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<鬼道驀進>同族食い鬼

●血肉となれ
 封印。
 忌々しい物だ。ああ、我らを封じようなどと小賢しい。そんな物で我々が止まるとでも思ったか。
 まぁ中々に堅固なのは認めてやろう。これ程の長期間、我らを封じ続けてきたのだ。だがそれも――
「今日までだな……ここの封印、我が破壊させて頂こう」
 巨体。
 まさしくその二文字が似合う程に巨大な体を持つ鬼がそこに居た。周囲には付き従っているような鬼が複数いるが、いずれもその鬼の巨体と比べればまるで子鬼である。
 しかもそれだけでは無い。巨体の鬼の体はまるで岩石の様な皮膚をしており、強固な堅牢さを窺わせている。一歩を踏み出す度に音が鳴り響く様は、その岩石の重さも表しているのか。
 いずれにせよ、圧倒的な存在感と共に鬼は封印地点へと進撃していた。
「ゲ、ヒャ、ヒャア! 人間だ! 人間がいるぞぉ!」
 その時だ。配下の鬼が視界に映った人間に向かって突進して行く。
 鬼としての血が騒いだのか。封印された恨みでも晴らしたいのか。
 あぁ成程。人を襲いたいと言うその気持ち、分からないでも無い。だが――
「――はしゃぐな三下」
 言葉と共に、巨体の鬼は飛び出た鬼を踏み潰した。
 無慈悲に何の感慨も抱かずに、己に付き従っていた鬼を潰す。念入りに二度、三度と踏みつぶせば“固形物”が破裂した。風船が割れるような音とは違う、耳に粘り付いて来る音だ。
「言った筈だぞ。我らの目的は同族の解放。人は後回しだ……聞かぬ者は“我が血肉”となるが良い」
 配下を見据えるその眼は冷酷。
 使えぬならば切り捨てる。今先程実際にそうした。勝手をするならば貴様らもこうだ――と、口で語るよりも雄弁に目で鬼達を押さえつける。
 ある意味、この鬼は統率する者としての必要な技量を持っていると言えるかもしれない。例えそれが恐怖であっても。
「行くぞ。霊場は目前だ。封印を破壊し、この地の同族を迎え入れる」
 進む。岩石の鬼に率いられた鬼の一団が人には目もくれず進んで行く。
 人に仇名すならば戦力が必要故に。一刻も早く封印を解いていく必要があるのだ。
 ……だが、もしここに封印されている奴が使えぬ奴ならば……
 その時は、そいつもろとも“我が血肉”とするも一興だ。

