●空を駆けるもの バリバリと音を立てて5m以上はあろうかという金属の塊が空に浮かぶ。 もっとも、それが本当の攻撃ヘリであれば大きさは三倍近くになっていただろうし、響く音も比べものにならない程にけたたましい物となっていた事だろう。 音の大きさや外見の大きさが周囲に気付かれ難くするものなのか如何かは分からない。 ひとつだけハッキリしているのは、その攻撃ヘリに似て非なる存在は……本来の攻撃ヘリに匹敵する、異質さという点においてはそれを遥かに上回る危険さを持っているということだ。 機首下に設置された銃身と、スタブウイングの両端と牽下パイロンに装備されたミサイル群。 それらで狙うべき目標を求めて。 3機のエリューションゴーレム達は廃墟のような場所から飛び立ち、移動を開始した。 ●大地を駆けるもの 「プラスチックモデルなのかラジオコントロールヘリなのか分かりませんでしたけど、そういう関係のE・ゴーレムだと思うんです」 端末を操作しながらマルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)が説明する。 すぐにディスプレイに巨大な攻撃ヘリの姿が映し出された。 パッと見は確かに普通の攻撃ヘリの様な外見をした『それ』は、よく見ると確かに所々に何か不自然に感じられる部分が存在している。 「今までは郊外……取り壊された工場の跡地みたいな所にいたのですが、獲物を求めてそこから移動するみたいで」 ただ、急げばそこから離れる前、人の居ない、戦闘の障害となるような物のない場所で戦うことができそうですとマルガレーテは説明した。 E・ゴーレムの数は全部で3機。 「フェーズは2になったばかり、くらいみたいです」 ある程度連携し戦闘を行うそのエリューションたちは、常に飛行状態で移動や戦闘を行ってくる。 加えて攻撃は遠距離攻撃のみだ。 何らかの手段で飛行するか、遠距離攻撃の手段を用意しない限り攻撃を行うことができないので注意が必要だろう。 また、飛行する場合は命中や回避、防御力等が地上戦に比べて低下するので其方にも注意が必要だ。 「E・ゴーレムの方は空中戦に適応しているようでそういった性能の低下はないようですが……」 反面、地上に着陸してしまった場合は逆に命中や回避、防御の性能等が低下するようだ。 「あと、着地してしまった場合は離陸して上昇するという以外の行動が行えなくなるようです」 何らかの手段、例えば上から地上に向かってノックバック等を利用して地面に叩きつけることができれば、一時的であれ有利に戦いを進められるかも知れない。 もちろんそれに固執すれば危険を招く可能性もあるが、戦法のひとつとして考慮するのは悪くないだろう。 「E・ゴーレムは動きが早く、回避能力にも優れています」 耐久力の方もそれなりに高い。ただ、防御力の方はやや低めのようだ。 「神秘攻撃の方が効きやすいようですが、物理攻撃の方も充分に効果がありそうです」 そう説明してからマルガレーテは敵の攻撃について説明し始めた。 E・ゴーレムの攻撃手段は3種類。 「1つめは防御力を無視してダメージを与えてくるミサイルになります」 攻撃力も高く、命中精度の方も優秀のようだ。 「強力な武器ですが、この攻撃は地上の敵に対してしか使用しないみたいです」 3m以下の低空の相手にも使用はするものの、それ以上……つまりは通常の飛行を行う相手に対しては使用してこないらしい。 「対して2つめの武器は逆に空中専用みたいです」 こちらは地上や低空飛行をする相手には使用せず、通常飛行を行う相手に対してのみ使用するようだ。 「攻撃力の方は地上用と比べて落ちますし特殊な効果もありませんが、命中性能は極めて高くなっているみたいです」 通常ならばほぼ直撃、回避能力の高い者でも完全に避けるのは極めて困難という程の性能らしい。 