●Convention 我々が生きる世界は力と力の均衡という名の緩衝地帯の狭間にある。 それを生み出しているのは先人たちの屍の上に立つ技術と言う名の砂上の楼閣であり、 その砂上の楼閣が生み出す様々な機関で世の中というものは高速に回る。 技術のサイクルとは兼ね単純かつ永遠の転輪である。 過去は現在を産み、現在はより未来へとつながっていく。それはいかなる次元たりとて変わらない。 此度の異端は我々が生きる世界の足たる機関の根本で始まり、起きる出来事。 そして、時を遡ること去年9月に端を発する異端である。 此度の異端は熱く、そしてまた激しく苛烈なる謝肉祭(カーニバル)となるだろう。 ●Metal Drive Over 崇高なる儀式に贄たる存在を欠かすことはままならない。 箱舟の勇士たちを誘い、己が戦技の糧とすべく男は一つの舞台をここに選択した。 都市の地下にはセメントで作られた迷宮の如き蟻の巣が広がっている。 その蟻の巣は鋼の疾駆を通さんがために掘り抜かれ、生み出された場所にして空間。 古を語れば蒸気機関の誕生と産業革命より生まれ、今や高速を追求せし文化の足。 地下鉄と呼ばれた鋼の疾駆に乗り込まんとするスーツ姿の民間人たちの吹き溜まりの中。 それは間断を置くことなく現れ、そして暗澹たる惨劇を生み出すのだ。 現れたのはその存在であった。凍てつかんばかりの冷気が渦を巻く。 セルシウス温度にしてマイナス237。ケルビン温度にして0。 それは運命に愛されざる存在が直ちに絶命するには十分にすぎる温度である。 一瞬で氷と消える生命の灯火。その中で生命活動の停止を免れた哀れなる生存者達の断末魔は、 輸送を目的とした疾駆の中に掻き消えていくほかないのだ。 哀れな犠牲者の心臓は瞬く間に抉り取られ、直ちにまた肉片へと変じるのみ。 大量の鮮血と、断末魔を以ってこの崇高なる儀式は成る。箱舟の勇士たちを喚び出す儀式は。 男は、それを戦人の直感と感覚を以って悟り、知っていた。 ●Calling of Ark 箱舟の英雄を支える屋台骨は狂騒の様相を隠さない。 異端は常に鈴なりであり、その対処に当たる人員も多くを割かねばならなく成る。 これ以上の過剰業務(オーバーワーク)を続ければ、人員達の損耗も持たない。 近々、人員の追加募集を掛けるようになるやもしれぬと、人事部は予算部門との折衝を続けていた。 そんな中、英雄たちを呼び寄せるのは一人のオペレータである乙女である。 巫女の仕事もまた過剰業務が続いている。これ以上は体が回らないのだ。 タブレットPCで資料のPDFを開き、いくつかの情報をやり取りしながら乙女は続ける。 「みなさん、お集まりのようですね。強力なアザーバイドの出現が判明しました。 皆様には、そちらに向かってもらおうと思います。 概要を説明するならば、凍結の力を持つ格闘術師。相当の手練で有ることは間違い有りません。 作戦目標――『凍結忍者』フローズン・ダイヤモンド。 今回、向かってもらうのは三高平市地下鉄のホームです。 時間帯は貨物列車の過密する時間帯で、本数がかなりある中での戦闘になります。 運行の停止も関係者と交渉しましたが、ダイアの関係上、これ以上止め用がないんです。 なので、轢かれたりしないよう十分に警戒を強めてください。 向かう際にあたり、一番の問題となる敵の能力ですが、 冷気を操る能力そのものには変更がないのですが、前回よりも運用の方法が変わっていて、 かなり強敵になっています。戦闘を通じてより効率化が図られていることは間違い有りません。 新たに追加された移動技に警戒して下さい。後衛の強襲がありえます。 格闘術の方も純粋な成長はないにせよ、腕が上がっているようですね。 かなりの激戦が予測されると思います。回復の充実に気を配ってください。 尚、一番の注意点としては、危険であれば撃退に留め、撤退を厭わないくらいでお願いします。 