●ブリーフィングルーム
「さて――岡山の事件だが面倒な事になってきたぞ諸君」
『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)の言葉は淡々と。しかし正確に事実を述べ始める。
「まず、連中の目的は鬼の王『温羅』の復活だ。こいつに関する情報は少なくて分からんのだが……もし復活すれば脅威となるは間違いないだろう。まぁ他の鬼とは違って温羅の封印が自然に解かれるという事態は無い。そこは安心して欲しい」
「根拠があるのか?」
「あるとも。そも、鬼達の封印が緩んだのはジャック事件が原因だ。日本の崩壊が進んだが故に、な。だが温羅などの大物の鬼達は今だ岡山に存在する霊場や祭具など、封印をバックアップする機能によって封じられ続けている。これらの機能が生きている限りは、連中も復活しないだろうさ」
 そう、温羅が如何に巨大な存在であろうと封印されている限りはどうしようもない。
 そして封印は八雲の言う通り生き続けている。奴らが復活する事はあり得ないのだ――そのバックアップ機能が、
「破壊されなければ――ていう条件付きだろ?」
「然り。そしてここまで言えば諸君らも今回の依頼内容が分かるだろう。封印の一角を担っている霊場を破壊するべく動いている鬼達を阻止して欲しい。リーダー格として動いているのはこの鬼だ」
 八雲がモニターを操作すれば、画面に現れるのは先程の岩石の鬼だ。
 やはり外見と能力は一致しているらしい。八雲の説明では、あまり素早くは無いようだが、耐久・防御力が高く、重い一撃を持つ相手との事だ。
 されど、最も重要な事項はそこでは無かった。
「さて……諸君らは先程の映像を見て何か気付いた事は無いかな?」
 唐突に一体何の事だ。そう思うリベリスタ達だったが、気付く者も居た。
 違和感があったのだ。映像の途中で、何か、あの岩石の鬼が――
「大きく……成っているような……?」
「見事。その通りだ、配下の鬼を潰した際に奴はごく僅かだがその身をさらに巨大化させている」
「はぁ?!」
 映像が繰り返される。岩石の鬼が配下を潰す際、そのタイミングに目を凝らせば……確かに、ごく僅かだが大きくなっているような気がする。これは、一体――
「奴の能力だ。奴は自身の周囲で死んだ鬼の魂を取り込み、巨大化している。『“我が血肉”となるが良い』とはそういう意味だな。能力値も上がっている事みたいでな。どうだ、面倒だろう」
 本当に面倒で困る事態だ。そういう能力を持っていると言う事は、配下の鬼を倒せば奴は強化されると言う事ではないか。なんだこの面倒くさい奴は。
「さらにもう一つ追加で面倒くさい情報があるぞ。こいつの血は取り込んだ鬼達の魂から構成されている。それはもう人への恨みつらみが激しい様でな……浴びたら何がしかのBSを付与すると思うので前衛タイプの者は気を付けたまえ」
 それはどう気を付ければ良いのだろうか。接近していれば返り血など浴びる事必至だ。BS無効化スキルでも持っておくべきだろうか。
「まぁ、もし封印が破壊されれば『禍鬼』の目的の一つが達成される事になる。そんな事させる訳にはいかんのだよ。――では頼んだぞ、諸君」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:茶零四  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月03日(土)00:33
 鬼でーすーよー。
 ……はい、と言う訳で今回の詳細情報です!

【勝利条件】
 霊場(神社の社)を守り抜く。
*神社の社にもHPを設定していますので、接近されたら終わりと言う訳ではありません。
 ただしそれほど強固では無いのでお気を付け下さい。岩鬼が攻撃したら一発で落ちるかもしれません。

【戦場】
 岡山県のとある神社境内。鬼達は散開しながら真正面から突っ込んできます。時刻は昼間です。一般人の影はありません。
 それなりにスペースはありますので闘いやすいです。
 が、スペースがあると言う事は動きやすいと言う事なので、数で勝る鬼を相手に護りやすいかと言われると話は別です。

【鬼】
・配下の鬼10体。
 単体ではそこまで強くないですが、連携が取れており、金棒の様な物を持って突進してきます。
 物攻に優れるようです。

・岩鬼。
 他の鬼と違い、知性がかなり高いです。統率者としてそれなりに優れています。
 無数の鬼の魂を取り込んでおり、耐久・防御力が異様に高いです。あるスキルを除き複数攻撃はありませんが、一撃一撃が重いのでそこも注意してください。
 基本は殴る・蹴る・踏みつけるなど物攻に優れたスキルを使用し、リベリスタ達を攻撃しますが岩鬼の目的はあくまでも【霊場の破壊】です。隙を見せるとリベリスタを無視して霊場破壊に向かいますのでお気を付け下さい。
 また、巨体である為岩鬼をブロックするには3人必要です。

 配下投げ:物遠単。近くに居る配下を投げつけます。ブロック無視。投げられた配下に小ダメージ。
 鬼魂障壁:Pスキル。自身の受ける全てのダメージを2割カット。
 我ガ血ノ恨ミ:周囲3m範囲全ての者が対象。攻撃を受けた際に血が飛び散り、弱体・重圧・毒・猛毒・不吉・不運・呪い・致命・ブレイクのいずれか一つを必ず付与する。
 我ガ血肉トナレ:特殊スキル。常時発動。周囲で死んだ鬼の魂を強制的に吸い取り、自身の糧とします。物攻・神攻・物防・神防・命中が小アップ、最大HP増加、増加分HP回復。
 EX 鬼血之尊・嗚呼萬萬歳:「人」にだけ効果がある。詳細不明。

