●Organic Materials 今一度、問う。「ヒトの体が何でできているかを考えたことがあるか?」と。 化学におけるスタンスを取るならば、ヒトの体は多彩なる元素の混合体であり、 有機物と無機物の混合体でできていると答えるのがこれは正答に思う。 しかし、今や化学は進歩し、ヒトは魔術と変わらぬ化学を手に入れた。 その世界においての生命と機械の境は、もはや曖昧な意味しか持つことはない。 これに神秘の加わる世界であるならば、ましてや何をか言わんとするだろうか。 それを念頭においた上で、再び異端を以って私は問おう。 「生命と意思を持つ事を生物の定義とした時、機械を定義するのは何であるか?」と。 ●No Border 宵闇が食指を伸ばしては光を緩やかに食い荒らしていくさなかの出来事である。 その異端は、「歩みを止める」事を決して許されなかった。 生命の源流たる心臓の機能はすでに虚弱なそれであったが故に、他の筋肉に頼るほかないのだ。 皮膚がベロリとはげ落ちては生まれる、破壊と再生を繰り返す不自然な天秤の中、 肉体は端からネクローシスを起こし、崩落(ダウン)を起こし始めていく。 もし、破壊が再生を上回ってくれたならば、それは余程の慈悲であっただろうに。 永遠の苦痛に苛まれながら、その存在は苦悶の中で死を渇望していた。 しかし、その希望はすでに主たる存在に許されるということもまた、無い。 見張られた体、命令以外を許されるということもまた、ないのだ。 自我なき身体、機械か、それとも生命か。ただ、その無意下における望みは死。 されど死神は迎えを寄越さない。川の向こうの船の上、カロンはただ嘲笑う。 ――早く、早く私に死を。そして、安らかなる開放を。それだけをただ望みながら。 今日も化仏は人間を襲う。それしか、許されることが無かったから。 ●Fall From Dusk 勇士たちを支える屋台骨は、異端の波の最中にあって尚安らぎを知ることはない。 誰の言葉か知ることも無いが、職員はふとつぶやいた。 「――冬来たりなば、春遠からじ」 折しも異端の波の中である。 その言葉が偽りでないことを祈るかのような、そんな激務と働きの中の呟きだ。 それを裏付けるかのように、職員のデスクに目を運べば。 栄養ドリンクの瓶と書類が山積みとまたなっている。デスマーチの中の一風景だ。 これ以上、仕事が増えなければいいものを。そんな望みは残酷にも打ち砕かれて。 異端を告げる万華鏡に、巫女は冷淡なる対応を返し、勇士たちを呼び集めた。 巫女は電子の薄膜へと辛うじてヒトと呼べるかどうかの存在を映し出し、その異端への対処、 告げられし予言を告げる、どこか辛いその任務を遂行する。 「――鬼に対する対処の中で、忙しい中とは思うけれど。 どうやら休む暇はないらしいわね。新手の存在の出現が確認されているわ。 ――端的に特徴を言ってしまうならば、現時点においては分類不可能。 だからと言ってアザーバイドかといえば、それもまた違う。 現時点においては『イレギュラー』とでも呼ぶべきね。詳細が確定したら正式名称が出るけれど。 様々な要素のごった煮……いや、煮凝り。そんな存在。 作戦目標、『フレッシュ・フィギュア』。戦闘データのみ優先して収集したため、詳細含めて調査中。 状態は半機半生とでも言うべき存在で、攻撃能力は物理神秘混合、火力重視型。 近接戦闘に特化しているけれど、短時間限定の『霧化』が使用できる。 乱発はできないにしても、後衛の強襲があり得るから警戒は常しておいて欲しい。 尚、これは『動き続けないと死ぬ』特性がある。心臓がかなり弱い。 四股の筋肉を動かして血液を循環させないと持たない体のようね。 しかし、代償か体は強力な再生能力を持っていて、肉体の自壊を打ち消している。 自壊と差し引きプラスが少し出る程度。意識はしておいて。 あと、これが最後。 現段階において、アーティファクトを取り込んだと思われる形跡が見受けられる。 