組んでるので、慣れてない人がよく迷うのだ。 彼は、やけに緊張した感じで公園の方からやってきて、僕に言った。 「た、助けると思って、このピチTを着てみちゃあくれないかなぁっ!?」 「………っ」 うっわ~。 こういう時って、声出ないんだな。 のどの奥に空気の塊が詰まって、前に出て行かない。 このままでは窒息する。 助けて、アークのリベリスタ! 変態でーす! ● リベリスタ達は、がたがたと席を立って、我先にブリーフィングルームから出て行こうとした。 しかし、扉はがっちり電子ロックがかかって開かない。 「今回は、救助優先。覚悟を決めて欲しい。この依頼、是が非でもあなた達にこなしてもらう」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、椅子を指差し、座って。と促した。 「そういうのは、おまわりさんにっ……」 今年はまだまともに梅も咲いてないし、まだ寒いしねっ! 半袖ピチTで、風邪とかひいてられないでしょ!? 人手、大事! まったく変なの増えて、おまわりさんは大変だ! 「こういうのは、リベリスタに。相手はフィクサードで、襲われそうになってるのはアークのリベリスタだから」 人手、大事って言ったよね? イヴちゃん、無表情だけど、表情が厳しいぞ。 「とにかくこの蛮行を止めてほしいの」 「なぐればいいんだなっ!?」 殴って簀巻きにして、いつもの人たちに引き渡せばいいんだな! いいと言え。 言ってくれ。 いえ、すいません、言葉が過ぎました。おっしゃって下さい。 「この男めろめろにして、ふんじばってきて」 変態くさい台詞をしゃらっと言う幼女、今日はマジキツイ。 「この男、男の大胸筋が大好物。ジャストミート18歳。そこからプラス25歳、マイナス5歳まで守備範囲」 13歳から43歳まで? うわ~。その微妙な守備範囲設定、困っちゃうなー。 「残念だけど、救助対象のリベリスタ、この時点で使い物にならない」 そうなんだ。怪我でもしたのかな。 なんで、フィクサードを誘惑しなくちゃいけないの? ねえ、なんで? 「この男、基本デュランダルなんだけど、色々他のこともかじっていて割と有能。困ったことに、女子には情け容赦なく、全力で戦闘する」 何か、つらいことでもあったんだろうな……。 「ただ好きなものを目にすると、一気にお脳の回転が止まる。そして、この男が好きなのは、男の大胸筋。厄介なフィクサード集団が横行する今、リベリスタの損耗率を下げるためなら、どんなことでも採用するべき」 リベリスタの心が損耗すると思います。 「まあ、強調の仕方も色々ありだから、そう変な格好はしなくていい」 いやだー。おかーさーん。イヴちゃんがひどいこと言う~。 「ただ、この男、吸血するけど、ポイントは大胸筋からって決めてるから」 何、その吸血鬼!? いやすぎるんですけど!? 「今、チームを結成して現場に急行しないと、いたいけなリベリスタが、夕方の路上でスーツ切り裂かれて、上半身裸で帰りたくなければこれを着るんだと強要され、あらわになった大胸筋かまれて、せっかく更生したのに、助けに来てくれなかったアークに絶望してフィクサード化したら、とりかえしがつかない」 そんな畳み掛けるように言ってくれやがらないで下さい。 「しかも、リスクが高いと分かっているのに女子チームを組むのはどうかと思う。それくらいなら、全部男子にする。と言うか、他の依頼では色々女子が恥ずかしいのこらえて体を張っている。男子も胸くらいさらすべき。減る訳じゃなし」 イヴさん、男の子にも優しくしてください。 「これ、支給品。好きなの選んで。返さなくていいから」 せめてものボーナス。 イヴは、そう言って、各種サイズデザイン取り揃えたトップがぎっしり詰まったダンボールをテーブルの上に置いた。 提供:三鷹平市商工会議所。 「まさか、みんな、因果応報とか言わないでしょ?」 ……え? 「このリベリスタ、狭山という。男の太腿、大好物。今、使い物にならないのも、フィクサードの太腿に見とれてるからなのよね。より素晴らしい太腿があれば、ちゃんと働くと思うんだけど……」 そう思うなら、半ズボンも支給しやがれ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月17日(土)22:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「またか」 『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は、ぼそりと呟いた。 