【封印されてる鬼】
 もし霊場が破壊された場合は出てきます。
 詳細なステータスは不明ですが、岩鬼より強いかは微妙な所です。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
クロスイージス
ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)
デュランダル
ジース・ホワイト(BNE002417)
覇界闘士
石黒 鋼児(BNE002630)
★MVP
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
クリミナルスタア
桐咲 翠華(BNE002743)
プロアデプト
アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)
ソードミラージュ
津布理 瞑(BNE003104)
■サポート参加者 2人■
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)

●岩鬼の一撃
 鬼が来る。同族の解放を目指す鬼が来る。
 率いる鬼は岩の如き姿を持つ大鬼だ。同種すら喰らい、己を高める冷酷な鬼。
 子鬼を伴い霊場を目指して進撃する。社など直ぐにでも吹き飛ばさんと意気込んで。
 ――そして、正しく社の眼前、その境内にて――
「人間如きが我らの邪魔をするな、そこをどけッ!」
 ――岩の一撃が地に炸裂した。

●戦線構築
「っぅうあ、あ、ぶなぁ――!」
 頭上より墜落せんとばかりの岩鬼の拳を寸前で回避するは『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)だ。戦闘が始まる直前に掛けた己の身体強化の効果も相まってか、ギリギリで後方に飛び退き、回避する事が出来た。だが、
 ……あ、あっぶな! 今の当たってたら結構やばかったんじゃない?!
 思考しつつ体勢を立て直す。当たればヤバイ一撃だが、社を護るために岩鬼から離れる訳にはいかない。己の意見も言えない馬鹿子鬼どもは放って、瞑は再び岩鬼へと接近する。
「ここは通行止めだ。通りたければ俺を倒してからにして貰おう。無論――」
 そしてその瞑に追随する形で岩鬼に向かうは『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)。彼もまた岩鬼をブロックせんと突き進み、
「倒せれば、だがな」
 十字の光を走らせた。岩の体に剣撃を刻み込み、文字通りにその身を削る。
 そして削れば飛び出る血、血、血。無数の鬼達の怨嗟が襲うは至近の者で、発生する負は――毒。
「厄介な……しかし、この程度ならまだ!」
 されど、『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は舞う血の中をものともせずに突き進む。血は浴びるが問題はない。境内の地を駆け抜けて、岩鬼に取り込まれた鬼魂の障壁に若干阻まれるも、黒刃が鞘を走り切る。
 二度目の血が溢れた。
「ぬ――うっ!?」
 岩鬼の動きが止まる。リベリスタらにブロックされたのもあるが、それだけでは無い。
 ――麻痺だ。舞姫の一撃が通ったのか、岩鬼の体を制限している。
「岩鬼の動きが止まったね……なら、今の内に!」
『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)も動く。岩鬼の動きが制限されたと見るや否や、即座に展開するは魔力の翼。己だけでは無く、味方全員に対してその翼を付与すれば、体が軽くなるような感覚を得て。
「よし、行くぜぇ! 鬼なんざ幾らいようがぶちのめしてやる!」
『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417)が突撃した。AFより自身の武器――ハルバードたるGazaniaを取り出せば、往く。
 目標は子鬼達が纏まっている地点だ。右脚を踏み込み、跳躍すれば羽の力で滑空。大跳躍とも言える距離を進みながら彼は身を捻じる。そして、体の捻じりを開放して右手に握るGazaniaを遠心力に従って振るえば、
「お、らぁッ!」
 掛け声一つ。獲物の届く範囲を勢いに任せて斬りつけた。
 数にして三体。子鬼の身を切り裂けば、傷口を押さえる子鬼の呻きが聞こえる。
「沈まれ……! その程度の傷がなんだ、進撃せよ!」
 岩鬼だ。動けぬまでも声を飛ばし、子鬼達に進撃を促す。
 さすれば動く子鬼達。散開し、岩鬼のいる正面を避けながら左右より社に接近しようとすれば、
「まぁ待ちなさい……これ以上、好き勝手にさせるつもりはないわ」
 無数のナイフが子鬼に襲いかかる。『銀猫危機一髪』桐咲 翠華(BNE002743)による投擲だ。霊場に近い配下衆を中心に、目に付く限りにナイフを放ち続ける。幾体か回避する個体も見られるが――全体としては命中している様だ。
「さぁて。ここを通す訳にはいかねぇぞ鬼さん達よ」
「この『はしばぶれーど』の威力、試してみる? この剣の錆になりたいのは誰かな!」
 さらにその子鬼らの前に立ち塞がるのは『黒鋼』石黒 鋼児(BNE002630)に『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)の両名だ。鋼児は護りを固めるための強化を己に施し、壱也は剣を横に一撫でしつつ攻めの強化を己に施す。相反する二つの効果だが、目的は同じだ。
 ――社の防衛のため。
 壁となるべく護る為か、近付く鬼を薙ぎ倒す為かの違いだ。
「わたしも今回は前に……! 絶対に、ここは破壊させないもん!」
 本来なら後衛向きの『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)も前進する。能力的に彼女は後衛なのだが、今回はそうも言っていられない。何せ岩鬼のブロックに三人必要な以上、相手は必然的に有利になっているのだ。霊場を護るためには彼女もブロックするしかない。
「それじゃあ回復は任せて。鬼達の恨みつらみなんて、常に祓ってみせるわ」
 言うが早いか、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)は光を放つ。邪気を祓う光だ。岩鬼のブロックを担当した三名に纏わりついている負の要素が瞬時に剥がれて行く。
「おのれ小賢しい真似を……! 人間など踏み越えろ! 支援型から潰して行き――鬼の強さを見せつけろォ!」
 応、という声と共に鬼達も往く。
 社を護ろうとする者。壊そうとする者。双方が共にぶつかり合い――
 激突が生まれた。

