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【はじおつ】エフィカさんとはじめての手作りチョコ2012

●受付天使のバレンタイン
 『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)にとって、
 バレンタインは日常の中に挟まれた割と大きなイベントの一つである。
 と、これだけであれば誰か心に決めた男性でも居るのか、と言う話になりそうな物ながら
 そうではない。と言うか、心身の成長は同機するのか、実は初恋もまだのエフィカさんである。
 その内素敵な恋人が、と言う夢も希望も無いではない物の、自分にはまだ早いと思ったりもする。
 そんな微妙な御年頃。では、果たして何がそれほど大きなイベントであるのか。
 その事情は、ざっと一年前のこの時期まで遡る。
 
 余談ではあるが、エフィカは父親との2人暮らしである。
 俗に言う所の父子家庭の必然として、彼女は料理に関してそれなりの腕前を持つ。
 現在であれば、ここに『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)の名前も挙がったろうが、
 去年の同時節。アークのリベリスタ達へ心ばかりの激励の意味の込めてチョコレートを贈ろう。
 と言う企画が『戦略司令室長』時村沙織 (nBNE000500)から持ち出された際、
 白羽の矢が立ったのが、正にこのエフィカだった。
 勿論、例えばエインズワース姉妹等は大抵の事は卒なくこなす。やれば出来る、の典型と言えるだろう。
 しかし、彼女達はいずれもそれぞれに別の意味で余り勤勉とは言い難い。
 テンションの上下で行動の精度が大きく異なって来る。
 激励の心算が、心身ともに大ダメージ。となっては事である。

 その点、善良で知られる受付の天使であれば間違いは無い。との打算が有ったかはともかくとして。
 彼女はその案件を二つ返事で受け入れた。誰かの為にお菓子を作る。
 普段余り戦力として役に立てていない自分が、例えばそういう形ででも、
 アークの皆へ貢献出来ると言うのは何だか素敵な事の様に思えた。
 まあ、実際は千個を軽く超えるチョコレートの作成と言うのはそれこそ尋常な手間ではなく
 受付業務の合間を縫って作業に尽力したものの、後から砂糖の分量を間違えた事に気付いたりとか
 そんなハプニングも水面下であったりなかったりした訳であるが。
 閑話休題、そこに来て今年もバレンタインの季節である。
 一年前の甘いチョコレートの汚名を雪ごうと今年エフィカは確りとチョコレート作りを勉強して来た。
 もう以前の様な失態は冒すまいと、気合十分で業務に当たる心算である。
 その辺り、真面目で誠実なエフィカの性格が諸に出たと言えるだろう。

 けれど。
「チョコが欲しい貴様はここに並べ!」
「いぇあ!」
 大体の場合に於いて、天災と言うのは努力家をこそ凌駕するのである。

●マスコットの本気
「――と言う事で、皆さんにはこの千個のチョコレートを消化して貰おうと思いますっ」
 どーんと詰まれたチョコレート、実に千個。
 そう、千個。1つ1つは100gにも満たなくとも、それが千個集まれば総量は100kg近い。
 100kgのチョコレート。純正、文句無しのチョコレートオンリー。
 他には何も無い。全く一切、何も無い。それはそうだろう。
 だってバレンタインなのだから。
 だって、バレンタインにはチョコを贈る物なのだから。
 この日の為にレシピにアレンジを加えたり、纏めて作っても味が落ちない様に
 細かな工夫をして来たのだから。当然、無駄にする何て選択肢は、無い。
 食べ物を粗末にしてはいけないんです。贅沢は敵です。断じて敵です。
 私が決めました今そう決めました。別に意固地になってたりしませんし。全然そんなのしてませんし。

「一番沢山食べてくれた人には今回1つだけ、
 カカオの実を砕いてココアバターから作った100%手作りチョコレートを進呈しちゃいますっ!」
 ついでに賞品とか用意してみたよ、マスコットだってやる時はやるのです。
 糖尿病とか、日当消費カロリーの如何にも多そうなリベリスタなら心配しなくてもきっと大丈夫。
 多分、絶対、大丈夫なので。真白室長も恐らく問題ないって言ってましたし。
「全部、食べてくれますよね?」
 にこ、と微笑むエフィカさん。
 うん。どうも着実に、順調に、間違いなく、アークスタッフからの悪影響を
 じわじわ受けている気がしなくも無いそんなバレンタインの夕べ。
 ブリーフィングルームに来てしまったリベリスタ達と、
 エリューションでも何でも無いチョコレート達との戦いの火蓋が此処に、