「またこいつか。じゃなくて……いや、なんか面子にも見覚えしかないから間違ってないというか……」 『七色蝙蝠』霧野 楓理(BNE001827)も、下向いてぼそぼそ応じる。 別に専属チーム組んでる訳じゃないよ。たまたまだよ、たまたま。 普段は快活を絵に描いたような夏栖斗の上にのしかかる倦怠感。 「聞いたことある名前っておもってブリーフィングルームに入ったのが間違いだったんだ」 知り合いの危険を見過ごせなかったって変換。それで、かなりいい話になるから。 「いっちーとか、さーことか、めっちゃ気合入ってるし」 「あ~、そうだね。気合入ってるね。現場に着く前に脱ぐから白衣は着させてよ! ほら、寒いし! 筋肉ないし!」 楓理は、『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)と『腐ってない全然腐ってない』後鳥羽 咲逢子(BNE002453)から白衣をむかれないようにするので、気もそぞろだ。 楓理の牙城を崩せないと見るや、『祓魔の御使い』ロズベール・エルクロワ(BNE003500)は言うに及ばず、男性陣にちらっちらっと視線を走らせた後、数秒黙り、直後に声をそろえて歓声を上げる。 ロズベールが首をかしげる。 「わたしはマネージャー、かわいいマネージャー、頼りになるマネージャー、元気で明るいマネージャー! 決して!部員の太ももとか! 大胸筋とか! 太ももとか! あと大胸筋とか! そ、そんなの、見てないから! ●REC」 語るにおちてるぞ。 「あれだよ!? フォームの勉強だからねっ!?」 「も、勿論これはアークで必要なデータを撮るためなんだからねっ!」 「決して個人の趣味で太もも大胸筋太もも大胸筋そんなばかな! まだばれてない!」 「べ、別にアンタ達のためじゃないんだからっ!」 アークのハッテンのために。おっと、発展のために! なんで、ばれてないとか思えるのかな。 嘘だ。 「懐かしいなー狭山、初めての依頼以来だから半年以上前だ」 『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)は、快活に笑った。 (元気にしてて何よりだが、自分の性癖も自覚しろよ?) 今狭山がやられている事態は、狭山がいたいけな高校生にやろうとしてたことだから。 あの時は、リベリスタに阻止されたので、狭山の妄想だけで終わったわけだが。 「あの時の青年はリベリスタになったそうじゃな。実に良い事じゃのう」 『眼鏡っ虎』岩月 虎吾郎(BNE000686)は、すごくうれしそうだ。 がっしりした太腿晒した甲斐があったというもの。 「リベリスタになったそうデ、良かったよかっ……タ?」 『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)、疑問もっちゃいけない。 『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)は、不安げに仲間を見ている。 「まあ、なんだかよく分からない状況なんだが……、ともかく味方を助けつつ、倒せばいいんだな。……いいよな? いいと言ってくれ」 『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)は、人好きする笑顔で答える。 「世の中色々な趣味の人がいるのですね……。まあ、これも仕事です。無事に終えると良いのですが……」 「皆はとりあえず部活動を装って接触するらしいからな。俺も同じようなジャージと陸上部的な短パンな格好で行くぞ。で、いい汗をかき始めたらジャージを脱いで、ランニング姿だな。これなら奴等二人も注目してくれるんではなかろうか」 京一も、うんうんとうなづいた。 「それでいいと思いますよ。私も顧問役ということで、同じような格好ですし……」 「……男に注目されるのを望んでるとか、何を言ってるんだろうな、俺は……」 乾いた笑いが義弘の口から漏れる。 その肩を、京一がねぎらうようにぽんぽんと叩いた。 腐女子が喜ばない程度で。 「――いいよ、頑張るよ」 夏栖斗は、ジャージをかなぐり捨てた。 目にまぶしい、タンクトップ。 