●鬼之血尊
 リベリスタ達の作戦はこうだ。岩鬼を麻痺で押さえつつ、配下衆を減らしていく。
 率直に言えば、有効な作戦である。BS耐性が無く、速度も遅い岩鬼を麻痺で縛りつける事は十二分に可能である為だ。と、なれば後は麻痺を付与できる要員の性能となるが――
「フゥーハハハ――! うちの速さをみるが良いわ! うちに続け――!」
 今メンバーの中では最速の瞑が存分に暴れまわっていた。常に岩鬼の先手を取り、連続攻撃によって麻痺を発生させていく。岩鬼の鈍い足も相まってその確率はかなり高かった。血が溢れれば不運を得た気がするが、想定の内ではあろう。ゲルトだけは耐性により弾いたようだが。
「おのれ、ちょこまかとォ!」
「岩鬼が動けぬのならば……今の内に三下を潰しておくか」
 岩鬼の注意が瞑に集中しているのを察したゲルトが狙いを変更する。岩鬼ではなく、味方のブロックを抜こうとしている子鬼を定め、
「好きにやらせると思ったのか? その程度も分からんから――三下だと言うんだ」
 二度目の十字の光は子鬼を見事に捉え、穿つ。
 横殴りに近い形で放たれた攻撃は深く入ったのか、子鬼の怒りを誘う。社に向かう足を変え、ゲルトに向かって特攻する形だ。とはいえ他の子鬼は依然として社に狙いを付けたままだが――
「絶対近づけさせねぇ! お前らは地面でも舐めて、寝てろ!」
 ギースだ。己がハルバードを右肩から左腰の向きへと払い、子鬼を薙ぐ。
 防御を行う子鬼だが、無駄だ。勢い良く振るわれたその一撃は子鬼の体を後方へと吹き飛ばし、距離が出来る。
「ついでにもう一撃――!」
 言葉と同時。アーリィが放つは気糸だ。ギースの吹き飛ばした子鬼を狙い、直撃させる。
 その精密な一撃は子鬼の胸にぶち込まれ、弱っていた子鬼の体力を完全に奪い取った。
「まずは一体……って所かしら? 封印を壊したいんだったら、私を倒してからにする事ね」
 瞬時、翠華のナイフが鋭く走る。先と同じく、目に付く鬼全てを捉え、穿たんとして。
 だが。
「ケキャ、キャ! その程度で止まるかぁ!」
 鬼も止まらぬ。岩鬼が動けぬとは言えそれだけだ。子鬼の数は今だ健在。
 故に数に任せて突き進む。一体か二体、防衛線をすり抜けるのは可能だ。
「――おぃ、そこの鬼さん達よ」
 と、その時だ。子鬼達に声が掛けられた。
「ここにあんたらの大好きな人間様がいるんだぜ? んな社なんざ放っといて俺と遊ぼうぜ。……あぁ、それとも何か?」
 鋼児の声だ。社には、霊場には近寄らせまいと、煽りの言葉を叩き込む。
「一回封印されちまったから人間様にビビってんのか!? なっさけねぇ連中だな!」
「な、なんだとテメェ――」
「つまらん挑発に乗るな! 社に行け、破壊しろ!」
 煽りに乗りかける子鬼達――だが、リーダー格の岩鬼に制止される。