 何で切って落とされてしまったのか。理由は誰にも分からない。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:弓月 蒼  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 10人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年02月21日(火)21:54
 54度目まして。シリアス&ダーク系STを目指してます弓月 蒼です。
 1人当たり10kg。良い子は絶対に真似しないで下さい。以下詳細。

●依頼成功条件
 チョコレートLv100の撃破

●バレンタイン特別ルール
 参照されるステータスはHP、DAct、速度、ドラマ値のみです。
 R・ストマック所有者はHPを1.5倍換算。
 HP回復スキルは無効。自手番をパスすることでHPを200回復出来ます。
 1ターンに行動した人数×100gチョコレートが減り、
 100000gのチョコレートを撃破出来れば依頼成功。
 ダブルアクションではノーリスクで2倍のチョコレートを完食出来ます。
 ドラマ復活可、フェイト消費による復活不可、歪曲運命黙示録不可。

●チョコレートLv100
 バレンタインチョコレート100kgです。
 味はきちんと調整されており、一口目は幸せになれます。
 5ターン以上継続行動後、毎ターンHP―50
 10ターン以上継続行動後、毎ターンHPが更に―50(合計―100)
 15タ-ン以上継続行動後、毎ターンHPが更に―50(合計―150)
 と言う様に5ターンが経過する度-50累加ダメージを被ります。

 また、自手番を消費する事で手番をパスした仲間1人を
 強制的に行動させる事が出来ます。

●優勝条件
・参加者が3名以上生存している。
・チョコレートLv100撃破時に戦闘不能になっていない。
・上記条件を満たした者の中で最も多くのチョコレートを食している。
・量が同量である場合は速度の早かった者を勝者とする。

●注意
 長期戦になります。仲良くチョコレートと格闘して下さい。
 エフィカさんはにこにこその状況を見ています。
 会話したり交流を深めたりは適度にどうぞ。IDの記載は不要です。
 尚、チョコレートを撃破するまでブリーフィングルームからは出られません。
参加NPC
 


■メイン参加者 10人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
★MVP
新田・快(BNE000439)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
ホーリーメイガス
救慈 冥真(BNE002380)
スターサジタリー
林寝・夏明(BNE002881)
ソードミラージュ
ポルカ・ポレチュカ(BNE003296)
覇界闘士
クルト・ノイン(BNE003299)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)

●エフィカさん頑張りました
「こういう依頼ってさ、いつもイヴちゃんが苦しげ表情で訴えてくるあのパターンじゃないの?」
 幾多もの苦難苦境を乗り越えて今、この場に立っている。
 『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は呆然と問う。
 そんなケースも確かにありました。
 餅とかラーメンとか南瓜とか牛乳とか最近だと恵方巻とか納豆とかありました。
 だが、分かって貰えるだろうか。彼らが乗り越えてきたその試練。
 主に胃と小腸を大腸を主力とした消化器全般に過負荷をかける戦いは、それでも。
 それでもまだ――主食か、飲み物であったと言うこと。その、意味が。
 そんな彼の眼前に立ちはだかるのは、余りにも非情な白い山である。
 丁寧には箱詰めされている。サイズは1つ10cm四方、1つ50gと言った所だろう。それが2000個。
 例えば世界が少し優しければ、これらの小箱は丁寧にラッピングを施され、
 アークに属する多くの男性へと渡り彼らを幸せにしただろう。
 でも、そうはならなかった。ならなかったのだ。だから、この話は始まってしまったんだよ。
 な、新田。