前回の戦闘に比べ、こちらも確かに強くはなりました。倒せる可能性は間違いなく上がっています。 しかし、深負いは厳禁です。相手も相当の手練であることには違いがありませんから。 ――以上、ブリーフィングを終了します。ご武運を。」 ブリーフィング中の面々の表情は時に固い者、時に喜色を隠さぬ者など様々である。 この戦闘はより激しく、かつ叙事詩に残る一戦となるであろうことが容易に想像がついたがゆえだ。 大きな山と言わずとも、歴史に残る激しき一戦。そこには戦場の不文律のみが語る聖地がある。 英雄たちの用意は確実かつ精巧なものと成るだろう。それは、男を満たす血と汗に変ずる。 告げられたる予言の日を以って聖地となるホームヘと、英雄たちは歩みを進め始めた――。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月28日(水)23:17 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●Under The City 黄昏と夜の帳の中に都市が沈む。立ち並ぶ摩天楼は夜の煌きを闇の中に投げ返し、 漆黒の闇は朧なる光と常に共にある。そんな日常を切り裂く此度の戦いに、 英雄達が身を投じるのは異端を受ければ出ねばならぬ務めであり、宿命であるのだろう。 地の境が日常と怪異を分かつ時、地下鉄のホームはコロッセオと変わるのだ。 英雄たちをアバドンの口が迎え入れ、その姿を緩やかに地下に消し行く時。 忍びの男もまた確かに、同ホームの英雄たちと対するその場所に存在したのである。 面として存在するその空間に立つことを許された男は、英雄たちの登場を以て重力に従い、 また、縁者たる者ならば知りうるその気を纏いて歓迎を行うのである。 始まりは、突然かつ苛烈。死して屍拾う者無き戦場の掟が、日常を破る。 強き者は時として定めに惹かれるがままに交錯する。それは戦闘を以て結ばれる友情にも似て。 今宵交錯する冷気と紅の相克を、戦場に見るものは居ただろうか。 運命は、『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)を英雄の一団に加え、 再びの闘争を行うことを激しくも求めた。その牙の喜びと共にあるその心理を汲むかのように、 消して笑わぬはずの忍びがふと笑って見えたのは、錯覚であろうか。 その感情の発露が錯覚であるかを問いただすかのように、紅の刃が生死を分かつ一撃を飛ばす。 掠めても尚痛打となるその一撃に、戦人としての語らざる言葉を載せて。 戦場の炎は冷気と共に燃え上がる。消して交らぬ相克を、互いに交えてなお激しく。 ステップによって刃の咆哮を後背に据え、薄氷一枚交わした先に飛ぶ拳を忍びは拳で迎え撃つ。 炎の拳と氷の拳の相克が、力と力を以て交錯する。そして、そこにあるのは揺るぎなき神話である。 交錯せし闘士の名を名簿に問えば、『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)の名は出るだろう。 流水の構えより流れ出る乱撃の土砕衝と氷を纏いし忍びの拳の鮮やかなる交錯。 青の炎と冷たき冷気のタペストリの先、織りなされる芸術は終点を未だ知ることはない。 運命が織りなす永遠の武闘。技と技の交錯が終わるにはまだ、早すぎる。 白の電燈の中に魚を圧延したかのような剣が躍る。 その鏡面に忍びの男が映ったのを認識するのは、刃が忍びを梳る後の事。 繰手もまた手練である。歴戦の中で幾つもの敵を屠り続けた剣の腕は決して鈍いものではない。 紅の闘気を纏う鬼神が舞い踊る。名を語れば知らぬ者こそ少ないだろう。 鬼神たるその女戦士こそ雪白 桐(BNE000185)。戦場を踏みしめる者である。 