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リベリスタなら鼻血が出るほど簡単なお仕事です。

●誰にでも出来る簡単なお仕事です。
「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。
 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。
 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。
 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。
「お願い。あなた達にしか頼めない」
 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 
 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。

●お仕事は卵を割ることです。
「ぺきん」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、チョコで出来た百科辞典を割った。
 中から、なかなか精巧なハリネズミのフィギュアがこんころりん。 
「これ、今度発売される「エンサイクロペディアインザチョコ」の「アニマル編スペシャルエディション」。限定版。マニア垂涎。行列必死。人気造型師による気合の入りまくったデザイン。プレミアフィギュアの塊との前評判……日本人なら、みんないっぺんくらいは触ったことあると思うけど……」
 学校で、しょっちゅう、食べるところを捨てちゃいけませんと通達が出る類のものです。
「で、今回、このフィギュアが……」
 エリューション化しちゃったんですね。 
「今回のフィギュアの中に、革醒したフィギュアがある。『本物になりたい』という欲望は止め処もない」 
 具現化って……。
「今回のコンセプトは、かわいい珍獣・幻獣大集合。具体的に言うと、ふかふかモフモフ。でも、悲しいかな素材はプラスチック。そんなフィギュアが本物になりたいと思ったら……」
 それって、まずいんじゃ……。
「二重の意味でまずい。大きさが原寸大になったり、凶暴な性質だったり。更にリベリスタが骨抜きにされる可能性がある」
 ミイラ取りがミイラに!?
「このまま放置できない。ただし、幸い未来の話。というか、現在進行形の話。今介入すれば、対応可能」
 そのためのあなた達と、イヴは言う。 
「という訳で、問題のユニットを買い占めた。」
 ちなみに、エリューション化する数は88枚。
「全部で、12個かける千セット」
 ぶっちゃけ全部チェックし終えて、88体みつけるまで帰れません。
 88体見つけてしまえば、それでOKなのがわかっているのが唯一の救いだ。
「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」
 イヴは、もう一度頭を下げた。
「お願い」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2012年02月17日(金)23:00
 田奈です。
 季節柄、チョコといえば。これですよね。
 EASYです。つまり「自重しないぜ、ヒャッハー!」です。
『こんな動物フィギュアはいやだ』祭りで、かつ『もうこんな仕事いやだー! ここから出せー、俺を番号で呼ぶなー!』祭りです。
 リベリスタさんには、フィギュアにうっとりしたり、モフモフの夢を見たり、胸焼けしたり、中二心刺激されたり、励ましあったり、妄言はいたりしていただきたいと思います。  
 もちろん監禁状態や不眠不休を「われわれの業界ではご褒美です!」と楽しんでいただいても結構です。
 毎度おなじみアーク食堂は厳重隔離状態なので一般人の目はありません。
 機密漏えいの心配なし。安心ですね。

 チョコレート菓子「エンサイクロペディアインザチョコ」
 *掌サイズのチョコレート製の百科事典の中に、プラスチックフィギュアが入っています。
 *今回は、古今東西モフモフしてかわいい動物(想像上も可)特集ですよ。
 *適当にでっち上げてください。可能な限り拾います。
 *持って帰ってきちゃだめですよ? 
 *チョコも食べてね。余力があれば。 

場所:アーク食堂。
 過酷な状況については、お任せします。
 適当にでっち上げてください。
 可能な限り拾います。
 戦闘? なにそれ。
 最低、6人が「フィギュアは始末する」と書けば成功です。

 毎度のことですが、
 心を折らないように、方策を相談しておくのがいいです。
 修羅場を体験すると、人間、連帯感を増すといいます。
 チームの皆さんと仲良くして下さいね。

 サポートさんは諸般の事情で途中で挫折します。
 適当に理由をでっち上げてください。
 要するに、リタイヤ組の役です。
 印象的に落伍すると、本参加者さんの頑張りが引き立ちます。 
 
 はっちゃけ大歓迎ですが、小さなお友達も読んでいい全年齢対象ゲームですので、田奈の「そういうのいけないと思います」カウンターに抵触した場合、マスタリング対象になります。
 
 それでは、楽しい開封作業を。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
プロアデプト
如月・達哉(BNE001662)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
クリミナルスタア
ガッツリ・モウケール(BNE003224)
覇界闘士
霧谷 燕(BNE003278)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)
■サポート参加者 4人■
ナイトクリーク
三輪 大和(BNE002273)
プロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
ダークナイト
蓬莱 惟(BNE003468)
ダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)


