● うるんだ目。 あかいほっぺ。 しろい息。 「うえぇ……へぐ、へぐ」 藁頭巾。 かすりの小袖。 えんじのもんぺ。 見まごうことなき不審者の出で立ち。 「……えっと、どうしたの?」 いや。不審者は僕もか。 何せ、見ず知らずの女の子達に声をかけてしまったのだから。 「ひぐ、えぐぅ……おうち、帰れね」 べそべそと鼻を垂らしてしまってる。あーあー…… ひとまず、ハンカチを渡す。ぶびぃ。 途方に暮れていると、ひときわ強い風が吹いた。 「あー……うん、えっと、迷子、なのかな?」 頭を掻いて、僕はその少女達、否、童女と言うべきかもしれない。彼女達に問うた。 何せ、泣いてばかりでお話しにならない。どうしたものか。 僕がここで待ちぼうけを喰らうのは別に構わないのだけども、この子達が風邪を引いてしまうのはどうも気持ちが良くない。 「おうちが、わからないとか?」 ふるふる、と首を振った。その子は3人いる女の子達の中でもリーダー格らしく、率先して受け答えをしようとする姿が何ともいじましい。 「帰り方はわかる……けんど、帰れねんだ」 言っているうちに悲しくなってしまったのか、3人でぴぃぴぃと泣き出してしまった。 あー……何だろう。 親にでも叱られたんだろうか。なるほど、と少し納得してしまう自分がいる。 だって、子供にとって親というのは世界の全てだから。 雪の降るこんな日でも、家に帰りたくないのもわかる。 逃げるのは、悪いことじゃない。 「そっか。じゃあ、さ。僕がうちまで送ってあげるよ。そのためのお手伝いは、何でもしてあげる。だから、おうちに帰ろう?」 「……ほんとけ?」 「ほんとだとも」 とん、と胸を叩いてみせる。 暦の上ではもう春なのに、やたらと雪が降っている。この分だと、積もりそうだ。 そんな中に童女を3人、置いておけるわけがなかった。 「お兄ちゃんに任せておけ。ちゃんとおうちに送り届けてやるからな!」 「……あんちゃん」 ぱぁ、と笑顔が明るくなった。うん、やっぱり子供はこうでなくちゃ。 いらないおせっかいを焼いた甲斐もあるというものだ。 雪はしんしんと降り積もる。 「あんがと、あんちゃん!」 3人の少女が抱きついて来る。雪に冷えたのか、やや寒い。 うんうん、よしよし。大丈夫だよ。そんなことを言おうとした。 声が出なかった。 ……あれ? 何か、体が、冷えて…… そのまま、僕は意識を失った。 「……あんちゃん?」 ● 「……何というか、傍迷惑ね」 真白イヴ(nBNE000001)が呆れたように映像を見ながら言った。 「局所的だけど、天候にも影響を与えるようなアザーバイド。幸い、出てきたディメンジョン・ホールは付近にあるから、とっとと追い返してあげて」 とはいえ。 元より害意のないアザーバイド。それだけならば、わざわざアークのリベリスタを使うまでもないだろうが。 この事件を事件たらしめている、2つの要因があった。 「ひとつ。付近に、このアザーバイドを狩る存在がいる。同じ世界からの来訪者かしら。害意がない……言い換えれば、戦う意志のない存在。それでいて、力だけは立派にある女の子。餌としては格好ね」 一般人やアークの職員では、これに対応出来ない。それがひとつ。 そして、もうひとつ。 ある意味鬼などより厄介な要素だ。 「……彼女らは、そうね。伝承になぞらえて言えば、“雪童子”とでもいうべきなのかしら。 氷雪を操る能力は元より、それを司る彼女達の体は、とても冷たい。革醒者でも、ある程度の負担はかかるでしょうね」 雪やこんこ。子供は風の子。 