●血肉となれ 封印。 忌々しい物だ。ああ、我らを封じようなどと小賢しい。そんな物で我々が止まるとでも思ったか。 まぁ中々に堅固なのは認めてやろう。これ程の長期間、我らを封じ続けてきたのだ。だがそれも―― 「今日までだな……ここの封印、我が破壊させて頂こう」 巨体。 まさしくその二文字が似合う程に巨大な体を持つ鬼がそこに居た。周囲には付き従っているような鬼が複数いるが、いずれもその鬼の巨体と比べればまるで子鬼である。 しかもそれだけでは無い。巨体の鬼の体はまるで岩石の様な皮膚をしており、強固な堅牢さを窺わせている。一歩を踏み出す度に音が鳴り響く様は、その岩石の重さも表しているのか。 いずれにせよ、圧倒的な存在感と共に鬼は封印地点へと進撃していた。 「ゲ、ヒャ、ヒャア! 人間だ! 人間がいるぞぉ!」 その時だ。配下の鬼が視界に映った人間に向かって突進して行く。 鬼としての血が騒いだのか。封印された恨みでも晴らしたいのか。 あぁ成程。人を襲いたいと言うその気持ち、分からないでも無い。だが―― 「――はしゃぐな三下」 言葉と共に、巨体の鬼は飛び出た鬼を踏み潰した。 無慈悲に何の感慨も抱かずに、己に付き従っていた鬼を潰す。念入りに二度、三度と踏みつぶせば“固形物”が破裂した。風船が割れるような音とは違う、耳に粘り付いて来る音だ。 「言った筈だぞ。我らの目的は同族の解放。人は後回しだ……聞かぬ者は“我が血肉”となるが良い」 配下を見据えるその眼は冷酷。 使えぬならば切り捨てる。今先程実際にそうした。勝手をするならば貴様らもこうだ――と、口で語るよりも雄弁に目で鬼達を押さえつける。 ある意味、この鬼は統率する者としての必要な技量を持っていると言えるかもしれない。例えそれが恐怖であっても。 「行くぞ。霊場は目前だ。封印を破壊し、この地の同族を迎え入れる」 進む。岩石の鬼に率いられた鬼の一団が人には目もくれず進んで行く。 人に仇名すならば戦力が必要故に。一刻も早く封印を解いていく必要があるのだ。 ……だが、もしここに封印されている奴が使えぬ奴ならば…… その時は、そいつもろとも“我が血肉”とするも一興だ。 ●ブリーフィングルーム 「さて――岡山の事件だが面倒な事になってきたぞ諸君」 『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)の言葉は淡々と。しかし正確に事実を述べ始める。 「まず、連中の目的は鬼の王『温羅』の復活だ。こいつに関する情報は少なくて分からんのだが……もし復活すれば脅威となるは間違いないだろう。まぁ他の鬼とは違って温羅の封印が自然に解かれるという事態は無い。そこは安心して欲しい」 「根拠があるのか?」 「あるとも。そも、鬼達の封印が緩んだのはジャック事件が原因だ。日本の崩壊が進んだが故に、な。だが温羅などの大物の鬼達は今だ岡山に存在する霊場や祭具など、封印をバックアップする機能によって封じられ続けている。これらの機能が生きている限りは、連中も復活しないだろうさ」 そう、温羅が如何に巨大な存在であろうと封印されている限りはどうしようもない。 そして封印は八雲の言う通り生き続けている。奴らが復活する事はあり得ないのだ――そのバックアップ機能が、 「破壊されなければ――ていう条件付きだろ?」 「然り。そしてここまで言えば諸君らも今回の依頼内容が分かるだろう。封印の一角を担っている霊場を破壊するべく動いている鬼達を阻止して欲しい。リーダー格として動いているのはこの鬼だ」 八雲がモニターを操作すれば、画面に現れるのは先程の岩石の鬼だ。 やはり外見と能力は一致しているらしい。八雲の説明では、あまり素早くは無いようだが、耐久・防御力が高く、重い一撃を持つ相手との事だ。 されど、最も重要な事項はそこでは無かった。 「さて……諸君らは先程の映像を見て何か気付いた事は無いかな?」 唐突に一体何の事だ。そう思うリベリスタ達だったが、気付く者も居た。 違和感があったのだ。映像の途中で、何か、あの岩石の鬼が―― 「大きく……成っているような……?」 「見事。その通りだ、配下の鬼を潰した際に奴はごく僅かだがその身をさらに巨大化させている」 「はぁ?!」 映像が繰り返される。岩石の鬼が配下を潰す際、そのタイミングに目を凝らせば……確かに、ごく僅かだが大きくなっているような気がする。これは、一体―― 「奴の能力だ。奴は自身の周囲で死んだ鬼の魂を取り込み、巨大化している。『“我が血肉”となるが良い』とはそういう意味だな。能力値も上がっている事みたいでな。どうだ、面倒だろう」 本当に面倒で困る事態だ。そういう能力を持っていると言う事は、配下の鬼を倒せば奴は強化されると言う事ではないか。なんだこの面倒くさい奴は。 「さらにもう一つ追加で面倒くさい情報があるぞ。こいつの血は取り込んだ鬼達の魂から構成されている。それはもう人への恨みつらみが激しい様でな……浴びたら何がしかのBSを付与すると思うので前衛タイプの者は気を付けたまえ」 それはどう気を付ければ良いのだろうか。接近していれば返り血など浴びる事必至だ。BS無効化スキルでも持っておくべきだろうか。 「まぁ、もし封印が破壊されれば『禍鬼』の目的の一つが達成される事になる。そんな事させる訳にはいかんのだよ。――では頼んだぞ、諸君」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月03日(土)00:33 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 2人■ | |||||
|
|
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|