●煉獄では ――あちらと繋がる穴が見つかったとか聞きましたが? 「そうそう。あるもんなんだよな、ぽっこり空いててさー」 ――お姫様を追いますか? 「ああ、もういい。代わりならいくらでも居るだろう? 所詮お飾りだ。廃棄だよ。廃棄廃棄。ちゃっちゃと殺せ」 ――……そうですか。 「なにか?」 ――いえ。すぐにフレイムキラーにシャムルディーンを殺させます。 「最下層は何やら力があるようでねぇー。フレイムキラーもおじゃんだよ 攻撃も未知だね。調べてきてよ」 ――では、ジャンクと一緒に向かわせ、探ってみます。 ●その頃ボトムでは 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は先日行なったバーベキューで余り、頂いた肉(猪とか)で弁当を作ってそれを食べていた。 場所はブリーフィングルーム。 フォーチュナとしての役目を全うしていたものの、毎日見えるという訳では無く。今日はなんだかいつも以上に絶不調。 落ち込み気味にフォークの先をだらしなく机の上でコツコツとリズムを取っていた時、ドアが勢いよくスッパーンと開く。 「杏里!! 依頼するぞ!! あのな、煉獄がまた繋がって、ドドドドーでぼっかーんなんだ!!」 「こんにちは、煉さん。もう少し、いえ、もっとできる限り具体的に……っ」 煉獄という上位世界の住人。 黒野煉が杏里の近くへ足早に近づき、彼女なりの説明をしたものの。 何一つ、杏里は理解できなかった。 「うむ! あのな、あのな……なんだっけ!!」 「……煉さんもお肉食べますー?」 「食べる!!」 ●そしてブリーフィングルーム 「皆さんこんにちは。いつもの如く依頼です」 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達。 いつもの様に杏里は依頼の内容を伝えようとしていた。 「今回の相手はアザーバイドです。一体一体はとても弱いのが沢山と、強いのが一体います……と。その前に煉獄の説明をしますね」 上位世界『煉獄』は、炎を自在に操れる世界の住人だ。 出せる炎の火力で上下関係が決まっていたり、それにより争いが絶えない世界である。 その住人の一人。 黒野煉と呼ばれるフェイトを得た煉獄の少女がアークに身を置いている。 煉獄の住人は互いにテレパスや、位置を察知する事ができるのだ。 その能力が人一倍強い煉は、ボトムと煉獄が繋がり、何やらよからぬ者が此方に来るというのを察知したのだ。 「今回は彼方は此方の世界を調べに来ている様です。 小さいアザーバイド。通称『ジャンク』が調べ、それを持ち帰る役目をしています。 それを護衛するフレイムキラーという、彼方の世界の兵器が一体です。 これらを野放しにし、その後で侵食されたり、軍を引き連れてきたり等。 考えられる事態が危険なので、此方で全て破壊して彼方に情報を与えない様にして欲しいのです」 フレイムキラーは炎を通さない、炎の化け物だ。 それに加え、ジャンクと呼ばれた小さい火の玉が二十体ほど一緒に来る。 「ジャンクは正直、能力値は未知数です。ですが、警戒するほど強くはありませんので……大丈夫だと思いますよ。 ただ、Dホールを壊さない限り増えるので気を付けてください。 それでは、説明は以上です。宜しくお願いしますね」 杏里は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月01日(木)23:51 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 2人■ | |||||
|
|