「――お嫁にいけなくなったらどうすんだよ!」 三高平で一番強烈な腐女子紹介してあげるよ。 ● 「――君とっても素敵な大胸筋しているよねパンプアップされたのも究極だと思うんだけど君みたいに均整取れた調和美を無視するのは間違ってると思うんだ――」 両手にピチTひらひらさせたままのホスト系イケメンにじりじり追い詰められている元フィクサード・今リベリスタの狭山君は、生ぬるい笑顔を浮かべていた。 (すごく自分を客観視できて、いたたまれないとはこのことです) それはともかく。 (この彼とっても素敵な太腿してるんだよね――原石の輝きって言うのかなせっかく素敵な胸板してるんだから太腿も鍛えるべきだと思うんだスマートなラインはそのまま残して余計なぷに感はそぎ落とすというか――) いたたまれないという思考が完全消滅する前に、これだよ!? 伏し目がちな狭山君が、まさか自分の太腿筋トレシミュレーションしてるとは露とも思ってないホスト風イケメンフィクサード・大原は、観念したと思ったのか狭山のビジネススーツに手をかけた。 振り返ると、キャーッという歓声と、カメラのフラッシュ音と、おもむろに脱ぎだす一団がいた。 高校生褐色少年と中学生色白少年、これまた褐色青年に野性味たっぷりおっちゃんとマイホームパパと白衣の青年、筋骨隆々爺ちゃん、ハリウッド系金髪碧眼イケメンミドル。 狭山君の表情が、ぱあっと明るくなった。 だって、皆短パンだし! じゃない、来てくれたんだね、リベリスタ! (どこから攻略したらいいか、迷っちゃうなぁ) 狭山君が何考えてるかなんとなく分かっちゃった夏栖斗の頬に、ぬるい笑いが浮かぶ。 (僕、帰っていい? いいよね、僕、がんばったよね) 帰ってもいいけど、今脱いだジャージ、咲逢子が洗濯するって回収したぞ。 タンクトップに短パンで帰るんかい? ここ市内だから、送迎車でないよ? 「部活動中にマラソンしてたらとんでもない場面に遭遇したぞお!」 半ばやけくそ棒読み説明台詞、乙! 「まだまだ寒いとはいえやっぱり走ると体が温まるのう。ちょっとジャージは脱ごうかの」 虎吾郎じいちゃんはそれはもう楽しそうに、ジャージ上下をお脱ぎになった。 まぶしい太腿に、狭山君の目が歓喜に見開かれる。 え、守備範囲外のご年齢ではって? なんのことやら。 こんがり焼けた肌に若干薄い色合いの――。 そのタンクトップ、布じゃありませんから。紐ですから! 大原の瞳も輝く。 え、守備範囲外のご年齢、以下同文。 (仕事はまじめにやるんだって!) 楓理、有限実行。公園に入る前に脱いだ白衣の下は、短パンである。 シャツのボタンはアドバイスに従い、第三ボタンまで大解放である。 「あっ、狭山くん何やってんの」 楓理さんは、心で泣いてますよ。 「いやあ。寒いといっても走りこめば温かくなるね!」 (うそです、さむい) 早春の夕暮れは、寒い。漢字変換できなくなってしまう程度に寒い。 「鍛えられた大胸筋も素晴らしいですけど、トレーニングされてないそれもまたいいと思うんですよ。自然て言うのかな。野に咲く花というか――」 小声でぶつぶつ呟かれる大原解説をうっかりこうもりの聴力で聞いてしまった今こそ自らの獣因子を憎く思えるときはない。 「狭山ではないカ、こんなところで再会できるとハ!」 自慢の黄色いおズボンのすそを捲り上げ、カイは非常に上機嫌である。 見て。我輩のAFを見て! ちゃんと前身頃が白、袖と背中が緑のピチTをイヴからの支給品の中から発見し着用。 しかも、今回は名実共にイケメン! E能力者も見破れないイケメン。というか、これがもともとの顔だし! 「うちのトレーナーになにするんだい?」 ジャージ着たまま、大原に接近。 もう防御加護はかけてある。 (ジャージ切り裂き上等! なのダ!) 「大丈夫か、狭山」 トレーニング中見顔合わせてれば、話が早いんだがとか思ってた、義弘。 「ああっ、あなたは五日前と七日前と九日前にジムに来てくれた祭さん! トレーニングのローテーションから行くと、明日当り、ジムでのプレスをお勧めします!」 うわぁ、すごく覚えられてる。 提案までされちゃった、明日はジムだね。 吾郎はギリギリまで太ももが見えるホットパンツと、サイズの小さい黒いTシャツ姿で赴く。 男性ホルモンが、擬人化されて歩いてる。 にやりと笑って一言。 「ご注文のピチピチの大胸筋と太腿の宅配だ!」 はい、こっちです。 「狼吾郎に虎吾郎!? 