「3つ目の武器は機体の下部についている機関砲のような物です」 これには地上や空中という制限はない。 「攻撃力は高くありませんが命中性能はかなり高めです。あと連射してくる可能性もあるみたいです」 あと、この武器に関しては弾数の制限がないみたいですとマルガレーテは付け加えた。 前述した2種類のミサイルの方には弾数制限があるらしい。 「1機につき対地用の方は8発、対空用は2発、装備しています」 基本は1発ずつ使用するが、場合によっては一度に複数を発射する可能性もあるようだ。 「ただ、その場合も1度の攻撃で使用するのはもちろん1種類。目標1体に対しては1発ずつでしか攻撃しないようです」 2発撃てば、2体にそれぞれ1発ずつ。4発撃てば、4体に1発ずつ。 1体に対して一度に2発以上を発射するということは不可能のようだ。 「基本的にはダメージを受けている対象に攻撃を集中させてくるみたいなんで、多人数がダメージを蓄積させている……みたいな事がなければ大丈夫とは思うんですが」 ただ、劣勢になった場合等に一気に戦局を打開しようとして一斉掃射みたいな可能性もあるので充分に注意して下さいと少女は敵の戦い方について説明した。 「あと、外見や攻撃手段は実在する兵器に似ていますが、一部特徴を模しているというだけで中身はエリューションです」 通常の攻撃ヘリ等の弱点は恐らく克服している、あるいは元々持っていないと考えるべきだろう。 対戦車ミサイルを人間に対して発射してくる辺りで、模しているという表現もある意味で微妙ではあるが。 「逃げるという性質は持っていませんが、それだけに危険な相手です。どうかお気をつけて」 マルガレーテはそう言って、リベリスタたちを見送った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月02日(金)22:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●対空戦闘準備 「攻撃ヘリ相手に対空戦闘とかゾッとしないわ」 深刻ではあってもどこか冗談めかした雰囲気も漂わせながら『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)が口にする。 とはいえ本物のようにキロ先から薙ぎ払われる事がないだけマシかと考えれば、気持ちも少しは変わるというものである。 「ヘリ相手やと気休めさねぇ」 『√3』一条・玄弥(BNE003422)はヘリのエリューションでっかと気乗りしない様子で呟いた。 足下をしくじらないように草履をしっかり履き、視界確保のためにとゴーグルを装備したものの、勿論充分からは程遠い心境である。 (ヘリの飛行能力は厄介やなぁ……ホバリングとかそらおとっろしい。飛行ユニットに地上ユニットは弱いきぃになぁ) 「まっ、泣き言いっても始まらへん」 気張っていくかねぇ。 そう自分に言い聞かす。 (うーむ……対地攻撃が充実しているヘリに迎撃戦闘ですか) 「志願制の弱みとはいえ、ちょっと面子が寄りすぎましたかねえ……」 そう言いはしたもののユーキ・R・ブランド(BNE003416)の内では既に結論は出されていた。 「ま、仕方がない。やれるだけはやってみましょう」 「確かに我らに翼は無い」 彼女の言葉に続くように『ENDSIEG(勝利終了)』ツヴァイフロント・V・シュリーフェン(BNE000883)は口にした後、だが、と続けた。 「0:00の旗取りを制した最速を誇る八の牙。飢えた狼は鳥をも牙にかける事を教えてくれよう」 え? いや、何でもない。 「いやぁ……生身でヘリとやりあうか」 一方で『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)の方はというと、これはこれで楽しそうだという心境。 