肉体の限界を超える代償、軋む肉体の悲鳴を自己再生で抑え、死の先を鬼神は超えて行く。 顔に表情が現われぬ忍びと同じ素質を持つ者は、激戦の中で同じ歓喜を共有していた。 戦いはいまだ終わらず。転輪もまだ弾み始めたばかりである。 戦人がその武を試すためにこの地へ降りてきたのか。果てはただの虐殺を望むが故なのか。 真実は戦場の先にしか存在しないのは不文律が故である。ヒトは生きる限り知らねばならない。 戦場もまた然り。知らねば生きることすら許されえぬ戦いのダイナミズムの中。 今はそれを問うことは下策であるとその女はふと思念を巡らせていた。 先を辿れば意思の主は知れる事。『下策士』門真 螢衣(BNE001036 )がその主である。 守護結界により仲間の防御の補助を行い、その維持に一部のリソースを裂きながら、 忍びの動向に警戒を走らせる事を怠ることは決してない。凛としたアジア系独特の瞳が戦場を見抜く。 確実なる一手を求める目は、すでに動き出していた――。 天使の一柱(フライエンジェ)が黒の不浄(ヴァンパイア)の血を継いで生まれる。 このあまりに奇怪なる事実を嫉妬深き十字の神が知ったならば、それを何と言うだろう。 神の審判は運命となり、平然と穢れた血を引く天使を地の底へと投げ落とす。 地の底へと投げ落とされた天使の階位を問うならば、知天使(ケラビム)。 罪深きその子の名を記録より引けば、名を『鷹の眼光』ウルザ・イース(BNE002218)。 戦場に立つ知天使は集中を基礎として神気より光を放ち敵を穿つ。 穿つ光の刹那、放たれる拳を回避せんとステップを踏めば、背を共にするもう一つの姿に、 彼の者の面影を見るものは少ない。戦場の中、光と影が円舞曲を踊る。 光と影と凍気の舞踊、影たるその存在こそ『背任者』駒井・淳(BNE002912)。 罪深き父と子の運命の交錯を、戦の女神は如何なる視線で見るのだろう。 そして、十字の神はそれを如何なる目で見て定めるのだろうか。 運命の転輪は弾み始める。紬ぎ断ち切る運命の糸、答えを示すも無いままに。 殺人を罪と定めたのは人の法。如何なる古き神話においても語られし始まりの罪。 しかし、その男は『愛ゆえに殺す』。今宵の忍びの男に対しても、その感情は変わらない。 殺人鬼が殺人鬼を哂う。手を朱(あけ)に染め、同じ快楽(けらく)を共有する同類の存在が。 その相手は正しく鏡。手にする得物の対岸に同類を感じ、男は戦いの輪の中でただ哂うのだ。 本質を同じくする者、名を『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)。 宵の中を疾駆せし存在の流れを引きし者。今宵の干戈に招かれし、運命の客人。 打ち出される拳を受け止める前線の後背を預かりながら。魔を抱きし閃光を以って魔を穿つ。 戦いの輪を弾ませ、希望の階を繋ぎ。そして確実なる仮初の平穏の中に体を倒置せんがために。 運命の糸車は激しくも確実に周り。戦況は緩やかなる膠着を示している。 その膠着を生み出す屋台骨たる癒し手に、付き人として守護の勤めを果たす者は欠かせない。 黒き盾を手に、茨を以って敵を阻み味方の守護を務む者。痛みを友とし、干戈の中に生きる者――。 名を辿れば『ペインキングを継ぐもの』ユーニア・ヘイスティングズ(BNE003499)。 彼は今、己の身を盾として癒し手である補助手、エリスの守護を務めていた。 此度の如き激戦場を俯瞰し、見守り、不運の影を摘み取り、払う者――。 それは日常においても、戦場においても欠かさざる努め。その事を、守護騎士はよく知っていた。 地の底に広がる激戦場は、時を追うごとにより激しい物へと変わっていく。 戦場に立つ英雄たちと忍びの男。双方の熱気が一つの触れ得ざる戦場へとホームを変えていく。 戦場の魔力は時として凶運を引き出しては英雄たちを弄ぶ。不運に巻き込まれる存在も少なくはない。 