●悪の矜持 人が成すことには必ず理由がある。誰かの為であったり、何か目的の為であったり。それは同じ事を成してもきっと人によって違うものだろう。 そして今ここにも何かを成す者達がいた。 「我らの悪というものを示してやろう」 一つ目の事件。 それは月のない夜。一人の中年の男に起こる。 都市部の中心でもあるその場所には沢山の明かりが溢れており深夜と言える時間でも全てが眠る様子はない。 「はんっ、やれるものならやってみろってんだ」 男は何かを鼻で笑い。懐から煙草を取り出して咥えた。それからライターをともう一度懐に手を入れようとしたところで違和感に気付く。 掴めない。いや、指が動かない。いやいや、それどころか手が動かない。 「えっ? い、ひ、ヒャアアアアア!?」 男は見てしまった。自分の右手が手首より先から無くなっていることに。 叫び声を上げる男に視線が集まる。半狂乱になり手首を押さえながらこの場から逃げ出そうとした男は、突然にバランスを崩して地面に転がる。 立ち上がろうとするがそれができない。何故ならそれは両手がなかったから。何故ならそれは両足がなかったから。 誰も居ないのにひとりでに解体され、そして男は息絶えた。その懐から一枚のカードを溢して。 二つ目の事件。 それは早朝。一人の富豪のマンションにて起こる。 とある部屋にて倒れ伏す黒服の男達。死んではいないがその目は今何も映してはいないだろう。 突然に目の前に現れたソレに富豪は茫然自失。ただただ自身の部屋が荒らされるのを見守るしかない。 「あ、ああっ! 待ってくれ。それは私の大切なっ!」 富豪を正気に戻したのはとてもとても古い歴史のある指輪。値が付けられないとまで言われた富豪の持つ一番の一品。 それを手にしているナニカはそんな富豪を一瞥するとそのまま指輪を無造作にポケットに仕舞い、窓を突き破って外へと躍り出る。 そしてけたたましく鳴り響くセキュリティアラーム。しかしそれは余りにも遅すぎる。 富豪が割れた窓に駆け寄り外を見やるとそこにはもはや誰も居ない。マンション最上階であるはずなのにその姿は忽然と消えていた。 三つ目の事件。 それは白昼。一つのデパートで起こる。 劈く様な爆発音と、圧倒的な破壊の衝撃が一つのフロアを支配する。 「早く、早く逃げろっ」 「助けてっ。死にたくない!」 「子供がいないの。私の子供がいなくなっちゃったの!」 人々の悲鳴も叫びも呻きも全て掻き消し吹き飛ばし、赤い炎と白い煙が全てを包む。 断続する破壊の音と、消えていく人の声。動く者がいなくなってからも未だに爆発は止まない。 それからそのフロア全てが廃墟の如く変わってしまうまで無人の破壊劇は終わらなかった。 ●悪を討つは正義の役目か ブリーフィングルームに集められたリベリスタ達は事件のあらましを聞く。確かにどれも不可解な点があり、普通ではない事件だと分かる。 しかし一度にこの三つの事件を説明される理由が見えない。殺人と強盗と爆破、どれも関連性はなさそうに見えた。 リベリスタ達の視線は『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)へと向く。その意味を分かっていると手を一度振り、大型モニターに次の画像を表示させる。 「これが三つの事件が起こる前にそれぞれの関係者に届いていたそうだ」 そこに移るのは真っ黒な名刺サイズのカード。その表にはそれぞれ白い文字で何かが綴ってある。 それぞれ『お前を殺す』『アナタの至宝、頂戴します』『芸術とは破壊を持って完成する』と一言ずつ文体もばらばらに書いてあった。 そしてその裏面には『悪』という一文字。 「このご時世で予告状か」 三つの事件の接点を知り納得したリベリスタ達だが、その犯行手口に溜息を漏らす。 「敵はフィクサードのグループ。そして次の事件を予知することが出来た」 モニターの映像がまた変わり、そこに移るのは古めかしい建物。 