 人、それをチョコレートと呼ぶ。
 
 努力する少女の姿は美しい。いや、そりゃわかる。エフィカさんは頑張ったよ。
 ブリーフィングルームの入口に椅子を持ち込み腰掛けてにこにこと微笑む今回の元凶。
 『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)へと視線を向けて心の中でそっと称えるのは、
 『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)。偶に夢に見る鞍馬天狗にも負けず燃やす不屈の闘志も、
 眼前のどう形容しても山としか呼べない代物に吹き消えそうになる。
「まあ、女の子の手作りだしな。野郎からじゃないだけ嬉しいさ!」
 己を鼓舞する言葉が割と洒落にならない。
 用意して来たエスプレッソコーヒーを握る手も汗ばむと言う物である。
「……まあ。よく千個も、作ったものよね」
 頑張りはすごいと思うけれど。と頷く『作曲者ヴィルの寵愛』ポルカ・ポレチュカ(BNE003296)の
 眼差しは初っ端からして何処か虚ろである。やる気ゲージが1つ減っている気がする。
 甘い物には割と耐性のある筈の女性陣であっても、流石にこれは過剰と言う物。
 小さい頃はケーキを1ホール丸ごと食べるの夢だったし。と、
 自己暗示を懸ける様には何処か無理矢理感が漂う。
「こういう事で一番困るのは後に体調崩すことですからね。」
 参加者に胃腸薬を配っていた『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)もまた、
 極力其方を直視しない様にしながら自前のドライフルーツなどを並べている。
 単調な味に飽きない様に、と言う主旨ではある物の、量が量。
 せめて頭脳労働をする事でカロリー消費を助けようと本等も用意した物の、表情には苦味が混じる。

「ちょこをたべつづけるだけのかんたんなおしごと!」
 一方で、ぐっと拳を握る『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミ-ノ(BNE000011)等は、
 意気軒昂、やる気十分である。元々食いしん坊で知られる彼女。
 あまいものはべつばら! と言う良く聞く類の都市伝説を胸に秘め、不踏の山脈に挑む。
 そしてもう一人。似て非なる理由で意欲を燃やす男がきらきらとした眼差しを、
 箱入りチョコの山へ向ける。『ひょろり一人旅』林寝・夏明(BNE002881)である。
「チョコが……チ、チョコがこんなに、沢山……此処が我がサンクチュアリだと言うのですか!」
 赤貧の結果食べるにも困る彼にとって、カロリーの摂取出来るチャンスと言うのは、
 極めて大きな意味持つ。チョコになら殺されても良いです……と見上げる瞳には涙すら滲もうか。
 だが、果たして。これがそれほど心身ともに優しい代物に見えるだろうか。
 現代医療に於いて必須の麻酔薬も過剰投与すればただの劇薬である。
 チョコレートもまた、然り。
 これは決して、和気藹々としたチョコレート試食会等では無い。あくまで真剣勝負である。
 それを、彼らは嫌と言う程思い知らされる事に――なる。

●vsチョコレート前半戦
「「「「「「――なっ……!?」」」」」」
 まず一口。取った箱を開け、可愛らしいハート型のチョコレートを齧った男達の声が唱和した。
 元々余り甘い物に縁が無い面々である。一口にチョコと言っても市販品で十分と言う感覚しかない。
 だが――
「――。これは……美味い」
 『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)がまじまじと、自分が齧ったそれを見つめる。
 甘いかと言えば、確かに甘く。苦いかと言えば、程々は苦い。
 だがそのバランスが絶妙である。カカオの香りも強過ぎず弱過ぎず。
 舌に載せるとさらりと溶ける。それでいて十分コクもある。丁寧に作った事が分かる味わい。
(正直、予想してたよりもずっと美味しいじゃないか)
 瞠目するその完成度は恐らく1年掛かりの地道で懸命な研究の賜物なのだろう。
 其処まで感動して眼前の山を見る。
「……でもまだ、99000gもあるのか……」
 現実は、時に残酷である。夢を見続ける事を人に許さない。
「へえ……いや、うん。おいしいと思うよ。僕チョコ好きだし」
 かわいいエフィカちゃんとまた遊べるのは嬉しいな! 万歳! と言う動機で参加した、
 『覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は明るい表情でエフィカに話し掛ける。
「そうですか? 嬉しいです。沢山有りますから一杯食べて下さいねっ」
 その評価に、エフィカもまた嬉しげに瞳を細めるのだからやる気増である。
 やる気増ではある、の、だが……
「あ、そうそうみてよ! これこれ! 去年の今頃エフィカにもらったチョコ!
 今でも大事にとっておいてあるんだぜ! えっへーん」
「……え?」
 市販のチョコレートの賞味期限は1年半程である。だが、手作りチョコであれば長くて3ヶ月程。
 当然時間が経てば経つほど味は劣化する物である。
 勿論調理者は食べる人に喜んで貰いたいと思って作る物だ。そういう、物である。
「あれどうして沈んだ顔するの!?」
 そっと、何も言わず静かに視線を背けたエフィカに夏栖斗がきょとんと瞬く。
 恐らくはその辺りが残念イケメンと称される所以であろう。当人に悪気は無いのである。合掌。

