● 「これじゃあちがう! もういい、この役立たず!」 声変わり前の、酷く高い声が響き渡る。 ガラス張りのプールの中。長い長い髪が、揺らめいている。 こぽこぽ、時折上がる二酸化炭素含みの気泡。 腕は人。胴も人。頭の人のかたち。けれどその顔は部位が滅茶苦茶に混ざり合い、額に位置した避けた口からは、だらしなく舌が零れ落ちている。 そして、腰から下は。 人間のかたちのそれの腰辺り。磯巾着の様な滑る触手が繁茂する其処に。 喰らいついたまま離れなくなってしまったかの様な姿で、巨大な鮫が繋がっていた。 一見すれば、獰猛な水生物に喰らいつかれた哀れな人間。 しかし、良く見れば化け物としか言い様のないそれを、白衣の少女は怒り狂った瞳で見詰めて居た。 ぎりぎりと歯噛みし。乱雑にボタンを叩く。表示されるモニター。プールの上の様だった。 上までガラス張りなのだろうか。何も無い場所に立つ一人の研究員が、怯え切った顔で首を振っている。声は、聞こえない。 「言い訳なんていらないのよ、カナの『にんぎょひめ』にひどいことしたんだから」 あんたがえさになりなさい。呟きと共に、再びの、ボタンを叩く音。 音も無く、研究員の立つ足場が開いて。プールへと沈む彼は、必死にもがく。 溺れる。足など届くはずも無い。けれど、それ以上に。 オソロシイモノが此処には居るのだから。 ぬるり、と。 伸びた触手が、怯え切る研究員を絡め取る。 最後に見たのは長い髪。そして。 にたりと笑った、避けた口だった。 「あ、カナです。……役立たずのせいで、カナの『にんぎょひめ』しっぱいしちゃったんだけど」 でも、ちょっと実験してもいい? 彼女は愛らしい声でそう告げる。 ごぼごぼ。 上がる気泡は、紅い。 ● 「はいはい、お集まり頂きありがと。……まぁ、伝える内容は全然有難くないけどね」 珍しく既に椅子にきちんと座った状態で。 リベリスタを迎えた『導唄』月隠・響希(nBNE000225)は軽口を叩く。 しかし、その表情はあまり芳しくは無い。微かに寄った眉は、決して資料の見辛さだけから来ているものでは無いようだった。 「……今回の敵は……エリューションの筈。っつーかそれしか分からない。分類不能。フェーズ不明。 あたしの力不足かもしれないけど本当に、何も分からない。……でもエリューションなのよ」 フォーチュナの眉が更に寄る。 極力落ち着いた声音を保って。話の続きは述べられた。 「識別名『人魚姫』、人っぽい何かに、鮫が喰らい付いたような姿をしている。まぁ、見ようによっては人魚。 腰辺りには毒を持った触手が生えちゃってる。これに絡め取られるとまぁ、死毒が待ってるから。 攻撃内容は喰らい付く、突進の様な近距離と、水の刃。因みに奴は水の中に居るので、火炎系の呪いは効かない。感電系は効く。 あとまぁ当然、水中に入らないと攻撃は当たりにくくなる。逆に、人魚姫を水上に引きずり出せたなら弱体化」 見た目通りって事ね。と、呟く声。 しかし中々に難しくないか。眉が寄るリベリスタに、フォーチュナは更に言葉を重ねた。 「現場はまぁ、大きな池なんだけど……六道派フィクサードが近くに2人居る。あと、所在不明の六道構成員。 後者は気にしない方が良い。見つかるかどうかも分からないから戦闘集中で。 前者は実力者だね。あんたら水の中に突き落としたいって以外狙いは謎。でも、池で交戦する事になる筈だから対策は練るべき。 ジーニアス。クロスイージスとマグメイガス」 まぁ、結構厳しいかもね、そう呟いて。彼女は肩を竦める。 「あたしに分かるのは此処まで。正直危ないんじゃないかな、でも、行って貰わないと困る。 ……危ない時は絶対に戻って来て。命まで賭けなくて良い。じゃ、気をつけて」 いってらっしゃい。