「都内にある美術館だ。ここでは今、宝石の展覧会が行われている」 映し出される映像では闇に染まる庭先で一人の初老の男が斬り殺され、一つの豪華絢爛にも無数の宝石が散りばめられたネックレスが奪われ、そして最後に美術館は爆破されて建物は崩れ落ちる。 この未来映像が正しければ一つの場所で三つの事件が同時に起こるのだ。 「手強い相手だがどうにか出来ない相手でもない。お前達の力を余すことなく発揮できればな」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月12日(木)23:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●解せぬ存在 夜の美術館。昼時の賑やかさは消え静まり返った館は寂しさをも覚える。 「やれやれ、予告状とはな」 暗闇に落ちる美術館を正面から見据えながら『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(ID:BNE000288)は声を漏らす。 今回のフィクサード達の悪というものが彼には理解できなかった。だからその答えを聞き出す為にも今ここにいる。 「全く、幼稚なやつらだな」 鷲祐の声を聞いていたのか美術館の裏手から回ってきた警備員の服を着た男がそう言葉を溢す。 目深く被っていた帽子を脱ぐとそこにはニヒルな笑みを浮かべた『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(ID:BNE001883)の顔があった。 中庭や館内を回っていた警備員を『丁重』に眠らせて、他の仲間と共にその他警備員一同を静かに速やかに制圧していた。そして今着ているのは警備員の控え室にあった着替えを拝借してきたものだ。 「うーん、けどさ。警備員の人達にはちょっと悪いことしちゃったかもな」 「これも仕事でございます。許しを請うのは全て終わってからでもようございましょう」 共に警備員を制圧してきた『駆け出し冒険者』桜小路・静(ID:BNE000915)は僅かに頬を掻いて苦笑し、それに警備員の装いとなった『夜闇逢魔を狙う猛禽』夕立・梟(ID:BNE002116)が言葉を乗せる。 兎も角としてこれで下準備は整ったと言えよう。フィクサード襲撃の予知時間まであと僅かとなる。 「では悪党を滅しに行きましょうか」 その心の内にその悪党への不条理さを感じつつ『穢翼の天女』銀咲 嶺(ID:BNE002104)は翼を一度はためかせて宙へと浮かぶと美術館の屋上へと消えていった。 一方でフィクサードを発見するべく美術館内を歩く二人のリベリスタ。 「タツヤ、こっちですっ」 『イノセントローズ』リゼット・ヴェルレーヌ(ID:BNE001787)は暗闇に落ちる廊下を迷いなく進み後ろに向けて小さく声をかける。 この暗闇ではとサングラスを外し胸ポケットに仕舞った『テクノパティシエ』如月・達哉(ID:BNE001662)は慎重にゆっくりとした足取りでりゼットの下へと向かう。 「けど、本当にふざけた人達です。見つけたら全力で根性たたきなおしてやるですよ!」 フィクサード達の情報を聞き義憤に駆られるリゼットはぶんっと大きく腕を振って己の怒りを表現する。 その様子に達哉は僅かな微笑ましさを覚えつつ、そしてその怒りには同意した。 「ああ、しっかり教え込んでやらないといけないな」 リゼットから見えぬように表情を隠した達哉は少し冷たい声でそう呟いた。 と、そうこうしている間に館内を一周してスタート地点だった美術館の裏口に辿り着く。 「なんだ。まだ見つかってないのか」 二人の頭上より声が落ちる。出入り口の雨避けの上から降り立ったブレザー姿の少女『不良?女子高生』早瀬 莉那(ID:BNE000598)が悪態を吐く。 フィクサードに対して只ならぬ激情を燻らせる莉那は猫科特有の獣耳を立てて音を広いながら周囲を見渡す。 