それにしたって、これはあんまりだろう……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕陽 紅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月26日(月)22:05 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 区切るという行為は、異なる空間を生み出すという意味を持つ。これは、古今東西の和洋を問わず、表舞台から人外化生の跋扈する魔窟に至るまでの普遍的な不変の論理だ。 そういう意味では、三人の童女が公園という箱庭に集まっていたのにも、何か意味があったのだろうか。穿ってはいるが、そんな見方もある。 「こんにちは。こんな所でどうしたの?」 そして、そんな穿った見方もあれば、素直な善意も存在する。 神代 凪(ID:BNE001401)が声をかけたのは、まさにそれに拠る感情からだった。べそべそと身を寄せ合って泣いていた童女達は一瞬身を強張らせる。 その視界に映るのは、笑顔。掛け値なしの善意だけで構成されたそれを目にして。誰からともなく、肩の力を抜いた。 「ねえちゃん、だれ?」 「お姉ちゃん達はね……」 幻視を、周りに人がいないことを確認して、ちょっとだけ解いた。 彼女達を帰せること。 正義の味方であること。 相手が童女であることを差し引いても、その言葉に説得力があったのは、凪の持つ、身体ではなく心を癒せる性質の為だろう。 ひとつひとつ。聞いてはこくりこくり、と頷く童女達。 最後には、ねえちゃん達についてくだ、と小さい声で呟いた。 で。 「……なぁ、悪かったよ、機嫌直してくれないか?」 びょうびょうと吹き荒ぶ風に、氷の飛沫。童女の吐く息はそれ自体が冷たく、また身体から吹き荒ぶ何らかの力によってその冷たい吐息は勢いを増して益々荒れる。 いわゆる吹雪。もしくはブリザード。 それを浴び浴び、ツァイン・ウォーレス(ID:BNE001520)は、がちがちと歯を鳴らしながら謝っていた。 「いやぁ、泣かれてしまいましたね」 はっはっは、などと『子煩悩パパ』高木・京一(ID:BNE003179)が朗らかに笑いながら肩の氷を払い落とす。彼を始めリベリスタ達の術によって全員が氷漬けという自体は免れているが。 「子供は自由を奪われると怯えますよ。ほんと」 「悪かったって……」 はぁ、と白い息を吐くツァインに向けた京一の言葉は、子持ちの含蓄故か。 何かと言うと、ツァインが三人のいたいけな娘っ子を数珠繋ぎにしようとしたのだ。勿論当然、彼の名誉を配慮すると鬼畜の行いではなく童女がはぐれないようにという配慮なのだ。が、そもそもそういう気遣いが判る相手ならそうそうはぐれたりもしないのである。ロープを持って近付いた時点でふしゃあー! と警戒して歯を向き、繋ぐと言った所でぎゃん泣きが始まってしまったという次第。 京一のクッキーを交渉材料に和解と停戦協定を何とか済ませる頃には、随分と時間を食ってしまった。ぱりぱりと、雪を通り越して半ば凍る足元を踏みしめながら出発しようとするリベリスタ達と、雪の子達。 ところで、話は変わる。否、話は戻る。 この町は海の際に程近くある為に気温は低くなりやすい。 しかし、今は日本の冬。山間部でもない日本海側のこの町に、吹雪を生むほどの豪雪はそうそう降らない。 となれば、突如発生した雪の嵐に何か只ならぬものを感じ取るのは当然のことである。 それが人間であれ、そうでないものであれ。 「香夏子は狼なので雪などには負けません!」 『第18話:重傷出勤中』宮部・香夏子(ID:BNE003035)が胸を張る。 「鬼にも負けません! 無事に送り届けるのでドーンとお任せをです」 その言葉に、子供たちが頷く。頷きはするものの、顔は既に半泣きの様相だった。潤んだ目からもう涙が零れ落ちそうになっているのは、赤ら顔と蓑のせい。別に『悪い子はいねが!』