霧化、再生能力共に合わせてその効果を利用しての能力とも取れるけど、詳細は不明。 完全に調べきれていない部分があるから、その点注意。 以上、説明終わり。……幸運を祈ってる。」 幼き巫女においてはこの仕事もまた手馴れたそれであるのだろうとは思う。 しかし、この酷な仕事を押し付けられる羽目となるのも、また辛いものがあるのだろう。 運命に愛されると言う事。それは時として残酷で、そしてまた悪意にも似た試練であるのだから。 そんなことがふと胸に去来する中で。勇士たちは戦地への歩みを進めていくのであった――。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月19日(月)00:25 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●Nether Road 苦悶よりの開放を目的として、旧約に記された神代の頃に神は箱舟を作らせた。 それは万物の汚れを洪水という裁きを持って押し流し、世のすべてを救済せんがための手法である。 此度、戦場に立つ勇士。それは、箱舟の名を冠する組織より来たる者たちであることに相違はない。 箱舟が冥府の川の渡し舟となる時。それは、英雄たちの悪意にも似た慈悲が敵を救済する時である。 宵闇の中に影法師が踊る。踊る影は恐怖と希望を糧にして、力を増しては細く消え行く。 恐怖すら感じさせる影法師。その主は、ふと見るならば超常のそれを感じさせることもない。 影法師の繰手、機甲の繰り手――源 カイ(BNE000446)は、己の身を影を以って彩る。 彩られる影の中で、繰手は思う。生きることは苦しみか、死は安らぎ足り得るか――。 友であった音速の鬼神の死。それにふと連なるこの問いは、心に重い淀みを落とし。 その苦悶にも似た問は、仲間の心に伝播する。答えたるそれもないままに。 伝播する問い。死を慈悲とするのなら、英雄の死も安らぎ足り得たのだろうか。 抑止による死は救済の秘薬と知っても尚、英雄たる身には得てして重い答えとなりうる。 一を殺し、九を活かす。英雄もまた、同じ苦悶を抱いて、戦場に立つ。 Heroとは得てして孤独なるものだ。『アンサング・ヒーロー』七星 卯月(BNE002313)も、 そう思う。死こそ慈悲と知っても尚、それは重い問いであるがゆえに。 ――元は、普通の人間だったのだろうか。それとも、もとより奇形であったのだろうか。 その問いの答えは、戦場の先にたどり着くことでしか、確かめる事は叶わない。 創造主が与えたる苦しみからの開放を。そう、『蒼輝翠月』石 瑛(BNE002528)も願う。 正義よりも近き、強者の側にあるが故の慈悲。それは、強者でなければ望むことすら叶わぬ贅沢。 それを知ってか知らずか。ほぼ同じ思いを共有する英雄たちは、戦場の向こうへと歩みを進める。 進む歩みはコツコツとアスファルトを叩き、暮れなずむ宵闇に音の波を生み出しては消えゆく。 歩みの中の一団を見れば、人世はすべて賭けである、と博打を張る者もいる。 手の平でコインは踊り、賽は投げられ、ゼロサムゲームの人世を彩る。 屑と消えるか、花と散るか――『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)はふと思う。 難しい問いはいらない。よりシンプルに考えるほうが楽だろうと。 勝つか、負けるか。人世は常に二者択一を強いるのだから。そのほうが、気楽だ。 宵闇が光を食い荒らし、神秘で街角を静かに満たしていく最中。 結界によって隔絶されたその街角は、この世ならざる者たちが踊る舞踏場へと成り代わる。 舞い踊るは神秘の繰手、本能のままを剥き出しにして異形と共に死線を踊る。 ドロリと溶けた異形の姿を目視した時起こる率直な感情を共有する者も数多い。 戦火が交わるまでの数瞬の狭間、ヒトは心を通わせる。