 ああ、それは予測済みだ。万華鏡の映像において実際に岩鬼はその様にしていたのだから。
 ――しかし、とも思う。あの映像において子鬼達は見つけた人間達に向かっていた。ならばもう数度煽れば子鬼達は、
「おぃおぃ、自分で考える脳ミソもねぇのかよ? マジ、笑っちまうなぁオイ! んな単細胞だから封印されちまうんだよ! 昔も今も変わらねぇなぁ!」
「単細胞、だと!?」
 これが単細胞で無くて何だと言うのだ。
 岩鬼の制止は間に合わない。釣れたのは二体の鬼だけだが――まぁ充分だろう。無視されて社に行かれるよりは大分マシだ。
「どいつもこいつも使えぬ連中が……!」
「諦めなよ。わたしたちは運命に愛された。愛された者の生き方、見せてあげる。だから――運命に愛された者の覚悟を決めた力、とくと見るがいいよ!」
 壱也が社に近付く鬼を剣で払いながら、言葉は岩鬼へと。
 リベリスタ達は運命に愛された。愛されて、ここにいる。その自分達の力今こそ鬼達に見せてやる――
「フ、フフフ……」
 と、その言葉を聞いて岩鬼は“笑って”いる。
 訝しむリベリスタ達。なんだ、一体何が可笑しい。と、そう思えば、
「フハハハハ! 運命に愛された者の力だと? そんな、ある日唐突に降って湧いた偶然の産物がそんなに誇らしいか? 下らんな人間、浅いんだよッ! 己が生き方に誇りを持つなら、授かり物では無く己が血を誇ったらどうだ!?」
 岩鬼の気配が変わる。
 妙だ。こいつは今、何か始めようとしている――?
「そーはさせないし!」
 瞬時に察した瞑が踏み込んだ。
 何をするのかは分からない。だが、何をしようが麻痺で固めてしまえば関係無い。通るかどうかは賭けだがそれでも突撃すれば――
「おい、“庇え”」
 岩鬼が近くに居た子鬼――先程ゲルトが怒りを付与して呼び込んでいた子鬼を睨みつける。
 殺気を含む眼光に威圧された子鬼はもはや反射の域で言葉に従った。すなわち、
「なっ――身代わり、に!?」
 正しく“庇った”状態だ。ある意味では“庇わされた”とも言えるが、些細なことだ。
 結果は一つ。瞑の一撃は岩鬼には通らず、そして岩鬼は自由。
「よくやった。では、鬼の血を見よ……鬼血之尊今ぞここに……!」
 急速に“何か”が展開する。戦場の全域を鬼の“気配”が覆い尽くし“人”にだけ直接降りかかる。
 鬼の血は人の血よりも優れている。故に鬼之血を引く我ら嗚呼万々歳。
 その自負から生まれた技。その、能力は、
「貴様らの“身体能力”を低下させてもらった――数字にすればおよそ三割減といった所か」
「嘘、これは……やばいかもっ……!」
 アリステアは驚愕していた。能力が下がっている事、それはまだしも一番まずいのは、これはBSでは無いと言う事だ。つまり、ブレイクフィアーなどによる解除が出来ない。もっとも永遠に続くとは思えないが、
「さぁどけ人間ッ!」
 鬼の攻勢が――激化する。