幸い、ここにいるのは自分たちとエリューションのみ。 他に気にするべきものは何もない。 「今回も例外なく危険なE・ゴーレム……郊外で徘徊しているだけで助かりました」 その手のマニアが見たらお持ち帰りしたくなるモノがまた現れました。 源 カイ(BNE000446)が思い出しながら呟いたのは以前戦った戦車型のゴーレムの事。 「被害が出る前に、ここで倒すとしましょう」 そんな其々の様子を見つつ。 「さぁて、対空砲火の準備はOK?」 狩り気分の空の狼に戦争を教えてあげましょうとエナーシアが皆を見回す。 クルトとツヴァイフロントは装備してきた懐中電灯を構えた。 集中攻撃をする為の個体を識別する為の用意である。 ツヴァイフロントは他にもHEAT対策としてシリコン製のDVDを何枚か服に仕込む。 効果はなさそうだが、あったらもうけくらいの気持ちである。 他にも障害物としてタイヤを外したトラックを。 玄弥もアクセスファンタズムからガソリン抜き済みの4WDを障壁代わりにと取り出し、カイも車を配置した。 とにかく色々と試し、効果があれば儲け、くらいの気持ちである。 頼り過ぎればそれが失敗につながる事は此処にいる皆が分かっている。 これらの準備が今回の戦いにどのような影響を与えるのか、どのような結末へと導くのか? 現時点で知ることはできない。 彼ら彼女らにできることは、唯、全力を尽くすことだけだから。 ●対空戦闘用意 「こいつらって、こいつらが居た工場で作られてたプラモだかなんだかがエリューション化した奴かな」 接近してくるE・ゴーレムたちを眺めながら、明神 火流真(BNE003346)は、ふと……思ったことを口にした。 もちろん、それは現時点では判別しようもない事である。 「まー細かいことはいいか。一般人が狙われる前になんとかしねーとな!」 そう結論を出した火流真の傍らで。 「魔力円環、無限機関開放、魔力チャージシステム良好。さあ、当面はこれだけで戦える」 戦闘準備を整えた明神 禾那香(BNE003348)は、戦いが始まる前にと火流真に話しかけた。 「男の子の浪漫と言うのだろう? 戦闘機や戦闘ヘリに向ける情熱というものは」 (そういう意味では実に火流真好みとは言えるが……) 「火流真は、ああいうの、好きだろう? ロボット物」 「だから、戦闘機や戦闘ヘリはロボットじゃねー!!」 力強くそう言った後に、けど~と続けていく火流真の言葉を聞きつつ、禾那香は視線をゴーレムたちへと向ける。 (まあ、でもしかし……地を焼き、空を裂く、あの火線と爆雷に心ときめくものが無いのかと言われたら……) 「ふむ、若干ながら理解を示しておこう。あれはあれで悪くはないかもしれん。照準がわたし達がでなければな」 「だからお前、全然聞いてないだろ!?」 まあでも最後のには同感だ。 火流真も、皆と同じように戦闘態勢を整える。 敵は先ずこちらの強さを、耐久力を確認しようとしているようだ。 エナーシアがエネミースキャンを行い、知覚した情報を皆に伝達する。 接近してくる攻撃ヘリ型のE・ゴーレムの1体へとクルトは用意してきた懐中電灯を向けた。 近距離で直接等でなければ戦闘の邪魔にはならないかも知れないが、懸念していた通り敵の動きは機敏だ。 無理に照らそうとはしないようにと自身に言い聞かせる。 優先はあくまで攻撃だ。 充分に距離を詰めたエリューション達が、その照準をリベリスタたちに合わせてくる。 機体下部のチェーンガンが、唸りを上げて銃弾を発射する。 それが、戦いの始まりを告げる合図となった。 ●迎撃戦 放たれた銃弾が遮蔽代わりにしていた車達を次々と貫通する。 金属塊たちは蜂の巣となって遮蔽効果を喪失したが、それでもヘリたちの初撃の精度を落とす事には成功した。 