と叫んだりはしなかったようだ。 加えてこの時、派手な火花と共に、本日二度目の局所的な猛吹雪が観測されたことをここに記しておく。 ● 短いきゅっという声の後の悲鳴。締め上げるような切ない声。 「待て、迂闊に――」 『九番目は風の客人』クルト・ノイン(ID:BNE003299)の制止の声も、ぎりぎりで間に合わなかった。 来栖 奏音(ID:BNE002598)がどさりと倒れる。押し倒すように彼女の脇腹を包丁で突き刺した鬼の横をすり抜けて、絶叫と共にもう一匹が迫る。蓑に包まれたその身体を、飛来した弾丸が貫いた。 「そういう意地悪はよくないと、アルは思いますです、よ!」 もんどり打って眼前で倒れる鬼。『ナーサリィライムズ』アルトゥル・ティー・ルーヴェンドルフ(ID:BNE003569)が叫ぶ。構えたライフルの横を風が舞った。雪に反射する日の光が、僅かにきらきらと風を照らす。香夏子のグリモワールから迸った気糸が倒れた鬼を縛り上げた。軋む音と唸る声。もがく鬼。 わらぶき幼女の目が怯えに怯えきっているのを見たツァインが、慌てて指を組んで見せた。 「ほら、お呪い。お呪い」 「おまじない……」 先刻教えられたとおりに短い指で懸命に真似をする三人。あかぎれがいじましい。それに合せて、小さく十字を切った。加護の力が周囲を包む。 「な? 平気だろ」 「うん。あんちゃん、あんがと」 見えないところでぐっと拳を握るツァイン。 「汚名返上?」 それを見て、ふわりと上から降りて来た『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(ID:BNE003405)。ぐっと立てられる親指にサムズアップを返しながら 「後ろからも来てるよ。早く突破して撒いちゃった方がいいかも」 彼女は空からの偵察を行っていた。こちらから目視出来ると言うことはあちらからも目にされるということだが、今回は有利に働いた。先程奏音を刺した一体は奇襲失敗と見るや足早に逃げ出してしまい、この場に残っているのは一体。シャルロッテが弓を引くと、闇が矢の形を成して鬼を襲う。ぶちぶちと糸を引きずって千切りながら、貫かれて後ろに吹き飛んだ。もんどり打ってから起き上がり、口をもごもごとすると遠吠えに似た音と共に烈風と氷気が荒ぶ。雪童子達のそれよりも少し弱いものの強烈な吹雪はツァインと凪を容赦なく蝕み、その歩みを止める。子供達は無事だが、おびえて動けない。そのまま包丁を振り回して襲い掛かろうとする鬼が、ふと何かを感じて後ろへと振り払った。唇の端から血を流しながら、奏音が放ったフレアバースト。横っ飛びに避ける。避けたところに居たクルトに包丁を突き出す鬼。 「氷の鬼、即ち水気」 空を裂く刃を掌で叩き落す。流れるように腹に叩き込まれた掌の打撃。 「ならば相剋は土剋水、鬼よ滅せ」 土は水を呑む。その振動を最も受けるのは水。クルトの一撃は踏み込みでコンクリートを砕き、有り余る振動が分子の結合も揺るがす。鬼の内部を砕いた。血を吐き出して沈む。 子供達の拍手喝采が聞こえた。 第一波を凌ぎ急いでその場を離れた一同だが、それは後にただの斥候であったことを思い知らされた。 とかく、敵は諦めが良い。一つの会敵では粘らない。それでいて執拗だ。彼我の実力差を測り、敵わないことを知る故か。襲撃の仕方も潜伏、陽動、挟撃と実に多岐に渡った。 恐らく、それなりの知能はあるのだろう。 「といいますか」 そんな鬼が。 「どうしてこの子達を狙っているのでしょう」 すっかりさっぱりきっぱりわかりません、とアルトゥルが小首を傾げたのは当然の疑問だっただろう。 「そだね。ね、どうしてか知ってる?」 凪が、手を繋いだ少女達に話しかけた。極低温の彼女らは、いわば生きた氷像。