唇が紡ぐ言葉は、感想以外のそれになく。 「いやはや……何というか。明らかに人造ですよねコレ」 その唇は誰がモノであるかを問えば、群体の中の長、そして『一人』とも読めよう。 群体(モブ)の長であることをその衣服はただ淡々と物語る。名もなきモノであることすらも。 今、群体(モブ)は軍隊(レギオン)となる。『論理決闘者』阿野 弐升(BNE001158)。 手練れ師(プロアデプト)の口からは、極めて明快で、かつ率直な感想が漏れていた。 その言に波長が合うものは少なからざる数、居る。言に出さずとも、それはあるのだ。 「とはいえ…それで引いてるわけにも行きませんし…」 それに続け、共鳴するかのように一人、引き気味の感想を漏らす者がいる。 引いてばかりいられる立場でないことを知るがゆえに、体は引くということをしなかったが、 ただ、やはり乙女の身には重い事実であるということに変わりはない。 乙女たる魔術師――羽柴・美鳥(BNE003191)から出たその率直な感想は、 皆の根柢にある合意を再確認するかのような響きを以て空間に波を描く。 救済、義務、探究――。千差万別、人それぞれにある戦列への理由。 しかし、その根柢に流れる『運命への叛逆』という永遠のテーマを疑う者は誰もいない。 それを確認するかのように。また誰かの唇が震え、言の葉を紡ぐ。 「何れにしても、討たねばなりません。 ……叶うならば、回収して正体を解明する一助にしたいものです。」 言の葉の主の手にはすでに覚悟の表れであろうか、重槍が握られ戦装が纏われている。 人を残すは金であり、名誉を残すは銀である。主に流れる血筋は銀を貴ぶ気風を継いでいた。 名誉――騎士道十訓が筆頭。『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)。 歴戦たる乙女の視線の先には討つべき対象が収まり、思考が巡り確実なる一手を求め始める。 覚悟は既に決めていた。強敵たるその相手に引かない不退転の決意を以て。 その言葉を受けて戦端を開く数瞬、ナイフを手に躍らせながら、言葉を紡ぐ者もいる。 気楽な響きを受けたその言葉からは、緊張感は一切感じられない。 視線の先になすべきことを見据えているが故だ。それ以上、それ以下も無い。 「ええ、全力で排除方向。ですね~。」 言葉の主の名は、『飛刀三幻色』桜場・モレノ(BNE001915)。 彼の言葉が、緊張を解きほぐしたその直後。戦端は開き始まるのである。 ――戦略と、純粋な力のぶつかり合いが今、火花を散らす。 ●Actress Beast 何故、自分は死ねないのだろうか。一思いに殺してくれたならばよほどの慈悲であっただろうに。 何故、神は自らに生を課したのか。苦痛と共に生を甘受するなど、もはや拷問でしかない。 何故、何故、何故――。自我を奪われ、肉体を変性され、ヒトたるその尊厳すらも奪われる。 永劫の苦痛。開放を望んでも叶えられる事無き永遠の拷問――。 苦痛が狂気を産み、死を望むが故に一打はより重くなる。言葉なき言葉を宿す、一撃は。 その耳に、ふと届く言葉があったように思う。それは、影法師の言葉だったのだろうか。 「言葉が通じるか分かりませんが……貴方を止めに来ました」 微かに響くその声と共に、化仏の目に8名の天使たちが写って見えたのは錯覚ではない。 翼の加護を得た死天使達の降臨は救済であった。そしてそれは、影法師の拘束術より始まりを迎える。 肉体の拘束を狙う気糸が食い込む、しかし、それは容易く引き千切れる蜘蛛の糸でしか無い。 傀儡の糸を切り取るには未だ及ばぬ、しかし始まりの一撃が戦端を開く。 戦端が開けばそれは激流となって運命を取り巻く。高速なる天文計算にそれは組み込まれ、 次いで打ち込まれる撚り合わされた気糸の鋭き矢は過たず目を狙うそれである。 完全なる命中とは行かぬその一撃。