「売れ残ったり失敗したお菓子を戒めの為捨てずに、
 全部食べるのを時々やりますからね。容易く心は折れませんよ」
 珈琲館経営者のプライドか、力強く言ってチョコの山に挑む源 カイ(BNE000446)
 けれど味覚に優れる彼をして、エフィカの作ったそれはは決して負担になる類の物ではない。
 熱いほうじ茶を用意して溶かす様に口内へチョコレートを放り込みつつ首を傾げるカイ。
 これなら、きっと受けとった誰もが喜んだだろうに。
(エフィカさん、一体何があったのでしょうか?)
 けれどそれはそれ。複雑怪奇な物が女心である。
「おいしいの~こんなおいしいちょこはなかなかおめにかかれないの~♪」
 とは言え、ぱくぱくほわほわと幸せそうな声を上げるミーノにはそんな事情は余り関係が無い。
 甘い物大好き、チョコレート大好きの彼女にとって、幾ら食べても御自由にお取り下さい状態である
 現状は幸福以外の何物でも無い。ペースも崩れず躊躇いも無く、一体何処にそれほど。
 と言われそうな程の勢いで、掴んだチョコレートを片っ端から消化していく。
 けれどそれを横目に見ながら、奇妙に静かな男が一人。それはとても不自然な静けさである。
 この場で誰を置いても最も騒ぎそうなタイプである彼が、けれど地味に地道にチョコレートを食む。
(今回の敵はチョコではなく、味方側にこそいる……
 そう、エフィカたんの優勝チョコをいただくのはこの俺さ)
 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)全員でのゴールを目指すと明言して来た、
 チーム内最大の癌。獅子身中の虫である。彼は雌伏する。誰も彼もが追い詰められるその時を。
 ただじっくりと、ゆっくりと。獣が爪を研ぐ様に。
(ぬるま湯につかってきたリア充どもに教えてやる……
 ねだるな! 勝ち取れ! バレンタインってのは、戦いなんだよ!!)
 あ、何だ。やっぱりリア(※不具合)で正しかったんですね。
 
●vsチョコレート中盤戦
「量が量だけに、皆さんトラウマにならないといいですが……」
 遠い眼差しを向ける凛子が呟く。開けたチョコレートの箱、600個。
 消費したチョコレート30000g。30kg。
 30kgである。これは大体小学3年生の平均体重に匹敵する。一人当たり3kg。
 常人であれば糖尿病間違いなし、既に立派な狂気の沙汰である。
「夢は、夢のままであるほうが、いいのね。現実って、こんなもの。そうよね」
 呟きながら、摘まんだチョコを口に運ぶ。最初の一口で一端回復した筈のポルカのやる気は、
 時間経過に従い分かり易いほど低下している。駄々下がりである。
 作業的に口に運ぶ動作も何処かやさぐれている。日本の文化って何処か間違ってる……
 と、自ら渡航してきた国その物にまで当たる始末である。
「……あ、エフィカさん」
 不意に呼んでは食べていたチョコレートを摘まんで差し出すポルカ。
 でも駄目です。それはルール違反。
「あの、私はその……味見で散々頂いたので」
 困った様に微笑むエフィカ。まあ、それはそうだろう。真面目な彼女である。
 満足の行く味になるまで試行錯誤をしたのだろう。微笑むその瞳に微妙に危うい色が見え隠れ。
「所詮ニート貴族の胃袋のキャパなんてこんなもんだよ? がんばれ、若者達よ」
 他方、既に勝負を投げに掛かっているクルトはと言えば随分と気楽な物である。
 事実、そう言う選択肢も無いではない。彼は既に4回目の休憩。
 他の面々に比べて未だ味覚を保っている方だと言えるだろう。