●決着
「ここまで来たら我武者羅だ。こいや鬼共――!」
 攻勢に出た子鬼が金棒を振り下ろす動きに合わせ、ギースはGazaniaの柄で金棒を受け止める。直後、ハルバードを短く持ち、金棒を弾きながら連続で刺突。子鬼の体に幾重もの穴を開ければ、次の敵を見据えて。
「うちらが弱くされても、そっちを縛りつければ!」
 瞑が動く。先程と比べれば明らかに遅くなっているが、それでも早い動きだ。
 唯一幸いだったのは能力が低下しただけでダメージは無かった事だろうか。そのため、岩鬼へのブロックは継続する事が出来た。
 ともあれ、岩鬼の動きを麻痺させる。その方針は変わらない。瞬時に二回動く勢いをもって、彼女は岩鬼へと突き進む……が、
「そう何度も見抜けぬと思うか!」
 岩鬼は片膝をついて体勢を低くする。その状態で手を伸ばし、瞑の右脚を掴む。
 本来ならば速さ的に掴まれなかったであろう右脚だが、速度が落ちる感覚に慣れぬ一瞬を岩鬼は突いた。右脚を支点に、一旦腕を振りあげ――地に叩き落とす。
「ッ、ゥ――!」
 頭から地面に落下した。まるでボールの様に体が跳ね上がり、頭部からは血が流れ出でる。
 目を見開いていると言うのに視界が黒に染まれば、意識が脳から離れようと。思考が途絶え気絶する――その瞬間。
「ッ、オ、ア……ま、だだァ、根性ォ――!」
 空中で身を捻り、二度目の地への落下を着地に変える。運命を消費して舞い戻って来たのだ。
 視界は右目が赤に染まっている。血のカーテンだ。見えにくいが、まぁ問題はない。
「フ、ハッハ! よく頑張る連中だな。だが体が重いだろう? 我らの血に脆い人の血が敵う筈が無いからな!」
 鬼の血は優れている、鬼の血こそ至高、鬼の血こそ尊い――
 そんな考えを具現としたのがこの技だ。人の血を引く者は鬼の血を前にして“劣らざるを得なくする”。そんな、技。発動と継続に多大なEPを消費するものの、効果は大きい。
 と、その時。
「……血の誇りとか知らないけど、勝った気にならない方が良いよ。わたし達はまだ立ってるんだから」
 ――口を開いたのは壱也だ。
 脆い存在? 血が優れる? そんな事、知った事か。
「言ったでしょ、わたし達は運命に愛されたって。でもね、わたし達はそれだけじゃあない――覚悟もあるんだよ。偶然じゃない。自分で選んで、この命のやり取りをする戦場に立って、立ち続けているんだから!」
 故に笑わせない。遊んでいる訳ではないのだ。
「ならば私に打ち勝って見せるが――いい!」
 言葉が終わると同時。岩鬼は近場の配下を掴み、社へと向かって投げ飛ばす。社への攻撃者を送り、ついでにダメージも与える目的だが、社に直撃する寸前。
「ッ! ……痛く、ないもん! まだ頑張れるよっ!」
 アリステアが身を呈して社を庇った。痛みなど知らない、感じないとばかりに衝突のダメージに、耐える。さらに立て続けに行動すれば、
「霊場とか、そう言うのはこの国を守る大切なものなんだから……そんな大事なもの壊そうとしないでよ!」
 アリステアは叫びと共に紡ぐ言葉がある。それは、癒しの呪文。
「まだ余力はある……頑張れるよ!」
 そして、アーリィが直後にアリステアへと意識を同調させて力の一部を流し込む。体力では無く精神面の回復――インスタントチャージだ。
「ケ、ケケェ! 隙あり!」
 しかしその一瞬を子鬼は見逃さない。構えた金棒をアーリィの背後から振り下ろせば、肩に直撃する。骨の、軋む音が本人の耳に届いた。
「ぃ――っう! こ、んのぉ!」
 右肩に走る痛みを抑えつつ、アーリィは子鬼よりすぐさま離れる。追撃される訳にはいかない。
「まだ……まだ負けない……! わたしにもやれること残ってるもん……!」