●火種 「らぶこめ要素がない。僕が頑張れない。働けない」 『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)が顔を下に向け、線路を凝視しながら呟いた。 いちゃいちゃらぶらぶ。 爆発しろとも言えない程のらぶこめが好きだ。今日はそれが無い。嗚呼、帰りたい。 「まあまあまあ! これもくろのんのためだと思えば……なっ!?」 「らぶこめぇ……」 ツァイン・ウォーレス(BNE001520)がそんなりりすに声をかけた。 それにしても、ジャックの作った閉じない穴の影響か。崩壊度の影響か。 最近、異界の介入が多過ぎる気がする。 「まあ、くっろのんの為ならえんやっこら~となぁ!」 「撲の働きで、煉ちょんと優弥君がいちゃこらできるなら、頑張る」 お互いに自己解決した所で、電車が目の前を勢いよく通り抜けていった。 二両しか無い、田舎の電車。これでもうしばらくは来ないだろう。 その電車が通り過ぎていけば、見えるのは、燃えるフレイムキラー達。 「炎ばかりなのダ。煉獄はいつもこうなのカ?」 そんな燃えてばかりの世界もある様だ。 『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)火の海だと、呟く。まさに最もな言葉だろう。 「よくは知らぬが、この世界を侵さんと彼方から無粋な輩がやって来ると聞いた」 『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)が仁王立ちしながら、堂々と立つ。 この世界の王である刃紅郎に挨拶も無しに、土足で踏み込んで来るとはなんという無礼か。 「ジャンクは……情報を持ちかえるのもいるみたいじゃし……」 自分の弓の情報が持ち帰られたら、恥ずかしいではないか。 『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)が気弱に縮こまりながら弓を持つ。 (けれどわしの弓じゃし……別に知られても大して……。 いや、知られてはいけないのじゃ……ああ、こういう発想が駄目なのじゃ) とことんネガティブな彼女は、更に小さくなっていく。 煉獄。 其処から来た姫は最下層の王子と結ばれたと言う。 それはそれはとても素敵な物語。 そんな物語に少女は胸をときめかせる。だからこそ、それを壊させる訳にはいかない。 『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)は周辺に強結界張った。 「そのお姫様を探しに来たにしては、贅沢な構成だな」 『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)が武器を取り出しながら言う。 前にもこういう事があった。そして、今回も。 二度ある事は三度あるだろう。このまま煉獄と敵対関係になってもおかしくは無い。 「偵察部隊、無限に出て来られるのは厄介だ。すぐに終わらそう」 『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)はアストライアを持つ。 「……ともあれ仕事だね」 りりすは前を向く。 既にフレイムキラーが此方を見ている。 普段なら速攻で襲ってくるだろうその生物兵器は、今回は守っているためにか大人しい。 二度目だ。そう、二度目。 りりすはリッパーズエッジを握り締めながらも、敵へ直感を働かせる。 ●発火 主の躾がなってないから駄犬ができてしまったのだ。 すぐに刃紅郎が飛び出す。身体に見合った大きな大剣、獅子王『煌』を手足の様に使う。 放たれるメガクラッシュは確かにフレイムキラーへと当たっていく。 飛ばされたフレイムキラーは空中で体勢を立て直しつつ、線路の石をまき散らしながら脚でブレーキをかけた。 そのまま攻撃に移る。 燃える身体。片方の頭が口を大きく開いては、牙を見せる。 そのまま刃紅郎を肩に噛み付き、引きちぎっては血が流れた。 その間に『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)がブレイクゲートに向かったが、ジャンクに阻まれて行けない。 フレイムキラーは刃紅郎と終を巻き込み、その尾を打ちつけて後方へと飛ばした。 ――空中で血が舞う。 その血が、空中で何かにぶつかって霧状となって弾けていく。 「いやあ、沢山蜂の巣が作れるって楽しいねぇ」 ブレスのハニーコムガトリングが刃紅郎を器用に避けながらも、弾丸を放っていた。 見えるだけのジャンクを巻き込み、ぶつけていく。 