しかし、痛打を以って敵を穿つ一撃は、 戦場のコマの進みを確実に進める。救済への階を築く一撃が戦場を裂いた。 流れに乗る者たちは攻撃の手を休めることはない。 騎士の末裔たるその乙女もその一人。戦場の最前線に身を置く騎士の一人として、 神罰の代行者たる意志を持って鉄槌を下す。討たねばならぬ敵を討つのは揺るがぬ意志である。 その事を乙女は知っていた。故に、それ以上の憐憫を垂れるということもまたしなかった。 ただ、代行者としての意志を下さんとせんがために。乙女は鋼を以って当たる……が。 「……え?」 その数瞬後の事だった。鉄槌が化仏たるそれを穿ち、痛打を与えた瞬間のこと。 化仏が動いたとほぼ同時のことである。騎士の腹部を異型の腕が貫き、風穴が空いたのは。 付与を受けて堅牢なる守りを悠々と撃ち砕き、肉体の持久力を平然と奪う、正しく圧倒たる暴威。 運命に愛された薄氷一枚を踏みしめる生存を受け、乙女は危機を悟り上空へと引く。 その撤退の中、後方に構える博徒は精密なる一撃の構えを見せていた。 魔術式によるアナウンスが機甲よりもたらされた巨獣のセットアップを進めていく。 (PanzerTulare.Setup. Absorb System――Ok. Bipod Setup――Ready! System All Green!) 「――人生、当たるも八卦、当たらぬも八卦ってなぁ! 一撃は当てるもんや!」 支援射撃としてはむしろ過剰に過ぎるほどの巨獣の撃鉄が引かれる。 星を穿つ精密なる射撃の一撃と己の悪運をベースに、人生をチップにした賭けに出るのだ。 こんな賭けも博打に人生を見出す男からすれば、これこそ生を感じる瞬間以外にない。 鋼鉄の一撃が敵を精密に穿つ。敵の再生すらも上回る極鋼の一撃が、勝利への道を形作る。 その流れに乗るように、群体筆頭たる者の手練師の一撃が異型を穿ち、戦場をより加速する。 加速する歯車は目まぐるしく、かつ運命の交錯の中で立ち位置すら忘れそうになるほどだ。 魔術師の援護射撃を受けて上空に上がった騎士に陰陽術師たる傷癒術が吹きこまれ、 僅かながらに傷口を埋める。被害の程と比べれば微々たるそれであるが、 有無の差を比べれば雲泥の差である。傷口を埋め、血を止めるその力は味方の活力を支えた。 「COOLに行きましょう。数で勝るのは此方。焦らずに行けば、倒せない相手じゃあない」 群体筆頭たる存在の声と共に一撃が打ち込まれんとした時。戦場の霧は突然に現れ、 化仏のそれの姿形を奪い、消し去った。正しく『霧と消えた』のである。 霧もまた人の形を型取り、物理法則の影響下から外れた存在として躍動する。 その行動を視認した警戒の声が飛び、仲間たちが上空へ飛び上がる。 物理しか持たぬ博徒は時を待ちながら集中し、傷を追った騎士は引き続き癒しの力を受けた。 近接に位置する前衛は敵を止めること能わず、その役目を果たすことは出来なかった。 しかし、神秘の力を持つそれならば物理法則に縛られぬ存在を傷することは可能である。 敵を気糸による拘束術が完全に拘束し、捉えきったのを皮切りに論理決闘者のピンポイントが飛んだ。 気糸による乱撃、魔術による支援射撃が過たず敵を穿っては削っていく。 再生による体力回復と差し引きしても余りある火力が集中し、ジリジリと化仏を追い詰め、 死と言う名の救済への階段を登らせる。それは長き長き旅路になることが容易に想像がついた。 眼光が影法師を撃ち貫き、魔力の全てを奪い去ると共に死への縁へと追いやる。 運命の力を借りずして戦場に踏みとどまったことが奇跡であることを示すかのような一撃である。 底をついた魔力にボロボロの肉体を上空へと逃し、補給と回復を受けることで持ちこたえさせる。 長い旅路である。幾度もの一撃を束ね、再生を上回るスピードで肉体を破壊していくしか無い。 しかし、その旅路をより短く加速する一撃は唐突に、しかし確実に打ち込まれたのである。 