「そうだよな、まだ負けた訳じゃあねぇもんな!」
 風が吹いた――と感じれば、かまいたちがアーリィを襲った子鬼を切り刻んだ。鋼児の一撃だ。そのまま彼は回復手の守護へと向かえば、
「チッ、失敗か。ならば私のブロックにブロックをぶつけて……」
 その内に自分が前進しようと、考えた時にはもう遅い。
 ブロックにブロックしようとしていた子鬼をさらに壱也がブロックし、立て続けに斬り伏せる。
「進ませる訳にはいかない。ここで終わりだよ!」
「なら直接潰すまでよ!」
 岩鬼の右拳が地に叩きつけられる。その地点にいたのは、岩鬼をブロックし続けていたゲルトだ。能力の低下によって訪れる衝撃はいつもよりも強い。防御はしたものの、思わず膝をつく――が、
「舐めるなよ……! ああ、お前は確かに強い。だが力が強いだけの木偶だ!」
 倒れない。手を払いのけ、岩鬼に対峙し続ける。
「さて、味方ももう少ないわよ。そろそろ終わりにしましょうか」
 ナイフを放る翠華の目に映るは、四体の子鬼。
 全体攻撃で減らし続けていた価値があった。これほど減れば、後は岩鬼に集中できる。少なくとも――社をすぐさま壊される、と言う事はないだろう。
「終わり、終わりだと? 貴様らこそ舐めるなよ! 弱体化した貴様らなど私一人でも!」
 口だけでは無い。今のリベリスタ達ならば岩鬼一人でも上手くやれば逆転は不可能ではないのだ。己が重い一撃をもって、一人一人始末して行けば――
「ここの封印は絶対壊させない! そのためにわたしは今、ここで、剣を握るッ!」
 拳を躱わして、壱也が突っ走る。
 壊させない。近づかせない。ここで倒しきる。諸々の感情を乗せて、彼女は岩鬼の懐に飛び込んだ。
 ――覚悟をもって。
「き、さまァ――!」
 本能的に危機感を感じた岩鬼が繰り出したのは蹴り。飛び込む壱也に合わせ、岩の左脚が彼女の腹部を抉る。
 鈍い音だ。内臓にダメージが行っただろう。体が痛みに悲鳴を挙げ――
「ず、ぁあああ――!」
 る前に突っ込んだ。咆哮一閃、体がダメージを認識する前に、体が硬直する前に動く。
 運命すら燃やして彼女は往く。
「この心がくじけない限り、何度だって立ってやる! わたしたちは、絶対に負けない!」
 それは一体なんの偶然だったのか。いや、集中した上での一撃が故か――彼女のソレは幾重の鬼魂の集まりたる障壁すら突き破った。“致命的命中”である。
「な、ん、だ、とぉ!?」
 まさかこのタイミングで。ありえない、そんな馬鹿な。と思考する岩鬼の胴を、
 今、壱也は薙ぎ払った。

 鬼の叫びが天を突く。

 封印されし同胞を間近にして討ち果たされる現実に。

 無数の鬼達の無念の声が天を突き、

 されどここに、同族の魂すら取り込んだ大鬼の魂は消滅した。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。<鬼道驀進>同族食い鬼 これにて終了です。
 生き残った子鬼? 逃げました!

 さて、お見事でした。麻痺が通りやすかった事もありますが、行動封じの役割がしっかりされていた事は非常に優位だったと思います。
 MVPは今回止めを刺した羽柴 壱也さんに。まさか最期の攻撃がクリティカルとは……
 プレイングに関しましても「ブロックのブロックのブロック」に気を付けていた点も評価しております。これが無かったらブロック人数が足りず、突破されて負けてたかもしれません。

 では最後に、EXの詳細です。

 EX 鬼血之尊・嗚呼萬萬歳:戦場内の「人」が直接対象。対象の元ステータスを3割減する。発動EP300・継続に1ターン毎にEP100を使用。発動条件・自身のHPが2/3以下に成る事。