ジャンク。見た目は火の玉の様だが、それは生きているというのだから不思議なものだ。 じりじりと音をたてながら、ジャンクはその攻撃を目に焼き付けていく――それを氷の氷柱が潰した。 「來來氷雨!」 雷音が咆哮し、神秘の力は雨となって敵の頭上から降り注いだ。 彼等の大元は火だ。その攻撃は、彼等にとっては少しばかり厄介な一撃であった。 しかしジャンクとて、数が多いのには理由がある。 弱い彼等を未知の世界に少数で送るのは、ただ数を減らすだけで無駄だ。 ジャンクがジャンクを庇い、庇われたジャンクは情報を持ち帰るのだ。 その通りに、ジャンクは未だ健在のものが複数居た。 少し遅れて、待機していたりりすがフレイムキラーへと向かう。 「人の恋路を邪魔する奴は。鮫に喰われて死んでしまえ」 再び会った、炎の獣。この恋路はけして侵させる訳にはいかない。 リリスの剣が、フレイムキラーの身体を硬直させた。 刃紅郎がフレイムキラーにハードブレイクを放ち、浅倉 貴志(BNE002656)が氷で縛った。 その間に、ゲートからジャンクが五体追加される。 その五体が傷ついたジャンクと入れ替わり、情報を持ったジャンクがゲートへと向かう。 「おい、あれ帰っちまうんじゃねーか?」 ブレスがすぐにハニーコムガトリングを放ち、一掃していく。 上位世界に情報は渡せない。だが弾丸は他のジャンクに護られ、一体だけDホールの奥へと消えていってしまった。 思わずブレスが舌打ちした瞬間に、歌声が響く。 「ピ~ヨコロぼえエ~~~……」 ――……しばらくの沈黙。これには敵も空気を読んだ。 「我輩も、最近お歌が上手くなったのダ。そう思わないか?」 「思わないな!」「思わないぜ」「思わないな」 思わずツァインとブレスと杏樹が口に出した。 そんな天使の歌が仲間を包む。 杏樹と与一は逆の方向へと走っていた。移動に秒数はかかったが、それでも敵の見える位置へ。 一歩遅かったか、またひとつジャンクがDホールへと消える。 頭上から雷音の氷雨が降り注ぐ中、二人は武器を構え、先に与一がスターライトシュートを放つ。 「一本でも……当たるといいのじゃ」 飛ばされた光弾は直線上のジャンク達を射抜いていく。 その更に奥の直線上。杏樹が同じ光弾を放った。 「これ以上の情報は渡せないな」 光弾がジャンクを弾き、その炎が消えていく。 残った一体をツァインがジャスイティスキャノンで撃ち抜く。そして――道は、できた。 「今だ! ゲート壊せぇ!!」 ツァインが叫ぶ。 ここぞとばかりに飛び出したりりすが一直線にDホールへと手を伸ばしていく。 だが――。 「待つのだ!!」 雷音が叫び、りりすが止まった。 「少しだけ、時間をボクにください」 小さく深呼吸した雷音が、タワーオブバベルでフレイムキラーに話しかけるために近づいた。 『君たちは此方の世界に用があるのだろうか? 何もせずに帰ってくれることは可能……ではないのだろうな。 君たちとこの世界は相入れることはない。姫以外に此方の世界に介入する用があるのか?』 『……絶対命令、護衛殺戮殺戮殺戮殺戮殺戮殺戮殺戮殺戮殺戮すdfhぃう……』 『そうか……そうなのだな』 雷音は離れ、りりすを見る。 「りりす……頼むのだ」 「はは、これで帰るべき道は無しだよ」 りりすは再び動き出す。その手で、剣で、ゲートは握りつぶされる。 残った番犬の無意味な役目は、此方の世界の戦力を潰すこと。 ●鎮火 貴志の氷拳が胴を擦りながら、フレイムキラーは動く。 噛みつく役目では無い方の頭が口を開き、炎を吐き出しては前衛を焼き払っていく。 「だぁちい!?」 ツァインが声をあげた。一度その身で体感した事はあるものの、その威力は上がっている。 見上げたツァインの目には鋭い爪が見えた。 まずいと思ったときには遅く、その爪はツァインの身体を抉っていく。 「争いだったら自分達の世界でやって欲しいのダ!」 怯まずにカイはブレイクフィアーを放ち、仲間にまとわりつく火や出血を消していった。 神々しい光りの中でも、フレイムキラーの炎は目立って見える。 敵の情報を探る暇があるのならば、戦わなくて済む方法を考えて欲しいものだ。 (まあ、それが分かれバ、こっちにも教えて欲しいくらいなのダ……) 「我が世界を脅かすならば、その身体に教えてやろう」 ――いずれこの世界を統べる、王の剣。 刃紅郎のハードブレイクがフレイムキラーを切り裂いていく。 慈悲も無く、容赦も無い一撃。その威力にフレイムキラーは地面に転がってもがいた。 すかさずブレスの光弾が続き、与一の弾丸が放たれる。 「わしも手伝うかの。当たるといいのじゃが……」 おそるおそる打ち出すが、フレイムキラーの大きな図体に当てるのには十分な精度である。 「悪いが、頭の多い犬は嫌いなんだ」 もっと恐ろしいものを目にしたことだってある。 だからこそ目の前のそれに負ける気は無いし、何より、それに比べればこんなもの!! 「本番と行こうか」 その余計に多い頭。吹き飛ばしてやる。 放つアーリースナイプは片方の頭を捕える。貫通し、その部分の炎が一瞬だけ消えかかった。 「そろそろ、疲れてきたのかい?」 暴れる獣は危ないねぇ。早々に終わらしてしまおう。 身軽に飛んだりりすが、ソニックエッジを放ち、その巨体を縛る。 動こうとしたフレイムキラーが石の敷き詰められた線路に倒れていく。 同じく終のソニックエッジがフレイムキラーに直撃。動けないその身体にフレイムキラーは大きな声で吼えた。 口からは涎がだらだらと出始め、形を作っている炎が歪む。目に見えて分かる、体力低下だ。 カイの天使の歌が響く中、雷音が動く。 「この世界も、姫も、ボクが守るのだ」 最下層にやってきた上位世界のお姫様と、沢山の厄介事もひっくるめて、全て守る。 これはその、第一歩だ。 何より、目の前で雄々しく大剣を振るう王、刃紅郎の前で挫ける訳にはいかない!! 符は漆黒の鴉となり、フレイムキラーの胴を引き裂いて飛んでいく。 怒りの影響か。 麻痺を抜けたフレイムキラーが雷音へと向かう。 来るなら来いとは思ったが、雷音の前に二つの影ができた。 「だから、あっちーーっての!!!」 「あんまり暴れるななのダ!」 ツァインとカイがフレイムキラーの行く手を阻んだ。 カイこそ燃えないものの、吐き出される炎は体力を蝕む。その瞬間フェイトが消えていった。 「まだまだなのダ! 我輩が倒れたラ、誰が回復するのダ!」 続く尻尾の、薙ぎ払い。 そのまま二人は雷音の下にまで吹き飛ばされていった。 だが、そのフレイムキラーの背後から刃紅郎の大剣が唸る。 「貴様等の主人にしっかりと伝えるがいい。いずれこの世界を統べる真なる王の存在をな」 振り落とされるハードブレイクはフレイムキラーの腰を砕く。 「さて、お掃除もこれで終わりだな」 煉獄に喧嘩売ってしまうだろうが、それも良いだろう。 ブレスの放つ、精密なる1$シュート。その光弾は胴を貫く。 最後に与一と杏樹の、二つのアーリースナイプが頭を射抜いたその瞬間。 巨体なる炎の獣は、何も残さず消えていった――。 ●不審火 再び、元の静けさを取り戻した線路。 燃える炎達がいなくなった事で、再び寒さがその身体に染みる。 「煉獄……か」 武器を掴む手の力を緩めながら、杏樹は呟いた。 「これで終わりじゃないだろう。 きっと戦いは激しくなる……アイツも選択を迫られる時が来るのかも知れない」 ツァインも武器を仕舞いつつ、言う。先の事は分からないが、それも近いかもしれない。 そもそも、煉が此処にいなければ始まらなかった物語。 けれどリベリスタが彼女を元の世界に帰す事は強制しない。 「……アザーバイドの住む世界は何処も不可思議よな。 統治するには面倒が多そうな世界だが、少し後を引きそうな件だ」 ……流石です、王様。 そんな中で、雷音は義父へメールをカチカチカチ。 ――お姫様は守れたと思います。でもこの先なにか嫌な予感がします。 ● 「数ある人種。氷の雨。奇妙な力。王? 断片的すぎるな」 「はい、もう少し戦力を揃えて行くべきかもしれません」 「まあ捨て駒だったしねぇ」 「ああ、そういえば……」 「んー? なんか面白いものでもあった?」 ――空が……青かったのです。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|