「どこにいる? 早く姿を現せよ。フィクサード」 ●それぞれの悪 宵も深まる頃、それは突然に現れた。 「やあ、お嬢さん。こんばんわ」 狙われる宝石が見える窓より館内を監視していた嶺に突然声がかけられる。慌ててそちらを振り向けば、黒のスーツに身を包んだ比較的若い男が笑みを浮かべていた。その背中には黒いカラスの翼をはためかせている。 嶺はすぐさま意識を切り替え手にした杖で殴りかかろうとするが、腕が動かない。いや、腕だけでなく男へと振り向いた体勢から体全ての動きが封じられている。 よく見れば嶺の体に無数の糸が絡みつきそれが動きを阻害しているのが分かった。 「くっ、フライエンジェだったのですね」 「御明察の通り。それじゃあ失礼するよ」 悪を成す者の一人、強盗のカイは恭しく一礼すると美術館の窓を銀に光る糸にて切断するとそこからするりと身を滑り込ませた。 カイは美術館の天井すれすれを悠々と飛び目当ての宝石の前へと降り立つ。ガラスのケースに納められた値打ち物のソレに一つ舌なめずりをするとゆっくりと手を伸ばす。 「だ、誰だお前!」 しかしそれに手を触れる前に乱入者が現れた。懐中電灯の明かりを向けられカイは顔を手で庇う。格好から警備員かとふと過ぎった瞬間に明かりは突然に消え、そして迫るナニかの気配にカイは迷わず後ろへと跳び退る。 「今のを避けるとは敵ながらお見事でございます」 カランと音を立てて地面に落ちた懐中電灯が転がり、警備員の格好をした男――梟の姿を照らし出した。 その時、館の裏手では何かが近寄る気配に気付いた莉那が無言で幻想纏いより呼び出したナイフをその手に握る。 「敵か?」 それに気付いた達哉が視線を送ると莉那は小さく頷くだけしてただ一点へと視線を集中させた。 「ほっほう、まさか気付かれてしまうとは」 肥えた野太い声と共にリベリスタ三人の目の前に突然に現れるローブ姿の男。それぞれに得物を構えるリベリスタにローブ姿の男は口元を喜悦に歪ませる。 「どこのどなたか存じませんが。特別に私の芸術を見せてあげよう!」 その手に火の玉を顕現させた男、破壊狂のダンはその火球を投げつける。リベリスタ達は軽々とその炎を避けるが、目標を失った火球は美術館の壁に当たり破裂音と共にその部分に穴を開けた。 「芸術は爆発ー? だっさい考えなのです」 昔から言われてきた言葉を間違った方向に解釈しているその姿にリゼットは呆れたような声でそう挑発する。そしてついでと言わんばかりにその細腕から金糸を放ちダンへと巻きつける。さらに達哉も黒糸を周囲に張り巡らせダンの動きを押さえ込もうとする。 しかし、その気糸はすぐさまダンの放つ炎に焼き尽くされ無へと還された。 「温い。温いぞ! こんなもので私が満足できると思っているのかね!」 炎を纏うダンはリゼットと達哉に向け赤い魔弾をマシンガンのように連続して放つ。一発一発に大した力は無いが、広範囲へと放たれる魔弾を避けきれず二人はその身に無数の痛みを叩き込まれる。 「調子に乗るなっ」 叫びと共にダンへと接近する莉那。ギアを上げたその身はダンが魔弾を放つその手を向けるよりも早く肉薄する。 すり抜けるようにして莉那の振るったナイフがダンの腕を斬るが、浅い。その背中へ向けてダンが火球を放つと同時に莉那はその場を素早く跳びそれを避ける。 「いいぞ、いいぞ。もっと劇的に派手に行こうじゃないか!」 「うるさいです。壊すことが全てじゃないことを思い知らせてあげるです」 美術館のあちこちが少し騒がしくなるのを感じた鷲祐は木の上で顔をあげる。 予知による襲撃のタイミングはほぼ同時だったはずだが、この場所には人斬りどころか被害者となる初老の男の姿すら見えない。 「何か見落としているのか?」 僅かな困惑と焦りが鷲祐の思考を蝕む。その時、庭園の茂みに隠れていたはずの静が姿を現した。その手には携帯電話を持っている。 「鷲祐さん、まずいっ。