E・ゴーレムたちはとにかく適当にという感じで、戦力を窺うように機関砲を発射する。 結果的に標的とされたのはツヴァイフロント、禾那香、玄弥の3人だった。 幸いしっかりと狙いを定められなかったが故に3人の負った傷は大きくはない。 それでも耐久力に劣る禾那香の傷は油断できないだけのものだったが、彼女の力によってそれらの負傷は早くも癒された。 もちろん他の者たちも既に行動を起こしている。 カイは自身を援護させるために意志持つ影を作りだし、玄弥も敵の攻撃を無力化する闇のオーラを身にまとう。 既に流水の構えを取っていたクルトは斬風脚で1体を狙うが直撃は与えられない。 漆黒を解放し身に纏ったユーキも暗黒の瘴気で2体のゴーレムを攻撃するが、此方も威力を完全に発揮することは出来なかった。 「驚け。私自身どうやって届いているか分からない多角的な強襲!」 ツヴァイフロントの攻撃も何とか命中はするものの、直撃には至らない。 魔力を増幅させていた火流真の召喚した魔炎は、炸裂する前に回避される。 与えたダメージは決して大きくはない。 それでもゴーレムの、攻撃ヘリの機体の一部を傷つけ歪ませるには充分なダメージだった。 損傷による識別が可能と判断したユーキがその事を皆に連絡する。 それらを、味方の戦闘を確認していたエナーシアは、自身の標的を攻撃を受けていないゴーレムに定めた。 高めていた狙撃手としての感覚を更に研ぎ澄まし…… 次の瞬間、放たれた無数の弾丸が牽下パイロンに積載されたヘルファイアの1本を直撃する。 ミサイルの外見をした何かは爆発はしなかったものの、ひしゃげる様にして中央部分から折れ、砕け散った。 どういう原理なのかは分からないが、それもEゴーレムの一部だったらしい。 ダメージを与えることにも成功したエナーシアは更に敵の攻撃手段を奪うべく、次のミサイルへと視線を向けた。 ●ヘルファイア 一方、3機のEゴーレムたちも自分たちの敵が強力な存在だと認識の修正を行っていた。 一射目の銃撃はあまり効果はなく、逆に敵の攻撃は直撃はしないものの完全に回避するのが難しいレベルの精度を持ち、破壊力も侮れない。 そう判断したゴーレムたちは、攻撃を機関砲から誘導弾へとシフトした。 攻撃をほぼ回復されてしまった為に敵耐久力の判断ができていない。 よって同じ目標へと攻撃を続行する。先刻と同じ3人に向かって対戦車ミサイルに似た形状をした物体が発射される。 そのうちの1発、禾那香を狙ったヘルファイアの前に立ち塞がるように、カイが飛びだし身を守る体勢を取った。 回避はできずとも可能な限り直撃を避け、受けるダメージを減少できるように。 カイと玄弥は何とか直撃を避け威力を殺すことには成功する。 「あっしはまだまだ元気やぞ~」 敵の攻撃をできるだけ耐久力に劣る者たちから逸らせないかと玄弥がゴーレムたちに向かって野次を飛ばす。 「D・V・D! D・V・D!! ……ダメだ! やはりやめようこんなの」 考えてみればセミアクティブレーザー誘導とかではなかったとツヴァイフロントは割れたDVDをヘリに向かって投げ捨てた。 元々ダメ元で試しただけなので其方に関してはショック等はない。 問題なのは先刻の攻撃の破壊力の方だ。 もう一撃受ければ耐え切れない。ツヴァイフロントは冷静にそう判断した。 自分は耐えられるだろうと判断したカイも、決して明るい気持ちにはなれない。 直撃を避ける事に失敗すれば……火流真や禾那香ら後衛陣は、万全の状態でも一撃で持っていかれると実感したゆえである。 カイ自身とて回復を受けながらだとしても、果たしていつまで耐え切れるか? 「常人なら、当たれば即挽肉になる攻撃ばかりなのですよね実は……」 それでも……こうなった以上はできることはひとつだけ。 その間にもエナーシアが仕事をこなしていく。