」 おおかみごろうにとらごろう。 昔話テイストだけど、こごろうさんって読むんダヨ? 名声値は、全体としての平均値です。 とある筋肉が好きなガチムチ業界では、虎吾郎さんの名声値は高いのです。 どうしてかは、アークの報告書をご参照ください。 「ということは、これが、アークの『死刑前、最後のご馳走』!?」 大原は、驚愕の声を上げる。 説明しよう。 それはフィクサードの間にここ最近急速にまことしやかに伝わる都市伝説である。 「アークは特殊嗜好のあるフィクサードを捕獲・懐柔・転向目的に、入念に調整された『最適チーム』を作ってくるらしい」 ロリコンには、ロリータを。ショタコンには、ショタを。 そして、大胸筋には、大胸筋を! 「篭絡か、しからずんば剣か」 それによって、かなりのフィクサードがアークの支配下に置かれているという。 汚いなさすがアーク汚い。 ハニートラップ、甘い罠。 割と合ってるけど、わざとじゃないよ。たまたまだよ、たまたま! いや、ほんと。勘弁してください。 「大丈夫? 後で……っ太腿から吸血してっ……いいからっ……ちょっと下がって戦うの手伝ってくれるかな? 狭山さんはジムにいてくれないと困るからさっ」 夏栖斗、切れ切れの台詞に、万感がこもる。 がりがりと。心の中の大事な部分が削れる音がする。 だけど、人命っていうか、人生大事。 「あの……ロズのこと、指導してくれませんか? お兄さん達みたいにかっこよくなりたいんです」 子犬のような目をしたロズベールが半ズボンです。 がばあっと開けたジャージの胸元は、花ならつぼみの未成長の大胸筋にぴちぴちタンクトップが張り付いている。 更に、普段はタイツにつつまれたすんなりとしたあんよが、今日は生足全開だ。 どうですか、お客さん! 「ああ、もちろん。一緒に、一緒に戦うよ!」 狭山君の宣言ににっこり笑って、咲逢子見参。 「さあ、狭山さんも着替えて! 来年は皆で全国行くって言ったでしょ!」 咲逢子はすごくいい笑顔で、狭山君に三高平指定短パン&体操服を差し出す。 まにあっくだ。 まさか、ここで生着替えしろと? せんせー! ここにヒドイ人がいます――! ● 割と忘れられているが、フィクサード大原をぼこぼこにして無力化しなくてはならないのだ。 つうか、いいから殴らせろ。 引き千切れたピチTの生地が宙に散る。 (不規則に裂かれた布の隙間からチラリと見えるのが重要なのダ。狭山の為に下にも刃が当たるようにするのダ) インコはサービス精神に満ち溢れています。 「その、白い胸毛、レアです!!」 「動きにくいのダ!」 襟首をつかむと、バビイイイイイイっっと、ワイルドに引き千切る。 「うっわ生千切り」 大原、うっとり。 「御厨くん」 気がつくと壱也が夏栖斗の背後にいる。 なに、このちっこいおねーさん、なんか見えない変なものしょってる。 「ごめんねー?」 かわいらしい手が夏栖斗のTシャツの前身頃の余った生地をぴんと引っ張り、全部後ろ身頃の方に回してしまった。 ぴったー。 ああっ、細かい凹凸まで顕わにっ。 下手な生より、ラッピング・エロティシズム! 「うあ、いっちー、なにする、やめっ!?」 きゅっきゅっ。 デュランダルの馬鹿力で集めた生地をまとめて結んじゃった、腹チラだ。若干腹チラだ! 「ほら! 素敵な大胸筋だよ~! 大原さん、すとっぷ! アークは素敵なところだよ!」 リベリスタになっちゃえ! 「特殊スキルその1『バスト・ア・ムーブ』 !」 1・2・3・4! 上下左右リズミカルに動く老人の大胸筋に興味はあるかね。 「ないといえば、うそになる!」 その正直さに、燃える拳が答えるぜ! 「いや、ほんと、暑い」 シャツをぱたぱたと扇いで視線を向けさせる楓理。 (うっすい胸板もいいよね。お肌、さらさらしてそうだよね) 視線を胸元に向けられて、背中を通り過ぎるゾクゾク感にも我慢して浮かべるさわやかな微笑みが涙を誘う。 (頑張れ俺。もっと頑張れ皆) 『特殊スキルその2「リッピング・ザ・タンク」』 虎吾郎の申し訳程度に体に絡んでいたタンクトップという名の紐が切れて落ちる。 浅黒くてつやつやした肌がまぶしい!いや、九割五分見えてたけどさ! 「やっぱ戦うと体が火照って来るな……そう思わないか?」 吾郎さん、大原の目前でおもむろにTシャツを脱ぎ捨てた! (挑戦的な目つきで見ながらストリップだ、これで食いつかなかったら嘘だろ) 大原はもとより、狭山君からまで、脊髄反射でおひねり投げた。 