アイツの狙いはここの館長かもしれねー!」 静の携帯電話に連絡をしたのはゲルトだった。その可能性に気がつき安全の為にと警備員と一緒に館長を押し込んだ美術館傍の物置小屋へ既に向かっているらしい。鷲祐は僅かに唇を噛むとすぐさま木を飛び降りて静と共に物置小屋へと走る。 一方で先行したゲルトは物置小屋を視界に捉えたところだった。その物置小屋の扉は、開いている。そしてそこから和装に身を包む凛とした面持ちの男が現れた。その手には血に濡れた刀を携えている。 「お前か。遊びで殺しを行う餓鬼は」 「……仕事ですよ。それ以上でも以下でもありません」 対峙したゲルトに人斬りのセツは表情を一つ変えず刀を一振りし刃に残る血を飛ばす。そしてそのまま納刀の構えに入ったところで、瞬時に刀を構えなおし迫る剣を打ち払った。 「無駄なことは好みません。行かせて頂けませんか?」 「黙れ餓鬼が。つべこべ言わずかかってこい、教育してやる」 体に神秘を廻らせ始め準備を整えたゲルトに、溜息を一つ付いたセツは殺意を持って刃を奔らせた。 ●悪の生き様、悪の末路 美術館の館内では激しい金属音が鳴り響いていた。暗闇の中で行われる戦闘は時に散る火花の明かりで一瞬だけその姿を垣間見せる。 カイの放つ飛針をまた叩き落した梟は目立った傷は無いものの正直なところ攻めあぐねていた。カイは戦う気がまるでないかのように館内を逃げ回り、その姿を突然に消したかと思えばこうして鋼針を飛ばす。 「されど手はございます」 また逃げる気配を見せたカイを梟は追う。そしてある角を曲がったところで――。 「どわあっ!?」 カイの間の抜けた悲鳴が上がった。梟がその角を覗くとそこには地面へと倒れ伏すカイの姿がある。もう少し視線を手前に戻せば其処には一本のワイヤーが張ってあった。 顔を抑えて転がっているカイに梟は刀を突きつける。 「お縄でございますね」 「……くくっ、それはどうかなっ!」 突然にカイと梟の間に黒い塊が現れる。それは意志を宿したカイの影、それが梟の視界を一時的に奪う。 一瞬の隙をついて逃げ出したカイはそのままに目当てであった宝石へと一直線に向かう。 「危ない危ない。こんなところさっさとおさら――」 ガラスケースを砕き乱暴に宝石を手にしたカイはニヤリを笑みを浮かべる。だが、それを懐に仕舞おうとしたところで突然に腕を弾かれ手にしていた宝石は何かに絡め取られるように奪い去られる。 その行く先を追えば、操る気糸から宝石を受け取った嶺が冷笑を浮かべて佇んでいた。 「織れば高価な鶴の糸。如何ですか?」 冷たい視線に射すくめられてカイは乾いた笑いを上げながら後退る。逃げるしかない、そう判断したカイであったがそれは余りにも遅すぎる判断だった。 気付けば堅そうな杖の先端が目前に迫っていて、次の瞬間にカイはその背にある翼を使わずに宙を飛んでいた。 「ああ、もう。しつこいなっ!」 莉那は自分の幻影を貫く魔弾を視界に納めながら幾度目かの刃をダンの体へと突き立てる。 穴だらけで赤黒く染まったローブを見てもかなりのダメージを与えているはずだった。だが、それでもダンはまるで痛みを感じていないかの如くさらに魔法を放つ。 「仕方がないな。少し強引だが、押し切る!」 達哉がダンを睨みつけると突然に視界が歪む。その歪みは一瞬でただ一点に凝縮されるとダンを目掛けて爆発的に解き放たれた。 「ぐおぉ、これくらいでぇはぁ、私の芸術には程遠いぃ!」 その身を仰け反らし、さらに二発目を食らって地面を転がるもダンは血反吐を掃きながらまた立ち上がる。ローブから覗くその目には既に狂気の色しか残していない。 だが、理性の糸が切れかけているからこそそれが好機となった。一枚のカードがダンの胸に突き刺さり込められた呪いがダンの何かを削り落す。 「これでどうですっ」 リゼットはさらに金の気糸を巻きつける。始めは炎で焼き尽くされたが今回はその身を縛りつける。 動きを封じられたダンを莉那は踏みつけそのまま刃を振り下ろそうとする。