いやそれ以上に、周りから温度をいうものを奪っていく。そんな少女らと手を繋いでいる凪は心身ともにすっかり弱っているはずだが、白い息と紫の唇以外はおくびにも出さない。 「んとな……あいつら、おら達のこと」 童女が俯く。その目には紛れもない恐怖。 「喰うだよ」 原始的な恐怖。捕食対象に対するおびえ。野生の様子。両手に繋がった少女は凪に、あぶれた一人はおろおろしている。 「とってもかわいいのですよ♪」 と、奏音が思わず抱きしめた。ぎゅむっと、むぎゅーっと。暖かいどころか、その体は容赦なく動きを鈍らせる。それでも、何か心が暖かい感じがした。先程受けた傷から立ち直ったばかりでじわじわと体力が減っているが、それでも。 「あのな、おらのおっ母とかはな。あんなのぜんぜん敵じゃねんだ。だども、おら達は童だから」 食べるという行為に付随する意味。 食欲を満たす。そして、もう一つ。対象の力を我が物とする呪術的な意味合い。 「おら、喰われるのやだ……」 ぐすぐす、とべそをかくものの。 彼女達は、リベリスタを信用したのは確かだ。泣き出すのは踏み止まる。 まだまだ雪は止まない。雲行きは晴れ間が見えつつ、次第に暗くなっていた。 先行する奏音にクルトと上からのシャルロッテの偵察。中心では雪童子に囲まれた凪を両側からツァインと京一が挟み、殿を香夏子とアルトゥルが担う。 単純ながら、シフトを組んで行くというのは、護衛という点から行けばプラスに働いた。 ただしその影響で、特に中心の凪とツァイン、それに京一は満身創痍だ。あかぎれしもやけ、凍傷寸前の部位がそこかしこ。実際、ずっとべったりと言うのはいかに超常の存在たる彼らでも、何度か膝を付きかけた。いかに無邪気と言えど、いかに善良と言えど、アザ-バイド。世界のゆがみという不可視なことでなく、物理的に存在し得ないもの。リベリスタ達は、それを痛感していた。 しかし、いかに有り得ざる存在と言えど、いかに厄たる存在といえど、子供であることも確かなのだ。皆、負傷は覚悟の上だった。 和やかに会話をしながら進んでいく。幾分か慣れた少女達。目指す神社まであと少し。そんなところで、シャルロッテが空から降りてきた。 「いる。もう、小細工はやめたみたい」 互いに満身創痍。但し、鬼共の傷が戦闘のそれであるのに対し、リベリスタ達のダメージは大方が雪童子のものである。その力を制御できるような年齢になれば、如何程の威力を発揮するのだろうか。 であれども、今は戦う意志を知らぬ子供であり、庇護を求める者だ。最期の際に辺り、鳥居を塞ぐ三匹の鬼。二匹足りない。静かに凪が子供達の手を引いて後ろに下がる。そうする間にも、歯をかちかちと振るわせている。 「ねえちゃん……ごめんなぁ」 「何言ってるの」 笑う。凪の明るさはただ天真爛漫と言うのではない。気を配っているのが分かる。それだけに、童女達も薄々と気づいているのだ。自分達のことを。 それでも笑う。 「お姉さん達強いんだから。ちょっと待っててね?」 笑った。 リベリスタ達も、それぞれに表情を緩めて、それから顔を引き締める。 異界の存在、アザーバイド。存在するだけで律を歪める異分子。 でも、だけど、だからこそ。 それであることが罪であるなどと、認めることは出来ないのだ。 「それでは一つ、香夏子の狼煙です」 手元に作り上げた道化のカード。誰よりも早く、鬼よりも早く投げつけた。カードは先頭に居た鬼の胴に突き刺さると、黒々としたオーラが内に潜り込んだ。弾けるように、黒い棘が鬼の内から出でる。膝を付く一体を乗り越えて二匹の鬼が迫ると、一体が耳を劈くような絶叫を轟かせた。リベリスタ達が身を強張らせた。ただの恐怖と言うのではない何かが潜り込む。そこを抜けようとする鬼の一体、早々に呪縛から脱したクルトが止める。