「すばらしいです、武蔵さ~ン!!」 向かってきた大原を、回避しないで、がっしいっと受け止める吾郎。 「俺、俺、もう、たまんないんです!」 あーんと大口開ける大原をハ……と見せかけて腕を回し、締め上げて動きを封じる。 ですよね~。 「欲望に素直なお前は嫌いじゃないが、そろそろ終わりにしようぜ」 「特殊スキルその3『ダイブ・トゥー・ユー』!!」 虎吾郎じいちゃんは、宙を舞った。 吾郎、すかさず大原をを解放、ソードミラージュの機敏さで安全地帯に退避。 お爺ちゃんの大胸筋が、大原のホスト系イケメンフェイスにぶち当たり、そのままボディプレス! フォール! スリーカウント! ウィナー、リベリスタチーム!! ● 「部位の違いはあれど分かり合える部分はあるんじゃね? あんた達友達になれるんじゃねーの?」 楓理は狭山にそう言った。 「お互い譲れない性癖があるなら、自分を曝け出した相手を受け入れる事ができてこそ己も受け入れて貰えるだろう」 武蔵は、ぽんと狭山の肩に手を置いた。 彼としては、二人まとめて吸血させてやってもいいんだが。 「さあ狭山、大胸筋を晒して相手の太ももにちゅっちゅするんだ。そうすれば相手も大胸筋にちゅっちゅしてお互いの事が分かり合える」 腐女子、ガン見。 舞い飛ぶ背広、空中で螺旋を描くネクタイ。 ぶっとぶボタンが一個二個三個。 「き、君も、アークに来ないか……っ」 「君が、ピチT着てくれるなら」 「じゃ、じゃあ、君は半ズボンはいてくれるかいっ!?」 「え?」 「そうそう、アナタも着ますか?」 咲逢子は、短パン、体操服を、笑顔で大原にも差し出した。 大原は、震える手でそれを受け取った。 おめでとう! なんだかよくわからないけど、おめでとう! 大原を共生する別働班の車を見送って、リベリスタはほっと息をつく。 吾郎と虎吾郎とカイは、収まるべき者が収まるべきと思われるところに収まってよかったと結果に満足していた。 京一は、子供は見てはいけませんと、さりげなくロズベールを公園の外に連れ出している。 人徳があるので誘拐犯に見えないところが素晴らしい。 楓理は全てを忘れてしまいたいと、白衣を羽織った。 夏栖斗は、今回完全に無事だった自分の幸運を何かに感謝した。 「お嫁にいける。僕、お嫁にいける……っ!!」 何にもなかったの? つまんないわね。とか言われるかもしれないけど、純潔は守られた! 「いい子にしてたらいい大胸筋データ見せるから、大人しくついてきてね」 おい、こら、その素敵な大胸筋データ、ドコで収集したんだ、壱也。 それ、もちろん君の彼氏の素敵大胸筋も含まれてるんだろうな。 (御厨くんが吸血されてるシーンもばっちり撮影……って思ったんだけどなぁ。まあいいかぁ。別の吸血シーンは取ったしぃ。狭山さんにご褒美は……) 「アークに帰るまで依頼ですって言うでしょ?」 晴れやかに笑う壱也に、狭山君は苦笑する。 「やさしくしてねっ! お願いだからっ」 涙目で可愛いこと言う夏栖斗に、狭山君は首を横に振った。 「嬉しいですけど、遠慮します。それより、ジムにも来てくださいね」 「へ? いいの?」 夏栖斗、それならそれで嬉しいけど、いいのかなぁ。いや、やらなくていいならそれが一番だよ!? 的、百面相。 「ええ、これでもアークのリベリスタですから」 ああ、あーくのりべりすたでよかったよかったよかったなぁ。 はい、三回復唱。 ● マネージャー達はこそこそしていた。 「私は前回までの私ではない。既にカメラはパソコン管理なのだ。設置したカメラは私のノートPCを通して私のPCに届けられる様に電子の妖精で管理」 「これ、さっきまでとってた太腿メインの画像」 咲逢子、もっともらしく頷く。 「皆の戦闘の良し悪しを纏めるのも私の仕事だ。動画編集して「お疲れ様でした」の手紙と共に各人のお家に届ける」 「手伝うよ~」 壱也、ノリノリ。 「間違って夏栖斗の彼女さんの家に届けてしまうのもご愛嬌」 「うんうん」 もちろん、終わったらデータは全部消すから、安心してねっ! ああ、あーくのりべりすたでよかったよかったよかったなぁ。 何回だって、言っちゃうよ! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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