告げるフォーチュナの表情は、冴えない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月20日(火)23:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 靴底が、湿気を帯びた土を踏み締める。 フォーチュナの言葉に従い現場の池へと急行したリベリスタ達は、無表情に此方を見詰める黒衣の男と睨み合っていた。 「お主らの実験に付き合ってやろう。其処を退け」 素早く印を結んで。全員に守護を齎す結界を張り巡らせる『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129) が鋭く敵を睨む。 池の中に居るであろう人魚姫。六道の実験体である事は確かだが、伝えられた容姿が正しければ『姫』と呼ぶには些か不細工な仕上がりだった。 その横では『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)が、姿の見えぬ構成員へと声を張る。 「聞こえてるか六道の! これから人魚姫のとこに行ってやる、邪魔すんなよ!!」 続けて、無機物を見透かす目を池へと向ける。水面近く、一瞬だけ浮かんできたそれをはっきりと目に捉え、その表情が引き攣った。 「……誰だアレに姫なんて名付けた奴」 聞くに違わぬ容姿だ。悪い意味で。道が開くのを確認し、影継は即座に水中へと駆け込んで行く。 六道の狙い。其れは恐らく、開発した新型のデータ収集、と言ったところだろうか。 其処まで予測し、彼は微かに笑みを浮かべる。それで更に強くなったモノが出てくるのなら、それも面白い。 その姿が、水中へと消える。続く、仲間達。その背を視線で追い、揺らめく水面を一度確認してから。 『紅玉の白鷲』蘭・羽音(ID:BNE001477)は鋭い視線でフィクサードを見詰めていた。その一挙一動を見逃すまい、としながら、思案する。 この人たちは何がしたいのだろうか。金の瞳が怪訝そうに細められる。 考えても答え等出ない。とりあえずは、人魚姫を退治する事が先だろう。 そう首を振って。武器を下ろした事を確認してから、羽音は最後に池へと飛び込んだ。 こぽこぽ、と。泡立つ水。 微かな音だけを連れて水中に滑り込んだ『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)がゴーグル越しに捉えたのは、揺らめく白いモノ。 (――教えてやるよ。鮫の天敵は、鮫だって事を) まぁその場合、当然サイズの大きいモノが小さいモノを喰い殺す――即ち、喰らわれるのは自分なのだけど。 ちょーこえー。微かに漏れた笑いが、泡となって立ち上る。 そんな、人のカタチをした鮫の、目の前で。おぞましきもう一体の鮫が、此方を捕らえる。 ぐちゃぐちゃに溶け合った、顔。それが歪んで。 水を揺らして伝わるのは、愉悦に満ちた笑い声。嗚呼、楽しんでいるのか。口許を歪めて、リリスは己の体のギアを引き上げる。 直後。全体に放たれたのは、鋭利な水の斬撃。 じわり、水が、紅く染まる。 その一撃を受けながらも、驚異的なバランスでその体勢を保った『無軌道の戦鬼(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)は素早く、姫の下へと回り込んでいた。 水中での呼吸を可能とする彼女にとって、深く潜る事は大した事ではない。躊躇い無く気糸で絡め取る。 敵は、醜悪だ。しかし。 (水中戦は、楽しめそうだから、悪くない、ね) すうっと。戦闘を好む彼女の唇が、微かな笑みの形を描き出す。 敵の側面。水中と言う立体的な戦場を生かす様に泳いでいた影継は、雷纏う武器を全力を以って叩き込んでいた。 