蒼炎もまたその一人。忍びの男と拳を重ねんと拳を打ち出すその刹那、 忍びの男の体がふと沈んだのを視認したのが不運の始まり。 忍びが一瞬で肉薄する。体を掴む腕が伸びたのを自覚するのが一瞬遅れた。 その危機を察し、回避行動を本能的に取るも後の祭り。次の瞬間、衝撃が意識を削ぎ落とす。 次の意識の先にあるのは地に伏す己の肉体のみだ。蒼炎も、この技を知る。 大雪崩落。忍びの男の本質により、生命を吹き込まれたその技である。 しかし、そぎ落とされた意識と言えども残る意識の萌芽が蒼炎に確実なる力を与え、 肉体に立ち上がるだけの力を与えたのを知るのだ。ハンドスプリングの要領で体を跳ね起こし、 忍びの男と距離を取れば、間断を入れずに紅蓮の刃が袈裟掛けに打ち込まれた。 一寸の時すらも惜しむかのような連続の一撃。しかし、袈裟掛けの刃をただ甘受する忍びではない。 刃と肉体の数瞬の交錯を紙一枚の間隔で避けていく、正しく薄氷を踏むかのごとき回避を見せる。 回避先での数瞬。この数瞬は時として刃となって牙を剥く。 剥かれた牙は獣のそれだ。中距離ほどの間隔より打ち込まれる居合切りの刃が的確に捕らえた。 それに重なるように、知天使の支援のための魔力補給術が飛ぶ。 「がんばって!やればできる!」 応援の声と共に支援の力が贈られる中、真空の刃に忍びの男の肉体が梳られる。 明確なまでの痛打。そこにさらに攻撃を差し挟むべく、英雄達が動き出した――その時。 運命の歯車は時として狂い出す。地獄の窯もまた、開き始めるのだ。 忍びの男の体が冷気となって直進する。前衛を抜け、後方に控える存在を確実に攻撃するために。 それを感知した熾喜多が傍の仲間を突き飛ばし、射線から外す。 しかし、真に差し迫った危機は後方に控える存在にその刃を向けていた。 散開した陣形の中、下策士の近くに位置する知天使へと。 冷気の投射で筋肉が硬直し、回避の行動を封じられたところに入る氷柱による一撃。 身に纏う防御用マント、並びに戦闘服としての水着を容易く貫通し、肉体に風穴を開ける。 打ち貫く臓器は冷感を熱さとして伝え、痛みの間隔を消し殺す。 出血こそなかったものの、朦朧とする意識が危機を伝える役目を果たすことは絶無。 敵とて、その明らかなる隙を見逃すほど穏便ではない。冷気が渦を巻いていく。 「それ、当たるとやばいかもねぇ~」 直感を以てより確実なる殺意を感じる。それは、確実に「決めに来ている」ことが理解できたが故。 鬼神がこの攻撃に一撃を差し挟むべく、己が獲物を振い体の芯へと刃を食い込ませる。 揺らぐ体は完全な技の履行を難しくするも、その一撃は確実に敵の命を奪う物。 下半身の凍結が動きを奪う中。忍びの男は跳躍より一気に知天使の背骨を後方へと削ぎ取った。 鈍い背骨と脊髄の外れる音。夥しい出血と生存の否定が襲う。 はぎ取られた生首と揺れる脊髄がその技の凄惨さを事実を以て語っている。 これぞまさしく神拳。永遠の戦いの中で、忍びが身に付けた揺るぎなき技。 運命に愛されなければそれは確実なる死を意味する。英雄の運命は決してこの事態を許しはしないのだ。 光と共に新たな肉体に魂が吹き込まれる。死を超克し、さらなる戦いへと戦士たちを誘わんがために。 「知らせばや成せばや何にとも成りにけり心の神を身を守るとは」 紡がれる言葉は時として言霊となり、忍びの男をより強固に拘束する。 行動を縛る呪詛の力がより強き力を持って相手を縛る刹那、その隙を見計らい、英雄たちも動いた。 始めに飛んだのは鬼神の鋼断の一撃だった。そこを基点として魔閃光の一撃が折り重なるように飛ぶ。 連撃を受けた忍びの体が揺らぐのは必定。英雄たちとてまた貧弱なる存在ではない。 重なるように黒の存在からの声が飛んだ。 「死相が出ているぞ」 投げられた手鏡が煌めきの中に忍びの顔を映す。そこに浮かぶのはにやけるかのような笑み。 男は死を望んでいる。