何度目かの霧化が解け、肉体が顕現した瞬間のことである。 天秤を確実に傾ける一撃が影法師より肉体に打ち込まれ、再生に楔を打ったのは。 再生が止まり、肉体の崩壊のみが進行すれば、死への階段が急速に短くなることは自明の理と言えた。 この機を逃せば他にない。回復等の体制が万全であったとしても、肉体の疲労が蓄積する。 叛逆者たちはこの瞬間に賭けた。コインは投げられ、表か裏かを確実に占う。 賭けられるチップは各々の全火力。敵の足を止める狙撃の術が敵への洗礼となり前菜となる中で。 加速する時の歯車をより弾ませるべく勇士たちの一撃が集中する。 「論理決闘者にして群体筆頭、推して参る」 敵の心臓へと手練師の一撃が打ち込まれ、肉体を穿つ。これを皮切りとして一斉に攻撃に転ずるのだ。 賭け好きの博徒もこの賭けに乗った。己の手に運命のルーレットを載せ、より激しい一撃を求め、 トリガーをたてつづけに引いていく。数発のジャムならばご愛嬌。 調子が良ければ確実に敵を穿つし、そうでなければリスクを払うのみ。 命をチップにした掛けほどに楽しい物はないのだ。 騎士も決して手を抜こうとはしない。手にする槍は己が信条のために振るわれるべき矛である。 断罪の鉄槌が信念と共に敵を穿つことを何よりも知っているのが騎士であるのだ。 英雄の星辰をより合わせた気糸も敵を穿つ。肉体を呪縛する陰陽術も肉体を縛り、 弱き心臓により負荷をかけさせる。それは、救済への門を開く鍵となっていく。 ――肉体が、崩れる。痛い。痛くてたまらない。しかし、どこか安息すら感じる。 落ちていく。何処までも、何処までも底のない奈落へ。しかし、上がっていく。 天井もない空へ、落ちながらも上がっていく。 ああ、これが死。望み続け、これ以上もない望みだった、死――。 傅く異型の体は、もはやあまり動くことも叶わない。しかし、今際の僅かな時間に戻るそれは、 言葉にならない言葉を、感謝の言葉を口にすべく、うわ言のように唇を動かそうとする。 被験体となり、死の間際でしか拘束を逃れられなかった哀れなる傀儡の唯一の意志は。 「――ari.....ga....to.u.....『M.tere』.......」 感謝の言葉、そして何かを伝えようとする意思。それだけを残して。 溶けゆく体もそのままに、安息の旅路へと異型は歩みを進めていく。 もう、これ以上苦しまなくていいのだと、知った上で――。 ●Heavens Door 「ふぅ……見ている人は何をしているのやら」 モレノの気楽な言葉が締まる空気を緩めていく。 苦闘。英雄たちも苦しみぬいた末の勝利を噛み締めながら、箱舟への歩みをすすめる。 同時並行で行われる回収作業において、ドロドロに溶けたその肉体は回収が極めて困難ではあったが、 男のものと思われる骨、そして宝珠が回収されていた。その純白の骨は何一つ欠けることなく、 月明かりに照らされてより白さを増している。真珠の如き純白を目につけるたび、 英雄たちの心理の中に安息と確信は生まれ、そして確固たる意志を持ってそこにあった。 己の行いを確信するリベリスタは、より激戦へと身を投じるのだろう。 そして、後に七星がもたらすであろう情報は間違いなく箱舟へと蓄積され、 この苦しみの元凶たる存在を確実に追い詰める。それは、被験体となった存在の確実な救済に繋がり、 悪の芽を摘んで行くことにも繋がるだろう。それは、平和につながる行為にほかならない。 英雄たちの戦いもまた、終わらない。一時の凪が齎されただけである。 それでも、そのひと時の凪の積み重ねが平和と安寧であることに違いはないのだ。 皆、それを根底で感じながら。帰投への歩みを進めていく――。 ――Fin |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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