続けて正面からも、羽音がヒトを切る為だけに設えらえたチェーンソーと共に、電流迸る一撃を見舞う。 立て続けに己の好まぬ雷撃を見舞われた事で怒り狂う敵を、ぼんやりと捉えながら。 『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443) は微かに、唇を動かす。 正直な事を言えば、敵のお膳立てに乗る様でこの戦闘は気に喰わない。しかし。 此処で放置しても、また同じ事は繰り返されるのだから。 体内を巡る魔力を増強して。そう、溜息を込めた気泡を漏らす。 ● リベリスタの対策は、可能な範囲内でほぼ完璧と言っても差し支えなかった。 視界の確保、意思疎通の難しい水中での、合図。それらが為されているお陰で、リベリスタの戦線は護られていた。 しかし。敵も弱くは無い。水中全てが己の庭であると言わんばかりに、リベリスタを蹂躙していた。 ぬめる触手。それが含む致死の猛毒を受けていたのは、来栖 奏音(BNE002598)とアルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425) 。 苦しげな吐息を気泡に混ぜながら。アルトリアは人魚をきつく見据える。 相変わらず趣味の悪い、しかしそれだけではなく、この人数とも対等以上に戦うだけの実力を持つエリューション。 脅威だ。しかし、自分達も負けていないと、彼女は信じていた。 頼りになる仲間が居る。自分は一人ではないのだ。ならば。 (……私は私に出来ることをするまで。) 痛む身体は、その意志で持たせる。揺らがぬ瞳で、武器を握り直した。 その意志に応えるように。水中に、破邪の煌めきが広がる。 仲間を蝕む死の毒を打ち払わんと放たれた『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)のブレイクフィアーはしかし、不運にもその癒しを発揮し切れない。 人魚、と言うには余りに醜い相手に、彼女の柔らかな面差しが微かに引き攣る。 同じく癒し手として待機していた『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は状況を見据えて己のすべき事を選択しようとしていた。 仲間が受けている傷は、浅くない。此処で癒しを齎さないのは、全体を危険に晒してしまう。 判断を終えて。彼は慈悲の名を持つ短剣を掲げる。今、この剣がすべきは絶つ事ではない。 仲間を、生かす事だ。水と共に鼓膜を揺らす福音に、仲間の傷を埋めていく。 そんな状況の中。愉悦の笑いを漏らし続けていた人魚が、不意に此方を向く。 溶け崩れた、奇妙な顔。その口が開く。 ――来る。 身構えた直後、リベリスタ全員の間を鋭利な水の刃が駆け抜けた。 ぱっ、と。水が紅く、濁る。 度重なる攻撃。そして、毒にその身を蝕まれ続けていた奏音が、耐え切れず崩れ落ちる。 力を失い、漂いそうになる身体。しかし。 己の運命を、差し出して。彼女は再び、その瞳に力を取り戻す。 けれど、体勢は立て直しきれたとは言えない。そんな彼女を庇う様に、水中であっても軽やかに動いたりりすが前へと飛び出す。 負った傷から漂う、血のにおい。相手が己と同じ鮫ならば、敏感に喰い付いてきはしないだろうか。 そんな読みは間違っていなかった。途端に、瞳が此方を向く。狙い通り。ほくそ笑んで、澱み無き連撃をその顔面へと叩き込む。 その後ろでは、天乃が奏音を庇える範囲に動いて再び気糸で敵を絡め取った。 動きを止められた事で上がる、怨嗟の叫びが鼓膜を揺らす。これは、チャンスだ。 即座に、前衛に立つ羽音のチェーンソーが唸りを上げる。 (この電撃は、どうかな? ……ビリビリ、痺れちゃえ) 水を切り裂き叩き込まれる、雷の一撃。人魚が怯んだ隙に飛ぶ、回復手達の癒し。 それを受け、影継も横合いから飛び込んでいた。動けない敵へと、全力の雷撃を叩き込む。 (迸れ雷よ! 刃となって突き進め! 斜堂流・電刃一閃!) ばちり、響く放電音。立て続けに叩き込まれた雷撃によって付与された、全身を駆け巡る電流に人魚が呻く。 極め付け、とでも言えばいいのだろうか。容赦無く、付喪が拡散させるのは、荒れ狂う本物の雷撃。 己を痛めつけたそれに、彼女は怨嗟の叫びを上げ怒り狂う。 (指示――水中では喋れぬ(´・ω・`) これで伝わるかのぅ?) リベリスタの布陣の、後方。己が魔力を練り上げて産み出した精巧な式へと、瑠琵は射撃を命じる。 既に産み出していた式にした様に、必死のジェスチャーを送る主人の指示を、それはすぐさま受諾する。 その隣では、全身に回る毒に蝕まれたアルトリアの意識が遂に途切れていた。 口から離れかける、命綱とも言えるシュノーケル。しかし。 ぐ、と。剣を握る腕に力が入る。がりがりと、運命を削り取って。再び意識を取り戻した彼女は、漆黒の衝動を敵へとぶつけた。 ● 戦況は拮抗していた。 そして、そこで引いてくれる程、この敵は甘くは無かったのだ。 回復は厚い。癒し手が状況判断に優れて居る事も、戦況を支える大きな柱だった。しかしそれでも、彼女の致死毒は脅威なのだ。 前衛が、鬱陶しかったのだろうか。それとも、考える理性など無いのか。 漸く己を蝕む呪いを全て打ち払った人魚はすぐさま、自身を巻き込む事も厭わず前衛を全てをその触手で、抉り取った。 運が味方したのだろうか。ぐらり、体勢を崩しかける其処に、畳み掛ける様に。 凄まじい膂力を込めた突進が、リベリスタの一人――影継を跳ね飛ばす。シュノーケルから漏れる、鮮血交じりの気泡。 意識が暗転し、力無く漂うその身体は、瑠琵の指示を受けた影の式神が受け止め、後方へと連れて行く。 前衛に開いた穴を埋めるのは、アルトリア。 (――さあ、次は私が相手だ) 跳ね飛ばそうと減る事のない敵を認識したのか、人魚は怒りの絶叫を響き渡らせた。 荒れ狂う白き雷撃が、人魚に襲い掛かる。 それを齎し続ける付喪は、此方を睨む様に唸る人魚姫と呼ばれるそれを見据え、微かに表情を曇らせた。 この人魚姫も、元は人間であったりしたのだろうか。分からない。 こうなってしまっては自分達のする事は一つしかないのだけれど。もしそうならば、気の毒だ、とは、思っていた。 (精々派手に散らせてやるとするかねえ) そんな、哀れみを含んだ彼の想いにも、それは気付かない。 奏音の放つ破邪の閃光に、その醜い身体が焼き払われる。 (よし、いい調子なのです~♪) 満足げな笑みを浮かべる彼女を、怨嗟に彩られた瞳が捉える。 直後、放たれたのは再びの水の刃。紅に染まる水の中、攻撃をもろに喰らった奏音の意識がぶつりと途切れる。 ゆらゆら、広がる長い髪。その身体がこれ以上の攻撃に晒されない様に、天乃は素早く自分の方へと引き寄せ、戦線の離脱へと動いていた。 後ろでは、りりすが、羽音が、毒に蝕まれながらも後衛への攻撃を防ぎながら全力の攻撃を与えている。 (このような悪性を放置しておくなど断じて許せん。絶対にしとめてみせる!) アルトリアの放つ暗黒の閃光も、人魚の体を弱らせる。呻く人魚へと、瑠琵は近寄り眉を下げる。 (吸血――今、口開けられぬ(´・ω・`)) ならば、と。その能力を込めた一撃を叩き込む彼女の後ろからは、ニニギアの、エルヴィンの癒しが飛ぶ。 敵が減らない。倒せない。辛い、くるしい。そんな想いを感じているのだろうか。 己の頭を抱え、呻くような音を鳴らし続ける人魚は、怒りの侭に全力の突進をアルトリアへと見舞う。 