 一方、エフィカに良い所を見せてやるんだ! と意気込んでいた夏栖斗の場合。
「なんだか顔がチョコレート色になってきた気がする……」
 此処まで休憩僅か1回。本気である。本気過ぎるとすら言える。
 現在ぶっちぎりでトップを直走るハイペースな食事速度は伊達や酔狂では叩き出せまい。
 若干心配そうに見つめるエフィカが凛子と共に口直しの珈琲を淹れるも、
 しかし、彼には止まれない理由があった。
「チョコレートってさ、コーヒーのお茶請けには一番いいらしいよ。
 コーヒーの美味しさが引き立つんだってさ」
 そんな豆知識を告げながら珈琲を啜る快、そして
「まあ、ある程度余力は残しておくべきだよな」
 にこやか笑顔で手を止め呟く竜一が、直ぐ真後ろに迫っているからである。
 基本この競争、単純に競るならHPの総量が大きい方が有利。
「流石に油っぽさが出てきましたね」
 同率2位に凛子がひっそり混ざっている事からも、その事実は明らかである。
「さすがエフィカさん、はんぱないものを作りますね……!」
 と食べ始め当初感動を口にしていた夏明に至っては、少しでも長くチョコレートを味わう為と、
 常人の倍の時間を掛けてチョコレートを味わっている所為で消費量その物は最小に近い。
 やはり普段小食な人間が突然沢山食べようとしても限界が有ると言う事だろう。
「やっと3分の1くらいか……嫌に多く感じるな」
 死んだ魚の目で指先ががくがくしながらも律儀にチョコと口へと運ぶ冥真。
 だが、実の所これでもまだまだ、マシな方だったのである。
 
●vsチョコレート後半戦
 それでもリベリスタ達は尽力し、耐え忍んだ。黙々とチョコの山を消費し続け、
 胃腸が訴える再起不能の信号を半ば無視し、チョコを感じ取る味覚が死んだ口を只管動かす。
 全体の総量が半分を切り、四分の一を切った。漸く終わりが見えて来た頃である。
 その潰し合いは、脈絡無く始まった。
「もっと食えよ! どんどん食えよ! 遠慮するなよ!」
 いっそ清々しい程にトップを走る夏栖斗の口にチョコレートを詰め込む竜一。
「まだまだ行けるだろ、な、新田!」
 にこやかに、自らの手を休めながら未だ余裕を保つ快へとチョコレートを薦める夏栖斗。
「おい、手が止まってるぜ。ほら、ちゃんと食べないと」
 無理矢理詰め込まれたチョコレートを嚥下し、マイペースを保つカイへとチョコを追加する快。
 アークが誇るお笑い(←ここ重要)御三家の余りに醜い同士討ちである。
「すぎればなんとやら、ですか……」
 かなりのハイペースで、様々な工夫を施しながらチョコレートを消費していた凛子。
 竜一の毒牙にかかり無念の脱落。御三家、やる気満々である。
「たべおわったらげんきなひとはみんなでごちそーさまして~」
 とは言え、確かそんな事を言っていた筈のミーノまでもがその足の引っ張りあいに巻き込まれて、
 脱落した事に涙を禁じ得ない。戦乱は何時も優しい人間から奪っていくのである。
「エリューションと戦う訳じゃないのです、出し抜いたり陥れたりしてまで勝利を掴みたくない……」
 そんな正しさを、どうか持ち続けて下さい。
 奇しくも夏栖斗、快、竜一と言う上位陣の動きが殆ど同時に止まった事で、
 あっさりと3人を追い抜いてしまったカイ。同じ響きの筈なのに快男児とは言い難い、
 快の妨害を受けギブアップ。元凶曰く「これは事故だよ」
 だが、一方で妨害を分散させる快や竜一とは異なり、最初から快だけにターゲットを絞っていた
 夏栖斗の猛攻。毎ターンの休憩潰しがあたかも蛇毒の如く新田の身体を蝕んで行く。
「もちろん相棒らしく追い込む。だってエフィカのチョコほしいもん!」