「こんな依頼にやってくるリベリスタの種類は三種類。一つは好奇心。新人リベリスタはこれに含まれる。二つは訓練されたリベリスタ。半分趣味といっていい。もう一つは、食い物に釣られてくるリベリスタ。無事を祈るばかりです」
 ――とあるアーク職員、閉鎖された食堂の扉を見つめながら。

「先の商戦で儲かったので筐体ごと買った。簡単なお仕事中の暇つぶしとして食堂に常設することを希望する」
『トランスショコラティエ』如月・達哉(BNE001662)、新作音ゲー持込。クリア失敗して心折れる25分前。


 という訳で、ぺきぺきチョコわって、中のフィギュアを並べる簡単なお仕事。
――なんだけど、食堂はお祝いムードだった。
「達哉さん、お誕生日おめでとう~!」
達哉というか、「けしからん父親」「実は娘は双子でした、だとぉ?」「あいつこそ真リア充だぞ」「爆発しろ」と、一部アーク職員から羨望と嫉妬の殺人視線独占中のお誕生日である。めでてえな。
で、有志によりバニーガールコスのプレゼントだ。心の底から喜びやがれ。
「フィギュアは始末する。フィギュアを楽しむ。両方やらなくっちゃいけないのが訓練されたリベリスタの辛い所だね」
 いや、別に無理に楽しまなくてもいいんだよ?
「覚悟はいい? 私は出来ている!」
 サー、イエス、サー!
『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)、王道黒バニーである。
(サイズが合っててスカスカじゃないだけマシ、かな。今度お兄ちゃんの前でも着てみようっと。もちろんもうちょっとセクシーな奴を買ってね)
『鋼鉄の渡り鳥』霧谷 燕(BNE003278)の場合、いつもと出てるとこと隠れているところがちょうど反転している。ポンポンと下乳ないない。
「パーティ用の衣装とか言って普通にあんのが、アークのすげぇ言うか怖ぇところだな」
 よもや貸し出し用途の欄に、「依頼仲間の誕生日祝いのため」と書かされるとは思わなかった。
 イメージカラーの赤バニー。
「このフィギュアのせいで皆さんが困っておられます。私も微力ながら手伝わせていただきますね」
 色は癒しのホワイトに決まっている。
 魔法の看護婦・ミラクルナイチンゲール、バニーバージョン!
 というか、智夫、さっきまで『女子全員がバニースーツでウエイトレス』にちょっとドキドキしてた普通の男の子だったのに。
 誰だ、白バニーのコスチューム見せちゃったのは!?
 耳だけお祝い『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)もびっくりだ。
 そんな中、アークで一番バニーに固執している達哉が鷹揚にありがとうとか言っていられるのには訳がある。
 別に、ひんにうだからとか赤いからとか男の娘だからではない。
『パパー、簡単なお仕事来てるけどどうしますー? がんばったらわたしはバニースーツ着て膝枕してあげますし、お風呂だって一緒に入ってあげますけど?』
 愛娘+バニー+膝枕+一緒に風呂=ヘヴン。
 それを甘受できるなら、クリスマスや年末年始、バレンタイン商戦の忙しさなどたいしたことではない!
 ははは、パパ、簡単な仕事も片付けちゃうぞ~。
 誰か。この男に厳父という言葉を教えてやってください。


「がっちゃん達が千里眼で、覚醒フィギュアは見つけてくれるので。俺は万が一を考えて、他のも出して並べておこうと……建前言いました、スミマセン」
『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)、世界地図を広げているのを問いただされて。涙の土下座。

「私ね。黙々と作業すればちゃんと終わるってことを、この前学んだの」
『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)、着々と上る訓練されたリベリスタの階段。


 ステンレスのボールが一人一個渡された。
 割ったチョコレートはそこに入れるのだ。
「意外といい出来ね、これ」
 イーゼリットは上機嫌だった。
 力はいらないし、中から出てくるのはかわいい動物だし。
 何より、寒風吹きすさぶ野外ではない。
 ジャージに着替えろとか言われてない。バニーは断った!
(うさぎ、いぬ、ねこ、ひつじ、かば。かば? え。もふ、もふ?)
 エリューションだあああっ!!!
 叩き割るためにと用意されたでっかいとんかち。
 え、割るの? フィギュアも割るの?
 数十秒後、とんかちの使い方を習うイーゼリットの姿があった。
 よし、釘抜き、ロータリーカッターに続いて、とんかちも使えるようになった。
 日曜大工に挑戦できるぞ!