前に立ちはだかって掌を突き出すのを避けるが、抜けた所にはアルトゥルの銃口が待っていた。連続する光弾が三体を纏めて撃ち貫く。 三体が纏めて立ったところで奏音。フレアバースト。鬼達は炎に呑まれるが、すんでの所で飛び退いた。一匹が逃げ切れずに丸焼けになる。神社に繋がる石段の、上方を未だに押さえられている。その不利を脱するべく、シャルロッテが己が身を抱きしめた。戦いで得た傷が、呪いとなる。 「この痛みで雪が赤く染まったら……」 にじみ出る血が、地に沈んだ。蝕む。 「貴方にたっぷり増えて返って行くよ」 ペインキラーが食い散らす。削り取る。一体が、地に沈んだ。同時に、彼女の全身からも血が噴き出す。浅い呼吸を繰り返す。その傷が、光に包まれた。 「若い子が無茶を……」 溜息。 京一が、天使の歌を唱えた。 依頼に於いて感情を殺すことの多い彼が、今回は穏やかさを保っているのは、子供が相手だからだろうか。苦笑の中にも、少し違う感情が籠められている気がした。 その一瞬。 三匹が攻めた一瞬に合わせて、両の茂みから二体が飛び出す。強襲。どう見ても回避出来ないタイミング。 刃の煌き。 冷たい風。 体に鋼が染み込んだ。 血を吐き出した。 「あ、あんちゃん、ねえちゃん!」 崩れ落ちる。 凪とツァイン。 身体を張る覚悟をしていた者は多かった。その中でもとりわけ近くに居た二人が、咄嗟に反応出来た。 「大丈夫、だいじょう、ぶっ」 歯を食いしばる。凪は笑顔を忘れない。血生臭さを感じさせたくない。ツァインも同様。二人とも前面に子供を庇って背に怪我を負い、正面には居るだけで身体に害を為す童女。それでも笑った。 血塗れの笑みに、仲間達はその覚悟を笑わない。同じ気持ちの皆だからと。 そんな彼らに正面から挑み、奇襲も失敗した。 そんな鬼が、彼らに勝てる見込みがあるはずがなかった。 「気をつけてねー」 凪は出を振る。 本当に、彼女は一番無茶をした。手は凍傷。常識の外に身を置く者でなければ、とっくに腐って落ちていたはずだ。手が、手が、と涙目になる童女達に、それでも彼女は笑っていた。 そんなことが出来るというならば、人間でないということも悪いことばかりではないのかも知れない。 神社の裏手の大きな木の洞に開いた次元の穴から、童女達は最後の別れを交わしていた。 「もう迷子になったらダメですよー?」 アルトゥルの言葉に、クルトが唇の端を少し歪めて笑った。 「全くだ。とはいえこれで最後、何の憂いもない。……Wiedersehen」 ヴィーダーゼーエン。さようなら。ドイツ語のことなど皆目わからなかったが 「ほんと、あんがと。あんちゃんたち」 童女達は、心の底からそう言った。 そうして最後に、三人はツァインに目を向ける。 最初に心の底から怯えて、すれ違った青年に。 「守ってくれて、あんがと」 「はは、お呪い教えといて俺が勇気貰ってちゃ世話ねぇな」 本当は戦っている最中に言いたかった台詞。凍傷と刺し傷と切り傷と、単純に戦う力ではどうにも出来なかった色々な痛みのせいで言えなかった。それでも 「よく頑張ったな、偉いぞ。じゃあ……元気でなっ」 そう言った少年に、ばいばい! と笑顔で言って、童女達は異界へと帰っていった。 人と違う生き物。この世界に徒為す生物。 それでも、それは心が通じない理由になりはしない。 それを成したのは、リベリスタ達の強さだ。 砕けるディメンジョン・ゲートは、少しの迷惑と引き換えに、心の絆をこの世界に残していった。 やがて、今度こそこの世界が降らす、本物の雪が降り始める。 こんどの白は、少し優しい。気のせいかも知れないが、彼らにはそう見えた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|