 とても素晴らしい人間関係である。

「……エフィカさん、これ、今度沙織さんにも勧めた方が良いですよ」
 虚ろな眼差しで夏明が告げる。彼に悪気は無いが多分沙織は逃げるだろう。
 お手々繋いで皆一緒にゴール。そんな夢を抱いていた事が私にも有りました。
 けれど悪に報いは必ず訪れるのである。
「くっ、ここで竜一か……!」
「ひゃっはー! エフィカたんは俺のだー!」
 夏栖斗を追い詰める竜一、そして快を追い詰める夏栖斗、竜一を追い詰める快。
 周囲の追跡者が軒並み脱落した以上必然的に互いが互いを潰し合う事になる。
 これは至極当然の流れである。だが、此処で約1名がウルトラCを叩き出す。
「こんな位で……俺は最後までチョコレートを諦めない!」
 全てのチョコレートに(義理)とか(友情)とか付いている事が其処まで耐え難かったのか。
 快の執念にドラマが微笑む。吃驚のどんでん返しである。
 大幅に余裕を取り戻した快の攻勢が、全ての発端竜一の牙城を崩す。
「馬鹿な、この俺の神算鬼謀が……」
 がっくりと項垂れチョコレートの海に沈む竜一。
 それを横目に持参の牛乳を飲んだり煮干を齧ったりしているポルカは何処までもマイペース。
「……食べてる。食べてるわ。ちゃんと、食べてる、から」
 確かに食べてはいるがそれは明らかにチョコレートでは、無い。
「もう良い加減ギブアップしろよ、な、新田」
「ここは俺に任せて夏栖斗はリア充してようぜ」
 足を引っ張り合う2人。けれどチョコレートその物は確かに減っていく。
 そう、どんな苦境にも苦難にも終わりは来る。夜明けは必ず、やって来る。

●vsチョコレート決着
「厳しい戦いだった……ぜ……」
「う、うぅ……お腹が……」
「もう……当分チョコは……見たくないわ……」
 生き残り5名。ギブアップ5名。余りにも死屍累々のブリーフィングルーム。
「えっと、これが賞品のチョコレートですっ。
 その、今はあんまり美味しくないと思うので、出来たら後で食べて下さい」
 エフィカから差し出されたチョコレートは、白とピンクの包み紙で綺麗に包装され、
 リボンをハート型に結んだ如何にも少女趣味なラッピング。
 去年配られたそれとは異なり、たった1人の為に用意された特別で特製のチョコレート。
 内容物の完成度は元より、其処に込められた気持ちからして大量生産品とは訳が違う。
「ちっくしょおおおおおお―――!!」
 耐えに耐え、最後の最後で脱落した夏栖斗の叫びが虚しく響く。
「あぁ、珈琲なのにココア飲んでるみたいだよ……」
 ラストスパート。デッドヒートを繰り広げたのは思わぬ伏兵、クルト。
 十分な休憩を取り体力を確保していた彼に、もしも自ら攻めると言う選択肢が有ったなら、
 結末は全く異なる物となっていただろう。だが、そこはそれ年長者の余裕と言うべきか。
 彼はあくまで最後まで、一線を越える事は無かった。ならばそれを誇れば良い。

 結局の所、もし勝因があるとするなら、それは執念だったのだろうから。

「よし、やった! 有り難く頂きます!」
 ストレート過ぎる快の喜びの表現にほんのり照れた風にエフィカが微笑む。
「と言うか、これはこれでリア充、なのかな……?」
 呟きの答えは、皆の心の中に。
「エフィカさんならいわないでも解っていますよね?」
 最後は凛子による、チョコレートの作り過ぎについてのお説教で締め括られる。
 とは言えしゅんとするエフィカとて流石にもう一度やろうとは思わない、これも良い勉強である。
 そんな騒動、そんな真剣勝負。戦い終えて日は暮れて、夏明がぽつりと呟いた。
「帰りにラーメンとチャーハンでも食べに行きませんか?」
『賛成』
 まさかの満場一致であったことを、此処に記す。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加者の皆様はお疲れ様でした。STの弓月蒼です。
イージーシナリオ『【はじおつ】エフィカさんとはじめての手作りチョコ2012』
をお届け致します。この様な結末に到りましたが、如何でしたでしょうか。

素晴らしい足の引っ張り合い、お腹が痛くなるまで笑わせて頂きました。
皆様、素敵です。
まさかのドラマ判定成功により生還を果たした優勝者の新田快さんにはMVPと
エフィカさんよりプレミアムチョコレートを進呈させて頂きます。

この度は御参加ありがとうございます、またの機会にお逢い致しましょう。


===================
レアドロップ:「エフィカのチョコ(プレミアム)」
カテゴリ:アクセサリー
取得者: 新田・快(BNE000439)