「はい、あげる」
「あげる」
 初めの頃こそ、開封作業タノシイナーなどと言っていられるのだ。
 爪の間に挟まる茶色い塊。
 指先にしみこむチョコの匂い。
 同じ動きの連続で、じんわり痛んでくる親指の付け根。
 そして、何より心がひんやりするのは……。
「ぬこじゃない……」  
 ぬこというか、ネコ科の動物は他の誰かのところにはでるが、アウラールの所は避けて出る。
 ジャラジャラと寄ってくるネコフィギュアを、持参の世界地図の上に並べる。
(フォレストキャットはノルウェーへ。スコテはスコットランド。ヤマネコはリビアかな…北アフリカ、この辺か? ベンガルトラはインド~中国あたり)
 もらった奴を並べてみるが、やっぱり自分で見つけたい。
 ――って、これはこれはこれは、レア!
(ホワイトタイガー。持って帰ったら、駄目だよね?)
 見張……いや、見守ってくれてるアーク職員さんの顔をチラッ。
 見れば見るほどうっとりする造形。
 指先に当たるふかふか毛並み。
 ………毛並み?
 三度見するぜ、レアホワイトタイガー。なんか、でっかくなってない?
 目が合ったアーク職員さんが、でっかい金槌を持ってきてくれた。
 そっか。やっぱ、やんなきゃダメか。 
「革醒したフィギュアは始末する――!」
 ダンダンダンダンダンダンダンッ!!
 粉砕確認。
 アウラールは金槌を放り出すと、超幻影で猫を大量に出した。
 郷愁を誘うややふとましいむっちりもっちりネコ。
「ぬこ……駄目な俺を叱ってくれ……!」
 慟哭。
「ぬこおぉぉぉぉぉぉ――っ!!」
 その脇で。
(コアラ大佐率いる有袋類軍の蜂起より八ヶ月、戦線の片隅に駐屯していたジャンガリアンハムスター小隊のハム郎中尉の元に一つの連絡が入る。ワラビー博士の開発した戦局を左右する最終兵器カモノハシの起動実験が行われようとしているのだ。一方ごく普通のハダカデバネズミ、丸の介は、大いなる陰謀の真っ只中に投げ出されようとしていた……いかん、疲れで幻覚が)
『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)は、オセアニア地区を中心にしたげっ歯類体有袋類の一大戦記を構築しようとしていた。
 チョコ割りサボってるんじゃないよ、フィギュアの管理だよ。
 

「いざとなれば拙者~とか言って神気閃光でドアを破壊して逃げればいい。そう思っていた時期もありました」
――『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)、ピッカピカの電子ロックに阻まれながら。

「火山の写真とか海の写真とか森の写真とかを大きく現像した物を持って行くお。あとあられとか辛い物だお!」
『おっ♪ おっ♪ お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)、余念のない事前準備。


「じゅうにかけるせんっていくつだ」
 一万と二千箱だよ。封してる。
 透視係の『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)はそびえたつ段ボール箱を見上げた。
(砂丘で指輪を探す感じだーよねっ。うっかりブリーフィングルームにはいったのが運の尽き)
 やだなあ。0.73%で見つかるんだから、ラクチンラクチン。
 200個あければ、1個か2個は出てくるよ。
(殺人鬼は人をころしてなんぼなのに。ほーんと君子危うきに近寄るな。いい箴言だよ)
 ああ、うん。適性ってあるよね。
 じきに、フォーチュナが顔色でどんな依頼か見分けられるようになる日が来るかもしれないからがんばってね。
 ブリーフィングルーム、電子ロックついているし。
「ガッツリビーム!」
(説明しよう! ガッツリビームとは千里眼なのだーだおーん。どれか分かればそれを皆に配って行くお)
 しかし、ガッツリはうっかりしていた。
 お手手サイズの百科事典が入る箱×12×1000。
 これが結構な量で。
 そこにあるのが分かったら、まず積み上げられてる箱をどかし、どかし、どかし、どかし、目的の箱の中から該当するダースを掘り出し、更に該当の箱を取り出し、それを割る。
 更に時間差でさっき一番下にした箱の中で革醒が確認されたりなんかして、うが-!
 あくまで革醒は未来という訳で、88個革醒を確認するまでは帰れません。
 ピンポイント88個決め打ちと行かないところが、簡単なお仕事の簡単なお仕事たる由縁なのだ。
 そういう訳で、ガッツリも割り割り作業に参加なのだ。
「何が出るかな何が出るかなーおーおー? おぉ、これはケットシーだおー。ん、長靴をはいた猫なのかな、わっかんねーお。でも可愛いお」
 ガッツリは、幻獣地図担当なのだ。
(おぉ!これはアリスに出てくるウサギさんだお。時計まで精巧に作りあげてるあるお)
 うさぎを森の木の下、迷った挙句ケットシーは田舎道の上に置いた。
「こちらは兎さんでしょうか。少し口が大きいような……?」
 唇に指を当てて小首傾げるナイチンゲールじゃない、智夫。
「これは騎士の首さえも切り落とす、凶悪な殺人ウサギですね。ふわもこで愛らしいのに凶暴な姿がここまで再現されるなんて驚きです」 
 きゃ。
「これは…アノマロカリスですね。カンブリア紀最大の肉食動物の特徴である飛び出した目、牙のようにも見える触手がよく再現されています。それでいてふわもこ感に溢れているなんて、びっくりです」
 智夫君、それ、スカイフィッシュでは……。
 つうか、ふわもこ時点でエリューション。
 訓練されたミラクル☆ナイチンゲールが、それに気づかないわけがない。
「愛らしい動物ばかりですが……頑張って始末します」
 ほろりとこぼれる涙は真珠。
 握り締めるかなづちは鋼。
 ガンガンガンガン……。
 あ、二の腕の筋肉は男の子だ、やっぱり。