ミサイルの1発が攻撃を受け砕け散った。 クルトは確認するように声を掛け合って、ユーキはカイの様子を確認しながら、玄弥もいざとなれば癒し手を庇う心算で。 3人はゴーレムの1機に攻撃を集中させていく。 ツヴァイフロントと火流真は攻撃を直撃させるために敵の動きに意識を集中し、禾那香は再び天使の歌を響かせる。 戦いながらクルトは呼吸法で力を取りこみ、4人のメタルフレームたちの無限機関が失われたエネルギーを生産する。 半数以上が長期戦に充分に対応できる能力を持ちながら……リベリスタたちは予感していた。 戦いが長引けば、もし全てのミサイルを攻撃に使用される事になれば。 自分たちは立っていられないだろう、と。 ●攻勢防御 攻撃を集中され限界に近いダメージを受けたゴーレムは、ツヴァイフロントの強襲攻撃により混乱状態に陥っていた。 もっとも、攻撃を行ったツヴァイフロントの方も限界に近いダメージを受け、禾那香の癒しを受けている最中である。 クルトが庇っていなければ既に限界を迎えていたかもしれない。 牽制攻撃や進路の妨害は今回の戦いではあまり効果を発揮できていなかったが、味方同士が庇い合う戦法は充分な効果を発揮していた。 もっとも、攻撃を拡散し個々人の重傷化を防いではいたもののダメージは確実に蓄積してく。 攻撃ヘリたちは目標をツヴァイフロントに定めたまま、攻撃手段をチェーンガンからヘルファイアへと変更した。 ツヴァイフロントには有効だった機関砲による攻撃も、防御力を備え回避能力も高く、それをより高める構えを取っているクルトには効果が薄い。 そう判断してのことである。 2機の牽下パイロンより離れたミサイルが、ツヴァイフロント目掛けて飛来し、その進路を妨害するようにクルトが立ちはだかった。 直撃していれば、あるいはもう1発あれば……確実に倒れていたといえる程の強力な攻撃。 もう1機は幸いというべきか混乱によって集中攻撃には参加せず、どのような計算を行ったのか2発のミサイルをユーキと禾那香に向かって発射した。 そのうちの1発の標的を守るために、カイが再び身を挺する。 禾那香は負傷した仲間たちの為に天使の歌を使うが、皆の負傷はあまりに大き過ぎた。 それでも懸命に彼女は仲間たちの傷を癒し続けた。 (この様に守られていながら……!) 嘆くのも悔しがるのも、全ては終わった後だ。 自分にはこれしかない、だから。 彼女は詠唱で清らかな存在へと呼びかける。 もっとも、リベリスタたちも攻撃を受けるだけではなかった。 玄弥の放った暗黒の瘴気によって、ついにヘリの1機が動きを鈍らせると落下し、地面に激突して砕け散る。 ユーキも怯むことなく同じように生命力を瘴気へと変換し、ゴーレムたちへとダメージを蓄積させていく。 「さあて、遠慮なくブチかますぜ!」 充分に敵の動きを読んだ火流真も、フレアバーストを1機に炸裂させた。 仲間たちが一機ずつ砲火を集中していくのを確認しながら、エナーシアは敵の一斉掃射の効果を少しでも減じようと牽下パイロンに装備されたヘルファイアを破壊していく。 そして……皆が警戒していた時は訪れた。 劣勢と感じたE・ゴーレム達はヘルファイアの一斉発射態勢に入る。 危険ではあっても予想していた、来るべき時。 この時を警戒したからこそ敵の武装破壊を狙い、或いは速攻で数を減らそうと攻撃を重ねてきたのである。 あとは……この一斉掃射に耐え切れるか、如何か? それだけだ。 ●総攻撃 1機が撃墜され、現存するゴーレムは2機。 その2機が残ったヘルファイアを一斉に発射した。 1機は6発。カイ、ツヴァイフロント、クルト、火流真、ユーキ、玄弥に向かって発射する。 もう1機は2発だけだ。一方の牽下パイロンに装備していた4発をエナーシアによって破壊された為である。 その2基の照準がエナーシア、禾那香に定められたのを確認しカイが動く。 