しかし、その振り上げた腕は達哉に掴まれて止められた。 「これ以上必要ないだろう」 そのまま莉那と達哉の視線が交じり合う。暫くして先に視線を外した莉那は掴む腕を払い館の別の場所へと向かって歩き出す。達哉はそれを苦笑を持って見送った。 その間に倒れ伏すダンにリゼットはそっと近づく。そして言葉をかけようとした時だった。 「次は壊すんじゃなくて――えっ?」 リゼットの視界が赤に染まる。そして何か軽い衝撃と共に色は灰へと変わり、僅かな浮遊感の後に背中に僅かな痛みを覚えた。 「芸術! 芸術が、今最高傑作がここに生まれるぅ!」 狂気の叫びが木霊する。満身創痍であったはずのダンが起き上がり、その身にまた炎を纏わせる。いや、ダン自身が燃えだしていた。 「タツヤっ」 「怪我はないかい。うちの可愛いウエイトレスに傷でもつけられたら大変だ」 リゼットを覆い被さるようにして庇った達哉は背中の焼けるような痛みに顔をしかめる。 失念していたのかもしれない。相手はフィクサードでありフェイトを得たエリューションの一人であることを。 そこに他の仲間へと加勢に行こうとしていた莉那が異常を聞きつけ戻った。そして目に映る光景に驚愕、さらに混沌と混ざり合う感情が一つの形へと凝縮する。 「だから言っただろ。こんなフィクサードなんて生かしちゃ駄目なんだ……ここで殺す」 炎の塊となり美術館の一角を炎弾で吹き飛ばすダン。莉那はその背後に素早く回りこみ、滑らせるナイフでその首を素早く刈り落とした。 鷲祐と静が物置小屋に辿り着いたとき。最初に見たのは崩れ落ちるゲルトの姿だった。 俊足を持ち一太刀で相手を切り伏せるセツと守りに長けたゲルトでは相性が悪かったとしか言えない。 「私の仕事は済んでいます。行かせていただけませんか?」 セツは冷たい声で二人に告げる。その言葉の意味するところを察し、静は手にしたハルバードを強く握り締めた。力を流し込まれたハルバードはその意志を汲み輝きを灯す。 「何でだよ……人殺しなんて、何でそんな事やってんだよお前は!」 叫びと共に振り下ろす一刃。しかしセツは流れるような動きでそれを避け、砕かれる地面の欠片も掠らせず平然と言葉を返す。 「貴方達と同じですよ」 さらに高速で飛び掛る鷲祐のナイフにあわせるように刀を振るい鍔迫り合いをしながら対面する。 「悪とは何だ? それを行う理由……答えろ」 「悪とは誇り。私は生きるために人を殺す」 答えと共にセツから放たれる瞬閃。幾重にも重ねられた刃の連撃に鷲祐は短剣を持って弾き紙一重で避ける。 セツがさらに一歩前へ出ようとしたところでそれを止め脇差を抜き横合いへと振るう。迫っていた烈風の刃が脇差とぶつかり、殺しきれずすり抜けた刃がセツの頬を浅く斬りつけた。 「許せねぇ……お前、許せねぇよ!」 静の振り回すハルバードが風の刃を生み出し縦横無尽にセツへと迫る。だがセツはその全てが見えてるかのように後ろへと跳びながら交わして見せた。 セツは静の叫びには応えず、そのまま刀と脇差を鞘へと納める。 「私はこれにて失礼を。運悪くまたお会いしないことを願います」 セツが二人へと目礼をするとその姿を暗闇の奥へと躍らせた。すぐさまその姿を追い周囲を見渡すが気配は完全に消えている。 静は悔しげな表情を浮かべるも、すぐ倒れているゲルトの元へ向かう。幸いにも息はあり気を失っているだけのようだ。 鷲祐が物置小屋の中を覗くとそこにはまだ意識を取り戻さない警備員達と、そして館長の斬殺体……。 「俺はまだ、何も成せていない」 外に響き始めたサイレンや人声の喧騒が耳に届く。リベリスタ達はその場を後にすることとなった。 かくして悪は滅びず。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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