(おぉぉ!キモカワ! ぶるどーっぐ! あちきブルドッグって結構すきだお。垂れてる頬とか!)
「ヘイ、パースだお~」
 おっおっおーと、普通の動物はアウラールにテレキネシスで預ける。
 ふよふよと宙を飛ぶブルドック。
「顔が暗いお」
「ぬこがでない」
 アウラールの目の周りは涙で真っ赤に晴れ上がっている。
「ケットシー出たお」
「いいなぁ、夢があって」
 振り絞るような一言。
『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)は、喉を詰まらせていた。
 チョコを喉に引っ掛けたわけではない。
「……!! こ、これは、ケツァルコアトル?」
(蛇はないと思っていたのに…なんて愛らしい。この無機質なくりくりとした瞳、翼のモフッと感、素敵です! 滑らかな鱗の再現も……うふふ)
 ということは、それって、実体化始めているよね。
 ごとんと置かれるとんかち。
「……えっ、壊さないとダメ……そんな……殺生な……っ!」
 だめだ。
 このまま放置したら、けつぁるこあとるチョコ風味討伐依頼を出さなきゃいけなくなる。
 持ち逃げしたい葛藤を乗り越え、大和はとんかちを握り締めた。
 どこどこと響く振動から、大和の慟哭をお察しください。
 さめざめと泣いている。
 異教とはいえ、蛇神様を破壊したのだ。
 心労のあまり、過呼吸発症。
 カウンセリング室に搬送。


「アークには素晴らしい依頼がたくさんあるな。仕事で食事が取れて、さらに報酬までもらえるとは。まあ、今日はチョコレートだが」
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)、アーク厚生課に食生活に関するヒアリングをされる三秒前。