悪運、とでも言えばいいのだろうか。水中に響いたのは、骨の砕ける鈍い音。 力を失うアルトリアの身体が、ゆらりと水中を漂う。 それを受け止めたのは付喪。後ろに下げ、天乃の帰りを待つ。 4人ものリベリスタが離脱している今。戦線の維持にも、厳しさが見え始めていた。 前を支えるのは、りりすと羽音、瑠琵のみ。癒し手こそ健在だが、押さえ続けるのも限界が近かった。 中々に、厳しい状況だ。唸るチェーンソーを握って。羽音はその面差しを微かに曇らせた。 ばしゃり、と。まず上げたのは、自分の頭。 とっさに身構え此方を窺うフィクサードを睨みながら。天乃はゆっくりと、傷ついた仲間の顔を水中から出した。 手出しをするな。そう端的に告げれば、返るのは知ったことではないと言う嘲りの言葉。 挑発、だろうか。それに乗る事はせず、彼女は言葉を続けた。 「……戦闘実験なら、無理に戦闘不能者を投げ入れなくてもいい、はず……だし」 もし無闇に殺せば、アークとの溝が深くなる。それでも良いのか。 そんな彼女の言葉に、フィクサード達は微かに反応したように見えた。それでも、反応は無い。 ならば。 「手を出すよう、なら……私の、名に賭けて、殺す」 本気だ、と、その瞳は訴えている。暫しの間の後。漸く、武器は下ろされた。 ● 天乃が仲間を地上に横たえた頃。 水中での戦闘は、少しずつだが、終わりへと近付いていた。 運も尽きたのだろう。己を蝕む雷撃の呪いから逃れられない人魚の体を、りりすの連撃が容赦なく切り裂いていく。 呻き声。紅が散る。 ――同じ場所に、同じ獣は二匹も要らない。 負ける訳には行かなかった。自分に似たようなモノには。 (勝つためなら、命も要らん。運命も要らん。それが、) 自分のモノであるならば。 フォーチュナは言っていた。命まで賭ける必要は無い、と。 しかし、りりすにとってそれは、侮辱でしかなかったのだ。命よりも勝つことをと、願っているのだから。 ふらふらと、力無く漂う人魚の身体。此方を捉えたそれが、不意に逃げ出そうとその身を翻す。 だが、羽音がそれを許さない。その身を挺して、人魚の進路を阻んだ。道を開けろと言わんばかりに喰らい付いてきた牙に、意識を手放しかける。 それでも。彼女は目を閉じない。己の運命など、躊躇い無く差し出す。 幾ら傷ついても構わない。 だから、絶対に。 (絶対に、ここで仕留めなくちゃ……!) 振り上げた武器が、唸る。雷撃が、駆け巡る。そして。 振り下ろされた其れは、人魚の身体を深く、抉った。 倒したの、だろうか。確認に近寄ろうとする仲間を、羽音は素早く制して己も下がる。 何があるか分からない。そう身構える目の前で、人魚はけたたましい絶叫と共に、その身体を崩壊させていく。 溶け、崩れ。最後には気泡に混じって、水に溶け込む。 (……人魚姫ってのは、結局泡と消えちまう運命なんだね) じ、っと。紅の瞳が、全てが消えた辺りを見詰める。 念には念を。水上のフィクサードが、何をしているか分からない。 其処まで練っておいた作戦に基づき、エルヴィンが、ニニギアが先に立ち水上を目指す。 ぱしゃり、漸く感じる、濡れた肌には冷たい風。次いで、目に入るのは天乃と、力なく横たわる影継と奏音。 フィクサードの姿は、既に無い。それを確認してから、癒し手達は武器を下ろす。 全員が、陸へと上がる。日は、既に落ちていた。暗い池の水はもう、何も内包しては居ない。 底の知れないそれから、そっと目を逸らして。 リベリスタ達は静かに、未知なる戦場であったその地を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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