その中でも戒めが解けるには時間がかかるであろうことは元より推察がついた。 より強きと戦うために男はこの時の死を望まない。今は引き、より強きと拳を交えんがために。 その点を鑑み、引き際を誤らぬのは忍びたる男の矜持であり歴戦の戦訓である。 「さっさと帰ってくれないかなあ」 そんな気の抜けたような言葉が同じ鬼からは浮いて出る。 逃げるならば深追いはしない。その意思を持つ者も少なくは無い物であったがゆえに。 青の拳が機動重視の装備を抜いて的確なる一撃を浴びせる中、黒の存在の陰陽の術がそこへ折り重なる。 確実に肉体を梳る一撃の波は、忍びにとっても危機を覚えさせるに十分なそれであった。 肉体を拘束する魔術を意思の力で引きちぎる。これ以上耐えるということもまた難しいだろう。 そう引き際を悟り、引くべくを引かんと肉体を冷気と変じ動き出した、その時――。 飛ぶ魔術と、それを支援射撃として追いすがる守護騎士の姿がそこにはあった。 「あなたの行くては、計都星と羅喉星の陰に閉ざされています。待つのは破滅だけです」 下策士の笑みが的確なる策を編み出させた確信を表情に浮かび上がらせている。 その魔術がより強き不運を重ねる中、追いすがる守護騎士の茨が呪いの剣を的確に打ち込んでいく。 たとえ命尽き果てようとも、逃がしはしないとの強き意思を共にして。 茨が呪いに満ちた様々なる悪疫を、そしてそれより放たれる呪いを刻みし剣の一撃が生命を奪う。 悪疫に塗れた茨が傷をつけながらに梳る。それは、まさしく苦痛の王が持つにふさわしき茨。 幾度も打ち込まれる刃は時として空を切りながら、忍びの男を追い続ける。 忍びの男は一つの覚悟を決めていた。その覚悟が悪意となって苦痛の王の後継者たるその存在を襲う。 もう一度放たれる必殺の奥義。この地において二度放たれることはないだろうと思われたあの技を。 その奥義に呼応して魚の如き刃の繰手、そして紅の刃の繰手も共に決戦へと臨んだ。 忍びの男に覚悟を決めさせるだけの技量、そして覚悟がそこにあるかを問う今一度の干戈。 リベリスタたちすべての覚悟を今再び、忍びの男は問うていた。 その問いに答えるかのように、すべてのリベリスタの力が今一度結集する。 苦しみの先にあるのは、勝利か、それとも一つの幕引きか。覚悟を問うその拳の先にあるものは。 その問いを確かめるべく、青の炎も再び拳を交え今一度の決戦へと臨む。 (覚悟しな、お前の終着駅はこの駅だ。) (相手が強敵なのは、百も承知。 だからこそ、前に出張って勝ちてえ…! この際だ、同じ徒手空拳できっちりケリつけようじゃねえか…! ) (敵としても不足はありません。 ――いざ、勝負。) 前衛を務める者たちの確固たる意志がより合わさり、一つの刃に変じるとともに、 三条の軌跡が忍びの男に迫る。そして、雷を纏う忍びの男の拳もまた共に迫った。 互いの譲れぬ一線をまるで確かめ合うかのように。意思と意思の正統なる激突がここにある。 その激突の果てにあるもの。それは――。 「もはや、これまで」 忍びの男の満足そうな笑みと、一つの戦いの終着。倒れ伏す男の姿がそこには、あった――。 ●Mortal Combat 死せる忍びの男の肉体は冷気と変じ霧へと消える。その骸たる姿の痕跡たるものは何もない。 しかし、英雄たちの心の中には言葉になき満足感がそこにはあった。 その胸の中にある満足感は、平穏が戻ることへの喜びにも似たそれである。 その喜びを胸に、英雄たちは箱舟へと再びの歩みを進めるのだ。 折しも月はほぼ満月に近い。戦いの行方を知る月の表情もまた――。然りである。 Fin |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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