それを妨害する為に。 放たれた1発を受けながら、青年は禾那香を守るべく駆けた。 被害を最小限に減らす為にと、ツヴァイフロントもクルトを庇う。 前衛達は限界に近いと判断した火流真は、そのまま構えを取り歯を喰いしばった。 響いた轟音と衝撃が空気を揺すぶり、リベリスタたちを叩きのめそうとする。 それが治まらぬうちに、禾那香が詠唱を響かせた。 運命の加護によってかろうじて踏み止まったカイに癒しの力がふりそそぐ。 火流真も圧倒的な破壊の前に打ち倒されかけたものの……失われかけた意識を無理矢理に、運命を手繰り寄せるようにして繋ぎとめた。 「地獄の火と鎖。貴様らは鉄の悪魔にとって実に愉快な玩具だよ。いいぞ、もう少し遊んでやる」 限界を超えた身体に力を篭め、それをおくびにも出さずツヴァイフロントは忽然と武器を構え直す。 深い傷を負ったカイをエナーシアが庇い、それを確認したクルトは蹴撃でカマイタチを放つ。 「有利と確信した瞬間こそが命とりやぁ~っ」 玄弥もミサイルを放った直後のゴーレム達に向かって瘴気を放った。 (回復役が倒れるのが最も危険です) 一方でカイに代わるようにしてユーキが禾那香の護衛に回る。 ツヴァイフロントは全身の反応速度を高めるように身体のギアをチェンジした。 2機のチェーンガンで狙われたカイをエナーシアが庇い、カイは反撃のナイフを投射する。 続いてクルトの放った斬風脚で2機目のゴーレムが切り刻まれ、砕け散った。 「地味に地味にといくものやぁ」 自分の負傷や暗黒による消耗を考えた玄弥は攻撃を魔閃光へと切り替え、最後の1機を攻撃する。 収束され放たれた黒いオーラはヘリを直撃し、その攻撃力を一時的に減退させた。 禾那香は仲間たちの傷を癒すために天使の歌を響かせ……カイの負傷が危険な段階を脱したと判断したエナーシアも攻撃を再開した。 残った最後のゴーレムはチェーンガンでカイを攻撃するものの、ダメージは軽微なものである。 カイが再びナイフを投擲し、エナーシアもローター付け根部分を狙って集中攻撃に参加する。 「血を吐こうが骨を撃ち砕かれようが、限界ギリギリまで」 クルトが幾度目かになる鋭い蹴りの斬撃波をゴーレムに叩き込み……続くようにツヴァイフロントが、残骸を利用して跳躍した。 「空はな。下にいる者を見下ろし、破壊する為にあるのではない。どこまでも上を目指す者の為にあるのだ!」 敵の動きを充分に読んだ多方面からの同時攻撃によって、最後のゴーレムもその力を失い……地面へと墜落し、砕け散った。 ●迎撃完了 「これまでナイフで戦闘兵器と何度かやり合いましたが、次があった今度はサマになるよう銃器類を用意しましょうかね」 構えを解いたカイがゆっくりと息を吐きながら少し冗談めかして呟く。 「わたしの力不足だ、すまない」 禾那香は悔しそうに謝りながら、怪我人を看てまわる。 敵の攻撃は強力だった。 自分も直撃を受ければ……1発で倒されていたかもしれない。 「それにしても、何故この様な所にヘリコプターのエリューションなどが発生したのだろうか?」 それとも、元はただのラジコンヘリだったのだろうか? 懸念を抱いたクルトも戦いの後、工場跡地を探索していた。 (あんなEゴーレムが自然発生するわけない) 何か痕跡が残ってないかと捜索したものの、それらしいものは発見できなかった。 不明な部分が無いとはいえないが、今回は一般人に被害が出る前に倒せたということで良しとすべきだろう。 そう気持ちを切り替えて。 負傷者たちに手を貸すと、リベリスタたちは日常を取り戻した工場跡地を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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