「まぁ、今の所危険じゃ無さそうだし、ちょくちょく料理をつまみつつ気楽にフィギュア調べていくかな」
 燕、ケーキのお運びに任命される五秒前。


 あのね、アルトリアはいつもおなかをすかせているんだよ。
 と誤解されるほど、一杯食べるというか、食べたい。
 きっと、胃袋が暗黒空間で、そこがパワーの源なのだ。
(ひたすらチョコレートを頂く事にしよう。いちいち割らないといけないのが面倒だな)
 動物フィギュアに興味はない。
(あ、どうでもいいことだが。うっかり暖かい場所にこれを放置してしまったりしたら最悪だろうな。正直どうでもいいことだが)
 その点は抜かりない。チョコレートの融点28度。
 空調は、室温がそれ以下になるように制御されている。
「あ、あのっ、がんばってくださいねっ。これっ。新しいボールですっ!」
 離宮院 三郎太(BNE003381)は、せめてみなの心の支えとなるように、お茶くみや雑用に従事していた。
 落ちたチョコの割りくずを掃除し、空き箱を片付け、ダンボールを折りたたみ、ビニールをはがして、ごみを分別し……。
「そういえば……達哉が誕生日と言っていたな」
「みたいですね」
「そうだな、折角の機会だ。誕生祝にこのチョコレートを使ってケーキを作ろう。あ、手伝いは無用だぞ」
 先ほど達哉が見事なザッハトルテを完成させた厨房。
 チョコが山盛りになったボール片手にアルトリアは姿を消した。
 ほどなく、鳴り響く異音、轟音、爆音。香り立つ異臭。立ち上る煙。
 どうしてそうなる。
 それは革醒者に時々顕現する呪いだ。
 人はそれを「殺人料理」と呼ぶ。
 見た目は、いかにも素人ケーキ。破綻していない辺りが逆に怖い。デコレーションされたフィギュアが傾いているのが恐ろしさを倍増している。
 赤バニー燕がチョコレートケーキを運んでくる。
 顔が青い。臭いだけで命の危険を感じる。
「つ、燕さんは運ぶだけだからな!」
 涙目なのは、ビビッてるからじゃないよ。
 なんか、目に染みるんだよ、このチョコケーキ。
 誕生日祝いとして達也に贈られたそれ。
 しかし、グルメ王にしてゴッドタンの持ち主、そして本職パティシェたる彼にはわかる。
 これは彼岸の食い物であるということが。
「味? 知らないな。味見はしない主義だ。さあ、食べてくれ」
 いや、味見はしようよ!?
 あの異臭の中で立っていられるということは。
 多分アルトリアには、亜鉛が足りない。
 イーゼリットが、覚悟を決めて伸ばすフォークを達哉が止めた。
 サングラス越しの目がまじだ。
 イーゼリットは悟った。
 これは、聖戦であるということが。
「ぐふっ!? こ、この味は……だが食材がもったいないので死ぬ気で食わせてもらう!!」
 残念。達哉、R・ストマック活性化できなかった。
 一気にやられていく消火器を、自らの治癒能力で癒し、さらにはフェイトまで動員し。
 達哉は完食しきったのだ。
 光あれ。
 コロンと転げたケーキのくずをひょいパクしたアルトリア、一言。
「……ふむ、いつもより良い出来だな」
 誰か、この味覚異常のお嬢さんに亜鉛のサプリメントを!


「辛い時は脳内お兄ちゃんに励ましてもらうよ」
 虎美、非戦スキルの有効活用
 

「あまりに食玩の出来がよかったので職人としてカッとなって対抗してみた。大人げないかもしれないが全く反省していない」
「……ていうか、パティシエ俺とそんな変わんない年に見えるけど大きい娘がいるんだよな? 若く見えるなー」
「広報の曽田七緒さんを呼んでいただけますか。写真撮っていただきたいので……」
「智夫。甘いものはビタミンB1を消費するから、補給するといいぞ? 持病の口内炎にならないように」
「「みなさんファイトですっ!!自分に……自分に打ち勝ってください!!」
「絶対に倒れられない」
「イーゼリット。ホットチョコ、口から垂れてる」
「あちきはこう言うの眺めてるだけでけっこー時間つぶせるし大丈夫だと思うけど、他の皆はどうなんだろうだお」
「もうまとめて斬っちゃっていいかな」
「私、この仕事が終わったらバニー姿でチョコを上げるんだ」
「ぬこぬこぬこぬこ……」
「こういうのはトランスっていうの?」
「むしろいつもよりもっとペロペロして貰う為に私に塗って……キャッ、お兄ちゃんってば大胆」
「こういうのもトランス?」
「ケルベロス!? ケルベロスでてきたお! これあぶねーおっ」
「あとは任せたよ~俺様ちゃん、今日の営業は終了しました」
「よーし、虎美、お兄ちゃんにチョコ塗ってペロペロしちゃうぞー!」
「あ、クマだお。あちきたまにクマに似てるって言われるお」
「例え困難が待ち受けようと、戦い続けるのがミラクルナイチンゲールの勤めです」
「何か悪いものでも食べたか?」
「アハハウフフフフフ」
「それでもだめなら……ショック療法ですっ」
「うむ、チョコレートは流石に甘いな。口直しになにか食べに行くか」
「フィギュアってこんなにも虜にしてしまうんですね…」
「またのご利用をお待ちしています」
「やったぜ……家に帰ったら」


 という訳で、88個のフィギュアはリベリスタによってかなづちの洗礼を受けた。
 アーク職員食堂で、新型音ゲーの筐体を見たら思い出してほしい。
 床には、リベリスタの、とりわけ無茶しやがってなパパの涙が染み込んでいる。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。
 季節柄チョコですよ。
 もう指先ずっとチョコです。
 しょっぱいもの食べてても、体にチョコのにおいが染み付いてますよ。
 た~いへん。

 これで、かわいいフィギュア討伐依頼で他のかわいい物好きリベリスタが涙することはありません。
 アークの心の平安は守られた。
 ゆっくり休んで、次のお仕事がんばってくださいね。